(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の光学領域は、前記撮影部の撮影波長域内における互いに異なる色特性の光を前記対象物に向けて出射する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0034】
§1 適用例
まず、
図1および
図2を用いて本発明が適用される場面の一例について説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像検査装置100の適用場面の一例を模式的に例示する。
【0035】
本実施の形態に係る画像検査装置100は、工業製品の生産ラインなどにおいて、対象物(以下、「ワーク1」とも称す)を照明しながら撮影し、得られた撮影画像を用いて対象物の外観検査(傷、汚れ、異物などの検査)を行なうための装置に適用され得る。画像検査装置100は、対象物によって反射された光を検出することで、対象物の表面状態を検査するものであるため、対象物には液晶ディスプレイなどの鏡面反射性を有するものが適用される。
【0036】
図1を参照して、本実施の形態に係る画像検査装置100は、ワーク1の表面状態を検査するための装置であって、照明部10と、光学部材20と、撮影部30と、ステージ40とを備える。
【0037】
撮影部30は、ワーク1を撮影する。具体的には、撮影部30は、その光軸Xがステージ40の法線方向に一致するように配置されており、照明部10および光学部材20越しにステージ40上のワーク1を撮影する。
【0038】
照明部10は、撮影部30とワーク1との間に配置され、ワーク1を照明する。照明部10は、透光性を有する。照明部10の発光面10Aは、ワーク1に対向して配置される。本実施の形態では、照明部10は、照明光として白色光を出力する。
【0039】
光学部材20は、照明部10の発光面10A上に配置される。光学部材20は、照明部10が発する照明光(白色光)をワークに向けて透過させるように構成される。このような構成とすることにより、ワーク1には、光学部材20を透過した照明光が照射されることになる。この照明光は、
図1に示すように、ワーク1の表面で反射されると、その反射光が光学部材20および照明部10を透過して撮影部30に入射される。
【0040】
照明部10は「照明部」の一実施例に対応し、光学部材20は「光学部材」の一実施例に対応する。そして、照明部10および光学部材20は「照明装置」の一実施例を構成する。
【0041】
図2は、
図1に示した光学部材20の構成を概略的に示す図である。
図2は、
図1のA方向から見た図である。
【0042】
図2を参照して、光学部材20は、複数の光学領域24a〜24cと、遮光領域26とを有する。
【0043】
光学部材20は、撮影部30の光軸Xと中心とする発光面10Aの中心領域22が形成されている。
図2の例では、中心領域22は円形領域となっている。この中心領域22は、無色透明の領域であって、照明部10が発する光(白色光)を、その色を変化させずにそのまま透過させるように構成されている。なお、中心領域22には、白色光を透過する無色のフィルタを設けてもよい。無色のフィルタに代えて、中心領域22に相当する光学部材20の一部を開口としてもよい。
【0044】
なお、中心領域22は、光学部材20を撮影部30側から見た平面視において、中心領域22内にワーク1が位置するように形成されている。これによると、照明部10が発する照明光の一部は、中心領域22を透過してワーク1の表面全体に照射される。この一部の照明光は、ワーク1に対して、概ね光軸Xの方向に照射される。また、ワーク1によって反射された光は、中心領域22および照明部10を透過して撮影部30に到達する。このとき、反射光は光学領域24a〜24cを通らずに、中心領域22を通るため、光学部材20を透過することで反射光の色が変化されることがない。
【0045】
複数の光学領域24a〜24cは、中心領域22を囲むように配置される。
図2の例では、複数の光学領域24a〜24cは、円環状を有しており、中心領域22を囲むように同心円状に配置される。複数の光学領域24a〜24cは、ワーク1に向けて出射する光の色特性が互いに異なるように構成される。複数の光学領域24a〜24cは、たとえば、透過する光の波長が互いに異なる複数のカラーフィルタにより構成することができる。これによると、照明部10の発光面10Aから出射された光(白色光)は、複数のカラーフィルタを透過することによって、互いに色特性が異なる複数の色相光に分解される。
【0046】
遮光領域26は、複数の光学領域24a〜24cを囲むように配置され、照明光を遮光する。これにより、照明光および複数の光学領域24a〜24cからそれぞれ出射される複数の色相光以外の光が対象物に照射され、その反射光が撮影部30に入り込むことを抑制することができる。
【0047】
このような構成とすることにより、ワーク1には、撮影部30の光軸Xを中心とする中心領域22から出射される照明光(白色光)と、中心領域22を囲む複数の光学領域24a〜24cから出射される複数の色相光とで構成された光が照射されることになる。このとき、照明光および複数の色相光は、ワーク1の表面に対して互いに異なる角度で照射される。
【0048】
このような照明下でのワーク1を撮影することにより、ワーク1の表面について、平坦に近い面(すなわち、撮影部30の光軸Xに垂直に近い面)が照明光の色(白色)となり、傾斜した面がその傾斜状態に応じて複数の色相光のうちいずれかの色相光の色相となるようなカラー画像が生成される。したがって、撮影画像におけるワーク1の部分の色相パターンを観測することにより、ワーク1の表面の傾斜の状態を検出することができる。
【0049】
