(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記収容孔部は、前記軸方向において前記添加弁の先端側に設けられる小径部(61)と、前記小径部よりも径が大きく、且つ前記添加弁の反先端側に設けられる大径部(62)とを有し、
前記熱伝導シール部材は、前記小径部に収容されるとともに、前記反先端側の一部が前記大径部の側へはみ出ており、
前記カラー部材は、前記熱伝導シール部材において前記大径部の側にはみ出た部分の拡張変形を規制するものである請求項1又は2に記載の添加弁の取付構造。
前記熱伝導シール部材は、径方向において、膨張黒鉛テープの層が複数積層されている黒鉛膨張ガスケットである請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の添加弁の取付構造。
前記収容孔部は、前記軸方向において、前記熱伝導シール部材の先端側の面に係合する係合部(65)を備えた請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の添加弁の取付構造。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、車載のディーゼルエンジン(内燃機関)から排出されるNOx(窒素酸化物)を還元浄化する排気浄化システムとして、SCRシステム(Selective Catalytic Reduction)に適用される添加弁の取付構造を具体化するものとしている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0011】
図1に示すように、ディーゼルエンジンであるエンジン10の排気側には、排気を浄化する排気浄化システムが設けられている。排気浄化システムの構成として、エンジン10には排気通路を形成する排気管11が接続されており、その排気管11には、エンジン10側から順に酸化触媒コンバータ12と、選択還元触媒コンバータ(以下、SCR触媒コンバータ13という)と、アンモニア除去装置14と、が設けられている。
【0012】
酸化触媒コンバータ12は、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、DPF(Diesel Particulate Filter)を有している。SCR触媒コンバータ13は、選択還元型の触媒としてSCR触媒を有している。また、排気管11において酸化触媒コンバータ12とSCR触媒コンバータ13との間には、還元剤としての尿素水(尿素水溶液)を排気管11内に添加供給するための尿素水添加弁(以下、添加弁と示す)20が設けられている。
【0013】
酸化触媒コンバータ12において、ディーゼル酸化触媒は、主としてセラミック製の担体と、酸化アルミニウム、二酸化セリウム及び二酸化ジルコニウムを成分とする酸化物混合物、並びに白金、パラジウム、ロジウムといった貴金属触媒で構成されている。ディーゼル酸化触媒は、排気に含まれる炭化水素、一酸化炭素などを酸化させ浄化する。
【0014】
DPFは、ハニカム構造体により形成され、多孔質セラミックに白金やパラジウムなどの白金族触媒が担持されることで構成されている。DPFは、排気中に含まれる粒子状物質をハニカム構造体の隔壁に堆積させることで捕集する。堆積した粒子状物質は、燃焼によって酸化され浄化される。
【0015】
SCR触媒コンバータ13は、酸化触媒コンバータ12の後処理装置としてNOxを窒素と水に還元する装置であって、SCR触媒としては、例えばゼオライト又はアルミナなどの基材表面にPtなどの貴金属を担持した触媒が用いられる。SCR触媒は、触媒温度が活性温度域にある場合に、還元剤としての尿素が添加されることによりNOxを還元浄化する。
【0016】
アンモニア除去装置14は、酸化触媒(ASC)を有しており、排気管11においてSCR触媒コンバータ13の下流側に配置されている。アンモニア除去装置14により、SCR触媒コンバータ13から排出されるアンモニア、すなわち余剰のアンモニアが除去される。
【0017】
添加弁20は、既存の燃料噴射弁(インジェクタ)とほぼ同様の構成を有するものであり、公知の構成が採用できるためここでは構成を簡単に説明する。添加弁20は、電磁ソレノイド等からなる駆動部と、尿素水を流通させる尿素水通路や先端の噴射口20aを開閉するためのニードルを有する弁体部と、を備えた電磁式開閉弁として構成されており、ECU40からの駆動信号に基づき開弁又は閉弁する。すなわち、駆動信号に基づき電磁ソレノイドが通電されると、その通電に伴いニードルが開弁方向に移動し、そのニードル移動に伴い噴射口20aから尿素水が添加(噴射)される。
