特許第6954325号(P6954325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954325
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/052 20060101AFI20211018BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20211018BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20211018BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20211018BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20211018BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20211018BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   H01G9/052 500
   B22F1/00 J
   B22F3/10 E
   B22F3/10 F
   B22F3/11 A
   B22F7/08 E
   H01G4/33 102
   H01G4/38 B
【請求項の数】11
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2019-75483(P2019-75483)
(22)【出願日】2019年4月11日
(62)【分割の表示】特願2017-534189(P2017-534189)の分割
【原出願日】2016年8月1日
(65)【公開番号】特開2019-169715(P2019-169715A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2019年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2015-159581(P2015-159581)
(32)【優先日】2015年8月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】井上 徳之
(72)【発明者】
【氏名】荒川 建夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 健介
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 洋昌
(72)【発明者】
【氏名】神凉 康一
(72)【発明者】
【氏名】鶴 明大
(72)【発明者】
【氏名】森 治彦
【審査官】 鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−517717(JP,A)
【文献】 特開2013−243392(JP,A)
【文献】 特開平08−031696(JP,A)
【文献】 特開2001−185460(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/058552(WO,A1)
【文献】 特開2003−338433(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/062234(WO,A1)
【文献】 特開2003−213301(JP,A)
【文献】 特開2004−143477(JP,A)
【文献】 特表2008−507847(JP,A)
【文献】 特開2011−204728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/052
H01G 4/06
H01G 4/14
H01G 4/33
H01G 4/38
H05K 1/16
B22F 1/00
B22F 3/10
B22F 3/11
B22F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性多孔基材と、
前記導電性多孔基材上に位置する誘電体層と、
前記誘電体層上に位置する上部電極と、
第1外部電極と、
第2外部電極と
を有して成るコンデンサであって、
前記導電性多孔基材が、Niを主成分とする金属粉を焼結した金属焼結体および金属支持体を有して成り、
前記金属焼結体が、平均粒径の異なる少なくとも2種の金属粉の焼結体であって、前記金属支持体により支持されており、
前記誘電体層が、前記導電性多孔基材とは異なる起源の原子から形成されており、
前記第1外部電極が、前記上部電極に直接接するめっき層であり、
前記第2外部電極が、前記金属支持体に直接接するめっき層である
ことを特徴とする、コンデンサ。
【請求項2】
主成分である金属粉の平均粒径に対する、平均粒径が最も小さい金属粉の平均粒径の比が、1/3以下であることを特徴とする、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
導電性多孔基材と、
前記導電性多孔基材上に位置する誘電体層と、
前記誘電体層上に位置する上部電極と、
第1外部電極と、
第2外部電極と
を有して成るコンデンサであって、
前記導電性多孔基材が、Niを主成分とする金属粉を焼結した金属焼結体および金属支持体を有して成り、
前記金属焼結体が、融点の異なる少なくとも2種の金属粉の焼結体であって、前記金属支持体により支持されており、
前記誘電体層が、前記導電性多孔基材とは異なる起源の原子から形成されており、
前記第1外部電極が、前記上部電極に直接接するめっき層であり、
前記第2外部電極が、前記金属支持体に直接接するめっき層である
ことを特徴とする、コンデンサ。
【請求項4】
主成分である金属粉を構成する金属の融点に対して、少なくとも1種の金属粉を構成する金属の融点が、100℃以上低いことを特徴とする、請求項3に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記金属焼結体と前記金属支持体との界面近傍を構成する金属の融点が、金属焼結体の略中央部を構成する金属の融点よりも、100℃以上低いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記金属焼結体と前記金属支持体との界面近傍を構成する金属の融点が、金属支持体を構成する金属の融点よりも、100℃以上低いことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記金属焼結体が、Ni粉を焼結した金属焼結体であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記誘電体層が、原子層堆積法により形成されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記上部電極が、原子層堆積法により形成されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のコンデンサが実装されている基板。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載のコンデンサが、その導電性多孔基材の金属支持体が基板に密着するように配置されている基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高密度実装化に伴って、より高い静電容量を有するコンデンサが求められている。このようなコンデンサとして、例えば、特許文献1には、エッチング処理により多孔化された高比表面積アルミニウム箔を用いた電解コンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−270140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、コンデンサ用の高比表面積導電性基材を得る方法としては、金属箔をエッチング処理する方法が知られている。エッチング処理は、化学的な処理であり、例えば、電解液に処理すべき金属箔を浸し、電流を流すことにより行われる。従って、エッチング箔の細孔内には、化学処理に用いた薬品、例えば電解液に由来する不純物が残り得る。細孔内にこのような不純物が存在すると、コンデンサの耐電圧が低下するなど、不具合が生じ得る。
【0005】
本発明者らは、細孔内に不純物が少ない高比表面積導電性基材を得るべく検討した結果、金属焼結体をコンデンサの高比表面積導電性基材として用いることに思い至った。本発明者らは、さらに検討を進めた結果、単に金属粉を焼結させるだけでは、以下に示すような問題があり、優れた性能を有するコンデンサを提供することが難しいことに気付いた。
【0006】
(1)単に金属粉を焼結させただけでは、十分な静電容量と強度を両立できない。例えば、十分な強度を有する高比表面積導電性基材を得るためには、高温で処理し、焼結をより進行させる必要がある。しかしながら、金属粉の焼結が進行すると、金属焼結体の細孔が潰れ、十分な静電容量を得ることが困難になる。一方、十分な静電容量を得ることができる高比表面積導電性基材を得るためには、金属焼結体の細孔が保持されるように、低温で処理し、焼結をあまり進行させないようにする必要がある。しかしながら、焼結が十分でないと、十分な強度を確保することができない。
【0007】
(2)また、強度を確保するために、金属支持体上に金属焼結体を形成すると、金属粉の焼結の際の収縮により、金属支持体に反りが生じ得る。
【0008】
(3)さらに、金属支持体と金属焼結体を焼成した場合、金属支持体に焼結体が接合されにくく、十分に接合するためには、より高温での処理が必要となる。しかしながら、上記したように焼成を高温で行うと、高比表面積導電性基材の細孔が潰れ、十分な静電容量を得ることが困難になる。
【0009】
本発明の目的は、焼結体を高比表面積導電性基材として用いた、高い静電容量を有し、強度の高いコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題について鋭意検討した結果、複数種の金属粉を併用することにより、金属支持体を用いずに十分な静電容量と強度を両立でき、(1)の問題を解決できること、さらに、比較的低温での焼成が可能になることから(2)の問題を解決できることを見出した。さらに、金属支持体表面に粗化処理を行うことにより、あるいは、金属支持体表面に低融点金属を提供することにより、金属支持体と焼結体とを十分な強度で接合でき、(3)の問題を解決できることを見出した。
【0011】
従って、本発明は、
