(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可動部材は、前記冷却液の流れを受けて移動することで、前記冷却液の流量が所定流量よりも多い場合の前記所定部分の前記通路面積を、前記冷却液の流量が前記所定流量よりも少ない場合の前記所定部分の前記通路面積よりも大きくする、請求項1に記載の添加剤噴射弁の冷却装置。
前記可動部材は、前記冷却液の流れを受けて移動することで、前記冷却液の流量が多いほど、前記所定部分の前記通路面積を大きくする、請求項1又は2に記載の添加剤噴射弁の冷却装置。
前記可動部材は、前記所定部分の前記通路面積を大きくする方向へ前記可動部材を移動させる力を、前記冷却液の流れを受けることで発生させる第1傾斜面を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の添加剤噴射弁の冷却装置。
前記可動部材は、前記冷却液の流れを受けて移動することで、前記冷却液の流れ方向が第1方向である場合の前記所定部分の前記通路面積を、前記冷却液の流れ方向が前記第1方向と反対の第2方向である場合の前記所定部分の前記通路面積よりも大きくする、請求項1に記載の添加剤噴射弁の冷却装置。
前記可動部材は、前記冷却液の流れを受けて移動することで、前記冷却液の流れ方向が前記第2方向である場合に、前記冷却液の流量が多いほど、前記所定部分の前記通路面積を小さくする、請求項5に記載の添加剤噴射弁の冷却装置。
前記可動部材は、前記所定部分の前記通路面積を小さくする方向へ前記可動部材を移動させる力を、前記冷却液の流れを受けることで発生させる第2傾斜面を有する、請求項1、5、6のいずれか1項に記載の添加剤噴射弁の冷却装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷却水の循環回路に、特許文献1に記載の冷却装置と他の冷却装置とが並列に接続される場合がある。この場合、特許文献1に記載の冷却装置では、冷却水の流れに応じて、他の冷却装置との冷却水の分配比率を変更することができない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、冷却水の循環回路に他の冷却装置と並列に接続される添加剤噴射弁の冷却装置において、冷却水の流れに応じて、他の冷却装置との冷却水の分配比率を変更可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
冷却液の循環回路(60)に他の冷却装置(50)と並列に接続される、添加剤噴射弁(10)の冷却装置(20)であって、
前記冷却液が流通する冷却液通路と、
前記冷却液の流れを受けて移動することで、前記冷却液通路の所定部分の通路面積を変更する可動部材(33)と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、添加剤噴射弁の冷却装置は、冷却液の循環回路に他の冷却装置と並列に接続される。そして、添加剤噴射弁の冷却装置は、冷却液が流通する冷却液通路を備えている。このため、添加剤噴射弁の冷却装置の冷却液通路を流れる冷却液の流量が変化することにより、他の冷却装置との冷却液の分配比率が変化する。
【0008】
この点、可動部材が冷却液の流れを受けて移動することで、冷却液通路の所定部分の通路面積が変更される。したがって、冷却液の流れに応じて、冷却液通路を流れる冷却液の流量を変更することができ、ひいては他の冷却装置との冷却液の分配比率を変更することができる。さらに、可動部材は冷却液の流れを受けて移動するため、冷却液の流れを利用して、冷却液通路の所定部分の通路面積を変更することができる。
【0009】
第2の手段では、前記可動部材は、前記冷却液の流れを受けて移動することで、前記冷却液の流量が所定流量よりも多い場合の前記所定部分の前記通路面積を、前記冷却液の流量が前記所定流量よりも少ない場合の前記所定部分の前記通路面積よりも大きくする。
【0010】
冷却液通路の通路面積が固定値である(変化しない)場合、冷却液の流量が多くなるほど、冷却液の圧力損失が大きくなる。一方、冷却液通路の通路面積が大き過ぎると、冷却液の圧力損失は小さくなるものの、冷却液の流速が低くなり、冷却効率が低下することとなる。