【0018】
次に、添加弁20に尿素水を供給する尿素水供給装置30の構成について説明する。なお、以下の説明では便宜上、尿素水タンク34から添加弁20に対して尿素水が供給される場合を基準にして、尿素水タンク34側を上流側、添加弁20側を下流側として記載する。
【0019】
図1において、尿素水タンク34は、給液キャップ付きの密閉容器にて構成されており、その内部に所定の規定濃度の尿素水が貯蔵されている。この尿素水タンク34には、尿素水の温度を検出する温度センサ25や、尿素水の水位を検出する水位センサ26が設けられている。
【0020】
尿素水タンク34と添加弁20とは尿素水供給管31を介して接続されている。尿素水供給管31内には、尿素水通路(還元剤通路)が形成されている。尿素水供給管31のうち尿素水タンク34側の先端部には、尿素水を吸い込むための尿素水吸込口35が形成されており、尿素水タンク34内に尿素水が貯留された状態において尿素水吸込口35が尿素水に浸漬した状態になっている。
【0021】
尿素水供給管31の途中には、尿素水ポンプ33が設けられている。尿素水ポンプ33は、ECU40からの駆動信号により回転駆動されるインライン式の電動ポンプである。
【0022】
尿素水供給管31において、上流側(尿素水タンク34側)には、尿素水を濾過するためのフィルタ装置36が設けられている。また、尿素水ポンプ33による尿素水の吐出圧力を検出する圧力センサ27が設けられている。
【0023】
添加弁20側への尿素水圧送時には、尿素水ポンプ33に通電されることで尿素水ポンプ33が駆動される。これにより、尿素水タンク34内の尿素水が汲み上げられ、フィルタ装置36を通過して下流側に流れる。このとき、フィルタ装置36にて尿素水内に含まれる異物等が除去される。そして、尿素水ポンプ33から尿素水が吐出(圧送)され、添加弁20に供給される。
【0024】
また、排気管11において、酸化触媒コンバータ12とSCR触媒コンバータ13との間であって添加弁20の上流側、及びSCR触媒コンバータ13の下流側には、ガスセンサとして限界電流式のNOxセンサ21,22がそれぞれ設けられている。NOxセンサ21,22は、それぞれの検出位置において排気中のNOx濃度を検出する。なお、エンジン排気系におけるNOxセンサの位置及び個数は任意でよい。
【0025】
また、排気管11において、酸化触媒コンバータ12とSCR触媒コンバータ13との間であって添加弁20の上流側、及び下流側には、排気温度を検出する排気温センサ23,24がそれぞれ設けられている。
【0026】
各種センサ21〜27は、それぞれECU40と接続されており、これらの検出信号は、センサごとにECU40に適宜出力される。
【0027】
ECU40は、CPUや各種メモリを有するマイコンとその周辺回路とを具備する電子制御装置であり、各種センサからの検出信号に基づき、エンジン10や排気系の各種装置を制御する。ECU40は、例えばアクセル開度やエンジン回転速度に基づいて燃料噴射制御等を実施する。
【0028】
また、ECU40は、NOxセンサ21,22の検出信号に基づいて、排気中の酸素(O2)濃度や特定ガス成分の濃度としてのNOx濃度等を算出する。そして、ECU40は、各種センサ21〜27による検出信号に基づいて、添加弁20による尿素水添加の制御を実施する。その尿素水添加の制御を略述すると、ECU40は、SCR触媒コンバータ13の上流側のNOxセンサ21により検出されるNOx濃度に基づいて、尿素水添加量を算出する。それと共に、ECU40は、SCR触媒コンバータ13の下流側のNOxセンサ22により検出されるNOx濃度が極力小さい値となるように、尿素水添加量をフィードバック補正する。そして、その尿素水添加量に基づいて、添加弁20の駆動を制御する。
【0029】
そして、この排気浄化システムでは、エンジン運転時において、尿素水ポンプ33によって、尿素水タンク34内の尿素水が尿素水供給管31を通じて添加弁20に圧送されている。このため、添加弁20を駆動させると、添加弁20により排気管11内に尿素水が添加供給される。すると、排気管11内において排気と共に尿素水がSCR触媒コンバータ13に供給され、SCR触媒コンバータ13においてNOxの還元反応によりその排気が浄化される。