このように、本実施の形態に係る画像検査装置100によれば、照明部10から光学部材20の中心領域22を通って、撮影部30の光軸Xの方向の照明光をワーク1に照射することができる。これにより、撮影画像を用いて、ワーク1の表面における平坦に近い面を検出することができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る画像検査装置100によれば、照明部10の発光面10A上に配置された複数の光学領域24a〜24cによって、互いに色特性が異なる複数の色相光を、互いに異なる照射角度でワーク1に照射することができる。これにより、撮影画像を用いて、ワーク1の表面の傾斜の状態を検出することができる。
【0051】
ここで、従来の画像検査装置においては、複数の色相光をそれぞれ発する複数の光源を、ワークの表面への照射角度が互いに異なるように配置された照明装置を用いていた。この照明装置では、複数の円環状の光源をワークが載置される基準面からの高さが互いに異なるように配置することで、ワークの表面への複数の色相光の照射角度を互いに異ならせている。そのため、照明装置は、撮影部の光軸方向における寸法が大きくなってしまい、その改善が求められていた。
【0052】
また、上記の従来の照明装置においては、その中心部に撮影部の覗き穴を形成し、この覗き穴を取り囲むように複数の光源を配置するとともに、光軸を覗き穴の中心に合わせた状態で撮影部を配置している。そのため、構造上、撮影部の光軸方向の光を照射することが難しくなり、ワークの表面における平坦に近い面を検出できないという課題を有していた。この課題には、照明装置と撮影部との間に、同軸落射照明をさらに配置することで、光軸方向の光を照射することができる。しかしながら、照明装置の更なる大型化に繋がることが懸念される。
【0053】
本実施の形態に係る画像検査装置100では、単色光を発する照明部10の発光面10A上に、上述した構成を有する光学部材20を配置することで、実質的に、光軸Xの方向の光(照明光)と、ワーク1の表面への照射角度が互いに異なる複数の色相光とをワーク1に対して照射することができる。
【0054】
これによれば、複数の光源を基準面からの高さが互いに異なるように立体的に配置することが不要となるため、照明部10の光軸方向における寸法を短くすることができる。したがって、照明部10を、薄型のフラット照明装置で構成することが可能となる。また、撮影部の光軸方向の光を照射するための同軸落射照明の設置も不要となる。したがって、照明装置の薄型化および小型化を実現することができる。
【0055】
§2 構成例
以下、本実施の形態に係る画像検査装置100の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0056】
<A.画像検査装置の適用例>
図3は、本実施の形態に係る画像検査装置100が適用される生産ラインの一例を示す模式図である。
【0057】
図3を参照して、画像検査装置100は、連続的に搬入されるワーク1を撮影する撮影部30と、ワーク1を照明する照明部10と、照明部10および撮影部30を制御する制御装置50とを備える。画像検査装置100は、工業製品の生産ラインなどにおいて、制御装置50の制御によって照明部10でワーク1を照明しながら撮影部30で撮影し、得られた撮影画像を用いてワーク1の外観検査を行なう装置である。
【0058】
具体的には、ワーク1は、移動可能なステージ40によって、撮影部30および照明部10が固定された検査位置まで移動する。ワーク1は、検査位置まで移動すると、画像検査装置100による外観検査が終了するまでその場で停止する。このとき、制御装置50は、照明部10でワーク1を照明しながら撮影部30でワーク1を撮影する。画像検査装置100は、撮影画像を用いてワーク1の表面状態を検査する。
【0059】
<B.画像検査装置の全体構成例>
図4は、本実施の形態に係る画像検査装置100の全体構成を示すブロック図である。
【0060】
図4を参照して、画像検査装置100は、照明部10と、光学部材20と、撮影部30と、ステージ40と、照明部10、撮影部30およびステージ40を制御する制御装置50とを備える。制御装置50は、典型的には、汎用的なコンピュータアーキテクチャに従う構造を有しており、予めインストールされたプログラムをプロセッサが実行することで、各種の処理を実現する。
【0061】
<B.照明部の構成例>
図1に戻って、照明部10は、ワーク1および撮影部30の間に配置された導光板11と、導光板11の周囲に配置された複数の発光部12と、導光板11に内在する複数の反射部16とを有する。なお、
図1では、説明の便宜上、導光板11において、撮影部30側に位置する面の側を「上面側」と規定し、ワーク1側に位置する面の側を「底面側」と規定する。
【0062】
導光板11は、その周囲に配置された複数の発光部12の光を内部に導入し、導入した光を内部で拡散させながら移動させて外部に出射することで、複数の発光部12の光をワーク1に導く。すなわち、導光板11の底面側は、照明部10の発光面10Aを構成する。
【0063】
複数の発光部12には、LED(Light Emitting Diode)または陰極管を用いた蛍光灯などを適用可能である。また、複数の発光部12の発光色は、白色に限らず、赤色、緑色、青色などであってもよい。
【0064】
導光板11の形状は、上面側あるいは底面側から見て四角形または三角形などの多角形、あるいは円形または楕円形などを適用可能である。本実施の形態では、導光板11の形状として上面側あるいは底面側から見て四角形を例示する。導光板11には、導光性に優れたアクリルなどの部材が適用されることが好ましい。
【0065】
導光板11には、複数の反射部16が内在している。複数の反射部16の各々は、発光部12からの光を反射させることでワーク1が位置する方向(底面側の方向)へと光を導くように、その形状および位置が設計されている。なお、反射部16は、発光部12からの光を反射させることでワーク1が位置する方向へと光を導くものであれば、矩形または三角形の形状であってもよいし、板状のものであってもよい。反射部16は、導光板11の一部をレーザ加工などで切り抜いて形成されてもよい。
【0066】
導光板11は、ワーク1と撮影部30との間に配置されている。このため、ワーク1および照明部10からの光を撮影部30の光軸X上に置くことができる。このような構成としたことにより、導光板11から出射された光は、ワーク1によって反射され、その反射光が再び導光板11の内部を通過して撮影部30に到達することができる。
