(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
事前に設定されたパスに従って、拠点間のパケットを転送する転送ノードによって構成されたトランスポートネットワークに接続されエッジノードを構成するコンピュータに、
第2の拠点から第1の拠点にパケットを送信するための返信パスを選択するためのパス選択情報が設定されたフラッディング対象パケットを受信した場合、前記第1の拠点から前記第2の拠点間に事前に設定された複数のパス候補のうち、前記パス選択情報に基づいて、前記返信パスを選択し、送信元を示す情報と対応付けて学習する処理を実行させ、
前記学習する処理は、前記パス選択情報と、前記第1の拠点から前記第2の拠点間に事前に設定された複数のパス候補とを格納した、前記エッジノードに含まれるパス情報記憶部に、前記パス候補毎に保持された優先度情報を用いて、前記返信パスを選択する、プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
はじめに本発明の一実施形態の概要について図面を参照して説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。
【0016】
本発明は、その一実施形態において、
図1に示すように、トランスポートネットワーク上に配置され、事前に設定されたパスに従って、拠点間のパケットを転送する転送ノード103と、前記トランスポートネットワークに接続する第1の拠点から第2の拠点に送信されたフラッディング対象パケットに対し、前記第2の拠点から前記第1の拠点にパケットを送信するための返信パスを選択するためのパス選択情報を設定してから、事前に設定されたパスを介して、前記第2の拠点側に送信する第1のエッジノード101Aと、前記第1のエッジノードから受信したフラッディング対象パケットを用いて返信パスの学習を行う第2のエッジノード102B、102Cとを含む構成にて実現できる。
【0017】
より具体的には、第2のエッジノード102B、102Cは、前記フラッディング対象パケットを受信した場合、前記第1の拠点から前記第2の拠点間に事前に設定された複数のパス候補のうち、前記パス選択情報に基づいて返信パスを選択し、送信元を示す情報と対応付けて学習するパス学習部と、前記送信元を示す情報を宛先とするパケットを前記返信パスを介して送信するパケット転送部と、を備える。なお、前記パス候補は、パス選択情報と、前記第1の拠点から前記第2の拠点間に事前に設定された複数のパス候補と、を格納したパス情報記憶部を参照して選択する構成を取ることができる。
【0018】
例えば、
図2に示すように、トランスポートネットワーク上に、フラッディング対象パケットの転送用のアンノウン・パケット用パスが設定されているものとする。また、
図3に示すように、拠点Bから拠点Aへパケットを転送する複数のパス候補として、エッジノード102Bから直接エッジノード101Aに送信する学習パス候補1と、エッジノード102Bからエッジノード102Cを経由してエッジノード101Aに送信する学習パス候補2が設定されているものとする。ここで、「フラッディング対象パケット」には、ブロードキャスト、マルチキャスト対象のパケットのほか、アンノウン・パケットが含まれる。「アンノウン・パケット」とは宛先が不明のパケット(転送先を決定するためのテーブル等に、当該パケットの宛先が登録されていないパケット)をいうものとする。ブロードキャストパケットやマルチキャストパケットの転送パスとして、別途専用のパスを設けても良いが、すべての拠点に到達させる必要がある場合、アンノウン・パケット用パスを用いることができる。
【0019】
以上のような設定が完了している状態において、第1のエッジノード101Aがフラッディング対象パケットを受信すると次のような動作が行われる。
図4に示すように、まず、第1のエッジノード101Aは、フラッディング対象パケットに、パス選択情報として、第1のエッジノード101AのID等の学習用識別子を付加した上で、トランスポート網上のアンノウン・パケット用パスに送出する。
【0020】
アンノウン・パケット用パス上の転送ノード103は、フラッディング対象パケットを、アンノウン・パケット用パスに沿って転送する。その際、転送ノード103は、必要に応じて、フラッディング対象パケットのコピーを実施する。
【0021】
フラッディング対象パケットが、第2のエッジノード102B(102C)に到達すると、第2のエッジノード102B(102C)は、フラッディング対象パケットに付加されたパス選択情報として付加された第1のエッジノード101AのID(学習用識別子)を用いて、返信パスの学習を行う。
【0022】
具体的には、第2のエッジノード102B(102C)は、パス情報記憶部に格納された、フラッディング対象パケットに付加されたパス選択情報が一致する学習パス候補の中から1つのパスを選択し、前記送信元を示す情報と対応付けて学習する。例えば、
