(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る蓄電デバイス用弁構造体、及びこれを備える蓄電デバイスについて説明する。
【0025】
[1.第1実施形態]
<1−1.蓄電デバイスの全体構成>
図1に、本実施形態に係る蓄電デバイス1の平面図を示す。
図2は、
図1のII−II断面図である。これらの図では、本来外部から視認できない部位が、参考のため、部分的に点線で示されている。以下では、説明の便宜のため、特に断らない限り、
図1の上下方向を「前後」と称し、左右方向を「左右」と称し、
図2の上下方向を「上下」と称する。ただし、蓄電デバイス1の使用時の向きは、これに限定されない。
【0026】
蓄電デバイス1は、収容体101と、これに収容された蓄電デバイス素子400とを備える。収容体101は、容器100と、容器100に取り付けられたタブ300及びタブフィルム310とを備える。蓄電デバイス素子400は、容器100の内部空間S1に収容される。
【0027】
容器100は、包装材料110及び120から構成される。平面視における容器100の外周部分においては、包装材料110及び120がヒートシールされ、互いに融着しており、これにより、周縁シール部130が形成されている。そして、この周縁シール部130により、外部空間から遮断された容器100の内部空間S1が形成される。周縁シール部130は、容器100の内部空間S1の周縁を画定する。なお、ここでいうヒートシールの態様には、熱源からの加熱融着、超音波融着等の態様が想定される。いずれにせよ、周縁シール部130とは、包装材料110及び120が融着され、一体化している部分を意味する。
【0028】
包装材料110及び120は、例えば、樹脂成形品又はフィルムから構成される。ここでいう樹脂成形品とは、射出成形や圧空成形、真空成形、ブロー成形等の方法により製造することができ、意匠性や機能性を付与するためにインモールド成形を行ってもよい。樹脂の種類は、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ABS等とすることができる。また、ここでいうフィルムとは、例えば、インフレーション法やTダイ法等の方法により製造することができる樹脂フィルムや、このような樹脂フィルムを金属箔に積層したものである。また、ここでいうフィルムは、延伸されたものであってもなくてもよく、単層のフィルムであっても多層フィルムであってもよい。また、ここでいう多層フィルムは、コーティング法により製造されてもよいし、複数枚のフィルムが接着剤等により接着されたものでもよいし、多層押出法により製造されてもよい。
【0029】
以上のとおり、包装材料110及び120は様々に構成することができるが、本実施形態では、ラミネートフィルムから構成される。ラミネートフィルムは、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層を積層した積層体とすることができる。基材層は、包装材料110及び120の基材として機能し、典型的には、容器100の外層側を形成し、絶縁性を有する樹脂層である。バリア層は、包装材料110及び120の強度向上の他、蓄電デバイス1内に少なくとも水分等が侵入することを防止する機能を有し、典型的には、アルミニウム合金等からなる金属層である。熱融着性樹脂層は、典型的には、ポリオレフィン等の熱融着可能な樹脂からなり、容器100の最内層を形成する。
【0030】
容器100の形状は、特に限定されず、例えば、袋状(パウチ状)とすることができる。ここでいう袋状には、三方シールタイプ、四方シールタイプ、ピロータイプ、ガセットタイプ等が考えられる。ただし、本実施形態の容器100は、
図2のような形状を有し、トレイ状に成形された包装材料110と、同じくトレイ状に成形され、包装材料110の上から重ね合わされた包装材料120とを、平面視における外周部分に沿ってヒートシールすることにより製造される。包装材料110は、平面視における外周部分に相当する角環状のフランジ部114と、フランジ部114の内縁に連続し、そこから下方に膨出する成形部112とを含む。同様に、包装材料120は、平面視における外周部分に相当する角環状のフランジ部124と、フランジ部124の内縁に連続し、そこから上方に膨出する成形部122とを含む。包装材料110及び120は、それぞれの成形部112及び122が互いに反対方向に膨出するように重ね合わされる。この状態で、包装材料110のフランジ部114と、包装材料120のフランジ部124とが、一体化するようにヒートシールされ、周縁シール部130を構成する。周縁シール部130は、容器100の外周全周に亘って延び、角環状に形成される。なお、包装材料110及び120の一方は、シート状であってもよい。
【0031】
蓄電デバイス素子400は、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えており、例えば、リチウムイオン電池(二次電池)やキャパシタ等の蓄電部材である。蓄電デバイス1に異常が生じると、容器100の内部空間S1にガスが発生し得る。また、蓄電デバイス1がキャパシタである場合には、キャパシタにおける化学反応に起因して容器100の内部空間S1にガスが発生し得る。また、蓄電デバイス1は、全固体電池であってもよく、この場合、蓄電デバイス素子400は、ガスを発生し得る固体電解質を含み得る。例えば、固体電解質が硫化物系である場合、硫化水素のガスが発生し得る。
【0032】
タブ300は、蓄電デバイス素子400の電力の入出力に用いられる金属端子である。タブ300は、容器100の周縁シール部130の左右方向の端部に分かれて配置されており、一方が正極側の端子を構成し、他方が負極側の端子を構成する。各タブ300の左右方向の一方の端部は、容器100の内部空間S1において蓄電デバイス素子400の電極(正極又は負極)に電気的に接続されており、他方の端部は、周縁シール部130から外側に突出している。以上の蓄電デバイス1の形態は、例えば、蓄電デバイス1を多数直列接続して高電圧で使用する電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両で使用するのに特に好ましい。なお、正極及び負極の端子を構成する2つのタブ300の取付け位置は特に限定されず、例えば、周縁シール部130の同じ1つの辺に配置されていてもよい。