[1] 高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成るコンデンサであって、
前記高比表面積導電性基材全体が、金属焼結体により構成されていることを特徴とする、コンデンサ;
[2] 前記金属焼結体が、平均粒径の異なる少なくとも2種の金属粉の焼結体であることを特徴とする、上記[1]に記載のコンデンサ;
[3] 主成分である金属粉の平均粒径に対する、平均粒径が最も小さい金属粉の平均粒径の比が、1/3以下であることを特徴とする、上記[2]に記載のコンデンサ;
[4] 金属焼結体が、融点の異なる少なくとも2種の金属粉の焼結体であることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のコンデンサ;
[5] 主成分である金属粉を構成する金属の融点に対して、少なくとも1種の金属粉を構成する金属の融点が、100℃以上低いことを特徴とする、上記[4]に記載のコンデンサ;
[6] 高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成るコンデンサであって、
前記高比表面積導電性基材が、金属焼結体および金属支持体を有して成り、
金属焼結体が、ネッキングにより金属支持体に支持されており、
前記金属焼結体と前記金属支持体を連結するネッキングの平均径が、金属焼結体中の金属粉同士のネッキングの平均径よりも大きく、
前記誘電体層が、前記高比表面積導電性多孔基材とは異なる起源の原子から形成されていることを特徴とする、コンデンサ;
[7] 前記金属焼結体と前記金属支持体との界面近傍を構成する金属の融点が、金属焼結体の略中央部を構成する金属の融点よりも、100℃以上低いことを特徴とする、上記[6]に記載のコンデンサ;
[8] 前記金属焼結体と前記金属支持体との界面近傍を構成する金属の融点が、金属支持体を構成する金属の融点よりも、100℃以上低いことを特徴とする、上記[6]または[7]に記載のコンデンサ;
[9] 前記金属焼結体が、平均粒径の異なる少なくとも2種の金属粉の焼結体であることを特徴とする、上記[6]〜[8]のいずれかに記載のコンデンサ;
[10] 主成分である金属粉の平均粒径に対する、平均粒径が最も小さい金属粉の平均粒径の比が、1/3以下であることを特徴とする、上記[9]に記載のコンデンサ;
[11] 前記金属焼結体が、融点の異なる少なくとも2種の金属粉の焼結体であることを特徴とする、上記[6]〜[10]のいずれかに記載のコンデンサ;
[12] 主成分である金属粉を構成する金属の融点に対して、少なくとも1種の金属粉を構成する金属の融点が、100℃以上低いことを特徴とする、上記[11]に記載のコンデンサ;
[13] 前記金属焼結体を構成する金属が、Ni、Cu、W、Mo、Au、Ir、Ag、Rh、Ru、CoおよびFeから選択される1種またはそれ以上の金属であることを特徴とする、上記[1]〜[12]のいずれかに記載のコンデンサ;
[14] 前記誘電体層が、原子層堆積法により形成されていることを特徴とする、上記[1]〜[13]のいずれかに記載のコンデンサ;
[15] 前記上部電極が、原子層堆積法により形成されていることを特徴とする、上記[1]〜[14]のいずれかに記載のコンデンサ;
[16] 高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成るコンデンサであって、
一の前記高比表面積導電性基材上に、前記高比表面積導電性基材、前記誘電体層および前記上部電極から構成される第1、第2、第3および第4静電容量形成部を有し、
第1静電容量形成部および第2静電容量形成部が、高比表面積導電性基材の一方の主面上に存在し、
第3静電容量形成部および第4静電容量形成部が、高比表面積導電性基材の他方の主面上に存在し、
第1静電容量形成部および第3静電容量形成部が、高比表面積導電性基材を介して対向して位置し、
第2静電容量形成部および第4静電容量形成部が、高比表面積導電性基材を介して対向して位置することを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のコンデンサ;
[17] 高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成るコンデンサであって、
前記高比表面積導電性基材の一方の主面上に、前記高比表面積導電性基材、前記誘電体層および前記上部電極から構成される第1および第2静電容量形成部を有し、
高比表面積導電性基材の他方の主面上に、絶縁層を有することを特徴とする、上記[1]〜[15]のいずれかに記載のコンデンサ;
[18] 上記[1]〜[17]のいずれかに記載のコンデンサが実装されている基板;
[19] 上記[6]〜[17]のいずれかに記載のコンデンサが、その高比表面積導電性基材の金属支持体が基板に密着するように配置されている基板;
[20] 上記[16]または[17]に記載のコンデンサが、高比表面積導電性基材により複数連結されていることを特徴とする、コンデンサ集合基板;
[21] 高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成り、
前記高比表面積導電性基材全体が、金属焼結体により構成されていることを特徴とするコンデンサの製造方法であって、
少なくとも2種の金属粉の混合物を焼成して前記高比表面積導電性基材を作製することを含む、前記コンデンサの製造方法;
[22] 前記金属粉の混合物が、平均粒径が異なる少なくとも2種の金属粉を含むことを特徴とする、上記[21]に記載のコンデンサの製造方法;
[23] 前記金属粉の混合物の主成分となる金属粉の平均粒径に対する、平均粒径が最も小さい金属粉の平均粒径の比が、1/3以下であることを特徴とする、上記[21]〜[22]に記載のコンデンサの製造方法;
[24] 前記金属粉の混合物が、融点の異なる少なくとも2種の金属粉を含むことを特徴とする、上記[21]〜[23]のいずれかに記載のコンデンサの製造方法;
[25] 前記金属粉の混合物の主成分となる金属粉を構成する金属の融点に対して、少なくとも1種の金属粉を構成する金属の融点が、100℃以上低いことを特徴とする、上記[24]に記載のコンデンサの製造方法;
[26] 前記金属粉の混合物が、融点の異なる少なくとも2種の金属粉を含み、前記金属粉の混合物の主成分となる金属粉を構成する金属の融点に対して、少なくとも1種の金属粉を構成する金属の融点が100℃以上低く、前記主成分となる金属粉の平均粒径が、前記主成分となる金属粉を構成する金属の融点よりも100℃以上低い融点を有する前記金属粉の平均粒径の3倍以上であることを特徴とする、請上記[21]〜[25]のいずれかに記載のコンデンサの製造方法;
[27] 高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成り、
前記高比表面積導電性基材が、金属焼結体、および金属焼結体を支持する金属支持体を有するコンデンサの製造方法であって、
前記金属支持体の表面を粗化し、その上に金属粉または金属粉混合物を配置し、次いで、これらを焼成して前記高比表面積導電性基材を作製することを含む、前記コンデンサの製造方法;
[28] 粗化された金属支持体の表面における、金属支持体表面の面内方向の凹部間の平均距離が、その上に配置される金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉の平均粒径の1/30以上1/2以下であることを特徴とする、上記[27]に記載のコンデンサの製造方法;
[29] 高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成り、
前記高比表面積導電性基材が、金属焼結体、および金属焼結体を支持する金属支持体を有するコンデンサの製造方法であって、
前記金属支持体上に、第1金属粉を配置し、その上に第2金属粉または金属粉混合物を配置し、次いで、これらを焼成して前記高比表面積導電性基材を作製することを含む、前記コンデンサの製造方法;
[30] 前記第1金属粉の平均粒径が、前記第2金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉の平均粒径の1/30以上1/2以下であることを特徴とする、上記[29]に記載のコンデンサの製造方法;
[31] 前記第1金属粉を構成する金属の融点が、前記第2金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉を構成する金属の融点よりも100℃以上低いことを特徴とする、上記[29]または[30]に記載のコンデンサの製造方法;
[32] 高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成り、
前記高比表面積導電性基材が、金属焼結体、および金属焼結体を支持する金属支持体を有するコンデンサの製造方法であって、
前記金属支持体上に、低融点金属の層を形成し、その上に金属粉または金属粉混合物を配置し、次いで、これらを焼成して前記高比表面積導電性基材を作製することを含み、
前記低融点金属の融点が、金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉を構成する金属の融点よりも100℃以上低いことを特徴とする、前記コンデンサの製造方法;
[33] 金属粉混合物の主成分である金属粉の平均粒径に対する、金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の平均粒径の比が、1/3以下であることを特徴とする、上記[27]〜[32]のいずれかに記載のコンデンサの製造方法;
[34] 金属粉混合物の主成分である金属粉を構成する金属の融点に対して、金属粉混合物中の少なくとも1種の金属粉を構成する金属の融点が、100℃以上低いことを特徴とする、上記[27]〜[33]のいずれかに記載のコンデンサの製造方法;
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属焼結体をコンデンサの高比表面積導電性基材として用いるコンデンサにおいて、金属焼結体を、複数種の金属粉を併用して形成することにより、十分な静電容量と強度の両方を得ることが可能になる。また、高比表面積導電性基材を、金属支持体上に金属粉を配置し、これらを焼成して得る場合、金属支持体表面に粗化処理を行うことにより、あるいは、金属支持体表面に低融点金属を提供することにより、金属支持体と焼結体とを十分な強度で接合することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の1つの実施形態におけるコンデンサ1の概略断面図である。
図2図2は、図1に示すコンデンサ1の導電性金属基材の概略平面図である。
