(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[ラベル積層体]
本発明のラベル積層体は、第1の粘着シートおよび第2の粘着シートを有するラベル積層体であって;
第1の粘着シートは一方の面に第1の粘着部および第1の剥離部を有し、かつ、他方の面に第1の記録面を有し;
第2の粘着シートは一方の面に第2の粘着部および第2の剥離部を有し、かつ、他方の面に第2の記録面を有し;
第1の粘着部および第2の剥離部が積層され、かつ、第1の剥離部および第2の粘着部が積層され;
80℃環境下において第1の粘着シートおよび第2の粘着シートをシート面に平行かつ互いに反対方向へ引っ張る場合の剪断応力が12N/25mm以上であり;
第1の粘着部および第2の粘着部を構成する粘着剤の80℃環境下において周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率が6000Pa以上である。
【0015】
この構成により、本発明のラベル積層体は、高温で両面印刷される場合にカールおよび粘着剤のはみ出しが抑制される。
ラベル積層体の80℃環境下において測定される剪断応力が特定の範囲以上であると、第1の記録面印刷中の加熱によって粘着部の粘着剤が軟化または硬化することに起因する粘着シートの剛性および/または伸びの変化を抑制でき、プリンターの通紙経路においてカールおよび粘着剤のはみ出しが抑制される。
粘着剤の80℃環境下において周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率が特定の範囲以上であると、第1の記録面印刷中の加熱によって粘着部の粘着剤が軟化または硬化することに起因する粘着シートの剛性および/または伸びの変化を抑制でき、プリンターの通紙経路においてカールおよび粘着剤のはみ出しが抑制される。
以下、本発明のラベル積層体の好ましい態様を説明する。
【0016】
<ラベル積層体の剪断応力>
本発明のラベル積層体は、80℃環境下において第1の粘着シートおよび第2の粘着シートをシート面に平行かつ互いに反対方向へ引っ張る場合の剪断応力が12N/25mm以上である。
80℃環境下において第1の粘着シートおよび第2の粘着シートをシート面に平行かつ互いに反対方向へ引っ張る場合の剪断応力は、14N/25mm以上であることが好ましく、16N/25mm以上であることがより好ましい。
80℃環境下において第1の粘着シートおよび第2の粘着シートをシート面に平行かつ互いに反対方向へ引っ張る場合の剪断応力は、上限値に制限はなく、例えば30N/25mm以下とすることができる。
【0017】
<ラベル積層体の構成>
本発明のラベル積層体の構成を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明のラベル積層体の一例の断面を表す概略図である。
図2は、第1の粘着シートおよび第2の粘着シートの一例の断面を表す概略図である。
図1に示すラベル積層体30は、第1の粘着シート10および第2の粘着シート20を有する。
第1の粘着シート10は、
図1では省略したが、
図2に示すように一方の面に第1の粘着部11および第1の剥離部12を有し、かつ、他方の面に第1の記録面14を有する。さらに第1の粘着シート10は、第1の基材13を有することが好ましい。
第2の粘着シート20は、
図1では省略したが、
図2に示すように一方の面に第2の粘着部21および第2の剥離部22を有し、かつ、他方の面に第2の記録面24を有する。さらに第2の粘着シート20は、第2の基材23を有することが好ましい。
ラベル積層体30は、第1の粘着部11および第2の剥離部22が積層され、かつ、第1の剥離部12および第2の粘着部21が積層される。この構成により、第1の粘着シート10および第2の粘着シート20は互いに貼り合わせられており、かつ、高温で両面印刷された後のラベル積層体の第1の粘着シート10と第2の粘着シート20を互いに剥離できる。
【0018】
以下において「粘着シート」として説明する場合は、第1の粘着シートおよび第2の粘着シートに共通する説明である。「粘着部」として説明する場合は、第1の粘着部および第2の粘着部に共通する説明である。「剥離部」として説明する場合は、第1の剥離部および第2の剥離部に共通する説明である。「記録面」として説明する場合は、第1の記録面および第2の記録面に共通する説明である。「基材」として説明する場合は、第1の基材および第2の基材に共通する説明である。
【0019】
第1の粘着部11、第1の剥離部12、第2の剥離部22および第2の粘着部21の関係は、第1の粘着部11および第2の剥離部22が積層され、かつ、第1の剥離部12および第2の粘着部21が積層されていれば、特に制限はない。任意のパターンで第1の粘着部11、第1の剥離部12、第2の剥離部22および第2の粘着部21をそれぞれ形成することができる。
その中でも、本発明では、第1の粘着部11が第2の剥離部22の面内に位置し、第2の粘着部21が第1の剥離部12の面内に位置することが好ましい。すなわち、第1の粘着部11は、第2の剥離部22の面内に包含され、第2の剥離部22からはみ出していないことが好ましい。第2の粘着部21は、第1の剥離部12の面内に包含され、第1の剥離部12からはみ出していないことが好ましい。
【0020】
本発明では、第1の粘着部および第2の粘着部がそれぞれ複数個であることが、80℃環境下において測定される剪断応力を大きくしやすい観点から好ましい。
第1の粘着部および第2の粘着部は、3個以上であることが好ましく、3〜100個であることがより好ましく、3〜30個であることが特に好ましい。
第1の剥離部および第2の剥離部もそれぞれ複数個であることが、第2の粘着部および第1の粘着部の個数に対応させる観点から好ましい。