【0033】
タブ300を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅等である。蓄電デバイス素子400がリチウムイオン電池である場合、正極に接続されるタブ300は、典型的には、アルミニウム等によって構成され、負極に接続されるタブ300は、典型的には、銅、ニッケル等によって構成される。
【0034】
左側のタブ300は、周縁シール部130のうち左端部において、タブフィルム310を介して包装材料110及び120に挟まれている。右側のタブ300も、周縁シール部130のうち右端部において、タブフィルム310を介して包装材料110及び120に挟まれている。
【0035】
タブフィルム310は、いわゆる接着性フィルムであり、包装材料110及び120と、タブ300(金属)との両方に接着するように構成されている。タブフィルム310を介することによって、タブ300と、包装材料110及び120の最内層(熱融着性樹脂層)とが異素材であっても、両者を固定することができる。
【0036】
蓄電デバイス1の動作に伴い、容器100の内部空間S1でガスが発生すると、内部空間S1の圧力が徐々に上昇してゆく。内部空間S1の圧力が過剰に上昇すると、容器100が破裂し、蓄電デバイス1が破壊される虞がある。収容体101は、このような事態を防止するための機構として、弁構造体200を備える。弁構造体200は、内部空間S1の圧力を調整するためのガス抜き弁であり、容器100の周縁シール部130に取り付けられている。以下、弁構造体200の構成について、詳細に説明する。
【0037】
<1−2.弁構造体の構成>
図3は、弁構造体200の平面図である。同図に示すとおり、弁構造体200は、ケーシング201を有し、ケーシング201は、第1部分10、第2部分20及び第3部分30を含む。本実施形態では、これらの部分10〜30は、第1部分10、第3部分30、第2部分20の順に、容器100の内部から外部に向かう方向(後ろ側から前側へ向かう方向)に連続して配置される。
図4は、弁構造体200を第1部分10側から(後ろ側から)視た図であり、
図5は、弁構造体200を第2部分20側から(前側から)視た図である。
【0038】
図6は、
図4のVI−VI断面図であり、
図7は、
図3のVII−VII断面図である。
図6及び
図7に示す通り、弁構造体200は、繰り返しのガス抜きが可能な複数の逆止弁を含み、本実施形態では、第1逆止弁21及び第2逆止弁22の2つの逆止弁を含む。逆止弁21及び22は、各々、その一次側の圧力に応じて、開状態と閉状態との間を切り替わるリリーフ弁である。ケーシング201の内部には、通路L1が形成されている。通路L1は、容器100の内外を連通させる通路であり、容器100の内部空間S1に面する入口O1と、外部空間に面する出口O2とを有する。逆止弁21及び22は、通路L1の延びる方向に沿って配列されており、第2逆止弁22は、第1逆止弁21の二次側に配置される。通路L1は、逆止弁21及び22が開弁することにより、内部空間S1において発生したガスを容器100の外部へ排出することができる。なお、逆止弁21及び22は、同時に開くとは限らず、しばしば、異なるタイミングで開状態となる。
【0039】
逆止弁21及び22は、各々、閉状態において、通路L1の延びる方向に沿って異なる位置において通路L1を閉塞するように配置される。本実施形態では、逆止弁21及び22に含まれるボディを構成する部分(弁箱)は、第2部分20により構成され、逆止弁21及び22に含まれる弁機構は、第2部分20の内部に配置される。今、通路L1に含まれる空間であって、第1逆止弁21の二次側かつ第2逆止弁22の一次側に位置する空間を、弁間空間S2と呼ぶ。第1逆止弁21は、内部空間S1において発生したガスに起因して内部空間S1の圧力が上昇した場合に、開状態となり、ガスをその一次側からその二次側へ、すなわち、弁間空間S2へ通過させる。第1逆止弁21が開状態となり、内部空間S1で発生したガスが弁間空間S2に流入すると、弁間空間S2の圧力が上昇する。第2逆止弁22は、このようにして弁間空間S2の圧力が上昇した場合に開状態となり、ガスをその一次側からその二次側へ、すなわち、外部空間へ通過させる。弁構造体200は、逆止弁21及び22のいずれかの閉状態において、内部空間S1を外部空間から密閉する。
【0040】
第1部分10は、弁構造体200を容器100に取り付けるための部位である。第1部分10は、容器100の成形時に、包装材料110及び120とともにヒートシールされる。このヒートシールにより、第1部分10の外周面と、包装材料110及び120とが融着して接合され、第1部分10は、包装材料110及び120に挟まれる態様で、周縁シール部130に固定される(
図2参照)。
【0041】
第3部分30は、周縁シール部130の外側に配置されており、包装材料110及び120に挟まれていない(
図1及び
図2参照)。また、第3部分30よりもさらに外側に配置される第2部分20も、周縁シール部130の外側に配置されており、包装材料110及び120に挟まれていない。その結果、第1部分10を容器100にヒートシールにより取り付ける時の熱で、第2部分20に保持される、逆止弁21及び22に含まれる弁機構を構成する各種部品が変形等により破壊される虞が低減される。
【0042】
第1部分10、第2部分20及び第3部分30は、互いに同軸に延びる。ここで、これらの部分10〜30に共通する中心軸を、参照符号C1で表す。第1部分10は、第1通気路A1を有し、第2部分20は、第2通気路A2を有し、第3部分30は、第3通気路A3を有する。これらの通気路A1〜A3も、中心軸C1を中心軸として、互いに同軸に延びる。本実施形態では、入口O1及び出口O2は、ケーシング201の外周面ではなく、前後方向の端面に配置されており、特に、前後方向に直線状に延びる中心軸C1は、入口O1及び出口O2の中心を通る。これに限定されないが、通気路A1〜A3の中心軸C1に直交する断面は、円形である。通気路A1〜A3は、互いに連通しており、全体として通路L1を構成する。第3通気路A3は、第1通気路A1よりも容器100の外部側に配置され、第3通気路A3よりもさらに容器100の外部側に、第2通気路A2が配置される。
