特許第6953920号(P6953920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953920
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】磁気複合部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20211018BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20211018BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20211018BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20211018BHJP
   H02M 3/28 20060101ALN20211018BHJP
【FI】
   H01F30/10 A
   H01F27/24 E
   H01F27/24 H
   H01F27/28 K
   H01F30/10 D
   H01F37/00 A
   H01F37/00 D
   H01F37/00 M
   !H02M3/28 Y
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-170245(P2017-170245)
(22)【出願日】2017年9月5日
(65)【公開番号】特開2019-47018(P2019-47018A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 貴規
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−231585(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0063065(US,A1)
【文献】 特開平02−220419(JP,A)
【文献】 特開2017−073418(JP,A)
【文献】 特開2009−123935(JP,A)
【文献】 特開2016−031963(JP,A)
【文献】 Bo Yang, Rengang Chen, Fred C. Lee ,Integrated Mgnetic for LLC Resonant Converter,APEC. Seventeennth Annual IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition,2002年03月14日,pp.346-351
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/28
H01F 27/24
H01F 37/00
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平板状コア(4)と、
前記第1平板状コアと対向するように配設された第2平板状コア(5)と、
前記2つの平板状コアの間に間隔をあけて1列に配設された4個の柱状コア(6、7、8、9)と、
前記4個の柱状コアの中の一端から2番目の柱状コアと4番目の柱状コアとに巻回された1次巻線(12)と、
前記2番目の柱状コアに巻回された2次巻線(13)と、
を備え、
前記4個の柱状コアの中の一端から1番目の柱状コア及び3番目の柱状コアの磁気抵抗が、他の柱状コア及び前記2つの平板状コアの磁気抵抗よりも小さくなるように構成した磁気複合部品。
【請求項2】
前記4番目の柱状コアに設けられたエアギャップ(9a)を備えた請求項1記載の磁気複合部品。
【請求項3】
前記1番目の柱状コア及び前記3番目の柱状コアは、透磁率が高い磁性材料で構成されている請求項1または2記載の磁気複合部品。
【請求項4】
前記1番目の柱状コア及び前記3番目の柱状コアの断面積は、他の柱状コア及び前記平板状コアの断面積よりも大きくなるように構成されている請求項1または2記載の磁気複合部品。
【請求項5】
前記1次巻線及び前記2次巻線は、プリント配線基板の導体パターンで構成されている請求項1から4のいずれか一項記載の磁気複合部品。
【請求項6】
第1平板状コア(4)と、
前記第1平板状コアと対向するように配設された第2平板状コア(5)と、
前記2つの平板状コアの間に間隔をあけて1列に配設された4個の柱状コア(25、26、27、28もしくは62)とを備え、
前記4個の柱状コアの中の一端から1番目の柱状コア及び3番目の柱状コアの磁気抵抗が他の柱状コア及び前記平板状コアの磁気抵抗よりも小さくなるように構成し、
前記4個の柱状コアの中の一端から2番目の柱状コアと4番目の柱状コアに巻回され、プリント配線基板(17)の導体パターン(54、55、58もしくは54、58、63、65、69、71もしくは74、75、78)で構成された1次巻線と、
