(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程2において、前記一次賦型シートと前記賦型シート原反とが、連続シートであって、連続的に繰り出されて熱圧される、請求項1に記載の、賦型シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について図面を用いながら説明する。但し、本発明はこれら具体的に例示された形態や各種具体的に記載された構造に限定されるものではない。なお、以下に示す図面では、解り易くする為に、部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見易さの為に説明上不要な部分や繰り返しとなる符号は省略することがある。
【0021】
図1〜8において、賦型部は、y軸方向(以下、「延在方向」或いは「長手方向」とも記載する。)に延びる線状凸部を成している。そして、複数の線状凸部が、x軸方向に配列されている。
【0022】
以降、本発明においては、賦型シート原反の賦型層に微細柄凹凸模様を賦型可能な表面態様が形成されたものを賦型シート、該表面態様を賦型シート原反に転写する為の版であるシートを一次賦型シート、該賦型シートから転写によって該微細柄凹凸模様が形成されたシートを意匠シートと記載する。
【0023】
また、賦型シート、一次賦型シート、意匠シートのそれぞれは、賦型シート原反、一次賦型シート原反、意匠シート原反から作製されるものである。
【0024】
本発明において、微細柄凹凸模様は、先ず、ドラム状賦型版の表面から一次賦型シート原反賦型層へと転写され、次に、賦型シート原反賦型層へと転写され、最後に、意匠シート表面へと転写される。
【0025】
ここで、微細柄凹凸模様とは、狭義には、意匠シート上の模様を指すものであるが、転写前の反転した凹凸構造の態様についても区別無く同様に、微細柄凹凸模様とも記載する。また、転写によって鋭角部が丸くなることも想定されるが、転写前後は略同形状であると見做し、同様に微細柄凹凸模様とも記載する。
【0026】
本発明の製造方法は、具体的には、例えば、特定の表面粗さを有する基材層と、特定の表面粗さを有する賦型層とを含む賦型シート原反を加熱し、加熱された賦型シート原反と一次賦型シートとを、賦型層同士を対向して重ねて、プレス装置で挟んで加圧し、次いで冷却することで微細柄凹凸模様を賦型層に形成する製造方法である。プレス装置のプレス部品としては、ロール、平板を組み合わせたものが用いられる。
【0027】
各部材の各層の説明においては、特に指定が無ければ、例えば、原反という語はその部材の原反を指し、基材層、賦型層、賦型部、基部という語はその部材の基材層、賦型層、賦型部、基部を指すものとして記載する。
【0028】
本発明において、エンボスロールとは、狭義には表面にエンボス構造の表面態様を有す
るロールのことであるが、ドラム状エンボス賦型版が取り付けられたロールや、賦型シートが接している側のロールをも包含する総称としても記載する。
【0029】
本発明において、バックアップロールとは、上記エンボスロールと同時に用いられる、対のロールのことであり、バックアップロールの表面は、目的や使い方によって、柔らかいもの、または、硬いものが選ばれる。
【0030】
表面が柔らかいバックアップロールは、エンボスロールやドラム状エンボス賦型版が取り付けられたロールや賦型シート賦型層の表面エンボス凹凸形状を、加圧により転写され得る表面構成を備えたロールであり、転写は一時的でも恒久的でもよく、該バックアップロールを用いた場合には、各種シートの賦型層のみならず基材層にも該表面エンボス凹凸形状を反映させ得るものである。
【0031】
表面が柔らかいバックアップロールの具体例としては、例えば、ウールンペーパーロール等のペーパーロール、高弾性ロール、ゴムロール等が挙げられる。
【0032】
表面が硬いバックアップロールは、エンボスロールやドラム状エンボス賦型版が取り付けられたロールや賦型シート賦型層の表面エンボス凹凸形状が、圧着により転写することの無い表面構成を備えたロールであり、該バックアップロールを用いた場合には、転写は、転写対象シートの賦型層に主に反映される。
【0033】
本発明においては、バックアップロールには、表面が柔らかいバックアップロールから表面が硬いバックアップロールまでの何れをも用いることが可能であり、特別に微細な模様を賦型したい場合には、表面が硬いバックアップロールが好まれる。
【0034】
1つのロールと1つの平板を用いる場合や、2つの平板を用いる場合も同様であり、両側に表面が平滑で硬いものを選ぶこともできるし、賦型の元型になる側の表面は平滑で硬いが、転写される側については多種多様のものを目的に応じて選ぶことも出来る。
【0035】
樹脂組成物とは、狭義には樹脂に他成分を配合した物を指すが、本発明においては、樹脂も樹脂組成物に包含されるものとして記載する。
【0036】
<微細柄凹凸模様>
本発明において、柄の単位大きさとは、規則的繰り返しパターン模様の場合には繰り返し方向のピッチを、ランダムな独立模様の場合には、単位柄を長方形に収めた場合の長方形の長辺の長さを指し、賦型シートの幅または長さのように、非常に大きな場合もある。
【0037】
本発明において、微細柄凹凸模様は、規則的な繰り返し模様であっても、単位柄種類や柄の単位大きさの異なるランダムな模様でもよい。
【0038】
図1と
図2に微細柄凹凸模様部分の拡大断面図を示した。Pは微細柄凹凸模様のピッチを、Dは微細柄凹凸模様の深さを示していて、賦型部は、y軸方向(以下、「延在方向」或いは「長手方向」とも記載する。)に延びる線状凸部を成している。そして、複数の線状凸部が、x軸方向に配列されている。
【0039】
本発明において、微細柄凹凸模様の深さDは、0.08μm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0040】
意匠シート表面に回折光沢を得たい場合は、微細柄凹凸模様は、一例として
図1に示したように、微細柄凹凸模様の線状凸部が三角柱を横に倒した線状であり、底辺を前記基部
に、頂点を前記基部とは反対側に有する二等辺三角形断面を具備し、該二等辺三角形断面を維持して一方向に延びた形状であり、広範囲の断面形状は略三角波形状であることが好ましい。
【0041】
意匠シート表面に回折光沢を得たい場合は、微細柄凹凸模様の深さDは、0.08μm以上、5μm以下が好ましく、ピッチPは、1μm以上、10μm以下が好ましい。
【0042】
また、ピッチPが1μm以上、3μm以下の場合において、線状凸部の二等辺三角形状の頂点における頂角θは、ピッチPが1μm以上、2μm以下の場合は、80°以上、160°以下が好ましく、ピッチPが2μmを超え、3μm以下の場合には、120°以上、160°以下が好ましい。
【0043】
意匠シート表面にマット状質感を得たい場合は、微細柄凹凸模様は、一例として
図2に示したように、凸部が底面が略菱形の略四角柱形状で、広範囲の断面形状は略矩形波形状、略台形波形状であることが好ましい。
【0044】
また、意匠シート表面にマット状質感を得たい場合は、微細柄凹凸模様の深さDは、5μm以上、10μm以下が好ましく、ピッチPは、0.1mm以上、5mm以下が好ましい。また、上から見た場合の平面図が
図3のようなマット状質感を与える微細柄凹凸模様の場合は、凸部の幅Wは、0.1mm以上、1mm以下であることが、触感性に優れるので好ましい。
【0045】
微細柄凹凸模様の断面形状は、様々な形状が可能であり、例えば、略三角波形状、略矩形波形状、略台形波形状、略正弦波形状又は略鋸歯状波形状等が挙げられる。
【0046】
意匠シートの表面に上記のような微細柄凹凸模様を有することによって、意匠シートがマット質感の外観や回折光沢および触感による識別性を有し、また、消費者、特に高齢者が意匠シート使用容器を滑らせずに持ちやすくできるという利点を発揮する。
【0047】
また、意匠シート表面の微細柄凹凸模様の凸凹部の形状パターンとしては、点分散状、ストライプ状等を用いることもできる。更には、
図8のように、三角形の線状凸部と平らな線状凹部を形成していてもよい。この
図8に示された意匠シートの模様は、
図7に示された賦型シートを用いることで作製される。
【0048】
また更なる意匠シート表面の微細柄凹凸模様の凸凹部の形状パターンとしては、四角錐の島が配列した模様のシートを作製するための形態や、皺やワニ革状の非幾何学的な模様の形態であってもよい。
【0049】
本発明においては、賦型シートを用いて意匠シートの表面樹脂層に微細柄凹凸模様を転写して形成するという製造上の観点から、意匠シート表面の微細柄凹凸模様の態様は、凸部、凹部、頂部、及び谷部が
図1や
図2に示されたような明確な態様ではなく、角部が丸くなった態様や、断面形状が略台形になることもある。しかし、明確な態様とはならなくとも、十分に、マット状質感や回折光沢が、明るく且つ広い視野で観察され得る。
【0050】
図9(a)、(b)は、表面樹脂層を上から見た平面図であり、微細柄凹凸模様の線状凸部及び線状凹部が延びる態様が表れている。