【0043】
図4及び
図5に示す通り、第2部分20の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱形状である。一方、
図4に示す通り、第3部分30の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱の一部を切り欠いたような形状を有する。より具体的には、第3部分30の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱を、中心軸C1から一定の距離を空けた平面で切り欠くとともに、中心軸C1に対し当該平面と対称な位置にある平面でさらに切り欠いたような形状を有する。よって、第3部分30は、一対の平面D1及びD2を有する。以下、D1で示される平面を第1平面と呼び、D2で示される平面を第2平面と呼ぶことがある。第1平面D1及び第2平面D2は、互いに平行(略平行である場合を含む。以下、同様。)である。第1平面D1及び第2平面D2は、中心軸C1の延びる方向に平行(略平行な場合を含む。以下、同様。)である。また、本実施形態では、第1平面D1及び第2平面D2は、周縁シール部130が延びる方向に平行(略平行な場合を含む。以下、同様。)である。第3部分30の外周面は、第1平面D1及び第2平面D2と、これらの平面D1及びD2を連結する湾曲面D3及びD4とにより構成される。湾曲面D3及びD4は、各々、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、中心軸C1を中心とする円弧状であり、第2部分20の外形に重なる。以上のような第3部分30は、一対の平面D1及びD2が形成されるように円筒形の部材の外周面を切削することにより、成形することができる。
【0044】
第1部分10は、
図4に示す通り、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、その外形が非円形である。より具体的には、第1部分10は、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、その左右方向の中央部から左に向かうほど薄く形成された第1翼状部41と、右に向かうほど薄く形成された第2翼状部42とを有する。よって、本実施形態では、第1部分10は、蓄電デバイス1の幅方向(左右方向)の中央部に近づくほど厚くなり、蓄電デバイス1の幅方向(左右方向)の端部に近づくほど薄くなる。
【0045】
本実施形態では、翼状部41及び42により、第1部分10の外周面は、包装材料110に覆われる下側半分においても、包装材料120に覆われる上側半分においても、それぞれ滑らかな湾曲面を描いている。また、翼状部41及び42により、例えば第1部分10が円筒状に形成されている場合と比べ、周縁シール部130のうち第1部分10が挟まれていない部分から周縁シール部130のうち第1部分10が挟まれている部分へ移行する位置において、蓄電デバイス1の上下方向の厚みの変化が滑らかになる。その結果、周縁シール部130において第1部分10が取り付けられている位置の周辺部分において、包装材料110及び120に無理な力が加わらないため、第1部分10を周縁シール部130に強固に固定することができる。
【0046】
以上のとおり、本実施形態では、第1部分10、第2部分20及び第3部分30の外形は、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、それぞれの部分に割り当てられている役割に応じて、いずれも異なる形状を有する。
【0047】
第2部分20は、逆止弁21及び22に含まれる弁機構を保持する。当該弁機構は、容器100の内部空間S1において発生したガスに起因して内部空間S1の圧力が上昇した場合に、第1通気路A1及び第3通気路A3を通過したガスを第2通気路A2を介して容器100の外部側へ通過させる。すなわち、第2部分20には、弁構造体200のガス抜き弁としての機能を発揮するための主な構造を有する部分が保持される。本実施形態では、第2部分20の内部の第2通気路A2内に、逆止弁21に含まれる弁機構としてのバネ212、弁体213及び弁座214と、逆止弁22に含まれる弁機構としてのバネ222、弁体223及び弁座224とが収容される。これらの部222〜224及び212〜214は、第2通気路A2内において出口O2から入口O1に向かって、この順に配置されている。なお、本実施形態では、
図6及び
図7に示す通り、第2部分20と弁座214とが別部品として構成されているが、これらを一体的に構成してもよい。弁座224についても、同様である。また、本実施形態では、
図6及び
図7に示す通り、第1部分10〜第3部分30が3つの部品から構成されるが、1つ又は2つの部品、或いは4つ以上の部品から構成されていてもよい。すなわち、ケーシング201は、任意の数の部品から構成することができる。また、本実施形態では、
図6及び
図7に示す通り、第2部分20が、逆止弁21を保持する部分と逆止弁22を保持する部分とに分離されているが、これらが一体的に構成されていてもよい。
【0048】
弁座214は、バネ212により外側から付勢される弁体213を受け取り、このとき、弁構造体200の閉状態が形成される。バネ212は、
図6及び
図7の例では、コイルばねであるが、これに限定されず、例えば、板バネとすることもできる。本実施形態では、弁座214は、円筒状である。弁体213は、半球状であり、球面側が弁座214の天面で受け取られる。また、弁体213において弁座214と反対側の面には、前後方向に延びる円柱状の部材が連続している。当該円柱状の部材は、バネ212の内側の空間に挿入され、これにより、弁体213とバネ212とが連結される。逆止弁21及び22は、本実施形態は、同様の構造を有する。従って、バネ222、弁体223及び弁座224は、それぞれバネ212、弁体213及び弁座214と同様の構造を有し、同様に動作する。
【0049】
