特許第6954598号(P6954598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954598
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】気泡形成装置及び気泡形成方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 11/00 20060101AFI20211018BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20211018BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20211018BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20211018BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   B01F11/00 C
   B01F1/00 A
   B01F3/04 Z
   B01F5/06
   B01F5/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-114511(P2017-114511)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-202376(P2018-202376A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(72)【発明者】
【氏名】五島 崇
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−043102(JP,A)
【文献】 特開2009−039712(JP,A)
【文献】 特開2016−203109(JP,A)
【文献】 特表平11−507873(JP,A)
【文献】 特開2016−198754(JP,A)
【文献】 実公昭04−008750(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00−5/06、11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び下面を有し、かつ上下方向に高さを有する中空の圧力容器であって、内部が気密かつ液密に保たれる閉状態と、前記内部が外部と連通した開状態とに切り替え可能であり、前記閉状態において、前記内部の圧力が大気圧より高い加圧条件下で、前記内部に液体と気体とを保持する圧力容器と、
前記圧力容器の前記内部に収容された撹拌子と、
前記液体と前記気体とを前記加圧条件下で保持している前記閉状態の前記圧力容器を、上下方向に振とうさせることにより、前記圧力容器の前記内部において、前記撹拌子によって、前記液体と前記気体とを撹拌させる振とう装置と、
を備え
前記撹拌子によって撹拌された前記液体及び前記気体よりなる1次流体を排出するための開口が、前記圧力容器の前記下面に形成されており、
前記1次流体を排出するために前記圧力容器を前記閉状態から前記開状態に切り替えたときに、前記圧力容器の前記内部から前記外部に向かう前記1次流体の流れの動圧によって前記撹拌子が浮上されることにより、前記圧力容器における前記開口の縁と、浮上している前記撹拌子との間に隙間が形成され、かつ前記隙間によって、前記圧力容器から排出される前記1次流体の流れを絞る絞り部が構成される、
気泡形成装置。
【請求項2】
前記1次流体においては、前記気体の少なくとも一部が前記液体に溶解しており、
前記1次流体が前記隙間を通過するときに減圧されることにより、前記液体に溶解していた前記気体が前記液体中に気泡として出現し、前記液体と前記液体中に分散している前記気泡とを含む2次流体が形成される、
請求項に記載の気泡形成装置。
【請求項3】
前記圧力容器と、該圧力容器に収容された前記撹拌子との組を、複数備え、
前記振とう装置が、それら複数の前記圧力容器を振とうさせることにより、それら複数の前記圧力容器において、前記1次流体が並行して形成される、
請求項1又は2に記載の気泡形成装置。
【請求項4】
