特許第6954060号(P6954060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954060
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/00 20060101AFI20211018BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20211018BHJP
   B60C 15/04 20060101ALI20211018BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   B60C15/00 M
   B60C17/00 B
   B60C15/04 C
   B60C15/00 C
   B60C9/08 N
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-230716(P2017-230716)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-98875(P2019-98875A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】長安 政明
(72)【発明者】
【氏名】竹森 諒平
(72)【発明者】
【氏名】丹野 篤
(72)【発明者】
【氏名】甲田 啓
(72)【発明者】
【氏名】松田 淳
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06929046(US,B1)
【文献】 特開2015−020741(JP,A)
【文献】 特開2000−289415(JP,A)
【文献】 特開2002−301915(JP,A)
【文献】 特開2013−052720(JP,A)
【文献】 特表2015−516911(JP,A)
【文献】 特開2011−240895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/00
B60C 17/00
B60C 15/04
B60C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、前記トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部に設けられたビードコアと、前記一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記サイドウォール部における前記カーカス層のタイヤ幅方向内側に設けられた断面三日月状のサイド補強層とを有する空気入りタイヤにおいて、
前記ビードコアは、タイヤ周方向に巻回された少なくとも1本のビードワイヤからなり、子午線断面において前記ビードワイヤの複数の周回部分がタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも1つの列とタイヤ径方向に重なる複数の層を形成しており、
子午線断面における前記ビードワイヤの複数の周回部分の共通接線によって形成された多角形を前記ビードコアの外郭形状としたとき、前記外郭形状はタイヤ径方向外側に単一の頂点Qを有し、この頂点Qを挟む2辺が成す内角θ1が鋭角であり、且つ、前記外郭形状はタイヤ径方向内側に前記頂点Qに対向する位置でタイヤ幅方向に延在する底辺を有し、
前記カーカス層は、前記トレッド部から各サイドウォール部を経て各ビード部に至る本体部と、各ビード部において前記ビードコアの周縁に沿って屈曲しながら折り返されて前記ビードコアのタイヤ径方向外側端の位置から前記本体部に接触しながら各サイドウォール部側に向かって延在する折り返し部とからなり、
前記頂点Qを通りタイヤ幅方向に延びる直線L1と、前記頂点Qを通りタイヤ径方向に延びる直線L2とを引き、前記直線L1の延長線上に位置するタイヤ幅方向外側のタイヤ外表面の部分のプロファイルを構成する円弧をRとしたとき、前記円弧Rの中心Oは前記タイヤ外表面よりもタイヤ幅方向外側に存在し、前記円弧Rの中心Oと前記直線L1とのタイヤ径方向の距離が前記円弧Rの半径rの20%以内であり、前記円弧Rの中心Oと前記直線L2とのタイヤ幅方向の距離が前記円弧Rの半径rに対して2r±0.4rの範囲内であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ビードワイヤの少なくとも一部が俵積み状に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記頂点Qを挟む2辺のうちタイヤ幅方向内側の辺の延長線をL3とし、前記円弧Rの中心Oを通り前記直線L1に対して成す角度が60°となる補助線a1と前記円弧Rの中心Oを通り前記直線L1に対して成す角度が10°となる補助線a2との間の領域Aにおける前記カーカス層の部分の延長線をL4としたとき、