図3図3は、図1に示すコンデンサ1の高空隙率部の断面を模式的に示す拡大図である。
図4図4は、図1に示すコンデンサ1の低空隙率部の断面を模式的に示す拡大図である。
図5-1】図5(a)〜(c)は、図1に示すコンデンサ1の製造方法を説明するための概略断面図である。
図5-2】図5(d)〜(g)は、図1に示すコンデンサ1の製造方法を説明するための概略断面図である。
図6図6は、図5(f)に示す集合基板の概略斜視図である。
図7図7は、本発明の1つの実施形態におけるコンデンサ21の概略断面図である。
図8図8は、図7に示すコンデンサ21の導電性金属基材の概略平面図である。
図9図9は、図7に示すコンデンサ21の高空隙率部の断面を模式的に示す拡大図である。
図10図10(a)および(b)は、金属支持体と金属焼結体からなる導電性金属基材の概略断面図である。
図11-1】図11(a)〜(c)は、図7に示すコンデンサ21の製造方法を説明するための概略断面図である。
図11-2】図11(d)〜(f)は、図7に示すコンデンサ21の製造方法を説明するための概略断面図である。
図12図12は、本発明の金属焼結体のネッキングの平均径を説明するための、金属焼結体の断面を模式的に表す図である。
図13図13は、本発明の金属焼結体と金属支持体間のネッキングの平均径を説明するための、高比表面積導電性基材の断面を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のコンデンサについて、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、各実施形態のコンデンサおよび各構成要素の形状および配置等は、図示する例に限定されない。
【0015】
尚、本明細書において、「静電容量形成部」とは、コンデンサにおいて静電容量を得るための部分であって、導電体(電極)−誘電体−導電体(電極)の構造を有する。例えば、静電容量形成部は、高比表面積導電性基材−誘電体層−上部電極の構造であり得る。また、高比表面積導電性基材のうち、静電容量形成部を構成する部分を、「多孔部」とも称する。尚、多孔部とは、典型的には複数の細孔を有する構造部分を意味するが、これに限定されず、高比表面積を実現するための他の構造を有する部分も意味する。
【0016】
1.高比表面積導電性基材が、金属支持体を有しないコンデンサ
【0017】
本発明は、第1の要旨において、高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成るコンデンサであって、
前記高比表面積導電性基材全体が、金属焼結体により構成されていることを特徴とする、コンデンサを提供する。
【0018】
一の実施形態における、コンデンサ1の概略断面図を図1(ただし、簡単のために、高比表面積導電性基材の多孔構造は示していない)に示し、高比表面積導電性基材の概略平面図を図2に示す。また、高比表面積導電性基材の高空隙率部(多孔部)および低空隙率部の断面の拡大図を、それぞれ図3および図4に模式的に示す。
【0019】
図1図2図3および図4に示されるように、本実施形態のコンデンサ1は、略直方体形状を有している。コンデンサ1は、概略的には、4つの静電容量形成部2a、2a’、2bおよび2b’を有する。静電容量形成部2aは、高比表面積導電性基材3の高空隙率部5aと、高空隙率部5a上に形成された誘電体層6aと、誘電体層6a上に形成された上部電極7aとから構成される。静電容量形成部2a’は、静電容量形成部2aと高比表面積導電性基材3を介して対向するように、高空隙率部5a、誘電体層6a’および上部電極7a’から構成される。静電容量形成部2bは、高比表面積導電性基材3の高空隙率部5bと、高空隙率部5b上に形成された誘電体層6bと、誘電体層6b上に形成された上部電極7bとから構成される。静電容量形成部2b’は、静電容量形成部2bと高比表面積導電性基材3を介して対向するように、高空隙率部5b、誘電体層6b’および上部電極7b’から構成される。高比表面積導電性基材3は、相対的に空隙率が高い高空隙率部(多孔部ともいう)5a,5bと、相対的に空隙率が低い低空隙率部4を有する。高空隙率部5a,5bの周囲には、低空隙率部4が位置している。即ち、低空隙率部4は、高空隙率部5a,5bを囲んでいる。高空隙率部5a,5bは、多孔構造を有しており、即ち多孔部に相当する。静電容量形成部2aと静電容量形成部2a’は、高比表面積導電性基材3の高空隙率部5aにより電気的に接続されており、静電容量形成部2bと静電容量形成部2b’は、高比表面積導電性基材3の高空隙率部5bにより電気的に接続されている。また、静電容量形成部2aおよび2a’と静電容量形成部2bおよび2b’は、高比表面積導電性基材3の低空隙率部4により電気的に直列に接続されている。上部電極7a、7a’、7bおよび7b’上には、それぞれ、外部電極8a、8a’、8bおよび8b’が形成されている。低空隙率部4上には、絶縁部9が形成されている。絶縁部9は、静電容量形成部2aおよび2a’の上部電極および外部電極と、静電容量形成部2bおよび2b’の上部電極および外部電極とを電気的に離隔している。
【0020】
上記のような金属焼結体からなる高比表面積導電性基材を用いたコンデンサは、高比表面積導電性基材全体が、金属焼結体により構成されているので、基材の多くの部分を静電容量形成部として利用することができ、より高い静電容量密度を得ることができる。また、高比表面積導電性基材の多孔部の細孔が、基材を貫通するように形成されていることから、気相法、例えば原子層堆積法により誘電体層を形成する場合に、細孔の細部にまで効率良くガスが行き届き、処理時間を短縮することができる。さらに、支持体を有しないので、高比表面積導電性基材の反りを抑制することができる。
【0021】
上記のような高比表面積導電性基材と、高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、誘電体層上に位置する上部電極とを有して成り、上記高比表面積導電性基材全体が、金属焼結体により構成されていることを特徴とするコンデンサは、少なくとも2種の金属粉の混合物を焼成することを含む方法により得ることができる。例えば以下のようにして製造される。
【0022】
まず、金属焼結体からなる高比表面積導電性基材3を準備する(図5(a))。
【0023】
上記高比表面積導電性基材3(即ち、金属焼結体)は、1種または2種以上の金属粉を焼成することにより、得ることができる。
【0024】
好ましい態様において、金属焼結体は、少なくとも2種の金属粉を混合して焼成することにより得ることができる。このように2種以上の金属粉を混合して焼成することにより、支持体を有しないにもかかわらず、高い強度を有する高比表面積導電性基材を得ることができ、高静電容量密度および高強度を両立することができる。
【0025】
ここに、本明細書において「金属粉」とは、金属粒子の集合物であり、粒度分布が実質的に1つのピークを示すものを意味する。即ち、同じ構成元素、例えばNiから成る金属粉であっても、粒度分布が異なれば、異なる金属粉とみなす。また、金属粉の形状は、特に限定されず、球状、楕円状、針状、棒状、ワイヤー状等であってもよい。
【0026】
金属粉を構成する金属としては、導電性であれば特に限定されないが、例えば、Al、Ti、Ta、Nb、Ni、Cu、W、Mo、Au、Ir、Ag、Rh、Ru、Co、Fe、またはこれらの合金が挙げられる。
【0027】
金属粉を構成する金属は、好ましくは、Ni、Cu、W、Mo、Au、Ir、Ag、Rh、Ru、CoまたはFeである。このような金属を用いることにより、金属焼結体の等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)を低減することができる。また、これらの金属は、比抵抗が低く、高融点であることから、高温でのアニール処理が可能であり、高品質の誘電体膜を得ることができる。
【0028】
一の態様において、金属粉の混合物は、平均粒径が異なる少なくとも2種、例えば2種、3種または4種の金属粉を含む。平均粒径が異なる金属粉を用いることにより、より低温で焼成した場合であっても焼結体の強度が向上する。
【0029】
ここに、金属粉の「平均粒径」とは、平均粒径D50(体積基準の累積百分率50%相当粒径)を意味する。かかる平均粒径D50は、例えば動的光散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、UPA)により測定することができる。
【0030】
また、金属焼結体における平均粒径は、金属焼結体を集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)加工で薄片に加工し、この薄片試料の所定の領域(例えば、5μm×5μm)を、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて撮影し、得られた画像を画像解析することにより求めることができる。
【0031】
好ましい態様において、金属粉混合物のうち、主成分の金属粉の平均粒径に対する、金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の平均粒径の比は、1/3以下であり、好ましくは1/4以下であり、さらに好ましくは1/5以下である。このような平均粒径比とすることにより、高比表面積導電性基材として用いるのに十分な機械的強度を確保することができ、コンデンサの不良率を低減することができる。一方、主成分の金属粉の平均粒径に対する、金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の平均粒径の比は、好ましくは1/30以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/15以上である。このような平均粒径比とすることにより、空隙率をより大きくすることができ、より大きな静電容量を得ることができる。
【0032】
金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の含有量は、金属粉混合物全体に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり得る。金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の含有量を5質量%以上とすることにより、より金属焼結体の強度が高くなる。一方、金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の含有量は、好ましくは48質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下であり得る。金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の含有量を48質量%以下とすることにより、より空隙を保持することができ、より高い静電容量を得ることができる。