第1部分10は、容器100の内部空間S1において発生したガスが第1通気路A1に流入するように、周縁シール部130に固定される。すなわち、第1部分10の内部の第1通気路A1は、容器100の内部空間S1に連通している。よって、内部空間S1の圧力、すなわち、第1逆止弁21の一次側の空間の圧力が所定の圧力に達すると、内部空間S1から流れ出し、第1通気路A1及び第3通気路A3を通過したガスが、弁体213を第2逆止弁22側に押圧する。弁体213が押圧され、弁座214から離れると、バネ212が変形して、弁体213が第2逆止弁22側へ移動し、第1逆止弁21の開状態が形成される。この開状態において、内部空間S1に発生したガスは、弁体213と弁座214との間に形成された隙間を介して、弁間空間S2に流れ出す。このようにして、内部空間S1のガスが第1逆止弁21の二次側に排出されると、弁体213を第2逆止弁22側に押圧する内部空間S1側の圧力が弱まり、これよりもバネ212が弁体213を入口O1側に付勢する力が大きくなる。その結果、バネ212の形状が復元し、再度、第1逆止弁21の閉状態が形成される。
【0050】
第1逆止弁21が開弁し、第2通気路A2に含まれる弁間空間S2の圧力、すなわち、第2逆止弁22の一次側の空間の圧力が所定の圧力に達すると、弁間空間S2のガスが、弁体223を出口O2側に押圧する。弁体223が押圧され、弁座224から離れると、バネ222が変形して、弁体223が出口O2側へ移動し、第2逆止弁22の開状態が形成される。この開状態において、弁間空間S2に収容されていたガスは、弁体223と弁座224との間に形成された隙間を介して出口O2に向かって流れ出し、出口O2を介して外部空間へ排出される。このようにして、弁間空間S2のガスが通路L1を介して排出されると、弁体223を出口O2側に押圧する弁間空間S2側の圧力が弱まり、これよりもバネ222が弁体223を第1逆止弁21側に付勢する力が大きくなる。その結果、バネ212の形状が復元し、再度、第2逆止弁22の閉状態が形成される。
【0051】
逆止弁21及び22は、各々、閉状態において、外部空間から容器100の内部空間S1への大気の進入を防止することができる。なお、外部空間から内部空間S1内へ大気が進入するためには、複数の逆止弁21及び22を逆流しなければならないため、このような大気の進入は起こり難い。また、第1逆止弁21が一度開いた後は、弁間空間S2が大気圧と同等以上の比較的高圧の状態に保たれるため、大気は外部空間から弁間空間S2へ進入することすら難しい。従って、弁構造体200は、通路L1に沿って多段階に配置される逆止弁21及び22により、内部空間S1への大気の進入を効果的に防止し、これに含まれる水分等による蓄電デバイス素子400の劣化を防止することができる。
【0052】
また、逆止弁21及び22の開状態においても、内部空間S1への大気の進入は生じ難い。開状態においては、逆止弁21及び22の各々について、その一次側の圧力がその二次側の圧力よりも高い又は同等の状態が維持されるためである。
【0053】
逆止弁21及び22の開弁圧は適宜設定することができ、第1逆止弁21の開弁圧は、(i)第2逆止弁22の開弁圧と等しい、(ii)第2逆止弁22の開弁圧よりも低い、又は(iii)第2逆止弁22の開弁圧よりも高い、のいずれでもよいが、以下の観点からは、(i)及び(ii)が好ましい。(ii)の場合、内部空間S1の圧力をより高く維持することができるため、内部空間S1と外部空間との圧力差により、外部空間の大気が内部空間S1に進入することがより効果的に防止される。(i)の場合、内部空間S1の圧力を比較的高く維持しつつ、逆止弁21及び22の製造が容易になり、例えば、逆止弁21及び22の取り違いが生じないという利点がある。例えば、逆止弁21及び22の開弁圧を、ともに0.05MPaとすることができる。なお、弁構造体200の全体としての開弁圧は、逆止弁21及び22の開弁圧の合計となるため、この例の場合、0.1MPaとなる。開弁圧とは、一次側の圧力と二次側の圧力との差圧である。
【0054】
これに限定されないが、例えば、弁座214及び224の直径を、各々、4.0mmとし、弁座214及び224の中央の開口の直径を、各々、1.5mmとすることができる。これらの直径は、中心軸C1に直交する面内で定義される。弁座214及び224と弁体213と及び223との密閉性(バリア性)を高める観点からは、弁座214及び224の中央の開口の直径は、10mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましい。一方、加工を容易にする観点からは、弁座214及び224の中央の開口の直径は、0.70mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。
【0055】
また、弁体213及び223の半球状の部位の直径は、1.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。また、同直径は、12mm以下であることが好ましく、5.5mm以下であることがより好ましい。
【0056】
弁構造体200を容器100に取り付ける前又は取り付けた直後において、弁間空間S2に、大気圧よりも高圧になるようにガスを充填しておくことが好ましい。この場合、蓄電デバイス1が製造された直後から、すなわち、第1逆止弁21が一度も開弁する前から、弁間空間S2が大気圧よりも高圧の状態に保たれる。そのため、外部空間から弁間空間S2への、ひいては内部空間S1への大気の進入がより効果的に防止される。なお、弁構造体200の製造後に、第1逆止弁21の一次側の圧力を高圧にして、逆止弁21及び22の開弁検査を行う場合、同検査が、弁間空間S2へのガスの充填の工程を兼ねることができる。また、弁間空間S2に充填されるガスは、アルゴン等の不活性ガスであることが好ましい。逆止弁21及び22の開弁検査により、弁間空間S2にガスを充填する場合には、不活性ガスを使用して開弁検査を行えばよい。この場合、内部空間S1へ僅かに進入するガスにより、蓄電デバイス素子400が劣化することまでもが防止される。
【0057】