図9(a)は、線状凸部及び線状凹部が帯状の賦型シートの長手方向(同図に於けるy軸方向)に対して平行に延びる例、
図9(b)は、線状凸部及び線状凹部が帯状の賦型シートの長手方向(同図に於けるy軸方向)に対して角度α傾いて延びる例である。
【0051】
模様によっても異なるが、
図9(a)、(b)の模様の場合には、αの範囲は0°以上、1°以下であることが好ましい。
図9(a)はαが0°の場合を示している。αを上記範囲にすることにより、賦型シート生産時の離型性、及び該賦型シートを用いた意匠シート生産時の離型性を向上させることができ、意匠シートの線状凹凸部に欠け等の不具合が生じ難くなる。
【0052】
微細柄凹凸模様は、表面樹脂層の表面の平滑な略平坦面に位置していることが好ましい。これは、賦型シートから微細柄凹凸模様が転写される際に、平滑な略平坦面に位置している微細柄凹凸模様は転写性(賦型性)に優れているからである。
【0053】
平滑な略平坦面の具体例としては、他の模様の無い部分、前記表面樹脂層の凹部底面、前記表面樹脂層の凸部天面等が挙げられる。
【0054】
凸部天面周辺、凹部底面周辺、斜面部に位置する微細柄凹凸模様と、上記の平滑な略平坦面に位置している微細柄凹凸模様とが、同条件下で同時に転写(賦型)されることは困難である。
【0055】
よって、意匠シートの表面樹脂層の表面の平滑な略平坦面にのみ微細柄凹凸模様を賦型して、高精度に仕上げることも好ましい。
【0056】
<一次賦型シート原反>
図4には、本発明における一次賦型シート原反の1例を表す斜視図を示した。
図4からわかるように、一次賦型シート原反は賦型層と基材層とを有する積層体である。
【0057】
更には、基材層は、基材層の賦型層側表面を平滑化するために、平滑化樹脂層等の平滑化層を有することもできる。
【0058】
また更には、基材層と賦型層との密着性を向上させる目的で、基材層は、表面がコロナ放電処理、オゾン処理等の易接着性処理が施されていてもよく、プライマーやアンカーコート剤等から成るアンカーコート層を、賦型層側に有することもできる。
【0059】
一次賦型シート原反は、枚葉シート状でもよく、ロールに巻かれた連続シート状であってもよい。
【0060】
[基材層]
本発明において、一次賦型シート原反の基材層は、紫外線を透過するものが好ましく、耐熱性、平滑性、耐屈曲性、剛性等を有するものが更に好ましく、具体的には、樹脂フィルムまたはシート、樹脂塗布膜等が好ましく用いられる。
【0061】
具体的な樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレイト樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、アセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他等の樹脂が挙げられる。
【0062】
本発明においては、特に、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムまたはシートを使用することが好ましく、耐熱性及び平滑性の観点からは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂のフィルムまたはシートを使用することがより好ましく、PETフィルムまたはシートを用いることが特に好ましい。
【0063】
また、必要に応じて、2種以上の樹脂のフィルムまたはシ−ト等を併用して使用することもできる。
【0064】
賦型層の表面を平滑にするためには、基材層の表面を平滑にすることが効果的で有る。
【0065】
一次賦型シート原反基材層の賦型層側の表面粗さのS
aは、0μm以上、15μm未満が好ましい。ここで、Saが0ということは、機器の測定限界以下のSaであることを意味する。
【0066】
更に、原反賦型層表面をミラー光沢仕様にする場合や後工程で回折光沢を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、0μm以上、0.5μm未満が好ましく、原反賦型層表面を艶消しのマット仕様にする場合や後工程でマット質感を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、0μm以上、15μm未満が好ましい。
【0067】
また、一次賦型シート原反基材層の賦型層側の表面粗さのS
zは、3μm以上、250μm以下が好ましく、5μm以上、150μm以下がより好ましい。
【0068】
更に、原反賦型層表面をミラー光沢仕様にする場合や後工程で回折光沢を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、3μm以上、20μm未満が好ましく、5μm以上、20μm未満がより好ましく、原反賦型層表面を艶消しのマット仕様にする場合や後工程でマット質感を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、20μm以上、250μm以下が好ましく、20μm以上、150μm以下がより好ましい。
【0069】
ここで、S
aとS
zはJIS B0601 2001で定められた算術平均粗さであり、形状解析レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製VK−8710)等を用いて測定できる。
【0070】
S
aやS
zが上記範囲よりも大きいと、賦型シート原反賦型層への微細柄凹凸模様の賦型にムラが生じ易くなり、特に、回折光沢の発現を阻害する虞がある。S
aやS
zが上記範囲よりも小さいと、作製するための費用が高くなる一方で効果は限定的である。コストと性能の両立の観点から、S
aやS
zは上記の範囲であることが好ましい。
【0071】
本発明においては、上記範囲のS
aやS
zの、平滑な樹脂フィルムまたはシートを選択的に用いることによって、広く浅い微細柄凹凸模様を高精度に賦型し得るものである。
【0072】
基材層の厚さは賦型層を支持できる厚みで有れば特に限定されることはないが、8μm以上、300μm以下であることが好ましく、10μm以上、200μm以下であることが更に好ましい。
【0073】
上記範囲よりも厚いと、賦型層を積層及び加工する際に支持性の効果向上は限定的である一方で、剛性が強くなり過ぎる虞がありコストも増大する。また上記範囲よりも薄いと、賦型層を積層及び加工する際の支持性が不足する虞がある。
【0074】
(平滑化層)
平滑化層は、基材層表面を更に平滑化して賦型層の賦型転写性を向上させるものであり
、必要に応じて、基材層の賦型層側の面に設けられる。但し、賦型層の賦型形状耐久性は、若干低下し易い傾向になる。
【0075】
平滑化層は、ポリオレフィン系樹脂等からなる樹脂層を、塗布や押出コーティングにより形成してもよく、超鏡面チルロール等で表面粗さを調整しても良い。
【0076】
平滑化層の厚さは、特に限定されないが、10μm〜60μmが好ましい。
【0077】
(アンカーコート層)
アンカーコート層は、基材層表面と賦型層との密着性を向上させる目的で、必要に応じて設けられる層である。本発明においては、プライマーコート、アンカーコート等の塗布処理等の総称として用い、コロナ放電処理、オゾン処理等の易接着性処理と併用することもできる。また、基材樹脂フィルムまたはシートと平滑化層との密着性を向上させるために設けることもできる。
【0078】
アンカーコート層は、例えば、水溶性、または、水分散型のエマルジョンもしくはディスパージョンのアンカーコート剤を塗布することにより形成できる。
【0079】
このアンカーコート剤としては、ポリプロピレン系、変性ポリオレフィン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリウレタン系、ポリエステル系樹脂のエマルジョンもしくはディスパージョンのほか、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタンアクリル樹脂エマルジョン、シリコンアクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルアクリル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、そして、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジエンラテックスなどのゴム系ラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、或いはこれらのラテックスのカルボキシル変性物、また、水溶性アンカーコート剤としては、ポリビニルアルコール、水溶性エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、水溶性イソシアネート、水溶性リグニン誘導体などの水溶液を使用することができる。
【0080】
これらの中でもポリプロピレン系または変性ポリオレフィン系樹脂のエマルジョンもしくはディスパージョンは、紙に対するポリプロピレン系樹脂層の積層強度を一層強くでき、かつ、耐熱性にも優れる点で好ましい。
