【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『真の社会イノベーションを実現する革新的「健やか力」創造拠点』委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1情報と前記第2情報との対応関係を学習モデルに学習させることにより、対象ユーザの前記第2情報から前記対象ユーザが冷え症であるか否かを予測する冷え症予測モデルを生成する学習部、を更に備え、
前記分類部は、前記冷え症予測モデルを用いて予測された前記対象ユーザの前記第1情報、及び前記指標マーカに基づいて分類する、
請求項1に記載の健康管理支援システム。
前記学習部は、学習内容が異なる複数の学習済みモデルを作成し、作成した学習済みモデルにおけるそれぞれの予測精度に基づいて選択した学習済みモデルを、前記冷え症予測モデルとする、
請求項4に記載の健康管理支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
〔健康管理支援システム1の概要〕
本発明における健康管理支援システム1の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る健康管理支援システム1の概要を示す図である。健康管理支援システム1は、対象ユーザTUにおける冷え体質を考慮した体質の予測を行い、予測した体質に応じて健康管理に関する提示を行なうシステムである。予測には、対象ユーザTUの健診情報321(
図5参照)が用いられる。ここでの健診情報321は、健康診断などにより測定された生体情報である。生体情報には、体重や身長、血圧などの非侵襲により測定される生体情報と、血液検査などの侵襲的に測定される生体情報とが含まれる。また、生体情報には医師による問診の結果や、事前に行われる健診前アンケートの結果などが含まれていてもよい。
【0014】
健康管理支援システム1では、事前の準備として、冷え症予測モデル323が作成される。冷え症予測モデル323は、対象ユーザTUの健診情報321に基づいて、当該対象ユーザTUが冷え症であるか否かを予測するモデルである。冷え症予測モデル323の作成方法については後で詳しく説明するが、冷え症予測モデル323は、冷え症学習サーバ20により作成される。冷え症学習サーバ20は、不特定のユーザUによる健診情報321と冷え症情報320(
図4参照)とを対応づけた学習データセットを機械学習させることにより冷え症予測モデル323を作成する。ここでの冷え症情報320は、冷え症であるか否かを示す情報である。冷え症情報320は、例えば、健診を受けたユーザUに冷えの症状に関するアンケートを行ったり、過去に専門医による診断を受けたか否かをヒアリングしたりすることにより取得される。
【0015】
また、健康管理支援システム1では、事前の準備として、指標マーカ選択部332によって指標マーカ322が選択される。指標マーカ322は、健診情報321から選択された、冷え症を分類(層別化)する指標である。指標マーカ選択部332は、不特定のユーザUの冷え症情報320及び健診情報321に基づいて指標マーカ322を選択する。
【0016】
健康管理支援システム1では、冷え症予測モデル323を用いて、対象ユーザTUが冷え症であるか否かが予測される。冷え症予測モデル323は、対象ユーザTUの健診情報321に基づいて、冷え症予測(冷え症であるか否かを予測する情報)を出力する。
【0017】
健康管理支援システム1では、冷え体質分類部334により、対象ユーザTUの体質が、冷え症を指標マーカにより分類した何れのタイプかに分類される。冷え体質分類部334は、対象ユーザTUの健診情報における、指標マーカの値と、冷え症予測モデル323により予測された冷え症予測とに基づいて、対象ユーザTUの体質を分類し、その分類結果を体質予測として出力する。
【0018】
健康管理支援システム1では、対象ユーザTUの体質予測に基づいて、罹患しやすい疾病等に関する予防法や対策、体質をより改善させるための改善システムなどが提示される。これにより、疾病予防はもとより、QOLを向上させ、自立した生活を支援することができる。以上が、健康管理支援システム1の概要についての説明である。
【0019】
〔健康管理支援システム1の構成〕
次に、健康管理支援システム1の構成について説明する。
図2は、健康管理支援システム1の構成の例を示すブロック図である。健康管理支援システム1は、例えば、生体情報蓄積サーバ10と、冷え症学習サーバ20と、体質分類サーバ30と、情報提示サーバ40と、複数のユーザ端末50(ユーザ端末50−1、50−2、…50−N)とを備える。Nは任意の自然数である。
【0020】
健康管理支援システム1の構成要素(生体情報蓄積サーバ10、冷え症学習サーバ20、体質分類サーバ30、情報提示サーバ40、及びユーザ端末50)は、無線又は有線の通信ネットワークNWに接続し、互いに通信を行うことができる。なお、健康管理支援システム1の構成要素のそれぞれは、複数であってもよい。例えば、健康管理支援システム1が、生体情報蓄積サーバ10等を複数備えていてもよい。また、健康管理支援システム1の構成要素のうちのいくつかが1の装置で実現されてもよい。例えば、体質分類サーバ30と情報提示サーバ40とが1台のサーバ装置に備えられていてもよい。
【0021】
生体情報蓄積サーバ10は、コンピュータシステム100(
図8参照)を備える電子機器である。例えば、生体情報蓄積サーバ10は、クラウド装置、サーバ装置、パーソナルコンピュータ等であってよい。生体情報蓄積サーバ10は、不特定のユーザUの冷え症情報320、及び健診情報321を記憶(蓄積)する。生体情報蓄積サーバ10は、例えば、健康診断を委託された医療機関に設けられたデータサーバ等から、健康診断を受けたユーザUの健診結果を取得し、取得した情報を健診情報321として記憶する。また、生体情報蓄積サーバ10は、健康診断と共に、或いは健康診断とは別に、ユーザUにアンケートやヒアリングを行うことにより取得されたユーザUの冷え症情報320を記憶する。
