(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施形態
図1は、第1実施形態における液体噴射装置5の概略構成を示す説明図である。液体噴射装置5は、液体供給源10と、加圧装置20と、液室30と、第1スライド部40と、駆動装置50と、圧力室60と、ノズル孔70と、循環装置80と、供給流路101と、圧力室連通流路102と、循環流路103と、制御部90とを備える。
【0019】
液体供給源10には、液体が収容されている。液体供給源10は、例えば、タンクによって構成される。加圧装置20は、液体を加圧により液室30に供給するための装置である。加圧装置20は、例えば、ポンプによって構成される。液体供給源10内の液体は、加圧装置20の発生させる圧力によって、供給流路101を通じて液室30内へと流れる。
【0020】
液室30は、複数の圧力室60と接続されている。液室30の内壁面には、圧力室60の数に対応する数の第1開口31が形成されており、それぞれの第1開口31には、圧力室60に通じる圧力室連通流路102が接続されている。液室30内の液体は、それぞれの圧力室連通流路102を通じて、圧力室60内へと流れ、後述する吐出動作シーケンスによって、ノズル孔70から吐出される。尚、本実施形態では、液室30は、3つの圧力室60A、60B、60Cと接続されている。液室30の内壁面には、圧力室60の数に対応する数である3つの第1開口31A、31B、31Cが形成されており、それぞれの第1開口31A、31B、31Cには、圧力室60A、60B、60Cに通じる圧力室連通流路102A、102B、102Cが接続されている。液室30内の液体は、それぞれの圧力室連通流路102A、102B、102Cを通じて、圧力室60A、60B、60C内へと流れ、ノズル孔70A、70B、70Cから吐出される。
【0021】
第1スライド部40は、第1開口31が形成された液室30の内壁面の上に配置されている。第1スライド部40は、それぞれの第1開口31に対応する位置に、第1貫通孔41を有する。第1スライド部40は、駆動装置50によって、予め定められた方向に沿って駆動される。本実施形態における「予め定められた方向」とは、液室30の内部空間の長手方向(
図1における左右方向)と一致しており、この方向は、それぞれの第1開口31の配列方向とも一致している。第1スライド部40は、駆動装置50による駆動により、液室30の第1開口31を有する内壁面の上を、第1開口31の配列方向に沿って摺動し、第1開口31と第1貫通孔41とが重なる面積を変化させることにより、第1開口31の開度を変化させる。尚、本実施形態では、第1スライド部40は、3つの第1開口31A、31B、31Cに対応する位置に、第1貫通孔41A、41B、41Cを有する。第1スライド部40は、第1開口31A、31B、31Cと第1貫通孔41A、41B、41Cとが重なる面積を変化させることにより、第1開口31A、31B、31Cの開度を変化させる。
【0022】
また、液室30の内壁面には、それぞれの第1開口31に隣接する位置に、第2開口32が形成されており、それぞれの第2開口32には、液体供給源10に通じる循環流路103が接続されている。循環流路103には、循環装置80が設けられている。循環装置80は、例えば、ポンプによって構成される。液室30内の液体は、循環装置80の発生させる圧力によって、循環流路103を通じて液体供給源10へと循環する。尚、本実施形態では、3つの第1開口31A、31B、31Cに隣接する位置に、第2開口32A、32B、32Cが形成されており、それぞれに循環流路103が接続されている。
【0023】
制御部90は、CPUと、メモリーと、各部品が接続されるインターフェース回路とを備えたコンピューターとして構成されている。CPUは、メモリーに記憶された制御プログラムを実行することにより、駆動装置50の駆動を制御する。また、本実施形態では、制御部90は、後述する圧力室アクチュエーター62の駆動を制御して、ノズル孔70から液体を吐出するための吐出動作シーケンスを実行する。
【0024】
図2は、第1実施形態における第1スライド部40と駆動装置50との構成を示す説明図である。
図2を用いて、液室30内に配置された第1スライド部40と、駆動装置50とについての具体的な構成を説明する。
【0025】
