特許第6954525号(P6954525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954525
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】連続式水素生成装置および水素生成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/06 20060101AFI20211018BHJP
   C01B 6/04 20060101ALI20211018BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20211018BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20211018BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20211018BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20211018BHJP
【FI】
   C01B3/06
   C01B6/04
   C01B3/00 Z
   H01M8/0662
   H01M8/0606
   H01M8/04701
【請求項の数】24
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-78395(P2017-78395)
(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公開番号】特開2018-177580(P2018-177580A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】506074015
【氏名又は名称】バイオコーク技研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517127919
【氏名又は名称】株式会社エスエーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】上杉 浩之
(72)【発明者】
【氏名】上杉 堅一
(72)【発明者】
【氏名】野際 通
(72)【発明者】
【氏名】韓 衡▲機▼
(72)【発明者】
【氏名】韓 昇勳
(72)【発明者】
【氏名】張 炳祿
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−195658(JP,A)
【文献】 特開2014−162664(JP,A)
【文献】 特開2010−195643(JP,A)
【文献】 特開2012−082110(JP,A)
【文献】 特開2011−026182(JP,A)
【文献】 特開2015−081221(JP,A)
【文献】 特開2006−160545(JP,A)
【文献】 特開2003−226502(JP,A)
【文献】 特開2014−001117(JP,A)
【文献】 特開2008−162858(JP,A)
【文献】 特開2013−130218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−3/06、6/04
C01B 6/04
C01B 3/00
H01M 8/06
H01M 8/04701
H01M 8/0606
C01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器の内部に水を供給する第1管と、
水素発生材の粉と水とを攪拌して懸濁液にする懸濁容器と、
前記懸濁容器内の懸濁液を前記反応容器の内部に供給する第2管と、
前記反応容器の上部に接続され、前記第1管により供給されて前記反応容器内に貯留した水と前記第2管により供給された前記懸濁液中の水素発生材との反応により生じた水素を流出させる第3管と
前記反応容器の下部に接続され、前記第3管から流出させる水素を生成する際の反応生成物を流出させる排水管と
を備える水素生成装置。
【請求項2】
前記懸濁容器は、内部の懸濁液の温度を摂氏0度以上摂氏20度以下の範囲に維持する
請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記第2管は、前記反応容器の上部から前記懸濁液を供給する
請求項1または請求項2に記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記第2管は、前記第1管を介して前記懸濁液を供給する
請求項1または請求項2に記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記第1管は、前記反応容器の内部に水を噴射する
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の水素生成装置。
【請求項6】
前記第1管は、前記反応容器の内壁に沿って水を噴射する
請求項5に記載の水素生成装置。
【請求項7】
前記第1管は、前記反応容器の内部に設けられたシャワーヘッドを介して前記反応容器の内部に水を散布する
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の水素生成装置。
【請求項8】
前記反応容器と前記第3管との接続部と、前記反応容器内に貯留した水の水面との間に配置された邪魔板を備える
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の水素生成装置。
【請求項9】
前記邪魔板は網状、多数の貫通孔を備える板状、または、無孔の板状であり、前記反応容器の内面との間に気体が通過可能な隙間を有して配置される
請求項8に記載の水素生成装置。
【請求項10】
前記反応容器と前記第3管との接続部と前記シャワーヘッドとの間または、前記シャワーヘッドと前記反応容器内に貯留した水の水面との間に配置された邪魔板を備える
請求項7に記載の水素生成装置。
【請求項11】
前記反応容器の下部に設けられた排水口から排出した水と反応生成物とを分離する分離槽を備え、
前記第1管は、前記分離槽で分離した水を供給する