【0011】
この点、上記構成によれば、可動部材が冷却液の流れを受けて移動することで、冷却液の流量が所定流量よりも多い場合の所定部分の通路面積が、冷却液の流量が所定流量よりも少ない場合の所定部分の通路面積よりも大きくされる。したがって、冷却液の圧力損失を抑制するとともに、冷却効率が低下することを抑制することができる。そして、この場合も、冷却液の流れ(詳しくは流量)に応じて、添加剤噴射弁の冷却装置と他の冷却装置との冷却液の分配比率を変更することができる。
【0012】
第3の手段では、前記可動部材は、前記冷却液の流れを受けて移動することで、前記冷却液の流量が多いほど、前記所定部分の前記通路面積を大きくする。
【0013】
上記構成によれば、可動部材が冷却液の流れを受けて移動することで、冷却液の流量が多いほど、所定部分の通路面積が大きくされる。このため、冷却液の流量の増加に合わせて、所定部分の通路面積を徐々に大きくすることができる。したがって、冷却液の圧力損失を抑制するとともに、冷却効率を向上させることができる。
【0014】
第4の手段では、前記可動部材は、前記所定部分の前記通路面積を大きくする方向へ前記可動部材を移動させる力を、前記冷却液の流れを受けることで発生させる第1傾斜面を有する。
【0015】
上記構成によれば、冷却液の流れを可動部材の第1傾斜面が受けることで、所定部分の通路面積を大きくする方向へ可動部材を移動させる力が発生する。そして、第1傾斜面に当たる冷却液の流量が多いほど、可動部材を移動させる力が大きくなる。このため、冷却液の流量が所定流量よりも多くなり、可動部材を移動させる力が大きくなった場合に、所定部分の通路面積を拡大することができる。
【0016】
第5の手段では、前記可動部材は、前記冷却液の流れを受けて移動することで、前記冷却液の流れ方向が第1方向である場合の前記所定部分の前記通路面積を、前記冷却液の流れ方向が前記第1方向と反対の第2方向である場合の前記所定部分の前記通路面積よりも大きくする。
【0017】
上記構成によれば、可動部材が冷却液の流れを受けて移動することで、冷却液の流れ方向が第1方向である場合の所定部分の通路面積が、冷却液の流れ方向が第1方向と反対の第2方向である場合の所定部分の通路面積よりも大きくされる。したがって、冷却液通路に冷却液を流す方向を、第1方向と第2方向とで切り替えることにより、他の冷却装置との冷却液の分配比率を変更することができる。すなわち、この場合も、冷却液の流れ(詳しくは流れ方向)に応じて、添加剤噴射弁の冷却装置と他の冷却装置との冷却液の分配比率を変更することができる。
【0018】
第6の手段では、前記可動部材は、前記冷却液の流れを受けて移動することで、前記冷却液の流れ方向が前記第2方向である場合に、前記冷却液の流量が多いほど、前記所定部分の前記通路面積を小さくする。
【0019】
上記構成によれば、可動部材が冷却液の流れを受けて移動することで、冷却液の流れ方向が第2方向である場合に、冷却液の流量が多いほど、所定部分の通路面積が小さくされる。このため、冷却液の流量の増加に合わせて、所定部分の通路面積を徐々に小さくすることができる。したがって、冷却液の流量が多いほど、他の冷却装置への冷却水の分配比率を増加させることができる。
【0020】
第7の手段では、前記可動部材は、前記所定部分の前記通路面積を小さくする方向へ前記可動部材を移動させる力を、前記冷却液の流れを受けることで発生させる第2傾斜面を有する。
【0021】
上記構成によれば、冷却液の流れを可動部材の第2傾斜面が受けることで、所定部分の通路面積を小さくする方向へ可動部材を移動させる力が発生する。そして、第2傾斜面に当たる冷却液の流量が多いほど、可動部材を移動させる力が大きくなる。このため、所定部分の通路面積が小さい状態を維持し易くなる、若しくは冷却液の流量が多いほど、所定部分の通路面積を縮小することができる。
【0022】
第8の手段では、前記所定部分の前記通路面積を小さくする方向へ前記可動部材を付勢する付勢部材(37)を備える。
【0023】