液室30内には、上述したとおり、それぞれの圧力室60A〜60Cに連通する第1開口31A〜31Cが形成されている。液室30内の第1開口31A〜31Cに隣接する位置には、循環流路103に連通する第2開口32A〜32Cが形成されている。それぞれの第1開口31A〜31Cは、所定の間隔で、液室30の内部空間の長手方向に沿って一直線状に配列されている。それぞれの第2開口32A〜32Cは、第1開口31A〜31Cの配列間隔と同じ間隔で、液室30の内部空間の長手方向に沿って一直線状に配列されている。
【0026】
第1スライド部40は、液室30内に配置されており、第1スライド部40には、第1貫通孔41A〜41Cが形成されている。第1貫通孔41A〜41Cは、第1開口31A〜31Cの配列間隔と同じ間隔で、液室30の内部空間の長手方向に沿って一直線状に配列されている。
【0027】
駆動装置50は、駆動装置用圧電素子51と、拡大変位機構52と、弾性部材53と、第1位置調整機構54と、第2位置調整機構55と、第1Oリング56と、第2Oリング57とによって構成されている。駆動装置用圧電素子51は、印加される電圧に応じて伸縮する。駆動装置用圧電素子51に印加される電圧は、制御部90によって制御される。拡大変位機構52は、梃子によって構成されており、駆動装置用圧電素子51の伸縮による変位を拡大し、第1スライド部40の一方の端部側から第1スライド部40を押す。弾性部材53は、コイルばねによって構成されており、拡大変位機構52とは他方の第1スライド部40の端部側に配置されている。第1位置調整機構54は、調整ねじによって構成されており、拡大変位機構52の位置を調整する。第2位置調整機構55は、調整ねじによって構成されており、駆動装置用圧電素子51の位置を調整する。第1Oリング56と、第2Oリング57とは、液室30の端部に配置されており、液室30内の液体が外部に漏洩しないように液室30の端部をシールする。
【0028】
図3は、第1実施形態における第1スライド部40と駆動装置50との動作を示す説明図である。
図2と
図3とを用いて、第1スライド部40が駆動装置50によって駆動される動作を説明する。
図2では、第1スライド部40は、第1貫通孔41A〜41Cと第1開口31A〜31Cとが紙面垂直方向から見て重なる位置に配置されている。この状態では、第1開口31A〜31Cは開状態となっており、液室30と圧力室60A〜60Cとは連通状態となっている。第2開口32A〜32Cは閉状態となっており、液室30と循環流路103とは非連通状態となっている。駆動装置用圧電素子51が伸びると、駆動装置用圧電素子51の変位は、拡大変位機構52によって拡大され、第1スライド部40に伝達される。第1スライド部40は、拡大変位機構52によって、
図2における左方向に向かって押されて、
図3に示す位置まで、液室30の内壁面を摺動する。
【0029】
図3では、第1スライド部40は、第1貫通孔41A〜41Cと第2開口32A〜32Cとが紙面垂直方向から見て重なる位置に移動している。この状態では、第2開口32A〜32Cは開状態となっており、液室30と循環流路103とは連通状態となっている。第1開口31A〜31Cは閉状態となっており、液室30と圧力室60A〜60Cとは非連通状態となっている。また、弾性部材53は、第1スライド部40と拡大変位機構52とを介して駆動装置用圧電素子51に押されて縮んでいる。そのため、第1スライド部40には、弾性部材53によって押し戻される力が働いており、駆動装置用圧電素子51が縮むと、第1スライド部40は、
図3における右方向に向かって押し戻され、
図2に示す位置まで、液室30の内壁面を摺動する。
【0030】
図4は、第1実施形態における液室30と圧力室60との断面を示す断面模式図である。
図5は、第1実施形態における液室30と圧力室60との構成を示す正面図である。
図6は、第1実施形態における液室30と圧力室60との構成を示す上面図である。
図4から
図6を用いて、液室30と圧力室60とについての具体的な構成を説明する。尚、
図4から
図6は、一の圧力室60のみを示しているが、本実施形態では、他の圧力室60も同様の構成となっている。
【0031】
図4を用いて、液室30の構成を説明する。液室30は、円柱形状の内部空間を有している。
図4においては、液室30の内部空間は、円形形状として表されており、