【0081】
上記アンカーコート剤の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法などで塗布することができ、その塗布量としては、乾燥時の塗布量で0.1g/m
2〜5g/m
2が好ましい。
【0082】
[賦型層]
本発明において、一次賦型シート原反の賦型層は、基材層の一方の面に積層された紫外線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂組成物からなる層であり、賦型シート表面に、目的とする微細柄凹凸模様を転写し得る表面態様を、転写によって形成し得る構造の表面態様、即ち、目的とする微細柄凹凸模様と略同型状の微細柄凹凸模様構造の表面態様を有し得るものである。
【0083】
本発明において、前記紫外線硬化性樹脂組成物は、無溶剤型であっても、溶剤型であっても良く、更に必要に応じて、分散剤、粘度調節剤、着色剤、帯電防止剤、無機や有機の微粒子等が含まれていてもよい。紫外線硬化性樹脂組成物を用いることによって、高い微
細柄凹凸模様の形成精度が達成され易い。
【0084】
紫外線硬化性樹脂組成物に含有される具体的な紫外線硬化性樹脂としては、賦型シート原反賦型層として機能することができれば特に限定されることはないが、(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体等を含むことが好ましい。これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてよい。
【0085】
更に、硬化性や強靭性や剛性を調整する為に、紫外線硬化性を阻害しない範囲内で、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、等を併用することも可能である。
【0086】
賦型層の厚さは、目的とする微細柄凹凸模様にもよるが、20μm以上、200μm以下が好ましく、30μm以上、150μm以下が更に好ましい。
【0087】
一次賦型シート原反賦型層の表面粗さのS
aは、0.03μm以上、5μm未満が好ましく、一次賦型シート原反賦型層表面をミラーチルロール等を用いてミラー光沢仕様にする場合や後工程で回折光沢を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、0.03μm以上、0.5μm未満が好ましく、一次賦型シート原反賦型層表面をマットチルロール等を用いて艶消しのマット仕様にする場合や後工程でマット質感を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、0.03μm以上、5μm未満が好ましい。
【0088】
[一次賦型シート原反の作製]
一次賦型シート原反の賦型層は、例えば、紫外線硬化性樹脂組成物を基材フィルムに塗布することで形成されるが、形成方法は特に限定されることはなく、例えば、ダイコート法やグラビアコート法が挙げられ、他には、基材フィルムをロールに巻き付かせた状態で流動性を有する紫外線硬化性樹脂組成物に浸して、基材フィルムの片面にだけ紫外線硬化性樹脂組成物を積層して、一定厚みでしごいて形成する方法も挙げられる。
【0089】
紫外線硬化性樹脂組成物に流動性を有せしめる方法としては、溶剤を加えて流動性を有せしめても、流動性を有する樹脂原料を用いて流動性を有せしめても、加熱によって流動性を有せしめてもよい。
【0090】
上記方法で作製された一次賦型シート原反は、必要に応じて賦型層を乾燥してもよい。また、一次賦型シートを作製しつつ、連続して直後に賦型して一次賦型シートを作製してもよい。
【0091】
<一次賦型シート>
一次賦型シートは、一次賦型シート原反から作製されたものであり、賦型層と基材層とからなり、賦型層には微細柄凹凸模様が形成されている。
図5に一次賦型シートの1例を表す斜視図を示した。
【0092】
[賦型層]
図5からわかるように、一次賦型シートの賦型層は、基部と賦型部とが一体となって構成されている。
【0093】
一次賦型シートの賦型層は、賦型シート賦型層に、目的とする微細柄凹凸を転写して形成し得る表面態様の構造部位を、転写によって形成し得る表面態様、すなわち、目的とする意匠シート上の微細柄凹凸模様と略同型状の微細柄凹凸模様の表面態様を有する。
【0094】
賦型層基部の厚さは特に限定されることはないが、10μm以上、150μm以下が好ましく、15μm以上、100μm以下が更に好ましい。上記範囲より薄いと賦型シート
が破れやすくなり、上記範囲より厚いと柔軟性に欠け、使い勝手が悪くなる傾向にある。
【0095】
賦型層の厚さや基部の厚さは、特に限定されることは無く、微細柄凹凸模様の構造との関係で適宜決定されることが好ましい。
【0096】
原反賦型層表面をミラー光沢仕様や回折光沢仕様にする場合は、ミラーチルロール等を用いることができ、賦型層表面を艶消しのマット仕様やマット質感仕様にする場合は、マットチルロール等を用いることができる。
【0097】
[基材層]
一次賦型シートの基材層は、一次賦型シート原反と同様ではあるが、場合によっては、賦型層に賦型された微細柄凹凸模様が反映された凹凸構造を有していてもよい。
【0098】
[一次賦型シートの作製]
一次賦型シートは、例えば、一次賦型シート原反の賦型層を加熱や溶剤含有等によって流動性を有している状態にして、賦型層がドラム状賦型版表面に接するように一次賦型シート原反を巻き付けて、圧着によって前記ドラム状賦型版の表面凹凸形状を賦型層に転写し、更に、一次賦型シート原反がドラム状賦型版に巻き付けられている状態で、基材層側から紫外線を照射して前記紫外線硬化性樹脂組成物を硬化して、次いで、冷却して賦型層の表面凹凸形状を固定してからドラム状賦型版から離型して、得ることができる。
【0099】
一次賦型シートは、ロールに巻かれた連続シート状であってもよく、枚葉シート状でもよい。枚葉シート状の一次賦型シートは、枚葉シート状の一次賦型シート原反から作製されたものであっても、ロールに巻かれた連続シート状の一次賦型シートを切断して得たものであってもよい。
【0100】
尚、上記の加熱と冷却の手段には、公知の種々の方法を適用することが可能である。
【0101】
具体的な加熱手段としては、例えば、一次賦型シート原反がドラム状賦型版に巻き付けられる前に熱風を当てる方法、ドラム状賦型版手前の送りロールやドラム状賦型版を内部からスチームや誘電加熱等で加熱する方法、等が挙げられる。
【0102】
各種加熱手段は、単独でも、2種以上を組み合わせて適用することも可能である。また、送りロールとドラム状賦型版とで一次賦型シート原反を挟んで加熱してもよい。
【0103】
具体的な冷却手段としては、例えば、ドラム状賦型版を内部から冷媒等で冷却する方法、紫外線照射後に冷風を当てる方法、ドラム状賦型版後の取り出しロールを冷却する方法、等が挙げられる。
【0104】
各種冷却手段は、単独でも、2種以上を組み合わせて適用することも可能である。冷却された取り出しロールとドラム状賦型版とで一次賦型シート原反を挟んでもよい。
【0105】
加熱温度は、紫外線硬化性樹脂組成物の組成によって異なり、紫外線硬化性樹脂組成物が室温で固形の場合には、紫外線硬化性樹脂組成物が十分にドラム状賦型版の表面形状を賦型され得て且つ基材層から落下しないくらいの流動性を有した状態になる程度の温度が必要であり、溶剤含有等によって紫外線硬化性樹脂組成物が室温で流動性を有している場合には、加熱は不要にすることもできる。賦型層が30〜130℃になるように調製することが好ましい。
【0106】
冷却温度は、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物の物性に応じた、賦型層が形状を損なう
ことなく離型可能な程度に適度に硬くなる程度の低温がよく、賦型層が20〜50℃になるように調製することが好ましい。
<賦型シート原反>
図6には、本発明における賦型シート原反の1例を表す斜視図を示した。
図6からわかるように、賦型シート原反は賦型層と基材層とを有する。
【0107】
更には、基材層の賦型層側表面を平滑化するために、基材層は平滑化層を含むこともできる。
【0108】
また更には、基材層と賦型層との密着性を向上させる目的で、基材層表面がコロナ放電処理、オゾン処理等の易接着性処理が施されていてもよく、プライマーやアンカーコート剤等から成るアンカーコート層を、基材層表面に含むこともできる。
【0109】
賦型シート原反は、枚葉シート状でもよく、ロールに巻かれた連続シート状であってもよい。
【0110】
[基材層]
本発明において、賦型シート原反の基材層は、賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせるものであり、一般に樹脂皮革製造用の離型シートや工程紙に用いられる従来公知の材質の基材を用いることができる。
【0111】