第1の剥離部および第2の剥離部は、それぞれ第2の粘着部および第1の粘着部と同数以上であることが好ましい。第1の剥離部および第2の剥離部は、それぞれ第2の粘着部および第1の粘着部より1個以上多い(パターン形状によっては一列以上多い)ことが糊代(耳部)を設ける観点からより好ましい。
第1の粘着部および第2の粘着部がそれぞれ複数個である場合、2以上の第1の粘着部どうしが隣接していないことが好ましく、2以上の第2の粘着部どうしが隣接していないことが好ましい。この構成により、第1の粘着シートと第2の粘着シートの高温で両面印刷される場合の密着性を保ちつつ、高温で両面印刷された後の第1の粘着シートと第2の粘着シートの剥離を軽くすることができる。
【0021】
第1の粘着部および第2の粘着部は、規則的な所定パターンで配列されることが好ましい。同様に、第1の剥離部および第2の剥離部は規則的な所定パターンで配列されることが好ましい。
第1の粘着部および第2の粘着部のパターンとしては、ドットパターン状、ストライプ状などを挙げることができ、ストライプ状であることが好ましい。
【0022】
第1の粘着部および第2の粘着部がドットパターン状である場合、均一なドットパターンであることが好ましい。
ドットパターンを形成するドットは、所望の形状のドットとすることができる。
所望の形状のドットとしては、略円形、イチョウ形、星形、多角形、絵柄、スパイラル状、波状、ジグザグ状、縞状とすることもできる。
非連続的に設けられた粘着部は剥離部に貼付した際に押圧により、若干押し広げられた状態となる場合がある。この場合、粘着部の形状が略円形などの所望の形状のドットであると、押し広げられた場合であっても、厚みムラができにくく、剥離部との密着を良好にできる。
粘着部の形状がドットパターンである場合、特開2014−153540号公報の[0021]〜[0022]、[
図2]〜[
図6]に記載された形状が好ましく、この公報の内容は参照して本明細書に組み込まれる。
【0023】
第1の粘着部および第2の粘着部がストライプ状である場合、本発明では、第1の粘着部および第2の粘着部が複数のストライプ状であることが、80℃環境下において測定される剪断応力を大きくしやすい観点から好ましい。
図3は、第1の粘着シートおよび第2の粘着シートの一例を粘着部および剥離部が形成された側から見た概略図である。
図3は、
図2に示した第1の粘着シート10および第2の粘着シート20を粘着部側から見た図を示している。
【0024】
本発明では、第1の剥離部および第2の剥離部が複数のストライプ状であることが好ましい。
第1の粘着部のストライプ幅は、第2の剥離部のストライプ幅と同じであるか、第2の剥離部のストライプ幅より狭いことが好ましい。本発明では、第1の粘着部のストライプ幅が第2の剥離部のストライプ幅より狭いことがより好ましい。第1の粘着部のストライプ幅は、0.1〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましく、2〜5mmであることが特に好ましい。
第2の粘着部のストライプ幅は、第1の剥離部のストライプ幅と同じであるか、第1の剥離部のストライプ幅より狭いことが好ましい。本発明では、第2の粘着部のストライプ幅が第1の剥離部のストライプ幅より狭いことが好ましい。第2の粘着部のストライプ幅は、0.1〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましく、2〜5mmであることが特に好ましい。
第1の粘着部のストライプ幅が、第2の剥離部のストライプ幅より狭い場合、第1の粘着部のストライプ幅が、第2の剥離部のストライプ幅の70%以上、且つ99%以下であることが好ましい。
第1の粘着部のストライプ幅が、第2の剥離部のストライプ幅の70%以上であることにより、粘着シートの被着体への接着力をより強くすることができる。
第1の粘着部のストライプ幅が、第2の剥離部のストライプ幅の99%以下であることにより、第1の粘着部と第2の粘着部の粘着剤同士が接触を避け、第1の粘着シートと第2の粘着シートを容易に剥離することができる。
【0025】
ラベル積層体は、一方の粘着シートに、めくり代部を設けてもよい。
ラベル積層体は、ロール状に巻き取られて形成されるシートロールとしてもよい。また、ラベル積層体は、カットされて枚葉状としてもよい。
ラベル積層体の第1の粘着シートおよび第2の粘着シートは、一部で互いに完全に接着されて完全に剥離できなくてもよく、互いに完全に接着される部分を設けずに完全に剥離できてもよい。
【0026】
<粘着シート>
本発明では、第1の粘着シートは一方の面に第1の粘着部および第1の剥離部を有し、かつ、他方の面に第1の記録面を有し;
第2の粘着シートは一方の面に第2の粘着部および第2の剥離部を有し、かつ、他方の面に第2の記録面を有する。
粘着シートを構成する各部の好ましい態様を説明する。
【0027】
(基材)
粘着シートは基材を有していることが好ましい。
本発明で用いる基材としては、紙、布、セロファン、プラスチックフィルム、金属板、木板、ガラス板等平面性を有する材料を利用することができるが、中でも紙を用いることが好ましい。本発明で用いる紙基材を構成するパルプは紙力、抄紙適性を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF;JIS P−8121)程度であることが好ましい。
【0028】
パルプ繊維は、木材、その他の植物から機械的又は化学的処理によって取り出したセルロース繊維の集合体である。パルプ繊維としては、通常、上質紙、板紙等の紙の原料に使用されるものを用いることができ、例えば古紙パルプ、化学パルプ、機械パルプ等の各繊維を挙げることができる。
【0029】