図4における紙面垂直方向にわたる空間を有している。液室30には、供給流路101が接続されており、液体供給源10から供給された液体が液室30内に流入する。液室30の圧力室60側の内壁面には、圧力室60に連通する第1開口31が形成されている。尚、第1開口31の直径は、例えば、100〜300μm程度である。
【0032】
液室30内には、上述したとおり、第1スライド部40が配置されており、第1スライド部40は、第1開口31に対応する位置に第1貫通孔41を有する。本実施形態の第1スライド部40は、円柱形状を有しており、第1スライド部40の直径は、液室30の内部空間の直径よりも小さい。また、第1スライド部40の円柱の軸方向は、液室30の円柱の軸方向に対して平行であり、第1スライド部40は、第1開口31を有する液室30の内壁面と接している。そのため、第1スライド部40は、第1開口31を有する液室30の内壁面と、第1開口31の配列方向に沿って線接触している。尚、本明細書において、「線接触」とは、第1開口31の直径(100〜300μm)と同等以下の幅で接触することをいう。尚、第1開口31と第1貫通孔41とは、若干の隙間を空けて連通していてもよい。この場合、当該隙間ではなく第1開口31へ液体が流れるように、当該隙間における流路抵抗が、第1開口31の流路抵抗よりも大きくされることが好ましい。
【0033】
圧力室60は、液体を吐出するノズル孔70に連通する。圧力室60の一方の壁面には、弾性体ブッシュ63を介して振動板61が取り付けられており、振動板61には、圧力室アクチュエーター62が取り付けられている。圧力室アクチュエーター62は、例えば、圧電素子によって構成されており、印加される電圧に応じて伸縮する。圧力室アクチュエーター62に印加される電圧は、制御部90によって制御される。圧力室アクチュエーター62が伸びると、振動板61が押されて、圧力室60内の容積は縮小される。圧力室アクチュエーター62が縮むと、振動板61が引張られて、圧力室60内の容積は拡大される。圧力室60内の容積の変化に伴い、圧力室60内の圧力は変化する。圧力室60内の圧力が、ノズル孔70のメニスカス耐圧を超えると、ノズル孔70から液体が吐出される。尚、本明細書において、「メニスカス耐圧」とは、液体のメニスカスが破壊されない(つまり、メニスカスが耐え得る)最大の圧力のことをいう。
【0034】
図5を用いて、第2開口32の配置について説明する。液室30の内壁面には、液室30内の液体を液体供給源10に循環させるための循環流路103と連通する第2開口32が形成されている。第2開口32は、第1開口31の配列方向に沿って、第1開口31に対して隣り合う位置に形成されている。
【0035】
図6を用いて、第1スライド部40の第1貫通孔41と、第1開口31と、第2開口32との位置関係について説明する。駆動装置50は、上述したとおり、第1スライド部40を第1開口31の配列方向に沿って駆動させる。第1スライド部40は、駆動装置50による駆動により、液室30の第1開口31を有する内壁面の上を第1開口31の配列方向に沿って摺動し、第1開口31と第1貫通孔41とが重なる面積を変化させることにより、第1開口31の開度を変化させる。また、同様にして、第1スライド部40は、第2開口32と第1貫通孔41とが重なる面積を変化させることにより、第2開口32の開度を変化させる。第1スライド部40が、第1開口31の開度を変更することにより、液室30と圧力室60との間の流路抵抗が変化させられる。また、第1スライド部40が、第2開口32の開度を変更することにより、液室30と循環流路103との間の流路抵抗が変化させられる。
【0036】
図7は、制御部90が圧力室アクチュエーター62と、駆動装置50の駆動装置用圧電素子51とを制御することによって実行される、ノズル孔70からの液体の吐出動作シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。横軸は、吐出動作1サイクルにおける時間を示している。縦軸は、第1開口31の開度と、噴射ノズルの圧力室60の容積と、非噴射ノズルの圧力室60の容積とを示している。ここで、「噴射ノズル」とは、当該サイクルにおいて、液体の吐出を行うノズル孔70を指す。また、「非噴射ノズル」とは、当該サイクルにおいて、液体の吐出を行わないノズル孔70を指す。当該サイクルにおいて、噴射ノズルとされるか、非噴射ノズルとされるかは、印刷パターンに応じて制御される。
【0037】