請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の水素生成装置。
【請求項12】
前記懸濁液に前記分離槽で分離した水を供給する第4管を備える
請求項11に記載の水素生成装置。
【請求項13】
前記水素発生材は、水素化マグネシウムである
請求項1から請求項12のいずれか一つに記載の水素生成装置。
【請求項14】
前記第3管から流出させた水素を消費した燃料電池により生成された水が流入する第5管を備え、
前記第5管から流入した水が前記第2管に供給される
請求項1から請求項13のいずれか一つに記載の水素生成装置。
【請求項15】
前記反応容器内に貯留した水を加熱するヒータと、
前記反応容器内に貯留した水を冷却する第1冷却装置と
を備える請求項1から請求項14のいずれか一つに記載の水素生成装置。
【請求項16】
前記ヒータは、前記反応容器内に貯留した水の温度を摂氏95度以上摂氏250度以下の範囲に維持する
請求項15に記載の水素生成装置。
【請求項17】
前記第3管は、水素とともに前記反応容器内の水蒸気を流出させ、
前記第3管から流出した水素および水蒸気を冷却する冷却槽を備える
請求項1から請求項16のいずれか一つに記載の水素生成装置。
【請求項18】
前記第3管から流出させた水素を貯留する水素タンクと、
前記水素タンクの内圧よりも高い圧力で水素を貯留するリザーバタンクを備える
請求項1から請求項17のいずれか一つに記載の水素生成装置。
【請求項19】
反応容器の内部に水を供給し、
水素発生材の粉と水とをそれぞれ懸濁容器に供給し、
前記懸濁容器内を攪拌して懸濁液を作成し、
前記懸濁容器内の懸濁液を前記反応容器の内部に供給し、
前記反応容器内に貯留した水と前記懸濁液中の水素発生材との反応により生じた水素を流出させる
水素生成方法。
【請求項20】
前記反応容器内で化学反応により生成する反応生成物と水との混合液を前記反応容器の下部から排出し、
排出した反応生成物と水とを分離し、
分離した水を前記反応容器の内部に供給する
請求項19に記載の水素生成方法。
【請求項21】
前記反応容器内の水の温度を摂氏95度以上摂氏250度以下の範囲に維持する
請求項19または請求項20に記載の水素生成方法。
【請求項22】
前記水素とともに前記反応容器内の水蒸気を流出させ、
前記水蒸気を凝結し、
凝結により生成した水を前記反応容器の内部に供給する
請求項19から請求項21のいずれか一つに記載の水素生成方法。
【請求項23】
前記反応容器の内部に配置されたシャワーヘッドを介して前記反応容器の内部に水を供給する
請求項19から請求項22のいずれか一つに記載の水素生成方法。
【請求項24】
前記反応容器の内壁に沿って水を噴射して供給する
請求項19から請求項22のいずれか一つに記載の水素生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続式水素生成装置および水素生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料にして発電する燃料電池が、広範な技術分野において使用されている。燃料電池に供給する水素を、水素化マグネシウム粒子の加水分解によって生成する水素生成装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−99534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水素生成装置は、長時間の連続運転には適さないという問題点がある。
【0005】
一つの側面では、長時間の連続運転が可能な水素生成装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水素生成装置は、反応容器の内部に水を供給する第1管と、水素発生材の粉と水とを攪拌して懸濁液にする懸濁容器と、前記懸濁容器内の懸濁液を前記反応容器の内部に供給する第2管と、前記反応容器の上部に接続され、前記第1管により供給されて前記反応容器内に貯留した水と前記第2管により供給された前記懸濁液中の水素発生材との反応により生じた水素を流出させる第3管と、前記反応容器の下部に接続され、前記第3管から流出させる水素を生成する際の反応生成物を流出させる排水管とを備える。
【0008】
水素生成装置は、前記懸濁容器は、内部の懸濁液の温度を摂氏0度以上摂氏20度以下の範囲に維持する。
【0009】
水素生成装置は、前記第2管は、前記反応容器の上部から前記懸濁液を供給する。なお、前記第2管は、前記反応容器の中部または下部等、任意の場所から前記懸濁液を供給しても良い。
【0010】
水素生成装置は、前記第2管は、前記第1管を介して前記懸濁液を供給する。
【0011】
水素生成装置は、前記第1管は、前記反応容器の内部に水を噴射する。
【0012】
水素生成装置は、前記第1管は、前記反応容器の内壁に沿って水を噴射する。
【0013】
水素生成装置は、前記第1管は、前記反応容器の内部に設けられたシャワーヘッドを介して前記反応容器の内部に水を散布する。
【0014】
水素生成装置は、前記反応容器と前記第3管との接続部と、前記反応容器内に貯留した水の水面との間に配置された邪魔板を備える。
【0015】
水素生成装置は、前記邪魔板は網状、多数の貫通孔を備える板状、または、無孔の板状であり、前記反応容器の内面との間に気体が通過可能な隙間を有して配置される。
【0016】
水素生成装置は、前記反応容器と前記第3管との接続部と前記シャワーヘッドとの間または、前記シャワーヘッドと前記反応容器内に貯留した水の水面との間に配置された邪魔板を備える。
【0017】
水素生成装置は、前記反応容器の下部に設けられた排水口から排出した水と反応生成物とを分離する分離槽を備え、前記第1管は、前記分離槽で分離した水を供給する。
【0018】
水素生成装置は、前記懸濁液に前記分離槽で分離した水を供給する第4管を備える。
【0019】
水素生成装置は、前記水素発生材は、水素化マグネシウムである。
【0020】
水素生成装置は、前記第3管から流出させた水素を消費した燃料電池により生成された水が流入する第5管を備え、前記第5管から流入した水が前記第2管に供給される。
【0021】
水素生成装置は、前記反応容器内に貯留した水を加熱するヒータと、前記反応容器内に貯留した水を冷却する第1冷却装置とを備える。