例えば、各種の紙基材や樹脂フィルムまたはシート、金属箔、織布、不織布、クレー、およびこれらいずれかの積層体等の1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、樹脂を塗布して用いることも出来る。
【0112】
本発明においては、熱劣化を生じさせにくく、賦型シート原反賦型層との密着性が高いという観点では、紙基材を用いるのが好ましく、耐熱性及び表面平滑性が特に必要な場合は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル基材を用いるのが好ましい。
【0113】
賦型シート原反賦型層が紫外線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂組成物からなる場合には、賦型シート原反基材層には、一次賦型シートで用いられたのと同様な、紫外線透過性の、樹脂フィルムまたはシートを用いることが好ましい。
【0114】
賦型シート原反賦型層の表面を平滑にするためには、賦型シート原反基材層の表面をも平滑にすることが効果的で有る。
【0115】
賦型シート原反基材層の賦型層側の表面粗さのS
aは、0.3μm以上、15μm未満が好ましく、1.0μm以上、15μm未満がより好ましい。
【0116】
更に、原反賦型層表面をミラー光沢仕様にする場合や後工程で回折光沢を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、0.3μm以上、5μm未満が好ましく、1.0μm以上、5μm未満がより好ましい。また、原反賦型層表面を艶消しのマット仕様にする場合や後工程でマット質感を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、0.3μm以上、15μm未満が好ましく、1.0μm以上、15μm未満がより好ましい。
【0117】
賦型シート原反基材層の賦型層側の表面粗さのS
zは、3μm以上、250μm以下が好ましく、5μm以上、150μm以下がより好ましい。
【0118】
更に、原反賦型層表面をミラー光沢仕様にする場合や後工程で回折光沢を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、3μm以上、20μm未満が好ましく、5μm以上、20μm未満がより好ましい。
【0119】
また、原反賦型層表面を艶消しのマット仕様にする場合や後工程でマット質感を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、20μm以上、250μm以下が好ましく、20μm以上、150μm以下がより好ましい。
【0120】
上記範囲よりもS
aやS
zが大きいと、賦型シート原反賦型層の平滑性が低下する虞があり、更には、賦型シート原反賦型層への微細柄凹凸模様の賦型にムラが生じ易くなり、該賦型シートを用いて作製される意匠シートの回折光沢の発現を阻害する虞がある。
【0121】
上記範囲よりもS
aやS
zが小さいと、賦型シート原反を作製するための費用が高くなる一方で効果は限定的である。コストと性能の両立の観点から、賦型シート原反基材層の平滑性は上記の範囲であることが好ましい。
【0122】
賦型シート原反基材層の厚さは特に限定されることはないが、20μm以上、900μm以下であることが好ましく、25μm以上、200μm以下であることが更に好ましく、50μm以上、150μm以下であることがより更に好ましい。
【0123】
上記範囲よりも厚いと、剛性が強くなり過ぎる虞が有り、コストが増大する一方で支持の効果向上は限定的である。また上記範囲よりも薄いと、賦型シート原反賦型層を積層及び加工する際に支持性が不足する虞がある。
【0124】
(樹脂フィルムまたはシート)
賦型シート原反基材層に用いられる樹脂は、フィルムやシートとして用いることが出来、塗布して用いることも出来る。
【0125】
賦型シート原反基材層に用いられる具体的な樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレイト樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、アセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他等を使用することができ、特に、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムまたはシートを使用することがより好ましく、特に、PETフィルムまたはシート、特に易接着PETフィルムまたはシートが好ましく使用される。
【0126】
(紙基材)
賦型シート原反基材層の構成材料には、紙基材を用いることが出来る。
【0127】
具体的な紙基材としては、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロ−ル紙、クラフト紙、板紙、コート紙、キャストコート紙、加工紙、上質紙、等を使用することができる。
【0128】
上記において、紙基材としては、坪量約80g/m
2〜600g/m
2位のもの、好まし
くは、坪量約100g/m
2〜450g/m
2位のものを使用することが望ましい。
【0129】
紙基材のパルプとしては、賦形層に大柄凹凸模様や微細柄凹凸模様を形成する工程や合成皮革を作製する際の工程に耐えうる強度と平滑性を得るために針葉樹パルプ(N材)と広葉樹パルプ(L材)を混合したものが好ましい。その場合、平滑性を高めるため、広葉樹パルプ(L材)の混合率は50%〜90%が好ましい。
【0130】
紙基材は、離型紙の充分な耐熱性を得るために、中性紙であることが必要であり、サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを用いてサイズした中性紙が好ましい。
【0131】
紙基材の坪量は、坪量約80g/m
2〜600g/m
2位のもの、好ましくは、坪量約100g/m
2〜450g/m
2位のものを使用することが望ましいが、特に、合成皮革作成用途においては、強度、合成皮革加工作業性、離型紙の繰り返し使用耐久性及びエンボス加工適性の面から100g/m
2〜200g/m
2であることが好ましい。
【0132】
坪量が100g/m
2よりも低いと合成皮革の製造時にカールや波打ちが発生し易くなる。逆に坪量が200g/m
2より高くなるとエンボス加工性が悪く、また離型紙が厚くなることによりその巻き径が大きくなって作業能率が低下する。
【0133】
紙基材の厚さは、合成皮革作成用途では100μm〜900μm、好ましくは150100μm〜600μmのものを使用することができる。が、汎用的には10μm〜200μmのものを使用することが好ましい。
【0134】
クラフト紙や上質紙等のように表面が比較的粗い材料を紙基材として賦型シート原反基材層に用いる場合には、紙基材の上の平滑性を向上させることができる。
【0135】
(平滑化層)
平滑化層は賦型シート原反基材層の賦型層側の面に、必要に応じて設けられ、賦型シート原反基材層の表面を平滑化するものである。
【0136】
平滑化層の厚さは、特に限定されないが、10μm〜60μmが好ましい。
【0137】
平滑化層は、例えば、クレーコート層や、平滑化樹脂層からなり、各々を単独で用いても良く、2種を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
クレーコート層はクレーとしては、一般的にクレー、粘土と呼ばれるものであれば、特に限定することなく用いることができる。具体的には、例えば、カオリン、タルク、ベントナイト、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、緑泥石、木節粘土、ガイロメ粘土、ハロイサイト、マイカ等を用いることができる。
【0139】
タルクは硬度が低く(モース硬度1)、耐熱性に優れるため、耐熱性の向上やエンボス加工時の寸法安定性を向上させることができる。
【0140】
逆に、平滑化層の硬度の高い方が、平滑化層の上に形成される賦型シート原反賦型層において紙基材の地合いの影響を受けにくく、この結果、賦型シート原反賦型層の表面が均一となるので、版面の凹凸構造の転写性(賦形性)が向上する。
【0141】
クレーコート層は、クレーの他に、顔料として、炭酸カルシウム、二酸化チタン、非晶質シリカ、発泡性硫酸バリウム、サチンホワイト等を含んでいることが好ましい。顔料として炭酸カルシウムや二酸化チタンを用いることにより、クレーコート層の表面の平滑度
を更に上げることができる。また、炭酸カルシウムは安価であるため、好適に用いられる。
【0142】
クレーコート層を塗布するための塗布液は、溶媒に上記クレーと、バインダーと、必要に応じて他の顔料や添加剤を含む。溶媒としては、通常、水、アルコール等が用いられる。バインダーとしては、通常、ラテックス系のバインダー(例えば、スチレンブタジエンラテックス、アクリル系ラテックス酢酸ビニル系ラテックス)、水溶性のバインダー(例えば、デンプン(変性デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン、リン酸エステル化デンプン)、ポリビニルアルコール、カゼイン等)が用いられる。添加剤としては、顔料分散剤、消泡剤、発泡防止剤、粘度調整剤、潤滑剤、耐水化剤、保水剤等が用いられる。