上面及び下面を有し、かつ上下方向に高さを有する中空の圧力容器であって、内部に撹拌子が収容された圧力容器の前記内部に液体と気体とを導入し、前記内部の圧力が大気圧より高い加圧条件が満たされたときに、前記圧力容器を、前記内部が気密かつ液密に保たれる閉状態とする気液封入工程と、
前記液体と前記気体とを前記加圧条件下で保持している前記閉状態の前記圧力容器を、上下方向に振とうさせ、前記圧力容器の前記内部において、前記撹拌子によって、前記液体と前記気体とを撹拌させることにより、前記気体の少なくとも一部が前記液体に溶解している1次流体を形成する振とう工程と、
前記圧力容器を、前記閉状態から、前記圧力容器の前記内部が外部と連通した開状態に切り替え、かつ前記1次流体を減圧させる減圧工程と、
を含み、
前記1次流体を排出するための開口が、前記圧力容器の前記下面に形成されており、
前記減圧工程では、前記圧力容器を前記閉状態から前記開状態に切り替えたときに、前記圧力容器の前記内部から前記外部に向かう前記1次流体の流れの動圧によって前記撹拌子が浮上されることにより、前記圧力容器における前記開口の縁と、浮上している前記撹拌子との間に隙間が形成され、かつ前記隙間によって、前記圧力容器から排出される前記1次流体の流れを絞る絞り部が構成され、前記1次流体が前記絞り部を通過するときに、前記1次流体が減圧される、
気泡形成方法。
【請求項5】
前記1次流体においては、一部が前記液体に溶解した前記気体の残部の少なくとも一部が、気泡として前記液体中に分散しており、
前記減圧工程では、前記1次流体を、前記絞り部を通過させることにより、前記気泡微細化され、かつ前記液体に溶解していた前記気体が前記液体中に気泡として出現した2次流体となす、
請求項に記載の気泡形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡形成装置及び気泡形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、気体と液体とをタンク内で加圧することにより、タンク内で気体を液体に溶解させた後、タンクを大気解放することにより、液体に溶解していた気体を液体中に気泡として出現させ、液体中に気泡が分散した気液混合流体を得る気泡形成装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−207162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記気泡形成装置においては、タンク内の圧力が或る程度高くないと気体が液体に充分に溶解しない。気体が充分に液体に溶解していなければ、大気解放時に、気泡の数密度が充分に高い気液混合流体を得ることができない。
【0005】
なお、タンク内を高圧化すると、気体の液体への溶解を促進させることができ、大気解放時に得られる気泡の数密度を高めうるが、タンクが高圧に耐えねばならないため、タンクひいては気泡形成装置全体の重厚化を招いてしまう。
【0006】
本発明の目的は、気体と液体とを保持する圧力容器の内部の圧力を必要以上に高圧化せずとも、圧力容器の内部において気体を液体に充分に溶解させることができる気泡形成装置及び気泡形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る気泡形成装置は、
上面及び下面を有し、かつ上下方向に高さを有する中空の圧力容器であって、内部が気密かつ液密に保たれる閉状態と、前記内部が外部と連通した開状態とに切り替え可能であり、前記閉状態において、前記内部の圧力が大気圧より高い加圧条件下で、前記内部に液体と気体とを保持する圧力容器と、
前記圧力容器の前記内部に収容された撹拌子と、
前記液体と前記気体とを前記加圧条件下で保持している前記閉状態の前記圧力容器を、上下方向に振とうさせることにより、前記圧力容器の前記内部において、前記撹拌子によって、前記液体と前記気体とを撹拌させる振とう装置と、
を備え
前記撹拌子によって撹拌された前記液体及び前記気体よりなる1次流体を排出するための開口が、前記圧力容器の前記下面に形成されており、
前記1次流体を排出するために前記圧力容器を前記閉状態から前記開状態に切り替えたときに、前記圧力容器の前記内部から前記外部に向かう前記1次流体の流れの動圧によって前記撹拌子が浮上されることにより、前記圧力容器における前記開口の縁と、浮上している前記撹拌子との間に隙間が形成され、かつ前記隙間によって、前記圧力容器から排出される前記1次流体の流れを絞る絞り部が構成される
