特許第6954139号(P6954139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954139
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】回転角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/14 20060101AFI20211018BHJP
【FI】
   G01D5/14 F
   G01D5/14 H
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-4645(P2018-4645)
(22)【出願日】2018年1月16日
(65)【公開番号】特開2019-124545(P2019-124545A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 孝範
(72)【発明者】
【氏名】河野 禎之
【審査官】 岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−85389(JP,A)
【文献】 特開2017−190975(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0267581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
G01D 5/00−5/252
5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体(11)の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記回転体の回転軸心(AX)に垂直な径方向に配置された極を有し、前記回転体と共に回転する磁石(12)と、
前記磁石に対する径方向外側にリング状に配置され、周方向の複数箇所にギャップ(17、18、35、36、45、46、55、56)を設けている磁性部(13、31、41、51)と、
複数の前記ギャップのうちの1つの特定ギャップ(17、35、45、55)に配置され、磁場の接線方向磁束成分および径方向磁束成分を検出する磁気検出部(14、32)と、
を備え
前記磁気検出部による接線方向磁束成分の検出感度と径方向磁束成分の検出感度との比を感度比(α)とし、
前記磁気検出部の配置箇所における磁場の接線方向磁束成分の最大値と径方向磁束成分の最大値との比を磁束成分比(β)とすると、
前記磁気検出部が前記特定ギャップの径方向中央に位置する場合と比べて、前記磁束成分比と前記感度比の逆比との差が小さくなるように前記磁気検出部と前記磁石との径方向距離(d)が調整されている回転角度検出装置。
【請求項2】
前記磁気検出部は、
磁場の径方向磁束成分を検出する横型ホール素子(27)と、
前記横型ホール素子と比べて感度が低く、磁場の接線方向磁束成分を検出する縦型ホール素子(28)と、
を有する請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記磁束成分比と前記感度比の逆比とが一致するように前記磁気検出部と前記磁石との径方向距離が調整されている請求項1または2に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
前記磁気検出部を設けるために必要な空間の接線方向の最小幅を必要最小幅とすると、
前記特定ギャップの接線方向幅(w)が前記必要最小幅である場合と比べて、前記磁束成分比と前記感度比の逆比との差が小さくなるように前記特定ギャップの接線方向幅が調整されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転角度検出装置。
【請求項5】
前記磁束成分比と前記感度比の逆比とが一致するように前記特定ギャップの接線方向幅が調整されている請求項に記載の回転角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体と共に回転する磁石に対して径方向外側に磁気検出部を設け、その磁場の接線方向磁束成分と径方向磁束成分とを検出し、それらの検出値に基づき回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置が知られている。