特許第6954237号(P6954237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954237
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20211018BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20211018BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20211018BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20211018BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H01L27/06 311
   H01L29/91 K
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-127563(P2018-127563)
(22)【出願日】2018年7月4日
(65)【公開番号】特開2020-9830(P2020-9830A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2020年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 峻丞
(72)【発明者】
【氏名】野村 貴志
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−211061(JP,A)
【文献】 特開2002−280556(JP,A)
【文献】 特開2011−007545(JP,A)
【文献】 特開2016−149502(JP,A)
【文献】 特開2013−065771(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/024595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 29/861
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板(10)と、
前記半導体基板に設けられた絶縁膜(12、14、60a、64、68)と、
前記絶縁膜上に設けられた温度検出素子(20)と、前記温度検出素子のアノード側(A)、又はカソード側(K)に設けられた容量素子(22,24、26、28、55)と、を備え、
アノード側、又はカソード側の前記容量素子の容量値の和は、前記温度検出素子の容量値(Cdi)よりも大きい半導体装置。
【請求項2】
前記温度検出素子のアノード側、又は、カソード側の一方側には、温度検出素子を構成する半導体と同層の半導体(22a、26a)と前記半導体基板との間で構成される第1容量素子(22,26)と、前記第1容量素子に接続される電極パッド(24a、28a)と前記半導体基板との間で構成される第2容量素子(24、28)と、が接続され
記温度検出素子のアノード側、又は、カソード側の一方側の前記第2容量素子の電極パッドは、他方側の第2容量素子の電極パッドよりも面積が大きい請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記温度検出素子のアノード側、又は、カソード側の一方側には、温度検出素子を構成する半導体と同層の半導体(22a、26a)と前記半導体基板との間で構成される第1容量素子(22,26)と、前記第1容量素子に接続される電極パッド(24a、28a)と前記半導体基板との間で構成される第2容量素子(24、28)と、が接続され、
記アノード側、もしくは、カソード側の少なくとも一方の前記第1容量素子の容量値と前記第2容量素子の容量値を加えた容量値は、前記温度検出素子と前記半導体基板との間に構成される容量値よりも大きい請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
少なくとも、前記アノード側には、前記温度検出素子を構成する半導体と同層の半導体で構成される第1容量素子と、前記容量素子に接続される電極パッドにより構成される第2容量素子とを備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板(10)と、
前記半導体基板に設けられた絶縁膜(12、14、60a、64、68)と、
前記絶縁膜上に設けられた温度検出素子(20)と、を備え、
記温度検出素子のアノード側(A)の下方の前記半導体基板の抵抗値、又はカソード側(K)の下方の前記半導体基板の抵抗値は、前記温度検出素子の下方の前記半導体基板の抵抗値より小さい半導体装置。
【請求項6】
半導体基板(10)と、
前記半導体基板に設けられた絶縁膜(12、14、60a、64、68)と、
前記絶縁膜上に設けられた温度検出素子(20)と、を備え、
