特許第6953897号(P6953897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許6953897-積層型電池 図000002
  • 特許6953897-積層型電池 図000003
  • 特許6953897-積層型電池 図000004
  • 特許6953897-積層型電池 図000005
  • 特許6953897-積層型電池 図000006
  • 特許6953897-積層型電池 図000007
  • 特許6953897-積層型電池 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953897
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】積層型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/54 20210101AFI20211018BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20211018BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20211018BHJP
   H01M 50/55 20210101ALN20211018BHJP
   H01M 50/119 20210101ALN20211018BHJP
【FI】
   H01M50/54
   H01M50/548 301
   H01M50/105
   !H01M50/55 301
   !H01M50/119
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-161028(P2017-161028)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2019-40723(P2019-40723A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】水口 雄二
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正博
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−111020(JP,A)
【文献】 特開2003−017132(JP,A)
【文献】 特開2007−026945(JP,A)
【文献】 特開2015−173064(JP,A)
【文献】 特開2003−229133(JP,A)
【文献】 特開2018−018663(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/138976(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/138977(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50〜50/598
H01M 50/00〜50/298
H01M 10/00〜10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極が複数積層された構造を有する積層型電池であって、
前記正極および前記負極のうちの一方の電極である複数の第1の電極と、
前記正極および前記負極のうちの他方の電極である複数の第2の電極と、
全ての前記第1の電極と電気的に接続されている第1の端子と、
前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の引き出し部と、
全ての前記第2の電極と電気的に接続されている第2の端子と、
前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の引き出し部と、
前記複数の第1の電極のうちの一部の前記第1の電極同士を接続する第1の電極間接続部と、
を備え、
前記複数の第1の電極には、前記第1の引き出し部と接続されているものと、前記第1の引き出し部と接続されていないものがあり、
前記第1の電極間接続部は、前記第1の引き出し部と接続されていない前記第1の電極と、前記第1の引き出し部と電気的に接続されている他の前記第1の電極との間を接続しており、
複数の前記第1の引き出し部が前記第1の端子と接続されている、
ことを特徴とする積層型電池。
【請求項2】
前記第1の引き出し部と接続されていない前記第1の電極の数は、前記第1の引き出し部と接続されている前記第1の電極の数よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の積層型電池
【請求項3】
前記第1の引き出し部と、前記第1の電極間接続部は、前記第1の電極の同じ辺側に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型電池。
