(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る車両の運転支援装置および運転支援方法について、いくつかの実施形態に基づいて以下説明する。
【0013】
第1の実施形態:
図1に示すように、第1の実施形態に係る運転支援装置10は、車両500に搭載されて用いられる。なお、車両500は、四輪以上の車両に限られず、二輪または三輪の車両であっても良い。運転支援装置10は、制御装置100、ミリ波レーダ21、カメラ24、車輪速度センサ25、回転角センサ26および照度センサ27を備えている。車両500は、操舵支援装置31、制動支援装置32、操舵装置42、車輪501、制動装置502、制動ライン503、ステアリングホイール504、フロントガラス510およびフロントバンパ520を備えている。車両500は、対象物を検出する検出部として、少なくとも、車両500の前進進路方向を撮像するカメラ24を備えていれば良く、カメラ24は単眼カメラまたはステレオカメラであって良い。車両500はさらに、カメラ24に加えて、ミリ波レーダ21を検出部として備え得る。本実施形態においては、単眼カメラであるカメラ24と、ミリ波レーダ21とを備える態様を例にとって説明する。
【0014】
ミリ波レーダ21は、ミリ波を射出し、対象物によって反射された反射波を受信することによって対象物の位置および距離を検出する検出器としてのセンサである。本実施形態では、ミリ波レーダ21は、複数、より具体的には3つ備えられており、フロントバンパ520の中央、フロントバンパ520の車両500の進行方向左側および右側に配置されている。各ミリ波レーダ21から出力される検出信号は、例えば、各ミリ波レーダ21が備える処理回路において受信波が処理された対象物の複数の代表位置を示す点列からなる信号であっても良く、検出対象物を表す複数の検出点の情報、例えば、位置情報としての(x、y、z)座標情報、自車両に対する検出点の相対速度情報、信号強度または受信電力、が含まれている。あるいは、各ミリ波レーダ21から出力される検出信号は、未処理の受信波を示す信号であっても良く、未処理の受信波が検出信号として用いられる場合には、制御装置100において対象物の位置および距離を特定するための信号処理が実行される。なお、車両500は、ミリ波レーダ21に代えて、あるいは、ミリ波レーダ21と共に、例えば、ライダー(LIDAR:レーザレーダ)や超音波センサを備えていても良い。
【0015】
カメラ24は、CCD等の撮像素子を1つまたは複数備える撮像装置であり、可視光を受光することによって対象物の外形情報を検出結果である画像データとして出力するセンサである。カメラ24から出力される画像データは、時系列的に連続する複数のフレーム画像によって構成されており、各フレーム画像は画素データにより表されている。カメラ24から取得される検出信号には、検出対象物を表す画像の情報、例えば、画像の画素位置情報としての(x、y、z)座標情報、各画素の輝度値が含まれている。本実施形態において、カメラ24はフロントガラス510の上部中央に配置されている。カメラ24から出力される画素データは、モノクロの画素データまたはカラーの画素データである。
【0016】
車両500の各車輪501には、それぞれ制動装置502が備えられている。各制動装置502は、ブレーキ液ラインおよび運転者の制動ペダル操作に応じてブレーキ液圧を発生させるブレーキピストンを含む制動ライン503を介して供給されるブレーキ液圧によって各車輪501の制動を実現する。制動ライン503には、ブレーキ液圧を発生させるアクチュエータを含む制動支援装置32が配置されており、制動ペダル操作とは独立して液圧制御が可能であり、これによりカメラ24および各ミリ波レーダ21による検出結果に応じた制動支援が実現される。なお、制動支援装置32のアクチュエータには、横滑り防止装置、アンチロックブレーキシステムとして既に導入されている制動制御アクチュエータが用いられても良い。制動支援装置32は、運転支援を実行する運転支援部に含まれる。
【0017】
ステアリングホイール504は、ステアリングロッドおよび操舵機構を含む操舵装置42を介して前側の車輪501と接続されている。操舵装置42には、アクチュエータ、例えば、電動モータにより操舵装置42を駆動可能な操舵支援装置31が配置されている。操舵支援装置31は、ステアリングホイール504の操作とは独立して操舵装置42の駆動制御が可能であり、これによりカメラ24および各ミリ波レーダ21による検出結果に応じた操舵支援が実現される。操舵支援装置31は、ステアリングホイール504による操舵力を軽減するためにも駆動制御される。操舵支援装置31は、運転支援を実行する運転支援部に含まれる。