記温度検出素子のアノード側(A)の下方のインピーダンス、又はカソード側(K)の下方のインピーダンスは、前記温度検出素子の下方のインピーダンスより小さい半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板に形成されたスイッチング素子と、半導体基板表面側にスイッチング素子から独立して設けられ、温度に依存する特性を有する温度センスダイオードを含む構成により、スイッチング素子に過電流が流れる等の異常時にスイッチング素子が発熱し、それを温度センサ例えば感温ダイオードで検出することによりスイッチング素子を保護する技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−149502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし半導体基板の裏面側からノイズが侵入した場合、温度センス(ダイオード)直下の容量とカップリングし、ダイオードのVfが変動し、それにより誤動作を起こす問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノイズによる誤動作を低減できる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1係る半導体装置(1)は、半導体基板(10)と、前記半導体基板に設けられた絶縁膜(12、14、60a、64、68)と、前記絶縁膜上に設けられた温度検出素子(20)と、前記温度検出素子のアノード側、又はカソード側に設けられた容量素子(22,24、26、28、55)と、を備え、前記容量素子の容量値(Ca、Cacap、Ck、Ckcap)の和は、前記温度検出素子の容量値(Cdi)よりも大きい。
【0006】
この構成により、温度検出素子20直下に比較して、アノード側又はカソード側の容量値を大きく構成することができる。すなわち、アノード側又はカソード側直下のインピーダンスを小さく構成することができる。これにより、アノード側又はカソード側に伝播したノイズはアノード側又はカソード側に設けられた容量素子に支配的に吸収される。これにより、温度検出素子20に入力されるノイズを低減することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の温度検出素子の概略構成を示す縦断面図
図2】第1実施形態に係る半導体装置の温度検出素子の概略的な等価回路を示す回路図
図3】Vf検出回路の概略構成を示すブロック図
図4】DPI試験装置の概略構成図
図5】Vf変化量の容量値依存性を示すグラフ
図6】第2実施形態に係る半導体装置の温度検出素子の概略構成を示す縦断面図
図7】温度検出素子のレイアウト例の概略構成を示す平面図
図8】第3実施形態に係る半導体装置の温度検出素子の概略構成を示す縦断面図
図9】第4実施形態に係る半導体装置の温度検出素子の概略構成を示す縦断面図
図10】第5実施形態に係る半導体装置の温度検出素子の概略構成を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の複数の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において前出と同様の要素については同様の符号を付し、その説明については省略する。また、以下の説明又は図面において、p型高濃度を「p+」、n型高濃度を「n+」、p型低濃度を「p−」、n型低濃度を「n−」で示す場合がある。例えば「p+領域」はp型高濃度領域を意味する。また、以下の説明において、インピーダンスを下げることには、容量値を大きくすること、及び、抵抗値を下げること、が含まれ、容量値を大きくすること、及び抵抗値を下げることはインピーダンスを下げることを意味する。
【0009】
(第1実施形態)
図1から図3に示すように、半導体装置1は、温度検出素子20及びスイッチング素子40を備えている。図1において、温度検出素子20の左側はアノード側A、右側はカソード側Kとする。半導体装置1にはVf測定装置42が接続されている。実施形態では、温度検出素子20は複数のpn接合ダイオードからなる感温ダイオードにより構成されている。Vfは温度検出素子20を構成するダイオード201から204の順電圧である。
【0010】
図3に示すように、半導体装置1は温度検出素子20及びスイッチング素子40を備え、Vf測定装置42に接続される。Vf測定装置42は、温度検出素子20のアノード及びカソードに接続されている。Vf測定装置42により、温度検出素子20のVfが測定される。
【0011】
Vf測定装置42はVf温度検出部42aと定電流供給部42bを備えている。Vf測定装置42は、温度検出素子20のアノード・カソード間に定電流供給部42bから供給される定電流を与えながら、温度検出素子20のアノード・カソード間の電圧すなわちVfを測定する。Vf値は、例えば、定電流供給部42bにより定電流500μAを温度検出素子20に供給し、温度検出素子20のアノード−カソード間の電圧を測定することにより求められる。
【0012】