【0009】
前記1次流体においては、前記気体の少なくとも一部が前記液体に溶解しており、
前記1次流体が前記隙間を通過するときに減圧されることにより、前記液体に溶解していた前記気体が前記液体中に気泡として出現し、前記液体と前記液体中に分散している前記気泡とを含む2次流体が形成されてもよい。
【0010】
前記圧力容器と、該圧力容器に収容された前記撹拌子との組を、複数備え、
前記振とう装置が、それら複数の前記圧力容器を振とうさせることにより、それら複数の前記圧力容器において、前記1次流体が並行して形成されてもよい。
【0011】
本発明に係る気泡形成方法は、
上面及び下面を有し、かつ上下方向に高さを有する中空の圧力容器であって、内部に撹拌子が収容された圧力容器の前記内部に液体と気体とを導入し、前記内部の圧力が大気圧より高い加圧条件が満たされたときに、前記圧力容器を、前記内部が気密かつ液密に保たれる閉状態とする気液封入工程と、
前記液体と前記気体とを前記加圧条件下で保持している前記閉状態の前記圧力容器を、上下方向に振とうさせ、前記圧力容器の前記内部において、前記撹拌子によって、前記液体と前記気体とを撹拌させることにより、前記気体の少なくとも一部が前記液体に溶解している1次流体を形成する振とう工程と、
前記圧力容器を、前記閉状態から、前記圧力容器の前記内部が外部と連通した開状態に切り替え、かつ前記1次流体を減圧させる減圧工程と、
を含み、
前記1次流体を排出するための開口が、前記圧力容器の前記下面に形成されており、
前記減圧工程では、前記圧力容器を前記閉状態から前記開状態に切り替えたときに、前記圧力容器の前記内部から前記外部に向かう前記1次流体の流れの動圧によって前記撹拌子が浮上されることにより、前記圧力容器における前記開口の縁と、浮上している前記撹拌子との間に隙間が形成され、かつ前記隙間によって、前記圧力容器から排出される前記1次流体の流れを絞る絞り部が構成され、前記1次流体が前記絞り部を通過するときに、前記1次流体が減圧される
【0013】
前記1次流体においては、一部が前記液体に溶解した前記気体の残部の少なくとも一部が、気泡として前記液体中に分散しており、
前記減圧工程では、前記1次流体を、前記絞り部を通過させることにより、前記気泡微細化され、かつ前記液体に溶解していた前記気体が前記液体中に気泡として出現した2次流体となしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧力容器の内部で気体と液体とが撹拌子によって撹拌されることにより、気体の液体への溶解が促進される。このため、圧力容器の内部の圧力を必要以上に高圧化せずとも、圧力容器の内部において気体を液体に充分に溶解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係る気泡形成装置の構成を示す概念図。
図2】実施形態1に係る気泡形成方法の手順を示すフローチャート。
図3】実施形態1に係る圧力容器を示す拡大断面図。
図4】実施形態2に係る圧力容器を示す拡大断面図。
図5】実施形態3に係る圧力容器を示す拡大断面図。
図6】実施形態4に係る気泡形成装置の構成を示す概念図。
図7】実施形態5に係る気泡形成装置の要部の構成を示す概念図。
図8】実施例で得た気液混合流体中の気泡の直径別頻度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る気泡形成装置について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0017】
[実施形態1]
図1に示すように、本実施形態に係る気泡形成装置100は、内部11に液体と気体とを保持する圧力容器10と、圧力容器10の内部11に収容された撹拌子20と、圧力容器10を振とうさせる振とう装置30とを備える。
【0018】
この気泡形成装置100は、振とう装置30によって圧力容器10を振とうさせることにより、圧力容器10の内部11において、液体と気体とを撹拌子20によって撹拌するものである。以下、各部材について詳細に説明する。
【0019】