【0143】
クレーコート層の塗布方法は、特に限定されないが、エアナイフコート、ブレードコート、ショートドウェルコート、キャストコート等の塗布方法が用いられる。 クレーコート層の塗布量や厚さは、特に限定されないが、通常、乾燥後の坪量が5g/m
2〜40g/m
2が好ましく、10g/m
2〜40g/m
2が更に好ましい。
【0144】
乾燥後の坪量が5g/m
2未満であると、平滑性が劣る場合がある。乾燥後の坪量が40g/m
2を超えると、クレーコート層の凝集破壊等による密着性低下の可能性があり、コストパフォーマンス面に劣る。
【0145】
平滑化樹脂層としては、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。クレーコート層と併用する場合は、クレーコート層上の賦型層側に形成することが、クレーコート層のみの場合よりも平滑度の高い基材層表面を得ることが可能であり、好ましい。
【0146】
平滑化樹脂層の形成は、押出コーティングや塗布による方法が好ましい。
【0147】
(アンカーコート層)
賦型シート原反基材層と賦型シート原反賦型層との密着性を向上させる目的で、必要に応じて、基材層表面にアンカーコート層を設けることができる。本発明においては、プライマーコート、アンカーコート等の塗布処理等の総称としてアンカーコートと記載する。
【0148】
アンカーコート層を設ける際には、コロナ放電処理、オゾン処理等の易接着性処理と併用することもできる。
【0149】
例えば、基材層が平滑化層としてクレーコート層を有している場合、クレーコート層の表面は滑性が良い為、押出しラミネートした樹脂との接着性が劣る傾向であるが、アンカーコート層を形成することにより、接着性を高めることができる。
【0150】
アンカーコート層は、例えば、水溶性、または、水分散型のエマルジョンもしくはディスパージョンのアンカーコート剤を塗布することにより形成できる。
【0151】
このアンカーコート剤としては、ポリプロピレン系、変性ポリオレフィン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリウレタン系、ポリエステル系樹脂のエマルジョンもしくはディスパージョンのほか、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタンアクリル樹脂エマルジョン、シリコンアクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルアクリル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、そして、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジエンラテックスなどのゴム系ラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリ
塩化ビニリデンラテックス、或いはこれらのラテックスのカルボキシル変性物、また、水溶性アンカーコート剤としては、ポリビニルアルコール、水溶性エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、水溶性イソシアネート、水溶性リグニン誘導体などの水溶液を使用することができる。
【0152】
これらの中でもポリプロピレン系または変性ポリオレフィン系樹脂のエマルジョンもしくはディスパージョンは、紙に対するポリプロピレン系樹脂層の積層強度を一層強くでき、かつ、耐熱性にも優れる点で好ましい。
【0153】
アンカーコート剤の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法などで塗布することができ、その塗布量としては、乾燥時の塗布量で0.1g/m
2〜5g/m
2が好ましい。
【0154】
[賦型層]
本発明において、賦型シート原反賦型層は、賦型シート原反基材層の一方の面に積層された、樹脂または樹脂組成物からなる層であり、意匠シート表面に目的とする微細柄凹凸模様構造の表面態様を転写して形成し得る表面態様を有し得るものである。
【0155】
本発明において、前記樹脂または前記樹脂組成物は、無溶剤型であっても、溶剤型であっても良く、更に必要に応じて、分散剤、粘度調節剤、着色剤、帯電防止剤、無機や有機の微粒子等が含まれていてもよい。
【0156】
本発明において、賦型シート原反賦型層の樹脂または樹脂組成物には、賦型シート原反賦型層として機能することができれば特に限定されることはなく、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を使用することができる。これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてよい。
【0157】
熱可塑性樹脂としては、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はポリメチルペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;メラミンアルキッド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてよい。
【0158】
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてよい。
【0159】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてよい。更に、硬化性や強靭性や剛性を調整する為に、紫外線硬化性を阻害しない範囲内で、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、等を併用することも可能である。
【0160】
汎用用途としては、熱可塑性樹脂の、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。賦型シートに
耐熱性が要求される場合には、熱可塑性樹脂の、ポリメチルペンテン系樹脂が好ましい。賦型部の微細柄凹凸模様に高度な形成精度が要求される場合には、紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0161】
賦型シート原反賦型層の厚みは、10μm以上、400μm以下が好ましく、50μm以上、300μm以下が更に好ましく、100μm以上、200μm以下がまた更に好ましい。上記範囲より薄いと耐久性に劣る傾向になり、上記範囲よりも厚いと材料コストが上昇する。
【0162】
賦型層を冷却して固形化して、賦型シート原反を一旦巻き取って保管する場合等は、賦型層表面は平滑であることが好ましい。
【0163】
賦型シート原反賦型層の表面粗さのS
aは、0.03μm以上、5μm未満が好ましく、原反賦型層表面をミラー光沢仕様にした場合や後工程で回折光沢を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、0.03μm以上、0.5μm未満が好ましく、賦型層表面を艶消しのマット仕様にした場合や後工程でマット質感を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、0.03μm以上、5μm未満が好ましい。
【0164】
賦型シート原反賦型層の表面粗さのS
zは、3μm以上、250μm以下が好ましく、5μm以上、150μm以下がより好ましい。
【0165】
更に、原反賦型層表面をミラー光沢仕様にした場合や後工程で回折光沢を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、3μm以上、40μm未満が好ましく、5μm以上、40μm未満がより好ましい。
【0166】
また、賦型層表面を艶消しのマット仕様にした場合や後工程でマット質感を呈する微細柄凹凸模様を賦型する場合には、40μm以上、250μm以下が好ましく、40μm以上、150μm以下がより好ましい。
【0167】
上記範囲よりもS
aやS
zが大きいと、意匠シート表面への微細柄凹凸模様の賦型にムラが生じ易くなり、意匠シートの回折光沢の発現を阻害する虞もある。
【0168】
上記範囲よりもS
aやS
zが小さいと、賦型シート原反を作製するための費用が高くなる一方で効果は限定的である。コストと性能の両立の観点から、賦型シート賦型層の平滑性は上記の範囲であることが好ましい。
【0169】
原反賦型層表面をミラー光沢仕様や回折光沢仕様にする場合は、ミラーチルロール等を用いることができ、賦型層表面を艶消しのマット仕様やマット質感仕様にする場合は、マットチルロール等を用いることができる。
【0170】
[賦型シート原反の作製方法]
賦型シート原反は、例えば、賦型シート原反基材層の片方の面に樹脂または樹脂組成物からなる賦型シート原反賦型層を形成して作製される。