上記構成によれば、所定部分の通路面積を小さくする方向へ付勢部材により可動部材が付勢されるため、所定部分の通路面積を小さくした状態を維持し易くなる。
【0024】
第9の手段では、前記所定部分は、前記冷却液通路において前記添加剤噴射弁の先端部(10a)の外周部分である。
【0025】
上記構成によれば、冷却液通路において、通路面積が変更される所定部分は、噴射弁の先端部の外周部分である。このため、所定部分の通路面積を小さくした場合に、噴射弁の先端部へ流れる冷却液の流速を高くすることができる。したがって、温度が上昇し易い噴射弁の先端部を、効率的に冷却することができる。
【0026】
第10の手段は、冷却システムであって、第1〜第9のいずれか1つの手段の添加剤噴射弁の冷却装置と、前記冷却液の前記循環回路に、前記添加剤噴射弁の前記冷却装置と並列に接続された他の冷却装置と、を備える。こうした構成によれば、複数の冷却装置を備える冷却システムにおいて、上記各手段の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、車両に搭載される冷却システムに具現化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両は、冷却水の循環回路60、ポンプ71、冷却システム70、ラジエータ72等を搭載している。ポンプ71とラジエータ72との間に、冷却システム70が接続されている。冷却システム70は、冷却装置20、切替器52、WCAC(Water cooled Charge Air Cooler)50等を備えている。
【0029】
ポンプ71は、循環回路60に接続されており、内燃機関(図示略)の駆動力に基づいて、循環回路60に冷却水(冷却液)を循環させる。ポンプ71の冷却水の吐出量は、内燃機関の回転速度に比例する。なお、ポンプ71は、電動式のポンプであってもよく、吐出量を任意に変更してもよい。
【0030】
循環回路60は、ポンプ71の下流側で分岐路61と分岐路62とに分岐している。分岐路61には、切替器52が接続されている。切替器52には、噴射弁10の冷却装置20の第1管22及び第2管23が接続されている。切替器52は、冷却装置20へ流通させる冷却水の流れ方向を正方向と逆方向とに切り替える。冷却水を正方向(第1方向)に流す場合は、第1管22へ冷却水が流入して、第2管23から冷却水が流出する。冷却水を逆方向(第2方向)に流す場合は、第2管23へ冷却水が流入して、第1管22から冷却水が流出する。
【0031】
分岐路62には、WCAC50が接続されている。すなわち、冷却装置20とWCAC50とは、循環回路60に並列に接続されている。
WCAC50は、水冷式のインタークーラである。
【0032】
分岐路61における切替器52の下流側と、分岐路62におけるWCAC50の下流側とが統合されて、ラジエータ72に接続されている。ラジエータ72は、熱交換により冷却水を冷却する。ラジエータ72で冷却された冷却水は、循環回路60を循環して再びポンプ71へ流通する。
【0033】
図2,3に示すように、冷却装置20(添加剤噴射弁の冷却装置)は、噴射弁10に取り付けられている。噴射弁10は、円柱状に形成されている。噴射弁10は、尿素を先端部10aから噴射する。
【0034】
冷却装置20は、本体21、第1管22、第2管23、固定部材31、可動部材33、第1ばね35、第2ばね37、取付部材24等を備えている。冷却装置20は、取付部材24により、内燃機関の排気管に取り付けられる。
【0035】
本体21は、噴射弁10の径よりも大きい径の円筒状に形成されている。本体21の第1端部21aは、噴射弁10の先端部10aの外周面に接合されている。本体21の第2端部21bは、噴射弁10の拡径部10b(基端部)の外周面に接合されている。本体21には、第1ポート21c及び第2ポート21dが形成されている。第1ポート21cには、上記第1管22が接続されている。第2ポート21dには、上記第2管23が接続されている。第2ポート21dは、第1ポート21cよりも上方に配置される。すなわち、第2ポート21dは、第1ポート21cよりも上方に設けられる。
【0036】