【0022】
水素生成装置は、前記ヒータは、前記反応容器内に貯留した水の温度を摂氏95度以上摂氏250度以下の範囲に維持する。
【0023】
水素生成装置は、前記第3管は、水素とともに前記反応容器内の水蒸気を流出させ、
前記第3管から流出した水素および水蒸気を冷却する冷却槽を備える。
【0024】
水素生成装置は、前記第3管から流出させた水素を貯留する水素タンクと、前記水素タンクの内圧よりも高い圧力で水素を貯留するリザーバタンクを備える。
【0025】
水素生成方法は、反応容器の内部に水を供給し、水素発生材の粉と水とをそれぞれ懸濁容器に供給し、前記懸濁容器内を攪拌して懸濁液を作成し、前記懸濁容器内の懸濁液を前記反応容器の内部に供給し、前記反応容器内に貯留した水と前記懸濁液中の水素発生材との反応により生じた水素を流出させる。
【0026】
水素生成方法は、前記反応容器内で化学反応により生成する反応生成物と水との混合液を前記反応容器の下部から排出し、排出した反応生成物と水とを分離し、分離した水を前記反応容器の内部に供給する。
【0027】
水素生成方法は、前記反応容器内の水の温度を摂氏95度以上摂氏250度以下の範囲に維持する。
【0028】
水素生成方法は、前記水素とともに前記反応容器内の水蒸気を流出させ、前記水蒸気を凝結し、凝結により生成した水を前記反応容器の内部に供給する。
【0029】
水素生成方法は、前記反応容器の内部に配置されたシャワーヘッドを介して前記反応容器の内部に水を供給する。
【0030】
水素生成方法は、前記反応容器の内壁に沿って水を噴射して供給する。
【発明の効果】
【0031】
一つの側面では、長時間の連続運転が可能な水素生成装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】水素生成装置の模式図である。
図2】温度と反応率との関係を示すグラフである。
図3】水素生成装置の制御系のブロック図である。
図4】プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
図5】実施の形態2の水素生成装置の模式図である。
図6】実施の形態3の水素生成装置の模式図である。
図7図6におけるVII−VII線による反応容器の模式断面図である。
図8】実施の形態4の反応容器の模式断面図である。
図9】実施の形態5の水素生成装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[実施の形態1]
図1は、水素生成装置の模式図である。水素生成装置10は、反応容器21、懸濁容器81、水素発生材容器31、水タンク61、分離槽63、冷却槽65、水素タンク71およびリザーバタンク74を備える。図1を使用して、本実施の形態の水素生成装置10の概要を説明する。
【0034】
反応容器21は円形断面の中空容器である。なお、反応容器21の断面形状は、円形以外の形状であっても良い。反応容器21の外側には、ヒータ58および第1冷却装置541が取り付けられている。ヒータ58は、反応容器21を暖める装置である。第1冷却装置541は、反応容器21を水冷または空冷等により冷却する装置である。
【0035】
なお、ヒータ58は、反応容器21の内部に取り付けても良い。たとえば、ヒータ58にコイルヒータを使用することにより、後述する様に反応容器21の内部に貯留した液体を直接暖めることができる。
【0036】
反応容器21の天面の中央付近に設けられた接続部は、第3管663を介して冷却槽65と接続されている。冷却槽65は、送気管を介して水素タンク71と接続されている。さらに冷却槽65は、送水管を介して水タンク61と接続されている。水タンク61は、途中に第1バルブ561を有する第1管661を介して反応容器21に接続されている。
【0037】
反応容器21の底は、下に向けて径が小さくなるテーパ部を有する。テーパ部の最下部に、後述する化学反応により生成する反応生成物、たとえば水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウム等を含む水を排出する排水口25が設けられている。排水口25は、途中に排水バルブ566を備える排水管666を介して分離槽63に接続されている。分離槽63は上澄み液を流すオーバーフロー管67を介して複数が直列に接続されている。最後の分離槽63は、途中にポンプ57を備える戻り管を介して水タンク61に接続されている。
【0038】
水素タンク71に、水素放出管75が接続されている。リザーバタンク74は、途中にリザーババルブ568を有する補給管668を介して、水素放出管75に接続されている。
【0039】
水タンク61は、途中に第4バルブ564を有する第4管664を介して、懸濁容器81に接続されている。水素発生材容器31も、途中に供給バルブ567を有する供給管667を介して懸濁容器81に接続されている。
【0040】
懸濁容器81は、スターラ821の上に載せられている。懸濁容器81の底に、スターラ821が発生する磁場により回転する回転子822が入っている。なお、スターラ821と回転子822とは、懸濁容器81内の液体を攪拌する攪拌器82の一例である。
【0041】
懸濁容器81は、途中に第2バルブ562を有する第2管662を介して、反応容器21の上面に接続されている。
【0042】
水素発生材容器31には、水と反応して水素を発生する水素発生材の粉が収容されている。水素発生材は、たとえば水素化マグネシウムである。水素発生材に水素化マグネシウムを使用する場合には、以下の反応式により水素が発生する。
【0043】
MgH2+2H2O → Mg(OH)2+2H2 ‥‥‥(1)
MgH2+H2O → MgO+2H2 ‥‥‥(2)
【0044】
式(1)は水素化マグネシウムと温水とが反応する場合の反応式、式(2)は水素化マグネシウムと高温の水蒸気とが反応する場合の反応式である。いずれも、水素化マグネシウムの加水分解の反応である。
【0045】
水素発生材は、マグネシウム粉、アルミニウム粉、鉄粉、またはカルシウム粉等でも良い。これらの水素発生材を使用する場合には、それぞれ以下の反応式により水素が発生する。
【0046】
Mg+2H2O → Mg(OH)2+H2 ‥‥‥(3)