【請求項4】
前記第1の電極間接続部は、前記第1の電極のタブであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層型電池。
【請求項5】
前記第1の引き出し部と接続されている前記第1の電極の数と、前記第1の引き出し部と接続されていない前記第1の電極の数との差の絶対値は、1以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層型電池。
【請求項6】
前記複数の第2の電極には、前記第2の引き出し部と接続されているものと、前記第2の引き出し部と接続されていないものがあり、
前記第2の引き出し部と接続されていない前記第2の電極は、前記第2の引き出し部と電気的に接続されている他の前記第2の電極と接続されている、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極が交互に複数積層された構造を有する積層型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
正極と負極が交互に複数積層された構造を有する積層型電池が知られている。この積層型電池では、電池の外部に正極端子および負極端子が露出しており、全ての正極が正極端子と電気的に接続され、全ての負極が負極端子と電気的に接続されている。
【0003】
特許文献1には、全ての正極と正極端子との間を正極集電体により接続し、全ての負極と負極端子との間を負極集電体により接続した構造を有する積層型電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−257849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、積層型電池は、セパレータを介して積層された長尺状の正極と負極が巻回されている巻回型電池と比べて、内部抵抗が小さく、内部短絡時の発熱が大きい。内部短絡時の安全性を向上させるために、電極集電体の表面に設ける活物質層の厚さを厚くし、電極の積層枚数を減らす方法が考えられるが、活物質層を厚くするのには限界があり、また、電池の負荷特性が低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、電池の負荷特性の低下を抑制しつつ、内部短絡時の安全性を向上させることができる積層型電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層型電池は、
正極と負極が複数積層された構造を有する積層型電池であって、
前記正極および前記負極のうちの一方の電極である複数の第1の電極と、
前記正極および前記負極のうちの他方の電極である複数の第2の電極と、
全ての前記第1の電極と電気的に接続されている第1の端子と、
前記第1の電極と前記第1の端子との間を接続する第1の引き出し部と、
全ての前記第2の電極と電気的に接続されている第2の端子と、
前記第2の電極と前記第2の端子との間を接続する第2の引き出し部と、
前記複数の第1の電極のうちの一部の前記第1の電極同士を接続する第1の電極間接続部と、
を備え、
前記複数の第1の電極には、前記第1の引き出し部と接続されているものと、前記第1の引き出し部と接続されていないものがあり、
前記第1の電極間接続部は、前記第1の引き出し部と接続されていない前記第1の電極と、前記第1の引き出し部と電気的に接続されている他の前記第1の電極との間を接続しており、
複数の前記第1の引き出し部が前記第1の端子と接続されている、ことを特徴とする。
【0008】
前記第1の引き出し部と接続されていない前記第1の電極の数は、前記第1の引き出し部と接続されている前記第1の電極の数よりも多い構成としてもよい。
【0009】
また、前記第1の引き出し部と、前記第1の電極間接続部は、前記第1の電極の同じ辺側に位置していてもよい。
【0010】
また、前記第1の電極間接続部は、前記第1の電極のタブであってもよい。
【0011】
また、前記第1の引き出し部と接続されている前記第1の電極の数と、前記第1の引き出し部と接続されていない前記第1の電極の数との差の絶対値は、1以下としてもよい。
【0012】
前記複数の第2の電極には、前記第2の引き出し部と接続されているものと、前記第2の引き出し部と接続されていないものがあり、
前記第2の引き出し部と接続されていない前記第2の電極は、前記第2の引き出し部と電気的に接続されている他の前記第2の電極と接続されている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の引き出し部と接続されていない第1の電極は、第1の電極間接続部を介して接続されている他の第1の電極および第1の引き出し部を介して第1の端子と接続されているので、第1の端子との間の電流経路を長くすることができる。これにより、全ての第1の電極のそれぞれが第1の引き出し部を介して第1の端子と接続されている従来の積層型電池と比べて、内部抵抗を増大させることができるので、内部短絡時の安全性を向上させることができる。