温度検出素子20は例えば複数のダイオードにより構成されている。本実施形態においては4つのダイオード201〜204により構成された例を例示しているが、ダイオードの数はこれに限定されない。
【0013】
スイッチング素子40は例えばMOSトランジスタにより構成されている。スイッチング素子40が駆動により発熱すると半導体装置1の温度が上昇し、温度検出素子20の温度も上昇する。温度検出素子20の温度上昇によりVf特性が変動する。
【0014】
Vf測定装置42は温度の上昇により変動した温度検出素子20のVf値をモニターする。Vf検出回路42は、例えば図示しないVf−温度テーブルをあらかじめ備えており、計測したVfに応じたスイッチング素子40の温度を算出する。
【0015】
次に、算出したスイッチング素子40の温度に応じて、スイッチング素子40の制御を行う。例えば、温度検出素子20が所定の温度以上となった場合に動作クロックを遅延させて駆動させることにより発熱を抑制するなどの制御を実施する。
【0016】
ここで、半導体基板10の裏面等からノイズが入ると、温度検出素子20のVfが変動してしまい、Vf温度検出部42aにより誤ったVf値が測定されることにより、スイッチング素子40に対して誤った制御を実施してしまうことになる。本実施例によれば、ノイズによるVf変動が抑制されるため、上記のような課題を解決することができる。
【0017】
図1にアノード側A、及びカソード側Kを含む温度検出素子20の構成を、図2図1の等価回路を示す。図1に示すように、温度検出素子20は、半導体基板10上に設けられた素子分離絶縁膜12、その上に設けられた第1層間絶縁膜14、及び第2層間絶縁膜16を備える。素子分離絶縁膜12、その上に設けられた第1層間絶縁膜14、及び第2層間絶縁膜16は半導体基板10上に設けられた絶縁膜である。半導体基板10には、半導体基板表面10cに近い側から、低濃度不純物領域10a、高濃度不純物領域10bが形成されている。
【0018】
半導体基板10には例えばn型単結晶シリコン基板を用いることができる。半導体基板10には、低濃度不純物領域10a及び高濃度不純物領域10bが設けられている。低濃度不純物領域10a及び高濃度不純物領域10bは、例えば高エネルギーイオン注入による不純物導入と熱処理により形成される。低濃度不純物領域10a及び高濃度不純物領域10bはn型の不純物領域となっており、導入される不純物としては、例えばリン又はヒ素等を用いることができる。
【0019】
素子分離絶縁膜12は例えば半導体基板10に対して局所酸化法であるLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法を適用して形成されたシリコン酸化膜により構成されている。第1層間絶縁膜14及び第2層間絶縁膜16は例えばCVD(chemical vapor deposition)法を用いて成膜されており、例えばTEOS(Tetraethyl orthosilicate)をソースガスとして用いた熱分解法により形成され、成膜中にリン及びボロンが導入されたシリコン酸化膜により構成されている。半導体基板10の裏面には裏面電極18が設けられており、裏面電極18を介して基板電位が与えられている。裏面電極18からノイズが入力される場合がある。
【0020】
第1層間絶縁膜14上には温度検出素子20が形成されている。温度検出素子20は例えばそれぞれが一対のp+拡散層及びn+拡散層からなるダイオード201、202、203、204により構成されている。各ダイオード201〜204は接続電極205、206、207により直列に接続されている。
【0021】
ダイオード201〜204のそれぞれは、例えばシリコンに不純物が導入されて形成されたp+拡散層及びn+拡散層により構成されている。ダイオード201〜204を構成するシリコンは、例えばCVD法により成膜されたアモルファスシリコンに熱処理を加えて作成したポリシリコンにより構成されている。
【0022】
ダイオード201〜204のp+拡散層及びn+拡散層は、リソグラフィー法を用いて形成されたフォトレジストをマスクとして、例えばイオン注入法によってポリシリコン中に導入されたリン、ヒ素、ボロンなどの不純物により形成されている。p+拡散層には例えばボロンが、n+拡散層には例えばリン又はヒ素等が導入されている。
【0023】
p+拡散層とn+拡散層は隣接して形成されており、これによってpn接合が形成されることでダイオード201〜204が構成されている。図1においては、図の左側すなわちアノード側Aより、ダイオード201〜204の順で配列されている。各ダイオード201〜204においては、図の左側すなわちアノード側Aにp+拡散層、右側すなわちカソード側Kにn+拡散層が配置されている。
【0024】
なお、後述するアノード容量(第1容量素子)22及びカソード容量(第1容量素子)26を構成する容量電極22a及び26aは、ダイオード201〜204と同じ工程で成膜された同層のポリシリコンにより構成されている。ダイオード201〜204で構成される温度検出素子20と、裏面電極18との間には、ダイオード下容量30が形成されている。ダイオード下容量30の容量値を容量値Cdiとする。