まず、噴射ノズルの圧力室60内の容積と第1開口31の開度との関係について説明する。初期状態である時刻t0において、噴射ノズルの圧力室60内には、液体が充満している。この際、第1開口31は閉状態となっている。時刻t1から時刻t2の間に、噴射ノズルの圧力室60内の容積は縮小されていく。時刻t2から時刻t3の間は、噴射ノズルの圧力室60内は、所定の容積まで縮小されて、圧力室60内の圧力はノズル孔70のメニスカス耐圧を超える。これによって、ノズル孔70から、液体が吐出される。時刻t3から時刻t4の間に、噴射ノズルの圧力室60内の容積は、初期状態まで戻されていく。時刻t4から時刻t5の間に、第1スライド部40が駆動され、第1開口31の開度は徐々に大きくされる。時刻t5から時刻t7の間に、第1開口31は、所定の開度まで開かれており、圧力室60内には、液室30から液体が供給される。時刻t7から時刻t8の間に、第1スライド部40が駆動され、第1開口31の開度は徐々に小さくされる。時刻t8において、第1開口31は、再度、閉状態とされ、1サイクルが終了する。
【0038】
次に、非噴射ノズルの圧力室60内の容積と第1開口31の開度との関係について説明する。初期状態である時刻t0において、非噴射ノズルの圧力室60内には、液体が充満している。この際、第1開口31は閉状態となっている。本実施形態の液体噴射装置5では、1つの第1スライド部40によって、すべての第1開口31の開閉が行われるため、噴射ノズルであるか、非噴射ノズルであるかを問わずに、時刻t4から時刻t5の間に、第1スライド部40が駆動され、第1開口31の開度は徐々に大きくされる。また、非噴射ノズルは液体の吐出を行わないため、非噴射ノズルの圧力室60内には、液体が充満している。そのため、非噴射ノズルの圧力室60内の容積が初期状態のまま、第1開口31が開状態とされると、液体が充満したままの非噴射ノズルの圧力室60内に、さらに液体が供給され、ノズル孔70から液体が漏洩する可能性がある。そこで、第1開口31が開状態にされるのに先立ち、時刻t1から時刻t2の間に、非噴射ノズルの圧力室60内の容積は拡大される。その後、第1開口31が開状態となった後である時刻t5から時刻t6にかけて、非噴射ノズルの圧力室60内の容積は初期状態に戻されていく。これによって、非噴射ノズルの圧力室60内の液体が、第1開口31を介して液室30に送られ、ノズル孔70からの液体の漏洩は抑制される。時刻t7から時刻t8の間に、第1スライド部40が駆動され、第1開口31の開度は徐々に小さくされる。時刻t8において、第1開口31は、再度、閉状態とされ、1サイクルが終了する。
【0039】
尚、本実施形態では、第1開口31が開状態となっている場合には、第2開口32は閉状態となっている。つまり、液室30が圧力室60と連通している場合には、液室30は循環流路103とは連通していない。また、第2開口32が開状態となっている場合には、第1開口31は閉状態となっている。つまり、液室30が循環流路103と連通している際には、液室30は圧力室60とは連通していない。
【0040】
以上で説明した本実施形態の液体噴射装置5によれば、第1スライド部40と液室30の内壁面とが線接触するため、第1スライド部40と液室30の内壁面とが面接触する場合に比べて、第1スライド部40と液室30の内壁面との摺動部における接触面積を小さくでき、摺動部における摩擦による発熱を低減できる。このため、液室30内の液体の粘度の低下を抑制でき、ノズル孔70からの液体の吐出安定性の低下を抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、1つの第1スライド部40と駆動装置50とによって、複数の第1開口31を開閉できるため、複数の第1開口31のそれぞれに第1スライド部40と駆動装置50とを個別に設けた場合に比べて、液体噴射装置5を小型化できる。
【0042】
B.第2実施形態
図8は、第2実施形態の液体噴射装置5bにおける、第1開口31を示す断面模式図である。以下の説明では、第1実施形態と同じ機能を果たす要素については、同じ参照符号を用いて説明する。第2実施形態の液体噴射装置5bでは、液室30の内壁面は、液室30の内部空間の長手方向に沿って延伸する溝状の凹部33を有しており、第1開口31は凹部33に形成されていることが第1実施形態(
図4)と異なる。本実施形態では、第1スライド部40と液室30の内壁面とは、凹部33の角部において線接触する。