【0014】
また、電池の反応抵抗は、全ての第1の電極のそれぞれが第1の引き出し部を介して第1の端子と接続されている従来の積層型電池と同じであるので、負荷特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態における積層型電池を構成する正極、負極およびセパレータの積層態様を示す断面図である。
図2】正極と正極端子との間における電気的な接続の方法を説明するための図である。
図3】正極引き出し部と第1の電極間接続部が正極の同一辺側に位置する場合の、接続箇所の一例を示す平面図である。
図4】正極と正極端子との間を電気的に接続するための他の接続例を示す参考図である。
図5】正極と正極端子との間を電気的に接続するための他の接続例を示す図である。
図6】正極と正極端子との間を電気的に接続するためのさらに他の接続例を示す図である。
図7】正極と正極端子との間を電気的に接続するためのさらに他の接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに具体的に説明する。
【0017】
本発明の積層型電池は、正極と負極が複数積層された構造を有する。この積層型電池は、正極および負極のうちの一方の電極である複数の第1の電極と、正極および負極のうちの他方の電極である複数の第2の電極と、全ての第1の電極と電気的に接続されている第1の端子と、第1の電極と第1の端子との間を接続する第1の引き出し部と、全ての第2の電極と電気的に接続されている第2の端子と、第2の電極と第2の端子との間を接続する第2の引き出し部と、を備える。複数の第1の電極には、第1の引き出し部と接続されているものと、第1の引き出し部と接続されていないものがあり、第1の引き出し部と接続されていない第1の電極は、第1の電極間接続部を介して、第1の引き出し部と電気的に接続されている他の第1の電極と接続されている。
【0018】
以下では、第1の電極が正極である例について説明する。ただし、後述するように、第1の電極は負極であってもよい。
【0019】
また、以下では、本発明の積層型電池の一例として、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。ただし、本発明による積層型電池がリチウムイオン二次電池に限定されることはない。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態における積層型電池100の断面図である。
【0021】
図1に示すように、積層型電池100は、正極11と負極12がセパレータ13を介して交互に複数積層されることによって形成されている積層体10と、非水電解質14とがラミネートケース20内に収容された構造を有している。
【0022】
正極11は、正極集電体と、正極集電体の両面に形成された正極合材層とを有する。正極集電体としては、例えば、アルミニウムなどの金属箔を用いることができる。正極合材層は、正極活物質を含み、さらに、バインダおよび導電助剤を含んでいてもよい。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウムを用いることができる。
【0023】
なお、積層方向の最も外側に位置する電極が正極11である場合、その外側に位置する正極11については、正極集電体の両面のうち、積層方向内側の面にだけ正極合材層が形成されている構造としてもよい。
【0024】
後述するように、全ての正極11は、正極端子16aと電気的に接続されている。なお、本実施形態における積層型電池100は、後述するように、正極11と正極端子16aとの電気的接続の態様に特徴を有しており、図1では、その電気的接続の態様を示すことは困難であることから、正極11と正極端子16aとの間を接続している正極引き出し部の図示は省略している。本実施形態における積層型電池100の正極11と正極端子16aとの電気的接続の態様については、積層型電池100の全体の説明を行った後に、図2図7を参照しつつ詳しく説明する。
【0025】
負極12は、負極集電体と、負極集電体の両面に形成された負極合材層とを有する。負極集電体としては、例えば、銅などの金属箔を用いることができる。負極合材層は、負極活物質を含み、さらに、バインダおよび導電助剤を含んでいてもよい。負極活物質としては、例えば、グラファイトを用いることができる。
【0026】
なお、積層方向の最も外側に位置する電極が負極12である場合、その外側に位置する負極12については、負極集電体の両面のうち、積層方向内側の面にだけ負極合材層が形成されている構造としてもよい。
【0027】
全ての負極12は、負極引き出し部15を介して、負極端子16bと電気的に接続されている。
【0028】