【0067】
<C.光学部材の構成例>
光学部材20は、照明部10が発する光をワーク1に向けて透過させるものであり、ワーク1に向けて、互いに色特性が異なる複数の色相光を出射するように構成される。本実施の形態では、光学部材20は、ワーク1に向けて第1から第3の色相光を出射するように構成されている。
【0068】
具体的には、
図2を参照して、光学部材20は、導光板11の形状に相似した形状を有する。すなわち、光学部材20の形状は、上面側あるいは底面側から見て四角形を有する。
図1に示すように、光学部材20は、導光板11の底面(発光面10Aに相当)上に配置される。
【0069】
光学部材20は、第1の光学領域24a、第2の光学領域24b、第3の光学領域24c、および遮光領域26を有する。
【0070】
光学部材20には、撮影部30の光軸と中心する円形状の中心領域22が形成されている。この中心領域22は、無色透明であって、導光板11から出射された光(白色光)を、その色を変化させずに透過させる。なお、中心領域22は、光学部材20において光軸X方向に貫通するように形成された開口部で構成することができる。あるいは、円形状の無色のフィルタで構成することもできる。
【0071】
第1から第3の光学領域24a〜24cは、円環状を有しており、円形状の中心領域22を囲むように同心円状に配置される。第1から第3の光学領域24a〜24cは、照明部10が発する照明光(白色光)の色を変化させるためのものである。第1から第3の光学領域24a〜24cは、照明部10が発する照明光(白色光)を互いに異なる色特性の色相光に変化させるように構成される。
【0072】
具体的には、第1の光学領域24aは、照明光(白色光)を第1の色相光に変化させる。第2の光学領域24bは、照明光(白色光)を第2の色相光に変化させる。第3の光学領域24cは、照明光(白色光)を第3の色相光に変化させる。第1から第3の色相光はいずれも、撮影部30の撮影波長域内に含まれる。たとえば、第1の色相光は青色光であり、第2の色相光は緑色光であり、第3の色相光は赤色光である。なお、各光学領域から出射される色相光が撮影部30の撮影波長域内に含まれている限りにおいて、光学部材20は、より多数の光学領域を有することができる。
【0073】
遮光領域26は、複数の光学領域24a〜24bを囲むように同心円状に配置され、照明光を遮光する。これにより、白色光および第1から第3の色相光以外の光がワーク1に照射され、その反射光が撮影部30に入り込むことを抑制することができる。
【0074】
以上の構成とすることにより、ワーク1には、撮影部30の光軸Xを中心とする円形状の白色光、および同心円状に配置された、円環状の第1から第3の色相光で構成された光が照射されることになる。
【0075】
このとき、白色光および第1から第3の色相光は、ワーク1の表面に対して互いに異なる角度で照射されることになる。具体的には、白色光は、光軸Xの方向から照射される。第1の色相光(青色光)は、光軸Xに対する角度が最も小さい角度で照射される。第3の色相光(赤色光)は、光軸Xに対する角度が最も大きい角度で照射される。第2の色相光(緑色光)は、第1および第3の色相光の中間にあたる角度で照射される。
【0076】
このような照明下でのワーク1を撮影することにより、ワーク1の表面のうち、平坦に近い要素(すなわち、光軸Xに垂直に近い面)が白色となり、傾斜が緩やかな要素が第1の色相(青色)となり、傾斜が急な要素が第3の色相(赤色)となり、これら2つの要素の中間の傾斜状態の要素が第2の色相(緑色)となるようなカラー画像が生成される。したがって、撮影画像におけるワーク1の部分の色相パターンを観測することにより、ワーク1の表面の傾斜の状態を検出することができる。
【0077】
光学部材20において、第1の光学領域24a、第2の光学領域24bおよび第3の光学領域24cの各々は、たとえば、カラーフィルムなどのカラーフィルタを用いて形成することができる。カラーフィルタは、特定の波長の光のみを透過させるフィルタである。
【0078】
第1から第3の光学領域24a〜24cには、透過させる波長が互いに異なる第1から第3の色相のカラーフィルムがそれぞれ配置される。第1の色相のカラーフィルムは、第1の色相光(青色光)を透過し、第2の色相のカラーフィルムは、第2の色相光(緑色光)を透過し、第3の色相のカラーフィルムは、第3の色相光(赤色光)を透過する。
【0079】
より具体的には、照明部10の発光面10Aに対して、第1の色相のカラーフィルム、第2の色相のカラーフィルムおよび第3の色相のカラーフィルムを光軸Xに対して同心円状に貼り付けることにより、第1から第3の光学領域24a〜24cを形成することができる。また、第1の色相のカラーフィルムの内周側には、中心領域22を形成することができる。なお、中心領域22に無色のフィルムを貼り付けてもよい。第1から第3の色相のカラーフィルムを透過した照明光は、第1から第3の色相に着色される。
【0080】
あるいは、照明部10のおける発光部12を、励起光を発する発光素子で構成するとともに、第1から第3の光学領域24a〜24cの各々を蛍光体で形成することも可能である。たとえば、発光部12には、紫外光(励起光)を発する紫外光LEDを用いることができる。第1の光学領域24aは、紫外光を吸収して第1の色相の蛍光を発する第1の蛍光体層で形成される。第2の光学領域24bは、紫外光を吸収して第2の色相の蛍光を発する第2の蛍光体層で形成される。第3の光学領域24cは、紫外光を吸収して第3の色相の蛍光を発する第3の蛍光体層で形成される。第1から第3の蛍光体層は、たとえば、照明部10の発光面10Aの対応する領域に、各々の蛍光体の粒子を塗布することによって形成することができる。
【0081】
<D.撮影部の構成例>
撮影部30は、たとえばカメラである。カメラは、主たる構成要素として、レンズおよび絞りなどの光学系と、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの受光素子とを含む。