図5に示すように、拠点AのユーザであるユーザA1が拠点B宛の新規通信を開始したとする。第2のエッジノード102B(102C)は、第1のエッジノード101Aによって付加された送信元を示す情報(学習用識別子)に従い、学習パス候補1を選択し、ユーザA1のMACアドレスと対応付けて学習する。その後、例えば、
図6に示すように、拠点Aの別のユーザA2が拠点B宛の新規通信を開始したとする。第2のエッジノード102B(102C)は、第1のエッジノード101Aによって付加された送信元を示す情報(学習用識別子)に従い、学習パス候補2を選択し、ユーザA2のMACアドレスと対応付けて学習する。これにより、以降、第2のノードは、拠点B側からユーザA1、A2宛てのパケットを受信した場合、そのMACアドレスに応じて返信パスを選択する。
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、同一の拠点からのパケットについて異なる返信パスを設定することが可能となる。その理由は、パス候補として複数の返信パスを用意し、第2のエッジノード102B(102C)側で、適当なルールによる返信パスを選択可能としたことにある。また、前記した説明からも明らかなとおり、本発明では、フラッディング対象パケットについて必ずしも入り口側のエッジノードでコピーする必要がないため、エッジルータ間の無駄なパケットコピーや転送を抑止することも可能となっている。また、前記のとおり、同一の拠点からのパケットについて異なる返信パスを設定することが可能となっているため、トラヒックエンジニアリングにも活用することが可能となっている。
【0024】
[第1の実施形態]
続いて、本発明をMPLSでパケットを転送するトランスポートネットワークに適用した第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態の通信システムの構成を示す図である。
図7を参照すると、Ingressルータ101と、2台のEgressルータ102と、コアルータ110とを含んで構成されるMPLS網と、このMPLS網に接続された拠点A〜Cが示されている。なお、以下の説明では、レイヤ2でのデータ送信単位として用いられる「フレーム」を含めて、「パケット」と総称することとする。
【0025】
Ingressルータ101は、拠点Aのユーザ網から拠点B及び拠点Cに送出されるブローキャストパケット、アンノウン・パケット又はマルチキャストパケット(以降、「BUM(Broadcast、Unknown unicast、Multicast)パケット」ともいう。)を受信すると、所定のBUMパケット用ラベルを付けて、MPLS網側に送出する。なお、Ingressルータ101が、前述の説明における第1のエッジノードに相当する。
【0026】
コアルータ110は、BUMパケットを含む各種のパケットに付加されたラベルに基づいて、パケットの転送を行う。なお、コアルータ110が、前述の説明における転送ノードに相当する。
【0027】
Egressルータ102は、拠点Aのユーザ網から拠点B及び拠点Cに送出されたBUMパケットを受信すると、当該ラベル内に付加された送信元のルータを示す情報(識別子)に基づいて、複数の学習パス候補の中から返信パスを選択し、学習する。なお、Egressルータ102が、前述の説明における第2のエッジノードに相当する。
【0028】
続いて、上記Ingressルータ101の構成について図面を参照して説明する。
図8は、本発明の第1の実施形態のIngressルータ101の構成を示す図である。
図8を参照すると、物理インタフェース部1011と、ユーザ網パケット受信部1012と、ラベルテーブル1013と、MPLSパケット送信部1014と、パケット種別判別部1015と、ラベルスイッチ部1016と、ヘッダ作成部1017と、MAC情報テーブル1018と、BUMパケット処理部1019と、ノードID付加部1020と、BUM用転送テーブル1021とを備えた構成が示されている。
【0029】
物理インタフェース部1011は、受信したフレームをユーザ網パケット受信部1012に出力し、または、MPLSパケット送信部1014から受信したMPLSパケットをMPLS網側に送出する。
【0030】
ユーザ網パケット受信部1012は、物理インタフェース部1011より受信したパケットをパケット種別判別部1015に出力する。パケット種別判別部1015は、受信したパケットの宛先MACアドレスに基づいて、受信パケットがBUMパケットに該当するか否かを判定する。
【0031】
受信パケットがBUMパケットでない場合、受信パケットは、ラベルスイッチ部1016に出力される。ラベルスイッチ部1016は、ラベルテーブル1013を参照してパケットにラベルを付加し、ヘッダ作成部1017に出力する。なお、ラベルテーブル1013及びラベルスイッチ部1016の構成としては、特許文献1に紹介されている方法のほか、MPLS−TP等に標準化されているものを用いることができる。また、ラベルスイッチ部1016は、受信パケットの送信元MACアドレスと物理インタフェース部における受信インタフェース(受信ポート)とを用いてMAC情報テーブル1018を更新する。