【0022】
冷え症学習サーバ20は、コンピュータシステム100を備える電子機器である。例えば、冷え症学習サーバ20は、クラウド装置、サーバ装置、パーソナルコンピュータ等である。冷え症学習サーバ20は、不特定のユーザUの健診情報321と冷え症情報320に基づいて、対象ユーザTUの健診情報から当該対象ユーザTUの冷え症を予測する冷え症予測モデル323を作成する。
【0023】
体質分類サーバ30は、コンピュータシステム100を備える電子機器である。例えば、体質分類サーバ30は、クラウド装置、サーバ装置、パーソナルコンピュータ等である。体質分類サーバ30は、対象ユーザTUの体質が、冷え症に基づくどのタイプであるかを分類する。
【0024】
情報提示サーバ40は、コンピュータシステム100を備える電子機器である。例えば、情報提示サーバ40は、クラウド装置、サーバ装置、パーソナルコンピュータ等である。情報提示サーバ40は、対象ユーザTUの体質に応じて、健康管理に関する情報を提示する。
【0025】
ユーザ端末50は、コンピュータシステム100を備える電子機器である。例えば、ユーザ端末50は、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレット端末、ウェアラブル端末等であってよい。ユーザ端末50は、例えば、対象ユーザTUのスマートフォンなどの端末装置である。ユーザ端末50には、「健康管理サービス」を提供するアプリケーションソフトウェア(以下、健康管理アプリと称する)がインストールされている。「健康管理サービス」では、自身の健康診断の結果を入力することにより、自身の体質が冷え症に基づくどのタイプであるかが予測される。また、「健康管理サービス」では、予測された体質に応じた疾病予防法や対策、改善システムなどが提示される。なお、ユーザ端末50は、Webサービスにて提供される「健康管理サービス」のサイトを示すURL(Uniform Resource Locator)アクセスすることにより、「健康管理サービス」を利用するようにしてもよい。
以上が、健康管理支援システム1の構成についての説明である。
【0026】
〔健康管理支援システム1の動作〕
次に、健康管理支援システム1の動作について説明する。
図3は、健康管理支援システム1が行う処理の流れを示すシーケンス図である。
【0027】
(ステップS10)
生体情報蓄積サーバ10は、不特定のユーザUの冷え症情報320、及び健診情報321を記憶(蓄積)する。
【0028】
(ステップS11)
生体情報蓄積サーバ10は、不特定のユーザUの冷え症情報320、及び健診情報321を冷え症学習サーバ20に出力する。
(ステップS12)
冷え症学習サーバ20は、不特定のユーザUの冷え症情報320、及び健診情報321に基づいて、健康診断の診断結果と冷え症との対応関係を学習モデルに学習させることにより、冷え症予測モデル323を作成する。冷え症予測モデル323を作成する方法については後で詳しく説明する。
(ステップS13)
冷え症学習サーバ20は、作成した冷え症予測モデル323を、体質分類サーバ30に出力する。
【0029】
(ステップS14)
体質分類サーバ30は、冷え症予測モデル323を取得し、取得した冷え症予測モデル323を記憶させる。
【0030】
(ステップS15)
一方、生体情報蓄積サーバ10は、不特定のユーザUの冷え症情報320、及び健診情報321を体質分類サーバ30に出力する。
(ステップS16)
体質分類サーバ30は、冷え症情報320、及び健診情報321から抽出される特徴に基づいて、指標マーカ322を選択する。指標マーカ322を選択する方法については後で詳しく説明する。
【0031】
(ステップS17)
一方、ユーザ端末50では、対象ユーザTUのクリック操作などにより「健康管理アプリ」が起動される。健康管理アプリが起動されると、例えば、健康診断の診断結果を入力するための入力フォームなどが表示される。
(ステップS18)
ユーザ端末50は、対象ユーザTUの入力操作などにより、入力フォームを介して健康診断の診断結果が入力されると、健診情報321を体質分類サーバ30に送信する。
(ステップS19)
体質分類サーバ30は、ユーザ端末50から受信した対象ユーザTUの健診情報321を、冷え症予測モデル323に入力させることにより、対象ユーザTUが冷え症であるか否かを予測する。
(ステップS20)
体質分類サーバ30は、対象ユーザTUが冷え症であるか否かを予測した予測結果、及び対象ユーザTUの健診情報321から抽出した指標マーカの値に基づいて、対象ユーザTUの体質が、冷え症に基づくいずれのタイプであるかを分類する。
【0032】
(ステップS21)
体質分類サーバ30は、対象ユーザTUの体質を分類した分類結果を、体質情報として情報提示サーバ40及びユーザ端末50に送信する。
(ステップS22)
情報提示サーバ40は、対象ユーザTUの体質を分類した結果に基づいて、対象ユーザTUに提示する疾病予防や体質改善提案に関する情報を選択する。
(ステップS23)
情報提示サーバ40は、選択した情報を提示情報としてユーザ端末50に送信する。
(ステップS24)
ユーザ端末50は、体質分類サーバ30から受信した体質情報と、情報提示サーバ40から受信した提示情報とを、「健康アプリ」の出力欄に表示させる。
以上が健康管理支援システム1の動作についての説明である。
【0033】
〔データ構成〕
次に、健康管理支援システム1の処理に用いられる各種のデータの構成について説明する。
【0034】
まず、冷え症情報320について説明する。冷え症情報320は、ユーザが冷え症であるか否かに関する情報を記述したデータである。