【0043】
この形態の液体噴射装置5bによれば、第1スライド部40の駆動が液室30に設けられた溝状の凹部33によって案内されるため、液室30内における第1スライド部40の位置決め精度を向上させることができる。尚、第1開口31と第1スライド部40との間に、隙間が生じているが、当該隙間は第1開口31や、第1貫通孔41や、第2開口32に比べて流路抵抗が大きいため、いわゆるクロストークについては問題ない。
【0044】
C.第3実施形態
図9は、第3実施形態の液体噴射装置5cにおける、第1スライド部40の断面模式図である。第3実施形態の液体噴射装置5cでは、第1スライド部40の長手方向に垂直な断面は、円弧状であることが第1実施形態(
図4)と異なる。
【0045】
この形態の液体噴射装置5cによれば、第1スライド部40を同一直径の円柱で形成した場合に比べて、第1スライド部40の体積を小さくできるため、液室30の容積を確保することができ、液室30を小型化できる。
【0046】
D.第4実施形態
図10は、第4実施形態の液体噴射装置5dにおける、第1スライド部40の断面模式図である。第4実施形態の液体噴射装置5dでは、第1スライド部40における液室30の内壁面と線接触する側に対して反対側の面は平面であることが第1実施形態(
図4)と異なる。具体的には、第1スライド部40は、円柱を、当該円柱の軸方向に平行な断面で分割した形状を有している。また、第1スライド部40の平面部分の一部には、液室30から突き出したピン34が当接している。第1スライド部40の平面部分と、ピン34とは、第1スライド部40の長手方向に平行な軸を回転軸とする、第1スライド部40の回転を抑制するための回転抑制機構を構成する。
【0047】
この形態の液体噴射装置5dによれば、第1スライド部40の長手方向に平行な軸を回転軸とした第1スライド部40の回転が抑制されるため、液室30内における第1スライド部40の位置決め精度を向上させることができる。
【0048】
E.第5実施形態
図11は、第5実施形態の液体噴射装置5eにおける、第1スライド部40の断面模式図である。第5実施形態の液体噴射装置5eでは、第1スライド部40の長手方向に垂直な断面は中空であり、第1スライド部40の中空の内部空間が、液室30の一部を形成していることが第1実施形態(
図4)と異なる。具体的には、第1スライド部40は、少なくとも一方の端部が開口したパイプ状の形態を有しており、液室30内の液体は、第1スライド部40の開口した端部から第1スライド部40内に流入する。第1スライド部40内の液体は、第1貫通孔41を介して、圧力室60や循環流路103へと流れる。
【0049】
この形態の液体噴射装置5eによれば、第1スライド部40の内部に液室30の一部を設けることができるため、液室30を小型化できる。尚、第1スライド部40の端部が開口しておらず、第1スライド部40の側面に貫通孔が形成されていてもよい。この場合、液室30内の液体は、当該貫通孔を介して第1スライド部40内へと流入する。
【0050】
F.第6実施形態
図12は、第6実施形態の液体噴射装置5fにおける、第1スライド部40と第2スライド部42の断面模式図である。第6実施形態の液体噴射装置5fでは、液室30内の第2開口32の配置が第1実施形態(
図4)と異なる。また、液室30内の第2開口32に対応する位置に第2貫通孔43を有する第2スライド部42が配置されていることが第1実施形態(
図4)と異なる。具体的には、第2開口32は、第1スライド部40と液室30とが線接触する直線上(
図12における紙面垂直方向)において、第1開口31と並んで形成されておらず、液室30の上部に形成されている。第2スライド部42は、駆動装置50による駆動により、液室30の第2開口32を有する内壁面の上を、液室30の内部空間の長手方向に沿って摺動し、第2開口32と第2貫通孔43とが重なる面積を変化させることにより、第2開口32の開度を変化させる。第2スライド部42は、第2開口32を有する液室30の内壁面と、液室30の内部空間の長手方向に沿って線接触する。
【0051】