【0032】
一方、パケット種別判別部1015にて、受信パケットがBUMパケットであると判定された場合、受信パケットは、BUMパケット処理部1019に出力される。BUMパケット処理部1019は、BUM用転送テーブル1021を参照して、パケットにBUMパケット用ラベルを付加し、BUM用転送テーブル1021に指定された出力インタフェース情報とともに、ノードID付与部1020に出力する。また、BUMパケット処理部1019は、BUM用転送テーブル1021に複数の出力ポートが設定されている場合、パケットの複製(コピー)を行う。さらに、BUMパケット処理部1019は、受信したBUMパケットの送信元MACアドレスと物理インタフェース部における受信インタフェース(受信ポート)とを用いてMAC情報テーブル1018を更新する。
【0033】
ここで、BUMパケット用ラベルについて説明する。
図9は、
図7のMPLS網上に設定されたBUM用パスの例を示す図である。
図9の例では、拠点Aからのパケットを拠点B、Cにブロードキャストする場合、Ingressルータ101でパケットの複製をせず、コアルータ110で複製して、Egressルータ102に転送するパス1300が設定されている。Ingressルータ101は、受信パケットに対して、このパス1300での転送を指示するラベルを付加することで、BUM用パスに沿った受信パケットの転送が実現される。また、このようにすることでIngressルータ101でのパケット複製を減らし、特許文献1と同様に、ネットワークの負荷低減やトラヒックの低減を達成することができる。なお、個々のルータのラベルテーブル1013やBUM用転送テーブル1021の設定は、例えば、
図9の下段に示す集中制御サーバ200より行うようにしてもよい。
【0034】
ノードID付与部1020は、BUMパケット処理部1019から受信したパケットに、Ingressルータを一意に特定できるノードIDを付加し、ヘッダ作成部1017に出力する。
【0035】
ヘッダ作成部1017は、ラベルスイッチ部1016又はノードID付与部1020から受け取ったパケットを基に、MPLS網に送信するパケットのヘッダを作成する。
図10の(a)は、ラベルスイッチ部1016から出力されたパケットを基に作成されるユニキャスト用のパケットを示している。
図10の(b)は、ノードID付与部1020から出力されたパケットを基に作成されるBUM用のパケットを示している。ユニキャスト用のパケットと、BUM用のパケットとの相違点は、2つのMLPSラベルのうちのアウターラベルが、BUMパケットであることを示すラベルになっている点と、インナーラベルにノードIDが格納されている点である。
【0036】
MPLSパケット送信部1014は、物理インタフェース部1011のBUM用転送テーブル1021に指定された出力インタフェースを介して、受信パケットに対してヘッダ作成部1017にて作成されたヘッダを付加したMPLSパケットを、MPLS網側に送出する。
【0037】
続いて、上記コアルータ110の構成について図面を参照して説明する。
図11は、本発明の第1の実施形態のコアルータの構成を示す図である。基本的な機能は、Ingressルータ101と同様であり、異なるのは、MACアドレスの学習が不要となるため、MAC情報テーブルが省略されている点と、ユーザ網パケット受信部がMPLSパケット受信部1012aとなっている点と、ノードID付加部1020が省略されている点である。その他のIngressルータ101と同一の符号を付した機能ブロックは、Ingressルータ101と同様であるため説明を省略する。
【0038】
なお、
図8、
図11の例では、パケット種別判別部1015を設けて、BUMパケットとそれ以外のパケットを分けて処理しているが、転送テーブルやラベルテーブル1013を参照して、ラベルを付加したり、付け替えるという基本的な動作は同じであるので、ラベルスイッチ部1016と、BUMパケット処理部1019を統合した構成も採用可能である。
【0039】
また、上記のIngressルータ101及びコアルータ110の基本的な機能は、特許文献1の入口ルータ及び中継ルータと同等である。従って、後記Egressルータ102の仕様をこれらに合わせることを条件に、Ingressルータ101及びコアルータ110に代えて、特許文献1の入口ルータ及び中継ルータを用いることもできる。
【0040】
続いて、上記Egressルータ102の構成について図面を参照して説明する。
図12は、本発明の第1の実施形態のEgressルータの構成を示す図である。