【0025】
図1において、温度検出素子20の図における両側には、アノード容量22、アノードパッド容量(第2容量素子)24、カソード容量26、カソードパッド容量(第2容量素子)28が形成されている。アノード容量22、アノードパッド容量24、カソード容量26、カソードパッド容量28は容量素子である。
【0026】
温度検出素子20のアノード側Aに接続する第1配線208は、ダイオード201の図における左側に隣接して形成されており、ダイオード201と容量電極22aを接続している。温度検出素子20のカソード側Kに接続する第2配線209は、ダイオード204の右側に隣接して形成されており、ダイオード204と容量電極26aを接続している。
【0027】
容量電極22a及び容量電極26aは第1層間絶縁膜14上に形成されている。容量電極22a、26aは、ダイオード201〜204と同時に成膜されたポリシリコンにより形成されている。容量電極22a、26aは例えばリンを低濃度に導入することにより、n−不純物領域となっている。
【0028】
容量電極22aと裏面電極18との間には、アノード容量22が形成される。アノード容量22の容量値を容量値Cacapとする。容量電極26aと裏面電極18との間にはカソード容量26が形成される。カソード容量26の容量値を容量値Ckcapとする。
【0029】
アノードパッド(電極パッド)24a及びカソードパッド(電極パッド)28aは第2層間絶縁膜16上に形成されている。アノードパッド容量24及びカソードパッド容量28を構成するアノードパッド24a、カソードパッド28aは金属により構成されており、例えばアルミニウムにより形成されている。
【0030】
アノードパッド24a及びカソードパッド28aと半導体基板10との間には、半導体基板10側から、素子分離絶縁膜12、第1層間絶縁膜14、第2層間絶縁膜16が狭在している。アノードパッド24aとカソードパッド28aは例えば平板矩形状に形成されている。アノードパッド24a及びカソードパッド28aのうちの何れか一方の面積は、他方の面積よりも大きく形成されている。実施形態では、アノードパッド24aはカソードパッド28aよりも面積が大きく構成されている。
【0031】
アノードパッド24aと裏面電極18との間にはアノードパッド容量24が形成される。アノードパッド容量24の容量値を容量値Caとする。カソードパッド28aと裏面電極18との間にはカソードパッド容量28が形成される。カソードパッドキャパシタ28の容量値を容量値Ckとする。
【0032】
アノードパッド24aはカソードパッド28aよりも面積が大きく構成されているため、その容量値の関係は、容量値Ca>容量値Ck、となる。また、アノード側Aの容量値、すなわちアノード容量22とアノードパッド容量24の和は、温度検出素子20のダイオード下容量30よりも大きく設定される。この場合、下記(1)式が成立する。
容量値Ca+容量値Cacap>容量値Cdi ・・・(1)
【0033】
このように、温度検出素子20の容量値Cdiよりも、アノード容量22及びアノードパッド容量24の容量の和、すなわちアノード側Aの容量値である「容量値Ca+容量値Cacap」の方が大きい。裏面電極18にノイズが入力された場合、アノード側Aの容量値の方が温度検出素子20の容量値よりも大きいため、ノイズはアノード側Aの容量すなわちアノード容量22及びアノードパッド容量24に支配的に吸収される。これにより、温度検出素子20へのノイズの影響を減少させることができるため、ノイズによる温度検出素子20の誤動作を低減できる半導体装置1を提供することができる。
【0034】
また、本実施形態において、アノード側容量とカソード側容量の和が、温度検出素子20の容量よりも大きい場合、ノイズはアノード側容量及びカソード側容量すなわちアノード容量22、アノードパッド容量24、カソード容量26及びカソードパッド容量28に支配的に吸収される。これにより、温度検出素子20へのノイズの影響を減少させることができるため、ノイズによる温度検出素子20の誤動作を低減できる半導体装置1を提供することができる。
【0035】
図4は、DPI(Direct Power Injection method)試験装置46の概略構成を示すブロック図である。DPI試験とは、ICの各端子に容量性結合でノイズを直接注入し、温度検出素子20のVf変化量を測定する測定装置である。Vf変化量が大きいと温度検出素子20の誤動作を招来する可能性が高くなる。
【0036】
図4示すように、温度検出素子20のアノードにはバイアスティ501のRF/DC端子が接続されている。温度検出素子20のカソードにはバイアスティ502のRF/DC端子が接続されている。バイアスティ501、502には定電流源48が接続されており、これにより温度検出素子20に定電流が供給される。
【0037】
スイッチング素子40のドレイン端子にはノイズ源であるバイアスティ503が接続されている。バイアスティ501−502間には定電流源、及び電圧計が接続される。DPI試験装置46を用いて温度検出素子20のVf変化量を測定することができる。