圧力容器10は、上下方向に高さを有する中空の円柱状をなしている。圧力容器10の上面には、圧力容器10の内部11に通じる導入用開口12が形成されており、圧力容器10の下面には、内部11に通じる排出用開口13が形成されている。
【0020】
圧力容器10の導入用開口12には、内部11に液体と気体とを導入するための導入用配管41が、気密かつ液密に接続されている。導入用配管41は、圧力容器10の内部11を、気体源GSと液体源LSとに連通させている。
【0021】
気体源GSは、導入用配管41を通して、圧力容器10の内部11に気体を供給する。気体源GSは、気体が加入された気体ボンベによって構成されている。気体ボンベの内圧によって、気体を、導入用配管41を通して圧力容器10の内部11に圧送することができ、かつ内部11の圧力を、大気圧を超える値に設定することができる。
【0022】
液体源LSは、導入用配管41を通して、圧力容器10の内部11に液体を供給する。液体源LSは、シリンジに貯められた液体をピストンによって押し出す構成を有する液体充填器によって構成されている。なお、導入用配管41には、液体源LSから供給される液体の、気体源GSへの流入を阻止する逆止弁42が設けられている。
【0023】
また、導入用配管41における、気体源GS及び液体源LSと、導入用開口12との間の経路には、導入用弁43が設けられている。ユーザは、導入用弁43を開いた状態で、液体源LSから圧力容器10に液体を供給することができ、気体源GSから圧力容器10に気体を供給することができる。
【0024】
また、ユーザは、導入用弁43の開き度合いによって、圧力容器10の内部11への液体と気体の流入量を調整することができ、かつ導入用弁43を閉じることで、気体源GS及び液体源LSと、圧力容器10の内部11との連通を断つこともできる。
【0025】
一方、圧力容器10の排出用開口13には、撹拌子20によって撹拌された気体及び液体よりなる1次流体FL1を、内部11から外部に排出するための排出用配管44が、気密かつ液密に接続されている。
【0026】
排出用配管44には、排出用弁45が設けられている。ユーザは、排出用弁45を開くことで、圧力容器10の内部11を外部と連通させることができ、かつ排出用弁45を閉じることで、内部11と外部との連通を断つことができる。
【0027】
撹拌子20は、液体源LSから供給される液体よりも比重が大きい素材、具体的には、金属よりなる。撹拌子20の体積は、撹拌子20が圧力容器10の内部11で往復運動可能なように、圧力容器10の内部11の容積の1/2未満である。
【0028】
具体的には、圧力容器10が内部11に画定している空洞は、高さが直径の2倍を超える円柱状をなす。そして、撹拌子20は、内部11に画定された円柱状の空洞の直径、即ち圧力容器10の内径よりも、やや小さい直径を有する球状をなす。
【0029】
振とう装置30は、圧力容器10を上下に振とうさせる。これにより、圧力容器10の内部11において、撹拌子20が、導入用開口12が形成された上側の内面と、排出用開口13が形成された下側の内面とに交互に当たるように往復運動する。
【0030】
そして、この撹拌子20の往復運動によって、圧力容器10の内部11において、液体と気体とが撹拌される。これにより、圧力容器10の内部11において、撹拌された気体及び液体よりなる1次流体FL1が形成される。
【0031】
また、後述するように、1次流体FL1は、圧力容器10から排出される過程で、含有する気泡の数密度が高められた2次流体FL2となる。そして、その2次流体FL2が、排出用配管44を通して外部に放出される。
【0032】
なお、導入用配管41と排出用配管44はフレキシビリティを有すると共に、導入用配管41と排出用配管44の各々の長さと引き回しは、振とう装置30による圧力容器10の振とうに伴って各々に生じる応力が、各々の弾性限界より充分に小さい値に抑えられるように設計されている。
【0033】
以下、図2を参照し、気泡形成装置100を用いた気泡形成方法について説明する。以下の説明において、必要に応じて図1が参照される。
【0034】
なお、本気泡形成方法では、図2のステップS1〜S6の遂行を1バッチ処理とし、この1バッチ処理を繰り返す。1バッチ処理毎に、ステップS6で圧力容器10が、内部11に大気圧程度の圧力で気体が満たされた初期状態に戻る。以下、圧力容器10がその初期状態に設定されていることを前提として、1バッチ処理の内容を具体的に説明する。