2Al+6H2O → 2Al(OH)3+3H2 ‥‥‥(4)
Fe+6H2O → 2Al(OH)3+3H2 ‥‥‥(5)
Ca+2H2O → Ca(OH)2+H2 ‥‥‥(6)
【0047】
以下の説明では、水素発生材に水素化マグネシウムを使用し、主に式(1)の反応により水素を発生させる場合を例にして説明する。なお、温度および圧力等の反応条件によっては、式(1)の反応と平行して式(2)の反応も生じる可能性がある。
【0048】
図2は、温度と反応率との関係を示すグラフである。横軸は、反応容器21内の温度であり、単位は摂氏である。縦軸は、水素化マグネシウムの反応率であり、単位はパーセントである。反応率は、反応容器21に投入した水素化マグネシウムのうち、式(1)または式(2)の化学反応を起こす水素化マグネシウムの割合を質量比で示す値である。
【0049】
図2に示す様に、反応容器21内の温度が上昇した場合、反応率は摂氏65度付近で急激に上昇し、摂氏95度付近で上昇がゆるやかになり、摂氏130度付近で85パーセント程度に達する。その後、反応容器内の温度の上昇に伴って反応率は漸増して、100パーセントに近付く。
【0050】
以上より、本実施の形態においては、反応容器21内の温度を摂氏95度以上にすることが望ましい。反応容器21内の温度をおよそ130度以上にすることが、さらに望ましい。反応容器21内の温度を150度程度にすることにより、95パーセント程度の反応率を達成することができる。
【0051】
図2に示す様に、反応容器21内の温度を摂氏130度よりも高温にした場合の、反応率の上昇量は比較的少ない。したがって、ヒータ58を用いて反応容器21を暖める場合には、反応容器21内の温度は摂氏130度程度であることが、エネルギー効率の観点から望ましい。
【0052】
同様に図2に示す様に、反応容器21内の温度を摂氏150度以上にした場合には、温度の変動量に対する反応率の変化量が少なくなる。したがって、反応容器21内の温度は摂氏150度以上であることが、反応率を高い値で安定させる観点で望ましい。
【0053】
一方、反応容器21内の温度が高いことにより、反応容器21および配管等の劣化が進みやすく、水素生成装置10の寿命が短くなるおそれがある。したがって、反応容器21内の温度は350度以下に維持することが望ましい。反応容器21内の温度は摂氏250度以下がさらに望ましく、200度以下であることがさらに望ましい。
【0054】
水素化マグネシウムは、平均粒径が1ミリメートル以下、望ましくは平均粒径が100マイクロメートル以下の粉体である。水素化マグネシウムの平均粒径は、たとえば60マイクロメートル、15マイクロメートル、5マイクロメートルまたは1マイクロメートル以下でも良い。水素化マグネシウムの平均粒径および粒度分布は、必要な反応速度、コストおよび水素発生材容器31の構成等に応じて、適宜選択される。
【0055】
図1に戻り、水素生成装置10の動作の概要を説明する。反応容器21の約半分から三分の2程度の高さまで水が貯留される。反応容器21の内部は、温度が摂氏95度以上摂氏350度以下、圧力が0.01メガパスカル以上、1メガパスカル未満に調整され、維持される。
【0056】
反応容器21の内部は、温度が摂氏95度以上摂氏250度以下、圧力が0.2メガパスカル以上、1メガパスカル未満に調整され、維持されることが望ましい。反応容器21の内部は、温度が摂氏95度以上から摂氏200度以下、圧力が0.2メガパスカル以上、1メガパスカル未満に調整され、維持されることが、さらに望ましい。
【0057】
懸濁容器81内に、第2管662の開口部よりも高い水位まで水と水素発生材とが供給される。本実施の形態においては、水素発生材の粒径は60マイクロメートル、水素発生材の量は、質量比で水の5パーセントから20パーセント程度である。水素発生材の量は、質量比で水の10パーセントから15パーセント程度であることが、さらに望ましい。
【0058】
懸濁容器81内で回転子822を回転させることにより、水素発生材の粒子が水中に分散して懸濁液になる。懸濁容器81の温度を摂氏15度以下に維持することにより、懸濁容器81内での水素の発生が防止される。
【0059】
第2管662を介して、反応容器21内の水に懸濁液が投入される。式(1)の反応式により、水素および水酸化マグネシウムが発生する。式(2)の反応式により、水素および酸化マグネシウムが発生する。
【0060】
発生した水素は、水が熱せられて生じた水蒸気と混ざる。水素と水蒸気とは、第3管663を通って冷却槽65に入る。冷却槽65内で水蒸気は凝結して水になる。その結果、水素と水蒸気とは、水素と水とに分離される。分離された水は、送水管を通って水タンク61に入る。
【0061】
分離された水素は、送気管を通って水素タンク71に入る。水素タンク71から水素放出管75を介して燃料電池等の供給先に、水素が供給される。なお、水素放出管75を介して放出される水素の量は、図示しない圧力調整弁および流量調整弁により調整される。
【0062】
反応容器21の下部に設けた排水口25から反応生成物である水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む水が流出し、排水管666を介して分離槽63に流れ込む。分離槽63内で、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムは沈殿する。分離槽63からオーバーフロー管67を介して、上澄みの水が隣の分離槽63に流れ込む。
【0063】
複数の分離槽63を経由することにより精製された水が、ポンプ57により加圧され、戻り管を介して水タンク61に戻る。水タンク61から第1管661を介して反応容器21の内部に水が供給される。水タンク61から第4管664を介して懸濁容器81の内部に水が供給される。分離槽63の底に溜まった沈殿物は、適宜取り出され、水素化マグネシウムの製造に利用される。
【0064】
水素を発生させる際の化学反応により消費された水および、分離槽63における生成処理のタイムラグ等により第1管661および第4管664に供給する水が不足する場合には、外部から適宜補給される。
【0065】
水素発生材容器31内の水素発生材が少なくなった場合には、水素発生材容器31の上部に設けられた投入口等から、水素発生材を投入する。水素発生材容器31が空になった後に、供給バルブ567を閉じて、水素発生材を充填済の水素発生容器31に交換しても良い。