前記2番目の柱状コアに巻回され、前記プリント配線基板の導体パターン(51、60)で構成された2次巻線とを備えた磁気複合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気複合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
フルブリッジDC/DCコンバータは、ゼロボルトスイッチング(以下、ZVSと称す)することで、スイッチング損失を小さくすることができる。ZVSは、トランスの漏れインダクタンスに蓄えられたエネルギによって、トランスの1次側のスイッチング素子の出力容量を充放電することにより成立する。ここで、漏れインダクタンスが小さいと、蓄えられるエネルギが小さくなるため、ZVSを実行することができない。そのため、フルブリッジDC/DCコンバータに使用するトランスは、漏れインダクタンスをある程度大きくしておく必要がある。
【0003】
漏れインダクタンスを大きくする対策としては、漏れインダクタンス自体を大きくする(即ち、結合係数を小さくする)方法と、トランスの外部にリアクトルを設けるという方法がある。漏れインダクタンスを設計する方法は困難であり、所望のインダクタンス値を得ることは難しい。
【0004】
一方、トランスの外部にリアクトルを設ける構成の場合には、トランスとリアクトルの2個の磁気部品が必要になるため、全体の構成が大きくなると共に、部品点数が多くなるという不具合がある。これに対して、特許文献1には記載された構成では、トランスのコアとリアクトルのコアを一体化することにより、小型化し、また、部品点数を少なくするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−17978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成の場合、コアは、平板状のコアの上面に2個のE型のコアを載置固定して構成されている。この構成においては、コアの構造が複雑である、例えばコアの脚部の個数が多いという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、トランスと直列にリアクトルを配置する構造であって、全体の構成を小形化することができる磁気複合部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、第1平板状コア4と、前記第1平板状コア4と対向するように配設された第2平板状コア5と、前記2つの平板状コア4、5の間に間隔をあけて1列に配設された4個の柱状コア6、7、8、9と、前記4個の柱状コア6、7、8、9の中の一端から2番目の柱状コア7と4番目の柱状コア9とに巻回された1次巻線12と、前記2番目の柱状コア7に巻回された2次巻線13とを備え、前記4個の柱状コア6、7、8、9の中の一端から1番目の柱状コア6及び3番目の柱状コア8の磁気抵抗が、他の柱状コア7、9及び前記2つの平板状コア4、5の磁気抵抗よりも小さくなるように構成したものである。
【0009】
請求項6の発明は、第1平板状コア4と、前記第1平板状コア4と対向するように配設された第2平板状コア5と、前記2つの平板状コア4、5の間に間隔をあけて1列に配設された4個の柱状コア25、26、27、28もしくは62とを備え、前記4個の柱状コア25、26、27、28もしくは62の中の一端から1番目の柱状コア25及び3番目の柱状コア27の磁気抵抗が他の柱状コア26、28もしくは62及び前記平板状コア4、5の磁気抵抗よりも小さくなるように構成し、前記4個の柱状コア25、26、27、28もしくは62の中の一端から2番目の柱状コア26と4番目の柱状コア28もしくは62に巻回され、プリント配線基板17の導体パターン54、55、58もしくは54、58、63、65、69、71もしくは74、75、78で構成された1次巻線12と、前記2番目の柱状コア26に巻回され、前記プリント配線基板17の導体パターン51、60で構成された2次巻線13とを備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態を示す磁気複合部品の側面図
図2】コアの上面図
図3】コアの分解側面図
図4】磁束の流れを示す磁気複合部品の側面図
図5】磁気複合部品の側面図
図6】磁気複合部品の磁気抵抗の等価回路図
図7】Rf/RAと3番目の柱状コア7に流れる磁束の割合との関係を示す特性図
図8】フルブリッジDC/DCコンバータの回路図
図9】第2実施形態を示す磁気複合部品の側面図
図10】第3実施形態を示す磁気複合部品の側面図
図11】第4実施形態を示すプリント配線基板の第1の配線層を示す図
図12】プリント配線基板の第2の配線層を示す図
