特許第6954010号(P6954010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954010
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20211018BHJP
【FI】
   H02M7/48 F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-212727(P2017-212727)
(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公開番号】特開2019-88054(P2019-88054A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 壮思
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−261170(JP,A)
【文献】 特開2008−048506(JP,A)
【文献】 特開2000−245164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相以上のブラシレスDCモータ(4)を位置センサレス制御により片側PWM駆動するため、PWM信号を生成して駆動回路(1)のハイサイドスイッチ(2)に出力し、ローサイドスイッチ(3)には連続オン信号を出力するPWM信号出力部(13)と、
前記モータの巻線に発生する誘起電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出部(11,12)とを備え、
前記ゼロクロス点検出部は、一端が電源端子に共通に接続されるプルアップ抵抗(R1)と、一端が前記プルアップ抵抗の他端に接続され、他端が前記モータの各相巻線に接続される保護抵抗(R2)とを備え、
前記ゼロクロス点検出部の信号入力端子は、前記プルアップ抵抗と前記保護抵抗との共通接続点に接続されている電子制御装置。
【請求項2】
前記電源端子は、バッテリ電源より前記駆動回路に駆動用電源を供給するものであり、
前記ゼロクロス点検出部は、前記電源端子を介して動作用電源が供給される比較器(6)を備えて構成される請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記比較器には、各相の信号入力端子に与えられる電圧を加算して生成される仮想中性点の電位が比較用基準電圧として付与される請求項2記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記ゼロクロス点検出部は、前記駆動回路が前記PWM信号に基づいてスイッチングを行った直後に、ゼロクロス点の検出を禁止する禁止期間を設定する請求項1から3の何れか一項に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記ゼロクロス点検出部は、前記スイッチングのターンオン時とターンオフ時とで、前記禁止期間の長さを個別に設定可能である請求項4記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスDCモータを位置センサレス制御により片側PWM駆動する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりブラシレスDCモータを駆動する方式の1つとして、駆動回路を構成する上下スイッチのうちハイサイドスイッチをPWM(Pulse Width Modulation)駆動し、ローサイドスイッチは連続的にオンにすることで駆動する所謂片側PWM駆動方式がある。また、モータを位置センサレス方式により駆動する際には、モータの巻線に発生する逆起電力,誘起電圧のゼロクロス点を検出して位置情報を取得することが多い。
【0003】
図8は、従来の位置センサレス方式により車両に搭載されるモータを駆動する回路を示す。インバータ回路1は、ハイサイドスイッチであるPチャネルMOSFET2と、ローサイドスイッチであるNチャネルMOSFET3とを3相ブリッジ接続して構成されている。FET2のソースには車両のバッテリ電源の電圧VBが供給され、FET3のソースはグランドに接続されている。インバータ回路1の各相出力端子は、3相ブラシレスDCモータ4の各相巻線の一端にそれぞれ接続されている。
【0004】
逆起電力検知部5は、各相に対応した比較器6U,6V,6Wを備えている。比較器6の非反転入力端子は、それぞれ保護抵抗R0を介してモータ4の各相巻線の一端に接続されている。加算抵抗Rの一端は共通に接続され、他端が前記各相巻線の一端に接続されている。そして、比較器6の反転入力端子は、加算抵抗Rの前記一端に共通に接続されている。これにより、比較器6に付与される比較用の基準電圧は、モータ4の仮想中性点電位となる。逆起電力検知部5は、比較器6によりモータ4の逆起電力,つまり巻線に発生する誘起電圧のゼロクロス点を検出する。
【0005】
