特許第6953913号(P6953913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953913
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】補機支持ブラケット
(51)【国際特許分類】
   F02B 67/06 20060101AFI20211018BHJP
【FI】
   F02B67/06 F
   F02B67/06 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-166703(P2017-166703)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-44651(P2019-44651A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】酒井 富巳也
(72)【発明者】
【氏名】小峯 捺貴
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−132846(JP,U)
【文献】 実公平08−005312(JP,Y2)
【文献】 特開2017−096476(JP,A)
【文献】 特開2017−067130(JP,A)
【文献】 特開2015−013516(JP,A)
【文献】 特開2013−108633(JP,A)
【文献】 特開2005−009349(JP,A)
【文献】 特開2005−255110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に補機を固定するための補機支持ブラケットであって、
前記内燃機関の本体側面に対して、当該本体側面と交差する方向に沿う軸線を有するベース固定部材を介して固定されるベースブラケットと、
前記補機を着脱可能に支持するとともに前記ベースブラケットに対して、前記本体側面と沿う方向の軸線を有するブラケット固定部材を介して固定される補機ブラケットと、を備え
前記補機は、前記内燃機関の本体前面又は本体背面に位置して前記内燃機関で生成した駆動力をクランクシャフトに固定した駆動プーリから動力伝達を受ける従動プーリを前記本体前面又は前記本体側面から突出した状態で備え、
前記補機支持ブラケット又は前記ベースブラケットは、前記本体前面又は前記本体背面に対して当該本体前面又は本体背面と交差する方向に沿う軸線を有するサブ固定部材を介して固定されるサブブラケットを備え
補機支持ブラケット。
【請求項2】
前記ブラケット固定部材は、
前記本体側面と前記補機との間において、前記本体側面に沿う方向から挿入される工具によって前記ベースブラケットに前記補機ブラケットを固定する
請求項1に記載の補機支持ブラケット。
【請求項3】
前記補機ブラケットは、
前記補機の前記本体側面側の面を支持する第1支持面と、
前記補機の底面を支持する第2支持面と、を一体に備え、
前記補機は、前記補機ブラケットの少なくとも前記第1支持面に対して、前記第1支持面の背面側から前記本体側面と交差する方向に沿う軸線を有する補機固定部材を介して予め固定されている
請求項1又は2に記載の補機支持ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の内燃機関で生成した駆動力を利用して稼働する補機を支持するための補機支持ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用の内燃機関(以下、単に「エンジン」と称する。)は、エンジン本体に組み付けてユニット化される補機を有している。
【0003】
また、このような補機には、エンジン本体にブラケットを介して固定され、エンジンで生成した駆動力をクランクシャフトに固定した駆動プーリから伝達を受けて稼働するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に示す補機支持ブラケットは、上下2カ所をエンジン本体に固定するものであり、その2カ所のうちの一方をエンジン本体に直接固定するとともに、他方をブラケットを介して揺動可能にエンジン本体に固定したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−163011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような先行技術文献に開示の補機支持ブラケットにあっては、複雑な形状並びに多数の配管等が接続されているエンジン本体に対して、狭い固定スペースを有効利用して補機をエンジンに固定するには、工具を操作しての固定作業がボルトの軸線方向を基準としたのでは困難となる場合がある。