【0082】
<E.制御装置の構成例>
図4に戻って、制御装置50は、画像入力部60と、撮影制御部62と、照明制御部64と、ステージ駆動部66と、制御部68と、入力部70と、表示部72と、通信インターフェイス(I/F)74とを含む。
【0083】
画像入力部60は、撮影部30から出力された画像信号を受け付けるインターフェイス回路、および画像信号をデジタル変換するA/D変換回路などを含む。撮影制御部62は、撮影部30の撮影タイミングを制御する。照明制御部64は、照明部10の複数の発光部12の光量および点灯タイミングなどを制御する。
【0084】
ステージ駆動部66は、ステージ40を駆動して、ワーク1を撮影部30および照明部10が固定された検査位置まで移動させる。入力部70は、ティーチングなどの設定操作を行なうためのものであって、専用の操作ボタン、マウスまたはキーボードなどにより構成される。表示部72は、検査用の画像および検査結果などを表示するためのものであって、液晶パネルなどにより構成される。通信インターフェイス74は、検査結果を外部の装置に送信するために使用される。
【0085】
制御部68は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などのメモリとを含む。メモリには、制御および検査に関するプログラムのほか、検査に用いられる各種設定データを登録した検査データファイルが格納される。この検査データファイルには、ワーク1を撮影部30の視野に収めるのに必要なステージ40の移動量、およびワーク1の外観を検査して得た特徴量の適否を判定するための判定基準などが含まれる。
【0086】
制御部68は、これらのプログラムおよび設定データを用いて、撮影部30とワーク1との位置関係を定めて撮影部30に撮影を行なわせ、撮影画像を画像入力部60を介して取り込む。画像入力部60から入力される画像データは、白色および第1から第3の色相の各々の階調データの組み合わせにより色彩を表現するものである。制御部68は、入力された画像を用いて、ワーク1の外観検査を実行し、検査結果に基づいて、ワーク1が良品であるか不良品であるかを判定する。検査結果は表示部72に表示されるほか、通信インターフェイス74を介して図示しない外部機器に出力される。
【0087】
<F.画像検査装置における外観検査の原理>
次に、本実施の形態に係る画像検査装置100における外観検査の原理について説明する。
【0088】
図5は、光学部材20に含まれる1つの光学領域(たとえば第1の光学領域24aとする)と、ワーク1の表面との位置関係を模式的に示している。
【0089】
図5に示すように、ワーク1の表面の一要素(以下、表面要素とも称する)に対して、第1の光学領域24aから第1の色相光が入射角θ(表面要素の法線とのなす角に相当)で照射された場合、入射角θに等しい反射角の反射光が真上に置かれた撮影部30に入射して検出される。これにより、この表面要素は、基準面に対してθの角度を成して傾斜していることが分かる。
【0090】
図5において、第1の光学領域24aの半径をr1とし、基準面から第1の光学領域24aまでの高さをhとすると、ワーク1の表面要素の傾斜角θについて、次式のように近似することができる。
【0091】
cos2θ=h/(r1
2+h
2)
1/2 …(1)
なお、第1の光学領域24aの半径方向における幅wに応じて、第1の色相光の入射角はθ+Δθからθ−Δθまでの範囲を有している。そのため、この入射角の範囲に応じた範囲を有する反射光が撮影部30により検出される。よって、基準面に対して、θ+Δθからθ−Δθまでの範囲の傾斜角度を有する表面要素を検出することができる。
【0092】
また、
図2に示したように、第1の光学領域24aは円環状を有しているため、ワーク1が基準面の法線に対してどのような回転角をもっていても、第1の光学領域24aとワーク1との距離は一定となる。したがって、ワーク1の表面要素の回転角方向の配向性は消去されるので、基準面に対する傾斜角だけが検出されることになる。
【0093】
さらに、
図6に示すように、光学部材20を、同心円状に配置された第1から第3の光学領域24a〜24cで構成することによって、ワーク1の各表面要素には、第1から第3の色相光が互いに異なる入射角で照射される。したがって、撮影部30では、それぞれの入射角に対応する表面要素の群が撮影部30により検出されることになる。
【0094】
なお、第2の光学領域24bおよび第3の光学領域24cにおいても、
図5に示した第1の光学領域24aと同様に、各々の半径rおよび半径方向における幅w、およびステージ40からの高さhに応じて、検出できる表面要素の傾斜角度の範囲が決まる。第1から第3の光学領域24a〜24cは、少なくとも半径(図中のr1,r2,r3に相当)が互いに異なることから、検出できる傾斜角度の範囲も異なるものとなる。これにより、撮影されたカラー画像を用いて、ワーク1の各表面要素のどのような傾斜角を有しているか、すなわち、ワーク1の表面がどのような形状であるかを検出することができる。
【0095】
なお、
図6において、光軸Xを中心として形成された中心領域22からは照明部10が発する照明光(白色光)が光軸Xの方向、すなわちステージ40の法線方向に照射される。ワーク1の表面には、照明光が入射角θがほぼ90°で照射されるため、この照明光の反射光が撮影部30に入射して検出されることで、対応する一要素がステージ40に対してほぼ90°となる面、すなわち平坦に近い面であることを検出することができる。
【0096】
このように光学部材20に複数の光学領域を設けることによって、それぞれの光学領域からの光の入射角に対応した配向をもつ表面要素を検出することができる。したがって、光学領域の数をさらに増やすことで、ワーク1の表面状態をより詳細に検査することが可能となる。ただし、撮影部30において複数の光学領域に対応して複数の色相光を検出するためには、複数の光学領域の各々から出射される光がいずれも、撮影部30の撮影波長域に含まれていることが必要となる。
【0097】
<G.変形例>