図9は、比較器6の入力波形を示す図である。実線が非通電相の比較入力電圧、破線が基準電圧を表している。ローサイドスイッチが連続的にオンしている相のモータ端子電圧は0V,ハイサイドスイッチがPWM駆動されている相のモータ端子電圧は、スイッチオン期間は電源電圧VB,PWMスイッチオフ期間は−VFとなる。VFはFETのボディダイオードの順方向電圧である。そして、モータの逆起電力VEは、ゼロクロス点で±0Vになる。したがって、ゼロクロス点での比較入力電圧及び基準電圧は、スイッチオン期間はVB/2,スイッチオフ期間は−VF/2となる。これに対して、ゼロクロス点の前後では、比較入力電圧には逆起電力±VEが加わり、基準電圧には±VE/3が加わる。
【0006】
このような従来技術では、PWM駆動におけるスイッチオフ期間は比較器6の入力が負電圧となり出力が不安定となるため、この期間は比較器6の出力信号が入力される制御回路,マイクロコンピュータにおいてマスク処理等が行われ、ゼロクロス点の検出を禁止している。また、スイッチングのオン,オフ直後も電圧が不安定となるため、ゼロクロス点の検出を禁止している。したがって、PWM信号のデューティ比が小さければゼロクロス点の検出を禁止する期間が長くなり、その期間にゼロクロス点が到来する可能性が高くなるため、ゼロクロス点を検するタイミングにずれが生じ易くなる。
【0007】
この問題は、例えば特許文献1に示すように、デューティ比が50%以下のときのみ逆起電力信号を反転させて、PWM駆動におけるスイッチオフ期間にゼロクロス検出を可能とすれば解決できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−220987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の構成では、逆起電力信号を反転させることでPWM駆動におけるスイッチオン期間にはゼロクロス点の検出ができなくなる。特に、デューティ比が50%付近のときに検出可能期間が短くなるため、正確に検出できなくなってしまう。
【0010】
また、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチの両方をPWM駆動してモータを駆動する所謂平衡PWM駆動を行う際には、スイッチオン期間とスイッチオフ期間との両方でゼロクロス点が検出できる。ところが、平衡PWM駆動では、片側PWM駆動に比較して電流リップルやスイッチング損失が大きくなる。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、片側PWM駆動を行う際に、スイッチオン期間とスイッチオフ期間との両方でゼロクロス点が検出できる電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の電子制御装置によれば、PWM信号出力部は、PWM信号を生成して駆動回路のハイサイドスイッチに出力し、ローサイドスイッチには連続オン信号を出力し、3相以上のブラシレスDCモータを位置センサレス制御により片側PWM駆動する。ゼロクロス点検出部は、一端が電源端子に共通に接続されるプルアップ抵抗と、一端がプルアップ抵抗の他端に接続され、他端がモータの各相巻線に接続される保護抵抗とを備える。そして、ゼロクロス点検出部は、その信号入力端子がプルアップ抵抗と保護抵抗との共通接続点に接続されて、モータの巻線に発生する誘起電圧のゼロクロス点を検出する。
【0013】
このように構成すれば、ゼロクロス点検出部の信号入力端子の電位には、電源電圧をプルアップ抵抗と保護抵抗とで分圧した電位が重畳される。これにより、PWM駆動のスイッチオフ時においてモータ端子電圧が負電位となっても、前記信号入力端子の電位は正電位となるようにシフトされる。したがって、ゼロクロス点検出部は、モータが片側PWM駆動される際に、スイッチオフ時でも誘起電圧のゼロクロス点を検出することができ、位置センサレス制御を高精度に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態であり、電子制御装置の構成を要部に付いて示す図
図2】各ノードにおける電圧を示す図
図3】比較器に付与される比較入力電圧及び基準電圧の波形を示す図
図4】誘起電圧のゼロクロス点を検出する処理を示すフローチャート
図5】第2実施形態であり、比較器に替えて使用するA/Dコンバータを示す図
図6】誘起電圧のゼロクロス点を検出する処理を示すフローチャート
図7】第3実施形態であり、電源電圧VBを分圧した基準電圧を付与する構成を示す図
図8】従来のモータを位置センサレス制御により駆動する構成の一例を示す図
図9】比較器に付与される比較入力電圧及び基準電圧の波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1から図4を参照して説明する。尚、図8と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。保護抵抗R0は、保護抵抗R2に置き換えられている。そして、比較器6の反転入力端子は、プルアップ抵抗R1を介して電源VBにプルアップされている。また、比較器6には、動作用電源としてバッテリ電圧VBが供給されている。バッテリ電圧VBの端子は電源端子に相当する。以上が逆起電力検知部11を構成している。比較器6U〜6Wの出力端子は、マイクロコンピュータ12(以下、マイコン12と略称する。)の入力端子にそれぞれ接続されている。
【0016】
