(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記誘電体基板の法線方向から平面視した場合に、前記接地電極は、前記放射素子の中心を通る偏波方向に対して非対称の形状を有している、請求項1または2に記載のアンテナモジュール。
前記周辺電極は、前記誘電体基板の法線方向から平面視した場合に、前記放射素子の周囲を囲う環状に形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
前記周辺電極は、前記誘電体基板の法線方向から平面視した場合に、前記放射素子における前記第1方向に沿った辺、または、前記第2方向に沿った辺に斜辺が対向する略直角三角形の形状を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
前記第1放射素子に対して配置される第1周辺電極と、前記第2放射素子に対して配置され前記第1周辺電極に隣接する第2周辺電極とは、連結されて共通化されている、請求項8に記載のアンテナモジュール。
前記第1周辺電極および前記第2周辺電極は、前記誘電体基板の法線方向から平面視した場合に、前記第1放射素子および前記第2放射素子の各々において、前記第1方向に沿った辺、または、前記第2方向に沿った辺に斜辺が対向する略直角三角形の形状を有する、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施の形態1に係るアンテナモジュール100が適用される通信装置10のブロック図の一例である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどである。本実施の形態に係るアンテナモジュール100に用いられる電波の周波数帯域の一例は、たとえば28GHz、39GHzおよび60GHzなどを中心周波数とするミリ波帯の電波であるが、上記以外の周波数帯域の電波についても適用可能である。
【0014】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナモジュール100と、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200とを備える。アンテナモジュール100は、給電回路の一例であるRFIC110と、アンテナ装置120とを備える。通信装置10は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を、RFIC110にて高周波信号にアップコンバートし、アンテナ装置120から放射する。また、通信装置10は、アンテナ装置120で受信した高周波信号をRFIC110へ送信し、ダウンコンバートしてBBIC200にて信号を処理する。
【0015】
図1では、説明を容易にするために、アンテナ装置120を構成する複数の給電素子(放射素子)121のうち、4つの給電素子121に対応する構成のみ示され、同様の構成を有する他の給電素子121に対応する構成については省略されている。なお、
図1においては、アンテナ装置120が二次元のアレイ状に配置された複数の給電素子121で形成される例を示しているが、複数の給電素子121が一列に配置された一次元アレイであってもよい。また、アンテナ装置120は、給電素子121が単独で設けられる構成であってもよい。本実施の形態においては、給電素子121は、平板形状を有するパッチアンテナである。
【0016】
RFIC110は、スイッチ111A〜111D,113A〜113D,117と、パワーアンプ112AT〜112DTと、ローノイズアンプ112AR〜112DRと、減衰器114A〜114Dと、移相器115A〜115Dと、信号合成/分波器116と、ミキサ118と、増幅回路119とを備える。
【0017】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A〜111D,113A〜113Dがパワーアンプ112AT〜112DT側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A〜111D,113A〜113Dがローノイズアンプ112AR〜112DR側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の受信側アンプに接続される。
【0018】
BBIC200から伝達された信号は、増幅回路119で増幅され、ミキサ118でアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号である送信信号は、信号合成/分波器116で4分波され、4つの信号経路を通過して、それぞれ異なる給電素子121に給電される。このとき、各信号経路に配置された移相器115A〜115Dの移相度が個別に調整されることにより、アンテナ装置120の指向性を調整することができる。
【0019】
各給電素子121で受信された高周波信号である受信信号は、それぞれ、異なる4つの信号経路を経由し、信号合成/分波器116で合波される。合波された受信信号は、ミキサ118でダウンコンバートされ、増幅回路119で増幅されてBBIC200へ伝達される。
【0020】
RFIC110は、例えば、上記回路構成を含む1チップの集積回路部品として形成される。あるいは、RFIC110における各給電素子121に対応する機器(スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰器、移相器)については、対応する給電素子121毎に1チップの集積回路部品として形成されてもよい。