特許文献1では、接線方向磁束成分を検出する検出素子と、径方向磁束成分を検出する検出素子とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−516186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の回転角度検出装置では、磁石の外側の磁場において、径方向磁束成分と比べて接線方向磁束成分が格段に小さくなる。そのため、接線方向用の磁気素子の出力信号をゲイン調整するための電子回路が必要となり、構成が複雑になる。また、ゲインを上げることでノイズが多くなり、検出精度が低下する。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成が簡素であり、また、検出精度が向上した回転角度検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転角度検出装置は、磁石(12)、磁性部(13、31、41、51)および磁気検出部(14、32)を備えている。磁石は、回転体の回転軸心(AX)に垂直な径方向に配置された極を有し、回転体と共に回転する。磁性部は、磁石に対する径方向外側にリング状に配置され、周方向の複数箇所にギャップ(17、18、35、36、45、46、55、56)を設けている。磁気検出部は、複数のギャップのうちの1つの特定ギャップ(17、35、45、55)に配置され、磁場の接線方向磁束成分および径方向磁束成分を検出する。磁気検出部による接線方向磁束成分の検出感度と径方向磁束成分の検出感度との比を感度比(α)とし、磁気検出部の配置箇所における磁場の接線方向磁束成分の最大値と径方向磁束成分の最大値との比を磁束成分比(β)とすると、磁気検出部が特定ギャップの径方向中央に位置する場合と比べて、磁束成分比と感度比の逆比との差が小さくなるように磁気検出部と磁石との径方向距離(d)が調整されている。
【0007】
そのため、磁気検出部の検出値に対応するSin波形信号およびCos波形信号に基づきアークタンジェント演算を行うことで、回転体の360°の回転角度を算出することができる。
【0008】
また、磁石の周りにリング状の磁性部が配置され、磁性部の特定ギャップに磁気検出部が配置されることで、磁気検出部が検出する接線方向磁束成分と径方向磁束成分とのバランスを最適化することができる。つまり、接線方向磁束成分と径方向磁束成分との比が所望の値になるように設計することができる。そのため、一方の磁束成分に基づく出力信号のゲインを上げる必要がなくなり、ゲイン調整するための電子回路が必要なくなる。また、ゲインを上げないため、ノイズの増加に起因する検出精度低下が生じない。したがって、回転角度検出装置の構成が簡素になり、また、検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の回転角度検出装置を概略的に示す模式図である。
図2】第1実施形態の磁気検出部を説明するブロック図である。
図3】第1実施形態において、回転体の回転角度と第1ホール素子の出力信号と関係を示す図である。
図4】第1実施形態において、回転体の回転角度と第2ホール素子の出力信号と関係を示す図である。
図5】第1実施形態において、磁気検出部の径方向位置と径方向磁束成分の最大磁束値との関係、および、磁気検出部の径方向位置と接線方向磁束成分の最大磁束値との関係を示す図である。
図6】第1実施形態において、回転体の回転角度と径方向磁束成分との関係、および、回転体の回転角度と接線方向磁束成分との関係を示す図である。
図7】第2実施形態の回転角度検出装置を概略的に示す模式図である。
図8】第2実施形態において、特定ギャップの接線方向幅と径方向磁束成分の最大磁束値との関係、および、特定ギャップの接線方向幅と接線方向磁束成分の最大磁束値との関係を示す図である。
図9】第1の他の実施形態の回転角度検出装置を概略的に示す模式図である。
図10】第2の他の実施形態の回転角度検出装置を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。装置の構造を示す図面は、構成を分かり易くするために模式的に示している。各部の寸法、角度および寸法比は必ずしも正確なものではない。
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態の回転角度検出装置10を図1に示す。回転角度検出装置10は、回転体11の回転角度を検出する装置であり、磁石12、磁性部13および磁気検出部14を備えている。磁気検出部14からの回転角度信号は、外部の図示しないECU(Electronic Control Unit)等に伝達される。
【0012】