【0030】
次に、添加弁20の取付構造について説明する。なお、以下では、添加弁20の軸方向を、単に軸方向と示し、添加弁20の径方向を、単に径方向と示す。また、軸方向において、排気管11側(すなわち、添加弁20の先端(噴射口20a)側)を、単に先端側と示し、軸方向において、反排気管11側(すなわち、添加弁20の基端側)を、単に反先端側と示す。なお、図において、軸方向を矢印Y1で示し、径方向を矢印Y2で示す。
【0031】
添加弁20は、SCR触媒コンバータ13の上流側において、排気管11に、
図2に示すホルダ51を介して取り付けられている。ホルダ51は、金属製とされており、内部に添加弁20が収容される収容空間52が形成されている。この収容空間52は、軸方向において、反先端側に開口しており、当該収容空間52の開口部52aから添加弁20が挿入されて、収容されるように構成されている。
【0032】
なお、添加弁20には、径方向外側に突出するリングプレート53が固定されており、収容空間52に設けられた段差52bと当該リングプレート53とが係合することにより、軸方向における添加弁20の位置決めがなされている。
【0033】
また、収容空間52の開口部52aは、収容空間52に添加弁20が収容された状態で、蓋部54によって閉塞されている。この蓋部54は、ネジ54aなどにより固定されている。また、ホルダ51の内部には、冷却水が循環する水路55が形成されている。ホルダ51は、冷却水供給管56(
図1参照)と接続されており、冷却水供給管56を介してホルダ51内の水路55に冷却水が供給(循環)されるように構成されている。これにより、ホルダ51は、ホルダ51を冷却する冷却部としての水路55を備えていることとなる。
【0034】
そして、収容空間52の底部52cには、添加弁20の少なくとも一部(本実施形態では、先端側の一部)が挿入され、収容される収容孔部60が軸方向に沿って設けられている。収容孔部60は、断面が円形に形成されている。
【0035】
この収容孔部60は、軸方向において先端側に設けられる小径部61と、小径部61よりも径が大きく、且つ反先端側に設けられる大径部62とを有する。また、収容孔部60は、軸方向において、大径部62から小径部61に向かって、縮径されるテーパ部63を有している。すなわち、収容孔部60は、軸方向において、大径部62から小径部61に向かって、径の大きさが徐々に小さくなっている。
【0036】
なお、収容孔部60において、反先端側の開口部には、反先端側に向かって径が大きくなるように、テーパ面64が形成されている。また、収容孔部60において、先端側の開口部には、径方向内側に突出する円環状の係合部65が形成されている。添加弁20の先端は、係合部65の内側に挿入され、排気管11側に露出している。
【0037】
ここで、収容孔部60に収容される添加弁20の部分形状について説明する。添加弁20において、収容孔部60に収容される部分は、軸方向に沿って円柱状に形成されている。また、収容孔部60に収容される部分は、複数段階(本実施形態では2段階)で径が小さく形成されている。具体的には、先端側ほど径が小さくなっており、先端側であって、最も径が小さい部分を、第1部分71と示す。第1部分71よりも反先端側に設けられており、第1部分71よりも径が大きい部分を第2部分72と示す。また、第2部分72よりも反先端側に設けられており、第2部分72よりも径が大きい部分を第3部分73と示す。
【0038】
図2に示すように、第1部分71が、大径部62よりも先端側に配置され、第2部分72及び第3部分73が大径部62の内側に配置されている。なお、第1部分71の外径は、係合部65の内径よりもわずかに小さく形成されており、第2部分72の外径は、係合部65の内径よりも大きく形成されている。なお、収容孔部60の中心軸と、添加弁20の中心軸は、同軸上となっている。
【0039】