【0021】
(第1例)
次に、
図2および
図3を用いて、実施の形態1におけるアンテナモジュールの構成の詳細を説明する。
図2は、実施の形態1の第1例のアンテナモジュール100の平面図である。また、
図3は、アンテナモジュール100の側面透視図である。なお、
図2の平面図においては、内部の電極が見るように誘電体層が省略されている。
【0022】
図2および
図3を参照して、アンテナモジュール100は、給電素子121およびRFIC110に加えて、誘電体基板130と、給電配線140と、周辺電極150と、接地電極GND1,GND2とを含む。なお、以降の説明において、誘電体基板130の法線方向(電波の放射方向)をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な面をX軸およびY軸で規定する。また、各図におけるZ軸の正方向を上方側、負方向を下方側と称する場合がある。
【0023】
誘電体基板130は、たとえば、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)多層基板、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、あるいは、LTCC以外のセラミックス多層基板である。
【0024】
誘電体基板130は、略矩形状を有しており、その上面131(Z軸の正方向の面)に近い層(上方側の層)に給電素子121が配置されている。給電素子121は、誘電体基板130表面に露出する態様であってもよいし、
図3の例のように誘電体基板130の内部の層に配置されてもよい。なお、本実施の形態1においては、説明を容易にするために、放射素子として給電素子のみが用いられる場合を例として説明するが、給電素子に加えて、無給電素子および/または寄生素子が配置される構成であってもよい。
【0025】
誘電体基板130において給電素子121よりも下面132(Z軸の負方向の面)に近い層(下方側の層)には、給電素子121に対向して、平板形状の接地電極GND2が配置される。また、給電素子121と接地電極GND2との間の層には、接地電極GND1が配置される。
【0026】
接地電極GND1と接地電極GND2との間の層は、配線領域として使用される。配線領域には、放射素子に高周波信号を供給するための給電配線、給電配線に接続されるスタブおよびフィルタ、ならびに、他の電子部品と接続するための接続配線などを形成する配線パターン170が配置されている。このように、接地電極GND1の給電素子121と反対側の誘電体層に配線領域を形成することにより、給電素子121と各配線パターン170との不必要な結合を抑制することができる。
【0027】
誘電体基板130の下面132には、はんだバンプ160を介してRFIC110が実装されている。なお、RFIC110は、はんだ接続に代えて、多極コネクタを用いて誘電体基板130に接続されてもよい。
【0028】
RFIC110から、給電配線140を介して、給電素子121の給電点SP1に高周波信号が供給される。給電配線140は、RFIC110から接地電極GND2を貫通して立ち上がり、配線領域を延伸する。そして、給電配線140は、給電素子121の直下から、接地電極GND1を貫通して立ち上がり、給電素子121の給電点SP1に接続される。
【0029】
図2および
図3の例においては、給電素子121の給電点SP1は、給電素子121の中心からY軸の正方向にオフセットした位置に配置されている。給電点SP1をこのような位置とすることで、給電素子121からはY軸方向を偏波方向とする電波が放射される。
【0030】
周辺電極150は、誘電体基板130の端部において、給電素子121と接地電極GND1との間の複数の誘電体層に形成される。アンテナモジュール100においては、誘電体基板130の法線方向(Z軸の正方向)から平面視した場合に、矩形状の給電素子121の各辺に沿って周辺電極150が配置されている。各辺に沿って配置された周辺電極150は、給電素子121の偏波方向(Y軸方向)および当該偏波方向に直交する方向(X軸方向)に対して対称な位置に配置されている。
【0031】
誘電体基板130を平面視した場合に、各周辺電極150は積層方向に重なるように配置されている。すなわち、周辺電極150は、誘電体基板130の各辺に沿った仮想的な導体壁を形成する。そして、積層方向に隣接する周辺電極150同士はビア155によって電気的に接続されている。さらに、最下段の周辺電極150はビア155によって接地電極GND1に電気的に接続されている。すなわち、周辺電極150は、実質的には、接地電極GND1の端部が積層方向に延長された構成と等価な構成となっている。なお、周辺電極150は同一形状でなくてもよく、たとえば、誘電体基板130の積層方向に、接地電極GNDに近づくにつれて電極サイズが大きくされてもよい。
【0032】
アンテナモジュール100においては、積層方向に互いに隣り合う誘電体層に形成されたビア155は、誘電体基板130の法線方向から平面視した場合に互いに重ならないように配置することが好ましい。ビア155を形成する導電材料(代表的には銅)は、誘電体材料に比べて加圧された場合の圧縮率が小さい。そのため、誘電体基板130の法線方向から平面視した場合に各層のビア155がすべて同じ位置に配置されていると、誘電体層の圧着のために誘電体基板130を加圧プレスしたときに、他の誘電体部分に比べてビア155の部分の厚みの減少率が小さくなってしまい、誘電体基板130全体の厚みのバラツキの要因になり得る。したがって、上記のように、積層方向に互いに隣り合う誘電体層のビア155を異なる位置とすることによって、成形後の誘電体基板130の厚み精度を向上させることができる。