【0066】
水素発生材容器31の容量について、1kWの燃料電池に水素を供給する場合を例にして説明する。1kWの燃料電池は、1分間に標準状態で10リットルの水素を消費する。式(1)に示す化学反応により水素を生成する場合、標準状態で10リットルの水素を生成するには、5.88グラムの水素化マグネシウムを使用する。
【0067】
したがって、水素発生材容器31に1kgの水素化マグネシウムが充填されている場合には、水素生成装置10を2.8時間連続して使用することができる。同様に、水素発生材容器31に8.6kgの水素化マグネシウムが充填されている場合には、24時間連続して水素生成装置10を使用することができる。
【0068】
水素発生材を補給する際に、水素発生材容器31または供給管667に空気が入った場合であっても、供給管667と第2管662との間は懸濁液により隔てられているため、第2管662に空気が入ることを防止できる。
【0069】
リザーバタンク74について説明する。リザーバタンク74の内部には、水素タンク71の内部よりも高い圧力で水素が充填されている。リザーバタンク74に充填されている水素の圧力は、たとえば1メガパスカル弱である。燃料電池が水素を必要としているが、反応容器21内における水素生成量が不足する場合には、リザーババルブ568を開き、リザーバタンク74から燃料電池に水素を供給する。リザーババルブ568は、リザーバタンク74内の水素が減少して圧力が低くなった場合には、自動的に閉じることが望ましい。
【0070】
なお、リザーババルブ568とリザーバタンク74との間に圧縮機を設けても良い。反応容器21で十分な量の水素を生成している場合に、補給管668を介して水素タンク71から供給される水素を加圧して、リザーバタンク74に水素を補給することができる。
【0071】
リザーバタンク74は、内部を高圧にすることにより、できるだけ多くの水素を収容可能にする。これにより、燃料電池等に安定的に水素を供給することが可能である。
【0072】
反応容器21、水素発生材容器31、懸濁容器81、冷却槽65、水素タンク71、リザーバタンク74、第3管663、補給管668および各部の配管等の水素に曝露される部分は、ステンレス鋼製またはアルミニウム製であることが望ましい。
【0073】
図3は、水素生成装置10の制御系のブロック図である。制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)41、主記憶装置42、補助記憶装置43、入力部44、出力部45、通信部46、入力I/F(Interface)47、出力I/F48およびバスを備える。本実施の形態の制御装置40には、水素生成装置10専用の装置を利用しても良いし、汎用のパーソナルコンピュータ等を利用しても良い。
【0074】
CPU41は、本実施の形態に係るプログラムを実行する演算制御装置である。CPU41には、一または複数のCPUまたはマルチコアCPU等が使用される。CPU41は、バスを介して制御装置40を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0075】
主記憶装置42は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置42には、CPU41が行う処理の途中で必要な情報およびCPU41で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0076】
補助記憶装置43は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置43には、CPU41に実行させるプログラムおよびプログラムの実行に必要な各種情報が保存される。
【0077】
入力部44は、たとえば、キーボード、タッチパネル、マウス等である。出力部45は、たとえば液晶表示装置または有機EL表示装置等である。出力部45は、警告灯またはスピーカー等をさらに備えても良い。通信部46は、ネットワークとの通信を行うインターフェイスである。
【0078】
入力I/F47は、水素生成装置10の各所に取り付けられた圧力計51、温度計52、流量計53、および、水位計等の各種センサから、CPU41がデータを取得するインターフェイスである。
【0079】
出力I/F48は、水素生成装置10の各所に取り付けられたバルブ56、ポンプ57、ヒータ58、および、冷却装置54等に対する制御信号をCPU41が送出するインターフェイスである。なお、出力I/F48と、バルブ56、ポンプ57、ヒータ58、および、冷却装置54との間には、図示しない駆動回路が設けられている。
【0080】
ここで、バルブ56には、第1バルブ561、第2バルブ562、第4バルブ564、排水バルブ566、供給バルブ567、リザーババルブ568が含まれる。冷却装置54には、第1冷却装置541が含まれる。
【0081】
以上に説明した、水素生成装置10内の物質の流れについて、簡単にまとめる。水は、水タンク61から、第1管661、反応容器21、排水管666、分離槽63および戻り管を経て水タンク61に戻る経路と、水タンク61から、第4管664、懸濁容器81、反応容器21、第3管663、冷却槽65および送水管を経て水タンク61に戻る経路とを循環する。
【0082】
水素を発生させる際の化学反応により消費された水および、分離槽63における生成処理のタイムラグ等によりシャワーヘッド23に供給する水が不足する場合には、外部から適宜補給され、反応容器21内の水位が所定の範囲に維持される。
【0083】
水素生成装置10を長時間連続運転する際には、分離槽63の底に沈殿した反応生成物を適宜取り出すとともに、水を補充する。取り出された反応生成物である、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムは、水素化マグネシウムの製造に利用される。
【0084】
反応容器21内で発生した水素ガスは、第3管663、冷却槽65、水素タンク71を経て、水素放出管75に接続された燃料電池等に供給される。
【0085】