前記延長線L4は前記延長線L3よりもタイヤ幅方向外側に傾斜し、前記延長線L3と前記延長線L4とが成す角度α1が0°〜20°であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記円弧Rの中心Oを通り前記直線L1に対して成す角度が60°となる補助線a1と前記円弧Rの中心Oを通り前記直線L1に対して成す角度が10°となる補助線a2との間の領域Aにおける前記カーカス層の部分の延長線をL4とし、前記頂点Qを挟む2辺のうちタイヤ幅方向外側の辺の延長線をL5としたとき、
前記頂点Qを挟む2辺が成す内角θ1と、前記延長線L4と前記延長線L5とが成す角度α2とが0.30≦θ1/α2≦1.0の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ビードコアに接する前記カーカス層の折り返し部が、前記円弧Rの中心Oを通り前記直線L1に対して成す角度が60°となる補助線a1と前記円弧Rの中心Oを通り前記直線L1に対して成す角度が10°となる補助線a2との間の領域A内で終端することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記サイド補強層のタイヤ幅方向内側の端部が、前記円弧Rの中心Oを通り前記直線L1に対して成す角度が60°となる補助線a1と前記円弧Rの中心Oを通り前記直線L1に対して成す角度が10°となる補助線a2との間の領域A内に存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部にサイド補強層を備えた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ビード部の構造を改善して、タイヤ重量の軽減しながら耐リム外れ性を良好にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、空気入りタイヤのビード部には、ビードコアとビードフィラーが埋設される。更に、パンクが発生しても一定距離を安全に走行可能にした空気入りタイヤ(所謂ランフラットタイヤ)では、パンク時に車両の負荷荷重を支えるためのサイド補強層(横断面形状が三日月状の硬質ゴムからなる層)がサイドウォール部に設けられる。このようなタイヤでは、サイド補強層のタイヤ径方向内側端部がビード部近傍まで到達する場合があり、ビード部近傍が肉厚になってタイヤ重量が増大し易い傾向がある。また、サイド補強層が存在することでリムフランジが当接する部位の近傍が高剛性になると、ランフラット走行時に、リムフランジが当接する部位を支点としてビード部がタイヤ内側方向に向かって回転する力が生じてしまい、リム外れが誘発され易い傾向がある。
【0003】
一方で、近年、タイヤ重量の軽減が強く求められており、上記のようなランフラットタイヤにおいても軽量化が検討されている。例えば、特許文献1では、断面三日月状のサイド補強層を備えた空気入りタイヤにおいて、ビードコアの形状を工夫することで、ビードフィラーを排除することが提案されている。しかしながら、このようなタイヤでは、タイヤ重量を軽減できたとしても、上述のリムフランジが当接する部位を支点とした回転力に起因するリム外れは考慮されておらず、このようなリム外れを充分に防止することはできなかった。そのため、タイヤ重量の軽減しながら、耐リム外れ性を良好にするための更なる対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002‐301915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、サイドウォール部にサイド補強層を備えた空気入りタイヤにおいて、ビード部の構造を改善して、タイヤ重量の軽減しながら耐リム外れ性を良好にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、前記トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部に設けられたビードコアと、前記一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記サイドウォール部における前記カーカス層のタイヤ幅方向内側に設けられた断面三日月状のサイド補強層とを有する空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアは、タイヤ周方向に巻回された少なくとも1本のビードワイヤからなり、子午線断面において前記ビードワイヤの複数の周回部分がタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも1つの列とタイヤ径方向に重なる複数の層を形成しており、子午線断面における前記ビードワイヤの複数の周回部分の共通接線によって形成された多角形を前記ビードコアの外郭形状としたとき、前記外郭形状はタイヤ径方向外側に単一の頂点Qを有し、この頂点Qを挟む2辺が成す内角θ1が鋭角であり、且つ、前記外郭形状はタイヤ径方向内側に前記頂点Qに対向する位置でタイヤ幅方向に延在する底辺を有し、前記カーカス層は、前記トレッド部から各サイドウォール部を経て各ビード部に至る本体部と、各ビード部において前記ビードコアの周縁に沿って屈曲しながら折り返されて前記ビードコアのタイヤ径方向外側端の位置から前記本体部に接触しながら各サイドウォール部側に向かって延在する折り返し部とからなり、前記頂点Qを通りタイヤ幅方向に延びる直線L1と、前記頂点Qを通りタイヤ径方向に延びる直線L2とを引き、前記直線L1の延長線上に位置するタイヤ幅方向外側のタイヤ外表面の部分のプロファイルを構成する円弧をRとしたとき、前記円弧Rの中心Oは前記タイヤ外表面よりもタイヤ幅方向外側に存在し、前記円弧Rの中心Oと前記直線L1とのタイヤ径方向の距離が前記円弧Rの半径rの20%以内であり、前記円弧Rの中心Oと前記直線L2とのタイヤ幅方向の距離が前記円弧Rの半径rに対して2r±0.4rの範囲内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ビードコアが上述の構造を有するため、外郭形状の頂点側ではビードワイヤの巻き数が減少する一方で、外郭形状の底辺側ではビードワイヤの巻き数が充分に確保されるので、ビードコアとして充分な性能を維持してタイヤの耐久性を確保しながら、ビードワイヤの使用量を低減してタイヤ重量の軽減を図ることができる。また、この形状のビードコアに沿ってカーカスが屈曲しながら折り返されるので、カーカス層の本体部と折り返し部とで囲まれた閉鎖領域内には実質的にビードコアのみが存在するようになるので、従来のビードフィラーを有するタイヤよりもタイヤ重量を軽減することができる。このとき、カーカス層が屈曲しながら折り返されるにあたって、ビードコアが前述の単一の頂点を有する形状であるため、カーカス層が急激に屈曲することを回避することもできる。更に、カーカス層の折り返し部が本体部に接触しているので、折り返し部の終端における応力集中に起因する故障を防止することができる。これに加えて、ビードコアとタイヤ外表面のプロファイルとの関係を上記のように設定しているので、ビードコア近傍におけるタイヤの断面形状が良好になり、特にリムフランジが当接する部位が適度にくびれた形状になるため、当該部位の剛性を適度な範囲に抑制することができ、耐リム外れ性を改善することができる。
【0008】
本発明では、ビードワイヤの少なくとも一部が俵積み状に積層されていることが好ましい。これにより、ビードワイヤが密に配されてビードワイヤの充填率が高まり、ビードコアの構造が最適化されるので、ビード部の剛性や耐圧性能を良好に確保して走行性能を維持しながら、タイヤ重量を軽減し、これら性能をバランスよく発揮するには有利になる。
【0009】
本発明では、頂点Qを挟む2辺のうちタイヤ幅方向内側の辺の延長線をL3とし、円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が60°となる補助線a1と円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が10°となる補助線a2との間の領域Aにおけるカーカス層の部分の延長線をL4としたとき、延長線L4は延長線L3よりもタイヤ幅方向外側に傾斜し、延長線L3と延長線L4とが成す角度α1が0°〜20°であることが好ましい。これにより、ビード部近傍におけるタイヤの断面構造が良好になり、特にリムフランジが当接する部位が適度にくびれた形状になるため、当該部位の剛性を適度な範囲に抑制して耐リム外れ性を改善するには有利になる。
【0010】
本発明では、円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が60°となる補助線a1と円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が10°となる補助線a2との間の領域Aにおけるカーカス層の部分の延長線をL4とし、頂点Qを挟む2辺のうちタイヤ幅方向外側の辺の延長線をL5としたとき、頂点Qを挟む2辺が成す内角θ1と、延長線L4と延長線L5とが成す角度α2とが0.30≦θ1/α2≦1.0の関係を満たすことが好ましい。これにより、ビード部近傍におけるタイヤの断面構造が良好になり、当該部位の剛性を適度な範囲に抑制して耐リム外れ性を改善するには有利になる。
【0011】