【0018】
図2に示すように、制御装置100は、中央処理装置(CPU)101、メモリ102、入出力インタフェース103およびバス104を備えている。CPU101、メモリ102および入出力インタフェース103はバスを介して双方向通信可能に接続されている。メモリ102は、カメラ24および各ミリ波レーダ21による検出結果に応じて運転支援の設定内容を、対人支援設定または非対人支援設定のいずれかに決定し、決定された運転支援設定に従って運転支援部を制御する運転支援制御プログラムP1および予め設定された期間、維持される対人支援設定の維持レベルを低減する対人支援維持設定レベル低減プログラムP2を不揮発的且つ読み出し専用に格納するメモリ、例えばROMと、CPU101による読み書きが可能なメモリ、例えばRAMとを含んでいる。CPU101はメモリ102に格納されている運転支援制御プログラムP1を読み書き可能なメモリに展開して実行することによって運転支援制御部として機能し、同様に対人支援維持設定レベル低減プログラムP2を実行することによって対人支援維持設定レベル低減部として機能する。なお、本実施形態における制御装置100は、運転支援制御部および対人支援維持設定レベル低減部として機能する制御部と呼ぶことができる。
【0019】
入出力インタフェース103には、ミリ波レーダ21、カメラ24、車輪速度センサ25、回転角センサ26、照度センサ27、操舵支援装置31および制動支援装置32がそれぞれ信号線を介して接続されている。各ミリ波レーダ21、カメラ24、車輪速度センサ25、回転角センサ26および照度センサ27からは、入出力インタフェース103に対して検出信号が入力され、操舵支援装置31および制動支援装置32に対しては入出力インタフェース103から駆動制御信号が出力される。
【0020】
車輪速度センサ25は、車輪501の回転速度を検出するセンサであり、各車輪501に備えられている。車輪速度センサ25から出力される検出信号は、車輪速度に比例する電圧値または車輪速度に応じた間隔を示すパルス波である。
【0021】
回転角センサ26は、ステアリングホイール504の操舵によりステアリンロッドに生じるねじれ量、すなわち、操舵トルク、を検出するトルクセンサであり、ステアリングホイール504の操舵角を検出する。本実施形態において、回転角センサ26は、ステアリングホイール504と操舵機構とを接続するステアリングロッドに備えられている。回転角センサ26から出力される検出信号は、ねじれ量に比例する電圧値である。
【0022】
照度センサ27は、車両500の環境照度または環境光度を検出するセンサである。照度センサ27は、例えば、車両500のフロントガラス510またはダッシュボード上に配置されている。照度センサ27は、例えば、フォトダイオードといった光電変換素子であり、出力される検出信号は、照度に比例する電圧値である。
【0023】
図3〜
図6を参照して第1の実施形態に係る運転支援装置10によって実行される、運転支援制御処理およびについて説明する。
図3に示す処理ルーチンは、CPU101が運転支援制御プログラムP1および対人支援維持設定レベル低減プログラムP2を実行することによって、例えば、車両の制御システムの始動後、所定の時間間隔で実行される。なお、第1の実施形態において、パターンマッチングを伴う対象物の判別処理はカメラ24からの検出信号、すなわち、撮像画像を用いて実行され、また、少なくとも、対人支援維持設定レベル低減プログラムP2の実行時における、二輪車の存在有無の判定はカメラ24による検出信号のみを用いて実行される。
【0024】
CPU101は、各ミリ波レーダ21およびカメラ24から取得した検出信号を用いて対象物が検出されたか否かを判定する(ステップS100)。具体的には、CPU101は、検出信号を用いて自車両の前方走路上の予め定められた距離内に対象物が存在するか否かを判定する。予め定められた距離は、各ミリ波レーダ21の検出可能範囲であっても良く、あるいは、検出可能範囲よりも短い別途設定された距離であっても良い。対象物には、例えば、他車両、人、縁石、ガードレール、標識、看板といった自車両が走行する上で接触または衝突する可能性のある障害物が含まれる。
【0025】
CPU101は、対象物を検出した場合には(ステップS100:Yes)、対象物として人を検出したか否かを判定する(ステップS102)。具体的には、カメラ24によって得られた対象物の画像と、予め用意されている人判定用のパターン画像との類似度を求め、基準類似度以上の場合に対象物が人であると判定するパターンマッチング手法を用いて判定される。人判定用のパターン画像としては、特に、歩行している人、すなわち、歩行者のパターン画像が1または複数用意されている。