この形態の液体噴射装置5fによれば、第2スライド部42と液室30の内壁面との摺動部における接触面積を小さくでき、摺動部における摩擦による発熱を低減できる。このため、循環流路103に連通する第2開口32を開閉するための第2スライド部42を液室30内に設けた場合においても、液室30内の液体の粘度の低下を抑制でき、ノズル孔70からの液体の吐出安定性の低下を抑制できる。また、液室30において、第1開口31と第2開口32とが、同一直線上に配置されていないため、第1開口31同士の間隔を小さくできる。このため、ノズル孔70同士の間隔を小さくでき、ノズル孔70の高密度化を図ることができる。尚、第2スライド部42を駆動させるための駆動装置50は、第1スライド部40を駆動させるための駆動装置50と一体であってもよいし、第1スライド部40を駆動させるための駆動装置50とは別個に設けられてもよい。
【0052】
G.第7実施形態
図13は、第7実施形態の液体噴射装置5gにおける、第1スライド部40の断面模式図である。第7実施形態の液体噴射装置5gでは、第1スライド部40と第2スライド部42とが一体に形成されていることが第6実施形態(
図12)と異なる。また、本実施形態では、液室30の内部空間が円柱形状ではなく、四角柱形状であることも第6実施形態(
図12)と異なる。具体的には、第1スライド部40(第2スライド部42)は、円柱形状を有している。第1スライド部40は、第1開口31に対応する位置に第1貫通孔41を有しているとともに、第2開口32に対応する位置に第2貫通孔43を有している。第1開口31と第2開口32との開度は、第1スライド部40の駆動によって変化させられる。また、第1スライド部40は円柱形状であるのに対して、液室30の内部空間は、四角柱形状であるため、第1スライド部40は、第1開口31を有する液室30の内壁面と液室30の内部空間の長手方向に沿って線接触するとともに、第2開口32を有する液室30の内壁面と液室30の内部空間の長手方向に沿って線接触する。
【0053】
この形態の液体噴射装置5gによれば、一組の第1スライド部40と駆動装置50とによって、圧力室60に連通する第1開口31と、循環流路103に連通する第2開口32とを開閉することができるため、液体噴射装置5gを小型化できる。
【0054】
H.第8実施形態
図14は、第8実施形態の液体噴射装置5hにおける、第1スライド部40の断面模式図である。第8実施形態の液体噴射装置5hでは、第1スライド部40の長手方向に垂直な断面は円弧状であることが第7実施形態(
図13)と異なる。
【0055】
この形態の液体噴射装置5hによれば、第1スライド部40を同一直径の円柱で形成した場合に比べて、第1スライド部40の体積を小さくできるため、液室30の容積を確保することができ、液室30を小型化できる。
【0056】
I.第9実施形態
図15は、第9実施形態の液体噴射装置5iにおける、第1スライド部40の断面模式図である。第9実施形態の液体噴射装置5iでは、第1スライド部40における液室30の内壁面と線接触する側に対して反対側の面は平面であることが第7実施形態(
図13)と異なる。具体的には、第1スライド部40は、円柱を、当該円柱の軸方向に平行な断面で分割した形状を有している。また、第1スライド部40の平面部分の一部には、液室30から突き出したピン34が当接している。第1スライド部40の平面部分と、ピン34とは、第1スライド部40の長手方向に平行な軸を回転軸とする、第1スライド部40の回転を抑制するための回転抑制機構を構成する。
【0057】
この形態の液体噴射装置5iによれば、第1スライド部40の長手方向に平行な軸を回転軸とした第1スライド部40の回転が抑制されるため、液室30内における第1スライド部40の位置決め精度を向上させることができる。
【0058】
J.第10実施形態
図16は、第10実施形態の液体噴射装置5jにおける、第1スライド部40の断面模式図である。第10実施形態の液体噴射装置5jでは、第1スライド部40の長手方向に垂直な断面は中空であり、第1スライド部40の中空の内部空間が、液室30の一部を形成していることが第7実施形態(
図13)と異なる。具体的には、第1スライド部40は、少なくとも一方の端部が開口したパイプ状の形態を有しており、液室30内の液体は、第1スライド部40の開口した端部から第1スライド部40内に流入する。第1スライド部40内の液体は、第1貫通孔41を介して圧力室60へ流れ、第2貫通孔43を介して循環流路103へと流れる。
【0059】