【0033】
なお、周辺電極150同士、および、周辺電極150と接地電極GND1との間の電気的接続については、ビア155による直接的な接続に限られず、その一部または全部が容量結合とされた構成も含む。
【0034】
このような平板形状の放射素子を有するパッチアンテナにおいては、放射素子と接地電極との間の電磁界結合によって電波が放射される。そして、所望のアンテナ特性を実現するためには、放射素子に対して十分に広い面積を有する接地電極を配置することが必要である。
【0035】
一方で、パッチアンテナが採用される携帯電話あるいはスマートフォンなどの携帯端末においては、小型化および薄型化に対する要求が依然として高く、それに伴って内蔵されるアンテナ装置のさらなる小型化が必要とされている。
【0036】
しかしながら、筐体内の限られた空間にアンテナ装置が配置される場合には、放射素子に対して接地電極を十分に広くすることができない場合が生じ得る。また、アンテナ装置の設置場所あるいは周辺機器との位置関係によって、接地電極を対称な形状とできない場合も生じ得る。このように接地電極のサイズおよび形状が制限されると、放射素子と接地電極との間の電気力線が乱れてしまい、ゲイン、周波数帯域、あるいは指向性などのアンテナ特性に影響が生じるおそれがある。
【0037】
図4は、放射素子に対して接地電極の面積を十分に確保できない場合の、放射素子と接地電極との間の電気力線の状態を説明するための図である。給電素子121(放射素子)に高周波信号が供給されると、給電素子121の端部と接地電極GND1との間で電磁界結合が生じる。このとき、給電素子121の一方の端部から接地電極GND1に対して電気力線が放出され、他方の端部においては、接地電極GND1からの電気力線を受ける。
【0038】
接地電極GND1の面積が給電素子121に対して十分に広い場合には、接地電極GND1における給電素子121と対向する面において電気力線が授受される。しかしながら、接地電極GND1の面積が十分に確保できない場合には、
図4に示されるように、電気力線の一部が接地電極GND1の裏面に回り込む状態が生じ得る。そうすると、アンテナ装置の裏面側へ放射される電波の割合が増加し、指向性が乱れて所望の方向のアンテナゲインが劣化したり、周波数帯域幅が狭くなったり、円偏波のように偏波方向が変動したりする可能性がある。
【0039】
実施の形態1のアンテナモジュール100においては、
図5のように、接地電極GND1に電気的に接続された周辺電極150が、給電素子121と接地電極GND1との間の層に配置されている。周辺電極150と給電素子121との間の距離は、接地電極GND1と給電素子121との間の距離よりも短いため、給電素子121と電磁界結合の結合度は、接地電極GND11よりも周辺電極150のほうが強くなる。そのため、
図4において、接地電極GNDの裏面側に回り込んでいた電気力線は、
図5においては周辺電極150との間で発生することになる。これにより、アンテナ装置の裏面側へ電波が放射されることが抑制されるので、ゲイン等のアンテナ特性の低下を抑制することができる。
【0040】
また、周辺電極150は、電波の偏波方向および/または当該偏波方向に直交する方向に対称な位置に配置されている。これによって、給電素子121と接地電極GND1との間で生じる電気力線の対称性を向上させることができるので、偏波方向の変動を抑制することができる。
【0041】
なお、給電素子121から放射される電波の自由空間波長をλ
0とすると、周辺電極150は、偏波方向に沿って給電素子121の面中心CPから接地電極GND1の端部までの長さ(
図2の距離LG)がλ
0/2未満である場合に配置することが好ましい。
【0042】
(第2例)
図6および
図7は、実施の形態1に従うアンテナモジュールの第2例を示す図である。
図6はアンテナモジュール100Aの平面図であり、
図7はアンテナモジュール100Aの斜視図である。
図6および
図7においても、説明を容易にするために、誘電体層については省略されている。
【0043】
図6のアンテナモジュール100Aは、
図2のアンテナモジュール100に対して接地電極のサイズがさらに制限された場合の例であり、給電素子121をアンテナモジュール100と同様に配置した場合には、平面視したときの給電素子121の端部と接地電極GND1の端部との間隔がさらに狭くなる。
【0044】
そのため、アンテナモジュール100Aにおいては、偏波方向における給電素子121の面中心CPから接地電極GND1の端部までの距離をできるだけ確保するために、給電素子121は、給電素子121の面中心CPを中心としてZ軸周りに45°傾けられて配置された構成となっている。すなわち、給電点SP1は、給電素子121の面中心CPからX軸の負方向およびY軸の正方向に等距離だけオフセットした位置に配置されている。そのため、アンテナモジュール100Aにおいては、偏波方向はY軸の正方向からX軸の負方向に45°傾いた方向(
図6の一点鎖線CL1の方向)となる。給電素子121をこのような配置とすることによって、平面視したときの給電素子121の端部と接地電極GND1の端部との間隔を確保し、周波数帯域幅の低下を抑制することができる。
【0045】
なお、アンテナモジュール100Aにおいては、給電素子121を傾けた結果、給電素子121が接地電極GND1の範囲(すなわち、誘電体基板130の範囲)からはみ出てしまうため、正方形の給電素子121の四隅の部分が切除されており、給電素子121は全体として八角形の形状となっている。
