(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用される熱間圧延ラインの要部の構成図である。
【0011】
図1の熱間圧延ラインにおいて、仕上圧延機1は、図示されない粗圧延機の下流側に設けられる。加速冷却装置2は、仕上圧延機1の下流側に設けられる。ROT冷却装置3は、加速冷却装置2の下流側に設けられる。巻取コイラー4は、ROT冷却装置3の下流側に設けられる。
【0012】
加速冷却装置2は、冷却水の供給系統で複数のバンク2aに区分される、複数のバンク2aは、熱間圧延ラインの長さ方向に並ぶ。複数のバンク2aの各々は、複数の注水バルブ2bを備える。複数の注水バルブ2bは、圧延熱間圧延ラインの長さ方向に並ぶ。複数の注水バルブ2bに対し、複数のノズル2cが設けられる。複数のノズル2cは、熱間圧延ラインの幅方向に並ぶ。
【0013】
ROT冷却装置3は、注水装置と搬送テーブルから構成される。ROT冷却装置3において、注水装置は、加速冷却装置2よりも高い位置に設けられる。ROT冷却装置3において、注水装置は、冷却水の供給系統で複数のバンク3aに区分される。複数のバンク3aは、熱間圧延ラインの長さ方向に並ぶ。複数のバンク3aの各々は、複数の注水バルブ3bを備える。複数の注水バルブ3bは、熱間圧延ラインの長さ方向に並ぶ。複数の注水バルブ3bに対し、複数のノズル3cが設けられる。複数のノズル3cは、熱間圧延ラインの幅方向に並ぶ。
【0014】
仕上圧延機出側温度計5は、仕上圧延機1と加速冷却装置2との間に設けられる。中間温度計6は、加速冷却装置2とROT冷却装置3との間に設けられる。巻取温度計7は、ROT冷却装置3と巻取コイラー4との間に設けられる。
【0015】
仕上圧延機1は、圧延材8を仕上圧延する。その後、仕上圧延機出側温度計5は、冷却前に当該圧延材8の全長の初期温度をFDT実績値として計測する。その後、加速冷却装置2は、図示されないインバータで図示されないポンプを駆動して高圧で注水することで当該圧延材8を加速冷却する。加速冷却において、圧延材8の冷却速度は、通常の水冷よりも速くなる。その結果、圧延材8の結晶組織が調整されることで、圧延材8の機械的性質が変化する。
【0016】
その後、中間温度計6は、当該圧延材8の全長の初期温度をMT実績値として計測する。その後、ROT冷却装置3は、一定の圧力で注水することで当該圧延材8を冷却する。その後、巻取温度計7は、当該圧延材8の全長の初期温度をCT実績値として計測する。その後、巻取コイラー4は、当該圧延材8を巻き取る。
【0017】
温度制御装置9は、加速側計算部9aとROT側計算部9bと制御部9cとを備える。
【0018】
加速側計算部9aは、温度モデルを用いて加速冷却装置2の各バンク2aの出入側における圧延材8の温度を事前に予測する。ROT側計算部9bは、温度モデルを用いてROT冷却装置3の各バンク3aの出入側における圧延材8の温度を事前に予測する。制御部9cは、加速側計算部9aによる予測結果に基づいて加速冷却装置2の各注水バルブ2bの開閉を制御する。制御部9cは、ROT側計算部9bによる予測結果に基づいてROT冷却装置3の各注水バルブ3bの開閉を制御する。
【0019】
圧延材8が巻取コイラー4に巻き取られた後、加速側計算部9aは、仕上圧延機出側温度計5からのFDT実績値と中間温度計6からのMT実績値とに基づいて加速冷却装置2における温度モデルを学習する。ROT側計算部9bは、中間温度計6からのMT実績値と巻取温度計7からのCT実績値とに基づいてROT冷却装置3における温度モデルを学習する。
【0020】
具体的には、温度制御装置9は、各切板のFDT実績値を開始点として、最終的なCT予測値がCT目標値に到達するように、各切板の加速冷却装置2の各バンク2aとROT冷却装置3の各バンク3aの入出側の温度予測計算を行う。温度制御装置9は、加速冷却装置2の各バンク2aへの冷却水量の基準値(V
1acc、C
2acc、・・・C
nacc)とROT冷却装置3の各バンク3aへの冷却水量の基準値(V
1rot、C
2rot、・・・C
nrot)とを決定する。
【0021】
各バンク2aにおいては、当該基準値に基づいて開く注水バルブ2bの数を決定する。各バンク3aにおいては、当該基準値に基づいて開く注水バルブ3bの数を決定する。
【0022】
圧延材8の切板が中間温度計6の位置に達した際、温度制御装置9は、中間温度計6の位置による誤差が0になるように加速冷却装置2における温度モデルを学習する。圧延材8が巻取温度計7の位置に達した際、温度制御装置9は、巻取温度計7の位置による誤差が0になるようにROT冷却装置3における温度モデルを学習する。この際、各切板の温度予測における初期温度はMT実績値を初期値とする。
【0023】
次に、
図2を用いて、温度モデルの考え方を説明する。
