(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954698
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】テトラメチルピラジンニトロン誘導体の糖尿病合併症疾患の予防と治療における応用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4965 20060101AFI20211018BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20211018BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20211018BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20211018BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20211018BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20211018BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20211018BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
A61K31/4965
A61K45/00
A61P3/10
A61P13/12
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-515801(P2020-515801)
(86)(22)【出願日】2018年5月25日
(65)【公表番号】特表2020-521002(P2020-521002A)
(43)【公表日】2020年7月16日
(86)【国際出願番号】CN2018000194
(87)【国際公開番号】WO2018218961
(87)【国際公開日】20181206
【審査請求日】2019年11月25日
(31)【優先権主張番号】201710392539.X
(32)【優先日】2017年5月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519420067
【氏名又は名称】チンタオ ハイラン ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユーチアーン
(72)【発明者】
【氏名】スン イェウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュ リープォン
(72)【発明者】
【氏名】ジン メイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ザイジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ガオシャオ
(72)【発明者】
【氏名】ユー ペイ
(72)【発明者】
【氏名】イー プォン
【審査官】
松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−518789(JP,A)
【文献】
特表2013−529656(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101468970(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第107157999(CN,A)
【文献】
日本臨床(増刊),2012年,第70巻, 増刊号5,p.411-418
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラメチルピラジンニトロン誘導体
を含有する医薬品であって、
前記医薬品は、前記誘導体又はその医薬組成物を含み、糖尿病合併症疾患の予防と治療に用いられ、前記誘導体は、下記一般式(I)の構造を有し、
前記糖尿病合併症は、糖尿病性腎臓病である
医薬品。
【化1】
【請求項2】
前記C1−C6アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ペンチル基である請求項1に記載の医薬品。
【請求項3】
前記誘導体は、下記構造式を有する請求項1に記載の
医薬品。
【化2】
【請求項4】
前記医薬組成物は、治療有効用量の前記誘導体又はその薬学的に許容可能な塩、及び薬学的に許容可能な担体を含む請求項1に記載の医薬品。
【請求項5】