【0038】
図5は、温度検出素子20の容量値Cdiと、アノード容量22の容量値Caとアノードパッド容量24の容量値Cacapとの和の容量比に対するVfの変化量をプロットしたものである。図5によれば、容量比が大きくなるに従い、Vfの変化量は小さくなる。
【0039】
さらに、容量比20.5には変曲点があり、これ以上の容量比の領域では、容量比の増加に対してVfの変化量の向上はあまり見られなくなる。すなわち、容量比20.5以上の容量比を設定しても、容量比を大きくしても、Vf変化量を小さくする効果は減少する。従って、温度検出素子20のアノード側A、もしくはカソード側Kに設ける容量比は容量比20.5程度までは容量比の増大に対するVf変化量向上の効果は大きいが、これ以上容量比を大きくしても容量比増大に対するVf変化量の向上は小さくなる。
【0040】
第1実施形態にかかる半導体装置1によれば以下の効果を奏する。
第1実施形態において、温度検出素子20のアノード側Aにおいて、容量電極22aにより構成されたアノード容量22と、アノードパッド24aにより構成されたアノードパッド容量24との容量値の和(容量値Ca+容量値Cacap)が、温度検出素子20と半導体基板10との間に構成されるダイオード下容量30の容量値(容量値Cdi)よりも大きくなるように構成されている。すなわち、温度検出素子20直下に比較して、アノード側A直下のインピーダンスが小さく構成されている。これにより、温度検出素子20に入力されるノイズを低減することができる。
【0041】
実施形態では、容量電極22aの面積は容量電極26aよりも大きく形成されているため容量値が大きい。すなわち、温度検出素子20直下に比較して、アノード側A直下のインピーダンスが小さく構成されている。また、アノードパッド24aの面積は、カソードパッド28aよりも大きく形成されている。これにより、温度検出素子20に入力されるノイズを低減することができる。
【0042】
また、この時、温度検出素子20の容量値Cdiと、アノード容量22の容量値Caとアノードパッド容量24の容量値Cacapとの和の容量比を20.5以上に設定してもVfの変化量を低減する効果は大きくは向上しない。すなわち、容量比20.5以上とすれば十分効果のある容量比とすることができ、さらにこれ以上容量比を大きくする必要はない。
【0043】
なお、第1実施形態では、アノード側Aの容量値が大きくなる例を例示したが、カソード側Kの容量値が大きくなるように設定してもよい。この場合は、温度検出素子20のカソード側Kにおいて、容量電極26aにより構成されたカソード容量26と、カソードパッド28aにより構成されたカソードパッド容量28との容量値の和(容量値Ck+容量値Ckcap)が、温度検出素子20と半導体基板10との間に構成されるダイオード下容量30の容量値(容量値Cdi)よりも大きくなるように構成されている。すなわち、温度検出素子20直下に比較して、カソード側K直下のインピーダンスが小さく構成されている。ここでは、容量値Ca<容量値Ckが成り立つ。また、下記(2)式が成立する。
容量値Ck+容量値Ckcap>容量値Cdi ・・・(2)
この場合でも同様の効果を奏する。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態にかかる半導体装置1について説明する。図6、及び図7に示すように、第2実施形態においては、アノード側Aのアノード容量55が、アクティブ領域60に形成されている。より詳細には、アノード容量55を構成する容量電極55aが、アクティブ領域60における酸化膜60a上に形成されている。
【0045】
アクティブ領域60における酸化膜60aは、例えばアクティブ領域60に形成されるMOSトランジスタのゲート酸化膜として形成されたものであり、非常に薄い膜厚を備えている。このため、容量電極55aと半導体基板10との間に薄い酸化膜60aを介してアノード容量55が形成されるため、容量値を大きくすることができる。すなわち、温度検出素子20直下に比較して、アノード側A直下のインピーダンスが小さく構成されている。
【0046】
第2実施形態に係る半導体装置1によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態に係る半導体装置1二よれば、アノード容量55の容量値を更に大きく設定することができるため、第1実施形態による効果を更に向上させることができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態にかかる半導体装置1について説明する。図8に示すように、第3実施形態においては、アノード側Aのアノードパッド容量62において、アノードパッド62aと素子分離絶縁膜12との間に形成される絶縁物として、高誘電体物質64を設けた。このため、アノードパッド62aと半導体基板10との間に誘電率が高い高誘電体物質64が狭在するため、アノードパッド容量62の容量値を大きくすることができる。
