(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記計測対象領域における表面変位成分、前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量のうち、少なくとも1つに基づいて、前記対象物の劣化状態を判定する、劣化状態判定部を、
更に備えている、請求項1に記載の変位成分検出装置。
(d)前記計測対象領域における表面変位成分、前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量のうち、少なくとも1つに基づいて、前記対象物の劣化状態を判定する、ステップを、
更に有する、請求項5に記載の変位成分検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における、変位成分検出装置、変位成分検出方法、及びプログラムについて、
図1〜
図8を参照しながら説明する。
【0024】
[装置構成]
最初に、
図1を用いて本実施の形態における変位成分検出装置の概略構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態における変位成分検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示す、本実施の形態における変位成分検出装置10は、対象物30の状態を判定するための装置である。
図1に示すように、変位成分検出装置10は、変位分布算出部11と、移動量算出部12と、表面変位算出部13と、劣化状態判定部14とを備えている。
【0026】
変位分布算出部11は、対象物30の計測対象領域を撮影する撮像装置20から出力されてきた計測対象領域の時系列画像から、計測対象領域における変位分布を算出する。移動量算出部12は、変位分布算出部11によって算出された計測対象領域における変位分布と、計測対象領域を撮影した際の撮影情報に基づいて、計測対象領域の面方向における移動量と、計測対象領域の法線方向における移動量とを算出する。
【0027】
表面変位算出部13は、計測対象領域の面方向における移動量、及び計測対象領域の法線方向における移動量を用いて、変位分布算出部11によって算出された変位分布から、計測対象領域における表面変位成分を算出する。
【0028】
本実施の形態において、対象物30の例としては、外力を受けて3次元方向に動く、又は外力を受けて振動する構造物、例えば、橋梁が挙げられる。この場合、対象物30の変位成分を精度良く検出するためには、外力による対象物30自体の3次元方向の動き及び振動を排除する必要がある。
【0029】
これに対して、変位成分検出装置10では、対象物30の計測対象領域の時系列画像から算出された変位分布から、計測対象領域の面方向における移動量と法線方向における移動量とによって、計測対象領域における表面変位成分が算出される。つまり、本実施の形態によれば、変位分布から、3次元方向の動き及び振動を排除して、対象物30の表面のわずかな動き又は変位が含まれた変位成分(以下「表面変位成分」とも表記する)を得ることができる。また、このようにして得られた表面変位成分の分布(以下「表面変位分布」とも表記する)に基づいて、対象物の劣化状態を判定することで、対象物30の劣化状態を精度良く判定することができる。
【0030】
続いて、
図2を用いて、本実施の形態における変位成分検出装置10の構成及び機能について具体的に説明する。
図2は、本発明の実施の形態における変位成分検出装置の構成を具体的に示すブロック図である。
【0031】
まず、本実施の形態において、撮像装置20の撮影対象となる計測対象領域は、対象物30において表面変位成分及び表面の状態の計測対象となる領域である。計測対象領域としては、例えば、橋梁の桁、床版の下面などの領域(
図1参照)が挙げられる。また、計測対象領域は、橋梁の桁又は床版などの、鉛直方向に対して垂直な領域に限定されない。計測対象領域は、鉛直方向に対して一定の角度をなす領域(ランプなど地面や橋脚に対して傾斜している桁又は床版など)、又は鉛直方向に対して平行な領域(構造物の側面の領域)であっても良い。更に、計測対象領域は、対象物30の附属物(配管、看板、照明など)の領域であっても良い。
【0032】
また、本実施の形態において、対象物30は、上述した橋梁等の構造物に限定されることはなく、3次元方向の動き又は振動を伴うものであれば良く、例えば、荷重載荷試験に用いる試験体のようなものであっても良い。また、対象物30は、鉄筋コンクリートのような複合部材で構成されるものであっても良いし、鋼のような単一部材で構成されるものであっても良い。
【0033】
撮像装置20は、本実施の形態では、その固体撮像素子の受光面の法線が計測対象領域の法線と平行となり、且つ、時系列画像の水平方向及び垂直方向が計測対象領域の面方向に平行となるように配置されている。また、計測対象領域の面方向とは、計測対象領域が構成する面に平行な方向を意味する。
【0034】
具体的には、撮像装置20は、
図1の例では、受光面が計測対象領域と平行となるようにして、地面等に固定具21によって配置されている。本実施の形態では、時系列画像の水平方向をX方向、時系列画像の垂直方向をY方向、計測対象領域の法線方向(鉛直方向)をZ方向とする。固定具21は、撮像装置20が動かないように固定する機能があればよく、具体的には三脚などであってもよい。
【0035】
変位分布算出部11は、本実施の形態では、撮像装置20が出力する時系列画像を取得し、任意の時刻に撮像された画像を基準画像とし、それ以外を処理画像とする。そして、変位分布算出部11は、基準画像内での計測対象領域に対応する領域(以下「特定領域」と表記する)の各点に対して、処理画像内で対応する位置をそれぞれ探索して変位を算出する。これを処理画像毎に繰り返す事により、処理画像毎に特定領域に対する変位の分布を算出する。
【0036】
具体的には、変位分布算出部11は、特定領域内のある箇所(座標)に最も類似している処理画像における箇所(座標)を探索して、特定した箇所(座標)の変位を算出する。類似している箇所の特定手法としては、例えば、ある箇所(座標)、およびその周辺の座標の輝度値を用いて、SAD(Sum of Squared Difference)、SSD(Sum ofAbsolute Difference)、NCC(Normalized Cross-Correlation)、ZNCC(Zero-means Normalized Cross-Correlation)等の類似度相関関数を用いて、最も相関が高い位置(座標)を探索する手法が挙げられる。