セパレータ13は、正極11と負極12との間に介在している。セパレータ13としては、積層型電池に使用可能な種々のセパレータを特に制約なく用いることができる。図1に示すセパレータ13はシート状の形状を有するが、袋状の形状を有するものであってもよいし、九十九折りの形状を有するものであってもよい。
【0029】
非水電解質14も積層型電池に使用可能なものであれば、どのようなものであってもよく、例えば、既知の非水電解液を用いることができる。非水電解質14として、固体電解質を用いてもよい。なお、非水電解質14として固体電解質を用いる場合、セパレータ13が不要になる場合もあり得る。
【0030】
外装体であるラミネートケース20は、一対のラミネートフィルム20aおよび20bの周縁部同士を熱圧着して接合することにより形成されている。
【0031】
本実施形態における積層型電池100は、積層体10を構成する複数の正極11には、正極引き出し部31(図2参照)を介して正極端子16aと接続されている正極11aと、正極引き出し部31と接続されていない正極11bが含まれている。なお、ここでは、正極引き出し部31が上述した第1の引き出し部に対応する。
【0032】
図2は、正極11と正極端子16aとの間の電気的な接続方法を説明するための図である。なお、図2では、視認性の観点から、負極12、セパレータ13およびラミネートケース20などは省略している。
【0033】
図2に示すように、本実施形態における積層型電池100では、積層されている複数の正極11のうち、一部の正極11aだけが正極引き出し部31を介して、正極端子16aと接続されている。
【0034】
図2に示す例では、積層方向に並ぶ複数の正極11のうち、1つおきに位置する正極11aが正極引き出し部31と接続されており、正極11aの間に、正極引き出し部31と接続されていない正極11bが位置している。正極引き出し部31と接続されていない正極11bは、第1の電極間接続部32を介して、隣接する正極11aと接続されている。これにより、正極11bは、正極11aおよび正極引き出し部31を介して、正極端子16aと電気的に接続されている。
【0035】
図2に示す例では、正極引き出し部31は、積層体10の長手方向の一辺10a側で、正極11aと接続されている。また、正極引き出し部31と接続されていない正極11bは、積層体10の長手方向の一辺10aと対向する他辺10b側で、正極11aと接続されている。
【0036】
正極引き出し部31と正極11aとの間、および、正極引き出し部31と正極端子16aとの間は、どのような接続方法を用いて接続されていてもよく、例えば、超音波を用いた超音波接合、レーザ光を用いたレーザ接合、カシメなどを用いて接続することができる。正極引き出し部31は、正極11aのタブと接続されていてもよいし、正極11aの本体部と接続されていてもよい。
【0037】
本実施形態では、第1の電極間接続部32は、正極11aのタブおよび正極11bのタブである。すなわち、正極11aと正極11bとの間は、正極11aのタブと正極11bのタブとが接続されることによって形成された第1の電極間接続部32を介して接続されている。第1の電極間接続部32を正極11のタブにより構成することにより、別の部材を用いる必要がないので、コストを低減することができる。
【0038】
第1の電極間接続部32を構成する正極11aのタブと正極11bのタブとの間は、どのような接続方法を用いて接続されていてもよく、例えば、超音波を用いた超音波接合、レーザ光を用いたレーザ接合、カシメなどを用いて接続することができる。
【0039】
なお、正極11aと正極11bとの間の接続が正極タブ同士の接続に限定されることはなく、例えば、正極集電体同士を接続するようにしてもよいし、別の部材を用いて接続してもよい。
【0040】
また、正極11aと正極11bとの間を接続する第1の電極間接続部32は、正極引き出し部31が正極11aと接続されている側、すなわち、積層体10の長手方向の一辺10a側に位置していてもよい。第1の電極間接続部32と、正極引き出し部31を積層体10の同じ辺側に設けることにより、異なる辺にそれぞれ設けられている構成と比べて、積層型電池100を小型化することができる。
【0041】
図3は、正極引き出し部31と第1の電極間接続部32が積層体10の一辺10a側に位置する場合の、接続箇所の一例を示す平面図である。ただし、図3では、正極引き出し部31は、正極11aのタブ111と接続されている構成を示している。
【0042】
すなわち、正極11aは、同一辺側に突出したタブ111および112を備え、タブ111は、正極引き出し部31と接続され、タブ112は、第1の電極間接続部32の一部を構成する。
【0043】