【0026】
CPU101は、対象物が人であると判定すると(ステップS102)、人検出フラグFpをオン、すなわち、Fp=1として(ステップS104)、運転支援の設定を対人支援設定に決定する(ステップS106)。第1の実施形態においては、運転支援の設定として、大きく分けて、対人支援設定および非対人支援設定の2パターンが用意されている。対人支援設定では、例えば、非対人支援設定の場合と比較して、制動支援や操舵支援を実行開始するタイミングが早く設定されていたり、制動支援における制動力や操舵支援における操舵角といった支援強度が大きくなるように設定されている。制動支援や操舵支援の実行タイミングは、例えば、基準となる衝突予測時間または衝突余裕時間(TTC)を長く設定することで実行開始タイミングが早く設定される。制動支援における制動力や操舵支援における操舵角といった支援強度は、操舵支援装置31および制動支援装置32におけるアクチュエータの動作量を大きくすることで大きく設定される。なお、対人支援設定および非対人支援設定は、それぞれ、メモリ102に格納され、自車両の運転状態や自車両の走行環境を示す複数のパラメータに応じて予め用意されている複数のマップから適宜選択され得る。また、対人支援設定および非対人支援設定は、自車両の運転状態や自車両の走行環境を示す複数のパラメータおよび予め用意された演算式を用いて動的に算出されても良い。
【0027】
CPU101は、対人支援設定に決定された運転支援設定に従い、検出された対象物に対応する運転支援処理の実行を開始して(ステップS122)、本処理ルーチンを終了する。なお、ステップS122にける運転支援処理の実行は、運転支援部としての制動支援装置32による制動支援の実行、または操舵支援装置31による操舵支援といった具体的な運転支援の実行のみならず、衝突可能性判定処理が含まれる。これら衝突可能性判定処理には、制御装置100によって実行される、自車両と検出された対象物との間における現衝突予測時間TTCの算出処理、現衝突予測時間TTCが基準衝突予測時間TTCb以下となったか否かの判定処理が含まれる。これら算出処理および判定処理の結果、現衝突予測時間TTCが基準衝突予測時間TTCb以下であると判定されると、制御装置100から制動支援装置32に対する制動支援の駆動制御信号または操舵支援装置31に対する操舵支援の駆動制御信号の送信が送信され、具体的な運転支援が実行される。また、運転支援には、制動支援や操舵支援に先だって実行される、すなわち、現衝突予測時間TTCが基準衝突予測時間TTCbよりも長い報知衝突予測時間TTCc以下となった際に実行される、音および表示の少なくともいずれか一方による報知も含まれる。表示は、計器盤上への表示、またはフロントガラス510等へのヘッドアップディスプレイによって実行される。運転支援処理は、
図3に示すフローが繰り返し実行されている間、追跡中の対象物が検出されなくなるまで継続的に実行される。
【0028】
CPU101は、各ミリ波レーダ21およびカメラ24から取得した検出信号を用いて対象物が検出されないと判定すると(ステップS100:No)、人検出フラグFp=1であるか否かを判定する(ステップS108)。すなわち、CPU101は、直前に検出された対象物が人であるか否かを判定する。CPU101は、Fp=1であり、直前まで人が検出されていたと判定すると(ステップS108:Yes)、人が検出された際に、検出された人の近傍に、人に類似する類似対象物としての二輪車が存在していたか否かを判定する(ステップS110)。二輪車には、自転車、オートバイが含まれる。類似対象物には、二輪車の他に、看板や標識といった縦長の対象物が含まれることがあり、この場合、判定用のパターン画像は各対象物に応じて用意される。二輪車存在の判定は、具体的には、カメラ24により撮像されメモリ102に格納されている、人の検出判定に用いられた画像、または、人の検出判定に用いられた画像よりも時間的に過去の画像と、二輪車判定用のパターン画像を用いて、人の近傍、すなわち人が検出された座標位置近傍に、二輪車が存在していたか否かが判定される。CPU101は、ステップS102において人に加えて二輪車の存在の有無をも判定し、その結果を二輪車検出フラグによりメモリ102に記憶していても良い。
図5の例では、撮像された画像中において二輪車MCが存在しており、二輪車MCが人PDとして検出される可能性があり、