図13】プリント配線基板の第3の配線層を示す図
図14】プリント配線基板の第4の配線層を示す図
図15】磁気複合部品の分解斜視図
図16】磁気複合部品の分解正面図
図17】磁気複合部品の分解側面図
図18】フルブリッジDC/DCコンバータの回路図
図19】第5実施形態を示す磁気複合部品の側面図
図20】磁気複合部品の分解斜視図
図21】磁気複合部品の分解正面図
図22】磁気複合部品の分解側面図
図23】プリント配線基板の第1の配線層を示す図
図24】プリント配線基板の第2の配線層を示す図
図25】プリント配線基板の第3の配線層を示す図
図26】プリント配線基板の第4の配線層を示す図
図27】第6実施形態を示す磁気複合部品の側面図
図28】プリント配線基板の第1の配線層を示す図
図29】プリント配線基板の第2の配線層を示す図
図30】プリント配線基板の第3の配線層を示す図
図31】プリント配線基板の第4の配線層を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、図1ないし図8を参照して説明する。本実施形態の磁気複合部品は、例えばDC/DCコンバータに用いられる磁気部品であり、トランスにリアクトルを一体化した構成のものである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の磁気複合部品1は、コア2と、コア2に巻回された巻線3とから構成されている。コア2は、磁性材料例えば、積層鉄心、フェライト、パーマロイ、圧粉鉄心等で構成されている。コア2は、図1及び図2に示すように、第1平板状コア4と、この第1平板状コア4と対向するように配設された第2平板状コア5と、2つの平板状コア4、5の間に間隔をあけて1列に配設された4個の柱状コア6、7、8、9とを備えている。
【0013】
柱状コア6、7、8、9は、断面形状が例えば長方形の四角柱状に形成されており、その幅寸法dは、2つの平板状コア4、5の幅寸法dと同じになるように構成されている。また、図3に示すように、コア2は、全体を上下2つに分割した上部分割コア10と、下部分割コア11とから構成されている。この構成の場合、上部分割コア10の柱状コア6、7、8、9の下端部と、下部分割コア11の柱状コア6、7、8、9の上端部とを当接させて例えば接着、ロウ付け、ねじ止め等により接合することにより、コア2を形成している。
【0014】
そして、本実施形態では、4個の柱状コア6、7、8、9の中の一端例えば左端から1番目の柱状コア6及び3番目の柱状コア8の磁気抵抗が、他の柱状コア7、9及び2つの平板状コア4、5の磁気抵抗よりも小さくなるように構成した。本実施形態の場合、1番目の柱状コア6及び3番目の柱状コア8を透磁率が高い磁性材料(例えばMn−Zn系フェライト(初透磁率が300H/m程度のものが知られている))で構成し、他の柱状コア7、9及び2つの平板状コア4、5を透磁率が低い磁性材料(例えばNi−Zn系フェライト(初透磁率が300H/m程度のものが知られている))で構成する。これによって、1番目の柱状コア6及び3番目の柱状コア8の磁気抵抗が、他の柱状コア7、9及び2つの平板状コア4、5の磁気抵抗よりも十分小さい値、例えば1/10以下の値となるように構成されている。
【0015】
また、巻線3は、1次巻線12と、2次巻線13とを有する。1次巻線12は、コア2の2番目の柱状コア7と4番目の柱状コア9とに巻回されている。2次巻線13は、コア2の2番目の柱状コア7に巻回されている。
【0016】
上記した構成の磁気複合部品1においては、1、2、3番目の柱状コア6、7、8と、2つの平板状コア4、5と、2番目の柱状コア7に巻回された1次巻線12及び2次巻線13とから、トランス14が構成されている。また、3、4番目の柱状コア8、9と、2つの平板状コア4、5と、4番目の柱状コア9に巻回された1次巻線12とから、リアクトル15が構成されている。
【0017】
次に、図4を参照して、本実施形態の磁気複合部品1における磁束の流れについて説明する。トランス14の磁束の流れを、破線Pの矢印で示す。そして、リアクトル15の磁束の流れを、2点鎖線Qの矢印で示す。
【0018】
トランス14においては、2番目の柱状コア7に巻いた1次巻線12に電流が流れると、2番目の柱状コア7から1番目の柱状コア6と3番目の柱状コア8とに磁束が流れる。この場合、4番目の柱状コア9は磁気抵抗が高いため、トランス14からの磁束は流れないと仮定することが可能である。そして、2番目の柱状コア7に巻いた2次巻線13に、1次巻線12で発生した磁束が鎖交して励磁される。
【0019】
また、リアクトル15においては、4番目の柱状コア9に巻かれた1次巻線12から磁束が発生する。この磁束は、4番目の柱状コア9から3番目の柱状コア8を通り、4番目の柱状コア9に戻る。この場合、3番目の柱状コア8の磁気抵抗が、平板状コア4、5の磁気抵抗より十分低いため、リアクトル15の磁束は、1番目の柱状コア6及び2番目の柱状コア7にはほとんど流れない。