本発明では、ビードコアに接するカーカス層の折り返し部が、円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が60°となる補助線a1と円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が10°となる補助線a2との間の領域A内で終端することが好ましい。これにより、タイヤ径方向の各部位における剛性が適切に調節されるので、耐リム外れ性を改善するには有利になる。また、カーカス層の使用量を抑えることができ、タイヤ質量を低減するには有利になる。
【0012】
本発明では、サイド補強層のタイヤ幅方向内側の端部が、円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が60°となる補助線a1と円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が10°となる補助線a2との間の領域A内に存在することが好ましい。これにより、タイヤ径方向の各部位における剛性が適切に調節されるので、耐リム外れ性を改善するには有利になる。また、サイド補強層の使用量を抑えることができ、タイヤ質量を低減するには有利になる。
【0013】
本発明において、各種寸法は、タイヤを正規リムにリム組みして、正規内圧を充填した状態で測定する。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの子午線半断面図である。
図2図1のビード部近傍を拡大して示す説明図である。
図3図2のビードコアを拡大して示す説明図である。
図4】本発明の別の実施形態からなるビードコアの模式図である。
図5】従来例および比較例のビード構造を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。尚、図1において、CLはタイヤ赤道を示す。
【0017】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。以降の説明では、トレッド部1から各サイドウォール部2を経て各ビード部3に至る部分を本体部4A、各ビード部3においてビードコア5の廻りに折り返されて各サイドウォール部2側に向かって延在する部分を4Bという。尚、図示の例では、2層のカーカス層4が設けられている。以降の説明では、必要に応じて、トレッド部1においてタイヤ径方向内側に配置される層を第一層といい、トレッド部1においてタイヤ径方向外側に配置される層を第二層という。ビード部3においては、第二層がビードコア5に接触して、第一層は第二層を介してビードコア5を囲むことになる。
【0018】
ビードコア5は、図2,3に拡大して示すように、タイヤ周方向に巻回された少なくとも1本のビードワイヤ5Aからなり、ビードワイヤ5Aの複数の周回部分がタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも1つの列とタイヤ径方向に重なる複数の層を形成している。本発明では、子午線断面において上記のようにビードワイヤ5Aの複数の周回部分が列と層を形成していれば、単一のビードワイヤ5Aを連続的に巻回した所謂一本巻き構造であっても、複数本のビードワイヤ5Aを引き揃えた状態で巻回した所謂層巻き構造であってもよい。図示の例では、タイヤ径方向最内側から順に3列の周回部分を含む層、4列の周回部分を含む層、3列の周回部分を含む層、2列の周回部分を含む層、1列の周回部分を含む層の計5層が積層された構造を有する。尚、以降の説明では、この構造を「3+4+3+2+1構造」という。同様に、以降の説明では、ビードワイヤ5Aの積層構造を、各層に含まれる列の数をタイヤ径方向最内側の層から順に「+」で繋いだ同様の形式で表現する。更に、図示の例のビードコア5では、ビードコア5Aが俵積み状に積層されている。尚、「俵積み」とは、互いに接している3つの周回部分の中心が略正三角形を形成する積み方であり、六方充填配置と呼称されることもある充填率の高い積層構造である。
【0019】
このとき、各ビードコア5について、子午線断面におけるビードワイヤ5Aの複数の周回部分の共通接線によって形成された多角形をビードコア5の外郭形状(図中の破線)とすると、この外郭形状はタイヤ径方向外側に単一の頂点Qを有すると共に、タイヤ径方向内側にこの頂点Qと対向する位置でタイヤは幅方向に伸びる底辺を有している。特に、図示の例のビードコア5は、上述の3+4+3+2+1構造を有するため五角形の外郭形状を有している。本発明では、頂点Qを挟む2辺が成す内角θ1が必ず鋭角(好ましくは60°±20°)であり、ビードコア5全体としては最大幅となる部位からタイヤ径方向外側に向かって徐々に幅が狭まる先細り形状を有している(以下、この形状を指して「外径側楔形状」という場合がある)。
【0020】