図12を参照すると、物理インタフェース部1011と、MPLSパケット受信部1032と、ユーザ網パケット送信部1034と、パケット種別判別部1035と、ユニキャストMAC学習部1036と、MACブリッジ部1037と、MAC情報テーブル1018と、アンノウンMAC学習部1039と、ノードID取外し部1040と、学習パス候補記憶部1041と、を備えた構成が示されている。
【0041】
物理インタフェース部1011は、受信したフレームをMPLSパケット受信部1032に出力し、または、ユーザ網パケット送信部1034から受信したパケットをユーザ網側に送出する。
【0042】
MPLSパケット受信部1032は、物理インタフェース部1011より受信したパケットをパケット種別判別部1035に出力する。パケット種別判別部1035は、受信したMPLSパケットの宛先MACアドレスやラベルに基づいて、受信パケットがBUMパケットに該当するか否かを判定する。
【0043】
受信パケットがBUMパケットでない場合、受信したMPLSパケットは、ユニキャストMAC学習部1036に出力される。ユニキャストMAC学習部1036は、
図10の(a)に示すヘッダを参照して、受信パケットの送信元のMACアドレスと、当該MPLSパケットの転送に使用されたパスとの対応関係を取得してMAC情報テーブル1018を更新する。ユニキャストMAC学習部1036は、学習が済んだパケットをMACブリッジ部1037に出力する。
【0044】
一方、パケット種別判別部1035にて、受信パケットがBUMパケットであると判定された場合、受信パケットは、アンノウンMAC学習部1039に出力される。アンノウンMAC学習部1039は、
図10の(b)に示すヘッダを参照して、学習パス候補記憶部1041に記憶されたエントリのうち、ノードIDが一致する学習パス候補の中から1つを選択し、受信パケットのMACアドレスと対応付けてMAC情報テーブル1018に登録する。アンノウンMAC学習部1039は、学習が済んだパケットをノードID取外し部1040に出力する。
【0045】
図13は、学習パス候補記憶部1041に保持される学習パス候補を説明するための図である。
図13の例では、1つのIngressノードに、2以上の送信パス(学習パス候補)が対応付けて登録されている。また、
図13は、それぞれのパスについて優先度が設定されている。本実施形態のアンノウンMAC学習部1039は、この優先度に基づいて、学習するパスを選択することができる。優先度は、例えば、パスのホップ数(例えば、ホップ数が小さいパスに高い優先度を与える)やパスを構成するリンクの通信路容量(帯域幅、通信量容量の平均値等が大きいパスに高い優先度を与える)等に基づいて決定してもよい。
【0046】
なお、
図13に示すようなパスは、例えば、
図14に示すように、集中制御サーバ200を用いて設定することができる。あるいは、制御用のメッセージを規定しておき、個々のルータに対して、ラベルテーブル1013に設定すべきエントリを個別に送信する方法も採用可能である。また、集中制御サーバ200が、学習パス候補記憶部1041に保持すべきエントリ(学習パス候補)を設定することとしてもよい。
【0047】
図15は、上記のような学習パス候補記憶部1041を用いて、拠点Aに位置する異なるユーザについて、異なるパスが選択された状態のMAC情報テーブル1018を表している。例えば、
図14の優先度情報を用いて選択するパスを変えることができ、
図15の例では、拠点AのMACアドレスA1を持つユーザへ送るパケットの送信経路として、送信パス=311を選択している。また、
図15の例では、拠点AのMACアドレスA2を持つユーザへ送るパケットの送信経路として、送信パス=331を選択している。このようにすることで、
図6に示すように、同一拠点へ送るパケットのマルチパス転送を実現することができる。
【0048】
ノードID取外し部1040は、アンノウンMAC学習部1039から受け取ったBUMパケットから、BUMパケットであることを示すラベル及びノードIDが格納されたラベルを外した後、L2ヘッダが付加されたユーザパケットをMACブリッジ部1037に出力する。
【0049】
MACブリッジ部1037は、MAC情報テーブル1018を参照して、受信したパケットの転送先を決定し、ユーザ網パケット送信部1034に、パケットの転送を指示する。
【0050】
ユーザ網パケット送信部1034は、物理インタフェース部1011のMACブリッジ部1037で指定された出力インタフェースを介して、パケットをユーザ網側に送出する。
【0051】
続いて、本実施形態の動作について図面を参照して詳細に説明する。
図16は、BUMパケットが送信された場合の動作を表したシーケンス図である。
図16を参照すると、まず、Ingressルータ101は、拠点AのユーザA1からパケットを受信すると(ステップS001)、受信パケットに、BUMパケットであることを示すラベルと、送信元を示す識別子(ノードID)を格納するラベルとを付加する(ステップS002)。さらに、Ingressルータ101は、BUM用パスを用いてMPLS網側に、受信したパケットを送出する(ステップS003)。