ほかの医薬品を有する請求項1に記載の医薬品。
【請求項6】
前記ほかの医薬品は、血圧降下薬である請求項5に記載の医薬品。
【請求項7】
前記血圧降下薬は、アンジオテンシン受容体遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又は葉酸である請求項6に記載の医薬品。
【請求項8】
前記誘導体は、薬学的に許容可能な担体とともに各種の剤形を調製でき、前記剤形は、錠剤、顆粒剤、注射剤、粉末剤、カプセル剤又は懸濁剤である請求項4に記載の医薬品。
【請求項9】
前記有効用量は、0.001〜2g/kgである請求項4に記載の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の技術分野に関し、具体的には、テトラメチルピラジンニトロン誘導体及びその医薬組成物の、糖尿病合併症疾患の予防と治療における応用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、インスリン分泌欠陥又はインスリン機能障害による、高血糖を特徴とする代謝性疾患である。持続的な高血糖や長期の代謝障害などは、全身の器官や組織、特に目、腎臓、心血管系及び神経系の損傷、及びその機能障害や不全を引き起こし、深刻な場合は、脱水、電解質障害や酸塩基平衡障害などの急性合併症、ケトアシドーシス、高浸透圧性昏睡を引き起こすおそれがある。
【0003】
糖尿病性腎臓病(Diabetic Kidney Disease, DKD)は、糖尿病の主な微小血管合併症の1つであり、タンパク尿、進行性腎機能障害、高血圧、浮腫、後期の場合は、重度腎機能不全を臨床的特徴とする。現在、DKDは、末期腎臓病の主な原因であり、糖尿病患者の約30%〜40%が腎臓病に罹患している。IDFの報道によると、世界では2013年の糖尿病の罹患率は、3億8200万人であり、25年後には5億9200万人に増加する。
【0004】
これまでのところ、DKDの発症及び進行のメカニズムは、完全に解明されていない。しかし、現在のところ、DKDの発症メカニズムは、グルコース代謝障害及びそれに起因する非酵素的糖化、ポリオール経路の活性化、プロテインキナーゼCの活性化、脂質代謝障害、高血圧に起因する腎血行動態の変化、酸化ストレス、血管作用物質及びサイトカイン、遺伝などの要因に繋がると考えられる。ミトコンドリアが細胞内活性酸素種(ROS)の主なソース及び内因性アポトーシス経路の重要な関与者であると報告された文献があり、ROSの過剰合成は、糖尿病とその合併症の発症メカニズムの出発点である可能性があり、ROSをブロック又は除去すると、糖尿病性腎臓病によって引き起こされる尿タンパク質排泄率の増加、糸球体硬化、及び尿細管間質性線維化などを低減させることができる(非特許文献1:Michael Brownlee,Nature, 2001, 414:813−820)。
【0005】
糖尿病性眼疾患も、糖尿病の一般的な合併症の1つである。糖尿病の罹病の過程において、糖尿病患者の目の組織のほとんどが影響を受け、その結果、程度と症状の異なる眼病変が生じる。糖尿病によって引き起こされる眼疾患には、主に網膜病変、白内障及び緑内障などがある。
【0006】
テトラメチルピラジン(Tetramethylpyrazine)は、伝統的な漢方薬であるセンキュウの主要な活性成分の1つであり、臨床的には、心血管及び脳血管疾患、腎臓疾患、網膜疾患、視神経虚血性眼疾患などの疾患の治療に広く使用されている。従来の研究では、テトラメチルピラジンには、抗血栓、抗虚血再灌流、心血管系及び脳血管系保護、肝臓や腎臓保護など、様々な薬理学的活性を有することが確認された[非特許文献2:中国現代漢方薬,2016,18(10):1364−1370]。テトラメチルピラジンの構造は、下記のとおりである。
【化1】
【0007】
テトラメチルピラジンは、抗アポトーシス、抗炎症、抗酸化などの経路を通じて腎臓組織細胞を保護する役割を果たし、それにより腎臓の機能的損傷を軽減させることができる。Yangら[非特許文献3:Phytomedicine, 2011, 18 (13):1148−1152]がストレプトゾトシンによって誘発されたラット糖尿病性腎臓病モデルを研究した結果、テトラメチルピラジンが腎機能を著しく改善し、糖尿病性腎臓病ラットで血糖と尿タンパク質排泄率をダウンレギュレーションできることを確認し、その作用機構が、テトラメチルピラジンによる腎臓組織でのVEGFのダウンレギュレーションに関連している可能性がある。 