【0037】
また、最も類似している箇所の特定は、最も相関が高い箇所(座標)と、その前後左右の位置(座標)における部分との類似度相関関数を利用し、直線フィッティング、曲線フィッティング、パラボラフィッティングなどの手法を適用することによっても行なうことができる。この場合は、より精度良く、サブピクセル精度で類似している領域の位置(座標)を算出できることになる。
【0038】
また、このような算出処理を、特定領域内の各座標に対して繰り返し実施することで、その処理画像における特定領域に対する変位の分布を得ることができる。また同様の処理を、処理画像毎に行うことで、処理画像毎に特定領域に対する変位分布を得ることができる。
【0039】
移動量算出部12は、変位分布算出部11が算出した変位分布と、撮影情報とから、計測対象領域の面方向における移動量(△X 、△Y)と法線方向における移動量(△Z)とを算出する。撮影情報とは、少なくとも、固体撮像素子の1画素のサイズ、レンズの焦点距離、撮像装置20から計測対象領域までの撮像距離(厳密にはレンズの主点から計測対象領域までの距離の事を指す)、撮影フレームレート、とを含む。
【0040】
移動量算出部12の動作の説明の詳細に入る前に、
図3及び
図4を用いて、変位分布算出部11が算出した変位に、どのような変位の成分が含まれているかを、
図3、
図4を用いて説明する。
図3は、構造物の計測対象領域を撮影した際に、ある点における撮像装置20の撮像面上で観測される変位に含まれる成分を説明した図である。
図3は、対象物30である橋梁がなんらかの負荷を受けて移動する前と後で、計測対象領域が3次元方向に移動量(ΔX、ΔY、ΔZ)分だけ移動した状態を示している。ここで、撮像装置20の撮像面の中心、つまりレンズの光軸と撮像面との交点となる撮像中心にあたる点を原点とした座標系を考える。この座標系において、撮像装置20の撮像面上の座標(i,j)の点Aにおける観測される変位(δx
ij,δy
ij)について考える。なお、撮像装置20の撮像面上の座標(i,j)は、撮影された画像上の座標に置き換えて考えてもよい。
【0041】
図3の状態では、対象物30の計測対象領域には、画面上の水平方向及び垂直方向(X,Y方向)と、法線方向(Z方向)において、移動量(ΔX、ΔY、ΔZ)が発生している。計測対象領域は、画面内の水平方向及び垂直方向(X,Y方向)に移動した分(ΔX、ΔY)だけ、撮像装置20の撮像面に対して平行に移動する。また、法線方向(Z方向)に移動した分(△Z)だけ撮像装置20に近づく。そのため、撮像距離は移動量ΔZだけ短くなる。
【0042】
すると、
図3に示すように、撮像装置20の撮像面に対して水平方向(X方向)における計測対象領域の移動量△Xによって生じる変位δxとは別に、移動量ΔZによる変位δzx
ijが生じる。同様に、撮像装置20の撮像面には、画面に対して垂直方向(Y方向)における撮像装置20の移動量ΔYによって生じる変位δyとは別に、移動量ΔZによる変位δzy
ijも生じる。
【0043】
また、対象物30がなんらかの負荷を受けたことによって計測対象領域の表面に変形又は変位(ΔΔX
ij,ΔΔY
ij)が発生した場合、それに伴って撮像装置20の撮像面には、表面変位成分(δδx
ij,δδy
ij)も重ねあわされる。ここで、計測対象領域の表面の変形及び変位に伴う表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)は、例えば、ひび割れのような欠陥がない健全な領域では、表面の変位は連続的に変化するのに対し、ひび割れをまたぐ領域では表面の変位は連続的に変化せずに不連続に変化する。このように、欠陥がない健全な領域と何らかの欠陥がある領域とでは、表面の変位の分布が異なるという特徴を示す。
【0044】
これらの変位成分は、すべて独立に足しあわされて、合成ベクトルとなって観察される。すなわち、点Aで観測される変位(δx
ij,δy
ij)は、後述の
図4に示すように、以下の数1及び数2によって表すことができる。
【0047】
ここで、レンズの主点から計測対象領域までの撮像距離をL、撮像装置20のレンズ焦点距離をf、撮像中心からの座標を(i,j)とすると、対象物30の面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位成分(δx, δy)、法線方向の移動(Δz)に伴う変位成分(δzx
ij,δzy
ij)は、それぞれ、下記の数3、数4で表される。
【0050】
計測対象領域がすべて同じ3次元の動きをしていると仮定すると、上記の数3及び数4で示される面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位成分(δx, δy)は、点Aの座標によらず一定であることがわかる。また、法線方向の移動(Δz)に伴う変位成分(δzx
ij ,δzy
ij)は、点Aの座標が原点から離れるほど大きくなることがわかる。一方、計測対象領域の表面変位成分 (δδx
ij ,δδy
ij)は、点Aの座標の座標によらず、表面のひび割れなどの欠陥の位置などに応じて連続・不連続な変位の分布を示す。
【0051】
図4は、計測対象領域を撮影した画像上の特定領域で観察される変位成分(δx
ij,δy
ij)の2次元空間分布(以下、変位分布とする)の様子を模擬的に示した図である。
図4に示すように変位分布算出部11が算出した特定領域の各座標の変位成分(δx
ij,δy
ij)を変位ベクトルとして表記をすると、画面全体で一様な方向及び大きさで観察される面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位成分(δx, δy)と、画面の撮像中心から放射状のベクトル群として観察される法線方向の移動(Δz)に伴う変位成分(δzx
ij ,δzy
ij)と、計測対象領域の表面の変形及び変位に伴う表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)との合成成分として表すことができる。
【0052】
続いて、面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)を算出する方法について考える。