図4は、冷え症情報320のデータ構成の例を示す図である。冷え症情報320は、ユーザID(IDentifier)に、冷え症フラグ、根拠などを示す情報が対応づけられたデータとして示される。冷え症情報320は、ユーザUごとに作成される。
【0035】
ユーザIDには、ユーザUを一意に識別するための情報が記述される。冷え症フラグにはユーザUが冷え症であるか否かを示す情報が記述される。根拠には冷え症か否かが判断された際の根拠が示される。根拠は、例えば、自己診断、アンケートによる判定、専門医による判定などの項目で示される。例えば、冷え症であるか否かがユーザUの自己診断によるものであれば、根拠には自己診断を示す情報が記述される。冷え症であるか否かがユーザUに行ったアンケート結果によるものであれば、根拠にはアンケートによる判定を示す情報が記述される。冷え症であるか否かが専門医の診断によるものであれば、根拠には専門医による診断を示す情報が記述される。
【0036】
なお、冷え症フラグは、冷え症であるか否かのいずれかを示す2値の情報であってもよいし、冷え症である、やや冷え症である、冷え症ではない、どちらともいえないなどの複数のレベルで冷え症の度合いを示す情報であってもよい。また、冷え症情報320には、ユーザUの氏名、性別、年齢、職業、家族構成などのユーザ属性を示す情報が含まれていてもよい。ここでのユーザ属性には、ユーザUの任意の情報が含まれていてよいが、例えば、性別や年齢、職場環境など冷え症に関連し得る情報が含まれていると好適である。また、冷え症であるか否かは、年齢や季節により変化し得るものであるため、冷え症フラグに対応づけて、いつ頃(何歳ごろ)から冷え症を自覚するようになったか、或いは冷え症を自覚する季節と自覚しない季節とがあるかなどを示す情報などが示されていてもよい。
【0037】
次に、健診情報321について説明する。健診情報321は、ユーザUの健康診断の結果を記述したデータである。
図5は、健診情報321のデータ構成の例を示す図である。健診情報321は、ユーザUのIDに、健康診断の結果として測定された生体情報を対応付けたデータとして記述される。健診情報321はユーザUごとに作成される。ユーザIDには、ユーザUを一意に識別するための情報が記述される。健診項目には健康診断において行われた診断項目が記述される。健診項目は、例えば、血液検査、血圧、アレルギー、不眠又はうつなどの項目を含む。血液検査には、ビリルビン、AST(GOT)などの項目の他、図では省略されているALT、γGT、総蛋白、クレアチニン、尿酸、コレステロール、TG、血清鉄、血糖、HDL、ALB、白血球、赤血球、ヘマトクリット、ヘモグロビン、好中球、血小板、フェリチン、LDL、HbA1c、Cペプチド、C3、C4、グリコアルブミンなどが含まれていてよい。血圧にはユーザUから測定された血圧が記述される。アレルギーにはユーザUのアレルギーに関する情報が記述される。アレルギーに関する情報は、ユーザUから自己申告された情報であってもよいし、診察や血液検査などの結果に基づく情報であってよい。不眠又はうつにはユーザUの不眠やうつに関する情報が記述される。不眠やうつに関する情報は、ユーザUから自己申告された情報であってもよいし、問診や通院歴などの結果に基づく情報であってよい。
以上が、データの構成についての説明である。
【0038】
〔冷え症予測モデル323を作成する方法、指標マーカ322を選択する方法〕
次に、冷え症予測モデル323を作成する方法、及び指標マーカ322を選択する方法について説明する。
図6は、実施形態に係る健康管理支援システム1が行う処理を説明する図である。以下、
図6に示すステップS100〜S104の順に沿って、冷え症予測モデル323を作成する方法、及び指標マーカ322を選択する方法を説明する。
【0039】
(ステップS100)
健康管理支援システム1は、「冷え」の要因を分析する。具体的に、健康管理支援システム1は冷え症学習サーバ20によって、健診情報321から、冷え症と関連が強い因子を抽出する。
【0040】
(「冷え」の要因を分析する第1の例)
例えば、冷え症学習サーバ20は、二項ロジステック回帰分析により「冷え」の要因を分析する。具体的に、冷え症学習サーバ20は、冷え症情報320と健診情報321に、二項ロジステック回帰分析を適用する。これにより、冷え症に有意に影響がある因子を抽出することができる。また、冷え症学習サーバ20は「冷え」の症状を示す情報と健診情報321に、二項ロジステック回帰分析を適用することにより、冷え症に有意に影響がある因子を抽出するようにしてもよい。「冷え」の症状を示す情報とは、冷え症であるか否かを判断する判断材料となり得る情報であって、例えば、体温が低い、皮膚温が低い、血流量が少ないなどを示す情報である。ここでの血流量は、特に皮膚の血流量を示している。表1に、二項ロジステック回帰分析した結果の一例を示す。
【0042】
表1では、左側に従属変数、右側に有意な影響のある因子をそのオッズ比とともに示している。体温36未満とは体温が36度未満であること、皮膚温30未満とは指先の皮膚温が30度未満であること、血流量10以下とは血流量が10ml/min以下であること、血流量20以下とは血流量が20ml/min以下であることを示している。発明者らは、冷え症を含む「冷え」には、体組成(BMI、体脂肪率、筋肉量、内臓脂肪、骨密度、アルドステロン、バソプレシンなど)、血液(ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV、MCH、MCHCなど貧血に関わる指標)、糖代謝(血糖値、HbA1C、Cペプチド、インスリン、グリコアルブミンなど)、血圧、及び腎機能(尿素窒素、クレアチニン、尿酸など)に関係する因子が有意に影響することを見出した。
【0043】
(「冷え」の要因を分析する第2の例)