本体21の内部には、円筒状の固定部材31が収納されている。固定部材31は、第1ポート21cから第2ポート21dまでの範囲内に設けられている。固定部材31の第1ポート21c側の一端部31aが、本体21に固定されている。一端部31aと本体21との間はシールされている。固定部材31の内部に、噴射弁10の一部、詳しくは先端部10aを含まない一部が挿入されている。固定部材31の内周面と噴射弁10の外周面との間には、所定の隙間が形成されており、この所定の隙間が冷却水の通路になっている。
【0037】
本体21の内部には、円筒状の可動部材33が収納されている。可動部材33は、噴射弁10の先端部10aから固定部材31の一端部31aまでの範囲内に設けられている。可動部材33の内部に、噴射弁10の一部、詳しくは先端部10aを含む一部が挿入されている。可動部材33は、先端側(第1端部21a側)から順に、第1円筒部33a、円錐部33b、第2円筒部33cを備えている。
【0038】
第1円筒部33a及び第2円筒部33cは、円筒形に形成されている。第1円筒部33aの径は、第2円筒部33cの径よりも小さくなっている。円錐部33bは、円錐の筒状に形成されている。円錐部33bは、第1円筒部33aと第2円筒部33cとを接続している。円錐部33bの径は、第1円筒部33a側から第2円筒部33c側へ向かって拡大している。第1円筒部33a、円錐部33b、及び第2円筒部33cの各内周面と噴射弁10の外周面との間には、所定の隙間が形成されており、この所定の隙間が冷却水の通路になっている。また、第1円筒部33a、円錐部33b、及び第2円筒部33cの各外周面と本体21の内周面との間には、所定の隙間が形成されており、この所定の隙間が冷却水の通路になっている。
【0039】
第1円筒部33a、円錐部33b、及び第2円筒部33cの各外周面と本体21の内周面との間の所定の隙間により、第1通路が構成されている。第1通路は、第1ポート21cに接続され、噴射弁10の先端部10aの外周まで延びている。第1円筒部33a、円錐部33b、第2円筒部33c、及び固定部材31の各内周面と噴射弁10の外周面との間の所定の隙間により、第2通路が構成されている。第2通路は、上記第1通路に接続され、先端部10aの外周から噴射弁10に沿って延びて、第2ポート21dに接続されている。そして、第1通路及び第2通路により、冷却液通路が構成されている。
【0040】
第1円筒部33aと円錐部33bとの境界部には、内周側に環状に突出する突出部33dが形成されている。噴射弁10の外周面と突出部33dの内周面との間には、冷却水の流れの上流側及び下流側の両隣よりも小さい隙間が形成されている。すなわち、突出部33d(絞り部)は、第2通路において、所定位置の通路面積を、所定位置の両隣の位置の通路面積よりも減少させている。
【0041】
第1円筒部33aの内部には、第1ばね35が収納されている。第1ばね35(規制部)は、噴射弁10の外周面と第1円筒部33aの内周面との間に配置されている。第1ばね35は、本体21の第1端部21aと突出部33dとの間に配置されている。噴射弁10の外周面と第1ばね35との間には隙間が形成されており、第1円筒部33aの内周面と第1ばね35との間には隙間が形成されている。第1ばね35は、ばね係数k1のコイルばねにより形成されている。
【0042】
噴射弁10の中間には、先端部10aの径よりも大きい径の中径部10cが形成されている。中径部10cと突出部33dとの間に、第2ばね37が配置されている。第2ばね37(付勢部材)は、ばね係数k2のコイルばねにより形成されている。第2ばね37の一端は中径部10cに当接しており、第2ばね37の他端は突出部33dに当接している。そして、第2ばね37は、噴射弁10の先端部10a及び本体21の第1端部21aの方向へ可動部材33を付勢している。
【0043】
これにより、第1ばね35の一端は突出部33dに当接しており、第1ばね35の他端は本体21の第1端部21aに当接している。第1ばね35のばね係数k1は、第2ばね37のばね係数k2よりも十分大きくなっている(k1>>k2)。このため、第1ばね35は突出部33dにより押されてもほとんど縮まず、第1端部21aの方向への可動部材33の移動が第1ばね35により規制される。