図6の例では、撮像された画像中において人PDの近傍に二輪車MCは存在せず、人PDが正しく検出される。
【0029】
CPU101は、人の検出時に二輪車が存在しないと判定した場合には(ステップS110:No)、運転支援設定を対人支援維持設定に設定し(ステップS112)、ステップS122に移行する。対人支援維持設定は、対象物として人が検出された後に対象物が検出できない場合や、対象物としての人が検出された後に人が検出されない場合に、依然として人が存在するとして、対人支援設定による運転支援を維持するための設定である。対象物として人が検出された後に対象物が検出できない場合や、対象物としての人が検出された後に人が対象物として検出されない場合としては、例えば、逆光や駐車車両に人が隠れている場合が該当する。対人支援維持設定は、
図4に例示するように、予め定められた期間である維持期間Tm、例えば、1secにわたって対人支援設定において規定されている対人運転支援レベルを100%維持する設定である。ここで、対人運転支援レベルとは、制動支援の実行強度や実行タイミングや操舵支援の実行強度や実行タイミングを意味する。この結果、ステップS122における運転支援処理は、対人支援設定に従い実行される。
【0030】
CPU101は、人の検出時に二輪車が存在していると判定した場合には(ステップS110:Yes)、対人支援維持設定のレベルを低減し(ステップS114)、ステップS122に移行する。一般的に、カメラ24により撮像される人を示す画像と、二輪車を示す画像、特に、二輪車の正面または後面を示す画像とは近似しており、人判定用のパターン画像を用いて人の検出の有無が判定される場合、二輪車が人と誤判定されることがある。そこで、人が検出された際に、二輪車がその近傍に存在する場合には、対人支援維持設定のレベルを低減して、制動支援や操舵支援の過度な実行を抑制する。対人支援維持設定のレベルの低減としては、
図4に示すように、例えば、維持期間Tmを変更せず、時間経過と共に対人運転支援レベルを100%から0%への低減する態様(L1)、維持期間Tmを短縮、すなわち、時間T1<Tmのタイミングにて対人支援維持設定を解除する態様(L2)がある。対人運転支援レベルが100%から低減されるに連れて、制動支援や操舵支援の実行強度は低減され、また、制動支援や操舵支援の実行タイミングは遅延される。運転支援として、音および表示の少なくともいずれか一方による制動促進や操舵促進の報知が実行される場合には、音量や鳴動間隔の低減、表示照度や点滅頻度の低減により対人運転支援レベルが低減される。この結果、対象物が人でない場合と比較して高い運転支援の実行頻度や実行強度が抑制され、すなわち、運転支援の不要動作が抑制または防止され、運転者に与える違和感が軽減される一方、対象物が人でない場合の運転支援設定によって対象物との接触や衝突を回避または低減することができる。
【0031】
さらに、夜間や目標となる対象物の一部が他の対象物と被る場合には、対人運転支援レベルの低減の度合いを小さく、すなわち、低減を抑制または行わなくても良い。具体的には、時間T2までは100%の対人運転支援レベルを対人支援レベルに維持し、時間T2経過後に維持期間Tmに向かって対人運転支援レベルを0%まで低減する態様(L3)が取られても良い。夜間や目標となる対象物の一部が他の対象物と被る場合には、人の検出精度が低下することがあるので、100%の対人運転支援レベルを所定時間T2まで維持することによって他の条件下よりも可能性が高い人との接触の回避と、制動支援や操舵支援の過度な実行の抑制の両立が図られる。なお、夜間であるか否かは照度センサ27により得られる環境照度を用いて判定することが可能であり、目標となる対象物の一部が他の対象物と被るか否かはカメラ24や各ミリ波レーダ21によって得られる検出信号を用いて判定することが可能である。
【0032】
CPU101は、ステップS108において、人検出フラグFp=1でない、すなわち、直前に検出された対象物が人でないと判定した場合には(ステップS108:No)、運転支援の対象となる対象物が存在しないと判定し、運転支援処理を終了させて(ステップS124)、今回の処理を終了する。なお、次回、予め定められた時間間隔の経過後、本処理ルーチンが実行され、対象物が検出されると運転支援処理が開始される。
【0033】