【0052】
前記パケットを受信したコアルータ110は、
図9に示すBUM用パスに従ってパケットを転送する(ステップS004)。また、その際に、コアルータ110は、必要に応じて受信パケットの複製(コピー)を実施する。
【0053】
Egressルータ102は、前記コアルータ110により転送されたパケットを受信すると、当該パケットから送信元を示す識別子を抽出する(ステップS005)。次に、Egressルータ102は、学習パス候補記憶部1041に保持された学習パス候補の中から、優先度情報を用いて、前記送信元を示す識別子が一致するエントリを選択し(ステップS006)、送信元MACアドレスと対応付けて学習する(ステップS007)。学習後、Egressルータ102は、受信したパケットからヘッダを取外し、宛先に送信する(ステップS008)。
【0054】
例えば、Egressルータ102は、学習パス候補記憶部1041に保持された学習パス候補の中から、優先度情報が「1」である送信パス311を選択し、学習する。この場合、以降、Egressルータ102は、MACアドレスで識別されるユーザA1を宛先とするパケットを受信した場合、送信パス311を使用してパケットの転送を行う。その後さらに、Egressルータ102が、学習パス候補記憶部1041に保持された学習パス候補の優先度情報を書き換えるようにしてもよい。このようにすることで、例えば、以降ユーザA2からパケットを受信したEgressルータ102に、優先度情報が「1」に書き換えられた送信パス331を選択させることが可能となる。結果として、同じ拠点Aに存在するユーザについてパスを使い分けることが可能となる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、BUMパケットの返信としてある拠点に送信するパスを、複数の経路に分散させることが可能となる。その理由は、Egressルータ102側に、学習パス候補記憶部1041を設け、同一の拠点に存在するユーザであっても異なる経路を選択できるように構成したことにある。
【0056】
[第2の実施形態]
続いて、上記第1の実施形態におけるパスの学習方法に変更を加えた第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態の学習パス候補記憶部1041の内容と、その内容を用いてパスの選択方法に変更を加えたものである。その他の構成及び動作は第1の実施形態と同様であるため、以下、相違点を中心に説明する。
【0057】
図17は、本発明の第2の実施形態のEgressルータの学習パス候補記憶部1041に保持されるパス情報と、そのパス選択動作を説明するための図である。
図17を参照すると、第2の実施形態のEgressルータの学習パス候補記憶部1041には、優先度情報に代えて重み情報が設定されている。
【0058】
第2の実施形態のEgressルータはこの重み情報を用いて、学習するパスの選択を行う。例えば、
図17に示したように、311、331、321という3つのパスが存在し、それぞれ重みとして1、2、3(大きい値の方が重みが大きい)が設定されているとする。
【0059】
例えば、この重みを用いて重み付きラウンドロビン方式でパスを選択する場合、
図17の右側に記したように、321、331、321、331、321、311といった順に、重みを考慮して均等にパスが選択される。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、学習候補のパスに重みを設定し、各パスにかかる負荷を分散させることが可能となる。なお、パスを選択する方法としては、ラウンドロビンに限られず、前述の重みを用いて乱数によりパスを選択する方法等の種々のアルゴリズムを用いることができる。
【0061】
[第3の実施形態]
続いて、上記第1の実施形態における優先度の更新方法に変更を加えた第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態のEgressルータに、優先度の更新機構を追加したものである。その他基本的な構成及び動作は第1の実施形態と同様であるため、以下、相違点を中心に説明する。
【0062】
図18は、本発明の第3の実施形態のEgressルータの構成を示す図である。
図12に示した第1の実施形態のEgressルータとの構成上の相違点は、優先度更新部1042が追加されている点である。
【0063】
本実施形態の優先度更新部1042は、MAC情報テーブル1018を参照して、同一拠点宛ての学習パス候補の利用状況に応じて、学習パス候補記憶部1041の優先度を更新する。例えば、