【0044】
第2円筒部33cにおいて円錐部33b寄りの部分には、外周側に環状に張り出した張出部33cbが形成されている。第2円筒部33cは、固定部材31の一端部31aに摺動可能に嵌合している。第2円筒部33cの外周面と固定部材31の一端部31aの内周面との間からは、冷却水が漏れない、若しくは冷却水の漏れ量が少なくなっている。一端部31aの端面と張出部33cbとが対向している。
【0045】
第1ポート21cは、可動部材33の円錐部33bに面している。このため、第1ポート21cから流入した冷却水は、円錐部33bの外周面(第1傾斜面)に当たる。円錐部33bの外周面に冷却水の流れが当たると、可動部材33を固定部材31側(本体21の第1端部21aと反対側)へ移動させる力が作用する。円錐部33bの外周面に当たる冷却水の流量が多くなるほど、可動部材33を固定部材31側へ移動させる力が大きくなる。
【0046】
図3は、冷却水の流量が所定流量よりも少ない場合の可動部材33の状態を表している。この場合、第2ばね37により本体21の第1端部21a側へ可動部材33が付勢されて、突出部33dが第1ばね35に当接している。これにより、本体21の第1端部21a側への可動部材33の移動が、第1ばね35により規制されている。第1円筒部33aの先端部33aaと本体21の第1端部21aとの間には、第1隙間g1が形成されている。固定部材31の一端部31aの端面と張出部33cbとは離間している。
【0047】
図4は、冷却水の流量が上記所定流量よりも多い場合の可動部材33の状態を表している。上述したように、円錐部33bの外周面に冷却水の流れが当たると、可動部材33を固定部材31側(本体21の第1端部21aと反対側)へ移動させる力が作用する。このため、可動部材33は、冷却水の流量が所定流量よりも多い場合に、第2ばね37の付勢力に抗して、本体21の第1端部21aと反対側(第2ポート21d側)へ移動させられている。
【0048】
この状態において、固定部材31の一端部31aの端面と張出部33cbとが当接している。これにより、可動部材33の固定部材31側への移動が、固定部材31の一端部31aにより規制されている。
【0049】
第1円筒部33aの先端部33aaと本体21の第1端部21aとの間には、第2隙間g2が形成されている。第2隙間g2は、上記第1隙間g1よりも大きくなっている(g2>g1)。すなわち、可動部材33の円錐部33bの外周面は、噴射弁10の先端部10aと可動部材33の先端部33aaとの間部分(以下、「可変部分」という)の通路面積を大きくする方向へ可動部材33を移動させる力を、第1ポート21cから流入する冷却水の流れを受けることで発生させる。可変部分(所定部分)は、冷却水通路(第1通路及び第2通路)において噴射弁10の先端部10aの外周部分である。
【0050】
そして、可動部材33は、冷却水の流れを受けて移動することで、冷却水の流量が所定流量よりも多い場合の上記可変部分の通路面積(第2隙間g2で規定される)を、冷却水の流量が所定流量よりも少ない場合の可変部分の通路面積(第1隙間g1で規定される)よりも大きくする。なお、第2ばね37は、可変部分の通路面積を小さくする方向へ可動部材33を付勢している。
【0051】
さらに、上述したように、噴射弁10の外周面と突出部33dの内周面との間には、冷却水の流れの上流側及び下流側の両隣よりも小さい隙間が形成されている。このため、突出部33dは、第2通路に形成された絞り部として機能する。そして、突出部33dの上流における冷却水の圧力が、突出部33dの下流における冷却水の圧力よりも高くなり、可動部材33を固定部材31側へ移動させる力が発生する。すなわち、突出部33dは、可変部分の通路面積を大きくする方向へ可動部材33を移動させる力を、冷却水の流れを受けることで発生させる。
【0052】
図5は、冷却水が正方向に流れる場合において、冷却水流量Qと可変部分面積Aと圧力損失ΔPとの関係を示すグラフである。
【0053】
冷却水流量が流量Q1よりも少ない場合は、