【0171】
賦型シート原反賦型層の形成方法は特に限定されることはなく、例えば、押出しコート、ロールコート、リバースロールコート、マイクロバーコート、バーコート、ナイフコート、グラビアコート等の塗布方法を挙げることができる。
【0172】
賦型シート原反の賦型層の表面が上記のような平滑性を有する賦型シート原反は、例えば、特に、クレーコート紙等を用いた賦型シート原反基材層に、賦型シート原反賦型層用
の樹脂を押出チルロール成型して得ることが出来る。
【0173】
ここで、チルロールの表面の平滑さを調整することによって、賦型シート原反賦型層の表面の平滑さを調整できる。例えば、溶融押出して積層された後、連続して、表面が鏡面加工されたチルロールと押圧ロールとの間を、賦型シート原反賦型層が鏡面のチルロールに接するように通すことにより、得ることができる。
【0174】
その際に使用する鏡面のロールとしては、ロールにクロムメッキを施した後、ウェットブラスト、ドライブラスト処理が施されたミラー系またはセミミラー系のロールをいう。また、鏡面のロールは、賦型シート原反基材層の表面より平滑なロールの表面であれば、超微細マット系のロールも含む。この鏡面のロールを用いることにより、賦型シート原反賦型層表面の平滑度を調節することができる。
【0175】
賦型シート原反賦型層が紫外線硬化性樹脂組成物からなる場合は、賦型層の形成方法としては、例えば、ダイコート法やグラビアコート法が挙げられ、他には、賦型シート原反基材層をロールに巻き付かせた状態で、流動性を有する紫外線硬化性樹脂組成物に浸して、賦型シート原反基材層の片面にだけ紫外線硬化性樹脂組成物を積層して、一定厚みでしごいて形成する方法も挙げられる。
【0176】
紫外線硬化性樹脂組成物に流動性を有せしめる方法としては、溶剤を加えて流動性を有せしめても、流動性を有する樹脂原料を用い流動性を有せしめても、加熱によって流動性を有せしめてもよい。
【0177】
上記方法で作製された賦型シート原反は、そのまま連続して賦型シート原反賦型層に微細柄凹凸模様を賦型してもよいし、必要に応じて一旦取り出して、賦型シート原反賦型層の乾燥等を行ってもよい。
【0178】
賦型シート原反賦型層を形成後に、賦型シート原反賦型層が鏡面のチルロールに接するように、鏡面または超鏡面のチルロールと押圧ロールとの間に通して賦型シート原反賦型層表面を平滑化してミラー仕様表面化することもできる。
【0179】
<賦型シート>
賦型シートは、賦型シート原反から作製されたものであり、賦型層と基材層とを有し、賦型層には、微細柄凹凸模様を転写で形成し得る表面態様が形成されている。
【0180】
図7に一次賦型シートの1例を表す斜視図を示した。この
図7の賦型シートを用いることで、
図8に示された模様の意匠シートが作製される。
【0181】
[基材層]
賦型シートは賦型シート原反賦型層に微細柄凹凸加工を施して作製されるものであることから、基材層の素材構成は賦型シート原反基材層と同じであるが、
図7に示したように、基材層は、賦型層に賦型された微細柄凹凸模様が反映されて、同様の微細柄凹凸模様構造を有していてもよい。特に、転写時のバックアップロールの表面が柔らかい構成の場合に、容易に反映することができる。
【0182】
微細柄凹凸模様の構造によっては、基材層に微細柄凹凸模様を反映させることで、賦型層の微細柄凹凸模様を更に容易に高精度に形成することが出来る。
【0183】
[賦型層]
本発明において、賦型シート賦型層は、賦型部と基部とで構成されている。賦型部とは
、柄として凹凸を有する厚み部分のことであり、基部とは、賦型部の支持部となる厚み部分のことであり、賦型部と基部との間に明確な境界は無く、一体となって賦型層を構成している。
【0184】
賦型シート賦型層には、意匠シート表面に微細柄凹凸模様を転写によって形成し得る表面態様の構造が形成されている。ここで、微細柄賦型シート賦型層の表面態様の構造は、意匠シート表面に形成される微細柄凹凸模様とは、凹凸構造が反転した表面態様の構造である。
【0185】
賦型シート賦型層の基部の厚さは、特に限定されることはないが、例えば、5μm以上、300μm以下が好ましく、25μm以上、280μm以下が更に好ましく、50μm以上、150μm以下がまた更に好ましい。厚さが上記範囲よりも薄いと賦型シートが破れやすくなり、上記範囲よりも厚いと柔軟性に欠け、使い勝手が悪くなる傾向にある。
【0186】
賦型シート賦型層の賦型層の厚さや基部の厚さは、特に限定されることは無く、微細柄凹凸模様の構造との関係で適宜決定されることが好ましい。
[賦型シートの作製方法]
本発明において、賦型シートは、賦型シート原反の賦型層に、微細柄凹凸模様を賦型し得る表面態様を、一次賦型シート賦型層からの表面態様の転写によって形成することで作製される。
【0187】
賦型シート賦型層への微細柄凹凸模様の転写は、1例として、上記で作製した一次賦型シートと賦型シート原反とを、一次賦型シート賦型層面と賦型シート賦型層面とが対向するように重ねて、プレス装置によって挟んで加圧して、一次賦型シート賦型層の表面態様を賦型シート原反賦型層に転写することによって達成される。
【0188】
加圧する際には、必要に応じて、賦型シート賦型層を前以て加熱していてもよく、賦型シートを加熱しながら加圧してもよく、賦型シートを冷却しながら加圧してもよい。
【0189】
加圧後に賦型シートと一次賦型シートとを離型する際には、賦型シート賦型層を冷却していてもよい。
【0190】
尚、加熱と冷却の手段には、公知の種々の方法を適用することが可能である。
【0191】
具体的な加熱手段としては、例えば、プレス装置の一対の加圧部品の片方または両方を内部からスチームや誘電加熱等で加熱する方法、加圧される前に熱風を賦型シート原反に当てる方法、プレス装置手前の送りロールを内部からスチームや誘電加熱等で加熱する方法、等が挙げられる。熱風は必須では無く、上記加熱手段の2種以上を組み合わせて適用することも可能である。
【0192】
加熱の温度は、ラミネートチューブ積層材原反の表面樹脂層が形状を維持しつつも加圧によって変形する程度に適度に柔らかくなる程度の温度がよく、該表面樹脂層の組成によって異なるが、賦型シート賦型層が80〜130℃になるように調製することが好ましい。
【0193】
温度が高すぎると、賦型層が柔らかくなり過ぎて溶融して落下したり、賦型層が変形したり、一次賦型シートと賦型シートとの離型性が低下して、微細柄凹凸模様の賦型に形状的な欠陥が発生したり、離型直後に形状が崩れたりして、微細柄凹凸形状の維持が困難になる虞がある。
【0194】
冷却の温度は、賦型シート賦型層が形状を維持可能な程度に適度に硬くなる程度の温度がよく、賦型層の組成によって異なるが、賦型シート賦型層が20〜50℃になるように調製することが好ましい。
【0195】
具体的な冷却方法としては、例えば、プレス装置の加圧部品を冷却する方法、加圧後に冷風を当てる方法、加圧後に冷却された離型ロールを冷却する方法、自然放冷等が挙げられる。冷風は必須では無く、上記冷却手段の2種以上を組み合わせて適用することも可能である。
【0196】
プレス装置で加圧する際の圧力は、プレス装置の種類や賦型シートの賦型層樹脂種や意匠シート原反の表面樹脂層の組成によっても異なるが、2つのロールで挟む場合や1つのロールと1つの平板とで挟む場合は、線圧が、5kgf/cm以上、380kgf/cm以下が好ましく、5kgf/cm以上、265kgf/cm以下がより好ましく、10kgf/cm以上、100kgf/cm以下が更に好ましい。
【0197】
2つの平板で挟む場合は、面圧が、2kgf/cm
2以上、15kgf/cm
2以下が好ましく、4kgf/cm
2以上、12kgf/cm
2以下が更に好ましく、8kgf/cm
2以上、10kgf/cm
2以下が特に好ましい。
【0198】
圧力が上記範囲よりも低いと、微細柄凹凸模様によっては転写が不十分になって欠落が出る虞があり、上記版よりも高いと、微細柄凹凸模様によっては、模様の一部または全部が潰れてしまう虞があり、高精度の賦型が困難になり易い。
【0199】
[転写時のプレス装置]
本発明において、一次賦型シート賦型層の表面態様を賦型シート原反賦型層に転写する際には、2つのロール、1つのロールと1つの平板、及び2つの平板、なる群から選択される1種の、対になった加圧部品を有するプレス装置を用いて、一次賦型シートと、賦型シート原反とを、一次賦型シート賦型層と賦型シート原反賦型層とが対向するように挟んで加圧する。
【0200】
2つのロールで挟む場合、該2つのロールのそれぞれの表面の硬さや平滑性については、必要に応じて様々な組み合わせを選ぶことが出来る。両方のロールに表面が平滑で硬いものを選ぶこともできるし、一次賦型シートが接する側のロール(エンボスロール)の表面は平滑で硬いが、賦型シート原反側のロール(バックアップロール)については、表面が柔らかい構成のものから硬い構成のものまで、多種多様のものを目的に応じて選ぶことが出来る。
【0201】
高精度の賦型を要求する場合には、2つのロールは、平滑で硬くて圧着により表面形状が変化しない構成を備えたものが好ましい。