マイコン12は、各相について得られる誘起電圧のゼロクロス点より、モータ4のロータ回転位置を電気角60度毎に得る。これに基づいて、モータ4に通電するPWM信号を生成することで位置センサレス駆動を行う。マイコン12に内蔵されているPWM信号出力部13は、3相PWM信号U+,U−,V+,V−,W+,W−を生成し、インバータ回路1を構成するFET2及び3のゲートにそれぞれ出力する。尚、インバータ回路1は駆動回路に相当する。また、FET2はハイサイドスイッチに相当し、FET3はローサイドスイッチに相当する。逆起電力検知部11及びマイコン12は、ゼロクロス点検出部に相当する。
【0017】
図2は、各ノードにおける電位を示す。また図3は、本実施形態における比較器6の入力波形を示す。図9と同様に、実線が非通電相の比較入力電圧、破線が基準電圧を示している。図9における説明と同様に、ゼロクロス点での非通電相におけるモータ端子電圧は、PWM駆動におけるスイッチオン期間はVB/2,スイッチオフ期間は−VF/2となる。したがって、ゼロクロス点での比較入力電圧及び基準電圧は、
スイッチオン期間:(R2・VB+R1・VB/2)/(R1+R2)
スイッチオフ期間:(R2・VB−R1・VF/2)/(R1+R2)
となる。ゼロクロス点の前後では、これに対して、比較入力電圧と基準電圧とにはそれぞれ
比較入力電圧:±R1・VE/(R1+R2)
基準電圧 :±R1・VE/{3(R1+R2)}
が印加される。
【0018】
以上より、(R2・VB−R1・VF/2)/(R1+R2)≧0
つまり分圧比R1/R2を2VB/VF以下に設定すれば、ゼロクロス点での比較入力電圧及び基準電圧は、PWM駆動におけるスイッチオン,オフ及びバッテリ電圧VBの大きさに依らず、常に0V以上で且つ電圧VB以下となる。
【0019】
したがって、比較器6の電源電圧にバッテリ電圧VBを用いれば、電圧が変動するスイッチオン,スイッチオフの直後を除いて常にゼロクロス検出が可能となり、片側PWM駆動であっても、デューティ比の大小に依らず、ゼロクロス検出のずれが生じにくくなる。その際に、ゼロクロス検出の禁止期間をオン直後とオフ直後とで別々の長さに設定することで、それぞれを最適な値に設定でき、検出禁止期間を最小限にすることができる。
【0020】
実際の設計では、ゼロクロス点の前後では比較入力電圧及び基準電圧に逆起電力分が加わる。また、一般的な比較器の入力可能範囲は、0Vから電源電圧の範囲よりもさらに小さくなる。これらを考慮して、比較入力電圧及び基準電圧が常に比較器の入力可能範囲に入るよう、分圧比R1/R2を適切に設定する。
【0021】
図4に示す誘起電圧のゼロクロス点を検出する処理において、マイコン12は、先ずPWM信号出力部13で生成出力されるPWM信号の最初のエッジを検出するまで待機する(S0;NO)。最初のエッジを検出すると(YES)、立上りエッジであれば(S2;YES)ステップS3に移行し、立下りエッジあれば(S2;NO)ステップS4に移行する。
【0022】
ステップS3では、第1所定時間の経過待ちをし(NO)、第1所定時間が経過すると(YES)その時点での非通電相の比較器6の出力レベルが反転したか否かを判断する(S5)。出力レベルが反転していなければ(NO)ステップS1に戻る。また、ステップS4では、第2所定時間の経過待ちをし(NO)、第2所定時間が経過すると(YES)ステップS5に移行する。例えば図3に示すように、第2所定時間は第1所定時間よりも長く設定されている。
【0023】
つまり、立上りエッジを検出した後、第1所定時間が経過するまでは比較器6の出力レベルを参照せず、第1所定時間が経過すると参照を開始する。そして、ステップS5において前記出力レベルが反転することで(YES)誘起電圧のゼロクロス点を検出するまでは(S6)、ステップS1,S5のループを繰り返し実行する。立上りエッジを検出した際には、第2所定時間が経過すると上記と同様の処理を行う。第1及び第2所定時間は、禁止期間に相当する。尚、ゼロクロス点を検出して処理を終了すると、ステップS0における「最初のエッジ検出」のステータスはリセットされる。
【0024】
以上のように本実施形態によれば、マイコン12のPWM信号出力部13は、PWM信号を生成してインバータ回路1のハイサイドのFET2に出力し、ローサイドのFET3には連続オン信号を出力し、モータ4を位置センサレス制御により片側PWM駆動する。ゼロクロス点検出部は、一端が電源端子に共通に接続されるプルアップ抵抗R1と、一端がプルアップ抵抗R1の他端に接続され、他端がモータの各相巻線に接続される保護抵抗R2とを備える。そして、逆起電力検知部11は、その信号入力端子がプルアップ抵抗R1と保護抵抗R2との共通接続点に接続されて、モータ4の巻線に発生する誘起電圧のゼロクロス点を検出する。
【0025】
このように構成すれば、逆起電力検知部11の信号入力端子の電位には、電源電圧VBをプルアップ抵抗R1と保護抵抗R2とで分圧した電位が重畳される。これにより、PWM駆動のスイッチオフ時においてモータ端子電圧が負電位となっても、前記信号入力端子の電位は正電位となるようにシフトされる。したがって、逆起電力検知部11は、モータ4が片側PWM駆動される際に、スイッチオフ時でも誘起電圧のゼロクロス点を検出することができ、位置センサレス制御を高精度に行うことが可能になる。
【0026】