【0007】
本開示の技術は、上述のような課題を解決するために、狭い設置スペースに取り付ける場合であっても、工具を操作しての固定作業を容易に行うことができる補機支持ブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の技術は、上記目的を達成のため、内燃機関の本体側面に対して、当該本体側面と交差する方向に沿う軸線を有するベース固定部材を介して固定されるベースブラケットと、補機を着脱可能に支持するとともにベースブラケットに対して、本体側面と沿う方向の軸線を有するブラケット固定部材を介して固定される補機ブラケットとを備えるものである。
【0009】
また、ブラケット固定部材は、本体側面と補機との間において、本体側面に沿う方向から挿入される工具によってベースブラケットに補機ブラケットを固定するのが好ましい。
【0010】
また、補機ブラケットは、補機の本体側面側の面を支持する第1支持面と、補機の底面を支持する第2支持面と、を一体に備え、補機は、補機ブラケットの少なくとも第1支持面に対して、第1支持面の背面側から本体側面と交差する方向に沿う軸線を有する補機固定部材を介して予め固定されているのが好ましい。
【0011】
また、補機は、内燃機関の本体前面又は本体背面に位置して内燃機関で生成した駆動力をクランクシャフトに固定した駆動プーリから動力伝達を受ける従動プーリを本体前面又は本体側面から突出した状態で備え、補機支持ブラケット又はベースブラケットは、本体前面又は本体背面に対して当該本体前面又は本体背面と交差する方向に沿う軸線を有するサブ固定部材を介して固定されるサブブラケットを備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の技術によれば、狭い設置スペースに取り付ける場合であっても、工具を操作しての固定作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る補機支持ブラケットを適用した概略のエンジンの正面図である。
図2】本実施形態に係る補機支持ブラケットの背面図である。
図3】本実施形態に係る補機支持ブラケットにおける内面側の斜視図である。
図4】本実施形態に係る補機支持ブラケットにおける外面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る補機支持ブラケットについて車体前方側に縦置きしたエンジンに搭載した場合で説明する。なお、同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0015】
図1に示すように、車両用の内燃機関としてのエンジン10は、図示を略すシリンダブロック、シリンダヘッド、シリンダヘッドカバー、オイルパン等を含むエンジン本体11と、エンジン本体11の車両前方側に位置する本体前面11aにエンジン本体11を駆動源とする冷却ファン12と、シリンダヘッドに接続されたマニホールド等の配管13と、を備える。なお、上述した構成要素以外のエンジン10の基本構成の図示並びに説明は省略する。
【0016】
エンジン本体11の一方の本体側面11bには、配管13との間に位置するように、補機としての冷凍機14が補機支持ブラケット15を介して固定されている。
【0017】
冷凍機14は、エンジン本体11で生成した駆動力をクランクシャフト16に固定した駆動プーリ17から伝達を受けて稼働するように、無端ベルト18が掛け渡される従動プーリ19を備える。
【0018】
図2図4に示すように、補機支持ブラケット15は、ベースブラケット20と、補機ブラケットとしての冷凍機ブラケット30と、サブブラケットとしてのテンショナブラケット40と、を備える。
【0019】
ベースブラケット20は、例えば、金属製の鋳物から構成され、冷凍機ブラケット30を取り付けるための表面20aが略垂直な同一平面上に位置するように、裏面側に向かってエンジン本体11の本体側面11bの形状(例えば、段差等)に応じた厚さを有している。ベースブラケット20は、エンジン本体11の本体側面11bに対して、本体側面11bと交差する略水平方向に沿う軸線を有するベース固定部材としての長軸ボルト21を介して固定される。ベースブラケット20は、複数個所(例えば、2カ所)に上向きに開放した雌ねじ穴22を形成した略水平な上面20bを備える。
【0020】
冷凍機ブラケット30は、冷凍機14を着脱可能に支持するとともにベースブラケット20に対して、本体側面11bと沿う方向に軸線を有するブラケット固定部材としてのキャップボルト(六角穴付ボルト)31を介して固定される。
【0021】