【0033】
別の態様において、金属粉の混合物は、融点が異なる少なくとも2種、例えば2種、3種または4種の金属粉を含む。融点が異なる金属粉を用いることにより、より低温で焼成した場合であっても焼結体の強度が向上する。
【0034】
好ましい態様において、金属粉混合物において、金属焼結体の主成分となる金属粉を構成する金属の融点に対して、少なくとも1種の金属粉を構成する金属の融点が、100℃以上低い、より好ましくは150℃以上低い、さらに好ましくは200℃以上低い。このように融点の異なる金属粉を用いることにより、より低温で焼成した場合であっても、低融点の金属粉により焼成が進行し、十分な空隙率と強度を備えた金属焼結体を得ることができる。
【0035】
金属焼結体の主成分となる金属粉と、低融点の金属粉の組み合わせは、特に限定されないが、例えば、NiとCuの組み合わせが挙げられる。
【0036】
次に、上記で得られた高比表面積導電性基材3に、溝部11を形成する(図5(b))。上記溝部は、低空隙率部4に対応し、その他の部分が高空隙率部5a,5b(以下、まとめて「高空隙率部5」ともいう)に対応する。
【0037】
本明細書において、「高空隙率部」とは、高比表面積導電性基材の低空隙率部よりも空隙率が高く、比表面積が大きい部分を意味し、本発明において静電容量形成部を構成する。高空隙率部5は、高比表面積導電性基材3の比表面積を大きくし、コンデンサ1の静電容量をより大きくする。
【0038】
高空隙率部5の空隙率は、比表面積を大きくして、コンデンサの静電容量をより大きくする観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上であり得る。また、機械的強度を確保する観点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
【0039】
本明細書において、「空隙率」とは、高比表面積導電性基材において空隙が占める割合を言う。当該空隙率は、下記のようにして測定することができる。尚、上記高比表面積導電性基材の空隙は、コンデンサを作製するプロセスにおいて、最終的に誘電体層および上部電極などで充填され得るが、上記「空隙率」は、このように充填された物質は考慮せず、充填された箇所も空隙とみなして算出する。
【0040】
まず、高比表面積導電性基材を、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)加工で薄片に加工する。この薄片試料の所定の領域(例えば、5μm×5μm)を、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて撮影する。得られた画像を画像解析することにより、高比表面積導電性基材の金属が存在する面積を求める。そして、下記等式から空隙率を計算することができる。
空隙率(%)=((測定面積−基材の金属が存在する面積)/測定面積)×100
【0041】
上記低空隙率部4は、上記のようにして得られた金属焼結体の一部の細孔を潰す(または埋める)ことにより、形成することができる。細孔を潰す(埋める)方法としては、特に限定されないが、例えば、レーザー照射等により金属を溶融させて細孔を潰す方法、あるいは、金型加工、プレス加工により圧縮して細孔を潰す方法が挙げられる。上記レーザーとしては、特に限定されないが、COレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、ならびにフェムト秒レーザー、ピコ秒レーザーおよびナノ秒レーザー等の全固体パルスレーザーが挙げられる。より精細に形状および空隙率を制御できることから、フェムト秒レーザー、ピコ秒レーザーおよびナノ秒レーザー等の全固体パルスレーザーが好ましい。
【0042】
低空隙率部4の空隙率は、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下である。また、低空隙率部は、空隙率が0%であってもよい。即ち、低空隙率部は、空隙を有していてもよいが、有していなくてもよい。低空隙率部の空隙率が低いほど、コンデンサの機械的強度が向上する。
【0043】
尚、低空隙率部は、本発明において必須の構成要素ではなく、存在しなくてもよい。例えば、図1において低空隙率部4が存在せず、低空隙率部4が存在する箇所が、高空隙率部であってもよい。ただし、この場合、低空隙率部4の代わりに存在する高空隙率部上には、上部電極、外部電極等は形成されず、絶縁部が形成される。
【0044】
本実施形態においては、高比表面積導電性基材3は、高空隙率部5と、その周囲に存在する低空隙率部4から成るが、本発明はこれに限定されない。即ち、高空隙率部および低空隙率部の存在位置、設置数、大きさ、形状、両者の比率等は、特に限定されない。例えば、高比表面積導電性基材は、高空隙率部のみからなってもよい。また、高空隙率部と低空隙率部の比率を調整することにより、コンデンサの静電容量を制御することができる。
【0045】
上記高空隙率部5の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば5μm以上、好ましくは20μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは50μm以下であってもよい。尚、高空隙率部の厚みとは、細孔がすべて埋まっていると仮定した場合の高空隙率部の厚みを意味する。
【0046】
次に、低空隙率部4上(溝11内)に、樹脂を注入し、絶縁部9を形成する(図5(c))。絶縁部9は、低空隙率部4内部の空隙を埋めるようにして形成される。このように内部の空隙を埋めることにより、後の誘電体層および上部電極が、低空隙率部上に形成されることを防止することができる。従って、絶縁部9は、隣接する静電容量形成部の上部電極間および外部電極間を電気的に離隔するように機能する。
【0047】
絶縁部9を形成する材料は、絶縁性であれば特に限定されないが、後に原子層堆積法を利用する場合、耐熱性を有する樹脂が好ましい。絶縁部9を形成する絶縁材料としては、各種ガラス材料、セラミック材料、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂が好ましい。
【0048】
絶縁部9は、上記絶縁材料を塗布することにより形成される。絶縁材料の塗布方法としては、エアー式ディスペンサー、ジェットディスペンサー、スクリーン印刷、静電塗布、インクジェット、フォトリソグラフィー等が挙げられる。
【0049】
尚、本発明のコンデンサにおいて、絶縁部9は必須の要素ではなく、存在しなくてもよい。
【0050】
次に、高空隙率部5上に、それぞれ、誘電体層6a,6a’,6b,6b’(以下、まとめて「誘電体層6ともいう」)を形成する(図5(d))。
【0051】
上記誘電体層は、好ましくは、気相法、例えば真空蒸着法、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法、パルスレーザー堆積法(PLD:Pulsed Laser Deposition)等または超臨界流体を用いる方法により形成される。高空隙率部の細孔の細部にまでより均質で緻密な膜を形成できることから、ALD法がより好ましい。
【0052】
上記誘電体層6を形成する材料は、絶縁性であれば特に限定されないが、好ましくは、AlO(例えば、Al)、SiO(例えば、SiO)、AlTiO、SiTiO、HfO、TaO、ZrO、HfSiO、ZrSiO、TiZrO、TiZrWO、TiO、SrTiO、PbTiO、BaTiO、BaSrTiO、BaCaTiO、SiAlO等の金属酸化物;AlN、SiN、AlScN等の金属窒化物;またはAlO、SiO、HfSiO、SiC等の金属酸窒化物が挙げられ、AlO、SiO、SiO、HfSiOが好ましい。なお、上記の式は、単に材料の構成を表現するものであり、組成を限定するものではない。即ち、OおよびNに付されたx、yおよびzは0より大きい任意の値であってもよく、金属元素を含む各元素の存在比率は任意である。また、誘電体層が異なる複数の層からなる層状化合物であってもよい。
【0053】
誘電体層の厚みは、特に限定されないが、例えば3nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。誘電体層の厚みを3nm以上とすることにより、絶縁性を高めることができ、漏れ電流を小さくすることが可能になる。また、誘電体層の厚みを100nm以下とすることにより、より大きな静電容量を得ることが可能になる。誘電体層6a、6bは絶縁部9上に形成されていてもよい。
【0054】
次に、誘電体層6a,6a’,6b,6b’上に、それぞれ、上部電極7a,7a’,7b,7b’(以下、まとめて「上部電極7」ともいう)を形成する(図5(e))。
【0055】
上部電極は、ALD法により形成してもよい。ALD法を用いることにより、コンデンサの静電容量をより大きくすることができる。別法として、誘電体層を被覆し、基材の細孔を実質的に埋めることのできる、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、めっき、バイアススパッタ、Sol−Gel法、導電性高分子充填などの方法で、上部電極を形成してもよい。好ましくは、誘電体層上にALD法で導電性膜を形成し、その上から他の手法により、導電性材料、好ましくはより電気抵抗の小さな物質で細孔を充填して上部電極を形成してもよい。このような構成とすることにより、効率的により高い静電容量密度および低い等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)を得ることができる。
【0056】
上記上部電極7を構成する材料は、導電性であれば特に限定されないが、Ni、Cu、Al、W、Ti、Ag、Au、Pt、Zn、Sn、Pb、Fe、Cr、Mo、Ru、Pd、Taおよびそれらの合金、例えばCuNi、AuNi、AuSn、ならびにTiN、TiAlN、TiON、TiAlON、TaN等の金属窒化物、金属酸窒化物、導電性高分子(例えば、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))、ポリピロール、ポリアニリン)などが挙げられ、TiN、TiONが好ましい。
【0057】
上部電極の厚みは、特に限定されないが、例えば3nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。上部電極の厚みを3nm以上とすることにより、上部電極自体の抵抗を小さくすることができる。
