(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スイッチング素子(S¥#)と、前記スイッチング素子をオン状態に切り替えるべく、前記スイッチング素子の開閉制御端子に電荷を供給する充電部(24、26)と、を備えるスイッチング回路(11)に適用され、前記開閉制御端子の端子電圧(Vge)が判定電圧(Vjde)を上回ったことを含む所定条件を満たす場合に、前記スイッチング素子の一対の主端子間に過電流が流れている旨判定する過電流判定処理を行うための判定装置(44)であって、
前記スイッチング素子の温度又はその相関値を温度検出値として取得する温度取得部(S10)と、
前記温度検出値が第1温度よりも高い第2温度である場合に、前記判定電圧を、前記第1温度における第1判定電圧よりも低く、かつ、前記第2温度におけるミラー電圧よりも高い第2判定電圧に設定する設定部(S12)と、
を備える判定装置。
互いに並列接続された複数のスイッチング素子(S¥#1、S¥#2)と、前記各スイッチング素子をオン状態に切り替えるべく、前記各スイッチング素子の開閉制御端子に電荷を供給する充電部(24、26)と、を備えるスイッチング回路(11)に適用され、前記開閉制御端子の端子電圧(Vge)が判定電圧(Vjde)を上回ったことを含む所定条件を満たす場合に、前記各スイッチング素子の一対の主端子間に過電流が流れている旨判定する過電流判定処理を行うための判定装置(44)であって、
複数の前記スイッチング素子それぞれについて、前記各スイッチング素子の温度又はその相関値を温度検出値として取得する温度取得部(S40)と、
前記温度検出値と前記判定電圧との関係を示す相関データであって、前記温度検出値が高いほど、前記判定電圧が低くなる関係を有する相関データ(F)を有し、前記各スイッチング素子の前記判定電圧(Vjde、Yjde)を、前記相関データにおいて、前記各スイッチング素子の前記温度検出値のうち最も低い温度検出値に対応する前記判定電圧に共通に設定する設定部(S42)と、
を備える判定装置。
前記判定部によって前記過電流が流れている旨判定された場合に、前記過電流が流れない場合に前記スイッチング素子をオフ状態に切り替えるときにおける前記開閉制御端子の電荷の放電速度よりも低い放電速度で電荷を放電させることで、前記過電流が流れている旨判定された前記スイッチング素子を強制的にオフ状態に切り替えるソフト遮断部(38、40)を備える請求項3、7、9のいずれか1項に記載の判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る判定装置を車載主機として回転機を備える車両(例えば、ハイブリッド車両や電気自動車)に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示すように、モータジェネレータ10は、車載主機としての多相回転機(3相回転機)であり、図示しない駆動輪に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータ11を介して「直流電源」としての高電圧バッテリ12に接続されている。高電圧バッテリ12の出力電圧は、例えば百V以上である。なお、高電圧バッテリ12としては、例えば、リチウムイオン蓄電池やニッケル水素蓄電池を用いることができる。また、本実施形態では、モータジェネレータ10として、同期機(永久磁石同期機)を用いている。
【0015】
インバータ11は、高電位側(上アーム側)のスイッチング素子S¥p(¥=U,V,W)、及び低電位側(下アーム側)のスイッチング素子S¥nの直列接続体を備えている。詳しくは、インバータ11は、3組のスイッチング素子S¥p,S¥nの直列接続体を備え、スイッチング素子S¥p,S¥nの接続点は、モータジェネレータ10の¥相に接続されている。なお、本実施形態において、インバータ11が「スイッチング回路」に相当する。
【0016】
ちなみに、本実施形態では、上記スイッチング素子S¥#(#=p,n)として、電圧制御形の半導体スイッチング素子Zeを用い、より具体的には、IGBTを用いている。本実施形態において、スイッチング素子S¥#の出力端子(エミッタ)及び入力端子(コレクタ)が「一対の主端子」に相当する。ここで、コレクタを「第1の主端子」とし、エミッタを「第2の主端子」とする。すると、第2の主端子の電圧に対するスイッチング素子S¥#の開閉制御端子(ゲート)の電圧(以下、ゲート電圧Vge)を、スレッショルド電圧Vth以上とすることで、スイッチング素子S¥#をオン状態に切り替えることができる。ここで、スレッショルド電圧Vthとは、スイッチング素子S¥#がオフ状態からオン状態に切り替わる電圧のことである。詳細には、一対の主端子間に基準電流(例えば1mA)が流れた場合の開閉制御端子の電圧のことである。
【0017】
スイッチング素子S¥#には、フリーホイールダイオードD¥#が逆並列に接続されている。また、スイッチング素子S¥#の近傍には、感温センサT¥#が設けられている。感温センサT¥#は、スイッチング素子S¥#の温度Tmpを検出する。本実施形態において、スイッチング素子S¥#とフリーホイールダイオードD¥#と感温センサT¥#とは、同一の半導体スイッチング素子Zeに内蔵されている。なお、感温センサT¥#としては、例えば、感温ダイオードやサーミスタを用いることができる。
【0018】