【0020】
このため、トランス14を構成する柱状コア6、7、8に流れる磁束と、リアクトル15を構成する柱状コア8、9に流れる磁束は、互いに打ち消し合うことがない。従って、本実施形態の磁気複合部品1においては、トランス14とリアクトル15をそれぞれ構成することが可能となる。これにより、リアクトルとトランスとで別々のコアを設けることで大型化していた従来構成に比べて、本実施形態の磁気複合部品1では、コア2、特には、柱状コア6、7、8、9の個数を少なくすることができるので、磁気複合部品1全体の構成を小型化することが可能である。
【0021】
また、本実施形態の磁気複合部品1のコア2の各部分の磁気抵抗を、図5に示すように定義すると、磁気複合部品1の磁気抵抗の等価回路は、図6に示すような回路となる。この図6の回路において、C端及びD端からみたトランス14の巻線を含む方向の合成抵抗をRAとしたときに、リアクトル15から発生した磁束の中から、3番目の柱状コア7(即ち、磁気抵抗Rfの柱状コア7)に流れる磁束の割合は、図7の特性図で表すことができる。
【0022】
図7において、横軸はRf/RAを示し、縦軸は3番目の柱状コア7に流れる磁束の割合を示す。この図7から、リアクトル15から発生した磁束のうちの9割以上の磁束が、3番目の柱状コア7(即ち、磁気抵抗Rfの柱状コア)に流れるようにするためには、Rf/RA が0.11以下となるように構成すればよい。
【0023】
また、図8は、本実施形態の磁気複合部品1を組み込んだフルブリッジDC/DCコンバータの一例の回路図である。このフルブリッジDC/DCコンバータにおいて、ゼロボルトスイッチング(即ち、ZVS)を実行することにより、スイッチング損失を小さくすることができる。
【0024】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には、同一符号を付している。この第2実施形態では、4番目の柱状コア9に、エアギャップ9aを設ける構成とした。これ以外の第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第2実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第2実施形態では、4番目の柱状コア9に、エアギャップ9aを設ける構成としたので、エアギャップ9aの幅寸法eの長さを変更することにより、リアクトル15のインダクタンスを容易に調整することができる。
【0025】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には、同一符号を付している。この第3実施形態では、2つの平板状コア4、5の中間部分、即ち、2番目の柱状コア7の端部と3番目の柱状コア8の端部との間の部分に、断面積を小さくするための溝16を形成するように構成した。これ以外の第3実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第3実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第3実施形態では、2つの平板状コア4、5の中間部分に溝16を形成して平板状コア4、5の断面積を小さくするように構成したので、平板状コア4、5の断面積を小さくした部分の磁気抵抗が大きくなる。このため、2つの平板状コア4、5の磁気抵抗が、1番目の柱状コア6及び3番目の柱状コア8の磁気抵抗よりも一層大きくなる。従って、リアクトル15の磁束が、2番目の柱状コア7へ向かうことを一層防止することができる。
【0026】
尚、上記各実施形態では、1番目の柱状コア6及び3番目の柱状コア8の磁気抵抗が、他の柱状コア7、9及び2つの平板状コア4、5の磁気抵抗よりも小さくなるように構成するに際して、1番目の柱状コア6及び3番目の柱状コア8を透磁率が高い磁性材料を使用するように構成したが、これに限られるものではなく、1番目の柱状コア6及び3番目の柱状コア8の断面積を、他の柱状コア7、9及び2つの平板状コア4、5の断面積よりも大きくするように構成しても良い。また、他の柱状コア7、9及び2つの平板状コア4、5の断面積を、1番目の柱状コア6及び3番目の柱状コア8の断面積よりも小さくするように構成しても良い。
【0027】
(第4実施形態)
図11ないし図18は、第4実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には、同一符号を付している。この第4実施形態では、磁気複合部品1の巻線3をプリント配線基板の導体パターン(例えば銅箔パターン)で構成した。
【0028】