【0058】
尚、上部電極を形成後、上部電極がコンデンサ電極としての十分な導電性を有していない場合には、スパッタ、蒸着、めっき等の方法で、上部電極の表面に追加でAl、Cu、Ni等からなる引き出し電極層を形成してもよい。
【0059】
また、上部電極層7a、7bおよび引き出し電極層は、絶縁部9上に形成されない方法で形成するのが好ましい。例えば、上部電極層7a、7bおよび引き出し電極層が絶縁部9上に形成されないように、予め絶縁部9上にマスクを形成し、上部電極層7a、7bおよび引き出し電極層を形成し、その後、マスクならびにマスク上の上部電極層7a、7bおよび引き出し電極層を除去してもよい。上部電極層または引き出し電極層が絶縁部9上に形成された場合には、例えば、レーザー、グラインドにより、上部電極層および引き出し電極層を除去することができる。別法として、薬液によるエッチング処理により、上部電極層および引き出し電極層を除去することができる。
【0060】
次に、上部電極7a,7a’,7b,7b’上に、それぞれ、外部電極8a,8a’,8b,8b’(以下、まとめて「外部電極8」ともいう)を形成する(図5(f))。
【0061】
外部電極8の形成方法は、特に限定されず、例えばCVD法、電解めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタ、導電性ペーストの焼き付け等を用いることができ、電解めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタ等が好ましい。
【0062】
上記外部電極8を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、Au、Pb、Pd、Ag、Sn、Ni、Cu等の金属および合金、ならびに導電性高分子などが挙げられる。
【0063】
尚、上記外部電極8は、必須の要素ではなく、存在しなくてもよい。この場合、上部電極7が外部電極としても機能する。つまり、上部電極7aおよび上部電極7bが一対の電極として機能してもよい。この場合、上部電極7aがアノードとして機能し、上部電極7bがカソードとして機能してもよい。あるいは、上部電極7aがカソードとして機能し、上部電極7bがアノードとして機能してもよい。
【0064】
このようにして得られる基板は、本実施形態のコンデンサ1が、高比表面積導電性基材により複数連結されて、マトリックス状に配置されたコンデンサ集合基板12となる(図6)。
【0065】
従って、本発明は、本発明のコンデンサが、高比表面積導電性基材により複数連結されていることを特徴とする、コンデンサ集合基板をも提供する。
【0066】
次に、得られたコンデンサ集合基板12を、絶縁部9の中心部をフルカットすることにより、各部品に個片化する(図5(g))。
【0067】
上記のカットは、各種レーザー装置、ダイサー、各種刃物、金型を用いて行うことができ、レーザー装置、特にファイバーレーザー装置、ナノ秒レーザー装置を用いることが好ましい。
【0068】
このようにして得られたコンデンサ1は、
高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成るコンデンサであって、
一の高比表面積導電性基材上に、高比表面積導電性基材、誘電体層および上部電極から構成される第1、第2、第3および第4静電容量形成部を有し、
第1静電容量形成部および第2静電容量形成部が、高比表面積導電性基材の一方の主面上に存在し、
第3静電容量形成部および第4静電容量形成部が、高比表面積導電性基材の他方の主面上に存在し、
第1静電容量形成部および第3静電容量形成部が、高比表面積導電性基材を介して対向して位置し、
第2静電容量形成部および第4静電容量形成部が、高比表面積導電性基材を介して対向して位置することを特徴とする。
【0069】
以上、本実施形態のコンデンサ1について説明したが、本発明のコンデンサは、種々の改変が可能である。
【0070】
例えば、本実施形態において、コンデンサは略直方体形状であるが、本発明はこれに限定されない。本発明のコンデンサは、任意の形状とすることができ、例えば、平面形状が円状、楕円状、また角が丸い四角形等であってもよい。
【0071】
また、本実施形態においては、高比表面積導電性基材の両主面側に静電容量形成部を有するが、一方のみに静電容量形成部を有していてもよい。即ち、図1の下面側の静電容量形成部2a’および2b’が存在せずに、代わりに絶縁部9が存在してもよい。また、四つの外部電極8a、8a’、8b、8b’のうち、8aまたは8a’のいずれか一方が存在せずに、代わりに絶縁部9が存在してもよく、8bまたは8b’のいずれか一方が存在せずに、代わりに絶縁部9が存在してもよい。
【0072】
即ち、上記のようなコンデンサは、高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成るコンデンサであって、
高比表面積導電性基材の一方の主面上に、高比表面積導電性基材、誘電体層および上部電極から構成される第1および第2静電容量形成部を有し、
高比表面積導電性基材の他方の主面上に、絶縁層を有する。
【0073】
さらに、各層の間に、層間の密着性を高める為の層、または、各層間の成分の拡散を防止するためのバッファー層等を有していてもよい。また、コンデンサの側面等に、保護層を有していてもよい。
【0074】
2.高比表面積導電性基材が、金属支持体とこれに支持された金属焼結体を有するコンデンサ
【0075】
本発明は、第2の要旨において、高比表面積導電性基材と、
高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、
誘電体層上に位置する上部電極と
を有して成るコンデンサであって、
高比表面積導電性基材が、金属焼結体および金属支持体を有して成り、
金属焼結体が、金属支持体により支持されていることを特徴とする、コンデンサを提供する。
【0076】
一の実施形態における、コンデンサ21の概略断面図を図7(ただし、簡単のために、空隙は示していない)に示し、高比表面積導電性基材の概略平面図を図8に示す。また、高比表面積導電性基材の高空隙率部の断面の拡大図を、図9に模式的に示す。
【0077】
図7図8および図9に示されるように、本実施形態のコンデンサ21は、略直方体形状を有しており、概略的には、高比表面積導電性基材22と、高比表面積導電性基材22上に形成された誘電体層23と、誘電体層23上に形成された上部電極24とを有して成る。高比表面積導電性基材22は、一方の主面側に相対的に空隙率が高い高空隙率部25と、相対的に空隙率が低い低空隙率部26を有する。高空隙率部25は、高比表面積導電性基材22の第1主面の中央部に位置し、その周囲には、低空隙率部26が位置している。即ち、低空隙率部26は、高空隙率部25を囲んでいる。高空隙率部25は、多孔構造を有している。また、高比表面積導電性基材22は、他方の主面(第2主面)側に金属支持体27を有する。即ち、高空隙率部25および低空隙率部26は高比表面積導電性基材22の第1主面を構成し、支持体27は高比表面積導電性基材2の第2主面を構成する。図7において、第1主面は、高比表面積導電性基材22の上面であり、第2主面は、高比表面積導電性基材22の下面である。コンデンサ21の末端部において、低空隙率部26と誘電体層23の間には絶縁部28が存在する。コンデンサ21は、上部電極24上に第1外部電極29を、および高比表面積導電性基材22の支持体27側の主面上に第2外部電極30を備える。本実施形態のコンデンサ21において、第1外部電極29と上部電極24とは電気的に接続されており、第2外部電極30と支持体27は電気的に接続されている。上部電極24と、高比表面積導電性基材22の高空隙率部25は、誘電体層23を介して向かい合っており、上部電極24と高比表面積導電性基材22に通電すると、誘電体層23に電荷を蓄積することができる。
【0078】
金属支持体およびそれにより保持された金属焼結体を有する高比表面積導電性基材は、強度が高く、誘電体層のクラックの発生などの不具合が生じにくい。
【0079】
上記のような高比表面積導電性基材と、高比表面積導電性基材上に位置する誘電体層と、誘電体層上に位置する上部電極とを有して成り、前記高比表面積導電性基材が、金属焼結体、および金属焼結体を支持する金属支持体を有するコンデンサは、金属支持体上に金属粉または金属粉混合物を配置し、次いで、これらを焼成して高比表面積を有する導電性基材を作製することを含む方法により得ることができる。例えば以下のようにして製造される。
【0080】
まず、金属焼結体と金属焼結体を支持する金属支持体から成る高比表面積導電性基材を準備する。
【0081】
上記高比表面積導電性基材は、金属支持体上に金属粉または金属粉の混合物を配置し、次いで、これらを焼成することにより得ることができる。
【0082】
金属支持体を構成する金属は、特に限定されず、例えば、Al、Ti、Ta、Nb、Ni、Cu、W、Mo、Au、Ir、Ag、Rh、Ru、Co、Fe、またはこれらの合金が挙げられる。金属支持体を構成する金属は、好ましくは、Ni、Cu、W、Mo、Au、Ir、Ag、Rh、Ru、CoまたはFeである。このような金属を用いることにより、等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)を低減することができる。また、これらの金属は、比抵抗が低く、高融点であることから、高温でのアニール処理が可能であり、高品質の誘電体膜を得ることができる。
【0083】
高比表面積導電性基材上に配置される金属粉の混合物は、上記したコンデンサ1において用いられる金属粉の混合物と同様のものであり得る。
【0084】
金属粉を構成する金属としては、導電性であれば特に限定されないが、例えば、Al、Ti、Ta、Nb、Ni、Cu、W、Mo、Au、Ir、Ag、Rh、Ru、Co、Fe、またはこれらの合金が挙げられる。
【0085】
金属粉を構成する金属は、好ましくは、Ni、Cu、W、Mo、Au、Ir、Ag、Rh、Ru、CoまたはFeである。このような金属を用いることにより、金属焼結体の等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)を低減することができる。また、これらの金属は、比抵抗が低く、高融点であることから、高温でのアニール処理が可能であり、高品質の誘電体膜を得ることができる。
【0086】
一の態様において、金属粉の混合物は、平均粒径が異なる少なくとも2種、例えば2種、3種または4種の金属粉を含む。平均粒径が異なる金属粉を用いることにより、より低温で焼成した場合であっても焼結体の強度が向上する。