図4に示すように、面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位成分(δx, δy)は、基本的にはオフセットのように画面全体で一様な方向及び大きさで観察される成分である。そこで、変位分布算出部11が算出した変位分布から、撮像中心を中心とした特定領域の各座標において計測された変位成分を、変位の方向によってプラスマイナスを付加した変位ベクトルとして扱う。対象となる各座標における変位ベクトルを全て足し合わせ、平均を取る。これにより、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)を算出できる。
【0053】
本手法について、詳しく述べる。まず、
図4に示すように、変位分布を変位ベクトル分として扱うと、面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)と、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)と、表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)とが合成された変位ベクトル群が観察される。ここで、撮像中心を中心とした特定領域では、
図4に示したように、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij,δzy
ij)は、放射状の変位ベクトルとして観察される。
【0054】
そのため、画面の撮像中心を中心とした領域の各画素の変位ベクトルを全て足し合わせると、放射線状の変位ベクトル成分であり、且つ、法線方向の移動(Δz)に伴って発生する、変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)は、キャンセルされる。その結果、面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)と、表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)とを足し合わせて得られた成分のみが残る。
【0055】
ここで、一般的に、構造物の表面に発生する変形及び変位による表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)は、面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)に比べると十分に小さいとみなせる場合が多い。したがって、表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)を足し合わせた成分は、非常に小さい面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)を足し合わせたものよりも、非常に小さくなるため、その成分は無視することができる。そのため、残った成分の大部分は面方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)によるものと考えることができる。
【0056】
そのため、残った成分に対して平均を算出することで、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)を算出することが可能となる。つまり、上述の方法により、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)を算出することができる。
【0057】
次に、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij,δzy
ij)を算出する方法について述べる。法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)のみが発生している状態を考える。そのベクトルの大きさR(i,j)は、特定領域の移動量Δzが特定領域内で一定であれば、下記の数5に示すように、撮像中心からの距離に比例した値となる。また、下記の数6に示すように比例定数をkと置けば、数5は、数7のようにも表される。
【0061】
一方、実際に、変位分布算出部11によって算出された変位分布は、
図4に示すように、合成ベクトル成分(δx
ij,δy
ij)(
図4:超太実線の矢印)で構成されている。合成ベクトル成分(δx
ij,δy
ij)は、
図4からもわかるとおり、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)(
図3、
図4:中実線の矢印)と、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)(
図3、
図4:太実線の矢印)と、計測対象領域の表面の変形及び変位に伴う表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)(
図3、
図4:細実線の矢印)とを含んでいる。
【0062】
この合成ベクトル成分(δx
ij,δy
ij)のうち、先に算出した面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)を減算したものが、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)と、表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)との合成ベクトルに相当する。したがって、ある座標(i,j)における法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ijj)と表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)との合成ベクトルをR
mes(i ,j)とすると、これらは下記の数8のように表すことができ、この値は算出することができる。
【0064】
ところで、表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)は、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)および法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)に比べると、十分に小さいとみなせる場合が多い。そのため、ここでは支配的な成分である面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)および法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)に着目して話を進める。すると、数8は、数9として表せられる。
【数9】
【0065】
この場合、座標(i,j)におけるR