【0035】
図2に示すように、まず、ユーザは、排出用弁45が閉じられた状態で、導入用弁43を開く。これにより、圧力容器10が、内部11が気体源GSと液体源LSとに連通した導入時開状態となる(ステップS1)。
【0036】
次に、ユーザは、圧力容器10に液体と気体を導入する(ステップS2)。具体的には、ユーザは、まず、液体源LSから圧力容器10の内部11に向けて、液体を供給する。次に、ユーザは、気体源GSから圧力容器10の内部11に、気体を圧送する。
【0037】
なお、導入用配管41に液体が滞留していても、気体の送圧で液体が圧力容器10の内部11に押し込まれる。但し、圧力容器10に液体と気体を導入する順番は任意であり、両者を並行して導入してもよい。
【0038】
圧力容器10への気体の導入を開始すると、圧力容器10の内部11の圧力が大気圧より高くなる。ユーザは、圧力容器10の内部11が、大気圧よりも高く、気体が液体に溶解しうる程度の圧力へと高められた加圧条件が満たされるように、導入用弁43の開き具合を調整することができる。
【0039】
そして、ユーザは、上記加圧条件が満たされたときに、導入用弁43を閉じる(ステップS3)。これにより、圧力容器10が、内部11が気密かつ液密に保たれた閉状態へと切り替えられる。このとき、圧力容器10は、上記加圧条件下で、撹拌子20と共に液体と気体とを、内部11に保持している。
【0040】
なお、上述したステップS2とS3は、圧力容器10の内部11に液体と気体とを導入し、内部11の圧力が大気圧より高く、気体が液体に溶解しうる程度の圧力へと高められた加圧条件が満たされたときに、圧力容器10を閉状態とする気液封入工程、に相当する。
【0041】
次に、ユーザは、振とう装置30を作動させる。これにより、振とう装置30によって圧力容器10を振とうさせる振とう工程が開始する(ステップS4)。振とう装置30を作動させると、圧力容器10の内部11で撹拌子20が上下に往復運動し、この往復運動によって、圧力容器10の内部11において、液体と気体とが撹拌される。
【0042】
これにより、圧力容器10の内部11において、気体と液体とが混ざり合い、両者の接触面積が増大することで、気体の液体への溶解が促進される。また、気体と液体とが混ざり合う際、気体が気泡化される。その形成された気泡は、撹拌子20と、圧力容器10の内面との隙間において与えられるせん断力によって、微細化される。
【0043】
このようにして、圧力容器10の内部11において、気体の溶解と、気泡の微細化とが並行して進行する。この結果、気体源GSから供給された気体の一部が液体に溶解し、かつその気体の残部の少なくとも一部が気泡として液体中に分散してなる1次流体FL1が、圧力容器10の内部11において形成される。
【0044】
ユーザは、ステップS4で振とう装置30を作動させた後、1次流体FL1の形成に要する期間、即ち気体の溶解と気泡の微細化とに要する期間として予め定められた期間が経過した後に、振とう装置30を停止させる。
【0045】
そして、ユーザは、導入用弁43が閉じられた状態のままで、排出用弁45を開く。これにより、圧力容器10が、内部11が外部と連通した排出時開状態に切り替えられる(ステップS5)。すると、圧力容器10の内部11の圧力よって、1次流体FL1が、自ずと圧力容器10から排出される。
【0046】
1次流体FL1は、圧力容器10から排出される過程で、含有する気泡の数密度が高められた2次流体FL2となる。以下、図3を参照し、2次流体FL2が形成されるメカニズムについて説明する。
【0047】
図3に示すように、排出用弁45を開いたとき、内部11から外部に向かう1次流体FL1の流れの動圧によって、撹拌子20が浮上される。このため、圧力容器10における排出用開口13の縁と、撹拌子20との間に、隙間GPが形成される。
【0048】
この隙間GPが、圧力容器10から排出される1次流体FLの流れを絞り、かつ1次流体FLに含まれる気泡を微細化させる絞り部として機能する。この絞り部において、1次流体FLに、減圧プロセスを含むキャビ―テーションが生じる。
【0049】