【0087】
好ましい態様において、金属粉混合物のうち、主成分の金属粉の平均粒径に対する、金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の平均粒径の比は、1/3以下であり、好ましくは1/4以下であり、さらに好ましくは1/5以下である。このような平均粒径比とすることにより、高比表面積導電性基材として用いるのに十分な機械的強度を確保することができ、コンデンサの不良率を低減することができる。一方、主成分の金属粉の平均粒径に対する、金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の平均粒径の比は、好ましくは1/30以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/15以上である。このような平均粒径比とすることにより、空隙率をより大きくすることができ、より大きな静電容量を得ることができる。
【0088】
金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり得る。金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の含有量を5質量%以上とすることにより、より金属焼結体の強度が高くなる。一方、金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の含有量は、好ましくは48質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下であり得る。金属粉混合物中の平均粒径が最も小さい金属粉の含有量を48質量%以下とすることにより、より空隙を保持することができ、より高い静電容量を得ることができる。
【0089】
別の態様において、金属粉の混合物は、融点が異なる少なくとも2種、例えば2種、3種または4種の金属粉を含む。融点が異なる金属粉を用いることにより、より低温で焼成した場合であっても焼結体の強度が向上する。
【0090】
好ましい態様において、金属粉混合物において、金属焼結体の主成分となる金属粉を構成する金属の融点に対して、少なくとも1種の金属粉を構成する金属の融点が、100℃以上低い、より好ましくは150℃以上低い、さらに好ましくは200℃以上低い。このように融点の異なる金属粉を用いることにより、より低温で焼成した場合であっても、低融点の金属粉により焼成が進行し、十分な空隙率と強度を備えた金属焼結体を得ることができる。
【0091】
金属焼結体の主成分となる金属粉と、低融点の金属粉の組み合わせは、特に限定されないが、例えば、NiとCuの組み合わせが挙げられる。
【0092】
一の好ましい態様において、高比表面積導電性基材は、金属支持体の表面を粗化し、その上に金属粉または金属粉混合物を配置し、次いで、これらを焼成することにより得られる。
【0093】
金属支持体の表面を粗化する方法としては、例えば硫酸−過酸化水素系エッチング剤、硝酸系エッチング剤等を用いたエッチング等の化学的方法、あるいはサンドブラスト、やすり等の物理的方法が挙げられる。
【0094】
粗化された金属支持体の表面は凹凸を有し、金属支持体表面の面内方向の凹部間の平均距離は、その上に配置される金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉の平均粒径の、好ましくは1/30以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/15以上であり、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下、さらに好ましくは1/4以下であり得る。金属支持体表面の凹凸の短辺長をこのような範囲とすることにより、金属支持体と金属焼結体とをより強固に接合することができる。
【0095】
金属支持体表面の面内方向の凹部間の平均距離は、表面走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)を用いて、所定の領域(例えば、3μm×3μm)に、この領域を4つの正方形に分ける2本の直線を引き、その直線上の凹部間の距離の平均値として求めることができる。
【0096】
この態様において得られる高比表面積導電性基材においては、金属焼結体と金属支持体を連結するネッキング(即ち、金属焼結体を構成する金属粉と金属支持体とのネッキング)の平均径が、金属焼結体中の金属粉同士のネッキングの平均径よりも大きくなる。
【0097】
ネッキングの平均径は、FIB加工により得られた薄片試料の所定の領域を、TEMを用いて撮影し、得られた画像を画像解析することにより求めることができる。即ち、金属粉と金属支持体、もしくは金属粉同士が連結するネッキング部分の最小幅を測定し、20のネッキングの測定値の平均として定義する。尚、前記20のネッキングは、無作為に選択した50のネッキングのうち、測定値が大きな20のネッキングを選択する。例えば、金属粉同士のネッキングの平均径は、図12に矢印で示されるような、金属焼結体31における粒子間のネッキング部位33の最細部の平均値である。また、金属粉と金属支持体との間のネッキングは、図13に矢印で示されるような、金属焼結体31粒子と金属支持体27との間のネッキング部位34の最細部の平均値である。
【0098】
一の好ましい態様において、高比表面積導電性基材は、金属支持体上に、第1金属粉を配置し、その上に第2金属粉または金属粉混合物を配置し、次いで、これらを焼成することより得られる。
【0099】
上記第2金属粉または金属粉混合物は、上記した態様における金属粉および金属粉混合物に対応し、上記第1金属粉は、これらとは別の金属粉である。
【0100】
第1金属粉を構成する金属としては、導電性であれば特に限定されないが、例えば、Al、Ti、Ta、Nb、Ni、Cu、W、Mo、Au、Ir、Ag、Rh、Ru、Co、Fe、またはこれらの合金が挙げられる。
【0101】
一の態様において、第1金属粉の平均粒径は、第2金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉の平均粒径の1/2以下、好ましくは1/3以下であり、より好ましくは1/4以下であり、さらに好ましくは1/5以下である。また、第1金属粉の平均粒径は、第2金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉の平均粒径の、好ましくは1/30以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/15以上である。第1金属粉の平均粒径をこのような範囲とすることにより、金属焼結体と金属支持体をより強固に接合することができる。
【0102】
この態様において得られる高比表面積導電性基材においては、金属焼結体と金属支持体を連結するネッキングの平均径が、金属焼結体の略中央部におけるネッキングの平均径よりも大きくなる。
【0103】
一の態様において、第1金属粉を構成する金属の融点は、第2金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉を構成する金属の融点よりも、100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上低い。第1金属粉を構成する金属として、融点の低い金属を選択することにより、金属支持体と金属焼結体とをより強固に接合することができる。
【0104】
この態様において得られる高比表面積導電性基材においては、金属焼結体と金属支持体との界面近傍に、金属焼結体の略中央部を構成する金属の融点よりも、100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上低い金属が存在する。
【0105】
好ましい態様において、第1金属粉を構成する金属の融点は、金属支持体を構成する金属の融点よりも、100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上低い。
【0106】
この態様において得られる高比表面積導電性基材においては、金属焼結体と金属支持体との界面近傍に、金属支持体を構成する金属の融点よりも、100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上低い金属が存在する。
【0107】
この態様において、第1金属粉は、好ましくはCuである。また、第1金属粉と、第2金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉の組み合わせは、特に限定されないが、例えば、NiとCuの組み合わせが好ましい。
【0108】
第1金属粉は、高比表面積導電性基材上に、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上の層として配置される。第1金属粉の層を1μm以上の層とすることにより、より強固に金属焼結体と金属支持体を結合させることができる。また、第1金属粉は、高比表面積導電性基材上に、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下の層として配置される。第1金属粉の層を30μm以下の層とすることにより、静電容量をより大きくすることができる。
【0109】
一の好ましい態様において、高比表面積導電性基材は、金属支持体上に、低融点金属層を形成し、その上に金属粉または金属粉混合物を配置し、次いで、これらを焼成することより得られる。
【0110】
低融点金属層を構成する金属の融点は、その上に配置する金属粉または金属粉混合物の主成分である金属粉を構成する金属の融点よりも、100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上低い。低融点金属層を構成する金属として、融点の低い金属を選択することにより、金属支持体と金属焼結体とをより強固に接合することができる。
【0111】
低融点金属層を構成する金属としては、例えば、Al、Ti、Ta、Nb、Ni、Cu、W、Mo、Au、Ir、Ag、Rh、Ru、Co、Fe、またはこれらの合金が挙げられる。
【0112】
低融点金属層の厚みは、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり得る。低融点金属層の厚みを1μm以上とすることにより、金属支持体と金属焼結体とをより強固に接合することができる。また、低融点金属層の厚みは、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下であり得る。低融点金属層の厚みを30μm以下とすることにより、静電容量をより大きくすることができる。