以下の説明において、回転体11の回転軸心AXに垂直な方向のことを「径方向」と記載する。また、回転体11の横断面において回転軸心AXを中心とする円の接線の方向のことを「接線方向」と記載する。また、回転体11の回転方向のことを単に「回転方向」と記載する。
【0013】
磁石12は、回転体11の径方向に配置された極を有している。この極は、N極およびS極を含む。第1実施形態では、磁石12は、回転方向に沿う円弧状の第1磁石部15および第2磁石部16から構成されている。N極とS極は、第1磁石部15および第2磁石部16の板厚方向に配置されている。第1磁石部15は、回転体11の一方の側面に固定されている。第2磁石部16は、回転体11の他方の側面に固定されている。磁石12は、回転体11と共に回転する。
【0014】
磁性部13は、磁石12の周り、すなわち磁石12に対する径方向外側にリング状に配置され、周方向の複数箇所にギャップ17、18を設けている。磁性部13は、磁石12に対して径方向に離間して配置されている。磁石12と磁性部13との間には、環状の隙間19が設けられている。第1実施形態では、磁性部13は、回転方向に沿う円弧状の第1磁性体21および第2磁性体22から構成されている。第1磁性体21は、磁石12に対して径方向一方側に配置されている。第2磁性体22は、磁石12に対して第1磁性体21とは反対側に設けられている。第1磁性体21の周方向一方の端部23と第2磁性体22の周方向他方の端部24との間にはギャップ17が形成されている。また、第1磁性体21の周方向他方の端部25と第2磁性体22の周方向一方の端部26との間にはギャップ18が形成されている。磁性部13は、例えば図示しない固定部材などに一体に保持される。
【0015】
第1磁性体21および第2磁性体22は、回転軸心AXに対して点対称に配置されている。また、ギャップ17およびギャップ18は、回転軸心AXに対して点対称に設けられている。つまり、ギャップ17およびギャップ18は、接線方向幅が同じであり、かつ、回転軸心AXを挟んだ正反対位置に位置している。
【0016】
磁気検出部14は、ギャップ17に配置され、磁場の磁束密度の接線方向成分(以下、接線方向磁束成分)および磁束密度の径方向成分(以下、径方向磁束成分)を検出する。ギャップ17は、複数のギャップ17、18のうちの1つの特定のギャップである。以下、ギャップ17のことを適宜「特定ギャップ17」と記載する。磁気検出部14は、磁性部13と同様に前記固定部材などに一体に保持される。
【0017】
第1実施形態では、磁気検出部14は、図2に示すように第1ホール素子27、第2ホール素子28、および回転角演算回路29等を有している。
【0018】
第1ホール素子27は、磁気検出部14の配置箇所の磁場の径方向磁束成分を検出する。第2ホール素子28は、磁気検出部14の配置箇所の磁場の接線方向磁束成分を検出する。第1ホール素子27および第2ホール素子28は、検出面の向きが互いに90°異なるように配置されている。図3に示すように、第2ホール素子28は、接線方向磁束成分に基づく出力信号Syを出力する。出力信号SyはSin波形信号である。図4に示すように、第1ホール素子27は、方向磁束成分に基づく出力信号Sxを出力する。出力信号SxはCos波形信号である。Sin波形信号とCos波形信号は、互いに90°の位相差を有する信号である。
【0019】
ここで、図1に示す所定の基準位置P1から磁気検出部14までの径方向距離xと、磁気検出部14の配置箇所における磁束成分の最大値(以下、最大磁束値B)との関係について説明する。基準位置P1は、磁性部13に外接する仮想円Cv1上であって、特定ギャップ17の接線方向幅wの中央位置である。特定ギャップ17の接線方向幅wは、例えば5.5mmである。特定ギャップ17の接線方向幅wは、基準位置P1から内側位置P2までで例えば5.5mmである。内側位置P2は、磁性部13に外接する仮想円Cv2上であって、特定ギャップ17の接線方向幅wの中央位置である。最大磁束値Bは、回転体11の回転角度が360°変化する中で磁束成分が最大となる値である。「径方向距離xを調整すること」は、言い換えれば、「磁気検出部14と磁石12との径方向距離dを調整すること」に等しい。
【0020】
図5に示すように、径方向距離xが0から5.0まで大きくなるに従って、径方向磁束成分の最大磁束値Bx_maxは指数関数的に大きくなる。一方、径方向距離xが0から5.0まで大きくなる間、接線方向磁束成分の最大磁束値By_maxはあまり変化しない。つまり、最大磁束値By_maxは、非常に緩やかに増えるか又は変化しないかである。
【0021】