制御装置14は、低電圧バッテリ16を電源とし、マイコンを主体として構成されている。制御装置14は、モータジェネレータ10の制御量(例えばトルク)をその指令値に制御すべく、インバータ11を操作する。詳しくは、制御装置14は、インバータ11を構成するスイッチング素子S¥#を操作すべく、操作信号g¥#を生成してスイッチング素子S¥#に対応する駆動回路DUに出力する。ここで、高電位側の操作信号g¥pと、対応する低電位側の操作信号g¥nとは、互いに相補的な信号となっている。すなわち、高電位側のスイッチング素子S¥pと、対応する低電位側のスイッチング素子S¥nとは、交互にオン状態とされる。
【0019】
インターフェース18は、高電圧システムと低電圧システムとの間を電気的に絶縁しつつ、これらシステム間の信号の伝達を行う機能を有する。ここで、高電圧システムは、高電圧バッテリ12、インバータ11及びモータジェネレータ10を備えるシステムである。また、低電圧システムは、低電圧バッテリ16及び制御装置14を備えるシステムである。なお、本実施形態において、インターフェース18は、光絶縁素子(フォトカプラ)を備えている。
【0020】
続いて、
図2を用いて、駆動回路DUの構成について説明する。
【0021】
図示されるように、駆動回路DUは、1チップ化された半導体集積回路であるドライブIC20、所定の出力電圧Vom(例えば15V)を有する定電圧電源22、及び定電圧電源22を電力供給源とする定電流電源24を備えている。詳しくは、定電流電源24は、ドライブIC20の第1の端子T1を介してPチャネルMOSFET(以下、充電用スイッチング素子26)のドレインに接続されている。充電用スイッチング素子26のソースは、ドライブIC20の第2の端子T2を介してスイッチング素子S¥#のゲートに接続されている。なお、本実施形態において、定電流電源24及び充電用スイッチング素子26が「充電部」に相当する。
【0022】
スイッチング素子S¥#のゲートは、放電用抵抗体28を介してドライブIC20の第3の端子T3に接続されている。第3の端子T3は、NチャネルMOSFET(以下、放電用スイッチング素子30)を介してスイッチング素子S¥#のエミッタに接続されている。
【0023】
また、スイッチング素子S¥#のゲートは、さらに、ソフト遮断用抵抗体38、ドライブIC20の第4の端子T4及びNチャネルMOSFET(以下、ソフト遮断用スイッチング素子40)を介してエミッタに接続されている。なお、本実施形態では、ソフト遮断用抵抗体38の抵抗値Raが、放電用抵抗体28の抵抗値Rbよりも高く設定されている。なお、本実施形態において、ソフト遮断用抵抗体38及びソフト遮断用スイッチング素子40が「ソフト遮断部」に相当する。
【0024】
スイッチング素子S¥#は、コレクタ及びエミッタ間に流れる電流(以下、コレクタ電流Ic)と相関を有する微少電流(例えば、コレクタ電流Icの「1/10000」)を出力するセンス端子Stを備えている。センス端子Stは、センス抵抗42を介してエミッタに接続されている。これにより、センス端子Stから出力される微少電流によってセンス抵抗42に電圧降下が生じるため、センス抵抗42のうちセンス端子St側の電位(以下、センス電圧Vse)を、コレクタ電流Icと相関を有する電気的な状態量とすることができる。なお、本実施形態において、エミッタ電位を「0」とし、センス抵抗42の両端のうち、センス端子St側の電位がエミッタ電位よりも高い場合のセンス電圧Vseを正と定義する。
【0025】
ゲート電圧Vgeは、ドライブIC20の第5の端子T5を介して、ドライブIC20の備える駆動制御部44に入力されている。センス電圧Vseは、ドライブIC20の第6の端子T6を介して駆動制御部44に入力されている。感温センサT¥#が検出したスイッチング素子S¥#の温度Tmpは、ドライブIC20の第7の端子T7を介して駆動制御部44に入力されている。
【0026】
駆動制御部44は、ドライブIC20の第8の端子T8を介して入力される上記操作信号g¥#に基づき、充電用スイッチング素子26及び放電用スイッチング素子30の操作による充電処理、及び放電処理を交互に行うことで、スイッチング素子S¥#を駆動する。詳しくは、充電処理は、操作信号g¥#がオン操作指令になったと判定された場合、放電用スイッチング素子30をオフ操作し、また、充電用スイッチング素子26をオン操作する処理である。すなわち、充電処理は、ゲートに定電流を供給することにより、ゲートに電荷を供給する定電流制御処理である。これにより、スイッチング素子S¥#がオン状態に切り替えられる。
【0027】
一方、放電処理は、操作信号g¥#がオフ操作指令になったと判定された場合、放電用スイッチング素子30をオン操作に切り替え、また、充電用スイッチング素子26をオフ操作に切り替える処理である。これにより、スイッチング素子S¥#がオフ状態に切り替えられる。
【0028】
続いて、
図3を用いて、本実施形態に係る過電流判定処理について説明する。ここで、
図3は、上記処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、駆動制御部44によって過電流判定期間に、例えば所定周期で繰り返し実行される。ここで、過電流判定期間とは、第1のタイミング及び第2のタイミングによって定められる期間である。以下、第1のタイミング及び第2のタイミングについて説明する。なお、本実施形態において、駆動制御部44が「判定装置」に相当する。
【0029】
まず、第1のタイミングについて説明すると、第1のタイミングは、充電部による充電開始タイミングから、スイッチング素子S¥#に過電流が流れると仮定した場合に、ゲート電圧Vgeが、後述するゲート判定電圧Vjdeに到達するタイミングまでの期間内における任意のタイミングである。ここで、本実施形態において、第1のタイミングは、充電処理の開始タイミングに設定されている。
【0030】