図14のように、拠点Aの学習候補として送信パス311、331があるとする。一方、MAC情報テーブル1018を参照すると、送信パス311の方が送信パス331よりも、多く利用されている場合、優先度更新部1042は、送信パス311の優先度を「1」から「2」に変更し、送信パス331の優先度を「2」から「1」に変更する。このようにすることで、送信パス311よりも送信パス331の優先度を高めることができる。この結果、以降、送信パス331の利用率が向上し、全体としての平準化が達成される。なお、送信パスの利用率としては、前述の学習パス候補の数を比較する方法のほか、当該パスに設定可能な通信の数(MAC情報テーブル上のエントリ数)、接続端末の数の上限に対し、実際に設定されている通信の数や接続端末の数の割合を用いてもよい。
【0064】
なお、上記の説明では、同一拠点宛ての学習パス候補の利用状況に基づいて、優先度を変更するものとして説明したが、その他の情報を用いて優先度を変更してもよいことはもちろんである。例えば、送信パス311の利用率が高くても、その通信路容量(帯域幅)が大きい場合や、通信路容量(帯域幅)に余裕がある(空きが多い)場合には、直ちに、優先度を変えなくてもよい。逆に、送信パス311の利用率が低くても、その通信路容量(帯域幅)が小さい場合や、通信路容量(帯域幅)に余裕がない(空きが少ない)場合には、送信パス331の優先度を上げた方が良い場合もある。また、通信路容量(帯域幅)のほか、経路上のルータの負荷状況等を考慮に入れて優先度を変更することも可能である。このように、優先度更新部1042に、学習パス候補の利用状況、通信路容量(帯域幅)や、通信路容量(帯域幅)の空き状況又は経路上のルータの負荷状況等の少なくとも1以上に基づいて、優先度を変更させることが可能である。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、より実際の状況に則して、学習するパスの選択を行わせることが可能となる。その理由は、パスの選択状況等に応じて動的に優先度を変更する構成を採用したことにある。
【0066】
[第4の実施形態]
続いて、上記第3の実施形態における優先度更新部が参照する情報に変更を加えた第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の基本的な構成及び動作は第3の実施形態と同様であるため、以下、相違点を中心に説明する。
【0067】
図19は、本発明の第4の実施形態のEgressルータの構成を示す図である。
図18に示した第3の実施形態のEgressルータとの相違点は、パスを構成するリンクの利用率を収集するリンク情報収集部として機能するパス管理部1043が追加され、優先度更新部1042aがパス管理部1043の情報に基づいて優先度を更新するよう構成されている点である。
【0068】
第4の実施形態のパス管理部1043は、物理インタフェース部1011を介して、パスを構成するリンクの利用率等を収集する。なお、リンクの使用率等の収集方法としては、ルーティングプロトコルを用いる方法や、集中制御コントローラを用いる方法等が挙げられる。前者のルーティングプロトコルとしては、OSPF−TE(Open Shortest Path First−Traffic Engineering)等が挙げられる。また、集中制御コントローラが存在する場合にはSNMP(Simple Network Management Protocol)やNetFlow(登録商標)などを用いて、集中制御コントローラに情報を収集させ、パス管理部1043が収集した情報を受け取る構成も採用できる。また、これらの方法を使用せず、パス管理部1043が、Egressルータ102bに接続するリンクの使用率を監視し、優先度更新部1042a側に提供する構成も採用可能である。
【0069】
本実施形態においても優先度更新部1042aは、パス管理部1043にて管理されている情報を参照して、同一拠点宛ての学習パス候補に含まれるリンクの利用率に応じ、学習パス候補記憶部1041の優先度を更新する。例えば、
図14のように、拠点Aの学習候補として送信パス311、331があるとする。一方、パス管理部1043を参照すると、送信パス311のリンクの使用率が送信パス331のリンクの使用率よりも高い場合、優先度更新部1042aは、送信パス311の優先度を「1」から「2」に変更し、送信パス331の優先度を「2」から「1」に変更する。このようにすることで、送信パス311よりも送信パス331の優先度を高めることができる。この結果、以降、送信パス331を構成するリンクの使用率が向上し、全体としての平準化が達成される。
【0070】
また、本実施形態においても、パスを構成するリンクの使用率以外の情報を参照して優先度を変更してもよい。例えば、送信パス311を構成するリンクの使用率が高くても、その通信路容量(帯域幅)が大きい場合や、通信路容量(帯域幅)に余裕がある場合には、直ちに、優先度を変えなくてもよい。逆に、送信パス311を構成するリンクの使用率が低くても、その通信路容量(帯域幅)が小さい場合や、通信路容量(帯域幅)に余裕がない場合には、送信パス331の優先度を上げた方が良い場合もある。また、本実施形態においても、通信路容量(帯域幅)のほか、経路上のルータの負荷状況等を考慮に入れて優先度を変更することも可能である。