図1に戻って、第1ホール素子27は横型ホール素子である。第2ホール素子28は、横型ホール素子と比べて感度が低い縦型ホール素子である。第1ホール素子27による方向磁束成分の検出感度と第2ホール素子28による接線方向磁束成分の検出感度との比を感度比αとすると、第1実施形態では、感度比αは「3:1」である。また、磁気検出部14は、特定ギャップ17の接線方向幅wの中央位置であって、径方向距離x=2.0となる位置に配置されている。最大磁束値Bx_maxと最大磁束値By_maxとの比を磁束成分比βとすると、図5図6に示すように磁束成分比βは「1:3」である。これにより、磁気検出部14が特定ギャップ17の径方向中央(径方向距離x=2.75)に位置する場合と比べて、磁束成分比βと感度比αの逆比との差が小さくなるように磁気検出部14と磁石12との径方向距離dが調整されている。特に、第1実施形態では、磁束成分比βと感度比αの逆比とが一致するように径方向距離dが調整されている。
【0022】
上述のような径方向距離dの調整による「磁束成分比βと感度比αの逆比との一致」により、出力信号Syの振幅は、出力信号Sxの振幅と同じになる(図3図4参照)。回転角演算回路29は、これらの出力信号Syおよび出力信号Sxに基づきアークタンジェント演算を行い、回転体11の360°の回転角度を算出する。
【0023】
(効果)
以上説明したように、第1実施形態では、回転角度検出装置10は、磁石12、磁性部13および磁気検出部14を備えている。磁石12は、回転体11の回転軸心AXに垂直な径方向に配置された極を有し、回転体11と共に回転する。磁性部13は、磁石12に対する径方向外側にリング状に配置され、周方向の複数箇所にギャップ17、18を設けている。磁気検出部14は、複数のギャップ17、18のうちの1つの特定ギャップ17に配置され、磁場の接線方向磁束成分および径方向磁束成分を検出する。
【0024】
そのため、磁気検出部14の検出値に対応するSin波形信号およびCos波形信号に基づきアークタンジェント演算を行うことで、回転体11の360°の回転角度を算出することができる。
【0025】
また、磁石12の周りにリング状の磁性部13が配置され、磁性部13の特定ギャップ17に磁気検出部14が配置されることで、磁気検出部14が検出する接線方向磁束成分と径方向磁束成分とのバランスを最適化することができる。つまり、接線方向磁束成分と径方向磁束成分との比が所望の値になるように設計することができる。そのため、一方の磁束成分に基づく出力信号のゲインを上げる必要がなくなり、ゲイン調整するための電子回路が必要なくなる。また、ゲインを上げないため、ノイズの増加に起因する検出精度低下が生じない。したがって、回転角度検出装置10の構成が簡素になり、また、検出精度が向上する。
【0026】
また、第1実施形態では、磁気検出部14は、磁場の径方向磁束成分を検出する第1ホール素子27と、磁場の接線方向磁束成分を検出する第2ホール素子28とを有する。第1ホール素子27は横型ホール素子である。第2ホール素子28は、横型ホール素子と比べて感度が低い縦型ホール素子である。これにより、感度比αは、磁気検出部14の配置箇所の磁気特性から得られる磁束成分比βに適合したものとなる。
【0027】
また、第1実施形態では、磁気検出部14が特定ギャップ17の径方向中央に位置する場合と比べて、磁束成分比βと感度比αの逆比との差が小さくなるように磁気検出部14と磁石12との径方向距離dが調整されている。特に、第1実施形態では、磁束成分比βと感度比αの逆比とが一致するように径方向距離dが調整されている。これにより、検出精度をより一層向上させることができる。
【0028】
[第2実施形態]
第2実施形態では、図7に示すように、回転角度検出装置30は、磁石12、磁性部31および磁気検出部32を備えている。磁性部31は、円弧状の第1磁石部33および第2磁石部34から構成されており、ギャップ35、36を設けている。ギャップ35(以下、特定ギャップ35)には磁気検出部32が設けられている。
【0029】
ここで、特定ギャップ35の接線方向幅wと、磁気検出部32の配置箇所における最大磁束値Bとの関係について説明する。径方向距離xは、例えば2.5mmである。図8に示すように、接線方向幅wが1.5から7.5まで大きくなるに従って、接線方向磁束成分の最大磁束値By_maxは小さくなる。一方、接線方向幅wが1.5から7.5まで大きくなるに従って、径方向磁束成分の最大磁束値Bx_maxは大きくなる。
【0030】