mes(i ,j)は、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)とほぼ等しいとして扱うことができる。このとき、法線方向の移動量Δzを与えた時の変位ベクトル成分は、数6〜数8のようにR(i,j)で表される。
【0066】
このため、数9によって、変位分布算出部11で算出した各座標における変位成分(δx
ij,δy
ij)と、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)とから求められる変位ベクトルの大きさR
mes(i ,j)を用いて、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij,δzy
ij)による変位ベクトルの大きさR(i ,j)の拡大・縮小の割合を推定することが可能となる。具体的には、R(i ,j)の倍率は、下記の数10に示す評価関数E(k)を最少にする比例定数kを求めることによって推定することができる。
【0068】
従って、本実施の形態では、移動量算出部12は、上記の数10に最小2乗法を適用して、比例定数kを算出する。なお、評価関数E(k)として、上記の数10に示したR
mes(i ,j)とR(i ,j)との差の2乗和以外に、絶対値和、他の累乗和等が用いられていても良い。
【0069】
そして、移動量算出部12は、算出した比例定数kを拡大・縮小の割合を示す定数として、上記数7に適用して、移動量Δzを算出する。
【0070】
以上のように、移動量算出部12は、計測対象領域の3方向への移動量Δx、Δy、Δzを求めることができる。
【0071】
また、移動量算出部12は、算出した計測対象領域の移動量Δx、Δy、Δzを用いて、さらに精度よく計測対象領域の移動量を算出することもできる。具体的には、算出した移動量Δzを、上記数4に代入して、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)を算出する。更に、変位分布算出部11によって変位分布として算出されている変位ベクトル(δx
ij,δy
ij)から、算出した法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij,δzy
ij)を減算することで、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx’, δy’)を算出する(上記数1及び数2参照)。
【0072】
なお、ここでも、表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)は、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)および法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)に比べると、十分に小さいとみなせるという条件を使って算出する。
【0073】
その後、移動量算出部12は、算出した面方向の移動量に伴う変位ベクトル成分(δx’, δy’)と、移動量Δzとを、上記数3に代入することにより、計測対象領域の面方向における移動量△x’及び△y’を算出する。このようにして算出された計測対象領域の面方向における移動量、△x’、及び△y’は、先に算出された移動量Δx、及びΔyよりも精度よく算出されている。
【0074】
更に、算出された計測対象領域の3方向への移動量、△x’、△y’を用いて、再び上記数10を適用してΔz’を算出し、3方向における計測対象領域の移動量△x’、△y’、Δz’を求めることも可能である。この値は、移動量Δx、Δy、Δz、および△x’、△y’、Δzとして算出した時よりも精度よく算出されている。上記の処理は、あらかじめ定められた回数繰り返してもよいし、一定の値域に収束するまで繰り返し行ってもよい。
【0075】
また、移動量算出部12によって算出された計測対象領域の面方向における移動量と、計測対象領域の法線方向における移動量とは、それぞれ、時系列画像を撮影した撮影毎に得られる。このため、各移動量は、撮影の時間間隔をサンプリング間隔とした振動情報として扱うことができる。
【0076】
表面変位算出部13は、移動量算出部12によって算出された計測対象領域の面方向における移動量(△x ,△y)、及び計測対象領域の法線方向における移動量(△z)を用いて、変位分布算出部11によって算出された変位分布(変位ベクトル(δx
ij,δy
ij)から、計測対象領域の表面変位成分(δδx
ij,δδy
ij)を算出する。
【0077】
図4によると、表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)を算出するためには、変位分布算出部11によって算出された変位ベクトル(δx
ij,δy
ij)から、計測対象領域の移動量(△x ,△y ,△z)によって発生する変位成分を減算すれば良いことが分かる。つまり、表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)は、下記の数11及び数12を用いることで算出できる。
【0080】
上記数
11及び数
12によると、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)と、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)とを、変位分布算出部11によって算出された変位ベクトル(δx
ij,δy
ij)から減算すればよい。従って、表面変位算出部13は、計測対象領域の移動量(△x ,△y ,△z)を用いて、処理画像における画素毎に
、面内方向の移動(Δx, Δy)に伴う変位ベクトル成分(δx, δy)と、法線方向の移動(Δz)に伴う変位ベクトル成分(δzx
ij ,δzy
ij)を算出し、変位分布算出部11によって算出された変位ベクトル(δx
ij,δy
ij)からそれぞれ減算する。これにより、変位分布算出部11によって算出された変位分布(δx
ij,δy
ij)は計測対象領域の移動量によって発生する変位成分が補正され、計測対象領域における表面変位成分のみが得られることになる。
【0081】
また、
図2に示すように、本実施の形態では、変位成分検出装置10は、上述した、変位分布算出部11、移動量算出部12、及び表面変位算出部13に加えて、劣化状態判定部
14を備えている。劣化状態判定部
14は、計測対象領域における表面変位成分、計測対象領域の面方向における移動量、計測対象領域の法線方向における移動量のうち、少なくとも1つに基づいて、対象物30の劣化状態を判定する。