弁構造体200の各部を構成する材料は、特に限定されない。好ましい例を挙げると、弁体213及び223をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂製とし、弁座214及び224をフッ化ビニリデン系(FKM)等のフッ素ゴム製とすることができる。さらに、バネ212及び222をステンレス等の金属製とし、第1部分10、第2部分20及び第3部分30を、アルミニウム合金、ステンレス、鋼板、チタン等の金属製とすることができる。また、第1部分10は、包装材料110及び120の最内層と直に接着する材料から構成してもよい。例えば、第1部分10は、包装材料110及び120の最内層と同じ熱融着性を備えた材料、例えば、ポリオレフィン等の樹脂から構成することができる。仮に耐熱性等の理由で、第1部分10を以上のような材料で構成することができない場合、例えば、第1部分10が金属製の場合、第1部分10と包装材料110及び120の最内層との両方に接着可能なフィルムを介してこれらを接着することができる。
【0058】
弁座214及び224と、第2部分20とは、接着剤により接着することができる。この接着剤の材料も特に限定されないが、弁座214及び224をフッ素ゴム製とし、第2部分20をアルミニウム等の金属製とする場合の好ましい例としては、酸変性ポリオレフィン及びエポキシ樹脂から構成することができる。このような接着剤は、例えば、変性シリコン樹脂製の接着剤が使用される場合に比べて、容器100内に収容される電解液による接着性能の劣化を抑制することができる点で優れる。また、弁構造体200の開封防止の観点から、その他の様々な箇所にも、適宜接着剤を塗布することができる。例えば、第2部分20の後ろ側の端面と、第3部分30の前側の端面との間に接着剤を塗布することができる。
【0059】
また、第1部分10の表面には、特に耐電解液性の観点から、腐食防止剤のコーティングを施し、腐食防止被膜層を形成することが好ましい。なお、これは、特に第1部分10をアルミニウム等の金属製とする場合に当てはまるが、第1部分10をその他の材料から構成する場合にも当てはまり得る。このようなコーティングは、第1部分10を腐食防止剤の液体中に浸漬することにより施すことができる。これにより、第1部分10の外側表面、及び第1通気路A1に面する内側表面に腐食防止被膜層を形成することができ、放出されたガスによる外側表面の腐食、及び第1通気路A1を通り抜けるガスによる内側表面の腐食を防止することができる。また、特に耐電解液性の観点から、第1部分10だけでなく、第3部分30及び第2部分20の表面にも、同様のコーティングを施し、腐食防止被膜層を形成してもよい。ただし、電解液による第1部分10と包装材料110及び120との接着性能の劣化を抑制する観点からは、このようなコーティングは、特に第1部分10に施すことが有意義である。腐食防止剤の材料は、特に限定されないが、耐酸性のものが好ましく、腐食防止被膜層は、リン酸クロメート処理等により形成することができる。
【0060】
<1−3.弁構造体の取り付け方法>
次に、弁構造体200の容器100への取り付け方法について説明する。まず、図示されない固定具により、包装材料110及び120を両者が対面した状態に固定する。また、冶具500の把持具501により、弁構造体200を把持する(
図8A参照)。このとき、把持具501が第3部分30の第1平面D1及び第2平面D2にしっかりと接触し、把持具501により第3部分30がしっかりと挟み込まれるような態様で、弁構造体200が把持される。なお、
図8A〜
図8Cにおいては、弁構造体200の取り付けの説明に焦点を当てるべく、包装材料110及び120の成形部112及び122を特に図示していないが、成形部112及び122は、弁構造体200の取り付け前、取り付け中又は取り付け後に適宜形成される。
【0061】
以上の状態で、冶具500が駆動され、把持具501により把持された弁構造体200が移動し、第1部分10が、互いに対面する包装材料110及び120の隙間に進入させられる(
図8B参照)。このとき、弁構造体200は、第3部分30が同隙間に入り込まないように移動させられる。よって、第1部分10は、包装材料110及び120の外周部分に挟まれる。また、このとき、弁構造体200は、包装材料110及び120において周縁シール部130となる部分と、第3部分30の第1平面D1及び第2平面D2とが平行になるように移動させられる。
【0062】
以上の状態で、一対の加熱されたシールバー600が、包装材料110及び120の外周部分を外側から挟み込む(
図8C参照)。その結果、包装材料110及び120の外周部分が、シールバー600からの熱を受けて融着し、周縁シール部130が形成される。以上により、弁構造体200のうち第1部分10のみが、包装材料110及び120に挟み込まれるようにして、弁構造体200が周縁シール部130に固定される。このとき、第1部分10に含まれる翼状部41及び42は、それぞれの先鋭な端部を結ぶ線が、周縁シール部130の延びる方向(左右方向)に対して傾くことなく固定される。その後、一対のシールバー600が所定の位置に退避するとともに、把持具501が弁構造体200を解放し、所定の位置に退避する。
【0063】
以上の工程では、把持具501は、一対の平行な第1平面D1及び第2平面D2により、弁構造体200をしっかりと把持することができる。そのため、包装材料110及び120に対し弁構造体200を所望の位置まで正確に搬送することができる。また、ヒートシール加工中、包装材料110及び120に対し弁構造体200を所望の位置にしっかりと固定することができる。すなわち、弁構造体200を容器100に対し正確に位置合わせすることができる。なお、ここでいう位置合わせには、弁構造体200の中心軸C1周りの位相を調整することが含まれる。すなわち、容器100の周縁シール部130に対する第1部分10の中心軸C1周りの角度を正確に調整することができる。以上の構成によれば、弁構造体200の容器100への取り付けを容易にすることができる。
【0064】
[2.第2実施形態]
第2実施形態においては、第1実施形態と比較して、弁構造体200の構成が異なる。他の構成は、基本的に第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0065】
図9Aは、第2実施形態の蓄電デバイス1が備える弁構造体700の断面図である。弁構造体700は、第1弁710、第2弁720、液体800、シール部材910、及び、蓋材920を備える。