【0048】
第3実施形態に係る半導体装置1によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第3実施形態に係る半導体装置1によれば、アノードパッド容量62の容量値を更に大きく設定することができる。すなわち、温度検出素子20直下に比較して、アノード側A直下のインピーダンスが小さく構成されている。このため、第1実施形態による効果を更に向上させることができる。
【0049】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態にかかる半導体装置1について説明する。図9に示すように、第3実施形態においては、アノード側Aのアノードパッド容量66において、アノードパッド66aと素子分離絶縁膜12との間に形成される酸化膜の膜厚を小さくした。具体的には、アノードパッド66aを素子分離絶縁膜12上に配置するようにした。このため、アノードパッド66aと半導体基板10との間の距離が小さくなるため、アノードパッド容量66の容量値を大きくすることができる。すなわち、温度検出素子20直下に比較して、アノード側A直下のインピーダンスが小さく構成されている。
【0050】
第4実施形態に係る半導体装置1によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第4実施形態に係る半導体装置1によれば、アノードパッド容量66の容量値を更に大きく設定することができるため、第1実施形態による効果を更に向上させることができる。
【0051】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態にかかる半導体装置1について説明する。温度検出素子20のアノード側Aの容量電極22a下方、アノードパッド24a下方、及びカソード側Kの容量電極26a下方、及びカソードパッド28a下方の半導体基板10において、第1実施形態では低濃度不純物領域10aが設けられていたところ、第5実施形態においては図10に示すように、高濃度不純物領域70、72が形成されている点において異なる。
【0052】
実施形態では、高濃度不純物領域70、72は、高濃度n型領域として設けられている。従って、アノード側Aの容量電極22a下方及びアノードパッド24a下方、カソード側Kの容量電極26a下方及びカソードパッド28a下方の半導体基板10においては、裏面側から、高濃度不純物領域10b、高濃度不純物領域70、72が設けられている。
【0053】
また、第5実施形態に係る半導体装置1では、温度検出素子20下方は、低濃度不純物領域74が設けられている。実施形態では、低濃度不純物領域74は、低濃度n型領域として設けられている。
【0054】
上記構成から、アノード側Aの容量電極22a下方、アノードパッド24a下方、及びカソード側Kの容量電極26a下方、及びカソードパッド28a下方の半導体基板10においては、高濃度不純物領域70、72、及び高濃度不純物領域10bが設けられており、一方、温度検出素子20下方は、低濃度不純物領域74及び高濃度不純物領域10bが設けられている。
【0055】
従って、アノード側Aの容量電極22a下方、アノードパッド24a下方、及びカソード側Kの容量電極26a下方、及びカソードパッド28a下方の半導体基板10は、温度検出素子20下方の半導体基板10に比べて、電気抵抗が低く設定されている。すなわち、温度検出素子20直下に比較して、アノード側A及びカソード側K直下のインピーダンスが小さく構成されている。
【0056】
この構成によれば、半導体基板10の裏面から侵入したノイズは、抵抗が小さいほう、すなわちインピーダンスが小さいほうに伝播するため、温度検出素子20よりもアノード側A又はカソード側Kに多くが伝達する。従って、半導体基板10裏面からノイズが浸入した場合、ノイズは温度検出素子20へのノイズの伝達を抑制することができる。従って、第1実施形態による効果を更に向上させることができる。
【0057】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0058】
上記実施形態において、インピーダンスを下げる方法として、容量を大きくする、抵抗を下げる、という手法を用いた例を示したが、これはインピーダンスを下げる手段の一例として例示したものであり、趣旨を逸脱しない範囲でこれら手法に限定されない。
【符号の説明】
【0059】
1…半導体装置、10…半導体基板、10a、74…低濃度不純物領域、10b、70、72…高濃度不純物領域、20…温度検出素子、22、55…アノード容量、22a、26a、55a…ポリシリコン、24、62、66…アノードパッド容量、24a、62a、66a…アノードパッド、26…カソード容量、28…カソードパッド容量、28a…カソードパッド、30…ダイオード下容量、40…スイッチング素子、60…アクティブ領域、64…高誘電体物質、68…酸化膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10