そして、添加弁20(より詳しくは、第1部分71)と、収容孔部60(より詳しくは小径部61及びテーパ部63の一部)との間には、熱伝導シール部材としての黒鉛膨張ガスケット80が設けられている。黒鉛膨張ガスケット80は、径方向において、第1部分71及び小径部61とそれぞれ圧接しており、第1部分71と小径部61との隙間をシールしている。これにより、排気管11からの排気が、第1部分71と小径部61との隙間を通過して外部に流出することを防止している。また、黒鉛膨張ガスケット80を介して、添加弁20の先端側の熱をホルダ51に伝達し、添加弁20を冷却している。なお、ホルダ51は、その内部に水路55が形成されており、水路55を流れる冷却水を介して、排熱している。
【0040】
また、添加弁20と収容孔部60との間であって、黒鉛膨張ガスケット80よりも軸方向において反先端側には、カラー部材81が黒鉛膨張ガスケット80に並べて設けられている。カラー部材81は、金属製であり、筒状に構成されている。
【0041】
このカラー部材81の外周面は、収容孔部60に対して、テーパ部63と大径部62との境目と対向しており、テーパ部63(反先端側の一部)から大径部62(先端側の一部)に亘って対向している。また、反先端側におけるカラー部材81の外径は、大径部62の内径と同一にとなっている。そして、カラー部材81は、反先端側から先端側に向かって、その外径が徐々に小さくなっている。
【0042】
一方、カラー部材81の内周面は、添加弁20に対して、第1部分71と第2部分72との境目と対向しており、第1部分71(反先端側の一部)から第2部分72(先端側の一部)に亘って対向している。また、反先端側におけるカラー部材81の内径は、第2部分72の外径とほぼ同一となっている。一方、先端側におけるカラー部材81の内径は、第1部分71の外径よりもわずかに大きく、第2部分72の外径よりも小さくなっている。
【0043】
このため、カラー部材81の内周面側には、径方向内側に突出する段差81aが設けられており、この段差81aが、第1部分71と第2部分72との段差と、軸方向に係合可能となっている。カラー部材81の内周面側に設けられた段差81aは、カラー部材81において、軸方向の反先端側の面であり、添加弁20に当接する第1当接面に相当する。
【0044】
また、先端側において、カラー部材81の外径は、黒鉛膨張ガスケット80の外径よりも大きく形成されている。そして、先端側において、カラー部材81の内径は、黒鉛膨張ガスケット80の外径よりも小さく、且つ、黒鉛膨張ガスケット80の内径よりもわずかに大きく形成されている。このため、軸方向において、カラー部材81の先端側の面81bは、黒鉛膨張ガスケット80の反先端側の面に、係合(圧接)可能となっている。すなわち、カラー部材81の先端側の面81bは、軸方向において、黒鉛膨張ガスケット80と当接する第2当接面に相当する。
【0045】
また、添加弁20(の第2部分72)と収容孔部60(の大径部62)との間であって、カラー部材81よりも軸方向において反先端側には、Oリング82が設けられている。つまり、Oリング82は、軸方向において、カラー部材81を挟んで、黒鉛膨張ガスケット80とは反対側に設けられている。Oリング82は、樹脂製又はゴム製であり、円環状に構成されている。
【0046】
Oリング82の外径は、第3部分73よりも大きく、大径部62の内径と同一にとなっている。そして、Oリング82の外周は、収容孔部60と当接している。また、Oリング82の内径は、第2部分72の外径と同一にとなっている。そして、Oリング82の内周は、添加弁20と当接している。これにより、第2部分72と大径部62との隙間をシールして、外部から収容孔部60の先端側へ水滴などが浸入することを防止する。したがって、Oリング82は、防水シール部材に相当する。また、黒鉛膨張ガスケット80のバックアップとしても機能し、排気が外部に流出することを防止する。
【0047】
ところで、
図3に示すように、黒鉛膨張ガスケット80は、膨張黒鉛テープを渦巻き状に積層し、黒鉛膨張ガスケット80の径方向から加圧成形して、円筒状にしたものである。つまり、黒鉛膨張ガスケット80は、径方向において、膨張黒鉛テープの層が複数積層されて構成されている。このため、柔軟性に富み、耐熱性を有し、熱伝導シール部材として適している。その反面、低剛性であり、もろく、傷つきやすいという特性を有する。なお、
図3(b)は、
図3(a)の破線部分を拡大した要部断面図である。
【0048】
このため、従来における取付構造では、以下のような問題点があった。例えば、
図4(a)に示すように、収容孔部60に黒鉛膨張ガスケット80を圧入してから、
図4(b)に示すように、添加弁20を黒鉛膨張ガスケット80に圧入して組み付ける場合、