図9Aに示されるハッチングの範囲は、液体800が存在する範囲の一例である。
【0066】
第1弁710は、第1逆止弁21(
図6参照)と、弁体213の形状が異なり、それ以外は、第1逆止弁21と同一の機能及び構造を備える。本実施形態では、第1弁710は、例えば、ボール型の弁体711を備える。第1弁710は、通路L1を閉塞するように配置され、容器100(
図1参照)の内部において発生したガスに起因して容器100の内圧が上昇した場合に開弁し、ガスを容器100の内部側から外部側に通過させる。
【0067】
第2弁720は、第2逆止弁22(
図6参照)と、弁体223の形状が異なり、それ以外は、第2逆止弁22と同一の機能及び構造を備える。本実施形態では、第2弁720は、例えば、ボール型の弁体721を備える。第2弁720は、通路L1を閉塞するように第1弁710よりも外側に配置され、第1弁710の外側の空間である弁間空間S2の内圧が上昇した場合に開弁し、ガスを内部側から外部側に通過させる。
【0068】
液体800は、内部空間S1(
図1参照)に水分が侵入することを抑制するために、第1弁710の弁体711及び弁座214と接触するように配置される。液体800の種類は、任意に選択可能である。本実施形態では、液体800は、流動パラフィンである。液体800としては、シリコンオイル等の液油、又は、イオン液体等を用いることもできる。好ましい例では、液体800は、蓄電デバイス1の通常の使用環境下において、液体で存在する性質を有することが好ましい。このような観点から、液体800の融点は、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。同様に、液体800の沸点は、150℃以上であることが好ましい。
【0069】
液体800の粘度は、任意に選択可能である。好ましい例では、液体の粘度は、ガスを好適に透過させる観点と、ハンドリングの観点とに基づいて決められる。液体800の粘度の最大値の好ましい一例は、2000mPa・sである。液体800の粘度が2000mPa・s以下である場合、ガスを好適に透過させることができる。液体800の粘度の最大値のさらに好ましい一例は、500mPa・sである。液体800の粘度の最大値のさらに好ましい一例は、100mPa・sである。液体800の粘度の最小値の好ましい一例は、0.1mPa・sである。液体800の粘度が0.1mPa・s以上である場合、好適にハンドリングできる。液体800の粘度の最小値のさらに好ましい一例は、0.5mPa・sである。液体800の粘度の最小値のさらに好ましい一例は、1.0mPa・sである。液体800の粘度の好ましい範囲の一例は、0.1mPa・s〜2000mPasである。液体800の粘度のさらに好ましい範囲の一例は、0.5mPa・s〜500mPasである。液体800の粘度のさらに好ましい範囲の一例は、1.0mPa・s〜100mPasである。なお、液体800の粘度とは、10℃〜40℃の測定範囲における粘度である。また、液体800が原油又は石油の場合、液体800の粘度は、「JISK2283 原油及び石油製品−動粘度試験方法・及び粘度指数算出方法」に基づいて測定した動粘度から密度をかけることで算出される粘度である。液体800が原油及び石油以外の場合、液体800の粘度は、「JIS Z8803 液体の粘度測定方法」に基づいて測定される粘度である。
【0070】
液体800の具体的な配置態様は、液体800が弁体711及び弁座214と接触する態様であれば、任意に選択可能である。本実施形態では、液体800は、弁間空間S2を含む所定範囲に充填される。液体800は、例えば、第1弁710と第2弁720とを組み付ける前に充填してもよく、第1弁710と第2弁720とを組み付けた後に、入口20Aから充填してもよい。また、液体800は、第2弁720のうちのバネ222及び弁体711を配置する前に、出口O2から充填してもよい。
【0071】
本実施形態によれば、第1弁710及び第2弁720の開状態において、内部空間S1(
図1参照)に発生したガスは、第1弁710の弁体711と弁座214との間に形成された隙間から流れ出す。流れ出したガスは、液体800を泡状になって通過し、液体800を通過した後、第2弁720に向かって流れ出す。一方、大気、及び、これに含まれる水分等が出口02を介して弁構造体700内に侵入した場合、その水分等が第1弁710よりも容器100の内部側まで侵入することが、液体800によって妨げられる。このため、容器100内に大気、及び、これに含まれる水分等が侵入することが抑制される。なお、
図10に示されるように、液体800は、第1弁710の閉状態において、弁体711の表面のうちの弁座214と接触する部分、及び、弁座214の表面のうちの弁体711と接触する部分に少なくとも付着していればよい。このような液体800の配置態様は、例えば、
図9Aに示される状態において、入口O1からエアーを注入して液体800を吹き飛ばすことによって形成することができる。
図10に示される液体800の配置態様では、液体800は、第1弁710の閉状態において、弁体711の表面のうちの弁座214と接触する部分、及び、弁座214の表面のうちの弁体711と接触する部分に膜を形成する。第1弁710の開状態において、内部空間S1に発生したガスは、液体800の膜を泡状になって通過する、又は、液体800の膜を突き破り、出口O2に向かって流れ出す。ガスが液体800の膜を突き破った場合、第1弁710が開状態から閉状態に移行することによって、弁体711と弁座214とが接触し、液体800の膜が再生される。
【0072】
シール部材910は、出口О2を閉じるように第2部分20に貼り付けられる。このため、例えば、弁構造体700の輸送時に出口О2を介して液体800が漏れ出すこと、及び、出口О2を介して弁構造体700の内部に異物が混入することが抑制される。弁構造体700が容器100に取り付けられた場合、シール部材910は、第2部分20から剥離される。
図9Bに示されるシール部材910は、例えば、出口О2を閉じる表面層911、及び、表面層911に積層される基材層912を含む。なお、シール部材910は、アクリル樹脂を含む粘着剤であってもよく、表面層911のみの単層構造であってもよい。
【0073】