CPU101は、ステップS102にて、対象物として人が検出されていないと判定すると(ステップS102:No)、直近に人を検出した時間からの経過時間Tpが基準時間Trを超えたか否かを判定する(ステップS116)。人が検出されない理由の1つは、車両500の前方走路上に人が存在しないことである。基準時間Trは、車両500の前方走路上に人が存在しないことを確定するための待機時間である。CPU101は、経過時間Tp>基準時間Trでないと判定すると(ステップS116:No)、矢印Aに移行し、ステップS110以降を実行する。すなわち、人の不存在が確定されていないので、人が検出された後に対象物としての人が検出されない場合に実行される対人支援維持設定の処理ルーチンを実行することによって、対人運転支援の実効性が図られる。
【0034】
CPU101は、CPU101は、経過時間Tp>基準時間Trであると判定すると(ステップS116:Yes)、人検出フラグFpをオフ、すなわち、Fp=0に設定し(ステップS118)、運転支援設定を非対人支援設定に設定する(ステップS120)。CPU101は、非対人支援設定にて運転支援処理を実行して(ステップS122)、本処理ルーチンを終了する。CPU101は、経過時間Tp経過後は、前方走路上に人は存在しないと判定してFp=0とし、運転支援の設定も、人を対象としない非対人支援設定に設定する。これにより、人を対象とする運転支援設定に伴う、高い運転支援の実行頻度や実行強度が抑制され、運転者に与える違和感が軽減され、また、他車両や他の障害物といった対象物との接触や衝突も回避または低減される。
【0035】
以上説明した、第1の実施形態に係る運転支援装置10によれば、検出された人が検出されなくなった後に対人支援設定を維持する際に、人が検出された際に人に類似する類似対象物が存在する場合には、対人支援設定の維持レベルが低減される。したがって、人が検出されなくなった後の人を対象とする運転支援設定が維持されている期間における運転支援の不要動作を抑制または防止することができる。より具体的には、制動支援や操舵支援の強度が低減され、また、制動支援や操舵支援の実行タイミングが遅延され、この結果、対象物が人でない場合と比較して高い運転支援の実行頻度や実行強度が抑制され、運転者に与える違和感が軽減される。また、抑制された実行頻度や実行強度での運転支援、あるいは、対象物が人でない場合の運転支援によって対象物との接触や衝突を回避または低減することができる。
【0036】
なお、第1の実施形態において、
図3に示す処理フローの内、ステップS108〜114は、対人支援設定維持レベル低減プログラムP2の実行により実現され、その他のステップは、運転支援制御プログラムP1の実行により実現される。また、ステップS104、S116およびS118は、対人支援設定維持レベルの低減を実現するために追加されたステップである。
【0037】
第1の実施形態において、ステップS108〜114、より具体的には、予め定められた期間にわたる対人支援設定の維持は、人の検出が予め定められた期間にわたり継続する場合に実行されても良い。この場合には、人が存在する可能性が高く、人が一時的に検出されなくなった場合に、対人支援を維持することにより、車両500と人と接触を回避または軽減する実効性が高くなる。
【0038】
第2の実施形態:
第1の実施形態においては、カメラ24の検出信号、すなわち、画像を用いてパターンマッチング手法により二輪車の存在の有無が判定されている。第2の実施形態においては、カメラ24に代えて、ミリ波レーダ21を用いて二輪車の存在の有無が判定される。ミリ波レーダ21を用いた二輪車の存在の有無の判定は、例えば、検出信号に含まれる反射電力の強度と、典型的な二輪車からの反射電力の強度とを対比し、また、対象物の対地速度を用いて判定され得る。具体的には、CPU101は、検出信号に含まれる反射電力の強度が典型的な二輪車からの反射電力と類似または一致し、対象物の対地速度が予め定められた速度以上である場合に、二輪車が存在していると判定することができる。この場合には、人の検出をカメラ24からの画像を用いて実行し、二輪車の検出をミリ波レーダ21からの検出信号を用いて実行することができるので、パターンマッチングによる演算負荷を軽減しつつ、二輪車の存在判定を実行することができる。加えて、カメラ24の検出信号とミリ波レーダ21の検出信号の双方を用いて二輪車の存在の有無が判定されても良い。
【0039】
第3の実施形態:
第1および第2の実施形態においては、自車両と二輪車との位置関係は考慮されていない。自車両に対する二輪車の位置によっては、人と二輪車の誤認識は低くなる。第3の実施形態においては、自車両と二輪車との位置関係に応じて、対人支援設定の維持レベルの低減を抑制または行わない。例えば、自車両の進行方向に対する二輪車の位置角度が大きくなるに連れて、二輪車の側面がカメラ24によって撮像可能となる。この結果、カメラ24によって撮像される二輪車の画像は後面または正面画像から側面画像へと変わっていき、人の判定用画像パターンとは明確に区別可能になり、検出された人が検出されなくなった場合においても、人の検出は二輪車の誤認識である可能性が低くなっていく。自車両の進行方向に延びる軸に対する二輪車の位置の角度が大きくなるに連れて、対人支援設定の維持レベルの低減の度合いを小さくする、すなわち、低減を抑制または行わないことによって、人に対する適切な対人運転支援を実行することができる。