図2は実施の形態1における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用される切板の斜視図である。
【0024】
図2に示されるように、圧延材8がROT冷却装置3の直下においてローラーテーブル10で搬送される際、熱の出入りは、圧延材8を一定長の切板8aに分割した上で計算される。例えば、一定長は、3mから5mの間で設定される。
【0025】
熱の出入りの要素としては、水冷熱伝達、放射、相変態よる発熱等が考えられる。例えば、水冷熱伝達のみが要素とされる場合、水冷による抜熱量(W)は、次の(1)式で表される。
【0027】
(1)式において、h
wは水冷熱伝達係数(W/mm
2/℃)である。h
wは加速冷却装置2とROT冷却装置3とで異なる。A
wは冷却水と接触する切板8aの上下面の面積(mm
2)である。A
wは各バンクにおいて開く注水バルブの数で変化する。T
wは冷却水の温度(℃)である。T
surfは切板8aの表面温度(℃)である。
【0028】
この際、各切板8aの温度変化は、次の(2)式で表される。
【0030】
(2)式において、Tは切板8aの温度(℃)である。ρは切板8aの密度(kg/mm
3)である。C
Pは切板8aの比熱(J/kg/℃)である。lは切板8aの進行方向長さ(mm)である。Bは切板8aの幅(mm)である。Hは切板8aの板厚(mm)である。tは時間(s)である。iは切板8aの番号である。
【0031】
次に、
図3と
図4とを用いて、温度モデルの学習を説明する。
図3は実施の形態1における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用される加速冷却装置の内部での各切板の温度変化の予測値と実績値(再予測値)を示す図である。
図4は実施の形態1における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用されるROT冷却装置の内部での各切板の温度変化の予測値と実績値(再予測値)を示す図である。
【0032】
図3に示されるように、加速冷却装置2における冷却制御に関し、MT実績値に対して温度モデルの予測誤差があった場合、当該予測誤差の値を用いて各バンク2aの入出側における予測値が再計算される。その結果、各バンク2aの入出側における圧延材8の温度の実績値として確からしい値が求められる。
【0033】
図4に示されるように、ROT冷却装置3における冷却制御に関し、CT実績値に対して温度モデルの予測誤差があった場合、当該予測誤差の値を用いて各バンク3aの入出側における予測値が再計算される。その結果、各バンク3aの入出側における圧延材8の温度の実績値として確からしい値が求められる。
【0034】
次に、
図5と
図6とを用いて、圧延材8の巻き取り完了後の学習機能の概要を説明する。
図5は実施の形態1における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用される加速冷却装置での温度モデルの誤差学習の流れを示す図である。
図6は実施の形態1における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用されるROT冷却装置での温度モデルの誤差学習の流れを示す図である。
【0035】
図5において、次の(3)式に示されるように、加速冷却装置2の水冷熱伝達係数h
waccの学習値であるZ
1accとZ
2accとが自動調整される。
【0037】
(3)式において、v
aacc(m/s)は加速冷却装置2の内部での各切板8aの平均速度である。v
0(m/s)は加速冷却装置2の内部での各切板8aの基準速度である。f
waccはモデル予測関数である。Z
1accは温度モデルの予測値に対する乗算型の学習値である。Z
2accは速度比に対するべき乗型の学習値である。
【0038】
圧延材8における冷却現象は、圧延材8が高速で移動するときと圧延材8が静止しているときとで異なる。このため、(3)式に示されるように、速度の影響は、学習項で調整される。
【0039】
具体的には、圧延材8の全長の先端に近い部分であるHead部の特定の切板8aのデータを用いて、当該切板8aのMT予測値の誤差が0になるようにZ
1accが求められる。この際、Z
2accは、0として扱われる。
【0040】
圧延材8の加速中または加速後の部分であるMiddle部の特定の切板8aのデータを用いてMT予測値の誤差が0になるようにZ
2accが求められる。この際、Z
1accは、Head部において求められた値が用いられる。
【0041】
求められたZ
1accとZ
2accとが(3)式に代入されることで、全ての切板8aの再予測値が計算される。Head部とMiddle部との予測誤差を0にすることで、圧延材8の全長における精度が改善される。