【0202】
1つのロールと1つの平板を用いる場合や、2つの平板を用いる場合も同様であり、一次賦型シートが接する側と賦型シート原反が接する側の両方に表面が平滑で硬いものを選ぶこともできるし、一次賦型シートが接する側の表面は平滑で硬いが、賦型シート原反側については、同様に、多種多様のものを目的に応じて選ぶことも出来る。
【0203】
本発明にかかる、一次賦型シートの賦型層から賦型シート原反の賦型層への微細柄凹凸模様を転写するシステムの1例を
図12に示した。賦型シート基材層として紙基材が、賦型層として熱可塑性樹脂が適用された例である。
【0204】
一次賦型シートと賦型シート原反とが、一次賦型シート賦型層と賦型シート原反賦型層とが対向するように重ねられて、賦型シート原反側から熱風が当てられて加熱され、矢印で示す方向に送られ、表面が平滑な2つのロールの間に送られて、挟まれて、熱圧される。
【0205】
適度に柔らかくなっている賦型シート原反賦型層には、一次賦型シート賦型層の表面形状が転写されて、微細柄凹凸模様を賦型し得る表面態様が形成され、次いで、当該形成された状態で、加圧解放直後の位置で、冷風が賦型シート原反に当てられて冷却され、該表面態様が固定される。
【0206】
冷却された賦型シート原反と一次賦型シートは、連続的に離型され、各々が巻き取られて、一次賦型シートは回収され、微細柄凹凸模様を賦型可能な表面態様を賦型層に有する賦型シートが得られる。
【0207】
図12は、連続シート状の一次賦型シートと連続シート状の賦型シート原反とを用いて、連続シート状の賦型シートを作製する例である。この形態の場合には、微細柄凹凸模様に、繋ぎの無いデザインを表現可能であり、高度な意匠性を発現可能である。
【0208】
本発明における別形態として、枚葉シートの一次賦型シートを加圧部品上に固定して用いてもよく、特に平滑で硬い表面構成のロールに巻き付けて固定して回転させながら用いることがよい。
【0209】
この際には、連続シートの賦型シート原反のみを繰り出して連続的に熱圧転写して巻き取ってもよく、枚葉シートの賦型シート原反を用いて枚葉の賦型シートを作製してもよい。この形態の場合には、少量の枚葉シート状の一次賦型シートを準備するだけで済み、少量多品種の生産に好適であり、コストメリットも大きい。
【0210】
上記のようなプレス装置を用いて、本発明にかかる賦型シートを高い精度で効率よく作製することができる。
【0211】
<意匠シートの作製>
上記で得られた賦型シートを用いて、意匠シートを次のように作製することができる。
【0212】
1例として、賦型シートの賦型層に、意匠シート表面の賦型層を構成する樹脂組成物を塗布し、離型して、意匠シートを得る方法を説明する。
図13に、説明するための図を表した。
【0213】
図8は、意匠シートの1例を表した斜視図である。意匠シートは、表面樹脂層及び基材層を備えてこれらが積層されている。
【0214】
意匠シートの基材層は、意匠シートの表面樹脂層の基部の線状凹凸部が形成された側とは反対側に積層された層であり、表面樹脂層を支持している。
【0215】
基材層の材料には、表面樹脂層を支持するとともに、意匠シートの用途に応じた適切な材料が用いられればよく、木綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの再生または半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィンなどの合成繊維、ガラス纖維等の繊維からなる織布、不織布、網布等の布(基布とも言う)、紙、ポリエステルやポリオレフィンの樹脂からなる樹脂フィルム、金属板(、乃至金属箔)、ガラス板、ガラス織布等の、一般に、合成皮革や人工皮革の基材乃至基布に用いられるものから、樹脂皮革の種類や用途に応じて適宜選
択することができる。
【0216】
尚、製造工程において、基材層は必要に応じて備えられるものであり、表面樹脂層が十分な自己支持性を有している場合には備えられる必要は無く、作製後に目的意匠物の表面に表面樹脂層のみを張り付けて使用することも可能である。
【0217】
基材層の厚さとしては、表面樹脂層を支持可能な厚さであれば特に限定されないが、例えば25μm以上500μm以下の範囲とすることが出来る。
【0218】
意匠シート表面樹脂層を構成する樹脂組成物には、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線又は電子線等の電離放射線硬化性樹脂等を使用することができ、無溶剤で用いても、溶剤に溶かして用いても良い。
【0219】
当該塗布の方法は特に限定されることはないが、例えばダイコート法等を適用することができる。
【0220】
塗布後、加熱乾燥や紫外線又は電子線等の電離放射、冷却等の、組成物に応じた適切な硬化方法により表面樹脂層の表面態様を固定させる。
【0221】
次いで、必要に応じて、得られた表面樹脂層の賦型シートに接した側とは反対側の面に基材層を接着剤により貼り合わせてもよい。
これにより表面樹脂層からなる賦型シート、または表面樹脂層と基材層とからなる意匠シートを得ることができる。
【実施例】
【0222】
以下実験により、一次賦型シートと、賦型シートを作製し、更に得られた賦型シートを用いて、微細柄凹凸模様を有する意匠シートを作製して、性能の評価を行った。
【0223】
<一次賦型シート原反の作製>
[紫外線硬化性樹脂組成物1の調整]
下記原料を混合して均一化し、紫外線硬化性樹脂組成物1を調整した。
【0224】
紫外線硬化性樹脂(三菱ケミカル(株)社製、ユピマー) 40質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 60質量部
【0225】
[一次賦型シート原反1の作製]
PETフィルムA(東レ(株)社製、ルミラーU34、厚さ100μm、塗布側面のSa0μm)の上に、賦型層として、上記の紫外線硬化性樹脂組成物1を塗布及び加熱乾燥して積層し、次いで、該賦型層が超鏡面のチルロールに接するように、超鏡面のチルロールと押圧ロールとの間に通して賦型層の表面を平滑化して、帯状の積層体(幅1500mm、長さ1500m)である、ミラー仕様表面の一次賦型シート原反1を作成した。賦型層表面のS
aは0.08μmだった。
【0226】
一次賦型シート原反1の層構成は下記の通り。
【0227】
PETフィルムA(100μm厚)/紫外線硬化性樹脂組成物1(30μm厚)
【0228】
[一次賦型シート原反2の作製]
図10のように、PETフィルムAを液状の上記紫外線硬化性樹脂組成物1が入ったバットを通過させてPETフィルムAの片面に紫外線硬化性樹脂組成物1を塗布し、塗布層
厚みを30μmに調整して賦型層を形成して一次賦型シート原反2を作製した。
紫外線硬化性樹脂組成物1は液状であるため、連続して一次賦型シート5の作製へと進めた。
【0229】
<一次賦型シートの作製>
上記で得た一次賦型シート原反1から、下記の一次賦型シート1〜6を作製した。
[一次賦型シート1の作製]
表面を銅めっきしたシリンダーを準備し、170mm幅内に、微細柄凹凸模様としては
図3に示されたパターンで、ピッチPが300μm、凸部幅Wが200μm、深さDが75μmになるようにシリンダー表面に切削して、ドラム状賦型版1を作製した。
【0230】
上記で得られた一次賦型賦型シート原反1を、
図11に示されたように、賦型層がドラム状賦型版1の表面に当たるように、ドラム状賦型版1と、表面が金属製で硬く平滑なバックアップロールとで挟んで、連続的に熱圧して、上記の微細柄凹凸模様を一次賦型シート原反1の賦型層に転写して、一次賦型シート原反1がドラム状賦型版1に巻き付けられている状態で、基材層側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物1を硬化して、次いで冷風で冷却して、ドラム状賦型版1から離型し、微細柄凹凸模様を有する一次賦型シート1を作製した。工程条件は下記の通り。
【0231】
ドラム状賦型版表面温度:120℃
バックアップロール表面温度:20℃
ドラム状賦型版加圧圧力:線圧270kgf/cm
シート送り速度:5m/分
冷風温度:20℃
【0232】
[一次賦型シート2の作製]
微細柄凹凸模様のサイズを、ピッチPが500μm、凸部幅Wが350μm、深さDが100μmに変更して、ドラム状賦型版2を作製した以外は、一次賦型シート1と同様に操作して、一次賦型シート2を作製した。
【0233】
[一次賦型シート3の作製]
次に、表面を銅めっきしたシリンダーを準備し、断面が二等辺三角形のバイトで、下記ピッチとバイト頂角の組み合わせ33種の線条パターンをシリンダー表面に切削して、ドラム状賦型版3を作製した。
【0234】
ピッチP:1μm、2μm、3μmの3水準。
【0235】
バイト頂角θ:70°から170°まで10°ずつの11水準。
【0236】
深さD:上記ピッチPとバイト頂角θから算出した。
【0237】
切削:100mm幅内に、1ピッチに対して、1バイト頂角の線条パターンを切削し、次いで、10mmの間隙を空けて、別種の線条パターンを切削することを繰り返した。