以下、本実施の形態に係る画像検査装置100の変形例について説明する。
【0098】
(変形例1)
本実施の形態においては、照明部10が透光性を有していることで、撮影部30は照明部10越しにワーク1を撮影することができる。ただし、照明部10においては、導光板11の上面側に入射される、他の照明装置(たとえば、工場内の室内灯など)の光をも透過させて、ワーク1に照射させてしまう可能性がある。これにより、ワーク1の表面状態の検査精度を低下させることが懸念される。
【0099】
変形例1では、他の照明装置の光の侵入を抑制することが可能な照明装置の構成について説明する。
【0100】
図7は、変形例1に係る画像検査装置100に含まれる照明装置の横断面を示す模式図である。
【0101】
図7を参照して、本変形例に係る画像検査装置100は、
図1に示した画像検査装置100と比較して、遮光部材15をさらに備える点が異なる。
【0102】
遮光部材15は、照明部10における発光面10Aと反対側の面(上面)上に配置される。
図7の例では、遮光部材15は、導光板11の上面上に配置される。
【0103】
図8は、
図7に示した遮光部材15の構成を概略的に示す図である。
図8は、
図7のB方向から見た図である。
【0104】
図8を参照して、遮光部材15は、導光板11の形状に相似した形状を有する。すなわち、遮光部材15の形状は、上面側から見て四角形を有する。遮光部材15は、たとえば板状の形状を有しており、導光板11の上面を覆うことで、他の照明装置の光が導光板11の上面側に入射することを遮断することができる。これにより、他の照明装置の光がワーク1に照射されることを防ぐことができる。
【0105】
ただし、遮光部材15には、光軸Xを中心とした円形状を有する開口部15aが形成されている。開口部15aは、光軸Xから見た平面視において少なくとも一部分が中心領域22と重なる。このようにすると、ワーク1で反射された光を、遮光部材15によって遮断することなく、撮影部30に到達させることができる。なお、開口部15aの形状は円形状に限らず、四角形状であってもよい。
【0106】
本変形例において、遮光部材15は、反射部材で構成されていることが好ましい。反射部材は、発光部12が発する光をワーク1が位置する方向(底面側の方向)に向けて反射させるように構成されている。これによれば、発光部12が発する光を無駄なくワーク1に照射させることができるため、照明部10の発光効率を向上させることができる。
【0107】
(変形例2)
変形例2から7では、光学部材20の変形例について説明する。なお、変形例2から7に係る画像検査装置の構成は、光学部材20の構成を除いて、
図1に示した画像検査装置100と同じである。
【0108】
図9は、
図1に示した光学部材20の変形例の構成を概略的に示す図である。
図9は、
図1のA方向から見た図である。
【0109】
図9を参照して、本変形例に係る光学部材20は、第1から第4の光学領域24a〜24dと、遮光領域26とを有する。光学部材20には、撮影部30の光軸Xを中心とする中心領域22が形成されている。
図9の例では、
図2と同様、中心領域22は円形領域となっている。
【0110】
第1から第4の光学領域24a〜24dは、中心領域22を囲むように配置される。
図9の例では、第1から第4の光学領域24a〜24dは、光軸Xを中心とする1/4円弧形状を有しており、光軸Xを中心とした周方向に沿って配置される。すなわち、本変形例に係る光学部材20は、
図2に示した光学部材20と比較して、光学領域の数、光学領域の形状および光学領域の配置が異なる。
【0111】
ここで、照明部10の発光面10Aを、光軸Xを中心とする二次元の極座標平面と仮定すると、第1から第4の光学領域24a〜24dは、動径(光軸Xからの距離)の範囲が同じであるが、偏角(光軸Xを通る半直線からの角度)の範囲が互いに異なる領域である。一方、
図2に示した第1から第3の光学領域24a〜24cは、極座標平面において、偏角の範囲が同じであるが、動径の範囲が互いに異なる領域である。
【0112】
第1から第4の光学領域24a〜24dは、照明部10が発する照明光(白色光)を、互いに異なる色特性の色相光に変化させる。具体的には、第1の光学領域24aは、照明光を第1の色相光(青色光)に変化させる。第2の光学領域24bは、照明光を第2の色相光(緑色光)に変化させる。第3の光学領域24cは、照明光を第3の色相光(赤色光)に変化させる。第4の光学領域24dは、照明光を第4の色相光(黄色光)に変化させる。
【0113】
遮光領域26は、第1から第4の光学領域24a〜24dを囲むように配置され、照明光を遮光する。
【0114】
このような構成とすることにより、ワーク1には、中心領域22から出射される照明光(白色光)と、中心領域22を囲む第1から第4の光学領域24a〜24dからそれぞれ出射される第1から第4の色相光とで構成された光が照射されることになる。
【0115】
図10は、光学部材20に含まれる2つの光学領域(たとえば第1の光学領域24aおよび第3の光学領域24cとする)と、ワーク1の表面との位置関係を模式的に示している。
【0116】
本変形例では、照明光および第1から第4の色相光は、ワーク1の表面に向けて互いに異なる方向から出射される。具体的には、白色光は、光軸Xの方向から出射される。第2の色相光は、第1の色相光に対して、光軸Xを中心とした周方向に沿って略90°ずれた方向から出射される。第3の色相光は、第2の色相光に対して、光軸Xを中心とした周方向に沿って略90°ずれた方向から出射される。第4の色相光は、第3の色相光に対して、光軸Xを中心とした周方向に沿って略90°ずれた方向から出射される。第1の色相光は、第4の色相光に対して、光軸Xを中心とした周方向に沿って略90°ずれた方向から出射される。
図10には、第1の色相光と第3の色相光とが光軸1に対して線対称となる方向から照射される様子が示されている。
図10では、第1の色相光と第3の色相光とは、ワーク1の表面に対してほぼ等しい照射角度で照射されるが、照射する方向が異なる。
【0117】