カーカス層4は、上記のようにビードコア5の廻りに折り返されるものであるが、本発明のビードコア5は上述のように特殊な形状(外径側楔形状)を有するため、カーカス層4はビードコア5の周縁に沿って屈曲する。例えば、図示の例では、ビードコア5が上述の設定を満たす結果、断面形状が略五角形になっているため、その周縁に沿って延在するカーカス層4も略五角形状に屈曲している。更に、カーカス層4の折り返し部4Bのビードコア5のタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向外側の部分は、カーカス層4の本体部4Aに接触しながらカーカス層4の本体部4Aに沿って各サイドウォール部2側に向かって延在している。その結果、カーカス層4の本体部4Aと折り返し部4Bとによって、ビードコア5を囲む閉鎖領域が形成されている。
【0021】
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図示の例では2層)のベルト層6が埋設されている。各ベルト層6は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含む。この補強コードは層間で補強コードどうしが互いに交差するように配列されている。これらベルト層6において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層6の外周側にはベルト補強層7が設けられている。特に、図示の例では、ベルト層6の全幅を覆うフルカバー層とベルト補強層7の両端部のみをそれぞれ覆うエッジカバー層の2層が設けられている。ベルト補強層7は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層7において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。
【0022】
サイドウォール部2におけるカーカス層4のタイヤ幅方向内側には断面三日月形状のサイド補強層8が配設されている。このサイド補強層8は、サイドウォール部2を構成する他のゴムよりも硬いゴムで構成される。具体的には、サイド補強層8を構成するゴムは、JIS‐A硬度が例えば70〜80、100%伸長時のモジュラスが例えば9.0MPa〜10.0MPaである。このような物性のサイド補強層8は、その剛性に基づいてパンク時に荷重を支持してランフラット走行を可能にする。
【0023】
本発明のビード部3では、ビードコア5が上述の特殊な形状(外径楔形形状)を有し、カーカス層4が屈曲することに伴って、子午線断面におけるタイヤ外表面のリムフランジが当接する部位がくびれたような形状となる。具体的には、図2に示すように、外郭形状の頂点Qを通りタイヤ幅方向に延びる直線L1と、頂点Qを通りタイヤ径方向に延びる直線L2とを引き、直線L1の延長線上に位置するタイヤ外表面の部分のプロファイルを構成する円弧をRとしたとき、円弧Rの中心Oと直線L1とのタイヤ径方向の距離が円弧Rの半径rの20%以内であり、円弧Rの中心Oと直線L2とのタイヤ幅方向の距離が円弧Rの半径rに対して2r±0.4rの範囲内である。即ち、直線L1からタイヤ径方向内側と外側にそれぞれ円弧Rの半径rの20%離間した2本の直線と、直線L2からタイヤ幅方向外側に円弧Rの半径の160%離間した直線と、直線L2からタイヤ幅方向外側に円弧Rの半径の240%離間した直線とで囲まれる領域(図中の斜線部)の中に、直線L1の延長線上に位置するタイヤ外表面の部分のプロファイルを構成する半径rの円弧Rの中心Oが存在している。
【0024】
本発明では、ビードコア5が上述のように特殊な形状(外径側楔形状)を有するため、外郭形状の頂点Q側ではビードワイヤ5Aの巻き数が減少する一方で、外郭形状の底辺側ではビードワイヤの巻き数が充分に確保されるので、ビードコア5として充分な性能を維持してタイヤの耐久性を確保しながら、ビードワイヤ5Aの使用量を低減してタイヤ重量の軽減を図ることができる。また、この形状のビードコア5に沿ってカーカス層4が屈曲しながら折り返されるので、カーカス層4の本体部4Aと折り返し部4Bとで囲まれた閉鎖領域内には実質的にビードコア5のみが存在するようになるので、従来のビードフィラーを有するタイヤよりもタイヤ重量を軽減することができる。このとき、カーカス層4が屈曲しながら折り返されるにあたって、ビードコア5が前述の単一の頂点Qを有する形状であるため、カーカス層4が急激に屈曲することを回避することもできる。更に、カーカス層4の折り返し部4Bが本体部4Aに接触しているので、折り返し部4Bの終端における応力集中に起因する故障を防止することができる。これに加えて、ビードコア5とタイヤ外表面のプロファイルとの関係を上記のように設定しているので、ビードコア5近傍におけるタイヤの断面形状が良好になり、特にリムフランジが当接する部位が適度にくびれた形状になるため、当該部位の剛性を適度な範囲に抑制することができ、耐リム外れ性を改善することができる。