古紙パルプとしては、例えば、段ボール古紙、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0030】
化学パルプとしては、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等が挙げられる。
【0031】
機械パルプとしては、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等が挙げられる。
【0032】
これらのパルプ繊維の中でも、得られる基材に優れた強度、寸法安定性及び加工適性を併せ持って付与できる観点から、化学パルプが好ましく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が特に好ましく用いられる。
【0033】
基材の表面に筆記性および捺印性を付与するために、基材に顔料を配合することが好ましい。顔料としては、軽質炭酸カルシウム、焼成カオリン、ホワイトカーボン、タルク、酸化チタン等が挙げられる。中でも、タルク、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボンを用いることが好ましい。
基材に顔料を配合する場合は、基材中に対する顔料の含有率は、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。顔料の含有率を上記範囲内とすることにより、筆記性および捺印性を良好にすることができる。また、顔料の含有率を上記上限値以下とすることにより、十分な紙力も得ることができる。
【0034】
助剤としては、例えば、内添サイズ剤(高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等)、定着剤(硫酸バンド、カチオン性高分子電解質等)、紙力増強剤(デンプン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等)、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤、防黴剤等が挙げられる。
【0035】
また、基材には、表面強度やサイズ性等を調整する目的で、サイズプレスまたはゲートロールによってサイズ処理を施してもよい。
サイズ処理に使用するサイズ処理液としては、例えば、デンプン類、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、表面サイズ剤、カチオン樹脂等を溶媒に配合した処理液が挙げられる。表面サイズ剤としては、例えば、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン系共重合体、アルキルケテンダイマー系化合物、アルケニル無水コハク酸系化合物、スチレン−アクリル系共重合体、高級脂肪酸系化合物、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等を挙げることができる。
サイズ処理液の塗工量は、乾燥質量で0.3〜5.0g/m
2であることが好ましく、0.5〜3.0g/m
2であることがより好ましい。塗工量が上記下限値以上であれば、サイズ処理の効果が得られ易い。また、塗工量が上記上限値を超えるとサイズ処理の効果は頭打ちになるので、上記上限値以下とすることでコスト面でも有利となる。なお、サイズ処理を両面に施す場合は、サイズ処理液の塗工量は、両面合計で上記範囲内とすることが好ましい。
【0036】
基材の秤量は40〜210g/m
2であることが好ましく、60〜120g/m
2であることがより好ましい。秤量を上記下限値以上とすることにより、十分な紙力が得られやすい。また、秤量を上記上限値以下とすることにより、紙厚を薄くすることができる。
紙基材の密度は、0.55〜1.00g/cm
3であることが好ましい。密度を上記範囲内とすることにより、十分な紙力を有するとともに、筆記性および捺印性を高めることができる。
【0037】
基材は、未塗工紙、または片面に塗工層を設けた片面塗工紙であることが好ましい。基材を片面塗工する場合、良好な筆記性および捺印性を得ることができる。この場合、基材は、筆記および捺印をする面とは反対側に塗工層を有することが好ましい。
未塗工紙としては、例えば、上質紙、中質紙、片艶紙等が挙げられる。また、片面塗工紙として一般の印刷用紙、感熱記録紙を用いてもよい。
【0038】
(記録面)
記録面としては特に制限はない。基材が、紙基材などの記録可能な基材である場合は、基材の表面を記録面として用いることが好ましい。
本発明では、第1の粘着シートが第1の記録面を兼ねる第1の基材を有し、第2の粘着シートが第2の記録面を兼ねる第2の基材を有することが好ましい。
記録面とは反対側の粘着部および剥離部が形成される側の面に着色した絵および文字柄等を形成してもよい。粘着部および剥離部が形成される側の面に着色した絵柄等を形成することにより、ラベル積層体の粘着シートを剥離した後に幼児等の興味や関心を集めることもできるため、ラベル積層体を幼児用玩具や幼児用教材のラベルとしても好ましく用いることができる。
また、ラベル積層体の記録面に対して、両面印刷で着色した絵および文字柄等を形成することにより、ラベル積層体の粘着シートを剥離する前に幼児等の興味や関心を集めることもできる。
【0039】
(粘着部)
粘着部を形成する粘着剤としては、溶剤粘着剤、エマルション粘着剤、ホットメルト粘着剤が挙げられる。中でも、基材中に粘着剤が浸み込みにくく、また、パターン塗工適性が高いという点から、ホットメルト粘着剤が好ましく用いられる。すなわち、本発明では、第1の粘着部および第2の粘着部がホットメルト粘着剤から構成されることが好ましい。なお、ホットメルト粘着剤は、強粘性を示すため、粘着部が剥離部から剥離することを抑制することができる。