具体的には、図11ないし図14に示すように、プリント配線基板17は、例えば多層基板で構成されており、4つの配線層18、19、20、21を有している。図11はプリント配線基板17の第1の配線層18を示し、図12はプリント配線基板17の第2の配線層19を示し、図13はプリント配線基板17の第3の配線層20を示し、図14はプリント配線基板17の第4の配線層21を示す。
【0029】
プリント配線基板17には、磁気複合部品1のコア2の柱状コア25、26、27、28(図15ないし図17参照)が挿入される開口部29、30、31、32が形成されている。図11ないし図17に示すように、柱状コア25の断面形状は、ほぼ長方形状で図11中の右辺部に円弧状部が形成されている。柱状コア26の断面形状は、円形である。柱状コア27の断面形状は、ほぼ長方形状で図11中の左辺部に円弧状部が形成されている。柱状コア28の断面形状は、正方形状である。プリント配線基板17の開口部29、30、31、32の形状は、コア2の柱状コア25、26、27、28の断面形状とほぼ同じ形状に形成されている。
【0030】
コア2は、図15ないし図17に示すように、全体を上下2つに分割した上部分割コア33と、下部分割コア34とから構成されている。コア2の分割面は、柱状コア25、26、27、28のほぼ中間部位としたが、これに限られるものではなく、柱状コア25、26、27、28の他の部位でも良い。また、4個の柱状コア25、26、27、28の中の一端から1番目の柱状コア25及び3番目の柱状コア27の磁気抵抗が他の柱状コア26、28及び平板状コア4、5の磁気抵抗よりも小さくなるように構成されている。
【0031】
第4実施形態の磁気複合部品1を組み込んだフルブリッジDC/DCコンバータの一例の回路図を、図18に示す。磁気複合部品1の巻線3の1次巻線12の両端は、コンバータの入力側のブリッジ接続された4個のトランジスタ41、42、43、44におけるトランジスタ41とトランジスタ43の接続点Aと、トランジスタ42とトランジスタ44の接続点Bとに接続されている。1次巻線12は、磁気複合部品1のトランス14の1次巻線を構成するトランス1次巻線部45と、磁気複合部品1のリアクトル15の巻線を構成するリアクトル巻線部46とを有する。
【0032】
また、磁気複合部品1の巻線3の2次巻線13の両端は、コンバータの出力側の2個のトランジスタ47、48におけるトランジスタ47のソースに接続された接続点Cと、トランジスタ48のソースに接続された接続点Dとに接続されている。2次巻線13は、磁気複合部品1のトランス14の2次巻線を構成しており、2つのトランス2次巻線部49、50を有する。2つのトランス2次巻線部49、50の中間接続点EがコンバータのグランドGNDに接続されている。
【0033】
また、図11に示すように、プリント配線基板17の第1の配線層18には、円形の開口部30、即ち、柱状コア26を巻回するように2次巻線13の一方のトランス2次巻線部49を構成する導体パターン51が形成されている。導体パターン51の一端は、接続点Cを構成するビア52、52に接続されている。導体パターン51の他端は、接続点Eを構成するビア53、53に接続されている。
【0034】
また、図12に示すように、プリント配線基板17の第2の配線層19には、円形の開口部30、即ち、柱状コア26を巻回するように1次巻線12のトランス1次巻線部45の半部を構成する導体パターン54が形成され、正方形の開口部32(即ち、柱状コア28)を巻回するように1次巻線12のリアクトル巻線部46を構成する導体パターン55が形成されている。導体パターン54の一端はビア56に接続され、導体パターン54の他端は導体パターン55の一端に連続するように接続されている。導体パターン55の他端は、接続点Aを構成するビア57に接続されている。
【0035】
また、図13に示すように、プリント配線基板17の第3の配線層20には、円形の開口部30、即ち、柱状コア26を巻回するように1次巻線12のトランス1次巻線部45の残りの半部を構成する導体パターン58が形成されている。導体パターン58の一端は、ビア56に接続され、導体パターン58の他端は、接続点Bを構成するビア59に接続されている。
【0036】
また、図14に示すように、プリント配線基板17の第4の配線層21には、円形の開口部30、即ち、柱状コア26を巻回するように2次巻線13の他方のトランス2次巻線部50を構成する導体パターン60が形成されている。導体パターン60の一端は、接続点Eを構成するビア53、53に接続されている。導体パターン60の他端は、接続点Dを構成するビア61、61に接続されている。
【0037】
上記したように、プリント配線基板17の4つの配線層18〜21に導体パターン51、54、55、58、60を形成することにより、1次巻線12が2番目の柱状コア26と4番目の柱状コア28とに巻回され、2次巻線13が2番目の柱状コア26に巻回される構成となっている。