具体的に、冷凍機ブラケット30は、ベースブラケット20に取り付けたときを基準として、本体側面11bに沿う第1支持面としての縦支持部32と、縦支持部32の下縁部に位置して本体側面11bから離反するよう水平方向に延びる第2支持面としての底支持部33と、縦支持部32の裏面側中途部に位置して本体側面11bに接近するよう水平方向に延びる庇部34と、縦支持部32の一方の側縁部付近の裏面側に位置してテンショナブラケット40を支持する支持部35と、を一体に備える。
【0022】
冷凍機ブラケット30は、庇部34の底面をベースブラケット20の上面20bに当接させるとともに庇部34に形成した貫通穴34aと雌ねじ穴22とを一致させ、貫通穴34aからキャップボルト31を相通して雌ねじ穴22にキャップボルト31を螺合させることでベースブラケット20に固定される。
【0023】
縦支持部32は、冷凍機14の縦壁面を支持するようになっており、冷凍機14を固定するための補機固定部材としての固定ボルト36が裏面側から貫通する貫通穴32aが所定複数個所に形成されている。なお、貫通穴32aは、必要に応じて冷凍機14の位置決め用に前後方向に長軸な長穴としてもよい。また、縦支持部32の裏面には、固定ボルト36の頭部並びに長軸ボルト21の頭部が位置するように裏面に開放する凹部32bが形成されている。
【0024】
底支持部33は、冷凍機14の底面を支持するようになっており、必要に応じて冷凍機14を固定ボルト(図示せず)によって固定している。底支持部33の底面には、冷凍機14の大きさやベースブラケット20の大きさ並びに本体側面11bの大きさ等に応じて本体側面11bと先端が螺合するように本体側面11bと交差する略水平方向に沿う軸線を有する長軸な補助ボルト37を支持するボルト支持部38を設けてもよい。この際、補助ボルト37は長軸であるため、ボルト支持部38と本体側面11bとの間に位置するスペーサ39を設けることも可能である。
【0025】
テンショナブラケット40は、冷凍機ブラケット30の支持部35に連結ボルト41を介して連結される。なお、テンショナブラケット40の組み付け順序は、エンジン本体11に対する冷凍機ブラケット30の組み付け前、或いは、組み付け後のどちらでもよい。テンショナブラケット40は、固定ボルト42を介してエンジン本体11の本体前面11aにも固定される。
【0026】
テンショナブラケット40には、上下方向に延びるガイド溝40aが形成されている。テンショナブラケット40には、ガイド溝40aに沿うガイドシャフト43の上端を支持する上端フランジ40bを形成している。ガイドシャフト43は、テンションプーリ44を回転可能に保持する軸部45を貫通している。
【0027】
これにより、テンショナブラケット40は、駆動プーリ17と従動プーリ19との間に掛け渡された無端ベルト18を緊張させるようにエンジン本体11に対して上下方向に位置調整可能にテンションプーリ44を保持している。テンショナブラケット40は、下端に向かうほど末広がりとされた扇形部40cを一体に形成している。この扇形部40cの下縁部付近には、ガイド溝40aと交差する方向に円弧状に延びるビード46が設けられている。
【0028】
ビード46は、テンションプーリ44とは逆側、すなわち、エンジン本体11に向かって突出しており、例えば、テンショナブラケット40にパンチ加工等で形成した凹部(凸部)でもよいし、別途の金属材料等を溶接固定したものでもよい。
【0029】
このような基本構成において、本実施の形態に係る補機支持ブラケット15は、狭い設置スペースに取り付ける場合であっても、工具を操作しての固定作業を容易に行うことを目的として、エンジン10の本体側面11bに対して、本体側面11bと交差する略水平方向に沿う軸線を有するベース固定部材としての長軸ボルト21を介して固定されるベースブラケット20と、冷凍機14を着脱可能に支持するとともにベースブラケット20に対して、本体側面11b(の縦壁面)と沿う方向に軸線を有するブラケット固定部材としてのキャップボルト(六角穴付ボルト)31を介して固定される冷凍機ブラケット30と、を備えるものである。
【0030】
次に、本実施の形態に係る補機支持ブラケット15をエンジン10に組み付ける手順を説明する。上記の構成において、補機支持ブラケット15は、本体側面11bに対して長軸ボルト21を介してベースブラケット20を固定する。
【0031】
一方、冷凍機14は、冷凍機ブラケット30の少なくとも縦支持部32に対して、縦支持部32の背面側から本体側面11bと交差する方向に沿う軸線を有する固定ボルト36を介して予め固定されている。これにより、狭い作業空間を利用して冷凍機14を冷凍機ブラケット30に固定する必要がない。
【0032】
このように、冷凍機14を予め取り付けた冷凍機ブラケット30は、ベースブラケット20にキャップボルト31を介して固定される。
【0033】