続いて、第2のタイミングについて説明する。第2のタイミングは、第1のタイミングよりも後のタイミングから、スイッチング素子S¥#に過電流が流れないと仮定した場合に、ゲート電圧Vgeがゲート判定電圧Vjdeに到達するタイミングよりも前のタイミングまでの期間内における任意のタイミングである。ここで、本実施形態において、第2のタイミングは、スイッチング素子S¥#に過電流が流れないと仮定した場合に、スイッチング素子S¥#のミラー期間が終了するタイミングに設定されている。
【0031】
この一連の処理では、まずステップS10において、感温センサT¥#からスイッチング素子S¥#の温度Tmpを取得する。なお、本実施形態において、温度Tmpが「温度検出値」に相当し、ステップS10の処理が「温度取得部」を構成する。
【0032】
次に、ステップS12において、ゲート判定電圧Vjdeを設定する。ゲート判定電圧Vjdeは、スイッチング素子S¥#のミラー電圧Vmilよりも高い電圧であって、出力電圧Vom以下の電圧に設定されている。ここで、ゲート判定電圧Vjdeをミラー電圧Vmilよりも高い電圧に設定するのは、充電処理が行われる状況下において、スイッチング素子S¥#に過電流が流れていないにもかかわらず、過電流が流れている旨誤判定される事態を回避するためである。
【0033】
本発明者は、スイッチング素子S¥#の特性について鋭意検討した結果、
図4に示すように、ミラー電圧Vmilは、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが高くなるほど、温度Tmpに負の相関を示して低くなることを初めて見出した。本実施形態では、上記知見に基づいて、ゲート判定電圧Vjdeは、スイッチング素子S¥#の動作温度範囲において、ミラー電圧Vmilよりも所定の電圧差ΔVだけ高い電圧に設定されている。つまり、ゲート判定電圧Vjdeは、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが高くなるほど、連続的に低くなるように設定されている。なお、電圧差ΔVは、ゲート電圧Vgeに加わることが想定されるノイズの最大振幅よりも僅かに大きな電圧に設定されている。また、電圧差ΔVは、スイッチング素子S¥#の各温度Tmpに対して一定でもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
したがって、ステップS12では、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが、第1温度Tmp1よりも高い第2温度Tmp2である場合に、ゲート判定電圧Vjdeが、第1温度Tmp1における第1ゲート判定電圧Vjde1よりも低く、かつ、第2温度Tmp2におけるミラー電圧Vmilよりも高い第2ゲート判定電圧Vjde2に設定される。なお、本実施形態において、ステップS12の処理が「設定部」を構成する。
【0035】
次に、ステップS14において、スイッチング素子S¥#のゲート電圧Vgeを取得する。なお、本実施形態において、ゲート電圧Vgeが「端子電圧」に相当し、ステップS14の処理が「電圧取得部」に相当する。そして、ステップS16において、ゲート電圧Vgeがゲート判定電圧Vjdeを上回っているか否かを判定する。
【0036】
ステップS16において肯定判定された場合には、ステップS18において、センス電圧Vseを取得する。なお、本実施形態において、センス電圧Vseが「端子間電流」に相当し、ステップS18の処理が「電流取得部」を構成する。そして、ステップS20において、センス電圧Vseがセンス判定電圧Vdecを上回っているか否かを判定する。センス判定電圧Vdecは、スイッチング素子S¥#の信頼性を維持可能なコレクタ電流Icの上限値に対応する電圧であり、スイッチング素子S¥#毎に予め定められている。なお、本実施形態において、センス判定電圧Vdecが「判定電流」に相当する。
【0037】
ステップS20において、肯定判定された場合、つまり、ゲート電圧Vgeがゲート判定電圧Vjdeを上回ったこと、及び、センス電圧Vseがセンス判定電圧Vdecを上回ったこと、を満たす場合、ステップS22において、スイッチング素子S¥#に過電流が流れている旨判定し、ステップS24に進む。なお、本実施形態において、ステップS16、S20の処理条件が「所定条件」に相当し、ステップS22の処理が「判定部」を構成する。
【0038】
ステップS24では、充電用スイッチング素子26及び放電用スイッチング素子30をオフ操作し、かつ、ソフト遮断用スイッチング素子40をオン操作する短絡保護処理を実行する。これにより、スイッチング素子S¥#のゲートに供給された電荷(以下、ゲート電荷という)が、ソフト遮断用抵抗体38及びソフト遮断用スイッチング素子40を介してスイッチング素子S¥#のエミッタに至る放電経路を介して放電される。この結果、スイッチング素子S¥#が強制的にオフ状態に切り替えられる。
【0039】
続くステップS26では、フェール信号FLを出力する処理を行う。これにより、フェール信号FLは、ドライブIC20の第9の端子T9を介して制御装置14に出力される。このフェール信号FLによって、インバータ11のシャットダウンが行われる。
【0040】
一方、ステップS16、S20のいずれか一方において否定判定された場合には、ステップS28において、スイッチング素子S¥#に過電流が流れていない旨判定し、過電流判定処理を終了する。
【0041】
続いて、
図5及び
図6に、過電流判定処理の一例を示す。詳しくは、
図5は、過電流が流れていない通常時における過電流判定処理の一例であり、
図6は、過電流が流れる場合、つまり、上下アームに短絡が生じた短絡時における過電流判定処理の一例である。