具体的には、1次流体FLが隙間GPを通過するときに、液体に溶解していた気体が減圧によって気泡として出現する。出現した気泡は、さらに加圧やせん断によって微細化されうる。また、1次流体FL1中に元々存在していた気泡も、加圧やせん断によって微細化される。
【0050】
この結果、1次流体FL1よりも、含有する気泡の数密度が高く、かつ含有する気泡の平均直径が小さい2次流体FL2が形成される。以上のように、図2に示すステップS5は、1次流体FL1を、隙間GPで構成される絞り部を通過させることにより減圧させて2次流体FL2となす減圧工程、に相当する。
【0051】
図2に戻り、ステップS5において、圧力容器10から1次流体FL1が排出され、内部11の圧力が大気圧程度にまで下がると、ユーザは、排出用弁45を閉じる(ステップS6)。これにより、圧力容器10が、内部11が気密かつ液密に保たれる閉状態へと切り替えられる。
【0052】
このとき、圧力容器10の内部11は、大気圧程度の圧力で気体が満たされた既述の初期状態となっている。そして、再びステップS1に戻り、ステップS1〜S6よりなる1バッチ処理を繰り返す(RETURN)。
【0053】
以上説明した本実施形態に係る気泡形成装置100によれば、次の効果が得られる。
【0054】
圧力容器10の内部11で気体と液体とが撹拌子20によって撹拌されるため、気体の液体への溶解が促進される。このため、圧力容器10の内部11の圧力を必要以上に高圧化せずとも、圧力容器10の内部11において気体を液体に充分に溶解させることができる。圧力容器10の内部11の圧力を必要以上に高圧化する必要がないため、圧力容器10ひいては気泡形成装置100の重厚化が抑えられる。また、気体を液体に充分に溶解させることができるため、気泡の数密度が充分に高い2次流体FL2を得ることができる。
【0055】
一具体例として、圧力容器10の内部11が1[MPa]未満、好ましくは0.8[MPa]未満、より好ましくは0.7[MPa]以下といった比較的低圧でも、平均直径が200[nm]以下で数密度が11[億個/mL]以上の気泡を含む2次流体FL2を得ることができる。
【0056】
特許文献1に係る従来の気泡形成装置では、液体中に気泡が分散した気液混合流体を形成するために、気体と液体とを加圧するタンク内で、液体の旋回流を形成する必要があった。この場合、タンクの容積が小さいと、タンク内で旋回流を形成することが困難であるため、少量の液体を気液混合流体となすことが難しかった。これに対し、本実施形態によれば、たとえ圧力容器10の容積が小さくても、撹拌子20によって液体と気体とを撹拌させるので、液体と気体とを充分に撹拌させることができる。このため、少量の液体を、気液混合流体である2次流体FL2となすことができる。
【0057】
本実施形態では、圧力容器10を用いた1バッチ処理毎に、気液混合流体である2次流体FL2を形成する。このため、閉じた経路内で液体混合流体を循環させつつ気泡を微細化させてゆく従来の気泡形成装置と異なって、液体を循環させる液体ポンプを備える必要がない。このため、液体ポンプで発生する摩耗金属よりなるコンタミネーションで気液混合流体が汚染される従来の問題を回避することができる。
【0058】
本実施形態では、図3に示したように、撹拌子20と、圧力容器10における排出用開口13の縁との隙間GPによって、1次流体FL1にキャビテーションを生じさせる。このため、1次流体FL1にキャビテーションを生じさるための専用の噴射ノズルを備える必要がない。従って、噴射ノズルの目詰りの問題を回避でき、気泡形成装置100のメンテナンスの容易化が図られる。
【0059】
[実施形態2]
上記実施形態1では、図3に示したように、排出用弁45を開いたときに、1次流体FL1の流れによって撹拌子20が浮上されたが、1次流体FL1の流れの勢いが小さい場合や、撹拌子20の自重が大きい場合でも、圧力容器10から外部への1次流体FL1の排出の確実性を高める構成を、気泡形成装置100が備えてもよい。以下、その具体例について説明する。
【0060】
図4に示すように、本実施形態に係る気泡形成装置200の圧力容器10には、排出用開口13が形成された内面(以下、底内面という。)に、排出用開口13に至る溝14が複数本形成されている。各々の溝14は、排出用開口13に近づくに従って深くなるように底面が傾斜している。図示しないが、複数本の溝14は、排出用開口13を上方からみた平面視において、円形の排出用開口13から径方向外方に放射状に延びている。