【0238】
上記で得られた一次賦型賦型シート原反1を、
図19に示されたように、賦型層がドラム状賦型版3の表面に当たるように、ドラム状賦型版3と、表面が金属製で硬く平滑なバックアップロールとで挟んで、連続的に熱圧して、上記の微細柄凹凸模様を一次賦型シート原反1の賦型層に転写して、一次賦型シート原反1がドラム状賦型版3に巻き付けられている状態で、基材層側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物1を硬化して、次いで冷風で冷却して、ドラム状賦型版3から離型し、微細柄凹凸模様を有する一次賦型シ
ート3を作製した。工程条件は下記の通り。
【0239】
ドラム状賦型版表面温度:120℃
バックアップロール表面温度:20℃
ドラム状賦型版加圧圧力:線圧270kgf/cm
シート送り速度:5m/分
冷風温度:20℃
【0240】
[一次賦型シート4の作製]
一次賦型シート1の一部を切断して、枚葉シートの一次賦型シート4を作製した。
【0241】
[一次賦型シート5の作製]
上記で作製した一次賦型シート原反2を、連続して、
図10に示したように、賦型層がドラム状賦型版3に接するように巻き付けて、ドラム状賦型版3の表面凹凸形状を圧着により賦型層に転写し、更に、一次賦型シート原反2がドラム状賦型版3に巻き付けられている状態で、基材層側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物2を硬化して、次いで冷却された取り出しロールで冷却して、微細柄凹凸模様を有する一次賦型シート5を作製した。各工程条件は下記の通り。
【0242】
ドラム状賦型版表面温度:40℃
取り出しロールの表面温度:30℃
シート送り速度:5m/分
冷風温度:20℃
【0243】
【表1】
【0244】
<賦型シート原反の作製>
[賦型シート原反1の作製]
賦型シート原反1の基材層用に、クレーコート層を形成した紙基材であるキャストコート紙(坪量164g/m
2)を準備した。
【0245】
このクレーコート層の上に、水性アンカーコート剤を介して、平滑化樹脂層として、ポリプロピレン樹脂80質量%とポリエチレン樹脂20質量%とのブレンド樹脂(サンアロマー株式会社製)を310℃で共押出機の第1押出機から押出して積層し、またその上に賦型層としてホモポリプロピレン樹脂(サンアロマー株式会社製)を共押出機の第2押出機から305℃で、ラインスピード80m/分で押出して積層した。
【0246】
次いで、賦型層が超鏡面のチルロールに接するように、積層体を、超鏡面のチルロールと押圧ロールとの間に通して賦型層表面を平滑化して、連続シートの帯状積層体(幅15
00mm、長さ1500m)である、賦型シート原反1(ミラー仕様表面)を作成した。基材層表面(平滑化樹脂層表面)のS
aは0.1μm、賦型層表面のS
aは0.08μmだった。
[賦型シート原反2の作製]
超鏡面ロールを超微細マット面のチルロールに変えた以外は、賦型シート原反1と同様に操作して、連続シートの帯状積層体(幅1500mm、長さ1500m)である、賦型シート原反2(マット仕様表面)を作成した。基材層表面(平滑化樹脂層表面)のS
aは0.1μm、賦型層表面のS
aは0.6μmだった。
[賦型シート原反3の作製]
賦型シート原反2の一部を切り取り、枚葉シートの積層体(幅1500mm、長さ1000mm)である、賦型シート原反3を作製した。
[賦型シート原反4の作製]
基材層用紙基材キャストコート紙を普通の紙基材に変えた以外は、賦型シート原反1と同様に操作して、連続シートの帯状積層体(幅1500mm、長さ1500m)である、賦型シート原反4(マット仕様表面)を作成した。基材層表面(紙基材層表面)のS
aは7μm、賦型層表面のS
aは0.8μmだった。
[賦型シート原反5の作製]
基材層用紙基材キャストコート紙を普通の紙基材に変え、超鏡面ロールを超微細マット面のチルロールに変えた以外は、賦型シート原反1と同様に操作して、連続シートの帯状積層体(幅1500mm、長さ1500m)である、賦型シート原反5(マット仕様表面)を作成した。基材層表面(紙基材層表面)のS
aは17μm、賦型層表面のS
aは8μmだった。
【0247】
【表2】
【0248】
[実施例1]
(賦型シート1の作製)
上記で得た、一次賦型シート1と、賦型シート原反1とを用いて、
図8(3)のように、連続的に、賦型シートの原反に基材層側から熱風を当てて加熱して、一次賦型シートと賦型シート原反とを、賦型層同士が対向するように重ねて、表面が平滑で硬く圧着により表面形状が変化しない構成を備えた2つのロールで挟んで熱圧して、一次賦型シートの微細柄凹凸模様を、賦型シート原反1の賦型層に転写によって追加した。
【0249】
この際、賦型シートの原反1が接する側のロールは加熱し、一次賦型シートが接する側のロールは冷却した。
【0250】
次いで、賦型シート原反1の基材層側から冷風を当てて冷却し、熱圧されて接着されている賦型シート原反1と一次賦型シート1とを、一対の剥離しロールを通して、剥離して、賦型シート1を得た。
【0251】
工程条件は、下記の通り。
【0252】
熱風の温度:110℃
一次賦型シートが接する側のロールの表面温度:30℃
賦型シートの原反1が接する側のロールの表面温度:120℃
ロール圧力:線圧270kgf/cm
冷風の温度:10℃
シート送り速度:5m/分
【0253】
(意匠シート1の作製)
意匠シートの微細柄凹凸模様が賦型される表面樹脂層用に、下記配合で意匠樹脂組成物1を調整した。
【0254】
ポリウレタン(大日精化工業(株)社製、レザミンNE−8811) 100質量部
着色剤(大日精化工業(株)社製、セイカセブンNET−5794ブラック) 15質量部
トルエン 25質量部
イソプロピルアルコール 25質量部
上記で作製した賦型シート1を、合成皮革製造装置に取り付け、意匠樹脂組成物1を賦型シートの賦型層に、ダイコート法により塗布した。
【0255】
塗布後、100℃〜120℃の範囲で2分加熱乾燥した。その後、接着剤を用いて基布と貼り合わせ、乾燥し、熟成させて、賦型シート1から離型し、意匠シート1を得た。
(評価)
上記で得られた意匠シート1について、マット質感を評価した。結果を表1に示した。
【0256】
[実施例2〜8、比較例1]
表3に記載した、一次賦型シート、賦型シート原反、プレス部品等の組み合わせに従って、実施例1と同様に操作して賦型シート及び意匠シートを作製し、微細柄凹凸模様のタイプがマットのものについてはマット質感の評価を、微細柄凹凸模様のタイプが回折光沢のもについては虹強さと虹視野広さの評価を行った。結果を表3に示した。
【0257】
表3中、プレス部品における記載は下記の意味である。
【0258】
平滑ロール(硬):表面が平滑で硬く圧着により表面形状が変化しない構成を備えた金属ロール。
【0259】
平滑ロール(硬):表面が柔らかく圧着により表面形状が変化する構成を備えた紙層のロール。
【0260】
平板(硬):表面が平滑で硬く圧着により表面形状が変化しない構成を備えた銅板。
【0261】
<評価方法>
[マット質感]
照度400ルクス(明るいオフィス相当)の試験環境下で、意匠シートから切り出した100mm角のサンプルを机の上に置き、被験者10名(20代から60代まで)が500mm上方位置から目視して、広くマット質感を感じる人数をカウントすることによって判定した。
【0262】
線状凸部が延びる方向を縦方向として、縦方向と横方向の両方において、3名以上が広く均質なマット質感を感じた場合に良好とした。
[虹強さ]
虹強さの評価は、変角分光測定器(S−OGM、デジタルファッション株式会社)を用いて行った。
【0263】
意匠シート表面に対して、入射角度0度(意匠シートの法線方向)から白色(キセノン光源)を照射し、出射角度ごとのXYZ表色系を求めた。明度に対応するYの値を、白色(キセノン光源)のY値で規格化したゲインを求めた。
【0264】
線状凸部が延びる方向を縦方向として、縦方向と横方向の両方において、正反射光を除いた規格化したゲインの最大値が0.1以上の場合に良好として、各ピッチ毎に良好な模様バイト頂角と深さの範囲を求めた。
[視野広さ]
照度400ルクス(明るいオフィス相当)の試験環境下で、意匠シートから切り出した100mm角のサンプルを机の上に置き、被験者10名(20代から60代まで)が500mm上方位置から目視して、虹の視野広さを広いと感じる人数をカウントすることによって判定した。
【0265】
線状凸部が延びる方向を縦方向として、縦方向と横方向の両方において、3名以上が視野が広いと感じた場合に良好として、各ピッチ毎に良好な模様バイト頂角と深さの範囲を求めた。
[結果まとめ]
【0266】
【表3】
表3からわかるように、本発明にかかる一次賦型シートと賦型シートを用いることにより、実施例1〜8において、良好なマット質感や、回折光沢を、広い範囲で明るく観察し得る意匠シートが得られた。
【0267】
賦型シート原反の基材層及び賦型層のSaが大きい比較例1は、マット質感が不均質な結果になった。