ホットメルト粘着剤とは、80℃以上に加熱した場合に、ゴム状平坦領域から流動域となる粘着剤のことを言う。
【0040】
本発明に用いる粘着剤としては、一般に強粘性と呼ばれている粘着剤を用いることが好ましい。強粘性以外の中粘性、弱粘性といった粘着剤を用いると貼付した粘着シートが輸送中に落下する等の不具合を生じることがある。強粘性の粘着剤とは、全面均一に粘着部を設けた粘着シートにおいて、粘着部のJIS Z 0237に基づいて測定される23℃、相対湿度50%環境下における180°引き剥がし粘着力が、3N/10mm以上である。この場合の180°引き剥がし粘着力は5N/10mm以上であることがより好ましく、7N/10mm以上であることがさらに好ましい。
【0041】
−ポリマー−
ホットメルト粘着剤は、ポリマーを含むことが好ましい。
本発明に用いられるポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン―アクリル酸共重合体、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性ポリマーが挙げられる。中でも、粘着力の安定性、ブリード、コストの点からスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性ポリマーを用いることが好ましく、スチレン系ポリマーを用いることがより好ましい。
【0042】
スチレン系ポリマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。この中でも、SISが好ましい。
SISとしては、スチレン成分が20質量%以下(好ましくは5〜15質量%)である第1のSISと、スチレン成分が20質量%を超える(好ましくは25〜50質量%)第2のSISを併用することが好ましい。第1のSISは、ホットメルト粘着剤の全質量に対し、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましく、15〜19質量%であることが特に好ましい。第2のSISは、ホットメルト粘着剤の全質量に対し、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。
【0043】
アクリル系ポリマーとしては、特開平11−323072号公報に記載のガラス転移温度が30℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックの両端にガラス転移温度が110℃以上で且つシンジオタクチシチーが70%以上であるメタクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックが結合したトリブロック共重合体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ジブロック共重合体を含有するブロック共重合体組成物、特開2004−2736号公報に記載のメタクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックとアクリル酸アルキルエステル系重合体ブロックよりなる特定のジブロック共重合体と(メタ)アクリル酸エステル系トリブロック共重合体を含有する粘着剤組成物、特開2005−307063号公報に記載の重量平均分子量が12万以上、分子量分布(Mw/Mn)が1.5未満である(メタ)アクリル酸エステル系トリブロック共重合体と(メタ)アクリル酸エステル系ジブロック共重合体とを含有する粘着剤組成物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0044】
ポリマーは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ポリマーとしては、重量平均分子量が1〜10万(好ましくは3〜7万)である第1のポリマーと、重量平均分子量が10万を超える(好ましくは30〜150万)第2のポリマーを併用することが好ましい。
ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は1.5未満以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。
ポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。ポリマーとしては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0045】
−粘着付与剤−
粘着部を形成する粘着剤には、粘着性を向上させる目的で、粘着付与剤が配合されてもよい。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン、エステルガム、エステルガムH、ポリテルペン樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、およびこれらの水添物等が挙げられる。中でも、ポリテルペン樹脂、C5系石油樹脂の水添物およびC9系石油樹脂の水添物が好ましく用いられる。これらの中でも、ロジンが好ましい。
粘着付与剤として、市販品を用いてもよい。例えば、ロジンエステルである荒川化学社製「エステルガム105」を挙げることができる。
粘着付与剤は、ホットメルト粘着剤の全質量に対し、5〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、30〜45質量%であることが特に好ましい。
【0046】
−軟化剤−
粘着部を形成する粘着剤には、装置適合性を考慮して軟化剤が配合されてもよい。