【0071】
[第5の実施形態]
続いて、送信側から、学習するパス(返信パス)を指定できるようにした第5の実施形態について説明する。
図20は、本実施形態でのIngressルータの構成を示す図である。
図8に示した第1の実施形態のIngressルータ101との相違点は、ノードID付加部1020にてノードIDを付加した後に、受信IF(インタフェース)情報を付加する受信IF付加部1050が追加されている点である。
【0072】
図21は、受信IF付加部1050がMPLS網側に送信するパケットの構成例を示す図である。
図10(b)に示したBUM用のパケットとの相違点は、ノードIDフィールドとユーザデータとの間に、受信IF指定フィールドが設けられている点である。
【0073】
本実施形態のIngressルータ101aの受信IF付加部1050は、ノードID付加部1020から出力されたBUM用パケットに、予め定められたルールに基づいて決定した受信インタフェース(ポート番号等)を付加し、ヘッダ作成部1017に送る。なお、受信IF付加部1050が、受信インタフェースを決定する際に用いるルールとしては、例えば、ラウンドロビン法やIngressルータ101aのMAC情報テーブルにおいて使用率の少ないパスに対応するインタフェースを選択する方法等が挙げられる。
【0074】
図22は、本発明の第5の実施形態のEgressルータの構成を示す図である。
図12に示した第1の実施形態のEgressルータとの構成上の相違点は、学習パス候補記憶部1041aにおいて、優先度の代わりに受信インタフェースが設定されている点と、アンノウンMAC学習部1039aが上記した受信インタフェースに基づいて学習するパスを選択する点と、ノードID及び受信IF取外し部1040aにおいて、
図21のノードIDフィールドと受信IF指定フィールドを含むヘッダの削除が行われる点である。
【0075】
図23は、本実施形態のEgressルータの学習パス候補記憶部1041aに保持されるパス情報の例を示す図である。
図14等に示したパス情報との相違点は優先度の代わりに、受信インタフェースフィールドが設けられている点である。例えば、拠点Aから受信したパケットの受信IF指定フィールドにIF1が設定されている場合、本実施形態のアンノウンMAC学習部1039aは、送信パス311を選択することになる。拠点Aから受信したパケットの受信IF指定フィールドにIF2が設定されている場合、本実施形態のアンノウンMAC学習部1039aは、送信パス331を選択することになる。
である。
【0076】
例えば、
図24に示すように、拠点AからのユーザA1から、受信IF=IF1が指定されたBUMパケットを受信した場合、アンノウンMAC学習部1039aは、学習パス候補記憶部1041aにおいて、ノードIDが一致する学習パス候補の中から、受信インタフェース1に対応付けられているパス311を選択する。
【0077】
同様に、
図24に示すように、拠点Aの別のユーザA2から、受信IF=IF2が指定されたBUMパケットを受信した場合、アンノウンMAC学習部1039aは、受信インタフェース2に対応付けられているパス331を選択する。
【0078】
上記学習するパスの選択後の動作は第1の実施形態と同様であり、ノードID及び受信IF取外し部1040aが、BUMパケットからノードID及び受信インタフェースを含むヘッダを外した後、MACブリッジ部1037に出力する。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、送信側の主導で、学習するパスの選択を行うことが可能となる。
【0080】
なお、上記した第5の実施形態では、Egressルータ102cが、IngressノードID(ノードID)及び受信IFが一致するパスを選択するものとして説明したが、その他の情報を組み合わせてパスを選択するように変形することもできる。例えば、
図25に示すように、学習パス候補記憶部1041aに保持されているエントリに、受信インタフェースに加えて、優先度を設定してもよい。この場合、アンノウンMAC学習部1039aは、学習パス候補記憶部1041aにおいて、ノードID及び受信IFが一致する学習パス候補の中から、優先度の最も高いパスを選択する。
【0081】
また、Ingressノードにおいて指定された受信IFに対応するパスと、優先度に基づいて選択するパスとが競合することも考えられる。この場合には、Egressルータ102cに、いずれか一方を優先するような調整機能(アービトレーション機能)を設けることもできる。もちろん、第1〜第4の実施形態と同様に、その他の情報(パス利用率や通信路容量(絶対値、空き容量、リンク使用率)などを組み合わせて、学習するパスを選択するようにしてもよい。