【0046】
そして、アンテナモジュール100Aにおいては、給電素子121の偏波方向に沿った辺、および、偏波方向に直交する辺に沿って、略直角三角形の周辺電極150Aが給電素子121と接地電極GND1との間の層に配置されている。周辺電極150Aは、偏波方向に平行な第1方向、または、偏波方向に直交する第2方向に斜辺が対向するように配置されている。このように、電波の偏波方向および/または当該偏波方向に直交する方向に対称な位置に周辺電極150Aを配置することによって、給電素子121と接地電極GND1との間の結合度を高め、かつ、給電素子121と接地電極GND1との間で生じる電気力線の対称性を改善することによって、アンテナ特性の低下を抑制することができる。
【0047】
なお、
図6および
図7においては、周辺電極150Aが略直角三角形の場合について示されているが、周辺電極の形状は直角三角形以外の三角形であってもよいし、
図2のような矩形状であってもよい。また、周辺電極150のサイズは、対向する給電素子121の辺の長さ以上であることが好ましい。また、給電素子121から放射される電波の自由空間波長をλ
0とすると、周辺電極150Aは、偏波方向(
図6の一点鎖線CL1の方向)に沿って給電素子121の面中心CPから接地電極GND1の端部までの長さ(
図7の距離LGA)がλ
0/2未満である場合に配置することが好ましい。
【0048】
(アンテナ特性の比較)
図8を用いて、周辺電極の有無によるアンテナ特性について説明する。
図8においては、
図6で示した第2例のアンテナモジュール100Aの構成について、周辺電極を有さない比較例1とのシミュレーション結果を示している。
図8においては、上段から、アンテナモジュールの斜視図、平面図、接地電極の電流分布図、およびアンテナゲインが示されている。なお、電流分布図においては、同じ強度の電流を示す等高線が破線で描かれている。また、アンテナゲインは、給電素子121の面中心を原点としたX−Y平面において、放射方向(Z軸方向)からの各角度のピークゲインが示されている。
【0049】
図8を参照して、比較例1のアンテナモジュール100#1においては、給電素子121および接地電極GND1の配置についてはアンテナモジュール100Aと同様であるが、周辺電極150Aが配置されていない。そのため、比較例1のアンテナモジュール100#1においては、電気力線の一部が接地電極GND1の裏面に回り込むことになる。これにより、比較例1のアンテナモジュール100#1においては、裏面側(特に120°から180°)のゲインが大きくなっており、トータルのピークゲインは4.8[dBi]となっている。これに比べて、周辺電極150Aを有するアンテナモジュール100Aにおいては、裏面側のゲインが小さくなっており、トータルのピークゲインが5.3[dBi]に改善されている。すなわち、周辺電極150Aによって裏面側への電気力線の回り込みが抑制されていることがわかる。
【0050】
アンテナモジュール100Aおよび比較例1のアンテナモジュール100#1のいずれも、接地電極GND1のY軸方向の寸法がX軸方向の寸法に比べて短く、給電素子121の面中心CPを通る偏波方向に対して接地電極の形状が非対称となっている。そのため、アンテナモジュール100#1の接地電極における電流分布は、Y軸方向を短軸とする歪んだ楕円形となっている。一方、実施の形態1のアンテナモジュール100Aにおいては、偏波方向および偏波方向に直交する方向に対して対称となる位置に周辺電極150Aが配置されている。そのため、接地電極における電流分布は、比較例1と比べると真円に近くなっており、電流の対称性が向上されていることがわかる。
【0051】
このように、放射素子に対して接地電極を十分広くできない場合、および/または、給電素子の面中心を通る偏波方向に対して接地電極が非対称となってしまう場合であっても、接地電極に電気的に接続された周辺電極を対称的に配置することによって、放射素子と接地電極との間に生じる電気力線の裏面への回り込みを抑制するとともに、電気力線の対称性を向上させることができる。これにより、接地電極のサイズおよび/または形状が制限される場合のアンテナ特性の低下を抑制することができる。
【0052】
(変形例)
図9は、周辺電極の配置の第1変形例を示す図(側面透視図)である。
図9のアンテナモジュール100Bにおいては、
図3で示したアンテナモジュール100と比較すると、周辺電極の積層方向の配置が異なっている。より詳細には、アンテナモジュール100Bにおいては、接地電極GND1に近い誘電体層に形成されている周辺電極150Bほど、誘電体基板130の内側に配置されている。言い換えれば、周辺電極150Bは、誘電体基板130の法線方向から平面視した場合に、接地電極GND1に近くなるほど給電素子121に近くなるように配置されている。
【0053】
このような構成においても、給電素子121と接地電極GND1との間の結合度合いを高めることができるので、アンテナ特性を向上させることができる。さらに、給電素子121と、接地電極GND1と、周辺電極150Cの導体壁とによって囲まれる誘電体が
図2で示したアンテナモジュール100の構成に比べて少なくなり、給電素子121と接地電極GND1との静電容量が減少する。これにより、放射される電波の周波数帯域幅を拡大することが可能となる。
【0054】
図10は、周辺電極の配置の第2変形例を示す図(平面図)である。
図2で示したアンテナモジュール100と比較すると、