また、逆起電力検知部11は、インバータ回路1に駆動電源を供給する車両のバッテリ電源の電圧VBが動作用電源として供給される比較器6を備えるので、電圧VBの高低に拘らず、比較器6は常に入力信号の電圧を入力範囲に収めることができる。したがって、電圧VBが変動しても、PWM駆動におけるスイッチオン時とスイッチオフ時との双方で誘起電圧のゼロクロス点を検出できる。
【0027】
また、その比較器6には、各相の信号入力端子に与えられる電圧を加算して生成される仮想中性点の電位を比較用基準電圧として付与したので、PWM駆動におけるスイッチオン,オフに拘らず、基準電圧がモータ4の中性点電圧に等しくなる。したがって、バッテリ電圧VBを分圧した基準電圧を付与する構成とは異なり、PWM信号と同期させて基準電圧をスイッチングさせる必要が無い。また、FET2及び3に並列接続されている還流ダイオードの順方向電圧VFのばらつきを考慮する必要もなくなる。
【0028】
また、マイコン12は、インバータ回路1がPWM信号に基づいてスイッチングを行った直後に、ゼロクロス点の検出を禁止する期間を設定するので、スイッチングの直後においてモータ端子電圧が不安定になる期間にゼロクロス点を誤検出することを防止できる。また、マイコン12は、前記スイッチングのターンオン時とターンオフ時とで、禁止期間の長さを個別に設定し、それぞれを第1所定時間,第2所定時間とした。これにより、ターンオンの直後とターンオフの直後とで、モータ端子電圧が不安定になる期間の長さが異なる場合でも、それぞれについて最適となるように禁止期間を極力短く設定することができる。
【0029】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。第2実施形態では、図5に示すように、比較器6に替えてA/Dコンバータ14を使用する。A/Dコンバータ14は、マイコン12に内蔵されていても、又は外付けでも良い。A/Dコンバータ14は、U,V,Wの各相に対応したアナログ信号入力端子を備えており、それらを時分割で切り換えてA/D変換を行い、8ビットや12ビット等のデジタルデータに変換して出力する。前記信号入力端子は、第1実施形態の比較器6と同様に、保護抵抗R2を介してモータ4の各相巻線の一端に接続されると共に、プルアップ抵抗R1により電源電圧VBにプルアップされている。
【0030】
図4相当図である図6において、マイコン12は、ステップS5に替わるステップS7を実行する。ここでは、非通電相の電圧データをV1,通電相の電圧データをV2,V3とすると、電圧{V1−(V1+V2+V3)/3}の符号の正負が反転したか否かを判断する。すなわち、電圧(V1+V2+V3)/3は、モータ4の仮想中性点電圧に等しい。
【0031】
以上のように構成される第2実施形態によれば、マイコン12は、A/Dコンバータ14によりデジタルデータに変換された電圧を、ソフトウェア処理によりモータ4の仮想中性点電圧,つまり基準電圧と比較して誘起電圧のゼロクロス点を検出する。この場合、例えばデジタルフィルタを使用して、入力電圧に重畳されているノイズ成分を除去することも可能である。
【0032】
(第3実施形態)
図7に示す第3実施形態では、第1実施形態と同様に比較器6を使用する。電源端子とグランドとの間には、抵抗R1,R2及びR3の直列回路が接続されており、抵抗R3には、NチャネルMOSFET15が並列に接続されている。尚、抵抗R3の抵抗値は(R1+R2)に設定されている。そして、比較器6の反転入力端子は、抵抗R1,R2の共通接続点に接続されている。FET15のゲートには、PWM信号の論理を反転したものがゲート信号として付与されている。
【0033】
第3実施形態ではバッテリ電圧VBを分圧したものを比較器6の基準電圧として付与する。この場合、PWM駆動におけるスイッチオン期間とスイッチオフ期間とで、基準電圧は以下のようになる。
スイッチオン期間:(R2・VB+R1・VB/2)/(R1+R2)
スイッチオフ期間:(R2・VB)/(R1+R2)
【0034】
以上のように構成される第3実施形態によれば、分圧抵抗R1〜R3の抵抗値設定により基準電圧を微調整できる。但し、スイッチオフ期間の基準電圧が
{(R1・VF/2)/(R1+R2)}だけ理論値からずれるので、その分ゼロクロス点の検出タイミングにずれが生じる。
【0035】
(その他の実施形態)
比較器6の動作用電源は、必ずしもバッテリ電源にする必要は無い。
第1所定時間と第2所定時間の長短を逆に設定しても良い。
ゼロクロス点の検出禁止期間は、ターンオン時とターンオフ時とで同じ長さに設定しても良い。また、検出禁止期間は、必要に応じて設定すれば良い。
ハイサイドスイッチにNチャネルMOSFETを用いても良い。また、スイッチには、その他IGBTやパワートランジスタ等を用いても良い。
【0036】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0037】
図面中、1はインバータ回路、2はPチャネルMOSFET、3はNチャネルMOSFET、4はブラシレスDCモータ、6は比較器、11は逆起電力検知部、12はマイクロコンピュータ、13はPWM信号出力部、R1はプルアップ抵抗、R2は保護抵抗を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9