表面層911を構成する材料は、例えば、ポリオレフィン及びエラストマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。表面層911の表面にポリオレフィンが存在する場合、弁構造体700の使用時にシール部材910を第2部分20から容易に剥離できる。ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンである。表面層911を構成する材料にエラストマーが含まれる場合、表面層911が粘着性を有するため、出口О2に対するシール部材910の位置決めを容易に実施できる。エラストマーは、例えば、熱可塑性エラストマーである。
【0074】
基材層912は、例えば、表面層911に積層される第1基材層912A、及び、第1基材層912Aに積層される第2基材層912Bを含む。第1基材層912Aを構成する材料は、例えば、水蒸気バリア性及び気密性の向上の観点から、アルミニウム合金等の金属を含むことが好ましい。第1基材層912Aを構成する材料に金属が含まれる場合、シール部材910が全体として張りを有するため、第2部分20から容易に剥離できる。第2基材層912Bは、例えば、接着剤を介して第1基材層912Aに積層される。第2基材層912Bを構成する材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレートを含む。
【0075】
蓋材920は、例えば、10
-2μm〜10
0μmのポアー直径(pore diameter)を有し、蓄電デバイス素子400に含まれる有機溶媒、及び、液体800を透過させず、ガスのみを選択的に透過するPTFE(PolyTetraFluoroEthylene)メンブレンによって構成される。PTFEメンブレンは柔らかい材質のため、強度が不足する場合には、蓋材920として、ポリプロピレン及びポリエステル等のメッシュ、又は、不織布とPTFEメンブレンとを一体成型して補強したものを用いてもよい。また、蓋材920を構成する材料は、例えば、金属製のメッシュ、合成樹脂製のメッシュ、又は、不織布であってもよい。蓋材920は、第1弁710の一次側に配置される第1蓋材921、及び、第2弁720の二次側に配置される第2蓋材922を含む。
【0076】
第1蓋材921は、蓄電デバイス素子400(
図2参照)に含まれる有機溶媒が通路L1を通過して第1弁710を開弁して、弁構造体700の外部に流出することを抑制する。弁構造体700において第1蓋材921が配置される位置は、第1弁710の一次側であれば任意に選択可能である。本実施形態では、第1蓋材921は、通路L1において、第1弁710の弁座214の底面の近傍に配置される。第1蓋材921は、通路LAにおいて、入口О1の近傍に配置されてもよく、弁座214の底面と入口О1との間の任意の箇所に配置されてもよい。
【0077】
第2蓋材922は、例えば、弁構造体700の使用時等、シール部材910が剥離されている状態において、液体800が出口О2を介して漏れ出すことを抑制する。第2蓋材922は、例えば、出口О2の近傍に配置される。
【0078】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。なお、以下の変形例の要旨は、第1実施形態に加えて、第2実施形態にも同様に適用可能である。
【0079】
<3−1>
逆止弁21及び22の構造は、上述したものに限定されない。例えば、弁体213及び223をボール型とすることもできる。また、上記実施形態の逆止弁21及び22は、スプリング型であったが、これに限定されず、例えば、ポペット型、ダックビル型、アンブレラ型、ダイヤフラム型等とすることができる。
【0080】
また、逆止弁21及び22は、以上に例示したような様々な構造の逆止弁の中から適宜選択される、異なる構造を有していてもよい。例えば、
図11に示すように、第1逆止弁21に含まれる弁体213をボール型とし、第2逆止弁22に含まれる弁体223を、円錐型としてもよい。この例では、ボール型の弁体213が、円錐型の弁体223の内部に収容される。弁体213の一次側の圧力が上昇すると、円錐型の弁体223の内部において、ボール型の弁体213が弁座214から浮き上がり、開弁する。そして、円錐型の弁体223の内部の圧力が上昇すると、円錐型の弁体223が弁座224から浮き上がり、開弁する。
【0081】
<3−2>
第3部分30の第1平面D1及び第2平面D2は、周縁シール部130が延びる方向に平行でなくてもよく、様々な方向を向くことができる。ただし、容器100への弁構造体200の取り付け時の作業性の観点からは、周縁シール部130が延びる方向(左右方向)に対し平行であるか、
図12に示すように垂直(略垂直である場合を含む。以下、同様。)であることが好ましい。
【0082】
<3−3>
第1実施形態では、第3部分30は、第2部分20よりも容器100の内部側に配置されたが、
図13に示すように、第2部分20よりも容器100の外部側に配置してもよい。
【0083】
<3−4>
第1部分10の形状は上述したものに限定されない。例えば、第1部分10の外形は、第1通気路A1の延びる方向に沿って視たときに、円形であってもよいし、楕円形であってもよい。楕円形である場合、その長軸が左右方向に平行(略平行である場合を含む。)に延びていることが好ましい。すなわち、第1部分10は、中心軸C1に沿って延びる円筒形状又は楕円筒形状であってもよい。また、第1部分10の外形は、第1通気路A1の延びる方向に沿って視たときに、矩形状や多角形状であってもよい。
【0084】
<3−5>
第2部分20の外形は、上述したものに限定されず、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、非円形であってもよく、例えば、楕円形であってもよいし、三角形、四角形、五角形以上の多角形であってもよい。
【0085】
<3−6>
第3部分30の形状は上述したものに限定されない。例えば、第3部分30は、互いに平行な一対の平面D1及びD2を有する限り、それ以外の部分の形状は特に問わない。例えば、湾曲面D3及びD4もそれぞれ平面状とし、第3部分30の外形を、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、四角形としてもよい。或いは、第3部分30の外形を、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、正六角形状、正八角形状としてもよい。また、第3部分30は、省略することもできる。