【0025】
上述の構造において、内角θ1が鈍角であると、カーカス層4をビードコア5の廻りに適切に折り返すためには、ビードコア5のタイヤ径方向外側にビードフィラーを配する必要が生じるため、タイヤ重量を効果的に低減することが難しくなる。円弧Rの中心Oと直線L1,L2との位置関係が上述の範囲から外れると、ビードコア5近傍におけるタイヤの断面形状が不適切になり、耐リム外れ性を改善する効果が得られない。
【0026】
各ビードコア5は、図3に示すように、ビードコア5の最大幅をW0、タイヤ径方向最内側の層の幅をW1、タイヤ径方向最外側の層の幅をW2とすると、これら幅がW1>W2かつW2≦0.5×W0の関係を満たしているとよい。また、ビードコア5を構成する複数の層のうち最大幅W0となる層がビードコア5のタイヤ径方向中心位置よりもタイヤ径方向内側に位置しているとよい。尚、幅W0〜W2はいずれも、図示のように、各層のタイヤ幅方向両外側の周回部分のタイヤ幅方向外側端間のタイヤ幅方向に沿った長さである。幅W0、W1、W2が上述の関係を満たさないとビードコア5の形状が不適当になりビード部3の形状を安定させることができない。特に、W1≦W2やW2>0.5×W0という関係であると、ビードコア5の上端の幅が大きくなるため、リムフランジが当接する部位の近傍の剛性が高まってリムフランジが当接する部位を支点とした回転力に起因するリム外れを抑制することが難しくなり耐リム外れ性が低下する。
【0027】
ビードコア5の具体的な形状は、上述の関係を満たしていれば、特に限定されない。例えば、図4に示す形状を採用することができる。図4の例は、いずれも上述の関係を満たすので、本発明の「外径楔形状」に該当するものである。詳述すると、図4(a)は
俵積みの5+4+3+2+1構造を有し、図4(b)は俵積みの4+5+4+3+2+1構造を有し、図4(c)は俵積みの3+4+4+3+2+1構造を有し、図4(d)はタイヤ径方向最内側から2番目の層とそのタイヤ径方向内側に隣接する層とが俵積みではなく直列積み(タイヤ径方向に隣接する周回部分どうしがタイヤ幅方向に垂直に積層される積み方)になった3+4+4+3+2+1構造を有する。
【0028】
このような様々な形状のビードコア5のなかでも、外郭形状の底辺の両端に位置する角部の内角θ2が好ましくは90°以上、より好ましくは100°以上150°以下であるとよい。即ち、図4の例の中では、図4(b)〜(d)の構造が好ましい。このように内角θ2を設定することで、加硫時にビードワイヤ5Aの配列が乱れることを防止して加硫後のビードコア5の形状を良好にすることができ、優れた剛性を確保しながらタイヤ重量を軽減するには有利になる。内角θ2が90°未満であるとビードワイヤ5Aの巻き数を充分に減少することができずタイヤ重量の軽減効果が低下する。また、内角θ2が90°未満であると外郭形状の底辺の両端に位置するビードワイヤ5Aが加硫時のゴム流れの影響を受け易くなり、加硫後のビードコア5の形状を良好に維持することが難しくなる。
【0029】
図4に示したいずれの構造も、少なくとも一部が俵積み状に積層されているため、全体が直列積みで積層された構造のビードワイヤよりも、ビードワイヤ5Aを密に配してビードワイヤ5Aの充填率を高めることができる。その結果、ビード部3の剛性や耐圧性能を良好に確保して走行性能を維持しながら、タイヤ重量を軽減し、これら性能をバランスよく発揮することができる。ビードワイヤ5Aの充填率に着目すると、図4(a)〜(c)のようにすべてのビードワイヤ5Aが俵積み状に積層されることが好ましい。
【0030】
また、ビードコア5の形状に関して、ビードコア5全体の形状の安定性を高めるには、ビードコア5全体の形状をビードコア5のタイヤ幅方向中心に対して線対称にすることが好ましい。この観点からは、図4(a),(b),(d)のような形状が好ましい。
【0031】
これら様々なビードコア5の形状は、上述の様々な観点に基づいて、空気入りタイヤ全体の構造や重視する特性等を考慮して適宜選択することができる。
【0032】
ビードワイヤ5A自体の構造については特に限定されないが、タイヤ重量の軽減と耐リム外れ性の向上を両立すること鑑みると、平均直径を好ましくは0.8mm〜1.8mm、より好ましくは1.0mm〜1.6mm、更に好ましくは1.1mm〜1.5mmにするとよい。また、ビードワイヤ5Aの総断面積(各ビードコア5の子午線断面に含まれるビードワイヤ5Aの周回部分の断面積の総和)を好ましくは10mm2 〜50mm2 、より好ましくは15mm2 〜48mm2 、更に好ましくは20mm2 〜45mm2 にするとよい。ビードワイヤ5Aの平均直径が0.8mmよりも小さいと耐リム外れ性を向上する効果が限定的になり、ビードワイヤ5Aの平均直径が1.8mmよりも大きいとタイヤ重量を軽減する効果が限定的になる。ビードワイヤ5Aの総断面積が10mm2 よりも小さいと耐リム外れ性を向上する効果が限定的になり、ビードワイヤ5Aの総断面積が50mm2 よりも大きいとタイヤ重量を軽減する効果が限定的になる。