図10のアンテナモジュール100Cにおいては、周辺電極150Cが給電素子121の周囲に環状に配置されている。このような周辺電極の形状においても、偏波方向および偏波方向に直交する方向に対称となる位置に周辺電極が配置されているため、裏面側への電気力線の回り込みが抑制されるとともに、電気力線の対称性を向上することができる。したがって、アンテナ特性を向上させることができる。
【0055】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、放射素子が単独で配置される構成について説明した。実施の形態2においては、複数の放射素子が配置されたアレイアンテナにおいて周辺電極を用いる構成について説明する。
【0056】
図11は、実施の形態2に従うアンテナモジュール100Dの斜視図である。
図11を参照して、アンテナモジュール100Dのアンテナ装置120Aは、略L字形状を有する誘電体基板130Aに複数の給電素子121が配置されたアレイアンテナである。
【0057】
誘電体基板130Aは、互いに法線方向が異なる平板形状の第1基板1301および第2基板1302と、第1基板1301および第2基板1302を接続する屈曲部135とを含む。
【0058】
第1基板1301はZ軸方向を法線方向とする矩形状の平板であり、Y軸方向に沿って4つの給電素子121が配列されている。第1基板1301の裏面側にはRFIC110が配置されている。
【0059】
第2基板1302はX軸方向を法線方向とする平板であり、Y軸方向に沿って4つの給電素子121が配列されている。第2基板1302は、屈曲部135が接続される部分に切欠部136が形成されており、当該切欠部136からZ軸の正方向に突出した突出部133が形成されている。第2基板1302に配置される給電素子121の各々は、少なくとも一部がこの突出部133に形成されている。
【0060】
このような構成は、たとえば、スマートフォンのような薄い板状の機器において、主面側および側面側の2方向に電波を放射する場合に用いられる。アンテナモジュール100Dの場合、第1基板1301が主面側に対応し、第2基板1302が側面側に対応する。この場合、側面側に配置される第2基板1302については、機器の厚み方向、すなわちZ軸方向の寸法が制限され、十分な広さの接地電極GND1が確保できない場合が生じ得る。また、屈曲部135との接続のための切欠部136によって接地電極GND1の形状が各給電素子121の面中心を通る偏波方向に対して非対称となり、さらに接地電極GND1の形状が給電素子121ごとに異なってしまう。そうすると、アレイアンテナの各給電素子121のアンテナ特性が不均一となるため、アレイアンテナ全体としての特性も悪化する可能性がある。
【0061】
そのため、実施の形態2においては、アレイアンテナにおいて実施の形態1で説明したような周辺電極を適用することによって、アレイアンテナを構成する複数の給電素子のアンテナ特性を均一化し、アレイアンテナ全体のアンテナ特性を改善する。
【0062】
図12は、
図11のアンテナモジュール100DをX軸方向から見たときの、第2基板1302の平面図である。なお、
図12においては、誘電体層が省略されている。第2基板1302に配置された給電素子121は、実施の形態1の第2例で説明したアンテナモジュール100Aと類似の構成を有している。
【0063】
より詳細には、給電素子121の各々は、給電点SP1(すなわち偏波方向)がZ軸に対して45°傾いて配置され、さらに四隅が削除された八角形の形状とされている。そして、給電素子121の偏波方向に沿った辺および偏波方向に直交する方向に沿った辺に対向した位置において、給電素子121と接地電極GND1との間の層に周辺電極150Aが配置される。このような構成とすることによって、接地電極のサイズおよび/または形状の制限により、各給電素子に対応する接地電極にばらつきが生じる場合であっても、周辺電極によってアンテナ特性を均一化することができる。
【0064】
図13は、
図11および
図12に示したようなアレイアンテナにおいて、周辺電極の有無によるアンテナ特性の違いを説明するための図である。
図13においては、実施の形態2のアンテナモジュール100Dの第2基板1302の部分、および、周辺電極150Aが配置されない比較例2のアンテナモジュール100#2についてのシミュレーション結果が示されている。
図13においては、中段に隣接する2つの給電素子121−1,121−2の反射損失が示されており、下段には4つの給電素子121−1〜121−4から電波を放射した場合のアンテナゲインが示されている。
【0065】
なお、反射損失については、実線LN20,LN20#が給電素子121−1を示しており、破線LN21,LN21#が給電素子121−2を示している。また、アンテナゲインについては、X軸方向に放射される電波のメインローブML1およびサイドローブSL1,SL2のうちメインローブML1のピークゲインが示されている。アンテナゲインについては、実線LN25が実施の形態2のアンテナモジュール100Dを示しており、破線LN26が比較例2のアンテナモジュール100#2を示している。
【0066】
図13を参照して、比較例2のアンテナモジュール100#2においては、反射損失が低下する周波数、および、所定の反射損失が実現される周波数帯域幅が、2つの給電素子で若干ずれている。すなわち、隣接する2つの給電素子において、異なったアンテナ特性となっている。一方、実施の形態2のアンテナモジュール100Dにおいては、隣接する2つの給電素子において、反射損失が低下する周波数、および、周波数帯域幅がほぼ同じとなっており、アンテナ特性のばらつきが低減されている。