軟化剤としては、例えば、各種可塑剤、ポリブテン、液状粘着付与剤樹脂、ポリイソブチレン低重合体、ポリビニルイソブチルエーテル低重合体、ラノリン、解重合ゴム、プロセスオイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、加硫オイル等が挙げられる。これらの中でも、パラフィン系オイルが好ましい。
軟化剤として、市販品を用いてもよい。例えば、パラフィン系オイルである米国シェル・ケミカル・カンパニー社製「シェルフレックス371N」を挙げることができる。
軟化剤は、ホットメルト粘着剤の全質量に対し、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。
【0047】
−酸化防止剤−
粘着部を形成する粘着剤には、酸化防止剤が配合されてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤として、市販品を用いてもよい。例えば、フェノール系酸化防止剤である住友化学社製「スミライザーGM」を挙げることができる。
酸化防止剤は、ホットメルト粘着剤の全質量に対し、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましい。
【0048】
−粘着剤の剪断貯蔵弾性率−
本発明では、第1の粘着部および第2の粘着部を構成する粘着剤の80℃環境下において周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率が6000Pa以上である。
粘着部を構成する粘着剤の80℃環境下において周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率は、7000Pa以上であることが好ましく、7500Pa以上であることがより好ましい。
粘着部を構成する粘着剤の80℃環境下において周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率は、上限値に制限はなく、例えば30000Pa以下とすることができる。
【0049】
基材の表面の面積に対して、粘着部が占める面積の割合は、20〜50%であることが好ましい。粘着部が占める面積の割合は、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。また、粘着部が占める面積の割合は、50%未満であることが好ましく、49%以下であることがより好ましく、48%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
(剥離部)
剥離部を形成する剥離剤としては、特に制限はなく、シリコーン系剥離剤を好ましく用いることができる。シリコーン系剥離剤としては、例えば、熱硬化型剥離剤(付加反応型シリコーン系剥離剤、縮合反応型シリコーン系剥離剤等)、電子線硬化型シリコーン系剥離剤、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤(ラジカル重合型シリコーン系剥離剤、カチオン重合型シリコーン系剥離剤、メルカプト−ビニル付加重合型シリコーン系剥離剤等)等が挙げられる。中でも、硬化速度が速く、紙基材に浸み込みにくいため、電子線硬化型シリコーン系剥離剤または紫外線硬化型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。なお、これらの剥離剤は、ラベル積層体とした際に粘着シートどうしの剥離を軽くするという利点も有する。また、設備投資を少なくする観点から、紫外線硬化型シリコーン系剥離剤またはカチオン重合型シリコーン系剥離剤も好ましく用いられる。
剥離剤として、市販品を用いてもよい。例えば、ポリオルガノシロキサンであるローディア社製「シリコリースPOLY201」を挙げることができる。
【0051】
剥離剤には、必要に応じて、他の紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、光重合開始剤、架橋剤、染料、顔料、湿潤剤、消泡剤、分散剤、帯電防止剤、レベリング剤、潤滑剤等の各種助剤を配合してもよい。
光重合開始剤として、市販品を用いてもよい。例えば、オニウム塩系の光重合開始剤であるローディア社製の「シリコリースCATA211」を挙げることができる。
【0052】
粘着シートの剥離を軽くする観点から、剥離部の表面の平滑度は、10秒以上であることが好ましく、30秒以上であることがより好ましい。なお、平滑度は、「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.5−2に基づく王研式平滑度」に準じて求めることができる。
【0053】
基材の表面の面積に対して、剥離部が占める面積の割合は、50〜80%であることが好ましい。剥離部が占める面積の割合は、51%以上であることがより好ましく、52%以上であることが特に好ましい。また、剥離部が占める面積の割合は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
【0054】
(粘着シートのその他の構成)
粘着シートは、その他の構成を備えていてもよい。
特開2014−153540号公報の
図5(a)に示されるように、粘着シートは、一定以上の面積を持った非粘着部を有していてもよい。非粘着部には、粘着剤が塗工されない。このため、基材の反対側の剥離部であって、粘着シートを積層した際に非粘着部が重なる部分には、剥離剤を塗工する必要がなくなる。すなわち、基材において、非粘着部に対応する領域には、剥離剤が積層されていない非積層部を設けることができる。非積層部では、基材が露出することとなる。非粘着部および非積層部の形状は、円形、楕円形、四角形、三角形等の様々な形状とすることができる。非粘着部と非積層部は積層した際に重なるように、同一の形状とすることが好ましい。