Gongら[非特許文献4:Archives of Toxicology, 2015, 89 (7):1057−1070]により、テトラメチルピラジンは、亜ヒ酸ナトリウムによって誘発されたヒト腎近位尿細管細胞の損傷に対しても保護活性を有し、そのメカニズムが、ROS産生を阻害し、GSHレベルを増加させ、シトクロムCオキシダーゼ活性を向上させて、ミトコンドリア膜電位を回復し、ミトコンドリア機能障害を改善して、β-catenin、NF−κβ、p38 MAPK、TNF−α、COX−2のタンパク質発現を低下させ、それによりアポトーシスをブロックすることにつながることが証明されている。また、テトラメチルピラジンに関するGongの他の研究[非特許文献5:Am J Nephrol, 2013, 37 (3):199−207]も、テトラメチルピラジンがp38 MAPKタンパク質の発現を阻害することにより、造影剤によって誘発された腎臓損傷モデルに対して保護作用を果たせることが確認された。
【0008】
臨床研究によれば、テトラメチルピラジンは、糖尿病性腎臓病に対して一定の治療効果があり、且つ安全性が高いことが示されている。楊林ら[非特許文献6:Chinese Journal of Information on TCM, 2011, 18 (8):26−29]は、テトラメチルピラジン注射液による糖尿病性腎臓病の治療についての臨床研究を体系的に評価し、その結果、従来治療群と比較すると、テトラメチルピラジンを併用する場合は、糖尿病性腎臓病患者の24時間尿中アルブミン排泄率、24時間尿タンパク質総量及び24時間尿タンパク質定量を低下させることができるが、その血中尿素窒素、拡張期血圧及び収縮期血圧の低下が有意ではない。また、使用中に深刻な副作用はなく、このことから、テトラメチルピラジン注射液は糖尿病性腎臓病患者に一定の治療効果があることを示している。陳応軍ら[非特許文献7:中国実用医薬, 2013, 8 (23):178−179]は、末梢神経病変を伴う2型糖尿病患者を治療したところ、12dを1コースとして大量のテトラメチルピラジン注射液(360〜400mg/d)を静脈内注入して患者を治療する場合、治療の総有効率が95%と高く、一方、従来の用量を用いたテトラメチルピラジン注射液群(80mg/d)では82.93%であり、高用量群の総有効率が従来の用量群のそれよりも高く、且つその副作用が増加していないことを見出した。
【0009】
テトラメチルピラジンは、眼疾患の治療にも広く使用されている。現在、テトラメチルピラジンは、糖尿病性網膜病変、網膜血管閉塞、虚血性網膜病変、緑内障などの眼疾患に臨床的に適用されている。▲登▼新国らは、塩酸テトラメチルピラジンを腹腔内注射してウサギの眼の網膜組織での薬物動態を観察して研究したところ、テトラメチルピラジンを腹腔内注射すると、テトラメチルピラジンは、血液網膜関門を通って網膜組織に入ることができる。この結果は、テトラメチルピラジンの全身投与により眼底疾患を治療するために実験的基礎を提供した。一部の研究者は、糖尿病性網膜病変の患者40例を20例の治療群と20例の対照群に分ける。治療群には、プエラリン注射液を静脈内注入し、腎臓や脾臓によくてうっ血などを解消する処方を経口投与するとともに、電子制御によりテトラメチルピラジンイオンを導入する。対照群には、プエラリン注射液を静脈内注入し、腎臓や脾臓によくてうっ血などを解消する処方を経口投与する。2群の治療前後の眼底の変化を観察した。結果は、治療群では総有効率が86.84%、対照群では総有効率が67.50%であることを示し、治療群の治療効果は、対照群の治療効果よりも有意に良好であり、2群間の治療効果の比較差が統計的に有意であった[非特許文献8:王燕,中国中医眼科雑誌,2004]。眼底疾患の治療におけるテトラメチルピラジンの作用機構としては、一般に、血液レオロジーの改善、内皮細胞増殖の抑制、ラジカルの除去、アポトーシスの抑制、及びカルシウムイオンの拮抗に関連すると考えられている。
【0010】
前記のとおり、テトラメチルピラジンは、抗アポトーシス、抗炎症、抗酸化などの様々な経路を通じて糖尿病性腎臓病及びその眼底疾患を改善することができ、また、臨床研究で糖尿病性腎臓病に対して一定の治療効果を示したが、そのラジカル除去能力が不十分であり、治療効果が臨床的ニーズを満足できない。
【0011】
ニトロン類化合物は、高いラジカル除去能力を有する化合物であり、さまざまな活性ラジカルに対して高い除去作用を有し、研究によれば、ニトロン化合物は、さまざまなラジカルに起因する疾患(たとえば、癌、脳卒中、パーキンソン病など)には一定の治療効果があることが分かった。糖尿病性腎臓病及び眼底疾患の治療におけるテトラメチルピラジンの臨床応用、及びニトロン基化合物の強力なラジカル除去作用に基づいて、テトラメチルピラジンニトロン誘導体TBN及びTN−2を革新的に合成した。研究した結果、テトラメチルピラジンニトロン誘導体が糖尿病性腎臓病ラットモデルに対して有意な保護作用を有し、STZ誘発糖尿病性腎臓病モデルの血糖値を大幅に低下させ、血清クレアチニン、尿素窒素レベル及び尿の尿タンパク質レベル、腎臓指数を低下させることが明らかになる。また、テトラメチルピラジンニトロン誘導体は、糖尿病合併症である網膜病変の発症率を大幅に減らすことができる。