例えば、冷え症学習サーバ20は、ベイジアンネットワークにより「冷え」の要因を分析する。具体的に、冷え症学習サーバ20は、冷え症情報320と健診情報321にベイジアンネットワークを適用する。冷え症学習サーバ20は、ベイジアンネットワークにより抽出された特に冷え症と因果関係が強い因子を取得する。
【0044】
発明者らは、非侵襲データにベイジアンネットワークを適用させた場合、冷え症が性別との因果関係が極めて強く、性別が冷え症を予測するための重要因子となることを見出した。ここでの非侵襲データとは、ユーザUから非侵襲で取得される情報であり、例えば、性別、BMI(Body Mass Index)、皮膚温、血流量、収縮期血圧、CES-Dスコア(うつかどうかを自己評価する基準の一例)などである。また、発明者らは、男性ではBMIと血流量、女性ではBMI、収縮期血圧、血流量、及びCES-Dスコアのそれぞれが、冷え症との因果関係が強いことを見出した。なお、ここでは非侵襲データにベイジアンネットワークを適用させた場合を例示して説明したが、これに限定されることはない。冷え症学習サーバ20が任意の健診情報321にベイジアンネットワークを適用させて、冷え症を予測するための重要因子を抽出してよいのは勿論である。
【0045】
(ステップS101)
次に、健康管理支援システム1は、冷え症の予測に重要な因子を抽出する。健康管理支援システム1では、機械学習の手法を用いて生成された冷え症予測モデル323によって、冷え症が予測される。機械学習の手法は、既存の任意の学習手法であってよいが、例えば、教師あり学習であり、ランダムツリー、C5.0決定木、CHAID(CHi-squared Automatic Interaction Detector)、線形サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク等の学習モデルを用いた手法である。どの学習モデルに、どのような学習データセットを学習させるかにより、冷え症予測モデル323がどのように冷え症を予測するかが決定される。
【0046】
冷え症学習サーバ20は、冷え症予測モデル323の予測精度に基づいて冷え症の予測に重要な因子を抽出する。具体的に、冷え症学習サーバ20は、同じ機械学習アルゴリズムのモデルに、互いに異なる内容の学習データセットを学習させた学習済みモデルをそれぞれ生成する。冷え症学習サーバ20は、それぞれの学習済みモデルに、冷え症を予測させる。冷え症学習サーバ20は、予測精度が最も高い学習済みモデルに学習させた内容を、冷え症の予測に重要な因子とする。また、冷え症学習サーバ20は、予測精度が最も高い学習済みモデルを、冷え症予測モデル323とする。
【0047】
冷え症学習サーバ20は、複数の機械学習アルゴリズムごとに、冷え症の予測に重要な因子を決定するようにしてもよい。具体的に、冷え症学習サーバ20は、複数の機械学習アルゴリズムのそれぞれに対応させたモデルに、互いに異なる内容の学習データセットを学習させた学習済みモデルをそれぞれ生成する。冷え症学習サーバ20は、それぞれの学習済みモデルに、冷え症を予測させる。冷え症学習サーバ20は、予測精度が最も高い学習済みモデルを、複数の機械学習アルゴリズムのそれぞれについて決定する。冷え症学習サーバ20は、機械学習アルゴリズムのそれぞれのモデルについて、予測精度が最も高い学習済みモデルに学習させた内容を、それぞれの冷え症の予測に重要な因子とする。さらに、冷え症学習サーバ20は、それぞれのモデルで共通に重要な因子とされた健診情報321を、特に冷え症の予測に重要な因子とするようにしてもよい。
【0048】
表2に、学習済みモデルの予測精度と重要因子を対応させた結果の一例を示す。
【0050】
表2では、左から順に、対象、機械学習アルゴリズム、予測精度(%)、重要因子を示している。対象はモデルが予測する予測対象を示しており、この表では、冷え症、低体温、皮膚温低値、血流量低値のそれぞれが示されている。機械学習アルゴリズムは、学習モデルとして適用して機械学習の手法(アルゴリズム)が示されており、この表では、ランダムツリー、C5.0決定木、CHAID、線形サポートベクターマシンのそれぞれが示されている。予測精度はモデルが予測した制度を百分率(パーセント)で示している。重要因子は、モデルに学習させた学習データ(説明変数)を示している。例えば、この表には、教師データ(目的変数)としての冷え症と、説明変数としてのBMI、グリコアルブミン、ヘモグロビンとの対応関係をランダムツリーに学習させた学習済みモデルの予測精度が86.8%であったことが示されている。発明者らは、「冷え」の重要因子を抽出した結果、「冷え症」を予測する場合には、体組成(BMI、体脂肪率、筋肉量、骨密度など)、貧血、うつ(CES-Dスコア)、炎症(高感度CRP)、血圧、グリコアルブミンなど糖代謝に関係する因子(例えば、血糖値、HbA1C、Cペプチド、インスリンなど)が重要因子となることを見出した。また、体温を予測する場合には、体組成、腎機能、骨代謝(TRACP-5b)、PWVが重要因子となることを見出した。また、皮膚温を予測する場合には、体組成、糖代謝(血糖値、HbA1C、Cペプチド、インスリン、グリコアルブミンなど)、コルチゾールが重要因子となることを見出した。血流量を予測する場合には、体組成、糖代謝、血圧が重要因子となることを見出した。
【0051】
(ステップS102)
次に、健康管理支援システム1は、健康に及ぼす「冷え」のリスクを評価する。具体的に、体質分類サーバ30は、健康と冷え症と関連が強いと考えられる健診情報321とクロス集計分析することにより、健康に及ぼす「冷え」のリスクを評価する。
【0052】
例えば、体質分類サーバ30は、健康診断の項目別に、正常範囲を0(ゼロ)、正常範囲を外れる場合を1としてダミー変数化処理を行う。また、体質分類サーバ30は、ユーザUへのアンケートでの疾患を有する場合を1として、分割表(1×mクロス集計表)のカイ2乗検定(独立性検定)、連関係数(ファイ係数)、リスク推定、およびMantel-Haenszelによる調整相対危険度(オッズ比)等を算出する。表3に、「冷え症」と有意に関連する項目の一例を示す。