【0042】
図6において、次の(4)式に示されるように、ROT冷却装置3の水冷熱伝達係数h
wrotの学習値であるZ
1rotとZ
2rotとが自動調整される。
【0044】
(4)式において、v
arot(m/s)はROT冷却装置3の内部での各切板8aの平均速度である。v
0(m/s)はROT冷却装置3の内部での各切板8aの基準速度である。f
wrotはモデル予測関数である。Z
1rotは温度モデルの予測値に対する乗算型の学習値である。Z
2rotは速度比に対するべき乗型の学習値である。
【0045】
圧延材8における冷却現象は、圧延材8が高速で移動するときと圧延材8が静止しているときとで異なる。このため、(4)式に示されるように、速度の影響は、学習項で調整される。
【0046】
具体的には、圧延材8の全長の先端に近い部分であるHead部の特定の切板8aのデータを用いて、当該切板8aのCT予測値の誤差が0になるようにZ
1rotが求められる。この際、Z
2rotは、0として扱われる。
【0047】
圧延材8の加速中または加速後の部分であるMiddle部の特定の切板8aのデータを用いてCT予測値の誤差が0になるようにZ
2rotが求められる。この際、Z
1rotは、Head部において求められた値が用いられる。
【0048】
求められたZ
1rotとZ
2rotとが(4)式に代入されることで、全ての切板8aの再予測値が計算される。Head部とMiddle部との予測誤差を0にすることで、圧延材8の全長における精度が改善される。
【0049】
以上で説明した実施の形態1によれば、温度制御装置9は、加速冷却装置2とROT冷却装置3とにおいて水冷熱伝達係数とを別々に設定する。このため、温度モデルの精度を高めることができる。
【0050】
また、温度制御装置9は、温度モデルによって予測した当該圧延材8の冷却後の温度の予測値と実際の温度の実測値との差に基づいて、当該圧延材8の温度の予測値を補正するための学習値を計算する。このため、温度モデルの精度をより高めることができる。
【0051】
また、温度制御装置9は、MT実績値に基づいて、当該圧延材8の温度の予測値を補正するための学習値を計算する。このため、温度モデルの精度をより高めることができる。
【0052】
なお、中間温度計6の周辺の注水バルブ2bを開くと、中間温度計6の直下において、冷却水が圧延材8の表面を覆った状態に維持され得る。このため、中間温度計6において、圧延材8の表面温度が正確に計測されない場合もある。この場合、中間温度計6に近いバンク2aの全ての注水バルブ2bを全て閉じることで巻取温度計7の直下において、冷却水が圧延材8の表面を覆うことを抑制できる。その結果、中間温度計6において、圧延材8の表面温度を正確に計測することができる。中間温度計6に近いバンク2aの全てのち注水バルブ2bの全てを閉じることが難しい場合は、中間温度計6により近い注水バルブ2bを優先的に閉じればよい。
【0053】
次に、
図7を用いて、温度制御装置9の例を説明する。
図7は実施の形態1における熱間圧延ラインの温度制御装置のハードウェア構成図である。
【0054】
温度制御装置9の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0055】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、温度制御装置9の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、温度制御装置9の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0056】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、温度制御装置9の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、温度制御装置9の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0057】
温度制御装置9の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、制御部9cの機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、制御部9cの機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0058】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで温度制御装置9の各機能を実現する。
【0059】
実施の形態2.