【0012】
本発明は、テトラメチルピラジンニトロン誘導体の新用途、すなわち、糖尿病性合併症の疾患を予防及び治療するための医薬品の調製における応用を発見した。本発明による化合物TBN及びTN−2は、テトラメチルピラジンとニトロン基との結合物であり、テトラメチルピラジンが有する抗酸化、抗アポトーシス、抗炎症などの活性及びニトロン基の強力なラジカル除去活性とを兼ね備え、糖尿病性腎臓病に対するテトラメチルピラジンの治療効果を維持するとともに、高血糖又はラジカルによって誘発された酸化的損傷を改善する。一方、TBN及びTN−2は、糖尿病性網膜病変に対しても一定の治療効果を示し、糖尿病性腎臓病及び糖尿病性網膜病変の進行を遅らせることができ、患者により高い利益率をもたらす。
【0013】
本発明によるテトラメチルピラジン誘導体TBN及びTN−2は、臨床的に使用されている糖尿病及び糖尿病性腎臓病の治療薬と組み合わせて使用でき、相乗作用により治療効果を向上させ、従来の臨床薬の副作用を軽減させ、臨床薬の利益/リスク比を向上させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Michael Brownlee,Nature, 2001, 414:813−820
【非特許文献2】中国現代漢方薬,2016,18(10):1364−1370
【非特許文献3】Phytomedicine, 2011, 18 (13):1148−1152
【非特許文献4】Archives of Toxicology, 2015, 89 (7):1057−1070
【非特許文献5】Am J Nephrol, 2013, 37 (3):199−207
【非特許文献6】Chinese Journal of Information on TCM, 2011, 18 (8):26−29
【非特許文献7】中国実用医薬, 2013, 8 (23):178−179
【非特許文献8】王燕,中国中医眼科雑誌,2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、テトラメチルピラジンニトロン誘導体及びその医薬組成物の新用途、すなわち、テトラメチルピラジンニトロン誘導体及びその医薬組成物の、医薬品の調製及び糖尿病合併症疾患の予防と治療における応用を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記誘導体は、下記一般式(I)の構造を有する。
【化2】
【0017】
好ましくは、前記C1−C6アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ペンチル基である。
【0018】
さらに好ましくは、前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体は、下記構造式を有する。
【化3】
【0019】
本発明は、前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体及びその医薬組成物の、糖尿病合併症疾患の予防と治療における応用を提供する。
【0020】
前記糖尿病合併症は、好ましくは糖尿病性腎臓病及び糖尿病性眼疾患である。さらに好ましくは、前記糖尿病性眼疾患は、網膜病変、緑内障及び白内障である。
【0021】
本発明は、さらに前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体及びその医薬組成物の、医薬品の調製における応用を提供し、前記医薬品は、糖尿病性腎臓病及びその合併症疾患の予防と治療に適用できる。前記医薬組成物は、治療有効用量の前記誘導体又はその薬学的に許容可能な塩、及び薬学的に許容可能な担体を含む。
【0022】
前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体を含む医薬品は、単独で使用してもよく、又はほかの医薬品と組み合わせて使用して、糖尿病合併症を予防と治療してもよい。併用し得るほかの医薬品は、主として臨床的に一般的に使用されている経口抗糖尿病薬を含み、主にビグアナイド、スルホニルウレア、グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジンジオン、非スルホニルウレア系インスリン分泌促進薬及びジペプチジルペプチダーゼ阻害薬などが含まれる。組み合わせる好適な医薬品は、アンジオテンシン受容体遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬及び葉酸である。研究により、葉酸がホモシステインを低下させることで糖尿病性腎臓病を防止できることが明らかになる。