【0113】
この態様において得られる高比表面積導電性基材においては、金属焼結体と金属支持体との界面近傍に、金属焼結体の略中央部を構成する金属の融点よりも、100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上低い金属が存在する。
【0114】
上記した金属支持体の粗化処理、金属支持体上への第1金属粉の配置、および金属支持体上への低融点金属層の形成は、金属支持体の全面に行ってもよく、また、金属焼結体を形成する箇所にのみ形成してもよい。例えば、金属支持体の上面全体を処理して、全体に金属焼結体を形成した場合、図10(a)に示すように、金属支持体27上全体に金属焼結体31が設けられた高比表面積導電性基材22が得られる。一方、金属支持体の一部のみを処理して、その上に金属焼結体を形成した場合、図10(b)に示すように、金属支持体27上の一部に金属焼結体31が設けられた高比表面積導電性基材22が得られる。
【0115】
このように形成された高比表面積導電性基材は、金属支持体と金属焼結体の界面近傍では焼結が進行していることから、金属支持体と金属焼結体とが強固に接合されており、また、界面近傍以外の金属焼結体の焼結の進行が比較的進行していないことから、基材の反りが生じにくい。また、金属支持体を有するので、強度が高く、誘電体層のクラックの発生などの不具合が生じにくい。
【0116】
次に、上記で得られた高比表面積導電性基材22(図11(a))に、溝部32を形成する(図11(b))。上記溝部は、低空隙率部26に対応し、その他の部分が高空隙率部25に対応する。
【0117】
溝部(低空隙率部)の形成方法は、上記で得られた高比表面積導電性基材の一部の空隙を潰す(または埋める)ことにより、形成することができる。
【0118】
尚、低空隙率部26は、本発明において必須の構成要素ではなく、存在しなくてもよい。例えば、図11(b)に示す高比表面積導電性基材から、低空隙率部26を除去した高比表面積導電性基材であってもよい。また、溝部32の下方に位置する低空隙率部26が、高空隙率部に置き換わった高比表面積導電性基材であってもよい。
【0119】
また、本実施形態においては、高比表面積導電性基材22は、高空隙率部25と、その周囲に存在する低空隙率部26から成るが、本発明はこれに限定されない。即ち、高空隙率部および低空隙率部の存在位置、設置数、大きさ、形状、両者の比率等は、特に限定されない。例えば、高比表面積導電性基材は、高空隙率部のみからなってもよい。また、高空隙率部と低空隙率部の比率を調整することにより、コンデンサの静電容量を制御することができる。
【0120】
空隙を潰す(埋める)方法、低空隙率部および低空隙率部の空隙率および厚み等は、上記したコンデンサ1の低空隙率部4に関して記載したものと同様であり得る。
【0121】
次に、低空隙率部26上(溝内)に、樹脂を注入し、絶縁部28を形成する(図11(c))。絶縁部28を設置することにより、上部電極24と高比表面積導電性基材22間での短絡(ショート)を防止することができる。
【0122】
尚、本実施形態においては、絶縁部28は、低空隙率部26上の全体に存在するが、これに限定されず、低空隙率部26の一部のみに存在してもよく、また、低空隙率部を超えて、高空隙率部上にまで存在してもよい。
【0123】
また、本実施形態においては、絶縁部28は、低空隙率部26と誘電体層23の間に位置しているが、これに限定されない。絶縁部28は、高比表面積導電性基材22と上部電極24の間に位置していればよく、例えば誘電体層23と上部電極24の間に位置していてもよい。
【0124】
絶縁部28の厚みは、特に限定されないが、端面放電をより確実に防止する観点から、0.3μm以上であることが好ましく、例えば1μm以上または5μm以上であり得る。また、コンデンサの低背化の観点からは、100μm以下であることが好ましく、例えば50μm以下または20μm以下であり得る。
【0125】
絶縁部28を形成する材料、および形成方法は、上記したコンデンサ1の絶縁部9と同様であり得る。
【0126】
尚、本発明のコンデンサにおいて、絶縁部28は必須の要素ではなく、存在しなくてもよい。
【0127】
次に、上記高空隙率部25および絶縁部28上に、誘電体層23を形成し、さらにその上には、上部電極24を形成する(図11(d))。また、上部電極24上には、第1外部電極29が形成され、金属支持体27上には第2外部電極30を形成する(図11(e))。
【0128】
誘電体層23、上部電極24、第1外部電極29および第2外部電極30について、用いる材料、形成方法、厚み等は、上記コンデンサ1の誘電体層6、上部電極7、および外部電極8と同様であり得る。
【0129】
次に、得られたコンデンサ集合基板を、絶縁部28の中心部をフルカットすることにより、各部品に個片化する(図11(f))。
【0130】
以上、本実施形態のコンデンサ21について説明したが、本発明のコンデンサは、種々の改変が可能である。
【0131】
例えば、本実施形態において、コンデンサは略直方体形状であるが、本発明はこれに限定されない。本発明のコンデンサは、任意の形状とすることができ、例えば、平面形状が円状、楕円状、また角が丸い四角形等であってもよい。
【0132】
また、各層の間に、層間の密着性を高める為の層、または、各層間の成分の拡散を防止するためのバッファー層等を有していてもよい。また、コンデンサの側面等に、保護層を有していてもよい。
【0133】
また、上記実施形態においては、コンデンサの末端部は、高比表面積導電性基材22、絶縁部28、誘電体層23、上部電極24の順に設置されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、その設置順は、絶縁部28が、上部電極24と高比表面積導電性基材22の間に位置する限り特に限定されず、例えば、高比表面積導電性基材22、誘電体層23、絶縁部28、上部電極24の順に設置してもよい。
【0134】
さらに、上記実施形態のコンデンサ21は、コンデンサの縁部にまで上部電極および外部電極が存在するが、本発明はこれに限定されない。一の態様において、上部電極(好ましくは、上部電極および第1外部電極)は、コンデンサの縁部から離隔して設置される。このように設置することにより端面放電を防止することができる。つまり、上部電極は高空隙率部の全てを覆うように形成されていなくてもよく、上部電極は高空隙率部のみを覆うように形成されていてもよい。
【0135】
さらに、上記実施形態のコンデンサは、一方の主面にのみ金属焼結体を有するが、金属支持体を挟んで両主面に金属焼結体を有していてもよい。
【0136】
好ましい態様において、本発明のコンデンサは、誘電体層が、堆積法(例えば、気相法、好ましくは原子層堆積法)により形成される。誘電体層を陽極酸化により形成した場合には、誘電体膜に極性があり、逆電界が印加されると絶縁破壊してしまう問題がある。また、陽極酸化膜中には水酸基などの欠陥が存在するために、高い破壊電圧のコンデンサを得ることができない。本態様におけるコンデンサは、陽極酸化膜ではなく堆積法にて欠陥のない誘電体膜を形成することで、極性がなく、かつ、高い破壊電圧のコンデンサを得ることができる。
【0137】
本発明のコンデンサは、金属焼結体中の金属粉が十分にネッキングされている、または金属支持体に強固に接合されているので、高い強度を有する。陽極酸化膜を誘電体として用い、導電性高分子または電解質を電極として用いる電解コンデンサでは、誘電体層が破壊されショートした場合でも、絶縁性を回復させる自己修復効果を有するが、積層法により得られたコンデンサでは、自己修復効果は必ずしも得られない。従って、わずかな破壊の起点が存在しただけでも、絶縁破壊にいたる可能性がある。この絶縁破壊を防止するという観点から、高い強度を有する本発明のコンデンサは有利である。
【0138】
本発明のコンデンサは、比較的強度が高いことから、基板に好適に実装される。
【0139】
本発明のコンデンサは、基板上、例えば有機基板、シリコン、セラミックス、ガラス基板等、特に有機基板の上に直接形成することができる。
【0140】
本発明のコンデンサは、焼成工程が比較的低温であることから、基板に与える熱的影響を小さくすることができ、特に有機基板を用いる場合に、アウトガスの発生、反り等を抑制できる。
【0141】
従って、本発明は、本発明のコンデンサが、その高比表面積導電性基材の金属支持体が基板、特に有機基板に密着するように配置されている基板をも提供する。
【実施例】
【0142】
実施例1
表1に示す平均粒径を有するNi粉およびCu粉を準備した。表1に示す金属原料1を単独で、または所定の割合で金属原料2と混合し、エタノール中にて1mmφのジルコニアボールを用いて、ボールミルにて分散した。この分散液にポリビニルアルコールを加え、試料番号1〜16に対応する金属粉スラリーを作製した。
【0143】
これらのスラリーを用いて、ドクターブレード法にて、平坦なアルミナ基板上に、乾燥後の厚みが約100μmとなるように、金属粉層を形成した。この試料を、焼成炉にて200℃〜300℃で脱脂後、N雰囲気下、300〜650℃で5分間熱処理し、金属焼結体を得た。金属焼結体はアルミナ基板には固着せず、金属焼結体としてアルミナ基板から分離できた。
【0144】
この金属焼結体を高比表面積導電性基材として用いた。金属焼結体は、一辺約50mm板状であり、集合基板として加工した。次いで、ファイバーレーザー装置、またはナノ秒レーザー装置を用いて、集合基板上に溝部を形成した。溝部に対応する部分は、低空隙率部である。
【0145】
次に、溝部内に、エアー式ディスペンサー装置を用いて、ポリイミド樹脂を、溝部の細孔内にも十分に浸透するように充填した。
【0146】
次に、金属焼結体上にALD法により25nmのSiOxの成膜を行い、誘電体層を形成し、次いで、誘電体層の上に、ALD法によりTiNの成膜を行い、上部電極を形成した。
【0147】
次に、集合基板の上下面に、蒸着にてパターン形成し、無電解めっきにより、外部電極としてのCu層を形成した。
【0148】
溝部内に充填された絶縁体の中心部をフルカットすることにより、各部品に個片化し、1.0mm×0.5mmサイズのコンデンサ(試料番号1〜16)を得た。尚、試料番号1、2、3、7および13は、比較例である。
【0149】
評価
このようにして作製したコンデンサの静電容量を、インピーダンスアナライザを用いて、1MHz、1mVにて測定した。また、DC電界を5V印加した際に縁抵抗が1kΩ以下となる試料をショート試料として判定し、ショート(短絡)率を算出した。結果を表1に併せて示す。
【0150】