図3に示すように可変部分の隙間は第1隙間g1に維持されており、可変部分面積は面積A1に維持されている。冷却水の流れにより可動部材33を固定部材31側へ移動させる力が、第2ばね37の付勢力と可動部材33に作用する摩擦力とを足した力よりも大きくなるまで、可動部材33は
図3に示す位置に維持される。
【0054】
ここで、可変部分の通路面積が固定値である(変化しない)場合、冷却水の流量が多くなるほど、冷却水の圧力損失ΔPが大きくなる。一方、可変部分の通路面積が大き過ぎると、冷却水の圧力損失は小さくなるものの、冷却水の流速が低くなり、噴射弁10の先端部10aの冷却効率が低下することとなる。
【0055】
この点、冷却水流量が流量Q1よりも多い場合は、
図4に示すように可変部分の隙間は第2隙間g2に拡大され、可変部分面積は面積A2に増加させられる。すなわち、冷却水流量が流量Q1よりも多くなると、冷却水の流れにより可動部材33を固定部材31側へ移動させる力が、第2ばね37の付勢力と可動部材33に作用する摩擦力とを足した力よりも大きくなる。
【0056】
そして、第2ばね37のばね係数k2は比較的小さく設定されているため、可動部材33が移動し始めると、可動部材33の張出部33cbが固定部材31の一端部31aに当接するまで可動部材33が移動する。これにより、可変部分面積が面積A2に増加させられ、圧力損失ΔPが減少する。このとき、第1通路及び第2通路に流れる冷却水の流量が増加する。その後、冷却水流量が大きくなるほど、圧力損失ΔPが大きくなる。
【0057】
また、冷却装置20は、冷却水の循環回路60にWCAC50と並列に接続されている。このため、冷却装置20へ流れる冷却水の流量が増加することにより、WCAC50へ流れる冷却水の流量が減少する。すなわち、冷却装置20に対する冷却水の分配比率が上昇し、WCAC50への冷却水の分配比率が低下する。
【0058】
図6は、冷却水が逆方向に流れる場合において、冷却水流量Qと可変部分面積Aと圧力損失ΔPとの関係を示すグラフである。上述した切替器52により、冷却装置20へ流通させる冷却水の流れ方向が逆方向に切り替えられる。
【0059】
冷却水が逆方向に流れる場合は、冷却水流量Qにかかわらず、可変部分面積が面積A1に維持されている。この場合は、
図3に矢印で示す正方向とは逆方向に冷却水が流れる。このため、冷却水の流れは、円錐部33bの内周面(第2傾斜面)に当たる。円錐部33bの内周面に冷却水の流れが当たると、可動部材33を本体21の第1端部21a側へ移動させる力が作用する。すなわち、円錐部33bの内周面は、可変部分の通路面積を小さくする方向へ可動部材33を移動させる力を、冷却水の流れを受けることで発生させる。そして、冷却水の流量が多くなるほど、冷却水の圧力損失ΔPが大きくなる。
【0060】
図5と
図6とを比較すると、可動部材33は、冷却水の流れを受けて移動することで、冷却水の流れ方向が正方向である場合の可変部分面積A2を、冷却水の流れ方向が逆方向である場合の可変部分面積A1よりも大きくする。冷却装置20へ正方向に冷却水が流れる場合の冷却水の流量が、冷却装置20へ逆方向に冷却水が流れる場合の冷却水の流量よりも多くなり、WCAC50へ流れる冷却水の流量が減少する。換言すれば、冷却装置20へ逆方向に冷却水が流れる場合の冷却水の流量が、冷却装置20へ正方向に冷却水が流れる場合の冷却水の流量よりも少なくなり、WCAC50へ流れる冷却水の流量が増加する。すなわち、冷却装置20に逆方向に冷却水を流すことにより、冷却装置20に対する冷却水の分配比率が低下し、WCAC50への冷却水の分配比率が上昇する。
【0061】
図7は、冷却水が正方向に流れる場合において、冷却装置20とWCAC50との冷却水の分配比率を示す模式図である。冷却水流量が流量Q1よりも多い場合において、冷却装置20への冷却水の分配比率が、WCAC50への冷却水の分配比率よりも高くなる。すなわち、冷却装置20への冷却水の流量が、WCAC50への冷却水の流量よりも多くなる。
【0062】
図8は、冷却水が逆方向に流れる場合において、冷却装置20とWCAC50との冷却水の分配比率を示す模式図である。冷却水流量にかかわらず、冷却装置20への冷却水の分配比率が、WCAC50への冷却水の分配比率よりも低くなる。すなわち、冷却装置20への冷却水の流量が、WCAC50への冷却水の流量よりも少なくなる。