このような照明下でのワーク1を撮影することにより、ワーク1の表面のうち、平坦に近い要素(すなわち、光軸Xに垂直に近い要素)が白色となり、法線が第1の色相光の出射方向に近付くように傾斜している要素が第1の色相(青色)となり、法線が第2の色相光の出射方向に近付くように傾斜している要素が第2の色相(緑色)となり、法線が第3の色相光の出射方向に近付くように傾斜している要素が第3の色相(赤色)となり、法線が第4の色相光の出射方向に近付くように傾斜している要素が第4の色相(黄色)となるようなカラー画像が生成される。したがって、撮影画像におけるワーク1の部分の色相パターンを観測することにより、ワーク1の表面の傾斜の状態を検出することができる。
【0118】
なお、
図2に示した光学部材20を用いた場合、第1から第3の色相光はワーク1の表面に対して互いに異なる角度で照射されるため、カラー画像に基づいて、ワーク1の各表面要素がどのような傾斜角度を有しているかを検出することができるが、その一方で、各表面要素がどの方向に傾斜しているかを検出することが困難である。これは、上述したように、
図2の光学部材20では、第1から第3の光学領域24a〜24cは、円環形状からなり、極座標平面において偏角の範囲が同じであるため、複数の表面要素の傾斜角度が互いに等しければ、各々がどの方向に傾斜していても、カラー画像上では同じ色相となることによる。したがって、
図2の光学部材20は、ワーク1の表面の傾斜角度の検出に好適であるといえる。
【0119】
これに対して、
図9に示した光学部材20を用いた場合には、第1から第4の光学領域24a〜24dは、極座標平面において偏角の範囲が異なるため、複数の表面要素の傾斜方向が互いに異なれば、カラー画像上では異なる色相となるため、各表面要素がどの方向に傾斜しているかを検出することができる。その反面、
図9の光学部材20では、第1から第4の光学領域24a〜24dの各々は、極座標平面上、動径が変化しても色相は同じであるため、複数の表面要素の傾斜方向が互いに等しければ、傾斜角度が異なっていても、カラー画像上では同じ色相となる。そのため、カラー画像に基づいて、各表面要素がどのような傾斜角度を有しているかを検出することは困難である。したがって、
図9の光学部材20は、ワーク1の表面の傾斜方向の検出に好適であるといえる。
【0120】
(変形例3)
図11は、
図1に示した光学部材20の変形例の構成を概略的に示す図である。
図11は、
図1のA方向から見た図である。
【0121】
図11を参照して、本変形例に係る光学部材20は、第1から第4の光学領域24a〜24dと、遮光領域26とを有する。光学部材20には、撮影部30の光軸Xを中心とする中心領域22が形成されている。
図11の例では、
図2と同様、中心領域22は円形領域となっている。
【0122】
第1から第4の光学領域24a〜24dは、中心領域22を囲むように配置される。第1から第4の光学領域24a〜24dは、照明部10が発する照明光(白色光)を、互いに異なる色特性の色相光に変化させる。
図11の例では、第1から第4の光学領域24a〜24dは、四角形に近い形状を有しており、光軸Xを中心とした周方向に沿って配置される。すなわち、本変形例に係る光学部材20は、
図9に示した光学部材20と比較して、光学領域の数および配置が同じであるが、光学領域の形状が異なる。
【0123】
したがって、本変形例では、上述した変形例2と同様に、照明光および第1から第4の色相光は、ワーク1の表面に向けて互いに異なる方向から出射される。このような照明下でのワーク1を撮影することにより、撮影されたカラー画像に基づいて、ワーク1の各表面要素がどの方向に傾斜しているかを検出することができる。
【0124】
なお、上述した変形例2および本変形例に係る光学部材20においては、光学領域の形状は、光軸Xを中心として周方向に配置される光学領域の数などに応じて多様な形状とすることができる。
【0125】
(変形例4)
図12は、
図1に示した光学部材20の変形例の構成を概略的に示す図である。
図12は、
図1のA方向から見た図である。
【0126】
図12を参照して、本変形例に係る光学部材20は、第1から第8の光学領域24a〜24hと、遮光領域26とを有する。光学部材20には、撮影部30の光軸Xを中心とする中心領域22が形成されている。
図12の例では、
図2と同様、中心領域22は円形領域となっている。
【0127】
第1から第8の光学領域24a〜24hは、中心領域22を囲むように配置される。第1から第8の光学領域24a〜24hは、光軸Xを中心とする1/4円弧形状を有しており、光軸Xを中心とした周方向に沿って配置される。本変形例に係る光学部材20は、
図9に示した光学部材20と比較して、第1から第4の光学領域24a〜24dの外周側に、第5から第8の光学領域24e〜24hがさらに配置されている点が異なる。
【0128】
ここで、照明部10の発光面10Aを、光軸Xを中心とする二次元の極座標平面と仮定すると、第1から第4の光学領域24a〜24dは、動径(光軸Xからの距離)の範囲が同じであるが、偏角(光軸Xを通る半直線からの角度)の範囲が互いに異なる。第5の光学領域24eは、第1の光学領域24aに対して、偏角の範囲が同じであるが、動径の範囲が異なる。第6の光学領域24fは、第2の光学領域24bに対して、偏角の範囲が同じであるが、動径の範囲が異なる。第7の光学領域24gは、第3の光学領域24cに対して、偏角の範囲が同じであるが、動径の範囲が異なる。第8の光学領域24hは、第4の光学領域24dに対して、偏角の範囲が同じであるが、動径の範囲が異なる。
【0129】
第1から第8の光学領域24a〜24hは、照明部10が発する照明光(白色光)を、互いに異なる色特性の色相光に変化させる。具体的には、第1の光学領域24aは、照明光を第1の色相光(青色光)に変化させる。第2の光学領域24bは、照明光を第2の色相光(緑色光)に変化させる。第3の光学領域24cは、照明光を第3の色相光(赤色光)に変化させる。第4の光学領域24dは、照明光を第4の色相光(黄色光)に変化させる。第5の光学領域24eは、照明光を第5の色相光(マゼンタ色光)に変化させる。第6の光学領域24fは、照明光を第6の色相光(ライトマゼンタ色光)に変化させる。第7の光学領域24gは、照明光を第7の色相光(ライトシアン色光)に変化させる。第8の光学領域24hは、照明光を第8の色相光(シアン色光)に変化させる。第1から第8の光学領域24a〜24hの各々は、たとえば、カラーフィルムなどのカラーフィルタを用いて形成することができる。