【0054】
表3では、左側に健診項目(健康診断の項目)、右側に調整相対危険度を有意確率と共に示している。この表から、「冷え症」と相関(関連)があると考えられる健診項目は、BMI低値、貧血、インスリン抵抗性の症状に関する健診項目(この表では、高HbA1C、高Cペプチド、インスリン抵抗性)、及びうつであることが示されている。
【0055】
また、体質分類サーバ30は、健康と冷えの症状(例えば、低体温、低皮膚温、低血流)と関連が強いと考えられる健診情報321とクロス集計分析することにより、健康に及ぼす「冷え」のリスクを評価する。これらの因子が健康に及ぼすリスクを評価する方法は、上述した方法(健康と冷え症と関連が強いと考えられる健診情報321とクロス集計分析する方法)と同様の方法を適用することができる。
【0056】
表4に、「低体温」と有意に関連する項目の一例を示す。
【0058】
表4では、表3と同様に、左側に健診項目(健康診断の項目)、右側に調整相対危険度を有意確率と共に示している。この表から、「体温の低下」と相関(関連)が強いと考えられる健診項目は、腎機能(高クレアチニン値)、骨吸収(高TRACP−5b)、及びインスリン抵抗性の症状に関する健診項目(この表では、高Cペプチド)であることが示されている。
【0059】
表5に、「低皮膚温」と有意に関連する項目の一例を示す。
【0061】
表5では、表3と同様に、左側に健診項目(健康診断の項目)、右側に調整相対危険度を有意確率と共に示している。この表から、「皮膚温の低値」と相関(関連)が強いと考えられる健診項目は、BMI低値、インスリン抵抗性の症状に関する健診項目(この表では、高血糖、高HbA1C、高Cペプチド、インスリン抵抗性)であることが示されている。
【0062】
表6に、「低血流量」と有意に関連する項目の一例を示す。
【0064】
表6では、表3と同様に、左側に健診項目(健康診断の項目)、右側に調整相対危険度を有意確率と共に示している。この表から、「血流量の低下」と相関(関連)が強いと考えられる健診項目は、BMI低値、貧血、インスリン抵抗性の症状に関する健診項目(この表では、高血糖、高HbA1C、高Cペプチド、高グリコアルブミン、インスリン抵抗性)、及びビリルビンであることが示されている。
【0065】
(ステップS103)
次に、健康管理支援システム1は、「冷え」要因の因果関係の解析を行う。具体的に、体質分類サーバ30は、表3〜表6に示すような、冷え症、及び冷えの症状(低体温、低皮膚温、低血流)におけるリスクを評価した結果に基づいて、冷え症を分類(層別化)し得る指標、つまり、指標マーカ322を決定する。
【0066】
例えば、体質分類サーバ30は、「冷え症」と相関すると考えられる健診項目のうち、冷えの症状(低体温、低皮膚温、低血流)の各々においても相関があり、かつ、相関係数の符号が異なる関係にある健診項目を、指標マーカ322とする。
【0067】
具体的に、体質分類サーバ30は、「冷え症」、及び冷えの症状(低体温、低皮膚温、低血流)のそれぞれと相関する健診項目を抽出する。体質分類サーバ30は、抽出した健診項目から、「冷え症」、及び冷えの症状(低体温、低皮膚温、低血流)のそれぞれに共通する項目を選択する。体質分類サーバ30は、選択した健診項目について、「冷え症」、及び冷えの症状(低体温、低皮膚温、低血流)のそれぞれとの相関係数を算出する。体質分類サーバ30は、算出した相関係数の符号が、「冷え症」、及び冷えの症状(低体温、低皮膚温、低血流)のそれぞれで異なる場合、その健診項目を、指標マーカ322と決定する。
【0068】
例えば、表3〜表6の例では、どの表でもインスリン抵抗性の症状に関する健診項目との相関があることが示されている。すなわち、表3によればインスリン抵抗性に関する健診項目(高HbA1C、高Cペプチド、インスリン抵抗性)は、冷え症に対して負の相関を有する。つまり、インスリン抵抗性の症状に関する健診項目の数値が高まるほど、冷え症にならない傾向にあるということができる。また、表4によればインスリン抵抗性に関する健診項目(Cペプチド)は、体温に対して負の相関を有する。つまり、インスリン抵抗性の症状に関する健診項目の数値が高まるほど、体温が低くなる傾向にあるということができる。また、表5によればインスリン抵抗性の症状に関する健診項目(高血糖、高HbA1C、高Cペプチド、インスリン抵抗性)は、皮膚温に対して正の相関を有する。つまり、インスリン抵抗性の症状に関する健診項目の数値が高まるほど、皮膚温が高くなる傾向にあるということができる。また、表6によればインスリン抵抗性の症状に関する健診項目(高血糖、高HbA1C、高Cペプチド、高グリコアルブミン、インスリン抵抗性)は、(指先の)血流量に対して正の相関を有する。つまり、インスリン抵抗性の症状に関する健診項目の数値が高まるほど、血流量が高く(多く)なる傾向にあるということができる。
【0069】
表3〜表6のような結果が得られた場合、体質分類サーバ30は、「冷え症」、及び冷えの症状(低体温、低皮膚温、低血流)のそれぞれと共通に相関する健診項目のうち、相関係数の符号が異なる健診項目として、高Cペプチドを選択し、選択した高Cペプチドを指標マーカ322として決定する。
【0070】
表3〜表6の結果から、Cペプチドが低体温と皮膚血流の増加による放熱に関与していることが示唆される。つまり、Cペプチドが高まるにつれて、低体温を引き起こす一方で、皮膚温を高め、皮膚血流量を増加させていると考えられる。また、Cペプチドが高まるにつれて、冷え症の自覚がなくなる傾向にあることから、「冷え」を感じさせないように作用する可能性がある。
【0071】
(ステップS104)