【0038】
尚、上述した以外の第4実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第4実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第4実施形態によれば、磁気複合部品1の巻線3、即ち、1次巻線及び2次巻線を、プリント配線基板17の導体パターン51、54、55、58、60で構成したので、全体の構成を小形化することができる。
【0039】
(第5実施形態)
図19ないし図26は、第5実施形態を示すものである。尚、第4実施形態と同一構成には、同一符号を付している。第4実施形態では、4個の柱状コア25〜28をプリント配線基板17に貫通させるように構成したが、第5実施形態では、4番目の柱状コアについては、プリント配線基板17を貫通させないように構成した。
【0040】
具体的には、図19ないし図22に示すように、第5実施形態の4番目の柱状コア62は、上部分割コア33に設けられた上部柱状コア62aと、下部分割コア34に設けられた下部柱状コア62bとを有する。そして、上部柱状コア62aの下端部はプリント配線基板17の上面に近付くが接触しないように構成されていると共に、下部柱状コア62bの上端部はプリント配線基板17の下面に近付くが接触しないように構成されている。更に、プリント配線基板17における上部柱状コア62aの下端部と下部柱状コア62bの上端部との間の部分にリアクトル巻線部46が設けられている。
【0041】
この構成の場合、図23に示すように、プリント配線基板17の第1の配線層18には、3番目の柱状コア27用の開口部31に隣接するようにして、リアクトル巻線部46の一部を構成するほぼ矩形枠状をなす導体パターン63が形成されている。導体パターン63の一端は、ビア64に接続されている。導体パターン63の他端は、接続点Aを構成するビア57に接続されている。尚、プリント配線基板17の第1の配線層18の他の構成は、図11に示す第4実施形態の構成とほぼ同じである。
【0042】
また、図24に示すように、プリント配線基板17の第2の配線層19には、開口部31に隣接するようにして、リアクトル巻線部46の一部を構成するほぼ矩形枠状をなす導体パターン65が形成されている。導体パターン65の一端はビア66に接続され、導体パターン65の他端はビア64、即ち、導体パターン63の一端に接続されている。また、1次巻線12のトランス1次巻線部45の半部を構成する導体パターン54の一端はビア67に接続され、導体パターン54の他端はビア68に接続されている。尚、プリント配線基板17の第2の配線層19の他の構成は、図12に示す第4実施形態の構成とほぼ同じである。
【0043】
また、図25に示すように、プリント配線基板17の第3の配線層20には、開口部31に隣接するようにして、リアクトル巻線部46の一部を構成するほぼU字状をなす導体パターン69が形成されている。導体パターン69の一端は、ビア70に接続され、導体パターン69の他端は、ビア66、即ち、導体パターン65の一端に接続されている。また、導体パターン58の一端は、ビア67、即ち、導体パターン54の一端に接続され、導体パターン58の他端は、接続点Bを構成するビア59に接続されている。尚、プリント配線基板17の第3の配線層20の他の構成は、図13に示す第4実施形態の構成とほぼ同じである。
【0044】
また、図26に示すように、プリント配線基板17の第4の配線層21には、開口部31に隣接するようにして、リアクトル巻線部46の一部を構成するほぼ直線状の導体パターン71が形成されている。導体パターン71の一端は、ビア68、即ち、導体パターン54の他端に接続され、導体パターン69の他端は、ビア70、即ち、導体パターン69の一端に接続されている。尚、プリント配線基板17の第4の配線層21の他の構成は、図14に示す第4実施形態の構成とほぼ同じである。
【0045】
上記構成の場合、プリント配線基板17の4つの配線層18〜21に導体パターン63、65、69、71を形成することにより、これら導体パターン63、65、69、71から、渦巻き状に巻回されたリアクトル巻線部46を構成した。
【0046】
尚、上述した以外の第5実施形態の構成は、第4実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第5実施形態においても、第4実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第5実施形態によれば、4番目の柱状コア62について、プリント配線基板17を貫通させないように構成したので、柱状コア62の磁気抵抗を大きくすることができると共に、リアクトル巻線部46の巻線のターン数を多くする、即ち、ターン数を制御することが可能になる。