【0023】
前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体は、利用可能な医薬品担体とともに各種の剤形を調製でき、剤形には、錠剤、顆粒剤、注射剤、粉末剤、カプセル剤、懸濁剤を含む。
【0024】
好ましくは、前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体の治療有効用量は、0.001−2g/kgである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラットの体重(
図1a)、飲水量(
図1b)及び摂食量(
図1c)への影響を示す。対照群(Control)と比較すると
###P<0.001、
##P<0.01;モデル群(Model)と比較すると
***P<0.001、
*P<0.05。
【
図2】テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDの尿タンパク質(
図2a)及びラットの血糖(
図2b)への影響を示す。対照群(Control)と比較すると
###P<0.001;モデル群(Model)と比較すると
***P<0.001、
**P<0.05、
*P<0.01。
【
図3】テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラットの血清クレアチニン(
図3a)、尿素窒素(
図3b)、コレステロール(
図3c)及びトリグリセリド(
図3d)レベルへの影響を示す。対照群(Control)と比較すると、
###P<0.001、
##P<0.01;モデル群(Model)と比較すると
**P<0.05、
*P<0.01。
【
図4】テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラットの腎臓指数への影響を示す。対照群(Control)と比較すると
###P<0.001;モデル群(Model)と比較する
**P<0.05、
*P<0.01。
【
図5】表1には、糖尿病性腎臓病モデルラットの網膜病変の発症例数及び発症時間が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の特定の実施例にて本発明の技術案を明瞭で完全に説明するが、明らかなように、説明する実施例は、本発明の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。当業者であれば、本発明の技術案の精神から逸脱することなく、本発明の特定の実施例について修正したり、一部の技術的特徴について同等置換を行ったりする場合、すべて本発明の特許範囲に含まれる。
【0027】
実施例1. STZ誘発糖尿病性腎臓病ラットモデルの作製及び群分け
1. モデルの作製
SDラット(200±10g)をモデル動物として、注射前に12h禁食させ、注射時にクエン酸バッファーを用いて1%の濃度でSTZを溶解し、禁食後のラットの体重を測定した後、55mg/kg STZを腹腔内注射して、ラットをケージに入れ、ラットに24h十分に飲水させた。STZを注射するときに、10min以内で素早く注射すべきである。正常対照群には、pH4.5のクエン酸−クエン酸ナトリウムバッファーを等体積で注射した。動物の状態(多飲多尿が認められる)を観察し、STZ注射3週間後、尾静脈から採血して、測定した空腹時血糖≧16.7mmol/Lをラット糖尿病性腎臓病モデルの作製完成基準とした。
2. 群分け
DKDラットをランダムに6群に分け、それぞれ異なる医薬品を投与し、投与6週間後、実験を停止し、医薬品によるDKDラットへの保護作用を観察した。
【0028】
実施例2. テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラットの体重、摂食及び飲水への影響
毎週、作製されたモデルラットの一般的な状況及び体重の変化を観察し、一般的な状況には、ラットの活動状況、精神状態、毛色、摂食、飲水量や尿量などが含まれる。毎週、飲水量及び飼料摂取量を記録した。
テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発糖尿病性腎臓病ラットの体重への影響については、