次に、健康管理支援システム1は、Two Stepクラスター分析とカテゴリー化による「冷え」分類と特徴の抽出を行う。具体的に、体質分類サーバ30は、冷え症であるか否かと、指標マーカ322とを用いて、対象ユーザTUの体質を冷えに基づく何れのタイプであるか分類する。また、情報提示サーバ40は体質分類サーバ30によって分類された結果に基づいて、対象ユーザTUの体質に応じた疾病予防や体質改善に関する情報を提示する。
【0072】
図7は、実施形態に係る健康管理支援システム1が行う処理を説明する図である。
図7には、体質分類サーバ30によって分類されるタイプが模式的に示されている。体質分類サーバ30は、冷え症情報320に基づいて、ユーザUの体質を、冷え症であるか、非冷え症であるかに分類する。体質分類サーバ30は、冷え症を、指標マーカ322(ここでは、Cペプチド)の値に応じて、更に分類する。同様に、体質分類サーバ30は、非冷え症を、指標マーカ322(ここでは、Cペプチド)の値に応じて、更に分類する。ここでは、Cペプチドの値が正常の範囲内か、Cペプチドの値が正常の範囲を超えて高い値を示しているかに応じて分類する例を示している。このCペプチドは、Two Stepクラスター分析により、冷え症と冷え指標(体温、皮膚温、血流量)について、体質特徴の分類に有効な指標マーカを検討した結果、良好なクラスター品質(Cohesionと区切りのシルエット指標が0.5以上)で4分類できることが分かった。
【0073】
つまり、この図では、体質分類サーバ30は、ユーザUの体質を、
1)冷え症、かつ、Cペプチドが正常範囲のタイプT1
2)冷え症、かつ、Cペプチドが高いタイプT2
3)非冷え症、かつ、Cペプチドが正常範囲のタイプT3
4)非冷え症、かつ、Cペプチドが高いタイプT4
のカテゴリーに分類する例が示されている。
【0074】
情報提示サーバ40は、対象ユーザTUの体質がタイプT1〜T4の何れのタイプであるかに応じて、疾病予防や体質改善に関する情報を提示する。情報提示サーバ40は、例えば、不特定のユーザUの統計に基づいて、タイプ別の提示を行う。具体的に、体質分類サーバ30は、不特定のユーザUの冷え症情報320と健診情報321に基づいて、各ユーザUのタイプを分類する。情報提示サーバ40は、タイプごとのユーザUの健診情報321に基づいて、タイプごとの疾病の傾向を抽出する。例えば、情報提示サーバ40は、統計処理の結果、タイプT1は、BMIが低く骨格筋が少ない痩せ型の傾向、水分が少なく熱産生(生体内で産生される熱)が低い傾向、糖化による毛細血管の損傷傾向、食が細い傾向で健康感が低く、生殖機能の低下や、高齢ではフレイルリスクが危惧されるものとする。タイプT2は、水分代謝に問題があり下肢がむくみやすい傾向、レプチンが高くインスリン抵抗性の傾向、食が旺盛な傾向、下肢の痛みや身体機能低下とサルコペニアや、高齢者では腎機能低下が危惧されるものとする。タイプT3は、冷え症ではなく健康体である傾向、恒常性が維持される傾向、骨代謝の亢進や免疫過剰が危惧されるものとする。タイプT4は、内臓脂肪型の肥満(メタボ)である傾向、末梢の血液循環が高い傾向、基礎代謝が低い傾向、温度感受性が低い傾向、健康不安がある傾向、メタボリックシンドロームや副腎機能低下が危惧されるものとする。情報提示サーバ40は、タイプごとに予め定めた傾向に基づいて、対象ユーザTUのタイプに応じた提示を行う。
【0075】
情報提示サーバ40は、健診情報321を用いてタイプT1を更に原因を細分化するようにしてもよい。例えば、情報提示サーバ40は、タイプT1に分類された対象ユーザTUを、女性でBMI低値かつ皮下脂肪が多いタイプ(タイプT11)、男性でBMIが低いタイプ(タイプT12)、BNP(脳性ナトリウム利尿ポリペプチド)が高いタイプ(タイプT13)、低血圧のタイプ(タイプT14)、グリコアルブミンが高いタイプ(タイプT15)などに分類する。これにより、健康管理支援システム1では、冷え症における特定のタイプ(例えば、タイプT1)をさらに細分化したそれぞれのタイプ(例えば、タイプT11〜T15)に応じた提示を示すことができる。
【0076】
このような体質分類を行うことにより、健康管理支援システム1では、「冷え」の原因と疾患や不調の潜在リスクを把握することができるだけでなく、原因毎に精密な健康増進や疾患予防の方法を提示するようにしてもよい。例えば、健康管理支援システム1は、タイプに応じて漢方薬による治療を提示するようにしてもよい。例えば、健康管理支援システム1は、タイプT1に人参養栄湯や十全大補湯、タイプT2に八味地黄丸、タイプT4に六味地黄丸、更に、タイプT11〜T15に対しては、それぞれ当帰芍薬散、十全大補湯、補中益気湯、加味帰脾湯、加味逍遙散などを提示するようにしてもよい。
【0077】
また、健康管理支援システム1は、タイプに応じて食事改善や機能性食品を提示するようにしてもよい。例えば、健康管理支援システム1は、タイプT1に良質のタンパクや鉄分の補給、タイプT2に電解質と糖質の制限、食物繊維やグルコサミン、タイプT3にカロテノイドやブロッコリー、タイプT4に減塩で、シード類、海藻やアブラナ科の野菜などを摂取するように提示する。また、健康管理支援システム1は、タイプT1を細分化したタイプ(タイプT11〜T15)に対しても、ユーザの健診情報に対応した食事改善や機能性食品を提示するようにしてもよい。
【0078】
さらに、Cペプチドが視床下部の受容体VACM-1に作用して恒常性機能を低下させることが推察される。このため、CペプチドとVACM−1との結合を阻害させる提示をしてもよい。これにより、恒常性機能の低下を抑制させることが可能である。
【0079】
また、Cペプチドを他の視床下部受容体のオキシトシン受容体へ作用させる提示をしてもよい。また、Cペプチドとバゾプレシン受容体V1aとV1bとの結合を阻害させる提示をしてもよい。これにより、自律神経系が改善され、恒常性機能の低下を抑制させることが可能である。このような提示を行うことにより、QOL向上と健康増進、あるいは疾患の予防により有用な手段を提示することができる。
【0080】