【0067】
これにより、通過帯域におけるアンテナゲインについても、比較例2のアンテナモジュール100#2(破線LN26)に比べて、実施の形態2のアンテナモジュール100D(実線LN25)の方が大きくなっており、アンテナ特性が改善されていることがわかる。
【0068】
以上のように、アレイアンテナが形成されるアンテナモジュールにおいて、放射素子に対して接地電極のサイズおよび/または形状が制限される場合であっても、各放射素子に対して、偏波方向および/または偏波方向に直交する方向に対称な位置に周辺電極を配置することによって、放射素子間のアンテナ特性のばらつきを低減することができ、アンテナモジュール全体としてのアンテナ特性を向上させることができる。
【0069】
(変形例1)
図11および
図12で示した実施の形態2のアンテナモジュール100Dにおいては、隣接する給電素子ごとに個別に周辺電極が配置される構成について説明した。変形例1においては、アレイアンテナにおいて、隣接する給電素子の周辺電極を共通化することによって、アンテナ特性をさらに向上させる構成について説明する。
【0070】
図14は、変形例1に従うアンテナモジュール100D1の平面図である。アンテナモジュール100D1においては、給電素子121−1と給電素子121−2との間の周辺電極150A、および、給電素子121−3と給電素子121−4との間の周辺電極150Aが、接続電極151によって電気的に接続されて一体化されている。なお、周辺電極150Aおよび接続電極151は、個別の要素を連結したものでなく、一体化して形成されたものであってもよい。
【0071】
このように、隣接する周辺電極を共通化することによって、給電素子から放出される電気力線を受ける周辺電極の面積が大きくなるので、接地電極GND1の裏面に回り込む電気力線を抑制することができる。これによって、アンテナゲインの劣化、周波数帯域幅の狭隘化、偏波方向の変動などのアンテナ特性の低下をより一層抑制することができる。
【0072】
なお、周辺電極の一部が共通化された場合には、各給電素子における電気力線分布の対称性が悪化する場合が生じ得るが、そのような場合には、共通化されていない周辺電極の大きさおよび/または形状などを適宜調整するようにしてもよい。
【0073】
(変形例2)
変形例1においては、隣接する給電素子の周辺電極を別の接続電極によって一体化する構成について説明した。
【0074】
図15に示される変形例2のアンテナモジュール100D2においては、
図14の接続電極151を用いず、周辺電極150自体が互いに接するように給電素子121が配置されており、隣接する周辺電極150が連結されて共通化された構成となっている。
図15のアンテナモジュール100D2においても、給電素子から放出される電気力線を受ける周辺電極の面積が大きくなるので、アンテナゲインの劣化、周波数帯域幅の狭隘化、偏波方向の変動などのアンテナ特性の低下をより一層抑制することができる。
【0075】
[実施の形態3]
実施の形態1および実施の形態2においては、1つの放射素子から単独の偏波方向の電波が放射される構成について説明した。実施の形態3においては、1つの放射素子から異なる2つの偏波方向の電波を放射することが可能な、いわゆるデュアル偏波タイプのアンテナモジュールに周辺電極を適用した構成の例について説明する。
【0076】
図16は、実施の形態3に従うアンテナモジュール100Eの平面図である。アンテナモジュール100Eは、実施の形態2のアンテナモジュール100Dと同様のアレイアンテナであるが、各給電素子121−1〜121−4に2つの給電点SP1,SP2が配置されている点が異なっている。各給電素子121−1〜121−4において、給電点SP1に高周波信号が供給されると、Z軸からY軸の負方向に45°傾いた方向(一点鎖線CL1の延在方向)を偏波方向とする電波が放射される。また、給電点SP2に高周波信号が供給されると、Z軸からY軸の正方向に45°傾いた方向(一点鎖線CL2の延在方向)を偏波方向とする電波が放射される。
【0077】
なお、給電素子121−2は、隣接する給電素子121−1に対して180°回転した態様で配置されている。また、給電素子121−4は、隣接する給電素子121−3に対して180°回転した態様で配置されている。そして、互いに180°回転した態様で配置された給電素子間においては、同じ給電点には、位相が反転された高周波信号が供給される。このような位相調整によって、各給電素子から放射される各偏波方向の電波の位相を一致させることができる。さらに、隣接配置された給電素子を180°回転させて配置することで、交差偏波識別度(Cross Polarization Discrimination:XPD)を改善することができる。
【0078】
そして、アンテナモジュール100Eにおいても、各給電素子121−1〜121−4に対して、偏波方向および偏波方向に直交する方向に対称な位置に、周辺電極150Aが配置される。これによって、接地電極GND1のサイズおよび/または形状の制限に伴う給電素子間のアンテナ特性のばらつきを低減し、アンテナモジュール全体としてのアンテナ特性を改善することができる。
【0079】
図17は、デュアル偏波タイプのアンテナモジュールにおいて、周辺電極の有無による2つの偏波のアイソレーションを説明するための図である。
図17においては、実施の形態3のアンテナモジュール100E、および、周辺電極150Aが配置されない比較例3のアンテナモジュール100#3における、2つの給電点間のアイソレーションのシミュレーション結果が示されている。