【0055】
<ラベル積層体の製造方法>
ラベル積層体の製造方法としては特に制限はない。
ラベル積層体の製造方法は、第1の粘着シートおよび第2の粘着シートを貼り合わせるラベル積層体の形成工程を含むことが好ましい。
ラベル積層体の形成工程は、第1の粘着シートを製造する工程および第2の粘着シートを製造する工程を含むことが好ましい。
第1の粘着シートを製造する工程および第2の粘着シートを製造する工程は、剥離部の形成工程、および粘着部の形成工程を含むことが好ましい。さらに、第1の粘着シートを製造する工程および第2の粘着シートを製造する工程は、基材の製造工程を含んでいてもよい。
【0056】
(基材の製造)
基材の製造工程としては特に制限はない。
基材として紙基材を用いる場合、紙基材は、長網抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機、ツインワイヤーフォーマー、傾斜ワイヤーフォーマー等の公知の抄紙機を使用した抄紙により得ることができる。なお、紙基材はカレンダー処理等の公知の処理を施したものであってもよい。
【0057】
(剥離部の形成)
剥離部の形成工程としては特に制限はない。剥離部の形成工程は、剥離部を形成する剥離剤の塗工工程を含むことが好ましい。
剥離部を形成する剥離剤の塗工方法は、パターン塗工方法であることが好ましい。パターン塗工方法とは、組成物を基材の上に、様々な形状となるように塗工することができる塗工方法である。これにより、所定の形状の剥離部(粘着部も同様)を基材上に形成できる。
パターン塗工方法においては、スリットコーターによるパートコート法や、所定の凹凸模様を形成したパターンロールを基材と接触させる方法を挙げることができる。本発明では、スリットコーターによるパートコート法であることが好ましい。
【0058】
スリットコーターによるパートコート法では、基材を搬送しながら、スリットコーターに組成物を供給することにより、MD(搬送)方向に長手方向を有するストライプ状の組成物を塗工することができる。
【0059】
所定の凹凸模様を形成したパターンロールを基材と接触させる方法では、パターンロールに凹凸模様を厳密に形成し、凸部に供給する組成物の供給量を制御することにより、所望の場所に、組成物を正確に塗工することができる。例えば、2本のロール間のギャップを利用する方法、ダイヘッドを利用する方法、グラビアヘッドを利用する方法、フレキソヘッドを利用する方法などを好ましい方法として挙げることができる。所定の凹凸模様を形成したパターンロールを基材と接触させる方法では、コの字状、ドット状(海島状、逆海島状)など複雑な形状の剥離部(粘着部も同様)を精度よく形成できる。パターンロールは、シリコーン樹脂版等の凸版を利用することが好ましい。このようなパターン塗工法の具体例として、サンツール社製のデザインコートを挙げることができる。
【0060】
塗工された剥離剤を硬化させる装置としては、熱風ドライヤー、遠赤外線ドライヤー、紫外線照射装置、電子線照射装置等が挙げられる。
【0061】
剥離部を形成する剥離剤の塗工量は、乾燥質量で、0.2〜2.0g/m
2であることが好ましく、0.5〜1.5g/m
2であることがより好ましい。塗工量を上記範囲内とすることにより、適切な範囲に塗工することができ、ラベル積層体の剪断応力および剥離力を適切な範囲とすることができる。
【0062】
(粘着部の形成)
粘着部の形成工程としては特に制限はない。粘着部の形成工程は、粘着部を形成する粘着剤の塗工工程を含むことが好ましい。
粘着剤の塗工工程は、パターン塗工方法であることが好ましい。パターン塗工方法は、ホットメルト粘着剤を用いる場合、スリットコーターによるパートコート法であることが好ましい。ホットメルト粘着剤を用いる場合、120〜200℃の加温下で混合したホットメルト粘着剤を塗工することが好ましい。
剥離部の形成工程の後に、粘着部の形成工程を行うことが好ましい。この場合、剥離部の形成されていない部分に対して位置合わせをして、パターン塗工方法で粘着剤の塗工工程を行うことが好ましい。
【0063】
粘着部は、パターン塗工方法以外に基材全面に粘着部を設けた後、糊殺し印刷を行い形成することもできる。基材全面に粘着部を設ける方法として、コンマコーター、バーコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、バリオグラビアコーター、カーテンコーター等を用いることが好ましい。糊殺し印刷をする方法としては、オフセット印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷(凸版印刷)を挙げることができる。
【0064】
粘着部を形成する粘着剤の塗工量は、乾燥質量で、5〜50g/m
2であることが好ましく、10〜30g/m
2であることがより好ましい。
粘着部を形成する粘着剤の塗工厚さは、5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。
塗工量を上記範囲内とすることにより、適切な範囲に塗工することができ、十分な粘着性を得ることができる。
【0065】
(ラベル積層体の形成)
ラベル積層体の形成工程としては特に制限はない。
ラベル積層体の形成工程では、第1の粘着シートおよび第2の粘着シートを貼り合わせる場合に、第1の粘着部および第2の剥離部を積層し、かつ、第1の剥離部および第2の粘着部を積層することが好ましい。例えば、第1の粘着シートのストライプ状の粘着部と第2の粘着シートのストライプ状の剥離部が接触するように、ストライプ幅の整数倍の本数分(好ましくは1本分)を互いにずらした状態で2枚の粘着シートを積層する方法を挙げることができる。
ラベル積層体は、カットして、所望の形状およびサイズとすることができる。必要に応じてTD方向の端部(例えば、粘着部と接していない剥離部のみが形成された耳部)をカットしてもよい。