このように、本実施形態における積層型電池100では、正極引き出し部31を介して正極端子16aと接続されている正極11aと、正極引き出し部31と接続されていない正極11bが存在する。正極引き出し部31と接続されていない正極11bは、正極引き出し部31と接続されている正極11aと接続されているので、正極11aおよび正極引き出し部31を介して正極端子16aと電気的に接続されることになる。これにより、電流経路が長くなるので、全ての正極がそれぞれ正極引き出し部を介して正極端子と接続されている従来の積層型電池と比べて、内部抵抗、より詳しくは、電子抵抗が増大し、内部短絡時の安全性が向上する。
【0044】
また、電池の反応抵抗やリチウムイオンの拡散移動抵抗などは、全ての正極が正極引き出し部を介して正極端子と接続されている従来の積層型電池と同じであるので、従来の積層型電池に対して、負荷特性の低下を抑制することができる。
【0045】
ここで、図2に示す構成では、正極引き出し部31と接続されている正極11aと、正極引き出し部31と接続されていない正極11bが積層方向に交互に配置されている。このため、正極引き出し部31と接続されている正極11aの数と、正極引き出し部31と接続されていない正極11bの数との差の絶対値は、1以下である。この構成によれば、内部短絡時の安全性の向上と、内部抵抗の増大の抑制とを実現することができる。
【0046】
すなわち、全ての正極が正極引き出し部を介して正極端子と接続されている従来の積層型電池を基準として、正極引き出し部と接続されていない正極の数を増やしていくと、電子抵抗の増大により、内部短絡時の安全性の向上度合いも大きくなっていく。このため、正極引き出し部31と接続されている正極11aの数と、正極引き出し部31と接続されていない正極11bの数との差の絶対値を、1以下とすることにより、内部短絡時の安全性の向上と、内部抵抗の増大の抑制とをバランスよく両立させることができる。
【0047】
参考例1>
図4は、正極11と正極端子16aとの間を電気的に接続するための他の接続例を示す参考図である。図4に示す構成でも、積層されている複数の正極11には、正極引き出し部31と接続されている正極11aと、正極引き出し部31と接続されていない正極11bが存在する。
【0048】
正極端子16aは、1つの正極引き出し部31を介して、1つの正極11a、より具体的には、積層方向の一番下に位置する正極11aと接続されている。この正極11aは、積層方向に隣接する、1つ上の層の正極11bと、第1の電極間接続部32を介して接続されている。
【0049】
正極引き出し部31と接続されていない正極11bはそれぞれ、第1の電極間接続部32を介して、隣接する他の正極11bと接続されている。より具体的には、積層方向に配置されている全ての正極11が直列接続されるような態様で、隣接する正極11b同士が接続されている。
【0050】
この図4に示す接続構造によれば、正極端子16aは、正極引き出し部31を介して、1つの正極11aとだけ接続されている。
【0051】
このように、正極引き出し部31と接続されている正極11aの数よりも、正極引き出し部31と接続されていない正極11bの数の方が多い構成とすることにより、より効果的に電子抵抗を増大させて、内部短絡時の安全性を向上させることができる。
【0052】
なお、積層型電池では、最外層の電極において、電極の反りの発生を抑制するために、電極合材層の厚さを厚くする構成が考えられる。そのような構成において、他の電極と比べて、最外層の電極に大きい電流が流れることを抑制するために、図4に示すような接続構造として、最外層の電極の抵抗を増大させるようにしてもよい。
【0053】
<変形例
図5は、正極11と正極端子16aとの間を電気的に接続するための他の接続例を示す図である。図5に示す構成でも、積層されている複数の正極11には、正極引き出し部31と接続されている正極11aと、正極引き出し部31と接続されていない正極11bが存在する。
【0054】
図5に示す構成では、積層方向に連続して並ぶ3つの正極11のうち、2つの正極11aが正極引き出し部31と接続されており、残りの1つの正極11bが正極引き出し部31と接続されていない。この正極11bは、上記2つの正極11aのうちの一方と、第1の電極間接続部32を介して接続されている。
【0055】
この図5に示す接続構造でも、全ての正極がそれぞれ正極引き出し部を介して正極端子と接続されている従来の積層型電池と比べて、電子抵抗が増大し、内部短絡時の安全性が向上する。
【0056】
<変形例
図6は、正極11と正極端子16aとの間を電気的に接続するためのさらに他の接続例を示す図である。図6に示す構成でも、積層されている複数の正極11には、正極引き出し部31と接続されている正極11aと、正極引き出し部31と接続されていない正極11bが存在する。
【0057】
図6に示す構成では、1つの正極11bだけが正極引き出し部31と接続されておらず、他の全ての正極11aは、正極引き出し部31とそれぞれ接続されている。この正極11bは、全ての正極11の中で、積層方向の一番上に位置しており、積層方向の一番下に位置している正極11aと、第1の電極間接続部32を介して接続されている。
【0058】