【0063】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0064】
・可動部材33が冷却水の流れを受けて移動することで、冷却水通路の可変部分の通路面積が変更される。したがって、冷却水の流れに応じて、冷却水通路を流れる冷却水の流量を変更することができ、ひいてはWCAC50との冷却水の分配比率を変更することができる。さらに、可動部材33は冷却水の流れを受けて移動するため、冷却水の流れを利用して、冷却水通路の可変部分の通路面積を変更することができる。
【0065】
・可動部材33が冷却水の流れを受けて移動することで、冷却水の流量が所定流量よりも多い場合の可変部分の通路面積が、冷却水の流量が所定流量よりも少ない場合の可変部分の通路面積よりも大きくされる。したがって、冷却水の圧力損失を抑制するとともに、冷却効率が低下することを抑制することができる。そして、この場合も、冷却水の流れ(詳しくは流量)に応じて、噴射弁10の冷却装置とWCAC50との冷却水の分配比率を変更することができる。
【0066】
・冷却水の流れを可動部材33の円錐部33bの外周面が受けることで、可変部分の通路面積を大きくする方向へ可動部材33を移動させる力が発生する。そして、円錐部33bの外周面に当たる冷却水の流量が多いほど、可動部材33を移動させる力が大きくなる。このため、冷却水の流量が所定流量よりも多くなり、可動部材33を移動させる力が大きくなった場合に、可変部分の通路面積を拡大することができる。
【0067】
・可動部材33が冷却水の流れを受けて移動することで、冷却水の流れ方向が正方向である場合の可変部分の通路面積が、冷却水の流れ方向が逆方向である場合の可変部分の通路面積よりも大きくされる。したがって、冷却液通路に冷却水を流す方向を、正方向と逆方向とで切り替えることにより、WCAC50との冷却水の分配比率を変更することができる。すなわち、この場合も、冷却水の流れ(詳しくは流れ方向)に応じて、噴射弁10の冷却装置とWCAC50との冷却水の分配比率を変更することができる。
【0068】
・冷却水の流れ方向が逆方向の場合に、冷却水の流れを可動部材33の円錐部33bの内周面が受けることで、可変部分の通路面積を小さくする方向へ可動部材33を移動させる力が発生する。そして、円錐部33bの内周面に当たる冷却水の流量が多いほど、可動部材33を移動させる力が大きくなる。このため、可変部分の通路面積が小さい状態を維持し易くなる。
【0069】
・可変部分の通路面積を小さくする方向へ第2ばね37により可動部材33が付勢されるため、可変部分の通路面積を小さくした状態を維持し易くなる。
【0070】
・冷却水通路において、通路面積が変更される可変部分は、噴射弁10の先端部10aの外周部分である。このため、可変部分の通路面積を小さくした場合に、噴射弁10の先端部10aへ流れる冷却水の流速を高くすることができる。したがって、温度が上昇し易い噴射弁10の先端部10aを、効率的に冷却することができる。
【0071】
・可動部材33が有する突出部33dにより、第2通路において、所定位置の通路面積が、所定位置の両隣の位置の通路面積よりも減少させられている。このため、突出部33dの上流における冷却水の圧力が、突出部33dの下流における冷却水の圧力よりも高くなり、可動部材33を固定部材31側へ移動させる力が発生する。すなわち、突出部33dは、可変部分の通路面積を大きくする方向へ可動部材33を移動させる力を、冷却水の流れを受けることで発生させる。ここで、突出部33dを通過する冷却水の流量が多いほど、可動部材33を移動させる力が大きくなる。このため、突出部33dによっても、可変部分の通路面積を大きくする方向へ可動部材33を移動させる力を発生させることができ、冷却水の流量が所定流量よりも多い場合に可変部分の通路面積を大きくすることができる。
【0072】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。なお、上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0073】