【0066】
<ラベル積層体の用途>
本発明のラベル積層体は、高温で両面印刷される場合にカールおよび粘着剤のはみ出しが抑制されるため、圧着ハガキ、圧着封筒などの大量かつ高速での両面印刷の用途、または、レーザープリンターなど高温で両面印刷されるプリンター用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、本実施例中の「%」は、特に断わらない限り質量%を示す。また、「部」は質量部を示す。
【0068】
[実施例1]
<基材の製造>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)をフリーネス430mL(CSF)になるまで叩解し、濃度0.5質量%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中に、パルプ絶乾質量に対し、カチオン化澱粉2.0質量%、アルキルケテンダイマー0.4質量%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1質量%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7質量%、顔料としてタルクを添加して、十分に撹拌して分散させた。なお、タルクの添加量はでき上がった紙基材に対して2質量%となるようにした。
次に、酸化澱粉(商品名「エースA」、王子コーンスターチ社製)に水を加えて加熱溶解し、濃度を5質量%に調整してサイズプレス液とした。
パルプスラリーを抄紙機で抄紙して原紙を得た後、抄紙機に付帯されたサイズプレスにて、サイズプレス液によって原紙の両面にサイズ処理を行い、紙基材を得た。サイズプレス液の紙基材への吸収量は、両面合計で50mL/m
2であった。
最後に抄紙機エンドのマシンカレンダーにてカレンダー処理を行い、坪量100g/m
2、密度0.85g/cm
3、ステキヒトサイズ度35秒の紙基材を得た。また、得られた紙基材について、JIS P 8121で規定されるカナディアンスタンダードフリーネス(ろ水度;CSF)に基づく、離解後のフリーネスを測定したところ、350mLであった。
【0069】
<絵および文字柄の印刷>
得られた紙基材の片面(ラベル積層体とした際の記録面とは反対側の面)上に、TOKA社製アミンレスUVインキ(商品名:NVR)を用いて絵および文字柄を印刷した。
【0070】
<剥離部の形成>
ポリオルガノシロキサン(商品名「シリコリースPOLY201」、ローディア社製)100質量部に、オニウム塩系の光重合開始剤(商品名「シリコリースCATA211」、ローディア社製)5質量部を混合して、剥離剤塗料を得た。
紙基材を搬送しながら、紙基材の絵および文字柄を印刷した側の上に、得られた剥離剤塗料を、スリットコーターによるパートコートにて塗工し、メタルハライド紫外線照射装置にて紫外線照射量140mJ/cm
2の条件で剥離剤塗料の塗工部を硬化して、剥離部を設けた。
この剥離部を形成する剥離剤塗料の塗工量は、乾燥質量(固形分質量)で1g/m
2であった。
また、剥離部は塗工部幅5mm、未塗工部幅5mmの搬送方向(MD方向)に長手方向を有するストライプ状に形成した。
【0071】
<粘着部の形成>
次に、第1のSIS(スチレン成分10質量%、イソプレン成分90質量%、分子量Mw=5×10
4、分散度Mw/Mn=1.02)を18質量部、第2のSIS(スチレン成分30質量%、イソプレン成分70質量%、重量平均分子量Mw=5×10
5、分散度Mw/Mn=1.05)を20質量部、ロジンエステル(荒川化学社製「エステルガム105」)を39質量部、パラフィン系オイル(米国シェル・ケミカル・カンパニー社製「シェルフレックス371N」)を22質量部、酸化防止剤(住友化学社製「スミライザーGM」)を1質量部で配合し、150℃の加温下で攪拌混合し、ホットメルト粘着剤を得た。
紙基材を搬送しながら、紙基材の剥離部が形成された部分の剥離部に挟まれた領域(未塗工部)に、得られたホットメルト粘着剤を、スリットコーターによるパートコートにて塗工し、粘着部を形成し、粘着シートを得た。
この粘着部を形成するホットメルト粘着剤の塗工量は、乾燥質量(固形分質量)で20g/m
2であった。
得られた粘着シートは、ストライプ幅3.75mmのストライプ状の粘着部と、ストライプ幅5mmのストライプ状の剥離部が交互に配列したものである。また、粘着シートは、MD方向と直交する方向(TD方向)の両端がストライプ状の剥離部であり、ストライプ状の剥離部に挟まれた領域にストライプ状の粘着部が位置する。
【0072】
<ラベル積層体の形成>
粘着シートを2枚作製し、第1の粘着シートおよび第2の粘着シートとした。
第1の粘着シートのストライプ状の粘着部と第2の粘着シートのストライプ状の剥離部が接触するように、ストライプ幅1本分を互いにずらした状態で2枚の粘着シートを積層して、実施例1のラベル積層体を得た。
【0073】
[実施例2および3]
ホットメルト粘着剤の第2のSIS、ロジンエステルおよびパラフィン系オイルの配合量を下記表1のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2および3のラベル積層体を得た。
【0074】
[比較例1]
第1のSEPS(スチレン成分12質量%、エチレン/プロピレン成分88質量%、分子量Mw=3×10
4、分散度Mw/Mn=1.05)を20質量部、第2のSEPS(スチレン成分25質量%、エチレン/プロピレン成分75質量%、重量平均分子量Mw=3×10