図8は実施の形態2における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用されるROT冷却装置の内部での各切板の温度変化の予測値と実績値(再予測値)を示す図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0060】
図8に示されるように、実施の形態2においては、圧延材8の冷却中に、各切板8aが中間温度計6の直下を通過した際、当該切板8aのMT予測値とMT実績値との間において、温度モデルの予測誤差がある場合、ROT冷却装置3の内部における開始点(MT)をMT実績値に修正した上で、CT目標値に到達するようにROT冷却装置3の内部における圧延材8の温度変化の予測値が再計算される。再計算された予測値が達成されるように、各バンク3aへの冷却水量の基準値(V
1rot、V
2rot、・・・V
Mrot)が修正される。
【0061】
以上で説明した実施の形態2によれば、温度制御装置9は、中間温度計6による当該圧延材8の温度の実績値と温度の予測値との間に温度モデルの予測誤差があった場合に、当該誤差を補償するようにROT冷却装置3の注水バルブ3bを制御する。このため、温度モデルの精度をより高めることができる。
【0062】
また、温度制御装置9は、中間温度計6による当該圧延材8の温度実績値と温度予測値との間に温度モデルの誤差があった場合に、中間温度計6による当該圧延材8の温度の実績値を初期値としてROT冷却装置3の内部における当該圧延材8の温度変化の予測値を再計算する。このため、温度モデルの精度をより高めることができる。
【0063】
実施の形態3.
図9は実施の形態3における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用される加速冷却装置の内部での各切板の温度変化の予測値と実績値(再予測値)を示す図である。
図10は実施の形態1における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用されるROT冷却装置の内部での各切板の温度変化の予測値と実績値(再予測値)を示す図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0064】
実施の形態3においては、加速冷却装置2とROT冷却装置3とを単体のみで用いる冷却効率の同定実験が事前に行われる。各切板8aのFDT実績値からCT実績値を引いた値である温度降下の実績値(℃)と開いた注水バルブの本数の実績とに基づいて、加速冷却装置2とROT冷却装置3とのバルブ一本当たりの冷却効率(℃/valve)が計算される。この際の圧延材8の速度パターンは、通常の圧延と同様である。
【0065】
ここで、加速冷却装置2の冷却効率をa(k)(℃/valve)とする。ROT冷却装置3の冷却効率をb(k)(℃/valve)とする。加速冷却装置2で使用した注水バルブ2bの数をA(k)(valve)とする。ROT冷却装置3で使用した注水バルブ3bの数をB(k)(valve)とする。kは切板8aの番号である。
【0066】
この場合、加速冷却装置2の温度降下予測値は、a(k)×A(k)(℃)である。ROT冷却装置3の温度降下予測値は、b(k)×B(k)(℃)である。
【0067】
各切板8aに対する加速冷却装置2による温度降下実績は、次の(5)式により計算される。
【0069】
各切板8aに対するROT冷却装置3による温度降下実績は、次の(6)式により計算される。
【0071】
加速冷却装置2に関しては、
図9に示されるように、FDT実績値から(5)式に示す値を引いた値をMT実績値として各バンク2aの入出側における予測値が再計算される。
【0072】
ROT冷却装置3に関しては、
図10に示されるように、MT実績値を初期値として、当該初期値から(6)式に示す値引いた値をCT実績値として各バンク3aの入出側における予測値が再計算される。
【0073】
以上で説明した実施の形態3によれば、温度制御装置9は、加速冷却装置2を単体で使用する同定実験により得られた冷却効率と加速冷却装置2とROT冷却装置3との上流側から下流側への当該圧延材8の温度降下の実績値と加速冷却装置2において使用されたスプレーの本数から1バルブあたりの冷却効率を計算する。温度制御装置9は、ROT冷却装置3を単体で使用する同定実験により得られた冷却効率と加速冷却装置2とROT冷却装置3との上流側から下流側への当該圧延材8の温度降下の実績値とROT冷却装置3において使用されたスプレーの本数から1バルブあたりの冷却効率を計算する。このため、温度モデルの精度をより高めることができる。
【0074】
なお、温度制御装置9は、加速冷却装置2とROT冷却装置3との比を用いて、加速冷却装置2の冷却効率とROT冷却装置3と冷却効率とを計算してもよい。この場合も、温度モデルの精度をより高めることができる。
【0075】
実施の形態4.