図4(c)に示すように、バリ(削りかす)100が発生する。つまり、添加弁20を黒鉛膨張ガスケット80に圧入する際、添加弁20の先端部分が、黒鉛膨張ガスケット80の内周面を削って先端側に突出するバリ100が発生する。このバリ100は、添加弁20により排気管11側に突出するように押し出されるため、添加弁20から尿素水を噴射する際に、邪魔となる可能性がある。なお、収容孔部60に黒鉛膨張ガスケット80を圧入する際にも、反先端側にバリ200が発生する。
【0049】
また、組み立て方法としては、例えば、
図5(a)に示すように、添加弁20に黒鉛膨張ガスケット80及び従来における円筒形状のカラー部材300を取り付けた状態で、
図5(b)に示すように、収容孔部60に添加弁20を圧入する方法が考えられる。この場合、初期状態(組み付け前の状態)において黒鉛膨張ガスケット80の内径を添加弁20の外径よりも大きくすれば、添加弁20に黒鉛膨張ガスケット80を取り付ける際、バリ100の発生を防止することができる。
【0050】
しかしながら、従来のカラー部材300の構成では、収容孔部60に黒鉛膨張ガスケット80ごと添加弁20を圧入する際、
図5(c)に示すように、小径部61に挿入されていない黒鉛膨張ガスケット80の部分(はみ出し部分)が、径方向外側に拡張変形するという問題がある。すなわち、黒鉛膨張ガスケット80は、柔軟性がある一方で低剛性であるため、軸方向の押圧力が加わると、軸方向からの押圧力の影響により、径方向外側に広がるように拡張変形する。
【0051】
この場合、小径部61への黒鉛膨張ガスケット80の圧入を完了する前に、小径部61よりも反先端側において、黒鉛膨張ガスケット80のはみ出し部分の外径が大きくなりすぎて(拡張変形量が所定量以上となって)、途中から圧入することができなくなる(又はしにくくなる)。特に、黒鉛膨張ガスケット80は、膨張黒鉛テープを渦巻き状に積層しているため、外周面におけるテープ端88(
図3参照)の密着がはがれやすく、上記問題が発生しやすい。
【0052】
そこで、本実施形態では、
図2に示すように、カラー部材81は、先端側の面81bの側に、黒鉛膨張ガスケット80の外側への拡張変形を規制する規制部81cを備えた。詳しく説明すると、
図6に示すように、規制部81cは、カラー部材81における先端側の面81bに、黒鉛膨張ガスケット80の外周を囲む円環状の突起部として形成されている。つまり、規制部81cは、軸方向において、黒鉛膨張ガスケット80の側(先端側)に突出するように形成されている。また、規制部81cは、カラー部材81における先端側の面81bの外縁に沿って形成されている。この規制部81cは、小径部61よりも大径部62の側に設けられ、黒鉛膨張ガスケット80において大径部62の側にはみ出た部分の拡張変形を規制するものである。
【0053】
また、本実施形態では、初期状態(組み立て前の状態)において、黒鉛膨張ガスケット80の内径は、添加弁20の第1部分71の外径よりも大きく形成されている。一方、初期状態において、黒鉛膨張ガスケット80の外径は、収容孔部60の小径部61における内径よりも大きく形成されている。また、黒鉛膨張ガスケット80の外径と小径部61の内径との差が、黒鉛膨張ガスケット80の内径と第1部分71の外径との差と比較して、大きくなるように、黒鉛膨張ガスケット80の内径及び外径が設定されている。
【0054】
次に、本実施形態における組み立て方法及び上記構成に基づく作用について説明する。
【0055】
図7(a)に示すように、まず、ホルダ51に収容する前、添加弁20に対して、反先端側から、Oリング82、カラー部材81、黒鉛膨張ガスケット80の順番で、各部材80〜82を挿入する。黒鉛膨張ガスケット80を添加弁20に挿入する際、黒鉛膨張ガスケット80の内径は、添加弁20の第1部分71の外径よりも大きく形成されているため、黒鉛膨張ガスケット80の内周面が添加弁20によって削られることがない。したがって、バリが発生しない(又は発生しにくい)。
【0056】
次に、
図7(b)に示すように、各部材80〜82が挿入された添加弁20を軸方向から収容孔部60に圧入する。圧入する際、添加弁20は、軸方向において、カラー部材81の段差81aと係合し、カラー部材81の先端側の面81bは、黒鉛膨張ガスケット80と反先端側の面と係合する。このため、添加弁20に加えられる軸方向の押圧力は、カラー部材81を介して、黒鉛膨張ガスケット80に伝達される。このため、黒鉛膨張ガスケット80は、カラー部材81に押されて、小径部61に圧入される。