図1aに示されるように、TBN及びTN−2は、糖尿病性腎臓病ラットの体重にもほとんど影響がなく、糖尿病性腎臓病ラットの飲水量及び飼料摂取量の変化については、それぞれ
図1b及び
図1cに示されるように、TBN及びTN−2を投与した治療群のDKDラットでは、飲水量及び摂食がモデル群のそれよりも有意に低く、それは、TBN及びTN−2がDKDラット糖尿病の進行を遅らせて、DKDラットの多飲多食の糖尿病症状を改善できることを示した。
【0029】
実施例3. テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラット網膜病変への影響
実験には、毎日投与するときにラット網膜病変の状況を観察し、群別にラットの網膜病変の発症日を記録した。
網膜病変は、糖尿病性腎臓病の一般的な合併症の1つであり、糖尿病性腎臓病との相関性が高かった。テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラット網膜病変への影響については、表1に示されるように、TBN及びTN−2を投与することで治療を施した後、DKDラットでは、網膜病変の発症例数が減少し、網膜病変の発症時刻が遅くなり、研究結果から明らかなように、テトラメチルピラジン誘導体TBN及びTN−2が網膜病変の発生を減少させ、且つ遅らせることができた。
【0030】
実施例4. テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラットの血糖及び尿タンパク質への影響
実験には、モデル作製後及び投与後に、それぞれラットの血糖をモニタリングして、24hの尿を1回収集して、尿タンパク質を検出した。
テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラットの血糖への影響については、
図2aに示されるように、ラットでは、STZにより誘発されてから3週間後、血糖が有意に上昇し、TBN及びTN−2の投与により治療を施してから6週間後、血糖が有意に低下した。TBN及びTN−2によるSTZ誘発DKDラットの尿タンパク質への影響については、
図2bに示されるように、TBN及びTN−2の投与により治療を施した後、DKDラットの尿中の尿タンパク質の含有量が大幅に低下し、且つ、TBNとロサルタンを併用する場合は、TBN単独投与による治療の場合及びロサルタン単独投与による治療の場合よりも好ましかった。
【0031】
実施例5. テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラットの血清生化学的指標への影響
投与6週間後、ラットを麻酔して腹部大動脈から採血し、1h静置後、3000rmpで10min遠心処理し、−70℃で保存した。自動生化学分析装置を使用して、血清クレアチニン、尿素窒素、コレステロール及びトリグリセリドのレベルを測定した。
血清クレアチニン、尿素窒素、コレステロール及びトリグリセリドのレベルは、体の脂質代謝、糖類の代謝や腎臓機能などの状況を反映できる。テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラットの血清クレアチニン、尿素窒素、コレステロール及びトリグリセリドの影響については、
図3に示されるように、TBN及びTN−2は、血清におけるクレアチニン(
図3a)、尿素窒素(
図3b)、コレステロール(
図3c)及びトリグリセリド(
図3d)のレベルを用量依存的に大幅に低下させることができ、STZ誘発糖尿病性腎臓病ラットの脂質代謝、糖類の代謝や腎臓機能を改善する作用を示した。
【0032】
実施例6. テトラメチルピラジン誘導体による、STZ誘発DKDラットの腎臓指数への影響
投与6週間後、オートクレーブで滅菌した手術器具を用いて腹腔を開いて腎臓組織を一括して摘出し、生理食塩水で洗浄し、ろ紙で水を吸い取った後、精密天びんで重量を量り、次に使用時まで−80℃の冷蔵庫で保存した。腎臓指数(相対腎臓重量)は、腎臓重量(mg)/体重(g)=BW/KWであった。
糖尿病性腎臓病の病理学的プロセスの進行に伴い、糸球体基底膜が徐々に厚くなり、メサンギウムがより広くなり、最終的に腎限局性尿細管萎縮及び間質性線維化まで進行し、腎不全の段階に入り、腎臓指数は、糖尿病性腎臓病の病理学的状況をある程度で反映できた。テトラメチルピラジン誘導体によるSTZ誘発DKDラットの腎臓指数への影響については、
図4に示されるように、TBN及びTN−2は、DKDラットの腎臓指数を大幅に低下させ、それは、TBN及びTN−2が糖尿病性腎臓病の進行を遅らせることを示した。