【0082】
劣化状態判定部14は、本実施の形態では、表面変位算出部13で算出された計測対象領域の表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)又は表面変位分布を用いて、例えば、対象物30が、
図5(a)〜
図5(d)に示した状態のいずれであるかを判定する。ここで、
図5(a)〜
図5(d)を用いて、対象物30に生じる各種の異常と、異常が生じた場合の対象物30の状態とについて説明する。
【0083】
図5(a)〜
図5(d)は、構造物の異常状態を説明するための図であり、それぞれ、状態が異なる場合について示している。また、
図5(a)〜
図5(d)に示された対象物30は、2点支持された梁状の構造物であり、各図において対象物30は側面図で示されている。更に、
図5(a)〜
図5(d)において、対象物30の下に示された矩形の図形は、変位分布を模式的に示している。
【0084】
ところで、対象物30に異常が発生しておらず、対象物30が健全であれば、
図5(a)に示すように、対象物30の上面からの垂直荷重に対し、構造物の上面には圧縮応力が、下面には引張応力がそれぞれ働く。この場合、変位分布は、応力の向きに応じて分割される。
【0085】
これに対して、
図5(b)に示すように、対象物30の下面にひび割れが存在する場合、ひび割れ部分では、荷重による開口変位が大きくなる。一方、ひび割れ部分の周辺では、ひび割れ部分により応力の伝達がないため、変位分布は、
図5(a)に示す健全な状態とは異なる状態となる。
【0086】
また、
図5(c)に示すように、対象物30の下面側の内部に剥離が存在する場合に、対象物30を下面から観察すると、
図5(b)に示したひび割れが発生した場合と同様の外観が観察される。しかしながら、剥離が存在する場合は、剥離している部分とその上部との間で応力が伝達されない状態となる。そのため、荷重の前後において、剥離している部分は一定方向に一定量だけ平行移動するだけであり、剥離している部分においては、部分変位は発生しない。よって、変位分布は、荷重の前後における剥離している部分に合わせて、分割されることになる。
【0087】
また、
図5(d)に示すように、対象物30の内部に、空洞が存在する場合、内部の空洞では応力の伝達が阻止されるため、対象物30の下面における応力は小さくなる。よって、変位分布から特定される変位も小さくなることから、変位分布は、内部の空洞に合わせて分割されることになる。
【0088】
従来、上記のような構造物の表面の変形及び変位、応力の情報を含む表面変位成分は、計測対象領域が3次元に動くことにより、変位分布算出部11によって算出された変位分布から直接観察することが困難であった。しかし、変位分布算出部11によって算出された変位分布を表面変位算出部13で補正し、算出された計測対象領域の表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)を用いることにより、構造物の表面の変形及び変位、応力の情報を得ることができ、上記のような劣化状態判定が可能となり、判定結果を出力することが可能となる。
【0089】
劣化状態判定部14は、本実施の形態では、予め設定されたルールに、計測対象領域における表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)、計測対象領域の面方向における移動量(△x、△y)、及び計測対象領域の法線方向における移動量△zを当てはめて、対象物30の劣化状態を判定し、判定結果を出力する。また、ルールとしては、計測対象領域の表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)、及び計測対象領域の移動量(△x ,△y , △z)のいずれか、またはそれぞれの組み合わせをパラメータとして、各パラメータの値から劣化の状態を判定するルールが挙げられる。
【0090】
例えば、道路橋、鉄道橋などの構造物では、自由振動した時又は何かしらの負荷が与えられて強制振動した時の縦揺れや横揺れの最大振幅及び振動数の情報を基に、異常な振動が発生している劣化状態なのか、構造物の剛性が低下していないか、状態が変化しているか、どうかを判定することができる(参照文献1及び2)。これに対して、劣化状態判定部14は、対象物30の計測対象領域を撮影した時系列画像から移動量算出部12で算出した計測対象領域の移動量(△x ,△y , △z)を用いて、時系列の移動量情報、すなわち振動情報を得る。また、劣化状態判定部14は、振動情報から、横揺れおよび縦揺れの振動を解析し、最大振幅及び振動数を評価して、劣化状態かどうかを判定したり、健全な状態からどの程度状態が変化したかを判定したりすることができる。
参照文献1:日本道路協会:道路橋示方書・同解説[鋼橋編]
参照文献2:鉄道総合技術研究所 鉄道構造物等維持管理標準・同解説[構造物編:鋼・合成構造物]
【0091】
他の例としては、たとえば、対象物30そのものの動きを計測対象領域の移動量(△x ,△y , △z)として評価することが挙げられる。特に、本実施形態の構成の場合、計測対象領域の法線方向の移動量Δzに関しては、対象物30である橋梁を車両が通過することによって負荷(荷重)が加えられたときに、対象物30に発生するたわみとして評価することができる。これを利用して、対象物30のたわみが大きい場合には、大きな橋梁に対して大きな負荷が与えられたと判断することができる。この情報から、たとえば、累積疲労損傷度による劣化判定(参照文献3)も実施することができる。この手法は、負荷の大きさと負荷の繰り返し数を考慮して、カウントしていくことで、累積の疲労損傷がどれだけ進行しているかを判定する方法である。法線方向の移動量Δzが、負荷の大きさを表す値として利用でき、移動量Δzが同じであれば同じ程度の負荷とみなして繰り返し数をカウントしていく。これによって、累積疲労損傷度を劣化状態として判定することが可能となる。
参照文献3:http://bunken.rtri.or.jp/PDF/cdroms1/0001/2009/0001003186.pdf
【0092】
他の例としては、計測対象領域の移動量(△x, △y, △z)と計測対象領域の表面変位成分とを組み合わせて劣化状態を判定する方法がある。たとえば、計測対象領域の法線方向の移動量Δzが負荷の大きさを表す値として利用できるとすると、計測対象領域の法線方向への移動量Δzが大きな値を取る時には、計測対象領域の表面に発生する変形及び変位なども大きくなる傾向がみられると判断できる。そのため、計測対象領域の法線方向への移動量Δzが大きな値を取るときの処理画像における表面変位成分を優先的に観察することで、より簡単に