【0057】
黒鉛膨張ガスケット80が収容孔部60の小径部61に圧入されると、その柔軟性により、黒鉛膨張ガスケット80の内周面は、添加弁20に圧接する。すなわち、初期状態において黒鉛膨張ガスケット80の外径と小径部61の内径との差が、黒鉛膨張ガスケット80の内径と第1部分71の外径との差と比較して、大きいため、黒鉛膨張ガスケット80の内周面が圧接する。
【0058】
また、軸方向において、黒鉛膨張ガスケット80に圧縮するように押圧力が加えられるため、小径部61よりも大径部62の側にはみ出している黒鉛膨張ガスケット80の部分に、径方向外側に拡張変形する力が加わる。しかしながら、カラー部材81には、黒鉛膨張ガスケット80の外周を囲む環状の規制部81cが形成されているため、
図7(c)に示すように、その拡張変形が規制される。よって、黒鉛膨張ガスケット80の外径の大きさが、圧入により変わることを抑制し、スムーズに圧入することが可能となる。
【0059】
また、黒鉛膨張ガスケット80が収容孔部60の小径部61に圧入されると、黒鉛膨張ガスケット80の外周面が小径部61との摩擦により、バリが発生する。このバリは、黒鉛膨張ガスケット80を小径部61に圧入するため、反先端側に突出するように発生することとなる。しかしながら、反先端側におけるカラー部材81の外径は、大径部62と同じであるため、カラー部材81よりも反先端側にバリが排出されることがない。すなわち、
図7(d)に示すように、カラー部材81と、収容孔部60と、黒鉛膨張ガスケット80で囲まれた閉鎖空間85内に、バリが閉じ込められるようになっている。
【0060】
また、
図7(d)に示すように、黒鉛膨張ガスケット80における先端側の面が、係合部65と係合し、カラー部材81において規制部81cの外径が、テーパ部63の内径と同一となった場合、添加弁20の収容孔部60への圧入が完了する。その後、
図2に示すように、ホルダ51の収容空間52は、蓋部54により閉塞され、ネジ54aにより固定されることにより、添加弁20の取り付けが完了する。
【0061】
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0062】
本実施形態では、ホルダ51には、水路55が設けられ、冷却機能が付与されている。そのホルダ51の収容孔部60内に黒鉛膨張ガスケット80を介在させた状態で、添加弁20が取り付けられている。このため、添加弁20の熱が黒鉛膨張ガスケット80を介してホルダ51に排出され、添加弁20を冷却することが可能となる。
【0063】
ところで、黒鉛膨張ガスケット80は、添加弁20の熱をホルダ51に効率よく伝えるため、所定の柔軟性を有し、収容孔部60と添加弁20との間において、圧入されている必要がある。しかしながら、黒鉛膨張ガスケット80は、柔軟性を有する反面、低剛性であるため、圧入する際、径方向外側に拡張変形する懸念がある。
【0064】
そこで、本実施形態では、黒鉛膨張ガスケット80の外側への拡張変形を規制する規制部81cを備えた。これにより、カラー部材81を介して軸方向に黒鉛膨張ガスケット80が押圧されても、規制部81cにより、黒鉛膨張ガスケット80の外側への拡張変形が規制される。すなわち、先端側に黒鉛膨張ガスケット80を挿入した状態で添加弁20を、軸方向に沿って収容孔部60に圧入しても、黒鉛膨張ガスケット80の反先端側部分が、径方向に広がるように変形することを、規制部81cによって規制することができる。このため、圧入が容易となる。また、黒鉛膨張ガスケット80を挿入した状態で添加弁20を収容孔部60に圧入することが可能となるため、黒鉛膨張ガスケット80に添加弁20を圧入する必要がなくなる。このため、黒鉛膨張ガスケット80の内周面がはがれることを抑制し、バリの発生を抑えることができる。
【0065】
なお、添加弁20を収容孔部60に圧入する際に、黒鉛膨張ガスケット80の外周面がはがれ、仮にバリが発生したとしても、黒鉛膨張ガスケット80よりも反先端側に発生(突出)するため、噴射の邪魔となることがない。
【0066】
規制部81cは、