【0040】
第4の実施形態:
第4の実施形態においては、二輪車の存在を判定するに際して、二輪車検出信頼度が考慮される。二輪車検出信頼度は、類似対象物である二輪車の検出確度を示す指標で有り、例えば、二輪車の累積検出時間が長くなるに連れて、二輪車の検出回数が大きくなるに連れて、高い信頼度に設定され、あるいは、カメラ24による検出画像に加えてミリ波レーダ21による検出結果によって二輪車が検出された場合に高い信頼度に設定され得る。二輪車検出信頼度が高い場合には、人の検出は誤検出である可能性が高くなるので、
図3のステップS114における対人支援設定の維持レベルの低減の度合いを大きくすることができる。この結果、制動支援や操舵支援の強度の低減の度合いを大きくしたり、制動支援や操舵支援の実行タイミングを更に遅延させたりすることが可能となり、対象物が人でない場合と比較して高い運転支援の実行頻度や実行強度が更に抑制され、運転者に与える違和感が更に軽減される。
【0041】
第5の実施形態:
第1の実施形態においては、対象物の検出の有無を判定するより汎用的な処理ルーチンに基づく運転支援制御について説明したが、
図7に示すように、対象物を人に絞り込んだ処理ルーチンに従って運転支援制御が実行されても良い。第5の実施形態においては、対象物を検出できない場合には人も検出できないとの前提の下、対象物の検出判定ステップが省略されている。なお、
図7における各ステップ番号は、
図3において用いられたステップ番号と同様であるから詳細な説明は省略する。
【0042】
その他の実施形態:
第1〜第5の実施形態においては、CPU101が運転支援制御プログラムP1および対人支援維持設定レベル低減プログラムP2を実行することによって、ソフトウェア的に運転支援および対人支援維持レベルを低減する制御部が実現されているが、予めプログラムされた集積回路またはディスクリート回路によってハードウェア的に実現されても良い。
【0043】
以上、実施形態、変形例に基づき本開示について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定するものではない。本開示は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本開示にはその等価物が含まれる。たとえば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。例えば、上記第1の態様に係る車両の運転支援装置を適用例1とし、
[適用例2]適用例1に記載の運転支援装置において、
前記類似対象物は二輪車である、運転支援装置。
[適用例3]適用例1または2に記載の運転支援装置において、
前記対人支援設定の維持レベルの低減は、前記予め定められた期間の低減である、運転支援装置。
[適用例4]適用例1から適用例3のいずれか一項に記載の運転支援装置において、
前記対人支援設定の維持レベルの低減は、前記対人支援設定における運転支援レベルの低減である、運転支援装置。
[適用例5]適用例4に記載の運転支援装置において、
前記運転支援には、報知、制動支援および操舵支援のうち少なくとも1つが含まれる、運転支援装置。
[適用例6]適用例5に記載の運転支援装置において、
前記運転支援レベルは、報知の実行タイミング、報知の実行強度、前記運転支援の実行タイミングおよび前記運転支援の実行強度のうち少なくとも1つを含む、運転支援装置。
[適用例7]適用例1から適用例6のいずれか一項に記載の運転支援装置において、
前記制御部は、環境明度が基準値以下の場合および前記対象物の一部が他の対象物と被る場合には、前記維持レベルの低減の度合いを小さくする、運転支援装置。
[適用例8]
適用例1から適用例6のいずれか一項に記載の運転支援装置において、
前記制御部は、自車両の進行方向に対する前記類似対象物の角度位置が大きくなるに連れて、前記維持レベルの低減の度合いを小さくする、運転支援装置。
[適用例9]
適用例1から適用例6のいずれか一項に記載の運転支援装置において、
前記制御部は、前記類似対象物の検出確度を示す類似対象物信頼度が高くなるに連れて、前記維持レベルの低減の度合いを大きくする、運転支援装置。