水素発生材容器31内の水素発生材は、式(1)または式(2)の化学反応により消費される。水素生成装置10を長時間連続運転する場合には、水素発生材を適宜補充する。
【0086】
以上に説明したとおり、本実施の形態の水素生成装置10は、水素発生材容器31への水素発生材の供給、分離槽63内に沈殿した反応生成物の除去および水の補充を行うことにより、長時間連続して水素を生成することが可能である。
【0087】
図4は、プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。図4を使用して、水素生成装置10の動作を説明する。なお、図4に示すプログラムの開始時点では、各バルブ56は閉じている。また、水素生成装置10の内部の空間には、水素が充満しているか、または、真空状態になっている。
【0088】
CPU41は、第1バルブ561の駆動回路に対して開信号を送信する。第1バルブ561の駆動回路は、受信した開信号に従って第1バルブ561を開く。第1バルブ561が開くことにより、反応容器21の内部に水が注入される(ステップS501)。
【0089】
なお、以下の説明においては、第1バルブ561の駆動回路の動作の記載を省略して、「CPU41は第1バルブ561を開いて反応容器21の内部に水を入れる。」の様に記載する。第1バルブ561以外の各バルブの駆動回路についても、同様である。
【0090】
CPU41は、反応容器21に取り付けられた水位計などのセンサ、または、第2管662に取り付けられた流量計53等のセンサの出力に基づいて、所定の水位まで水が貯留したことを判定する。
【0091】
CPU41は、ヒータ58の駆動回路に対して起動信号を発する。ヒータ58の駆動回路は、受信した起動信号に従って、ヒータ58を起動する。ヒータ58が発生する熱により、反応容器21内の水が加熱される(ステップS502)。
【0092】
なお、以下の説明においては、ヒータ58の駆動回路の動作の記載を省略して、「CPU41はヒータ58を起動して、反応容器21内の水を加熱する。」の様に記載する。
【0093】
CPU41は、第4バルブ564を開いて懸濁容器81に水を入れ、供給バルブ567を開いて懸濁容器81に水素発生材を入れる(ステップS503)。CPU41は、所定の量の水が懸濁容器81に入った後に、第4バルブ564を閉じる。CPU41は、所定の量の水素発生材が懸濁容器81に入った後に、供給バルブ567を閉じる。
【0094】
CPU41は、攪拌器82を起動して懸濁容器81内を攪拌する(ステップS504)。具体的には、CPU41はスターラ821を起動して、懸濁容器81内の回転子822を回転させることにより、懸濁容器81内を攪拌する。懸濁容器81内の水に水素発生材が分散して、懸濁液になる。
【0095】
CPU41は、反応容器21に取り付けられた温度計52などのセンサの出力に基づいて、反応容器21内に貯留した水の温度が所定の温度に達したことを判定する。CPU41は、第2バルブ562を開き、懸濁液を反応容器21に注入する(ステップS505)。
【0096】
CPU41は、反応容器21内部の圧力センサ等から取得したデータに基づいて、所定の量の水素が生成されていることを確認する(ステップS506)。CPU41は、各センサから取得したデータに基づいて、水素生成装置10を通常運転する(ステップS507)。通常運転時にCPU41が実行する処理の例を説明する。
【0097】
CPU41はヒータ58の出力および第1バルブ561を制御して、反応容器21を所定の温度に保つ。なお、水素発生材と水との化学反応は発熱反応である。発熱量が十分である場合には、CPU41はヒータ58を停止する。さらに発熱量が多い場合には、CPU41は第1バルブ561を開いて、反応容器21内の水の量を増やす。
【0098】
化学反応が激しく、発熱量が非常に多い場合には、CPU41は冷却装置54を動作させて、反応容器21を所定の温度まで冷却する。水の供給および冷却装置54の動作により、反応容器21の温度が十分に低下した場合には、式(1)等を使用して説明した化学反応の速度が低下して、発熱量が少なくなる。
【0099】
CPU41は、排水バルブ566を制御して、反応容器21内部の水の量を所定の量に維持しながら、反応生成物を含む水を分離槽63に取り出す。CPU41は、第4バルブ564および供給バルブ567を制御して、懸濁容器81中の懸濁液を所定の量と濃度に保つ。
【0100】
燃料電池等から水素供給量の増加を要求された場合には、CPU41は第2バルブ562を制御して反応容器21に注入する懸濁液の量を増やす。CPU41は、供給バルブ567を制御して懸濁容器81に水素発生材を投入し、懸濁液の濃度を高くしても良い。
【0101】
燃料電池等から水素供給量の減少を要求された場合には、CPU41は第2バルブ562を制御して、反応容器21に注入する懸濁液の量を減らす。CPU41は、第4バルブ564を制御して懸濁容器81に水を投入し、懸濁液の濃度を薄くしても良い。
【0102】
CPU41は各センサから取得したデータに基づいて水素生成装置10に異常が生じているか否かを判定する(ステップS511)。なお、ステップS511の判定基準はあらかじめ主記憶装置42または補助記憶装置43に記憶されている。
【0103】
異常が生じていると判定した場合(ステップS511でYES)、CPU41は出力部45にメンテナンス要求を出力する(ステップS512)。出力部45が液晶表示装置または有機EL表示装置である場合には、水素生成装置10に異常が生じていることを示す画面が表示される。出力部45が、警告灯を備える場合には、水素生成装置10の異常発生に対応する警告灯が点灯する。
【0104】
CPU41は、通信部46および図示しないネットワークを介して管理用のコンピュータ等に通知を送信しても良い。通知を受信した管理用のコンピュータ等は、水素生成装置10のユーザが認識できる態様により、受信した通知の内容を出力する。
【0105】
CPU41は、各センサから取得したデータに基づいて安全に運転を継続することが可能であるか否かを判定する(ステップS513)。継続可能であると判定した場合(ステップS513でYES)、および、異常が生じていないと判定した場合(ステップS511でNO)、CPU41はステップS507に戻る。
【0106】