【0130】
遮光領域26は、第1から第8の光学領域24a〜24hを囲むように配置され、照明光を遮光する。
【0131】
このような構成とすることにより、ワーク1には、中心領域22から出射される照明光(白色光)と、中心領域22を囲む第1から第8の光学領域24a〜24hからそれぞれ出射される第1から第8の色相光とで構成された光が照射されることになる。
【0132】
本変形例では、照明光および第1から第4の色相光は、ワーク1の表面に向けて互いに異なる方向から出射される。第1から第4の色相光が出射される方向は、
図9に示した光学部材20における第1から第4の色相光が出射される方向と同じである。
【0133】
第5から第8の色相光は、第1から第4の色相光と同様に、ワーク1の表面に向けて互いに異なる方向から出射される。
【0134】
第5の色相光は、第1の色相光と同じ方向から出射される。ただし、第5の色相光と第1の色相光とは、ワーク1の表面に対して互いに異なる角度で照射される。第5の色相光は、第1の色相光に比べて、光軸Xに対する角度がより大きい角度で照射される。
【0135】
第6の色相光は、第2の色相光と同じ方向から出射される。ただし、第6の色相光と第2の色相光とは、ワーク1の表面に対して互いに異なる角度で照射される。第6の色相光は、第2の色相光に比べて、光軸Xに対する角度がより大きい角度で照射される。
【0136】
第7の色相光は、第3の色相光と同じ方向から出射される。ただし、第7の色相光と第3の色相光とは、ワーク1の表面に対して互いに異なる角度で照射される。第7の色相光は、第3の色相光に比べて、光軸Xに対する角度がより大きい角度で照射される。
【0137】
第8の色相光は、第4の色相光と同じ方向から出射される。ただし、第8の色相光と第4の色相光とは、ワーク1の表面に対して互いに異なる角度で照射される。第8の色相光は、第4の色相光に比べて、光軸Xに対する角度がより大きい角度で照射される。
【0138】
このような照明下でのワーク1を撮影することにより、ワーク1の表面のうち、平坦に近い要素(すなわち、光軸Xに垂直に近い要素)が白色となり、法線が第1および第5の色相光の出射方向に近付くように傾斜している要素が第1の色相(青色)または第5の色相(マゼンタ色)となり、法線が第2および第6の色相光の出射方向に近付くように傾斜している要素が第2の色相(緑色)または第6の色相(ライトマゼンタ色)となり、法線が第3および第7の色相光の出射方向に近付くように傾斜している要素が第3の色相(赤色)または第7の色相(ライトシアン色)となり、法線が第4および第8の色相光の出射方向に近付くように傾斜している要素が第4の色相(黄色)または第8の色相(シアン色)となるようなカラー画像が生成される。
【0139】
上記カラー画像において、第1の色相の表面要素と第5の色相の表面要素とでは、傾斜している方向が同じであるが、第5の色相の表面要素の方が傾斜がより急であることが分かる。同様に、第2の色相の表面要素と第6の色相の表面要素とでは、傾斜している方向が同じであるが、第6の色相の表面要素の方が傾斜がより急であることが分かる。このように、撮影画像におけるワーク1の部分の色相パターンを観測することにより、ワーク1の表面の傾斜の状態を検出することができる。
【0140】
図12に示した光学部材20を用いた場合、第1から第8の色相光は、照射の方向および角度の少なくとも一方が互いに異なる態様でワーク1の表面に照射される。そのため、カラー画像に基づいて、ワーク1の各表面要素がどのような傾斜角度を有しているかを検出することができるとともに、各表面要素がどの方向に傾斜しているかを検出することが可能となる。これは、
図9の光学部材20において、第1から第8の光学領域24a〜24hは、極座標平面において動径の範囲および偏角の範囲の少なくとも一方が互いに異なっていることによる。
【0141】
なお、
図12の光学部材20において、光軸Xを中心とする周方向に並べる光学領域の数および、径方向に並べる光学領域の数の少なくとも一方をさらに増やすことで、ワーク1の表面状態をより詳細に検査することが可能となる。ただし、撮影部30において複数の光学領域に対応して複数の色相光を検出するためには、複数の光学領域の各々から出射される光がいずれも、撮影部30の撮影波長域に含まれていることが必要となる。
【0142】
(変形例5)
図13は、
図1に示した光学部材20の変形例の構成を概略的に示す図である。
図13は、
図1のA方向から見た図である。
【0143】
図13を参照して、本変形例に係る光学部材20は、第1から第8の光学領域24a〜24hと、遮光領域26とを有する。光学部材20には、撮影部30の光軸Xを中心とする中心領域22が形成されている。
図13の例では、
図2と同様、中心領域22は四角形状の領域となっている。
【0144】
第1から第8の光学領域24a〜24hは、中心領域22を囲むように配置される。第1から第8の光学領域24a〜24hは、四角形状をしており、マトリクス状に配置される。したがって、照明部10の発光面10Aを、光軸Xを中心とする二次元のXY標平面と仮定すると、第1から第8の光学領域24a〜24hは、X座標の範囲およびY座標の範囲の少なくとも一方が互いに異なっている。このように、本変形例に係る光学部材20は、
図12に示した光学部材20と比較して、第1から第8の光学領域24a〜24hの形状および配置が異なる。
【0145】
第1から第8の光学領域24a〜24hは、照明部10が発する照明光(白色光)を、互いに異なる色特性の色相光に変化させる。第1から第8の光学領域24a〜24hの各々は、たとえば、カラーフィルムなどのカラーフィルタを用いて形成することができる。
【0146】