5、分散度Mw/Mn=1.10)を10質量部、ロジンエステル(荒川化学社製「エステルガム105」)を40質量部、パラフィン系オイル(米国シェル・ケミカル・カンパニー社製「シェルフレックス371N」)を29質量部、酸化防止剤(住友化学社製「スミライザーGM」)を1質量部で配合し、150℃の加温下で攪拌混合し、ホットメルト粘着剤を得た。
得られたホットメルト粘着剤を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1のラベル積層体を得た。
【0075】
[比較例2]
ホットメルト粘着剤の第1のSIS、第2のSIS、ロジンエステルおよびパラフィン系オイルの配合量を下記表1のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2のラベル積層体を得た。
【0076】
[評価]
<80℃環境下の剪断応力>
ラベル積層体を25mm×25mm(ストライプ状の粘着部のストライプ幅3.75mm×3本分)になるようにカットし、80℃環境下に3時間置いて養生した。
その後、片方の第1の粘着シートをストライプ状の粘着部の剪断方向(TD方向)に引っ張りを行い、固定した(実質的に第1の粘着テープとは反対方向に引っ張られる)もう片方の第2の粘着シートから粘着部が剥がれる強度を、以下の方法で測定した。
測定温度:80℃
試験機:島津製作所製オートグラフ AGS−J
試験速度:300mm/分
図4は、80℃環境下の剪断応力の測定方法を説明する概略図である。
図4に、第1の粘着シート10と、第2の粘着シート20と、第2の粘着シート20を固定して第1の粘着シート10を引っ張る方向40の関係を示した。なお、点線の矢印は、固定された第2の粘着シート20を実質的に引っ張る方向40に相当する。
得られた強度の値を、80℃環境下において第1の粘着シートおよび第2の粘着シートをシート面に平行かつ互いに反対方向へ引っ張る場合の剪断応力とした。
【0077】
<80℃環境下1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率>
各実施例および比較例で用いたホットメルト粘着剤を用いて、直径8mm、厚み2mmの円柱状のサンプルを作製した。得られたサンプルをパラレルプレート状の装置に挟み込み、80℃温度環境下のホットメルト粘着剤の粘弾性を、以下の方法で測定した。
測定装置:ティー・エイ・インスツルメント社製ARES−RDA W/FCO レオメーター
サンプル形状:直径8mm、厚み2mmの円柱状
周波数:1Hz(正弦波)
測定温度:80℃
得られた粘弾性の値を、粘着剤の80℃環境下、周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率とした。
第2に、応力と90°位相の遅れた80℃環境下1Hzで測定される剪断損失弾性率G’’を、応力と同位相の80℃環境下1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率G’と同様の測定装置および測定条件で測定した。粘着剤の80℃環境下における損失正接tanδ1を、損失正接tanδ=G’’/G’から計算して求めた。なお、損失正接tanδが0であれば完全弾性体であり、∞であれば完全粘性体である。
第3に、測定温度を25℃にした以外は粘着剤の80℃環境下における損失正接tanδ1の計算と同様にして、粘着剤の25℃環境下における損失正接tanδ2を求めた。
第4に、得られたtanδ1およびtanδ2から、tanδ1/tanδ2の値および|tanδ1−tanδ2|の値を求めた。
【0078】
<カール>
ラベル積層体をA4サイズにカットした。
リコー製デジタルフルカラー複合機MP C3003(電子写真印刷機であるプリンター)を用いて、用紙設定:厚紙2、印刷設定:一般、給紙手差しにてA4サイズのラベル積層体を横方向(TD方向)に10枚通紙し、両面モノクロ印字した。その後、排出されたラベル積層体を10枚重ねた状態のカール測定用サンプルを調製した。カール測定用サンプルを、端部がテーブルに接して中央部が浮くように表裏を決定して、平面なテーブル上に置き、23℃、相対湿度50%の環境下で、印刷から30分間静置し、カール測定用サンプルとテーブルとの間の隙間の最大値であるカール量を測定した。
図5(A)および
図5(B)は、カール量の測定方法を説明する概略図である。
図5(A)はカール測定用サンプル100の斜視図であり、
図5(B)は
図5(A)を紙面手前側の側面から見た断面の概略図である。
図5(B)に、カール測定用サンプル100と、テーブル101と、カール量102の関係を示した。
得られたカール量を用い、以下の評価基準にしたがってカールを評価した。
○:カール量が15mm未満。
△:カール量が15mm以上、25mm未満。
×:カール量が25mm以上。
【0079】
<粘着剤のはみ出し>
ラベル積層体をA4サイズにカットした。
リコー製デジタルフルカラー複合機MP C3003を用いて、用紙設定:厚紙2、印刷設定:写真、給紙トレーにてA4サイズのラベル積層体を横方向(TD方向)に500枚通紙し、両面カラー印字した。排出されたラベル積層体の印字状態をチェックし、通紙経路(搬送経路)上の転写ロール、定着ロール、感光体ドラムなどにホットメルト粘着剤が付着することに起因する画像汚れの発生の有無を確認した。
○:画像汚れ無し。
×:画像汚れ有り。
【0080】
【表1】
【0081】
本発明のラベル積層体によれば、高温で両面印刷される場合にカールおよび粘着剤のはみ出しが抑制されることがわかった。
ラベル積層体の80℃環境下において測定される剪断応力が本発明で規定する下限値を下回り、かつ、粘着剤の80℃環境下において周波数1Hzで測定される剪断貯蔵弾性率が本発明で規定する下限値を下回る比較例1および2によれば、高温で両面印刷される場合にカールが大きく発生すること、および粘着剤のはみ出しが発生することがわかった。