【0042】
まず、
図5を用いて、通常時における過電流判定処理を説明する。ここで、
図5(a)は、ゲート電圧Vgeの推移を示し、
図5(b)は、充電用スイッチング素子26の操作状態の推移を示す。また、
図5(c)は、ソフト遮断用スイッチング素子40の操作状態の推移を示し、
図5(d)は、センス電圧Vseの推移を示す。
【0043】
図5(a)において、グラフF1(破線)は、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが第1温度Tmp1である場合のゲート電圧Vgeの推移を示す。また、グラフF2(実線)は、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが第2温度Tmp2である場合のゲート電圧Vgeの推移を示す。以下では、グラフF1とグラフF2とのうち、グラフF2を用いて、通常時における過電流判定処理を説明する。
【0044】
図示される例では、第1のタイミングである時刻t1において、充電処理が開始されることで、放電用スイッチング素子30がオフ操作に切り替えられ、また、充電用スイッチング素子26がオン操作に切り替えられる。これにより、ゲート電圧Vgeが上昇し始める。
【0045】
その後、時刻t2において、ゲート電圧Vgeがスレッショルド電圧Vthに到達することで、センス電圧Vseが上昇し始める。
【0046】
その後、時刻t3においてゲート電圧Vgeがミラー電圧Vmilに到達し、第2のタイミングである時刻t4においてミラー期間の終了タイミングとなる。過電流が流れない通常時においては、ミラー期間が存在する。そのため、第1のタイミング及び第2のタイミングによって定められる過電流判定期間内において、ゲート電圧Vgeは第2ゲート判定電圧Vjde2を上回ることはなく、センス電圧Vseはセンス判定電圧Vdecを上回ることはない。その後、ゲート電圧Vgeは、定電圧電源22の出力電圧Vomに到達する。
【0047】
なお、グラフF1は、グラフF2と比べて、時刻t2、t3、t4が異なるものの、グラフF2と略同一の挙動を示しており、重複した説明を省略する。
【0048】
続いて、
図6を用いて、短絡時における過電流判定処理を説明する。ここで、
図6(a)〜
図6(d)は、先の
図5(a)〜
図5(d)に対応している。
【0049】
図6(a)、(b)において、グラフF1(破線)は、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが第1温度Tmp1である場合のゲート電圧Vgeの推移を示す。また、グラフF2(実線)は、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが第2温度Tmp2である場合のゲート電圧Vgeの推移を示す。
【0050】
図示される例では、時刻t11において充電処理が開始されることで、ゲート電圧Vgeが上昇し始める。過電流が流れる短絡時においては、ミラー期間が存在しない。そのため、ゲート電圧Vgeは、時刻t11の後、ミラー期間を経ることなく上昇を続ける。その結果、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが第2温度Tmp2である場合、時刻t13において、ゲート電圧Vgeが第2ゲート判定電圧Vjde2に到達する。また、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが第1温度Tmp1である場合、時刻t15において、ゲート電圧Vgeが第1ゲート判定電圧Vjde1に到達する。
【0051】
また、時刻t12において、ゲート電圧Vgeがスレッショルド電圧Vthに到達することで、センス電圧Vseが上昇し始める。過電流が流れる短絡時においては、センス電圧Vseは上昇を続け、時刻t14において、センス電圧Vseがセンス判定電圧Vdecに到達する。
【0052】
駆動制御部44では、過電流が流れる場合に、時刻t14にゲート電圧Vgeが到達する境界電圧Vborが予め取得されており、第1ゲート判定電圧Vjde1は、境界電圧Vborよりも大きい電圧に設定されている。また、第2ゲート判定電圧Vjde2は、境界電圧Vborよりも小さい電圧に設定されている。なお、本実施形態において、時刻t14が「到達タイミング」に相当する。
【0053】
そのため、時刻t13は時刻t14よりも早いタイミングとなり、時刻t15は時刻t14よりも遅いタイミングとなる。したがって、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが第1温度Tmp1である場合、時刻t14において、センス電圧Vseがセンス判定電圧Vdecに到達し、時刻t15において、ゲート電圧Vgeが第1ゲート判定電圧Vjde1に到達する。その結果、第1温度Tmp1では、時刻t15において、スイッチング素子S¥#に過電流が流れている旨判定される(S22)。
【0054】
一方、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが第2温度Tmp2である場合、時刻t13において、ゲート電圧Vgeが第2ゲート判定電圧Vjde2に到達し、時刻t14において、センス電圧Vseがセンス判定電圧Vdecに到達する。つまり、第2温度Tmp2では、時刻t14において、スイッチング素子S¥#に過電流が流れている旨判定される(S22)。したがって、第1温度Tmp1である場合に比べて、過電流が流れていることが早期に判定される。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0056】