図17からわかるように、所望の通過帯域において、実施の形態3のアンテナモジュール100Eのアイソレーションが、比較例3のアンテナモジュール100#3のアイソレーションよりも改善している。2つの偏波間のアイソレーションが改善することで、反射損失およびゲインが改善され、さらにアクティブインピーダンスの向上にもつながる。
【0080】
以上のように、デュアル偏波タイプのアンテナモジュールにおいても、各放射素子に対して、偏波方向および/または偏波方向に直交する方向に対称な位置に周辺電極を配置することによって、接地電極に制約がある場合でもアンテナ特性を向上させることができる。
【0081】
上記の説明においては、デュアル偏波タイプのアレイアンテナに周辺電極を適用した例ついて説明したが、実施の形態1で示したような、放射素子が1つの場合のデュアル偏波タイプのアンテナモジュールにも適用可能である。
【0082】
[実施の形態4]
上述の実施の形態においては、放射素子から放射される電波の周波数帯域が1つの場合について説明した。実施の形態4においては、各放射素子から異なる2つの周波数帯域の電波を放射することが可能な、いわゆるデュアルバンドタイプのアンテナモジュールについて、上記のような周辺電極を適用した構成について説明する。
【0083】
図18は、実施の形態4に従うアンテナモジュール100Fの平面図である。アンテナモジュール100Fは、実施の形態3と同様にデュアル偏波タイプのアレイアンテナであるが、放射素子として、給電素子121Aに加えて無給電素子122を有している点が異なっている。
【0084】
無給電素子122は、給電素子121Aと接地電極GND1との間の層に配置されている。RFIC110からの給電配線は、無給電素子122を貫通して給電素子121Aの給電点SP1,SP2に接続される。無給電素子122の偏波方向の寸法は、給電素子121Aの偏波方向の寸法よりも大きい。そのため、無給電素子122の共振周波数は給電素子121Aの共振周波数よりも低い。無給電素子122の共振周波数に対応した高周波信号が供給されることによって、無給電素子122からは、給電素子121Aよりも低い周波数帯域の電波が放射される。すなわち、アンテナモジュール100Fは、異なる2つの周波数帯域の電波を放射することができるデュアルバンドタイプのアンテナモジュールである。
【0085】
なお、給電素子121Aおよび無給電素子122は、接地電極GND1のサイズの制約により、偏波方向がZ軸方向に対して45°傾くように配置される。さらに、無給電素子122については、接地電極GND1からはみ出る四隅の部分が削除されて八角形の形状とされている。
【0086】
ここで、高周波数側の給電素子121Aについては、無給電素子122との間の電磁界結合によってアンテナとして機能する。一方で、無給電素子122については、接地電極GND1との間の電磁界結合によってアンテナとして機能する。接地電極GND1については、実施の形態2および実施の形態3と同様に、無給電素子122に対して十分な広さが確保できておらず、さらに無給電素子122の面中心を通る偏波方向に対して非対称な形状となっている。
【0087】
そのため、アンテナモジュール100Fにおいては、無給電素子122の偏波方向に沿った辺および偏波方向に直交する方向に沿った辺に対向した位置において、無給電素子122と接地電極GND1との間の層に周辺電極150Aが配置される。これにより、無給電素子122間におけるアンテナ特性のばらつきを低減し、アンテナモジュール全体としてのアンテナ特性を向上させることができる。
【0088】
なお、アンテナモジュール100Fにおいては、放射素子として給電素子と無給電素子とを備える構成の例について説明したが、2つの放射素子をいずれも給電素子としてもよい。
【0089】
(変形例3)
図19は、変形例3に従うアンテナモジュール100F1の平面図である。変形例3のアンテナモジュール100F1においては、
図14で説明した変形例1と同様に、アンテナモジュール100Fの隣接する放射素子の周辺電極150Aが接続電極151により連結されて共通化されている。このような構成とすることによって、無給電素子122から放出される電気力線の接地電極GND1の裏面への回り込みを抑制できるので、実施の形態4のアンテナモジュール100Fに比べてアンテナ特性の低下をさらに抑制することができる。
【0090】
(変形例4)
図20は、変形例4に従うアンテナモジュール100F2の平面図である。変形例4のアンテナモジュール100F2においては、
図15で説明した変形例2と同様に、隣接する周辺電極150A同士が接するように給電素子121が配置され、当該周辺電極150A同士が共通化された構成となっている。このような構成においても、無給電素子122から放出される電気力線の接地電極GND1の裏面への回り込みを抑制できるので、実施の形態4のアンテナモジュール100Fに比べてアンテナ特性の低下をさらに抑制することができる。
【0091】
[実施の形態5]
接地電極の裏面に回り込む電気力線を周辺電極を用いて抑制するには、周辺電極の面積を大きくすることが好ましい。一方で、誘電体基板内にスタブあるいはフィルタなどの他の要素を形成する場合には、周辺電極を大きくすると、これらの要素のレイアウトが制約され得る。
【0092】
実施の形態5においては、誘電体基板内のレイアウトの自由度の確保、および、基板裏面への電気力線の回り込みの低減を両立することができる構成について説明する。
【0093】
図21および
図22は、実施の形態5に従うアンテナモジュール100Gを示す図である。