図7に戻って、第2実施形態では、感度比αは「3:1」である。また、接線方向幅wが4.2であり、図8に示すように磁束成分比βは「1:3」である。これにより、特定ギャップ35の接線方向幅wが必要最小幅である場合と比べて、磁束成分比βと感度比αの逆比との差が小さくなるように特定ギャップ35の接線方向幅wが調整されている。必要最小幅とは、磁気検出部14を設けるために必要な空間の接線方向の最小幅のことである。特に、第2実施形態では、磁束成分比βと感度比αの逆比とが一致するように特定ギャップ35の接線方向幅wが調整されている。
【0031】
上述のような接線方向幅wの調整による「磁束成分比βと感度比αの逆比との一致」により、第1実施形態と同様に、出力信号Syの振幅は出力信号Sxの振幅と同じになる。
【0032】
(効果)
以上説明したように、第2実施形態においても、磁石12に対する径方向外側にリング状の磁性部31が設けられている。磁気検出部32は、複数のギャップ35、36のうちの1つの特定ギャップ35に配置され、磁場の接線方向磁束成分および径方向磁束成分を検出する。したがって、第1実施形態と同様に、回転角度検出装置10の構成が簡素になり、また、検出精度が向上する。
【0033】
また、第2実施形態においても、磁気検出部32の第1ホール素子27は横型ホール素子であり、第2ホール素子28は縦型ホール素子である。したがって、第1実施形態と同様に、感度比αは、磁気検出部32の配置箇所の磁気特性から得られる磁束成分比βに適合したものとなる。
【0034】
また、第2実施形態では、特定ギャップ35の接線方向幅wが必要最小幅である場合と比べて、磁束成分比βと感度比αの逆比との差が小さくなるように特定ギャップ35の接線方向幅wが調整されている。特に、第2実施形態では、磁束成分比βと感度比αの逆比とが一致するように特定ギャップ35の接線方向幅wが調整されている。これにより、検出精度をより一層向上させることができる。
【0035】
[他の実施形態]
他の実施形態では、磁気検出部の径方向距離および特定ギャップの接線方向幅は、適宜変更可能である。径方向距離および接線方向幅の両方を変えながら、磁気検出部が検出する接線方向磁束成分と径方向磁束成分とのバランスを最適化してもよい。また、他の実施形態では、磁気検出部は、特定ギャップの接線方向幅の中央位置から外れた位置に設けられてもよい。
【0036】
例えば、他の実施形態では、図5において径方向距離x=3.6mmとすることで磁束成分比βを「1:1」とするとともに、感度比αを「1:1」に設計してもよい。また、他の実施形態では、図5において径方向距離x=5.0mmとすることで磁束成分比βを「2:1」とするとともに、感度比αを「1:2」に設計してもよい。
【0037】
他の実施形態では、磁性部の各ギャップの接線方向幅は、同じでなくてもよい。例えば、図9に示すように、回転角度検出装置40の磁性部41は、第1磁石部43および第2磁石部44を有する。特定ギャップ45は、他のギャップ46よりも大きい。一方、他の実施形態では、逆に、特定ギャップが他のギャップよりも小さくてもよい。
【0038】
他の実施形態では、磁性部の各ギャップは、回転軸心に対して点対称に設けられなくてもよい。例えば、図10に示すように、回転角度検出装置50の磁性部51は、第1磁石部53および第2磁石部54を有する。他のギャップ56は、特定ギャップ55に対して、回転軸心AXを挟んだ正反対位置から外れた位置に設けられている。
【0039】
他の実施形態では、磁石は、2つの磁石部に限らず、1つの磁石部、或いは3つ以上の磁石部から構成されてもよい。また、各磁石部の配置および着磁は、前述のものに限らない。要するに、磁石は、回転体の回転軸心に垂直な径方向に配置された極を有するものであればよい。
【0040】
他の実施形態では、回転角演算回路は、磁気検出部ではなく、その外部に設けられてもよい。また、他の実施形態では、磁気検出部は、ホール素子に限らず、MR素子等の他の磁気センサを用いてもよい。また、他の実施形態では、磁気検出部は、1つの素子で接線方向磁束成分と径方向磁束成分とを検出してもよい。
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0042】
10、30、40、50・・・回転角度検出装置
11・・・回転体
12・・・磁石
13、31、41、51・・・磁性部
14、32・・・磁気検出部
17、18、35、36、45、46、55、56・・・ギャップ
17、35、45、55・・・特定ギャップ
AX・・・回転軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10