過電流判定処理において、スイッチング素子S¥#の温度Tmpが、第1温度Tmp1よりも高い第2温度Tmp2である場合に、ゲート判定電圧Vjdeが、第1温度Tmp1における第1ゲート判定電圧Vjde1よりも低い第2ゲート判定電圧Vjde2に設定される。過電流判定処理では、ゲート判定電圧Vjdeが低いほど、過電流が流れていることが早期に判定される。そのため、第2ゲート判定電圧Vjde2が第1ゲート判定電圧Vjde1と同一の電圧に設定される場合に比べて、第2温度Tmp2において、過電流が流れていることを早期に判定することができる。
【0057】
したがって、充電処理を開始してから過電流と判定されるまでに、コレクタ及びエミッタ間に流れるコレクタ電流Icの積算量を減少させることができる。これにより、コレクタ及びエミッタ間に過大なコレクタ電流Icが流れることにより、スイッチング素子の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0058】
また、過電流が流れていることを早期に判定することで、直列接続体を構成する高電位側のスイッチング素子S¥pと、低電位側のスイッチング素子S¥nとが同時にオン状態となることを抑制することができる。これにより、高電位側のスイッチング素子S¥pと低電位側のスイッチング素子S¥nとが同時にオン状態となり、モータジェネレータ10の信頼性が低下することを好適に抑制することができる。
【0059】
本実施形態では、過電流の検出にゲート電圧Vgeとセンス電圧Vseとを用いるので、ゲート電圧Vgeのみを用いる場合に比べて、過電流検出における信頼性を向上させることができる。例えば、一対の主端子間に過電流が流れない場合に、ゲート電圧Vgeに想定されるノイズよりも大きい振幅のノイズが加わり、ゲート電圧Vgeが一時的にゲート判定電圧Vjdeを上回った場合でも、過電流が流れていると誤判定されるのを抑制することができる。
【0060】
特に本実施形態では、第2ゲート判定電圧Vjde2は、一対の主端子間に過電流が流れる場合において、センス電圧Vseがセンス判定電圧Vdecに到達する到達タイミングに、ゲート電圧Vgeが到達する境界電圧Vborよりも小さい電圧に設定されている。そのため、第2ゲート判定電圧Vjde2が境界電圧Vborよりも大きい電圧に設定されている場合に比べて、第2温度Tmp2において、過電流が流れていることを早期に判定することができる。
【0061】
本実施形態では、ソフト遮断用抵抗体38の抵抗値Raが、放電用抵抗体28の抵抗値Rbよりも高く設定されている。そのため、ソフト遮断用抵抗体38を介してゲート電荷を放電する場合の放電速度は、放電処理によって放電用抵抗体28を介してゲート電荷を放電する場合の放電速度よりも低くなる。一方、過電流が流れている場合に、スイッチング素子S¥#をオン状態からオフ状態へと切り替える速度、つまりゲート電荷の放電速度を高くすると、サージ電圧が過大となるおそれがある。本実施形態では、過電流が流れている場合に、ゲート電荷の放電速度を低くするので、サージ電圧が過大となることを好適に抑制することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0063】
本実施形態では、
図7に示すように、センス端子、センス抵抗42及び第6の端子T6が除去されている。そして、ゲート電圧Vgeのみを用いてスイッチング素子S¥#に過電流が流れている旨判定する。なお、
図7は、本実施形態に係る駆動回路DUを示す図である。
図7において、先の
図2に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図8に、本実施形態に係る過電流判定処理の手順を示す。この処理は、駆動制御部44によって過電流判定期間に例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、
図8において、先の
図3に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、先の
図3におけるステップS18、S20の処理が除去されている。すなわち、本実施形態では、過電流検出期間内において、ゲート電圧Vgeがゲート判定電圧Vjdeを上回ったと判定された場合、スイッチング素子S¥#に過電流が流れている旨判断する。
【0066】
以上説明した本実施形態によれば、ゲート電圧Vgeがゲート判定電圧Vjdeを上回ったことのみをもって、スイッチング素子S¥#に過電流が流れている旨判定する。これにより、例えば、ゲート判定電圧Vjdeが境界電圧Vborよりも小さい電圧に設定されている場合には、ゲート電圧Vgeとセンス電圧Vseとを用いる場合に比べて、過電流が流れていることを早期に判定することができる。
【0067】
特に本実施形態では、過電流の検出にゲート電圧Vgeのみを用いる構成を採用した。こうした構成により、過電流を検出するために、センス端子St、センス抵抗42及び第6の端子T6等、コレクタ電流Icを検出するための構成を不要とすることができる。これにより、駆動回路DU等の構成の簡素化を図ることができ、ひいては駆動回路DUが実装される基板の小型化を図ることができる。
【0068】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0069】
本実施形態では、
図9に示すように、スイッチング素子S¥#が、互いに並列接続された第1スイッチング素子S¥#1と第2スイッチング素子S¥#2とを含む。つまり、第1スイッチング素子S¥#1の出力端子(エミッタ)と、第2スイッチング素子S¥#2の出力端子とが、互いに接続されており、かつ、第1スイッチング素子S¥#1の入力端子(コレクタ)と、第2スイッチング素子S¥#2の入力端子とが、互いに接続されている。なお、