図21はアンテナモジュール100Gの平面図であり、
図22はアンテナモジュール100Gの斜視図である。
図21および
図22においても、説明を容易にするために、誘電体層については省略されている。アンテナモジュール100Gにおいては、実施の形態1の第2例で示したアンテナモジュール100Aにおける周辺電極150Aに代えて、周辺電極150Dが配置されている。なお、
図21および
図22において、
図6および
図7で示したアンテナモジュール100Aと共通する要素の説明は繰り返さない。
【0094】
図21および
図22を参照して、アンテナモジュール100Gにおける周辺電極150Dは、
図6および
図7で示した周辺電極150Aに比べてやや小さいサイズに形成されている。より具体的には、周辺電極150Aは誘電体基板を平面視した場合に略直角三角形の形状を有しているが、実施の形態5の周辺電極150Dの例では、上記の直角三角形の直角の頂点部分の一部(
図21の破線領域AR1)が除去された略台形形状に形成されている。このように、周辺電極の形状を変形して小型化することによって、誘電体基板において他の要素が配置できるスペースを拡張することができる。
【0095】
次に、
図23および
図24を用いて、実施の形態5のアンテナモジュール100Gにおけるアンテナ特性を、アンテナモジュール100Aのアンテナ特性と比較しながら説明する。
図23はアンテナゲインの周波数特性を示しており、
図24は指向性を示している。
【0096】
図23においては、28GHzを中心周波数とする通過帯域の場合のアンテナゲインの周波数特性である。
図23および
図24において、実線LN40,LN50はアンテナモジュール100Aの場合を示しており、破線LN41,LN51はアンテナモジュール100Gの場合を示している。
【0097】
図23に示されるように、実施の形態5のアンテナモジュール100Gではアンテナモジュール100Aに比べて周辺電極が小型化されているため、アンテナゲインについては、アンテナモジュール100Aの場合に比べてアンテナモジュール100Gのほうが全体的にやや低くなっている。しかしながら、対象となる通過帯域(25GHz〜29.5GHz)においては、全域にわたって7dBi以上のアンテナゲインを確保できている。
【0098】
図24のグラフは、中心周波数28GHzの電波を放射したときの指向性を示しており、横軸には、偏波方向に沿った断面における給電素子121の法線方向からの角度が示されている。角度0°におけるピークゲインを比較すると、アンテナモジュール100Gの場合には、アンテナモジュール100Aの場合に比べて約0.2dBi程度低くなってはいるものの、8dBiのピークゲインが実現できていることがわかる。
【0099】
角度が100°より大きい領域、および、−100°よりも小さい領域については、アンテナモジュール100Gのゲインがアンテナモジュール100Aよりもやや大きくなっている。これは、誘電体基板の裏面への回り込みが増加していることを示している。すなわち、アンテナモジュール100Gの場合は、指向性についても、アンテナモジュール100Aよりも若干の低下が見られるものの、全体としては目標とする仕様範囲内を実現することができている。
【0100】
以上のように、実施の形態5のアンテナモジュール100Gにおいては、アンテナ特性については、
図6で示したアンテナモジュール100Aには若干及ばないものの、周辺電極を用いない場合に比べてアンテナ特性を向上することができる。一方で、周辺電極の小型化によって、誘電体基板内におけるレイアウトの自由度を向上することができる。
【0101】
アンテナモジュール100Aおよびアンテナモジュール100Gのいずれの構成を採用するかについては、要求されるアンテナ特性、および、アンテナモジュール内に配置すべき要素の有無に応じて適宜選択される。
【0102】
[実施の形態6]
上述の実施の形態および各変形例においては、放射素子と接地電極とが同じ誘電体基板に配置される構成について説明した。しかしながら、放射素子は、その他の要素が形成される誘電体基板とは異なる誘電体基板に形成される構成であってもよい。
【0103】
図25は、実施の形態6に従うアンテナモジュール100Hの側面透視図である。アンテナモジュール100Hにおいては、実施の形態1の
図3で示したアンテナモジュール100における給電素子121が誘電体基板130Bに形成されており、給電素子121以外の要素が誘電体基板130Bから独立した回路基板300に形成された構成となっている。回路基板300においては、誘電体基板130Cに、
図3のアンテナモジュール100における給電素子121以外の要素が配置されており、誘電体基板130Cの下面側にRFIC110が実装されている。
【0104】
誘電体基板130Bの下面は、回路基板300の誘電体基板130Cの上面に対向するように配置されている。給電配線140は、誘電体基板130Bと誘電体基板130Cとの間に配置された接続端子161を介して給電素子121に接続されている。接続端子161として、はんだバンプ、接続コネクタあるいは接続用ケーブルが用いられる。
【0105】
このように、RFICが配置される回路基板と、放射素子が形成される誘電体基板とが個別の基板として形成される構成とすることによって、通信装置内の機器配置の自由度を高めることができる。たとえば、回路基板をマザーボードに配置し、放射素子を筐体に配置する構成とすることができる。
【0106】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。