この際、本体側面11bと冷凍機14との間において、本体側面11bに沿う方向から挿入した工具(例えば、六角レンチ)によってキャップボルト31を螺合操作してベースブラケット20に冷凍機ブラケット30を固定する。これにより、比較的作業空間を確保し易い上方から六角レンチ等による軸線周りの回転操作という作業空間を必要としない操作によってキャップボルト31をベースブラケット20の雌ねじ穴22に螺合させることができるため、作業性を向上させることができる。
【0034】
一方、(補機支持ブラケット15又は)ベースブラケット20は、本体前面11a(又は本体背面)に対して本体前面11a(又は本体背面)と交差する方向に沿う軸線を有するサブ固定部材としての固定ボルト42を介して固定されるテンショナブラケット50を備える。これにより、従動プーリ19の回転に伴う冷凍機14からの振動をエンジン本体11の2面で吸収させることができる。
【0035】
このテンショナブラケット50は、冷凍機ブラケット30に予め連結ボルト41を介して固定し、冷凍機ブラケット30をエンジン本体11に固定する作業と並行して固定ボルト42を介してエンジン本体11に固定することができる。また、テンショナブラケット40は、冷凍機ブラケット30を冷凍機14と一緒にエンジン本体11に固定したうえで、連結ボルト41及び固定ボルト42により冷凍機ブラケット30及びエンジン本体11に固定してもよい。
【0036】
冷凍機14は、エンジン本体11の本体前面11a(又は本体背面)に位置してエンジン本体11で生成した駆動力をクランクシャフト16に固定した駆動プーリ17から動力伝達を受ける従動プーリ19を本体前面11a(又は本体側面11b)から突出した状態で備える。したがって、この従動プーリ19とテンションプーリ44とに無端ベルト18を掛け渡す。
【0037】
また、テンショナブラケット40は、テンションプーリ44を昇降可能に支持していることから、補機としての冷凍機14に駆動力を効率よく伝達することができる。
【0038】
この際、テンショナブラケット40には、冷凍機ブラケット30にテンショナブラケット40を連結するための連結ボルト41と、エンジン本体11にテンショナブラケット40を固定するための固定ボルト42と、の間に跨ってビード46を設けている。
【0039】
すなわち、テンションプーリ44の位置決めのための移動方向(昇降方向)と略交差する方向に円弧状に延びるビード46を設けることにより、テンションプーリ44から加わる荷重に対するテンショナブラケット40の耐荷重性を確保することができる。
【0040】
これにより、狭い設置スペースに冷凍機14を取り付ける場合であっても、無端ベルト18のテンションを容易に調整しつつテンショナブラケット40の強度を確保することができる。
【0041】
ところで、本発明の補機支持ブラケット15は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載した技術的範囲には、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
【0042】
例えば、補機支持ブラケット15は、テンショナブラケット40を連結ボルト41で連結した構成となっているが、これに限らず、例えば、一体成型品であってもよい。
【0043】
その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0044】
例えば、上記実施の形態では、本発明の補機支持ブラケット15で支持する補機を冷凍機14に適用したものを開示したが、例えば、エンジン10を作動させるためのオルタネータや各種ポンプ等のエンジン補機を支持する補機支持ブラケットの他、冷却ファンやエアコンコンプレッサ等のようにエンジン本体に組み付けられるとともに、エンジンで生成した駆動力をクランクシャフトに固定した駆動プーリから伝達を受けて稼働する車体装備品用補機を支持する補機支持ブラケットに適用することが可能である。
【0045】
また、エンジン10の配置は任意であり、例えば、車両前方側に横置きしたもの、或いは、車両後方側に前後逆幹で縦置きしたものでもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 エンジン(内燃機関)
11 エンジン本体
11a 本体前面
11b 本体側面
14 冷凍機(補機)
15 補機支持ブラケット
18 無端ベルト
20 ベースブラケット
21 長軸ボルト(ベース固定部材)
30 冷凍機ブラケット(補機ブラケット)
31 キャップボルト(ブラケット固定部材)
40 テンショナブラケット(サブブラケット)
40a ガイド溝
43 ガイドシャフト
44 テンションプーリ
46 ビード
図1
図2
図3
図4