【0061】
本実施形態によれば、排出用弁45を開いたときに、たとえ撹拌子20が、圧力容器10の上記底内面に接しても、撹拌子20と、各々の溝14の底面との間には、隙間GPが確保される。そして、その隙間GPによって、1次流体FL1にキャビテーションを生じさせる絞り部が構成される。また、溝14の深さによって、1次流体FL1の流れを絞る度合いを調整することもできる。
【0062】
[実施形態3]
上記実施形態2では、溝14によって隙間GPを構成したが、隙間GPを構成する手段は溝14に限られない。以下、溝14以外の手段によって隙間GPを構成する具体例について説明する。
【0063】
図5に示すように、本実施形態に係る気泡形成装置300の圧力容器10は、底内面における排出用開口13の周囲に設けられた複数の突起15を備える。図示しないが、複数の突起15は、排出用開口13を上方からみた平面視において、円形の排出用開口13の周囲に、排出用開口13の周方向に間隔をあけて配置されている。
【0064】
本実施形態によれば、排出用弁45を開いたときに、たとえ撹拌子20が突起15に接した状態となっても、隣り合う突起15の間において、ほぼ突起15の高さに相当する隙間GPが確保される。そして、その隙間GPによって、1次流体FL1にキャビテーションを生じさせる絞り部が構成される。また、突起15の高さによって、1次流体FL1の流れを絞る度合いを調整することもできる。
【0065】
[実施形態4]
上記実施形態1〜3では、圧力容器10の内部11で構成される隙間GPによって、1次流体FL1にキャビテーションを生じさせたが、隙間GPの構成は必須ではない。専用の噴射ノズルを用いて、1次流体FL1にキャビテーションを生じさせてもよい。以下、その具体例について説明する。
【0066】
図6に示すように、本実施形態に係る気泡形成装置400では、撹拌子20’が円筒状をなしている。撹拌子20’の外径は、圧力容器10の内径よりもやや小さく、撹拌子20’の内径は、排出用開口13の口径より大きい。排出用弁45を開いたときには、1次流体FL1が、撹拌子20’の内部空洞を通って圧力容器10の外に排出され、図3図5に示した隙間GPは構成されない。
【0067】
そこで、排出用配管44が、1次流体FL1にキャビテーションを生じさる噴射ノズル50を有する。噴射ノズル50は、1次流体FL1の流れを絞る絞り部51を有する。絞り部51は、1次流体FL1が流れる方向に間隔をあけて複数設けられている。各々の絞り部51において、1次流体FL1にキャビテーションが付与される。
【0068】
本実施形態では、1次流体FL1が、噴射ノズル50を通過する際に減圧され、気泡の数密度が高められ、かつ気泡の平均直径が微細化された2次流体FL2となる。
【0069】
[実施形態5]
上記実施形態1〜4では、圧力容器10を1つのみ用いたが、複数の圧力容器10を用いて、2次流体FL2を形成してもよい。以下、その具体例について説明する。
【0070】
図7に示すように、本実施形態に係る気泡形成装置500は、圧力容器10と、その圧力容器10に収容された撹拌子20との組を、3組備える。振とう装置30は、それら3つの圧力容器10を同時に振とうさせる。
【0071】
本実施形態によれば、3つの圧力容器10において、1次流体FL1を並行して形成することができるので、1次流体FL1ひいては2次流体FL2を形成する効率を高めることができる。
【0072】
なお、圧力容器10に導入する気体と液体の少なくとも一方を、3つの圧力容器10の間で互いに異ならせてもよい。この場合は、図7に示すように、各々の圧力容器10から排出される1次流体を1本の排出用配管44に集合させてもよいし、各々の圧力容器10から排出される1次流体を個別に外部に放出させてもよい。
【0073】
[実施例]
図1に示した気泡形成装置100を用い、液体と液体中に分散した気泡とを含む気液混合流体である2次流体FL2を形成した。2次流体FL2を構成する気体には、空気を用い、液体には、蒸留水を用いた。
【0074】
圧力容器10には、内径が18[mm]、高さが100[mm]、排出用開口13の口径が4[mm]のステンレス製の部材を用いた。撹拌子20には、直径が15[mm]のステンレス製の球を用いた。