図5(a)〜(d)に示すような表面変位成分又は表面変位分布に現れる劣化のパターンの判定を行うことができる。
【0093】
他の例としては、たとえば、同じ構造物における観察箇所が違う場合でも、同じ程度の負荷が印加された(同じ程度の重量の車両が通過した)ときの結果を相対的に比較して、状態を判定することも可能となる。
【0094】
これらの手法は、従来では同様の装置構成、同様の装置コストおよび計測コストで計測・判定できる方法がなかったが、本実施形態の構成を用いることで実現することができる。
【0095】
[装置動作]
次に、本発明の実施の形態における変位成分検出装置10の動作について
図6を用いて説明する。
図6は、本発明の実施の形態における変位成分検出装置の動作を示すフロー図である。以下の説明においては、適宜
図1〜
図5を参酌する。また、本実施の形態では、変位成分検出装置10を動作させることによって、変位成分検出方法が実施される。よって、本実施の形態における変位成分検出方法の説明は、以下の変位成分検出装置
10の動作説明に代える。
【0096】
図6に示すように、最初に、変位成分検出装置10において、変位分布算出部11は、撮像装置20から出力されてきている、対象物30の計測対象領域を撮影した時系列画像の画像データを取得する(ステップA1)。次に、変位分布算出部11は、時系列画像の画像データを用いて、画像内の計測対象領域に対応する領域における変位分布を算出する(ステップA2)。
【0097】
次に、移動量算出部12は、変位分布及び撮影情報に基づいて、計測対象領域の面方向における移動量(△x ,△y)を算出する(ステップA3)。続いて、移動量算出部12は、変位分布及び撮影情報に基づいて、計測対象領域の法線方向における移動量△zを算出する(ステップA4)。なお、ステップA3及びA4は、同時に実行されていても良い。
【0098】
次に、表面変位算出部13は、ステップA3で算出された計測対象領域の面方向における移動量(△x ,△y)と、ステップA4で算出された計測対象領域の法線方向における移動量△zとを用いて、ステップA2で算出された変位分布から、計測対象領域における表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)を算出する(ステップA5)。
【0099】
次に、表面変位算出部13は、計測対象領域における表面成分(δδx
ij ,δδy
ij)が算出された処理画像の枚数が閾値mより少ないかどうかを判定する(ステップA6)。閾値mは、予め行なわれる実験等によって適宜設定されている。
【0100】
ステップA6の判定の結果、処理画像の枚数が閾値mより少ない場合は、表面変位算出部13は、変位分布算出部11に、再度ステップA1を実行するように指示する。この場合は、別の処理画像に対して、再度、ステップA1〜A5が実行される。
【0101】
一方、ステップA6の判定の結果、処理画像の枚数が閾値mより少なくない場合(枚数が閾値mとなった場合)は、表面変位算出部13は、劣化状態判定部
14に判定を行なうように指示する。これにより、劣化状態判定部
14は、各処理画像の、計測対象領域における表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)、計測対象領域の面方向における移動量、及び計測対象領域の法線方向における移動量に基づいて、対象物30の劣化状態を判定する(ステップA7)。
【0102】
[変形例]
また、本実施の形態は、
図6に示したステップA3、A4、及びA5が、一つの処理画像について複数回実行される態様であっても良い。この態様とする場合は、面方向及び法線方向における移動量の算出精度を向上させることができる。また、この態様とする場合は、
図7に示す各ステップが実行される。
【0103】
図7は、本発明の実施の形態における変位成分検出装置の動作の他の例を示すフロー図である。
図7に示すように、最初に、変位成分検出装置10において、変位分布算出部11は、対象物30の計測対象領域の時系列画像の画像データを取得し(ステップA11)、この画像データを用いて、画像内の計測対象領域に対応する領域における変位分布を算出する(ステップA12)。ステップA11及びA12は、
図6に示したステップA1及びA2と同様のステップである。
【0104】
次に、移動量算出部12は、変位分布及び撮影情報に基づいて、計測対象領域の面方向における移動量(△x ,△y)を算出し(ステップA13)、続けて、計測対象領域の法線方向における移動量△zを算出する(ステップA14)。ステップA13及びA14は、
図6に示したステップA3及びA4と同様のステップである。
【0105】
次に、表面変位算出部13は、ステップA13で算出された計測対象領域の面方向における移動量(△x ,△y)と、ステップA14で算出された計測対象領域の法線方向における移動量△zとを用いて、ステップA12で算出された変位分布から、計測対象領域における表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)を算出する(ステップA15)。ステップA15は、
図6に示したステップA5と同様のステップである。
【0106】
次に、表面変位算出部13は、ステップA13〜A15の実行回数が閾値Nに達したかどうかを判定する(ステップA16)。閾値Nは、予め行なわれる実験等によって適宜設定されている。
【0107】
ステップA16の判定の結果、ステップA13〜A15の実行回数が閾値Nに達していない場合は、表面変位算出部13は、移動量算出部12に、再度ステップA13を実行するように指示する。これにより、再度、ステップA13、A14、及びA15が実行される。但し、この場合においては、ステップA13及びA14については、どちらか一方のみが実行される態様であっても良い。
【0108】
具体的には、移動量算出部12は、ステップA15が既に実行されている場合は、ステップA14で既に算出した計測対象領域の法線方向における移動量△zを用いて、再度、計測対象領域の面方向における移動量△x’及び△y’を算出する。また、この場合、表面変位算出部13は、再度算出された、計測対象領域の面方向における移動量△x’及び△y’と、計測対象領域の法線方向における移動量Δzとを用いて、再度、計測対象領域における表面変位成分を算出する。
【0109】
一方、ステップA16の判定の結果、ステップA