図9は、本実施形態に係る駆動回路DUを示す図である。
図9において、先の
図2に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
第1スイッチング素子S¥#1のゲートは、第1のゲート抵抗46を介してドライブIC20の第2の端子T2に接続されている。第2スイッチング素子S¥#2のゲートは、第2のゲート抵抗48を介して第2の端子T2に接続されている。つまり、第1スイッチング素子S¥#1のゲートと第2スイッチング素子S¥#2のゲートとは、ゲート抵抗46、48を介して第2の端子T2に共通に接続されている。なお、本実施形態において、第2の端子T2が「充電端子」に相当する。
【0071】
そのため、第1スイッチング素子S¥#1のゲート電圧Vge1と、第2スイッチング素子S¥#2のゲート電圧Vge2とは、第2の端子T2の電圧から推定することができる。本実施形態では、第2の端子T2の電圧が、ドライブIC20の第5の端子T5を介して駆動制御部44に入力されている。つまり、駆動制御部44は、第2の端子T2の電圧を取得することで、第1スイッチング素子S¥#1のゲート電圧Vge1と、第2スイッチング素子S¥#2のゲート電圧Vge2と、を同時に取得している。
【0072】
第1スイッチング素子S¥#1には、第1フリーホイールダイオードD¥#1が逆並列に接続されている。また、第1スイッチング素子S¥#1の近傍には、第1感温センサT¥#1が設けられている。第1スイッチング素子S¥#1と第1フリーホイールダイオードD¥#1と第1感温センサT¥#1とは、同一の第1半導体スイッチング素子Ze1に内蔵されている。第2スイッチング素子S¥#2についても同様であり、重複した説明を省略する。
【0073】
第1のセンス抵抗42により生成される第1スイッチング素子S¥#1のセンス電圧Vse1は、ドライブIC20の第6の端子T6を介して駆動制御部44に入力されている。また、第2のセンス抵抗50により生成される第2スイッチング素子S¥#2のセンス電圧Vse2は、ドライブIC20の第10の端子T10を介して駆動制御部44に入力されている。
【0074】
第1感温センサT¥#1が検出した第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpは、ドライブIC20の第7の端子T7を介して駆動制御部44に入力されている。また、第2感温センサT¥#2が検出した第2スイッチング素子S¥#2の温度Xmpは、ドライブIC20の第11の端子T11を介して駆動制御部44に入力されている。つまり、駆動制御部44は、第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpと、第2スイッチング素子S¥#2の温度Xmpと、をそれぞれ取得している。
【0075】
図10に、本実施形態に係る過電流判定処理の手順を示す。この処理は、駆動制御部44によって過電流判定期間に例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、
図10において、先の
図3に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0076】
本実施形態では、まずステップS40において、第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpと、第2スイッチング素子S¥#2の温度Xmpとをそれぞれ取得する。
【0077】
次に、ステップS42において、第1スイッチング素子S¥#1のゲート判定電圧Vjdeと、第2スイッチング素子S¥#2のゲート判定電圧Yjdeとを設定する。駆動制御部44には、温度とゲート判定電圧との関係を示した相関データF(
図11参照)が記憶されている。ステップS42では、この相関データFを用いてゲート判定電圧Vjde、Yjdeを設定する。
【0078】
図11に示すように、相関データFは、温度が高いほどゲート判定電圧が低くなる関係を有する。そのため、第1温度Tmp1が第2温度Tmp2よりも低い場合、第1温度Tmp1に対応する第1ゲート判定電圧Vjde1は、第2温度Tmp2に対応する第2ゲート判定電圧Vjde2よりも高くなる。
【0079】
ステップS42では、まず、第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpと第2スイッチング素子S¥#2の温度Xmpとを比較して、低い側の温度を選択する。次に、相関データFにおいて、選択した温度に対応するゲート判定電圧を選出し、ゲート判定電圧Vjde、Yjdeを、選出したゲート判定電圧に設定する。
【0080】
したがって、ステップS42では、第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpが第1温度Tmp1であり、第2スイッチング素子S¥#2の温度Xmpが第2温度Tmp2である場合、ゲート判定電圧Vjde、Yjdeは、第1温度Tmp1における第1ゲート判定電圧Vjde1に設定される。
【0081】
次に、ステップS44において、第2の端子T2の電圧を取得することで、第1スイッチング素子S¥#1のゲート電圧Vge1と、第2スイッチング素子S¥#2のゲート電圧Vge2とを取得する。そして、ステップS46において、ゲート電圧Vge1がゲート判定電圧Vjdeを上回っているか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS44の処理が「電圧取得部」を構成する。