〔コンピュータシステム100の構成〕
次に、健康管理支援システム1が備える各装置のコンピュータシステム100の構成について説明する。
図8は、コンピュータシステム100の構成を示すブロック図である。コンピュータシステム100は、通信部101と、入力部102と、出力部103と、記憶部104と、CPU(Central Processing Unit)105と、を備える。これらの構成要素は、バスBを介して相互に通信可能に接続されている。
【0081】
通信部101は、通信用IC(Integrated Circuit)等の通信用モジュールである。入力部102は、例えば、マウス、タッチパッド等のポインティングデバイス、キーボード、マイクロホン、カメラ、その他の各種センサ(例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPS(Global Positioning System)センサ、近接センサ)を含む入力用モジュールである。入力部102は、タッチパネルとして、ディスプレイと一体に構成されてもよい。出力部103は、ディスプレイパネル、スピーカ、ウーファー等の出力用モジュールである。
【0082】
記憶部104は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、ROM(Read−Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む記憶用モジュールである。なお、記憶部104は、内蔵されるものに限らず、USB(Universal Seriul Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶用モジュールであってもよい。
CPU105は、記憶部104に記憶された各種プログラムを実行し、コンピュータシステム100が備える各構成を制御する。
以上が、コンピュータシステム100の構成についての説明である。
【0083】
〔冷え症学習サーバ20の構成〕
次に、冷え症学習サーバ20の構成について説明する。
図9は、実施形態に係る冷え症学習サーバ20の構成の例を示すブロック図である。冷え症学習サーバ20は、通信部21と記憶部22と制御部23とを備える。通信部21は、通信ネットワークNWに接続する他の装置と通信する。ここでの他の装置は、生体情報蓄積サーバ10、体質分類サーバ30、情報提示サーバ40、及びユーザ端末50である。
【0084】
記憶部22は、冷え症学習サーバ20の機能を実現するために必要な変数、各種データ、プログラム等を記憶する。記憶部22は、学習データ候補220と、確定学習データ221と、冷え症予測モデル222とを記憶する学習データ候補220は、学習データの候補を示す情報である。学習データ候補220は、例えば、健診情報321のうち、冷え症と相関があり、冷え症を予測するための指標となり得る情報である。確定学習データ221は、学習データ候補220のうち、学習データとして確定された健診項目を示す情報である。冷え症予測モデル222は、冷え症学習サーバ20によって作成された学習モデル(冷え症予測モデル)を示す情報である。
【0085】
制御部23は、冷え症学習サーバ20の各構成を制御する。制御部23は、例えば冷え症学習サーバ20のCPUが記憶部22に予め記憶されたプログラムを実行することにより実現される。また、制御部23は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路として実現されてもよい。
【0086】
制御部23は、例えば、冷え症情報取得部230と、健診情報取得部231と、前処理部232と、モデル作成部233と、学習データ確定部234とを備える。冷え症情報取得部230は、不特定のユーザUの冷え症情報を、通信部21を介して、生体情報蓄積サーバ10から取得する。健診情報取得部231は、不特定のユーザUの健診情報を、通信部21を介して、生体情報蓄積サーバ10から取得する。
【0087】
前処理部232は、モデル(冷え症予測モデル222)を作成するための前処理を行う。前処理部232は、例えば、モデルに学習させる学習データセットを作成する。学習データセットは、学習データ(説明変数)と、教師データ(目的変数)とのセットである。前処理部232は、冷えの要因を分析して健診情報から学習データの候補を抽出する。前処理部232は、学習データの候補に教師データとしての冷え症情報を対応付けることにより、学習データセットを生成する。
【0088】
モデル作成部233は、冷え症予測モデル222を作成する。モデル作成部233は、学習モデルに学習データを入力させた場合に得られる出力が、教師データに近づくように、学習モデルのパラメータを調整することにより、学習モデルを学習させる。モデル作成部233は、予め定めた所定の終了条件を満たすまで学習モデルを学習させ、所定の終了条件を満たした学習モデルを、学習済みモデルとする。モデル作成部233は、学習データの内容を変えることにより、異なる内容を学習した複数の学習済みモデルを作成する。或いは、モデル作成部233は、アルゴリズムの異なる複数の学習済みモデルを作成する。
【0089】
学習データ確定部234は、学習済みモデルのそれぞれに冷え症を予測させ、その予測精度に基づいて、予測精度が最も高いものを、冷え症予測モデル222とする。学習データ確定部234は、作成した冷え症予測モデル222を、記憶部22に記憶させる。学習データ確定部234は、冷え症予測モデル222に学習させた学習データの候補を、学習データとして確定させる。
以上が、冷え症学習サーバ20の構成についての説明である。
【0090】
〔体質分類サーバ30の構成〕
次に、体質分類サーバ30の構成について説明する。
図10は、体質分類サーバ30の構成を示すブロック図である。体質分類サーバ30は、通信部31と、記憶部32と、制御部33と、を備える。
【0091】