13〜A15の実行回数が閾値Nに達している場合は、表面変位算出部13は、計測対象領域における表面成分(δδx
ij ,δδy
ij)が算出された処理画像の枚数が閾値mより少ないかどうかを判定する(ステップA17)。ステップA17は、
図6に示したステップA6と同様のステップである。
【0110】
ステップA17の判定の結果、処理画像の枚数が閾値mより少ない場合は、表面変位算出部13は、変位分布算出部11に、再度ステップA11を実行するように指示する。この場合、再度、ステップA11〜A16が実行される。
【0111】
一方、ステップA17の判定の結果、計測対象領域における表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)が算出された処理画像の枚数が閾値mより少なくない場合(枚数が閾値mとなった場合)は、表面変位算出部13は、劣化状態判定部
14に判定を行なうように指示する。これにより、劣化状態判定部
14は、各処理画像の、計測対象領域における表面変位成分(δδx
ij ,δδy
ij)、計測対象領域の面方向における移動量、及び計測対象領域の法線方向における移動量に基づいて、対象物30の劣化状態を判定する(ステップA18)。ステップA18は、
図6に示したステップA7と同様のステップである。
【0112】
[実施の形態における効果]
以上のように本実施の形態によれば、対象物30が外力によって動いてしまった場合でも、動きに合わせて、計測対象領域における変位分布が補正されるため、正確な変位分布が算出される。このため、本実施の形態によれば、対象物30の劣化状態を精度良く判定することができる。
【0113】
また、本実施の形態では、撮像装置20の配置は、
図1に示した例には限定されない。本実施の形態では、撮像装置20は、撮影対象である構造物を側面から撮影するように配置されていても良いし、構造物を斜め方向から撮影するように配置されていても良い。前者の場合は、上述したように計測対象領域は、鉛直方向に平行な領域となる。また、後者の場合は、撮像装置20の位置及び撮影角度に基づき、画像処理によって、撮影画像の向きが変換されて、処理が行われる。
【0114】
[プログラム]
本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、
図6に示すステップA1〜A
7、又は
図7に示すステップA11〜A18を実行させるプログラムであれば良い。これらのプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における変位成分検出装置と変位成分検出方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、変位分布算出部11、移動量算出部12、表面変位算出部13、及び劣化状態判定部14として機能し、処理を行なう。
【0115】
また、本実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、変位分布算出部11、移動量算出部12、表面変位算出部13、及び劣化状態判定部14のいずれかとして機能しても良い。
【0116】
ここで、本実施の形態におけるプログラムを実行することによって、変位成分検出装置10を実現するコンピュータについて
図8を用いて説明する。
図8は、本発明の実施の形態における変位成分検出装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0117】
図8に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0118】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0119】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0120】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0121】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD−ROM(Compact DiskRead Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0122】
なお、本実施の形態における変位成分検出装置10は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、変位成分検出装置10は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0123】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)〜(付記15)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0124】
(付記1)
対象物の計測対象領域を撮影する撮像装置から出力されてきた前記計測対象領域の時系列画像から、画像内での前記計測対象領域に対応する領域における変位分布を算出する、変位分布算出部と、
前記変位分布及び前記計測対象領域を撮影した際の撮影情報に基づいて、前記計測対象領域の面方向における移動量と、前記計測対象領域の法線方向における移動量とを算出する、移動量算出部と、
前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量を用いて、前記変位分布から、前記計測対象領域における表面変位成分を算出する、表面変位算出部と、
を備えている、ことを特徴とする変位成分検出装置。
【0125】
(付記2)
前記計測対象領域における表面変位成分、前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量のうち、少なくとも1つに基づいて、前記対象物の劣化状態を判定する、劣化状態判定部を、
更に備えている、付記1に記載の変位成分検出装置。
【0126】
(付記3)
前記変位分布算出部が、前記時系列画像毎に、画像内での前記計測対象領域に対応する領域における変位分布を算出し、
前記移動量算出部が、前記時系列画像毎に、前記計測対象領域の面方向における移動量と、前記計測対象領域の法線方向における移動量とを算出し、
前記表面変位算出部が、前記時系列画像毎に、前記計測対象領域における表面変位成分を算出し、
前記劣化状態判定部は、設定された枚数分の前記時系列画像について、前記計測対象領域における表面変位成分、前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量が得られた場合に、前記