【0082】
また、上記した第5の実施形態では、学習するパス(返信パス)を指定するための情報としてIngeressルータの受信インタフェースを用いるものとして説明したが、パス指定可能な情報であれば、その他の情報を用いてもよい。例えば、受信インタフェースの代わりに、IngeressルータとEgeressルータで事前に共有しているリンクIDや仮想ネットワーク情報を用いることもできる。
【0083】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術的思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、各図面に示したネットワーク構成、各要素の構成、メッセージの表現形態は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。
【0084】
また、上記した第1〜第5の実施形態では、ノードIDや受信インタフェースを格納するヘッダとしてMPLSラベルヘッダを用いるものとして説明したが、ノードIDや受信インタフェースを格納でき、かつ、コアノード(コアルータ)で転送可能なものであれば特に限定されない。例えば、MAC−in−MACや、その他カプセル化用のヘッダを用いてノードIDや受信インタフェースを格納することも可能である。
【0085】
例えば、
図8、
図11、
図12等に示した各種のルータの各部(処理手段)は、これらの装置を構成するコンピュータに、そのハードウェアを用いて、上記した各処理を実行させるコンピュータプログラムにより実現することもできる。この場合、
図8、
図11、
図12等に示した記憶部やテーブルは、コンピュータの補助記憶装置により実現できる。また、
図8、
図11、
図12のその他のブロックは、予め作成されたコンピュータプログラムに基づいて、上記した情報を利用した情報処理を行うCPU(Central processing Unit)により実現できる。
【0086】
最後に、本発明の好ましい形態(modes)を要約する。
[第1の形態]
(上記第1の視点による通信システム参照)
[第2の形態]
上記した通信システムの前記第1のエッジノードは、さらに、
前記パス選択情報と、前記第1の拠点から前記第2の拠点間に事前に設定された複数のパス候補とを格納したパス情報記憶部を含み、前記パス情報記憶部は、前記パス候補毎に優先度情報を保持し、前記パス学習部は、前記優先度情報を用いて、返信パスを選択する形態を取ることができる。
[第3の形態]
上記した通信システムは、さらに、前記パス候補毎の利用率又は通信路容量の空き状況に基づいて前記パス情報記憶部の優先度情報を書き換えるパス情報更新部を備える形態を取ることができる。
[第4の形態]
上記した通信システムは、さらに、前記パス候補を構成するリンクの利用率に基づいて前記パス情報記憶部の優先度情報を書き換えるパス情報更新部を備える形態を取ることができる。
[第5の形態]
上記した通信システムは、さらに、前記パス候補上に配置された機器から、前記パス候補を構成するリンクの利用率を収集するリンク情報収集部を備える形態を取ることができる。
[第6の形態]
上記した通信システムにおいて、前記優先度情報として、パスのホップ数が異なるパス候補のうち、ホップ数が小さいパスに対し高い優先度を設定することができる。
[第7の形態]
上記した通信システムの前記パス学習部は、前記パス選択情報に基づいて選択したパス候補のうち、所定のアルゴリズムを用いて返信パスを選択する形態を取ることができる。
[第8の形態]
上記した通信システムの前記第1のエッジノードは、前記パス選択情報として、前記第1のエッジノードの識別子と、受信インタフェース又は受信リンクとを設定し、
前記第2のエッジノードの前記パス情報記憶部の前記複数のパス候補には、前記第1のエッジノードの識別子と、受信インタフェース又は受信リンクとが設定されており、
前記第2のエッジノードの前記パス学習部は、前記パス選択情報と、前記第1のエッジノードの識別子と、前記受信インタフェース又は前記受信リンクとを用いて返信パスを選択し、前記送信元を示す情報と対応付けて学習する形態を取ることができる。
[第9の形態]
上記した通信システムにおいて、前記パス選択情報が、MPLSラベルに格納される形態を取ることができる。
[第10の形態]
(上記第2の視点によるエッジノード参照)
[第11の形態]
(上記第3の視点による通信方法参照)
[第12の形態]
(上記第4の視点によるプログラム参照)
なお、上記第10〜第12の形態は、第1の形態と同様に、第2〜第9の形態に展開することが可能である。
【0087】
なお、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。