【0082】
ステップS46において肯定判定された場合には、ステップS48において、センス電圧Vse1を取得する。そして、ステップS50において、センス電圧Vse1がセンス判定電圧Vdecを上回っているか否かを判定する。
【0083】
ステップS50において、肯定判定された場合、つまり、ゲート電圧Vge1がゲート判定電圧Vjdeを上回り、かつ、センス電圧Vse1がセンス判定電圧Vdecを上回った場合、ステップS22において、第1スイッチング素子S¥#1に過電流が流れている旨判定する。
【0084】
一方、ステップS46、S50のいずれか一方において否定判定された場合には、ステップS52において、ゲート電圧Vge2がゲート判定電圧Yjdeを上回っているか否かを判定する。
【0085】
ステップS52において肯定判定された場合には、ステップS54において、センス電圧Vse2を取得する。そして、ステップS56において、センス電圧Vse2がセンス判定電圧Vdecを上回っているか否かを判定する。
【0086】
ステップS56において、肯定判定された場合、つまり、ゲート電圧Vge2がゲート判定電圧Yjdeを上回り、かつ、センス電圧Vse2がセンス判定電圧Vdecを上回った場合、ステップS22において、第1スイッチング素子S¥#1に過電流が流れている旨判定する。
【0087】
一方、ステップS52、S56のいずれか一方において否定判定された場合には、ステップS28において、スイッチング素子S¥#に過電流が流れていない旨判定する。
【0088】
以上説明した本実施形態によれば、第1スイッチング素子S¥#1のゲート判定電圧Vjdeと、第2スイッチング素子S¥#2のゲート判定電圧Yjdeとを、等しい電圧に設定する。そのため、これらの電圧を異なる電圧に設定する場合に比べて、過電流判定処理における駆動制御部44の処理負担を軽減することができる。
【0089】
特に本実施形態では、ゲート判定電圧Vjde、Yjdeを設定する際に、第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpと第2スイッチング素子S¥#2の温度Xmpとのうち、低い側の温度に基づいてゲート判定電圧Vjde、Yjdeを設定する。
【0090】
例えば、
図11に示すように、第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpが第1温度Tmp1であり、第2スイッチング素子S¥#2の温度Xmpが第2温度Tmp2である場合において、ゲート判定電圧Vjde、Yjdeが、温度Tmp、Xmpのうちの高い側の温度Xmp(Tmp2)における第2ゲート判定電圧Vjde2に設定されるとする。この場合、第1スイッチング素子S¥#1では、設定されたゲート判定電圧Vjde(Vjde2)が、第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpにおけるミラー電圧Vmil1を下回ってしまい、第1スイッチング素子S¥#1に過電流が流れていない場合でも、過電流が流れている旨誤判定されてしまうおそれがある。
【0091】
本実施形態では、第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpと第2スイッチング素子S¥#2の温度Xmpとのうち、低い側の温度に基づいてゲート判定電圧Vjde、Yjdeを設定するので、上記のような誤判定が生じることを抑制することができる。
【0092】
本実施形態では、第1スイッチング素子S¥#1のゲートと第2スイッチング素子S¥#2のゲートとが、ゲート抵抗46、48を介して第2の端子T2に共通に接続されている。そのため、駆動制御部44は、第2の端子T2の電圧を取得することで、第1スイッチング素子S¥#1のゲート電圧Vge1と、第2スイッチング素子S¥#2のゲート電圧Vge2と、を取得することができる。したがって、駆動制御部44は、ゲート電圧Vge1、Vge2を取得するために、1つの端子(第5の端子T5)を備えていればよい。そのため、Vge1、Vge2をそれぞれ取得する場合のように、ゲート電圧Vge1、Vge2を取得するために2つの端子が必要である構成に比べて、駆動制御部44に必要な端子数を削減することができる。
【0093】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0094】
本実施形態では、
図12に示すように、第5の端子T5が第1のゲート抵抗46と第1スイッチング素子S¥#1のゲートとの間に接続されている。また、第12の端子T12が第2のゲート抵抗48と第2スイッチング素子S¥#2のゲートとの間に接続されている。そして、第1スイッチング素子S¥#1のゲート電圧Vge1と、第2スイッチング素子S¥#2のゲート電圧Vge2とがそれぞれ取得される。なお、
図12は、本実施形態に係る駆動回路DUを示す図である。
図12において、先の
図9に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0095】
また、本実施形態に係る過電流判定処理では、第1スイッチング素子S¥#1のゲート判定電圧Vjdeと、第2スイッチング素子S¥#2のゲート判定電圧Yjdeとが、それぞれ個別に設定される点で、第3の実施形態の過電流判定処理と異なる。本実施形態では、相関データFを用いてゲート判定電圧Vjde、Yjdeを設定する際に、第1スイッチング素子S¥#1のゲート判定電圧Vjdeを、相関データFにおいて、第1スイッチング素子S¥#1の温度Tmpに対応するゲート判定電圧に設定する。また、第2スイッチング素子S¥#2のゲート判定電圧Yjdeを、相関データFにおいて、第2スイッチング素子S¥#2の温度Xmpに対応するゲート判定電圧に設定する。