対象物の劣化状態を判定する、
付記2に記載の変位成分検出装置。
【0127】
(付記4)
前記移動量算出部が、前記表面変位算出部によって前記計測対象領域における表面変位成分が算出された場合に、既に算出している前記計測対象領域の法線方向における移動量を用いて、前記計測対象領域の面方向における移動量及び前記計測対象領域の法線方向における移動量のうち一方又は両方を再度算出し、
前記表面変位算出部が、再度算出された、前記計測対象領域の面方向における移動量及び前記計測対象領域の法線方向における移動量の一方又は両方を用いて、前記計測対象領域における表面変位成分を再度算出する、
付記1〜3のいずれかに記載の変位成分検出装置。
【0128】
(付記5)
前記計測対象領域の面方向が、前記時系列画像の水平方向に対応する方向と、前記時系列画像の垂直方向に対応する方向とを含む、
付記1〜4のいずれかに記載の変位成分検出装置。
【0129】
(付記6)
(a)対象物の計測対象領域を撮影する撮像装置から出力されてきた前記計測対象領域の時系列画像から、画像内での前記計測対象領域に対応する領域における変位分布を算出する、ステップと、
(b)前記変位分布及び前記計測対象領域を撮影した際の撮影情報に基づいて、前記計測対象領域の面方向における移動量と、前記計測対象領域の法線方向における移動量とを算出する、ステップと、
(c)前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量を用いて、前記変位分布から、前記計測対象領域における表面変位成分を算出する、ステップと、
を有することを特徴とする変位成分検出方法。
【0130】
(付記7)
(d)前記計測対象領域における表面変位成分、前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量のうち、少なくとも1つに基づいて、前記対象物の劣化状態を判定する、ステップを、
更に有する、付記6に記載の変位成分検出方法。
【0131】
(付記8)
前記(a)のステップにおいて、前記時系列画像毎に、画像内での前記計測対象領域に対応する領域における変位分布を算出し、
前記(b)のステップにおいて、前記時系列画像毎に、前記計測対象領域の面方向における移動量と、前記計測対象領域の法線方向における移動量とを算出し、
前記(c)のステップにおいて、前記時系列画像毎に、前記計測対象領域における表面変位成分を算出し、
前記(d)のステップにおいて、設定された枚数分の前記時系列画像について、前記計測対象領域における表面変位成分、前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量が得られた場合に、前記
対象物の劣化状態を判定する、
付記7に記載の変位成分検出方法。
【0132】
(付記9)
(e)前記(c)のステップによる前記計測対象領域における表面変位成分が算出された場合に、既に算出している前記計測対象領域の法線方向における移動量を用いて、前記計測対象領域の面方向における移動量及び前記計測対象領域の法線方向における移動量のうち一方又は両方を再度算出する、ステップと、
(f)前記(e)のステップにおいて再度算出された、前記計測対象領域の面方向における移動量及び前記計測対象領域の法線方向における移動量の一方又は両方を用いて、前記計測対象領域における表面変位成分を再度算出する、ステップと、
を更に有する、付記6〜8のいずれかに記載の変位成分検出方法。
【0133】
(付記10)
前記計測対象領域の面方向が、前記時系列画像の水平方向に対応する方向と、前記時系列画像の垂直方向に対応する方向とを含む、
付記6〜9のいずれかに記載の変位成分検出方法。
【0134】
(付記11)
コンピュータに、
(a)対象物の計測対象領域を撮影する撮像装置から出力されてきた前記計測対象領域の時系列画像から、画像内での前記計測対象領域に対応する領域における変位分布を算出する、ステップと、
(b)前記変位分布及び前記計測対象領域を撮影した際の撮影情報に基づいて、前記計測対象領域の面方向における移動量と、前記計測対象領域の法線方向における移動量とを算出する、ステップと、
(c)前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量を用いて、前記変位分布から、前記計測対象領域における表面変位成分を算出する、ステップと、
を実行させ
る、プログラ
ム。
【0135】
(付記12)
前記コンピュータに、
(d)前記計測対象領域における表面変位成分、前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量のうち、少なくとも1つに基づいて、前記対象物の劣化状態を判定する、ステップを、
更に実行させる命令を含む、付記11に記載の
プログラム。
【0136】
(付記13)
前記(a)のステップにおいて、前記時系列画像毎に、画像内での前記計測対象領域に対応する領域における変位分布を算出し、
前記(b)のステップにおいて、前記時系列画像毎に、前記計測対象領域の面方向における移動量と、前記計測対象領域の法線方向における移動量とを算出し、
前記(c)のステップにおいて、前記時系列画像毎に、前記計測対象領域における表面変位成分を算出し、
前記(d)のステップにおいて、設定された枚数分の前記時系列画像について、前記計測対象領域における表面変位成分、前記計測対象領域の面方向における移動量、及び前記計測対象領域の法線方向における移動量が得られた場合に、前記
対象物の劣化状態を判定する、
付記12に記載の
プログラム。
【0137】
(付記14)
前記コンピュータに、
(e)前記(c)のステップによる前記計測対象領域における表面変位成分が算出された場合に、既に算出している前記計測対象領域の法線方向における移動量を用いて、前記計測対象領域の面方向における移動量及び前記計測対象領域の法線方向における移動量のうち一方又は両方を再度算出する、ステップと、
(f)前記(e)のステップにおいて再度算出された、前記計測対象領域の面方向における移動量及び前記計測対象領域の法線方向における移動量の一方又は両方を用いて、前記計測対象領域における表面変位成分を再度算出する、ステップと、
を更に実行させ
る、
付記11〜13のいずれかに記載の
プログラム。
【0138】
(付記15)
前記計測対象領域の面方向が、前記時系列画像の水平方向に対応する方向と、前記時系列画像の垂直方向に対応する方向とを含む、
付記11〜14のいずれかに記載の
プログラム。