この図6に示す構成でも、全ての正極が正極引き出し部を介して正極端子と接続されている従来の積層型電池と比べて、電子抵抗が増大し、内部短絡時の安全性が向上する。
【0059】
<変形例
図7は、正極11と正極端子16aとの間を電気的に接続するためのさらに他の接続例を示す図である。図7に示す構成でも、積層されている複数の正極11には、正極引き出し部31と接続されている正極11aと、正極引き出し部31と接続されていない正極11bが存在する。
【0060】
図7に示す構成では、積層方向に連続して並ぶ3つの正極11のうち、1つの正極11aが正極引き出し部31と接続されており、残りの2つの正極11bが正極引き出し部31と接続されていない。この2つの正極11bは、上記正極11aと、第1の電極間接続部32を介してそれぞれ接続されている。この場合、第1の電極間接続部32は、正極11aのタブおよび2つの正極11bのタブにより構成される。
【0061】
なお、図7では、第1の電極間接続部32によって3枚の正極が接続され、その3枚のうちの1枚の正極11aが正極引き出し部31と接続されているが、第1の電極間接続部32によって4枚以上の正極が接続され、その4枚以上の正極のうちの1枚の正極11aが正極引き出し部31と接続される構成としてもよい。
【0062】
このように、本発明の積層型電池100によれば、正極引き出し部31と接続する正極11aの数を調整することによって、低抵抗性と内部短絡時の安全性のバランスを調整することができる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0064】
例えば、上述した実施形態の積層型電池100では、積層されている複数の正極11のうち、一部の正極11aだけが正極引き出し部31と接続されており、かつ、全ての負極12が負極引き出し部15とそれぞれ接続されている構成であったが、正極と負極の構成を逆にしてもよい。
【0065】
すなわち、積層されている複数の負極12のうち、一部の負極だけが負極引き出し部15と接続されており、全ての正極11が正極引き出し部31とそれぞれ接続されている構成としてもよい。この場合、負極引き出し部15と接続されていない負極は、第2の電極間接続部を介して、負極引き出し部15と電気的に接続されている他の負極と接続されている構成とする。第2の電極間接続部は、例えば、負極のタブにより構成することができるが、負極集電体により構成してもよいし、別の部材を用いてもよい。
【0066】
例えば、正極11と比べて負極12の方が抵抗が低く、負極12の抵抗を増大させたいという要求がある場合には、上述したように、積層されている複数の負極12のうち、一部の負極だけが負極引き出し部15と接続される構成とすることができる。
【0067】
一方、積層型電池100がリチウムイオン二次電池の場合において、負極におけるリチウムの析出を抑制するという観点からは、負極12側ではなく、正極11側の抵抗を増大させるような構成とすることが好ましい。
【0068】
また、積層されている複数の正極11のうち、一部の正極11aだけが正極引き出し部31と接続されており、かつ、積層されている複数の負極12のうち、一部の負極だけが負極引き出し部15と接続されている構成としてもよい。この場合も、正極引き出し部31と接続されていない正極11bは、第1の電極間接続部32を介して、正極引き出し部31と電気的に接続されている他の正極と接続されており、負極引き出し部15と接続されていない負極は、第2の電極間接続部を介して、負極引き出し部15と電気的に接続されている他の負極と接続されている構成とすればよい。
【0069】
正極引き出し部31が一部の正極11aとだけ接続されている場合、正極引き出し部31と接続されている正極11aは、複数の正極11のうちの任意の正極とすることができる。同様に、負極引き出し部15が一部の負極とだけ接続されている場合、負極引き出し部15と接続されている負極は、複数の負極12のうちの任意の負極とすることができる。
【0070】
外装体は、ラミネートケースに限定されることはなく、金属缶であってもよい。
【0071】
図1に示す構成では、負極端子16bは、ラミネートケース20から、正極端子16aと反対側に突出しているが、正極端子16aと同じ側に突出する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 積層体
11 正極
11a 正極引き出し部と接続されている正極
11b 正極引き出し部と接続されていない正極
12 負極
13 セパレータ
14 非水電解質
15 負極引き出し部
16a 正極端子
16b 負極端子
20 ラミネートケース
31 正極引き出し部
32 第1の電極間接続部
100 積層型電池
111 正極引き出し部と接続される正極タブ
112 第1の電極間接続部の一部を構成する正極タブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7