通信部31は、通信ネットワークNWに接続する他の装置と通信する。ここでの他の装置は、生体情報蓄積サーバ10、冷え症学習サーバ20、情報提示サーバ40、及びユーザ端末50である。
【0092】
記憶部32は、体質分類サーバ30の機能を実現するために必要な変数、各種データ、プログラム等を記憶する。記憶部32は、冷え症情報320と、健診情報321と、指標マーカ322と、冷え症予測モデル323と、分類判定閾値324とを記憶する。冷え症情報320は対象ユーザTUの冷え症情報である。健診情報321は対象ユーザTUの健診情報である。指標マーカ322は対象ユーザTUの指標マーカに関する情報である。冷え症予測モデル323は冷え症学習サーバ20により作成された冷え症予測モデルを示す情報である。分類判定閾値324は、指標マーカにより冷え症を分類する際の閾値を示す情報である。
【0093】
制御部33は、体質分類サーバ30の各構成を制御する。制御部33は、例えば体質分類サーバ30のCPUが記憶部32に予め記憶されたプログラムを実行することにより実現される。制御部33は、例えば、冷え症情報取得部330と、健診情報取得部331と、指標マーカ選択部332と、冷え症予測部333と、冷え体質分類部334と、分類結果出力部335とを備える。
【0094】
体質分類サーバ30には、事前準備フェーズと、分類実行フェーズとのそれぞれのフェーズがあり、それぞれのフェーズで異なる処理を行う。以下、事前準備フェーズ、分類実行フェーズの順に説明する。
【0095】
(事前準備フェーズ)
冷え症情報取得部330は、不特定のユーザUの冷え症情報を、通信部31を介して生体情報蓄積サーバ10から取得する。健診情報取得部331は、不特定のユーザUの健診情報を、通信部31を介して生体情報蓄積サーバ10から取得する。
【0096】
指標マーカ選択部332は、不特定のユーザUの、冷え症情報と健診情報との関連性に基づいて、指標マーカ322を選択する。指標マーカ選択部332が指標マーカ322を選択する方法については、すでに説明したのでその説明を省略する。指標マーカ選択部332は、選択した指標マーカ322を記憶部32に記憶させる。
【0097】
(分類実行フェーズ)
冷え症情報取得部330は、対象ユーザTUの冷え症情報を、通信部31を介してユーザ端末50から取得する。健診情報取得部331は、対象ユーザTUの健診情報を、通信部31を介してユーザ端末50から取得する。
【0098】
冷え症予測部333は、冷え症予測モデル323に、対象ユーザTUの健診情報を入力させることより、対象ユーザTUが冷え症であるか否かを予測する。冷え症予測部333は、予測結果を冷え体質分類部334に出力する。
【0099】
冷え体質分類部334は、冷え症予測部333による予測結果と、対象ユーザTUにおける指標マーカの数値とに基づいて、対象ユーザTUの体質を、冷え症に基づくタイプ(例えば、タイプT1〜T4)の何れかに分類する。分類結果出力部335は、冷え体質分類部334による分類結果を、情報提示サーバ40、及びユーザ端末50に出力する。
以上が、体質分類サーバ30の構成についての説明である。
【0100】
〔本実施形態のまとめ〕
以上説明してきたように、実施形態に係る健康管理支援システム1は、冷え症情報取得部330と、健診情報取得部331と、指標マーカ選択部332と、冷え体質分類部334と、分類結果出力部335とを備える。冷え症情報取得部330は、不特定のユーザUの冷え症情報320を取得する。健診情報取得部331は、不特定のユーザUの健診情報321を取得する。健診情報取得部331は、不特定のユーザUの冷え症情報320及び健診情報321から抽出される特徴に基づいて、指標マーカ322を選択する。冷え体質分類部334は、対象ユーザTUの冷え症情報320、及び対象ユーザTUにおける指標マーカ322の数値に基づいて、対象ユーザTUの体質を、冷え症に基づく何れかのタイプに分類する。これにより、実施形態に係る健康管理支援システム1は、生体情報から指標マーカを選択することができ、指標マーカを用いて冷え症を分類することができる。したがって、冷え症のタイプがどのようなタイプであるかに応じて、適切な情報を提供することが可能である。
【0101】
ここで、冷え症情報320は、「第1情報」の一例である。
冷え症情報取得部330は、「第1取得部」の一例である。
健診情報321は、「第2情報」の一例である。
健診情報取得部331は、「第2取得部」の一例である。
指標マーカ選択部332は、「選択部」の一例である。
冷え体質分類部334は、「分類部」の一例である。
分類結果出力部335は、「出力部」の一例である。
冷え症学習サーバ20は、「学習装置」の一例である。
体質分類サーバ30は、「分類装置」の一例である。
モデル作成部233は、「学習部」の一例である。
【0102】
また、上述した実施形態では、冷え体質分類部334は、冷え症予測部333により予測された、対象ユーザTUの冷え症情報320を取得する場合を例示して説明した。しかしながら、これに限定されることはない。冷え体質分類部334は、対象ユーザTUが冷え症であるか否かを示す情報を、ユーザ端末50から取得するようにしてもよい。この場合。ユーザ端末50に表示される「健康管理アプリ」の入力フォームには、冷え症であるか否かを示す情報を入力する入力欄が表示される。対象ユーザTUは、入力フォームに冷え症か否かを入力する操作を行い、その後、例えば、送信を示すボタンをタッチ操作する。これにより、体質分類サーバ30は、対象ユーザTUの冷え症情報を受信する。冷え体質分類部334は、体質分類サーバ30が受信した対象ユーザTUの冷え症情報を用いて、対象ユーザTUのタイプを分類する。
【0103】
また、上述の健康管理支援システム1、冷え症学習サーバ20、体質分類サーバ30の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。