継続不可能であると判定した場合(ステップS513でNO)、CPU41は水素生成装置10の動作を停止する(ステップS514)。具体的には、CPU41は、たとえばヒータ58の停止および第2バルブ562の閉鎖等により、反応容器21内部の化学反応を停止することができる。
【0107】
化学反応が停止した後、CPU41は第1バルブ561および排水バルブ566を閉じて、水の循環を停止する。冷却装置54が動作している場合には、CPU41は冷却装置54も停止する。以上の処理により、水素生成装置10は動作を停止する。その後、CPU41は処理を終了する。
【0108】
なお、フローチャートでは説明を省略したが、ポンプ57、冷却槽65等、能動的に動作する水素生成装置10の各構成要素も、それぞれの駆動回路を介して、CPU41により制御される。
【0109】
本実施の形態によると、長時間の連続運転が可能な水素生成装置10を提供することが可能である。本実施の形態によると、水素発生材を反応容器21に投入する際に空気が混入しないので、純度の高い水素を生成する水素生成装置10を提供することが可能である。また、水素と空気とが混ざることによる水素爆発の発生を防止する、水素生成装置10を提供するこことも可能である。
【0110】
本実施の形態によると、水およびキャリアガスを循環させて使用するので、外部の水道管等に接続せずに、スタンドアロンで運転可能な水素生成装置10を提供することが可能である。本実施の形態によると、自動運転が可能な水素生成装置10を提供することが可能である。
【0111】
本実施の形態によると、水素発生材容器31に適宜水素発生材を補給することにより、長時間運転可能な水素生成装置10を提供することが可能である。本実施の形態によると、反応生成物の再処理および水素発生材容器31の再使用が可能であるので、環境負荷の少ない水素生成装置10を提供することが可能である。
【0112】
本実施の形態によると、水素発生材は懸濁液の状態で反応容器21に投入されるため、反応容器21内に速やかに拡散して、水素を発生する。したがって、各バルブ等への制御信号の入力から水素発生量の変化までの時間が短く、要求された量の水素を安定して発生する水素生成装置10を提供することが可能である。
【0113】
[実施の形態2]
本実施の形態は、水素供給先で生成した水を再利用する水素生成装置10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0114】
図5は、実施の形態2の水素生成装置10の模式図である。水素タンク71は、水素放出管75を介して燃料電池80に接続されている。燃料電池80は、第5管665および図示しないポンプを介して水タンク61に接続されている。
【0115】
燃料電池80の内部では、下式の化学反応により水素を燃料として発電が行なわれ、正極で水が生成される。
【0116】
負極側: 2H2 → 4H++4e- ‥‥‥(8)
正極側: O2+4H++4e- → 2H2O ‥‥‥(9)
-は、電子を示す。
【0117】
正極で生成された水は、第5管665を介して水タンク61に流入する。
【0118】
本実施の形態によると、燃料電池80で生成した水を回収して、式(1)等を使用して説明した水素発生材の加水分解に使用する水素生成装置10を提供することが可能である。したがって、外部から補給する水の量を節約することができ、環境負荷の低い水素生成装置10を提供することができる。
【0119】
[実施の形態3]
本実施の形態は、反応容器21の内壁に沿って懸濁液を噴射する水素生成装置10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0120】
図6は、実施の形態3の水素生成装置10の模式図である。懸濁容器81は、途中に供給バルブ567を有する供給管667を介して水素発生材容器31に接続されている。懸濁容器81は、途中に第4バルブ564を有する第4管664を介して、水タンク61に接続されている。
【0121】
懸濁容器81は、スターラ821の上に載せられている。懸濁容器81の底に、スターラ821が発生する磁場により回転する回転子822が入っている。なお、スターラ821と回転子822とは、懸濁容器81内の液体を攪拌する攪拌器82の一例である。
【0122】
懸濁容器81の上部に、モータ823が固定されている。モータ823に固定された回転軸824は、懸濁容器81の内部に突出し、先端にインペラ825が固定されている。モータ823が回転することにより、インペラ825が回転し、懸濁容器81の内部を攪拌する。モータ823、回転軸824およびインペラ825は、懸濁容器81内の液体を攪拌する攪拌器82の一例である。
【0123】
水タンク61は、途中にジェットポンプ36を備える第1管661を介して反応容器21に接続されている。懸濁容器81は、途中に第2バルブ562を有する第2管662を介して、ジェットポンプ36と反応容器21との間の第1管661に接続されている。
【0124】
ジェットポンプ36は、第1管661を介して高圧の水を間歇的に反応容器21に送り出す。第2バルブ562が開いている場合には、ジェットポンプ36から出た高圧の水と共に懸濁液が反応容器21に送り込まれる。
【0125】
図7は、図6におけるVII−VII線による反応容器21の模式断面図である。反応容器21の内壁の接線方向に沿って設けられた噴射口24に、第1管661が接続されている。図6および図7に矢印で示す様に、噴射口24から反応容器21の内壁に沿って斜め下向きに、高圧の水と共に懸濁液が噴射される。
【0126】
懸濁液は、反応容器21の内壁に沿って斜め下向きに流れながら、水と反応する。高圧の水および懸濁液の流れが反応容器21内の水を攪拌することにより、水素発生材が水中にむら無く拡散する。なお、反応容器21は、噴射口24を複数備えても良い。
【0127】
本実施の形態によると、反応容器21内の反応むらを防止する水素生成装置10を提供できる。第1管661を流れる水流により、第2管662が陰圧になるので、第2管662内での懸濁液の詰まりを防止する水素生成装置10を提供できる。
【0128】
なお、図1を使用して説明した実施の形態1と同様に、第2管662を直接反応容器21に接続し、噴射口24からは懸濁液を含まない水を噴射しても良い。懸濁液による第1管661の内壁の磨耗を防止する水素生成装置10を提供できる。