図11は実施の形態4における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用される加速冷却装置の内部での各切板の温度変化の予測値と実績値(再予測値)を示す図である。
図12は実施の形態4における熱間圧延ラインの温度制御装置が適用されるROT冷却装置の内部での各切板の温度変化の予測値と実績値(再予測値)を示す図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0076】
実施の形態4においては、加速冷却装置2とROT冷却装置3とを単体のみで用いる冷却効率の同定実験が事前に行われる。各切板8aのFDT実績値からCT実績値を引いた値を温度降下の実績値(℃)と開いたバルブのスプレー流量(m
3/h)の実績とに基づいて、加速冷却装置2とROT冷却装置3とのバルブ一本当たりの冷却効率(℃/m
3/h)が計算される。この際の圧延材8の速度パターンは、通常の圧延と同様である。
【0077】
ここで、加速冷却装置2の冷却効率をα(k)(℃/m
3/h)とする。ROT冷却装置3の冷却効率をβ(k)(℃/m
3/h)とする。加速冷却装置2で使用した注水バルブ2bの数をA(k)(valve)とする。ROT冷却装置3で使用した注水バルブ3bの数をB(k)(valve)とする。加速冷却装置2における1注水バルブ2bあたりのスプレー流量をP
a(m
3/h/valve)とする。ROT冷却装置3における1注水バルブ3bあたりのスプレー流量をP
b(m
3/h/valve)とする。
【0078】
この場合、加速冷却装置2の温度降下予測値は、α(k)×A(k)×P
a(℃)である。ROT冷却装置3の温度降下予測値は、β(k)×B(k)×P
b(℃)である。
【0079】
各切板8aに対する加速冷却装置2による温度降下実績は、次の(7)式により計算される。
【0081】
各切板8aに対するROT冷却装置3による温度降下実績は、次の(8)式により計算される。
【0083】
加速冷却装置2に関しては、
図11に示されるように、FDT実績値から(7)式に示す値を引いた値をMT実績値として各バンク2aの入出側における予測値が再計算される。
【0084】
ROT冷却装置3に関しては、
図12に示されるように、MT実績値を初期値として、当該初期値から(8)式に示す値引いた値をCT実績値として各バンク3aの入出側における予測値が再計算される。
【0085】
以上で説明した実施の形態4によれば、温度制御装置9は、加速冷却装置2を単体で使用する同定実験により得られた冷却効率と加速冷却装置2とROT冷却装置3との上流側から下流側への当該圧延材8の温度降下の実績値と加速冷却装置2において使用されたスプレー流量の体積から1バルブあたりの冷却効率を計算する。温度制御装置9は、ROT冷却装置3を単体で使用する同定実験により得られた冷却効率と加速冷却装置2とROT冷却装置3との上流側から下流側への当該圧延材8の温度降下の実績値とROT冷却装置3において使用されたスプレー流量の体積から1バルブあたりの冷却効率を計算する。このため、温度モデルの精度をより高めることができる。
【0086】
なお、ROT冷却装置3の下流側に加速冷却装置2が設けられた熱間圧延ラインに対し、実施の形態1から実施の形態4のいずれかの温度制御装置9を適用してもよい。この場合も、温度モデルの精度を高めることができる。