【0086】
<3−7>
第1実施形態では、周縁シール部130に固定される第1部分10と、逆止弁21及び22に含まれる弁機構を保持する第2部分20と、一対の平面D1及びD2を含む第3部分30とが、通路L1の延びる方向に独立した別個の部位として形成されていた。しかしながら、この態様に限らず、例えば、第2部分20を省略し、逆止弁21及び22に含まれる弁機構を第1部分10又は第3部分30に移動させてもよい。なお、逆止弁21及び22の一方に含まれる弁機構を第2部分20に保持させたまま、他方に含まれる弁機構を第1部分10又は第3部分30に移動させてもよい。或いは、逆止弁21及び22に含まれる弁機構を保持する第2部分20の外面に、一対の平面D1及びD2を形成し、第3部分30を省略してもよい。
【0087】
<3−8>
第1実施形態では、弁構造体200は、2つの逆止弁21及び22を有していたが、通路L1の延びる方向に沿って配列される3つ以上の逆止弁を有していてもよい。これらの3つ以上の逆止弁は、閉状態において、通路L1内の異なる位置において通路L1を閉塞する。
【0088】
<3−9>
第2実施形態では、第1弁710及び第2弁720は、逆止弁であったが、第1弁710又は第2弁720を任意の弁、例えば、1回限りのガス抜きが可能な破壊弁、すなわち、容器100の内部において発生したガスに起因して容器100の内圧が上昇した場合に裂開するように構成される破壊弁としてもよい。第1弁710が逆止弁であり、第2弁720が破壊弁である場合、例えば、第1弁710と接触するように弁間空間S2を含む所定範囲に液体800が入口O1又は出口O2から充填されたあと、第2弁720が組み付けられる。第1弁710が破壊弁であり、第2弁720が逆止弁である場合、例えば、第1弁710及び第2弁720が組み付けられたあと、出口O2から液体800が充填される。
【0089】
<3−10>
第2実施形態において、
図14に示されるように、液体800を第2弁720の弁体721及び弁座224と接触するように配置してもよい。液体800の具体的な配置態様は、液体800が第2弁720の弁体711及び弁座224と接触する態様であれば、任意に選択可能である。この変形例では、第1弁710の弁体711及び弁座214と接触するように配置される液体800を省略することもできる。また、この変形例では、第2蓋材922は、液体800の液面と出口О2との間の任意の位置に配置されてもよい。
【0090】
<3−11>
図9Aに示される第2実施形態、及び、
図14に示される第2実施形態の変形例において、第2弁720の一次側、かつ、第1弁710の弁体711及び弁座214と接触する液体800の液面よりも上方に第1蓋材921を配置してもよい。この変形例によれば、第1弁710の弁体711及び弁座214と接触する液体800、及び、蓄電デバイス素子400(
図2参照)に含まれる有機溶媒によって、第2弁720が開弁することが抑制される。
【0091】
<3−12>
弁体213、223、711、721の構成は、各実施形態で示したものに限定されず、任意に変更可能である。
図15は、変形例の弁体911を有する弁構造体700の断面図である。弁体911は、逆T字状であり、円盤状の部位912、及び、円盤状の部位912の前後方向の前面側の端面912Aに連続し、端面912Aの中央部から前方へ延びる、円柱状の軸部913を有する。円盤状の部位912と、軸部913とは、いずれも中心軸C1を中心軸として延びる。円盤状の部位912の前後方向の後ろ側の端面である底面912Bは、弁座214の天面214Aで受け取られ、第1弁710の閉状態で天面214Aに接触する。弁体911の軸部913は、バネ212の内側の空間に挿入され、これにより、弁体911とバネ212とが連結される。
【0092】
<3−13>
周縁シール部130の構成は、各実施形態で示したものに限定されず、任意に変更可能である。
図16に示されるように、周縁シール部130は、弁構造体200に接近するにつれてシール幅が狭くなる傾斜シール部131、132を有していてもよい。
図17に示されるように、周縁シール部130は、弁構造体200と包装材料110、120とがシールされている弁シール部233に接近するように傾斜する傾斜シール部231、232を有していてもよい。
図18に示されるように、周縁シール部130は、弁構造体200と包装材料110、120とがシールされている弁シール部333に接近するように傾斜する階段状の傾斜シール部331、332を有していてもよい。
図19に示されるように、周縁シール部130は、弁構造体200に接近するように傾斜し、シール幅が実質的に一定である傾斜シール部431、432を有していてもよい。
図16〜
図19に示される変形例によれば、内部空間S1で発生したガスが弁構造体200に向けて誘導されるため、弁構造体200を介してガスを好適に排出できる。
【0093】
<3−14>
第2実施形態では、弁構造体700は、2つの弁710、720を有していたが、通路L1の延びる方向に沿って配列される3つ以上の弁を有していてもよい。これらの3つ以上の弁は、閉状態において、通路L1内の異なる位置において通路L1を閉塞する。
【0094】
<3−15>
容器100は、上記のような包装材料110及び120から構成されてもよいが、その他、例えば、金属缶であってもよい。
蓄電デバイス用弁構造体は、蓄電デバイス素子が収容される容器に取り付けられ、前記容器の内外を連通させる通路を形成し、第1逆止弁及び第2逆止弁を備える。前記第1逆止弁は、前記通路を閉塞するように配置され、前記容器の内部において発生したガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に開弁し、ガスをその一次側からその二次側へ通過させる。前記第2逆止弁は、前記通路を閉塞するように前記第1逆止弁の二次側に配置され、前記第1逆止弁の二次側の空間である弁間空間の内圧が上昇した場合に開弁し、ガスをその一次側からその二次側へ通過させる。