この形態の液体噴射装置5jによれば、第1スライド部40の内部に液室30の一部を形成することができるため、液室30を小型化できる。尚、第1スライド部40の端部が開口しておらず、第1スライド部40の側面に貫通孔が形成されていてもよい。この場合、液室30内の液体は、当該貫通孔を介して第1スライド部40内へと流入する。
【0060】
K.第11実施形態
図17は、第11実施形態における液体噴射装置5kの概略構成を示す説明図である。第11実施形態における液体噴射装置5kでは、圧力室60は、圧力室60内の液体を液体供給源10に循環させるための循環流路103と連通していることが第1実施形態(
図1)と異なる。具体的には、第1スライド部40が駆動することによって、液室30と圧力室60とが連通状態になると、圧力室60には、液室30内の液体が流入する。ノズル孔70から吐出されなかった圧力室60内の液体は、循環流路103を通じて液体供給源10に循環する。循環流路103内は、循環装置80によって、ノズル孔70のメニスカス耐圧以下の圧力となるよう調整されている。
【0061】
この形態の液体噴射装置5kによっても、第1スライド部40と液室30の内壁面との摺動部における接触面積を小さくでき、摺動部における摩擦による発熱を低減できる。また、循環流路103は液室30ではなく圧力室60に接続されるため、液室30内に配置された第1スライド部40の駆動によって、液室30と圧力室60とが連通する状態から、液室30と循環流路103とが連通する状態への切替えを行う必要がない。このため、液体噴射装置5が循環流路103を有する場合においても、第1スライド部40のストローク量(移動量)を小さくでき、第1スライド部40と液室30の内壁面との摺動部における摩擦による発熱を低減できる。
【0062】
L.第12実施形態
図18は、第12実施形態における液体噴射装置5lの概略構成を示す説明図である。第12実施形態における液体噴射装置5lでは、圧力室60は、供給流路101を介して液体供給源10と連通し、液室30には、第1開口31を介して圧力室60内の液体が流入し、液室30は、液室30内の液体を液体供給源10に循環させるための循環流路103と連通していることが第1実施形態(
図1)と異なる。具体的には、圧力室60内には、供給流路101から液体が供給される。第1スライド部40が駆動することによって、液室30と圧力室60とが連通状態となると、ノズル孔70から吐出されなかった圧力室60内の液体は、圧力室連通流路102を通じて液室30内に流入する。液室30内の液体は、循環装置80によって、循環流路103を通じて液体供給源10に循環する。ノズル孔70から液体が漏洩しないように、圧力室60内の圧力がノズル孔70のメニスカス耐圧を超える可能性が生じた場合には、第1スライド部40を駆動させ、液室30と圧力室60とを連通させ、圧力室60内の液体を液室30に流通させてもよい。供給流路101内は、圧力室連通流路102よりも流路抵抗が大きくなるよう設計されることが好ましい。加圧装置20の加圧力が調整されてもよい。また、第1スライド部40は、液体の流れによって、液室30の内壁面から離間する方向に圧力を受けるため、第1スライド部40は、例えば、ばね等によって、液室30の内壁面に押しつけられていることが好ましい。
【0063】
この形態の液体噴射装置5lによっても、第1スライド部40と液室30の内壁面との摺動部における接触面積を小さくでき、摺動部における摩擦による発熱を低減できる。また、第1スライド部40が液室30の内壁面に押しつけられている場合、第1スライド部40と液室30の内壁面との摺動部の摩擦が大きくなるが、この場合であっても、摺動部の接触面積を小さくすることで、摩擦による発熱を抑制できる。
【0064】
M.第13実施形態
図19は、第13実施形態における液体噴射装置5mにおける、第1開口31と第2開口32との配置を示す正面図である。第13実施形態における液体噴射装置5mは、第2開口32の配置と、第1スライド部40に第2貫通孔43が形成されていることが第1実施形態(
図5)と異なる。具体的には、第2開口32は、第1開口31に対して液室30の内部空間の長手方向に沿って隣接する位置ではなく、第1開口31に対して
図19における左上に配置されている。また、第1スライド部40の第2開口32に対応する位置には、第2貫通孔43が形成されている。
【0065】