【0075】
かかる圧力容器10に蒸留水を10[mL]導入し、かつ圧力容器10の内部11の圧力が0.6[MPa]となる加圧条件が満たされるように、空気を圧力容器10に封入した。この状態で圧力容器10を、230[回/分]程度の繰り返し周波数で、60[分]にわたって、振とう装置30により振とうさせ、1次流体FL1を形成した。
【0076】
しかる後、排出用弁45を開き、1次流体FL1を、撹拌子20と排出用開口13の縁との隙間GPを通過させることにより、2次流体FL2となした。2次流体FL2は、排出用配管44の端部から放出される。
【0077】
図8に、排出用配管44から放出された2次流体FL2の気泡の直径別頻度分布を示す。グラフAは、度数分布を示し、グラフBは、累積度数分布を示す。得られた2次流体FL2に含まれる気泡の平均直径は150[nm]以下、具体的には100[nm]程度であり、2次流体FL2に含まれる気泡の数密度は、11.4[億個/mL]程度であることが確認された。
【0078】
以上、本発明の実施形態と実施例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、以下に述べる変形も可能である。
【0079】
上記実施形態1〜5では、撹拌子20が、液体と気体とを撹拌する役割だけでなく、撹拌子20の自重を利用して1次流体FL1の流れを絞る役割も果たしたが、後者の役割は必須ではない。撹拌子20が、液体と気体とを撹拌する役割だけを果たしてもよい。この場合は、圧力容器10を振とうさせる方向は、特に上下方向に限られない。圧力容器10を左右方向に振とうさせる構成としてもよいし、撹拌子20が圧力容器10の内部11でランダムに移動するような構成としてもよい。
【0080】
上記実施形態1〜5では、圧力容器10に2つの開口、即ち導入用開口12と排出用開口13とを形成したが、圧力容器10に形成された1つの開口が、気体及び液体の導入用としての役割と、1次流体FL1の排出用としての役割とを兼ねる構成としてもよい。
【0081】
上記実施形態1〜5では、気体源GSを気体ボンベによって構成したが、気体を吐出する気体ポンプによって気体源GSを構成してもよい。また、液体源LSを、液体を吐出する液体ポンプによって構成してもよい。
【0082】
上記実施形態1〜5では、ユーザが、導入用弁43及び排出用弁45の開閉と、振とう装置30の動作とを手動で制御したが、これらを制御装置によって自動制御する構成としてもよい。
【0083】
上記実施形態1〜5では、撹拌子20を1つの球体によって構成したが、撹拌子20を複数の部材によって構成してもよい。
【0084】
上記実施形態1〜5では、圧力容器10が空中円筒状をなし、撹拌子20が球状をなしていたが、圧力容器10と撹拌子20の形状は、特に限定されない。
【0085】
図7には、3つの圧力容器10を示したが、気泡形成装置500が備える圧力容器10の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0086】
本発明は、その広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変形が可能とされる。上記実施形態及び実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示される。請求の範囲内及びそれと同等の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0087】
10…圧力容器、
11…圧力容器の内部、
12…導入用開口、
13…排出用開口(開口)、
14…溝、
15…突起、
20,20’ …撹拌子、
30…振とう装置、
41…導入用配管、
42…逆止弁、
43…導入用弁、
44…排出用配管、
45…排出用弁、
50…噴射ノズル、
51…絞り部、
100,200,300,400,500…気泡形成装置、
GS…気体源、
LS…液体源、
FL1…1次流体、
FL2…2次流体、
GP…隙間。
図1
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図4
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図6
図7
図8