【0033】
上述のように、本発明では、カーカス層4の本体部4Aと折り返し部4Bとによって形成された閉鎖領域には、実質的にビードコア5のみが存在しており、従来の空気入りタイヤで用いられるようなビードフィラーまたはそれに類するタイヤ構成部材(ビードコア5のタイヤ径方向外側に配置されてカーカス層4の本体部4Aと折り返し部4Bとによって包み込まれてビード部3からサイドウォール部2にかけての剛性を高める部材)は配置されない。即ち、ビードワイヤ5Aを被覆するインシュレーションゴムや、ビードコア5とカーカス層4との間に形成される僅かな隙間を埋めるゴムは存在しても、従来の空気入りタイヤのような大きな体積を有するビードフィラーは用いられない。このような実質的なビードフィラーレス構造によって、タイヤ重量を効果的に軽減することができる。このとき、子午線断面における閉鎖領域の面積Aに対する閉鎖領域内に存在するゴムの総面積aの比率(a/A×100%)を閉鎖領域のゴム占有率とすると、このゴム占有率が0.1%〜15%であることが好ましい。閉鎖領域のゴム占有率が15%よりも大きいと、実質的に従来の空気入りタイヤのビードフィラーが存在する場合と同等になり、タイヤ重量の軽減効果を更に高めることは難しくなる。尚、タイヤ構造上、ビードワイヤ5Aを被覆するインシュレーションゴム等は必ず存在するため、基本的に閉鎖領域のゴム占有率が0.1%未満になることはない。
【0034】
本発明では、上述のようにビード部3のタイヤ外表面においてリムフランジが当接する部位をくびれさせているが、それにあたって、更に、以下のようにタイヤ構成部材の配置などを調整することが好ましい。
【0035】
例えば、図2に示すように、頂点Qを挟む2辺のうちタイヤ幅方向内側の辺の延長線をL3とし、円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が60°となる補助線a1と円弧Rの中心Oを通り直線L1に対して成す角度が10°となる補助線a2との間の領域Aにおけるカーカス層4の部分の延長線をL4としたとき、延長線L4は延長線L3よりもタイヤ幅方向外側に傾斜し、延長線L3と延長線L4とが成す角度α1が0°〜20°であることが好ましい。言い換えると、カーカス層4をビード部間に装架するにあたって、カーカス層4が領域Aにおいて直線L3よりもタイヤ幅方向外側に0°〜20°傾斜するように、カーカス層4を湾曲させることが好ましい。これにより、ビード部近傍におけるタイヤの断面構造が良好になり、特にリムフランジが当接する部位が更に適切にくびれた形状になるため、当該部位の剛性を適度な範囲に抑制して耐リム外れ性を改善するには有利になる。このとき、角度α1が0°よりも小さい(即ち、延長線L4が延長線L3よりもタイヤ幅方向内側に傾斜している)場合や、角度α1が20°よりも大きい場合には、タイヤ形状が不適切になり、耐リム外れ性を改善する効果が得られない。
【0036】
更に、図2に示すように、頂点Qを挟む2辺のうちタイヤ幅方向外側の辺の延長線をL5としたとき、頂点Qを挟む2辺が成す内角θ1と、前述の延長線L4と延長線L5とが成す角度α2とが0.30≦θ1/α2≦1.0の関係を満たすことが好ましい。これにより、ビード部近傍におけるタイヤの断面構造が更に良好になり、当該部位の剛性を適度な範囲に抑制して耐リム外れ性を改善するには有利になる。このとき、角度α2が上述の範囲から外れると、ビードコア5の形状と領域Aにおけるカーカス層4の傾斜とのバランスが不適当になり、耐リム外れ性を改善する効果が充分に得られない。
【0037】
これに加えて、ビードコア5に接するカーカス層4(図示の例では第二層)の折り返し部4Bが上述の領域A内で終端することが好ましい。尚、ビードコア5に直接触れないカーカス層4(図示の例では第一層)の折り返し部4Bの端部については、配置は特に限定されない。このようにカーカス層4の端部を配置することで、タイヤ径方向の各部位における剛性が適切に調節されるので、耐リム外れ性を改善するには有利になる。また、カーカス層4の使用量を抑えることができ、タイヤ質量を低減するには有利になる。
【0038】
同様に、サイド補強8層のタイヤ幅方向内側の端部についても上述の領域A内に配置することが好ましい。このような配置にすることで、タイヤ径方向の各部位における剛性が適切に調節されるので、耐リム外れ性を改善するには有利になる。また、サイド補強層8の使用量を抑えることができ、タイヤ質量を低減するには有利になる。
【0039】
上述の各部の構造は適宜組み合わせて採用することができる。いずれにしても、上述の構造を有する空気入りタイヤでは、ビード部3の構造が改善されるので、タイヤの耐久性を維持しながらタイヤ重量を軽減し、且つ、耐リム外れ性を改善することができる。