遮光領域26は、第1から第8の光学領域24a〜24hを囲むように配置され、照明光を遮光する。
【0147】
このような構成とすることにより、ワーク1には、中心領域22から出射される照明光(白色光)と、中心領域22を囲む第1から第8の光学領域24a〜24hからそれぞれ出射される第1から第8の色相光とで構成された光が照射されることになる。
【0148】
本変形例では、照明光および第1から第8の色相光は、照射の方向および角度の少なくとも一方が互いに異なる態様でワーク1の表面に照射される。したがって、
図12の光学部材20と同様に、カラー画像に基づいて、ワーク1の各表面要素がどのような傾斜角度を有しているかを検出することができるとともに、各表面要素がどの方向に傾斜しているかを検出することが可能となる。
【0149】
なお、
図13の光学部材20では、マトリクス状に配置される光学領域の数をさらに増やすことで、ワーク1の表面状態をより詳細に検査することが可能となる。ただし、撮影部30において複数の光学領域に対応して複数の色相光を検出するためには、複数の光学領域の各々から出射される光がいずれも、撮影部30の撮影波長域に含まれていることが必要となる。
【0150】
(変形例6)
図14は、
図1に示した光学部材20の変形例の構成を概略的に示す図である。
図14は、
図1のA方向から見た図である。
【0151】
図14を参照して、本変形例に係る光学部材20は、第1から第4の光学領域24a〜24dを有する。本変形例に係る光学部材20の基本的構成は、
図11に示した光学部材20と同じである。相違点は、第1から第4の光学領域24a〜24dのサイズが拡大され、遮光領域26を有していない点である。
【0152】
本変形例は、第1から第4の光学領域24a〜24d全体の形状が、照明部10の発光面10Aの形状と同じ四角形であることから、光学領域全体24a〜24dと発光面10Aとを同じ大きさとしたものである。これによると、発光面10Aから出射される光をすべてワーク1の表面状態の検査に用いることができるため、遮光領域26が不要となる。
【0153】
(変形例7)
図15は、
図1に示した光学部材20の変形例の構成を概略的に示す図である。
図15は、
図1のA方向から見た図である。
【0154】
図15を参照して、本変形例に係る光学部材20は、第1から第8の光学領域24a〜24hを有する。本変形例に係る光学部材20の基本的構成は、
図13に示した光学部材20と同じである。相違点は、第1から第8の光学領域24a〜24hのサイズが拡大され、遮光領域26を有していない点である。
【0155】
本変形例は、第1から第8の光学領域24a〜24h全体の形状が、照明部10の発光面10Aの形状と同じ四角形であることから、光学領域全体24a〜24hと発光面10Aとを同じ大きさとしたものである。これによると、発光面10Aから出射される光をすべてワーク1の表面状態の検査に用いることができるため、遮光領域26が不要となる。
【0156】
[付記]
以上のように、本実施形態および変形例は以下のような開示を含む。
【0157】
(構成1)
対象物(1)の表面状態を検出する画像検査装置(100)であって、
前記対象物を撮影する撮影部(30)と、
前記対象物と前記撮影部との間に配置され、前記対象物に対向して配置された発光面(10A)を有する、透光性の照明部(10)と、
前記照明部の前記発光面上に配置され、前記照明部が発する光を前記対象物に向けて透過させる光学部材(20)とを備え、
前記光学部材は、前記撮影部の光軸(X)を中心とする発光面の中心領域(22)を囲むように配置され、対象物に向けて出射する光の色特性が互いに異なるように構成された、複数の光学領域(24a〜24h)を含む、画像検査装置。
【0158】
(構成2)
前記複数の光学領域は、前記発光面上において、前記光軸を中心として同心円状に配置される、構成1に記載の画像検査装置。
【0159】
(構成3)
前記複数の光学領域は、前記発光面上において、前記光軸を中心とした周方向に沿って配置される、構成1に記載の画像検査装置。
【0160】
(構成4)
前記複数の光学領域は、前記発光面上において、マトリクス状に配置される、構成1に記載の画像検査装置。
【0161】
(構成5)
前記照明部は、白色光を発し、
前記光学部材は、前記複数の光学領域にそれぞれ配置され、透過する光の波長が互いに異なる複数のカラーフィルタを含む、構成1から構成4のいずれかに記載の画像検査装置。
【0162】
(構成6)
前記照明部は、励起光を発し、
前記光学部材は、前記複数の光学領域にそれぞれ配置され、前記励起光を互いに異なる波長の光に変換する複数の蛍光体を含む、構成1から構成4のいずれかに記載の画像検査装置。
【0163】
(構成7)
前記光学部材は、前記複数の光学領域を囲むように配置され、前記照明部が発する光を遮光する遮光領域(26)をさらに含む、構成1から構成6のいずれかに記載の画像検査装置。
【0164】
(構成8)
前記光学部材を前記撮影部側から見た平面視において、前記対象物は前記中心領域内に位置する、構成1から構成7のいずれかに記載の画像検査装置。
【0165】
(構成9)
前記複数の光学領域は、前記撮影部の撮影波長域内における互いに異なる色特性の光を前記対象物に向けて出射する、構成1から構成8のいずれかに記載の画像検査装置。
【0166】
(構成10)
前記照明部における前記発光面と反対側の面上に配置され、前記照明部の外部から入射される光を遮光する遮光部材(15)をさらに備え、
前記遮光部材は、前記撮影部の前記光軸から見た平面視において少なくとも一部分が前記中心領域と重なるように形成された開口部(15a)を有する、構成1から構成9のいずれかに記載の画像検査装置。
【0167】
(構成11)
前記遮光部材は、前記照明光を前記発光面に向けて反射させるように構成される、構成10に記載の画像検査装置。
【0168】
(構成12)
構成1から構成11のいずれかに記載の前記照明部および前記光学部材を含む照明装置。
【0169】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。