この形態の液体噴射装置5mによれば、第1開口31や第2開口32を形成する際に必要な間隔を維持しつつ、液室30の内部空間の長手方向における第1開口31と第2開口32との間隔が小さくでき、第1スライド部40のストローク量を、圧力室連通流路102や循環流路103の流路の直径よりやや大きい程度とすることができる。このため、摺動部における摩擦による発熱を低減できる。
【0066】
N.他の実施形態
(N−1)
図1に示した液体噴射装置5は、3つの圧力室60A、60B、60Cを備えている。これに対して、圧力室60の数は、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
図17に示した液体噴射装置5kと、
図18に示した液体噴射装置5lとにおける圧力室60の数についても同様である。
【0067】
(N−2)
図1に示した液体噴射装置5は、循環装置80と、循環流路103とを備えており、液室30の内壁面には、第2開口32が形成されている。これに対して、液体噴射装置5は、循環装置80と、循環流路103とを備えていなくてもよく、液室30の内壁面には、第2開口32が形成されていなくてもよい。つまり、液体噴射装置5は、液体を液室30から液体供給源10に循環させない構成であってもよい。
【0068】
(N−3)
図2から
図3に示した駆動装置50は、駆動装置用圧電素子51と拡大変位機構52とを有している。これに対して、駆動装置50は、駆動装置用圧電素子51ではなく、例えば、エアシリンダーや、ソレノイドや、磁歪素子によって構成されていてもよく、駆動装置50は、拡大変位機構52を有していなくてもよい。
【0069】
(N−4)
図4と、
図8から
図12に示した液室30の内部空間は、円柱形状を有している。これに対して、液室30の内部空間は、例えば、四角柱形状であってもよいし、四角柱形状以外の角柱形状であってもよい。また、
図13から
図16に示した液室30の内部空間は、四角柱形状を有している。これに対して、液室30の内部空間は、例えば、円柱形状であってもよいし、四角柱形状以外の角柱形状であってもよい。つまり、液室30の内壁面と第1スライド部40とが線接触することによって少ない接触面積となる形態であればよい。
【0070】
(N−5)
図4と、
図8に示した第1スライド部40は、円柱形状を有している。これに対して、第1スライド部40は、例えば、四角柱形状であってもよいし、四角柱形状以外の角柱形状であってもよい。また、中実断面であってもよいし、中空断面であってもよい。つまり、液室30の内壁面と第1スライド部40とが線接触することによって少ない接触面積となる形態であればよい。
【0071】
(N−6)
図12から
図16に示した液室30は、
図8に示したように、第1開口31側の内壁面に溝状の凹部33を有してもよい。また、第1開口31側だけでなく、第2開口32側にも凹部33を有してもよい。尚、凹部33と液室30との境界には、面取りが施されていてもよい。
【0072】
(N−7)本発明は、インクを吐出する液体噴射装置に限らず、インク以外の他の液体を吐出する任意の液体吐出装置にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体吐出装置に本発明は適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材吐出装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を吐出する液体吐出装置。
(5)精密ピペットとしての試料吐出装置。
(6)潤滑油の吐出装置。
(7)樹脂液の吐出装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を吐出する液体吐出装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置。
【0073】
なお、「液滴」とは、液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体吐出装置が消費できるような材料であればよい。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。液体の代表的な例としてはインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
【0074】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。