金属焼結体の空隙率は、次のようにして求めた。まず、コンデンサ試料の略中央部をFIBによるマイクロサンプリング加工法を用いて、薄片化し、分析試料を準備した。尚、FIB加工時に形成された試料表面のダメージ層は、Arイオンミリングによって除去した。分析試料の加工には、FIBには、SMI3050SE(セイコーインスツル社製)を、Arイオンミリングには、PIPSmodel691(Gatan社製)を用いた。次いで、分析試料の3μm×3μmの範囲を走査型透過電子顕微鏡(STEM)にて観察した。STEMはJEM−2200FS(JEOL製)を用いた(加速電圧=200kV)。観察領域の画像解析を行い、金属焼結体の金属が存在する面積から空隙率を求めた。任意の3箇所の空隙率を求め、3箇所の平均値を表1に併せて示す。
【0151】
【表1】
【0152】
表1に示されるように、2種の金属粉を混合して焼成した本発明のコンデンサは、高い静電容量と、低いショート率を達成することが確認された。
【0153】
実施例2
表2に示す平均粒径を有するNi粉およびCu粉を準備した。表2に示す金属原料1を単独で、または所定の割合で金属原料2と混合し、エタノール中にて1mmφのジルコニアボールを用いて、ボールミルにて分散した。この分散液にポリビニルアルコールを加え、試料番号21〜35に対応する金属粉スラリーを作製した。
【0154】
一方で、金属支持体としてNi箔およびCu箔を準備し、アルカリ性溶液に浸漬して表面処理した後に、硫酸−過酸化水素系エッチング剤にて、処理時間を変えて、金属箔表面の粗化処理を行った。
【0155】
このNiおよびCu箔上に、ドクターブレード法にて上記スラリーを塗布し、乾燥後の厚みが約50μmとなるように、金属粉層を形成した。この試料を、焼成炉にて、200〜300℃で脱脂後、N雰囲気下、300〜600℃で5分間熱処理し、金属焼結体を得た。
【0156】
こうして得られた片側の面のみ金属焼結体が形成された基材を高比表面積導電性基材として用いた。金属焼結体は、一辺約50mm板状であり、集合基板として加工した。
【0157】
まず、ファイバーレーザー装置、またはナノ秒レーザー装置を用いて、集合基板上に溝部を形成した。溝部に対応する部分は、低空隙率部である。
【0158】
次に、金属焼結体上にALD法により15nmのSiONの成膜を行い、誘電体層を形成した。次いで、溝部内に、エアー式ディスペンサー装置を用いて、ポリイミド樹脂を充填して、絶縁部を形成した。次いで、誘電体層および絶縁部の上に、ALD法によりTiNの成膜を行い、上部電極を形成し、基材の上下面に、スパッタにてTiおよびCu膜を形成し、次いで、無電解めっきによりCuの外部電極を形成した。
【0159】
溝部内に充填された絶縁部の中心部を、ファイバーレーザー装置、またはナノ秒レーザー装置を用いて、フルカットすることにより、各部品に個片化し、1.5mm×1.5mmサイズのコンデンサ(試料番号21〜35)を得た。尚、試料番号21、27、32および34は、比較例である。
【0160】
評価
実施例1と同様に、静電容量、ショート率および空隙率を測定した。結果を表2に併せて示す。
【0161】
【表2】
【0162】
さらに、試料番号21および23について、ネッキングの平均径を以下のように測定した。上記空隙率の測定と同様に、コンデンサ試料の薄片試料を準備し、画像解析を行った。金属粉と金属支持体間のネッキング、および金属粉間が連結するネッキングを、それぞれ無作為に50個選択し、ネッキング部分の最小幅を測定し、測定値の大きい20個の平均値を求めた。結果を下記表3に示す。
【0163】
【表3】
【0164】
表2に示されるように、表面を十分に粗化した本発明のコンデンサは、ショート率が低いことが確認された。これは、金属支持体の表面を粗化することにより、金属焼結体と金属支持体とのネッキングが十分に進行したためと考えられる。また、表3に示されるように、表面を十分に粗化した本発明のコンデンサは、金属焼結体と金属支持体間のネッキングの平均径が、金属粉間のネッキングの平均径よりも大きくなることが確認された。
【0165】
実施例3
表3に示す平均粒径を有するNi粉およびCu粉を準備した。表3に示す金属原料1を単独で、または所定の割合で金属原料2と混合し、エタノール中にて1mmφのジルコニアボールを用いて、ボールミルにて分散した。この分散液にポリビニルアルコールを加え、試料番号41〜56に対応する金属粉スラリーを作製した。
【0166】
一方で、表面が粗化されていない10μm厚のNi箔(試料番号41〜53)、および表面が0.15μmの凹部間距離となるように粗化された10μm厚のNi箔(試料番号54)を、支持体として準備した。さらに、平板ガラス上にスピンコートでエポキシ樹脂を塗布し、スパッタにて0.5μmのNi金属層を形成し、支持体とした(試料番号55)。また、平板ガラス上にスピンコートでエポキシ樹脂を塗布し、無電解めっきにてCu層を1μm形成し、支持体とした(試料番号56)。
【0167】
これらの支持体上に、表3の金属粒子層1に示す金属粉のスラリーを、インクジェットを用いてパターン塗布し、乾燥させた。その後、比較的平均粒径の大きい、表3の金属粒子層2に示す金属粉のスラリーをノズル径の大きいインクジェットを用いて塗布し、概ね金属粒子層1上に、数μmの層を形成し、乾燥、塗布を繰り返して、乾燥後の合計厚み約100μmの金属粉層を形成した。この試料を、焼成炉にて、200〜300℃で脱脂後、N雰囲気下300〜600℃で5分間熱処理し、金属焼結体を得た。
【0168】
こうして得られた片側の面のみ金属焼結体が形成された基材を高比表面積導電性基材として用いた。金属焼結体は、一辺約50mm板状であり、集合基板として加工した。
【0169】
次に、誘電体層として、ALD法により20nmのAlOxの成膜を行い、試料番号41〜54は、0.4mm×0.4mmサイズのコンデンサに、試料番号55および56は、0.3mm×0.3mmサイズのコンデンサに個片化したこと以外は、実施例2と同様にして、コンデンサ(試料番号41〜56)を得た。試料番号41、48および49は、比較例である。
【0170】
評価
実施例1と同様に、静電容量、ショート率および空隙率を測定した。結果を表4に併せて示す。
【0171】
【表4】
【0172】
さらに、試料番号21および23について、ネッキングの平均径を、実施例2と同様に測定した。結果を下記表5に示す。
【0173】
【表5】
【0174】
表4に示されるように、金属支持体の表面に所定の粒径を有する金属粉を配置して作製された本発明のコンデンサは、ショート率が低いことが確認された。これは、金属支持体の表面の金属粉により、金属支持体と金属焼結体の界面のネッキングが十分に進行したためと考えられる。また、表5に示されるように、金属支持体の表面に所定の粒径を有する金属粉を配置して作製された本発明のコンデンサは、金属焼結体と金属支持体間のネッキングの平均径が、金属粉間のネッキングの平均径よりも大きくなることが確認された。
【0175】
実施例4
10μmのCu箔またはNi箔を、表裏面に配設した一辺約100mmのエポキシ系樹脂基板を準備した。樹脂基板上の金属箔は電子回路形成のために予めパターニングした。
【0176】
一方で、表4に示す平均粒径を有するNi粉およびCu粉を準備した。表4に示す金属原料1を単独で、または所定の割合で金属原料2と混合し、エタノール中にて1mmφのジルコニアボールを用いて、ボールミルにて分散した。この分散液にポリビニルアルコールを加え、試料番号61〜71に対応する金属粉スラリーを作製した。
【0177】
樹脂基板上の金属箔(表4の有機基板上の金属種)上に、インクジェット法を用いて、表4の金属粒子層1に示す金属粉のスラリーを、1.5mm間隔で、コンデンサ1つあたり1mmの範囲に複数塗布し、乾燥させた。その後、比較的平均粒径の大きい、表4の金属粒子層2に示す金属粉のスラリーをノズル径の大きいインクジェットを用いて塗布し、数μmの層を形成し、乾燥、塗布を繰り返し、乾燥後の合計厚みが約20μmの金属粉層を形成した。この試料を、焼成炉にて、200〜300℃にて脱脂後、N雰囲気下290〜450℃で5分間熱処理し、金属焼結体を得た。
【0178】
こうして得られた片側の面のみ金属焼結体が形成された基材を高比表面積導電性基材として用いた。
【0179】
次に、ALD法により、15nmのAlOxの成膜を300℃にて行い、誘電体層を形成した。次いで、金属焼結体間に、エアー式ディスペンサー装置を用いて、ポリイミド樹脂を塗布して、絶縁部を形成した。次いで、上部電極として、ALD法により、TiN膜を350℃にて形成した。次に、基板の金属焼結体の上面のみに蒸着法にてCuをパターン形成し、めっきにて外部電極を形成して、コンデンサ(試料番号61〜71)を得た。尚、試料番号61、63、69および70は、比較例である。
【0180】
評価
実施例1と同様に、静電容量、ショート率および空隙率を測定した。結果を表6に併せて示す。また、基板の凹部を下にして平らな定盤上に置き、平面のゲージにて反り量を測定した。ゲージの値から平均箔厚みを引いた値を反り量とした。
【0181】
【表6】
【0182】
表6に示されるように、複数の金属粉を用いて焼成した本発明のコンデンサは、基板上で焼成した場合であっても、ショート率が低く、基板の反りが小さいことが確認された。これは、焼成を過度に進行させなくても、十分な強度の金属焼結体を得ることができるためと考えられる。尚、実施例1と比較して、全体的にショート率が高いのは、ALD中に、樹脂基板から生じたアウトガスにより、局所的なCVD反応が生じるなどして、誘電体の膜厚および膜質のばらつきが引き起こされたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明のコンデンサは、高い静電容量を有するので、種々の電子機器に好適に用いられる。本発明のコンデンサは、基板上に実装されて電子部品として使用される。あるいは、本発明のコンデンサは、基板やインタポーザー内に埋め込まれて電子部品として使用される。
【符号の説明】
【0184】
1…コンデンサ
2a,2a’,2b,2b’…静電容量形成部
3…高比表面積導電性基材
4…低空隙率部
5,5a,5b…高空隙率部
6,6a,6a’,6b,6b’…誘電体層
7,7a,7a’,7b,7b’…上部電極
8,8a,8a’,8b,8b’…外部電極
9…絶縁部
11…溝部
12…コンデンサ集合基板
21…コンデンサ
22…高比表面積導電性基材
23…誘電体層
24…上部電極
25…高空隙率部
26…低空隙率部
27…金属支持体
28…絶縁部
29…第1外部電極
30…第2外部電極
31…金属焼結体
32…溝部
33…ネッキング部位
34…ネッキング部位
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13