【0047】
(第6実施形態)
図27ないし図31は、第6実施形態を示すものである。尚、第5実施形態と同一構成には、同一符号を付している。第5実施形態においては、4番目の柱状コア62の上部柱状コア62aの下端部と下部柱状コア62bの上端部との間の部分に、渦巻き状に巻回されたリアクトル巻線部46を形成したが、これに代えて、第6実施形態では、図27及び図29に示すように、上部柱状コア62aの下端部と下部柱状コア62bの上端部との間の部分に、ほぼ直線状の導体パターン74を形成するように構成した。
【0048】
この構成の場合、図28に示すように、プリント配線基板17の第1の配線層18には、3番目の柱状コア27用の開口部31に隣接する部位には、何も形成されていない、即ち、第5実施形態の導体パターン63は形成されていない。尚、プリント配線基板17の第1の配線層18の他の構成は、図23に示す第5実施形態の構成とほぼ同じである。
【0049】
また、図29に示すように、プリント配線基板17の第2の配線層19には、開口部31に隣接するようにして、リアクトル巻線部46を構成するほぼコ字状をなす導体パターン74が形成されている。導体パターン74の一端は、1次巻線12のトランス1次巻線部45の半部を構成する導体パターン75の一端に連続的に接続され、導体パターン74の他端は、接続点Aを構成するビア57に接続されている。導体パターン74の中間部分の直線状部分が、上部柱状コア62aの下端部と下部柱状コア62bの上端部との間の部分に設けられる直線状の導体パターンを構成している。また、導体パターン75の他端は、ビア77に接続されている。尚、プリント配線基板17の第2の配線層19の他の構成は、図24に示す第5実施形態の構成とほぼ同じである。
【0050】
また、図30に示すように、プリント配線基板17の第3の配線層20には、開口部31に隣接する部位には、何も形成されていない、即ち、第5実施形態の導体パターン69は形成されていない。上記第3の配線層20には、トランス1次巻線部45の残りの半部を構成する導体パターン78が形成されている。導体パターン78の一端は、ビア77、即ち、導体パターン75の他端に接続されている、導体パターン78の他端は、接続点Bを構成するビア59に接続されている。尚、プリント配線基板17の第3の配線層20の他の構成は、図25に示す第5実施形態の構成とほぼ同じである。
【0051】
また、図31に示すように、プリント配線基板17の第4の配線層21には、開口部31に隣接する部位には、何も形成されていない、即ち、第5実施形態の導体パターン71は形成されていない。尚、プリント配線基板17の第4の配線層21の他の構成は、図26に示す第5実施形態の構成とほぼ同じである。
【0052】
上記構成の場合、プリント配線基板17の第2の配線層19に形成された導体パターン74、即ち、導体パターン74の中間部分の直線状部分が、リアクトル巻線部46を構成している。尚、上述した以外の第6実施形態の構成は、第5実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第6実施形態においても、第5実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。
【0053】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0054】
図面中、1は磁気複合部品、2はコア、3は巻線、4は第1平板状コア、5は第2平板状コア、6は柱状コア、7は柱状コア、8は柱状コア、9は柱状コア、10は上部分割コア、11は下部分割コア、12は1次巻線、13は2次巻線、14はトランス、15はリアクトル、16は溝、17はプリント配線基板、18は第1の配線層、19は第2の配線層、20は第3の配線層、21は第4の配線層、25、26、27、28は柱状コア、29、30、31、32は開口部、33は上部分割コア、34は下部分割コア、41、42、43、44はトランジスタ、45はトランス1次巻線部、46はリアクトル巻線部、47、48はトランジスタ、49、50はトランス2次巻線部、51は導体パターン、52はビア、53はビア、54は導体パターン、55は導体パターン、56はビア、57はビア、58は導体パターン、59はビア、60は導体パターン、61はビア、62は柱状コア、63は導体パターン、64はビア、65は導体パターン、66はビア、67はビア、68はビア、69は導体パターン、70はビア、71は導体パターン、73は導体パターン、74は導体パターン、75は導体パターン、77はビア、78は導体パターンである。
図1
図2
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図31