【0096】
以上説明した本実施形態によれば、第1スイッチング素子S¥#1のゲート電圧Vge1と、第2スイッチング素子S¥#2のゲート電圧Vge2とをそれぞれ取得する。そのため、ゲート抵抗46、48の抵抗値や特性に基づいて、各ゲート電圧Vge1、Vge2を正確に取得することができる。
【0097】
本実施形態では、第1スイッチング素子S¥#1のゲート判定電圧Vjdeと、第2スイッチング素子S¥#2のゲート判定電圧Yjdeとを、それぞれ設定する。そのため、スイッチング素子S¥#1、S¥#2の温度Tmp、Xmpに基づいて、各ゲート判定電圧Vjde、Yjdeを設定することができる。
【0098】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、スイッチング素子S¥#に過電流が流れることで、ミラー期間が無くなる状況を例示したがこれに限らない。例えば、過電流の大きさによっては、ミラー期間が無くならないまでも、ミラー期間が短くなることが考えられる。この場合であっても、過電流が流れるときには、過電流検出期間内にゲート電圧Vgeがゲート判定電圧Vjdeを上回り、かつ、センス電圧Vseがセンス判定電圧Vdecを上回ることから、過電流が流れていることを検出できる。
【0099】
温度検出値を取得する形態として、スイッチング素子の温度そのものを取得する形態を例示したが、これに限られない。例えば、スイッチング素子の温度を電熱変換素子等により電圧に変換し、その電圧を取得してもよい。電圧は、スイッチング素子の温度の相関値の一例である。
【0100】
一対の主端子間に流れる端子間電流を取得する形態として、センス電圧Vseを取得する形態を例示したが、これに限られない。例えば、電流センサ等によりセンス端子からエミッタまでの電気経路を流れる電流を検出して取得してもよい。また、例えば、コレクタ及びエミッタ間電圧を検出する電圧センサ等を駆動回路に備え、電圧センサの検出値に基づきコレクタ電流を取得するものであってもよい。
【0101】
上記第1、第2の実施形態において、温度検出値が第1温度よりも高い第2温度である場合に、判定電圧を、第1温度における第1判定電圧よりも低い第2判定電圧に設定する形態として、判定電圧を、スイッチング素子の温度が高くなるほど、連続的に低く設定する形態を例示したが、これに限られない。例えば、判定電圧を、スイッチング素子の温度が高くなるほど、段階的に低く設定してもよい。なお、段階的に低く設定する場合の段階数は、2つであってもよければ、3つ以上であってもよい。
【0102】
上記第3、第4の実施形態において、並列接続された複数のスイッチング素子の数として、2つを例示したが、3つ以上であってもよい。第3実施形態では、例えば3つのスイッチング素子が並列接続されている場合、3つのスイッチング素子それぞれについて温度を取得し、これら3つの温度のうち最も低い温度を選択し、相関データにおいて、この選択した温度に対応する判定電圧を、3つのスイッチング素子の判定電圧として共通に設定する。
【0103】
なお、第3実施形態に係る駆動回路は、必ずしも第1、第2実施形態に係る過電流判定処理を実行しなくてもよい。第3実施形態に係る駆動回路は、第3実施形態に係る複数のスイッチング素子を対象とした過電流判定処理を実行することだけで、十分な効果が得られる。そのため、第3実施形態に係る駆動回路は、第1、第2実施形態に係る単独のスイッチング素子を対象とした過電流判定処理を実行する構成を備えていてもよければ、備えていなくてもよい。
【0104】
過電流が流れている旨判定された場合に、過電流が流れない場合にスイッチング素子をオフ状態に切り替えるときにおける開閉制御端子の電荷の放電速度よりも低い放電速度で電荷を放電させる形態として、ゲート電荷の放電経路の抵抗値を増大させる形態を例示したが、これに限らない。例えば、以下(A)、(B)に説明するものであってもよい。
【0105】
(A)先の
図2において、ソフト遮断用抵抗体38、第4の端子T4及びソフト遮断用スイッチング素子40を除去する。そして、第3の端子T3及び放電用スイッチング素子30の接続点にスイッチング素子(例えばMOSFET)を介して、電源(定電流電源)を接続する。そして、上記スイッチング素子をオン操作して電源から上記接続点に電荷を供給することで、ソフト遮断処理時におけるゲート電荷の放電速度を、過電流が流れない通常時の放電速度よりも低くする形態でもよい。
【0106】
(B)先の
図2において、ソフト遮断用抵抗体38、第4の端子T4及びソフト遮断用スイッチング素子40を除去する。そして、放電用スイッチング素子30のソースを、スイッチング素子S¥#のエミッタ又はエミッタよりも高電位となる部位(例えば、エミッタ電位よりも高い電位を出力電位とする電源)のうちいずれかと、を選択的に接続可能な通電操作式のスイッチング素子(例えばMOSFET)によって接続する。そして、上記スイッチング素子の通電操作により、ソフト遮断処理時において、放電用スイッチング素子30のソース及び上記高電位となる部位を接続する形態でもよい。
【0107】
スイッチング素子の開閉制御端子に電荷を供給する形態としては、定電流制御によって電荷を供給する形態を例示したが、これ限らない。例えば、先の
図2において、定電流電源24を除去してかつ定電圧電源22を第1の端子T1に接続し、定電圧制御によって電荷を供給してもよい。
【0108】
スイッチング素子としては、IGBTに限らず、例えばMOSFETであってもよい。また、スイッチング回路としては、3相インバータに限られず、例えばフルブリッジ回路等の他の回路であってもよい。