・
図9は、冷却水が正方向に流れる場合において、冷却水流量Qと可変部分面積Aと圧力損失との関係の変更例を示すグラフである。この変更例では、可動部材33は、冷却水の流れを受けて移動することで、冷却水の流量が多いほど、可変部分(所定部分)の通路面積を大きくする。具体的には、この変更例の第2ばね37のばね係数k3は、上記ばね係数k2よりも大きく、上記ばね係数k1よりも小さく設定されている(k2<k3<k1)。このため、冷却水流量が流量Q2よりも多くなると、可動部材33は固定部材31の方向へ移動し始め、冷却水流量Qに応じて徐々に移動する。
【0074】
上記構成によれば、可動部材33が冷却水の流れを受けて移動することで、冷却水の流量が多いほど、可変部分の通路面積が大きくされる。このため、冷却水の流量の増加に合わせて、可変部分の通路面積を徐々に大きくすることができる。したがって、冷却水の圧力損失を抑制するとともに、冷却効率を向上させることができる。
【0075】
・
図10は、冷却水が逆方向に流れる場合において、冷却水流量Qと可変部分面積Aと圧力損失との関係の変更例を示すグラフである。この変更例では、可動部材33は、冷却水の流れを受けて移動することで、冷却水の流れ方向が逆方向である場合に、冷却水の流量が多いほど、可変部分(所定部分)の通路面積を小さくする。具体的には、この変更例の第1ばね35のばね係数k4は、上記ばね係数k2,k3よりも大きく、上記ばね係数k1よりも小さく設定されている(k2<k3<k4<k1)。このため、冷却水流量Qが多くなると、可動部材33は本体21の第1端部21aの方向へ、冷却水流量Qに応じて徐々に移動する。
【0076】
上記構成によれば、可動部材が冷却水の流れを受けて移動することで、冷却水の流れ方向が逆方向である場合に、冷却水の流量が多いほど、可変部分の通路面積が小さくされる。このため、冷却水の流量の増加に合わせて、可変部分の通路面積を徐々に小さくすることができる。したがって、冷却水の流量が多いほど、WCAC50への冷却水の分配比率を増加させることができる。
【0077】
・円錐部33bの外周面以外に、冷却水の流れを受けることで、可変部分の通路面積を大きくする方向へ可動部材33を移動させる力を発生させる傾斜面(第1傾斜面)を設けることもできる。その傾斜面は、曲面であってもよいし、平面であってもよい。
【0078】
・円錐部33bの内周面以外に、冷却水の流れを受けることで、可変部分の通路面積を小さくする方向へ可動部材33を移動させる力を発生させる傾斜面(第2傾斜面)を設けることもできる。その傾斜面は、曲面であってもよいし、平面であってもよい。
【0079】
・
図11,12に示すように、冷却水通路(第1通路及び第2通路)において、噴射弁10の先端部10aの外周部分以外に、通路面積を可変とする可変部分(所定部分)を設けることもできる。
図11では、可動部材33の円錐部33bの内側に、環状に突出する環状部33baが形成されている。そして、噴射弁10の中径部10cと環状部33baとの間部分(所定部分)の第3隙間g3が、可動部材33が冷却水の流れを受けて移動することで変更される。同図は、第3隙間g3が小さくなった状態を示している。
図12では、噴射弁10の中径部10cに、円錐状の傾斜部10caが形成されている。そして、傾斜部10caと円錐部33bの内周面との間部分(所定部分)の第4隙間g4が、可動部材33が冷却水の流れを受けて移動することで変更される。同図は、第4隙間g4が小さくなった状態を示している。
【0080】
・可動部材33に作用する重力により、冷却水の流量が所定流量よりも少ない場合に可変部分の通路面積を小さくすることができれば、第2ばね37を省略することもできる。
【0081】
・分岐路61に、WCAC50に代えて、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラや、ターボチャージャ等(他の冷却装置)を接続することもできる。
【0082】
・噴射弁10の冷却装置20は、冷却液として冷却水以外の冷媒を採用してもよい。
【0083】
・噴射弁10は、尿素以外の添加剤、例えば燃料などの還元剤を噴射してもよい。