図6に示すように、黒鉛膨張ガスケット80の外周を囲む環状の突起部により構成されている。このため、黒鉛膨張ガスケット80の外周全体を囲んで、外側への拡張変形を規制することができる。したがって、黒鉛膨張ガスケット80の外周の一部だけが外側へ拡張変形することを規制することができ、歪みを少なくすることができる。このため、圧入が容易となる。
【0067】
収容孔部60内に圧入される黒鉛膨張ガスケット80において、大径部62の側にはみ出た部分(すなわち、小径部61に圧入されていない部分)は、軸方向において押圧力が加わると、径方向外側に変形しやすい。そこで、黒鉛膨張ガスケット80のうち、大径部62の側にはみ出た部分の拡張変形を規制するカラー部材81を備えた。これにより、圧入が容易となる。
【0068】
反先端側におけるカラー部材81の外径は、大径部62の内径と一致する。これにより、カラー部材81によって収容孔部60を仕切ることができる。このため、黒鉛膨張ガスケット80を収容孔部60に圧入する際、黒鉛膨張ガスケット80の外周面と収容孔部60とがこすれることにより外周面の一部が剥がれて、バリが発生しても、カラー部材81によって、バリがカラー部材81よりも反先端側に移動することを防止できる。
【0069】
軸方向において、カラー部材81を挟んで、黒鉛膨張ガスケット80とは反対側にOリング82を設けた。添加弁20と収容孔部60とカラー部材81とにより囲まれた空間によりOリング82が収容されるOリング溝が形成され、Oリング82をOリング溝内の任意の位置にとどめることが可能となる。つまり、カラー部材81により、Oリング82が収容孔部60の小径部61側に移動することを防止できる。これにより、外部(ホルダ51の開口部52a)から排気管11側への浸水を防止できる。また、仮に排気管11からの排気が黒鉛膨張ガスケット80及びカラー部材81を通過したとしても、Oリング82によって排気が外部に漏れることを防止できる。つまり、Oリング82によって、黒鉛膨張ガスケット80のシール機能をバックアップできる。
【0070】
黒鉛膨張ガスケット80は、径方向において、膨張黒鉛テープの層が複数積層されて構成されている。このため、柔軟性及び耐熱性に優れた熱伝導シール部材とすることができる。
【0071】
収容孔部60は、軸方向において、大径部62から小径部61に向かって、縮径されるテーパ部63を有しているため、黒鉛膨張ガスケット80を挿入した状態の添加弁20を、軸方向に沿って収容孔部60の小径部61に圧入する際、圧入が容易となる。また、軸心を位置決めする必要がなくなり、組み立てが容易となる。
【0072】
カラー部材81は金属製であり、軸方向において、黒鉛膨張ガスケット80に並べて設けられており、収容孔部60と添加弁20との間の隙間を埋めるように設けられている。このため、添加弁20からカラー部材81を介してホルダ51側に熱を伝えることができ、添加弁20を冷却しやすくなる。また、カラー部材81よりも反先端側における添加弁20において、排気による熱の影響を抑制することができ、Oリング82に熱が伝わりにくくすることができる。
【0073】
Oリング82よりも先端側に、大径部62と外径が同じカラー部材81を設けたため、小径部61の側にOリング82が移動することを規制することが可能となる。したがって、Oリング82によるシール機能を確保することができる。
【0074】
初期状態において、黒鉛膨張ガスケット80の内径は、添加弁20の第1部分71の外径よりも大きく形成されている。このため、黒鉛膨張ガスケット80を添加弁20に挿入する際、黒鉛膨張ガスケット80の内周面が添加弁20によって削られることがない。したがって、添加弁20の先端側にバリが発生することを防止(又は抑制)できる。
【0075】
また、初期状態において黒鉛膨張ガスケット80の外径と小径部61の内径との差が、黒鉛膨張ガスケット80の内径と第1部分71の外径との差と比較して、大きくなっている。このため、黒鉛膨張ガスケット80を添加弁20ごと、収容孔部60の小径部61に圧入すると、その柔軟性により、黒鉛膨張ガスケット80の内周面を添加弁20に圧接させることができる。これにより、確実にシールすることができる。
【0076】
カラー部材81の内径は、第1部分71の外径よりも大きく形成されている。このため、軸方向に、カラー部材81を介して黒鉛膨張ガスケット80を押圧する際、カラー部材81と第1部分71との間の隙間に、黒鉛膨張ガスケット80の一部を逃がすことができ、拡張変形をより抑制できる。
【0077】