【0129】
[実施の形態4]
本実施の形態は、反応容器21の内部に懸濁液を噴射する水素生成装置10に関する。実施の形態3と共通する部分については、説明を省略する。
【0130】
図8は、実施の形態4の反応容器21の模式断面図である。反応容器21の側壁に設けられた噴射口24に、第1管661が接続されている。図8に矢印で示す様に、噴射口24から反応容器21の内部に向けて、高圧の水と共に懸濁液が噴射される。
【0131】
懸濁液は、反応容器21の中央部に向けて流れながら、水と反応する。高圧の水および懸濁液の流れが反応容器21内の水を攪拌することにより、水素発生材が水中にむら無く拡散する。懸濁液の噴射方向は、反応容器21の中心軸を向いていても、中心軸と側壁との間を向いていても良い。懸濁液の噴射方向は、斜め下方または斜め上方でも良い。反応容器21は、噴射口24を複数備えても良い。
【0132】
本実施の形態によると、反応容器21内の反応むらを防止する水素生成装置10を提供できる。また、本実施の形態によると、懸濁液による反応容器21の内壁の磨耗を防止する水素生成装置10を提供できる。
【0133】
[実施の形態5]
本実施の形態は、シャワーにより懸濁液を反応容器21内に散布する水素生成装置10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0134】
図9は、実施の形態5の水素生成装置10の模式図である。反応容器21の内側には、上部に邪魔板22が固定されている。すなわち、邪魔板22は反応容器21と第3管663との接続部と、反応容器21内の水面との間に配置されている。
【0135】
邪魔板22は、反応容器21の内径よりも若干小さい直径を有する無孔の円板である。邪魔板22の縁と、反応容器21の内面との間には、気体が通過可能な隙間26が設けられている。なお、邪魔板22は、網状または多数の孔を備えるパンチングボード状等でも良い。邪魔板22は、1個または複数個の孔を備える板でも良い。
【0136】
邪魔板22の下にシャワーヘッド23が設けてある。シャワーヘッド23は、2段以上でも良い。シャワーヘッド23は、途中に第1バルブ561および図示しない加圧ポンプを備える第1管661を介して水タンク61に接続されている。懸濁容器81は、途中に第2バルブ562を有する第2管662を介して、ジェットポンプ36と反応容器21との間の第1管661に接続されている。
【0137】
水により希釈された懸濁液が、第1管661を介してシャワーヘッド23に供給される。シャワーヘッド23から、反応容器21内の水面にむけて、ほぼ一様に希釈された懸濁液または水が散布される。
【0138】
式(1)または式(2)の反応式により、泡が発生する場合であっても、シャワーヘッド23から散布される懸濁液または水により、泡の盛り上がりは抑制される。泡の発生量が多く、反応容器21の上部まで泡が盛り上がった場合であっても、邪魔板22の作用により泡は第3管663の内部に進入しない。
【0139】
なお、邪魔板22およびシャワーヘッド23の形状および配置は、泡の盛り上がりを効果的に抑制する様に、適宜選択される。たとえば、邪魔板22は、上側のシャワーヘッド23と下側のシャワーヘッド23との間に配置されていても良い。邪魔板22は、下側のシャワーヘッド23の下側、すなわちシャワーヘッド23と反応容器21内の水面との間に配置されていても良い。これらの場合、邪魔板22はシャワーヘッド23の放水を妨げない形状および位置に配置される。
【0140】
なお、第1バルブ561および第2バルブ562を開閉することにより、シャワー23から水と懸濁液とを交互に散布しても良い。
【0141】
懸濁容器81の外側には、第2冷却装置542が取り付けられている。第2冷却装置542は、懸濁容器81を水冷または空冷等により冷却する装置である。懸濁容器81の温度が所定の温度よりも高い場合には、第2冷却装置542が動作して懸濁容器81を冷却する。
【0142】
所定の温度は、たとえば懸濁容器81内の懸濁液の温度が、摂氏0度以上摂氏20度以下になる範囲の温度である。懸濁液の温度が、摂氏0度以上摂氏15度以下の範囲になることが、さらに望ましい。
【0143】
なお、水素生成装置10を低温の場所に設置する場合には、懸濁容器81を反応容器21の近くに配置すること等により、懸濁容器81内の懸濁液の温度が0度以下になり、凍結することを防止できる。
【0144】
懸濁容器81の温度を所定の範囲に維持することにより、懸濁液中の水が凍結することを防止しながら、懸濁容器81の内部での(1)式または(2)式の化学反応を抑制することができる。
【0145】
本実施の形態によると、反応容器21内の化学反応で泡が発生する場合であっても、泡による第3管663の詰まりを防止できる水素生成装置10を提供できる。
【0146】
本実施の形態によると、懸濁容器81内での水素の発生を防止できる水素生成装置10を提供できる。
【0147】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0148】
10 水素生成装置
21 反応容器
22 邪魔板
23 シャワーヘッド
24 噴射口
25 排水口
26 隙間
31 水素発生材容器
36 ジェットポンプ
40 制御装置
41 CPU
42 主記憶装置
43 補助記憶装置
44 入力部
45 出力部
46 通信部
47 入力I/F
48 出力I/F
51 圧力計
52 温度計
53 流量計
54 冷却装置
56 バルブ
561 第1バルブ
562 第2バルブ
564 第4バルブ
566 排水バルブ
567 供給バルブ
568 リザーババルブ
57 ポンプ
58 ヒータ
61 水タンク
63 分離槽
65 冷却槽
661 第1管
662 第2管
663 第3管
664 第4管
665 第5管
666 排水管
667 供給管
668 補給管
67 オーバーフロー管
71 水素タンク
74 リザーバタンク
75 水素放出管
80 燃料電池
81 懸濁容器
82 攪拌器
821 スターラ
822 回転子
823 モータ
824 回転軸
825 インペラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9