【実施例】
【0040】
タイヤサイズが205/55R16であり、図1に示す基本構造を有し、ビードコアの構造、ビードフィラーの有無、ビードコアの外郭形状の頂点Qを通りタイヤ幅方向に延びる直線L1と直線L1の延長線上に位置するタイヤ外表面の部分のプロファイルを構成する円弧Rの中心Oとのタイヤ径方向の距離、ビードコアの外郭形状の頂点Qを通りタイヤ径方向に延びる直線L2と中心Oとのタイヤ幅方向の距離、頂点Qを挟む2辺のうちタイヤ幅方向内側の辺の延長線L3と領域Aにおけるカーカス層の部分の延長線L4とが成す角度α1、頂点Qを挟む2辺が成す内角θ1と領域Aにおけるカーカス層の部分の延長線L4と頂点Qを挟む2辺のうちタイヤ幅方向外側の辺の延長線L5とが成す角度α2との比θ1/α2、カーカス層の端部位置、サイド補強層の端部位置、カーカス枚数を表1〜4のように設定して、従来例1、比較例1〜6、実施例1〜26の33種類の空気入りタイヤを作製した。
【0041】
表1〜4の「ビードコア構造」の欄については、対応する図面の番号を示した。尚、従来例1は、従来の一般的なビードコアを用いた例であり、ビードコアは図5(a)に示すように直列積みに積層された5+5+5構造を有する。比較例1のビードコアは図5(b)に示すように直列積みに積層された5+5+4+3+2+1構造を有する。比較例2のビードコアは図5(c)に示すように俵積み状に積層された8+7+6+4+2構造を有する。
【0042】
表1〜4の「直線L1と中心Oとの距離」および「直線L2と中心Oとの距離」については、円弧Rの半径rに対する割合(%)で示した。また、「直線L1と中心Oとの距離」についてはタイヤ径方向内側を負の数値、タイヤ径方向外側を正の数値で示した。「α1」について、延長線L4が延長線L3よりもタイヤ幅方向内側に傾斜する場合は角度を負の値で示した。「カーカス層の端部位置」および「サイド補強層の端部位置」については、各端部が領域A内に存在する場合を「A内」、各端部が領域Aよりもタイヤ径方向内側に存在する場合を「A外(内側)」、各端部が領域Aよりもタイヤ径方向外側に存在する場合を「A外(外側)」と示した。
【0043】
尚、従来例1および比較例2は、ビードコアの形状が大幅に異なり、頂点Qを有さないが、参考のために、これら例については、ビードコアの外郭形状の頂面のタイヤ幅方向中心を頂点と見做して直線L1、L2を引き、「直線L1と中心Oとの距離」および「直線L2と中心Oとの距離」に相当する距離を求め、表中に記載した。また、延長線L3は「頂面」を挟む2辺のうちタイヤ幅方向内側の辺の延長線、延長線L4は「頂面」を挟む2辺のうちタイヤ幅方向外側の辺の延長線で代用して、「α1」や「θ1/α2」に相当する値を示した。
【0044】
これら空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、タイヤ質量、耐リム外れ性を評価し、その結果を表1〜4に併せて示した。
【0045】
タイヤ質量
各試験タイヤについて5本の質量を測定し、その平均値を求めた。評価結果は、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が小さいほどタイヤ質量が小さいことを意味する。
【0046】
耐リム外れ性
各試験タイヤをリムサイズ16×7.0Jのホイールに組み付けて、排気量2.0Lの試験車両に装着し、時速35.5km/hで平坦なアスファルト路面上を直進走行で進入させた後、旋回半径6m、旋回角180度として右方向に急旋回させて停車試験(Jターン試験)を繰り返し実施した。このとき、空気圧を150kPaから10kPaずつ徐々に減少させて、エア漏れが生じた空気圧を測定し、耐リム外れ性の評価とした。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐リム外れ性が良好であることを意味する。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
表1〜4から明らかなように、実施例1〜26はいずれも、従来例1に対して、タイヤ質量を低減しながら、耐リム外れ性を良好にし、これら性能をバランスよく両立した。一方、比較例1は、ビードコアの形状が不適切であるため、耐リム外れ性が悪化した。比較例2は、ビードコアの形状が不適切であるため、タイヤ質量が悪化した。比較例3〜6は直線L1,L2と中心Oとの距離が本発明の範囲から外れるため、タイヤ外表面のプロファイルが不適切になり、耐リム外れ性を向上することができなかった。
【符号の説明】
【0052】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ベルト層
7 ベルト補強層
8 サイド補強層
CL タイヤ赤道
図1
図2
図3
図4
図5