収容孔部60において、先端側の開口部には、係合部65を備えた。これにより、黒鉛膨張ガスケット80が排気管11側に突出してしまうことを防止することができるとともに、係合部65とカラー部材81によって、軸方向から黒鉛膨張ガスケット80を押圧することができる。これにより、黒鉛膨張ガスケット80が径方向に拡張する力を発生させ、黒鉛膨張ガスケット80を小径部61及び第1部分71に対してそれぞれ圧接することができ、確実にシールすることができる。また、軸方向の押圧力を変更することにより、シール力や熱伝達率を調整できる。
【0078】
カラー部材81の段差81aは、添加弁20における第1部分71と第2部分72との間の段差と係合する。このため、軸方向においてカラー部材81が反先端側に移動することが規制され、Oリング82の収容スペースが確保される。したがって、カラー部材81により、Oリング82が傷つけられることが防止でき、Oリング82によるシール機能を確実に実現することができる。
【0079】
軸方向において、黒鉛膨張ガスケット80は、小径部61よりも長く形成されている。このため、小径部61よりも短く形成されている場合と比較して、接触面を大きくすることができ、熱伝導率を向上させることができる。
【0080】
上記構成によれば、添加弁20に各部材80〜82を挿入した状態で、収容孔部60内に圧入して、組み立てる。このため、収容孔部60内に黒鉛膨張ガスケット80を挿入し、カラー部材81等を挿入した添加弁20を黒鉛膨張ガスケット80に挿入する場合と比較して、組み立ての工数を減らすことができる。
【0081】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されず、例えば以下のように実施してもよい。
【0082】
上記実施形態において、
図8に示すように、規制部81cの内径が、先端側から反先端側に向かって縮径するテーパ面400を備えていてもよい。また、黒鉛膨張ガスケット80の反先端側の外径が、反先端側に縮径するように、テーパ状に形成されていてもよい。これにより、添加弁20に対して、カラー部材81及び黒鉛膨張ガスケット80を挿入する際、黒鉛膨張ガスケット80の反先端側を、規制部81cの内側に配置しやすくなる。
【0083】
上記実施形態では、黒鉛膨張ガスケット80の外周を囲む環状の突起部により、規制部81cを構成したが、黒鉛膨張ガスケット80外側への拡張変形を規制するのであれば、規制部81cの形状を任意に変更してもよい。例えば、
図9に示すように、軸方向において先端側に突出する突起部181を、黒鉛膨張ガスケット80の外周を囲むように、所定間隔(
図9では、90度)ごとに配置することにより、規制部81cを設けてもよい。
【0084】
上記実施形態では、先端側におけるカラー部材81の内径を、第1部分71の外径よりも大きく形成したが、同一にしてもよい。また、カラー部材81は、金属製でなくてもよく、例えば、樹脂製でもよい。
【0085】
上記実施形態の収容孔部60において、係合部65は、なくてもよい。また、大径部62と小径部61との間に、テーパ部63を設けずに、段差にしてもよい。
【0086】
上記実施形態において、黒鉛膨張ガスケット80は、柔軟性及び耐熱性に優れた熱伝導シール部材であるならば、膨張黒鉛テープを複数層積層したものでなくてもよい。例えば、膨張黒鉛と金属箔や金属ネットなどとの複合材であってもよい。
【0087】
上記実施形態において、初期状態における黒鉛膨張ガスケット80の外径を、収容孔部60における小径部61の内径よりも小さくしてもよい。このようにしても、係合部65及びカラー部材81により、軸方向から黒鉛膨張ガスケット80に対して押圧力を加えて、黒鉛膨張ガスケット80を径方向に拡張変形させて、小径部61及び添加弁20に対して、黒鉛膨張ガスケット80をそれぞれ圧接させることができる。すなわち、黒鉛膨張ガスケット80により、小径部61と添加弁20との間の隙間をシールすることができる。この場合、小径部61に、黒鉛膨張ガスケット80を圧入する必要がなくなるため、黒鉛膨張ガスケット80の外周面が削れてバリが発生することを防止できる。
【0088】
上記実施形態において、ホルダ51に水路55を設けることにより、水冷式の冷却機能を付与したが、ホルダ51に円盤状の冷却フィンなどを設けて、空冷式の冷却機能を付与してもよい。
【0089】
上記実施形態において、還元剤は、尿素水を採用したが、アンモニア水であってもよい。