(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正規物品の画像は、当該正規物品を複数の方向から撮影した複数の画像、または当該正規物品に対する複数色の画像であることを特徴とする請求項1又は2に記載の損傷判断装置。
【背景技術】
【0002】
近年、リユース品を扱うインターネット販売サイトが伸長しており、古着や書籍、映像ソフト、家具などリユース(中古)品の取引市場が盛んになってきている。中古品市場の高まりは、単に商品価格が廉価である事だけに起因するものではなく、環境負荷を減らすリデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再生)に対する消費者意識の高まりも大きく関係している。そして、このような中古品の市場においては、故障した部位を修理して販売する事も行われている。中古品の商取引では、当該修理が可能か否か、及び当該修理に要する費用について情報が必要不可欠である。
【0003】
この故障部位の判断については、従来、写真画像の利用が検討されている。例えば特許文献1(特開2002−149866号公報)では、ユーザの使用する機器のうち不具合が生じた不具合機器を撮影した電子画像と、前記不具合機器の属性を示す不具合機器属性情報を使用して、ユーザが使用する機器の種々の不具合に対応する技術が提案されている。即ち、サーバが受信した撮影画像を2値化処理して撮影機器の外形を割出し、機器管理DBが有する機器の外形データとの間でマッチング処理を行い、不具合機器に該当すると推測される機器を選出し、その選出した機器と、ユーザからの撮影画像及び機器属性情報とを表示し、その選出した機器から、ユーザ又はサーバオペレータが不具合機器を特定する技術が提案されている。
【0004】
また、写真を使用して欠損などの不具合を判断する技術は、特許文献2(特開2002−240953号公報)で提案されている。この文献では、製品運送中に生じた不具合を検出するべく、端末装置から送信される運送前の製品の画像情報(運送前画像情報)を受信する運送前画像情報受信手段と、端末装置から送信される運送後の製品の画像情報(運送後画像情報)を受信する運送後画像情報受信手段と、前記運送前画像情報と前記運送後画像情報とに基づいて製品運送に伴う不具合が発生したか否かを判定する判定手段と、を備えたサーバ装置を提案している。
【0005】
そして中古品の売買は、従来から自動車分野において広く行われている。この為、当該自動車分野においても、写真撮影した画像に基づいて損傷を解析する技術が提案されている。例えば特許文献3(特開2006−85270号公報)では、携帯端末で撮影した車輌の事故等による変形を分析することができる画像分析システムとして、撮影対象となる対象物体の物体IDと該物体IDに対応する対象物体の立体図形の輪郭を網目状の線で表現したワイヤフレームデータとを格納するデータテーブルと、該データテーブルに格納したワイヤフレームデータを基準として撮影した画像と前記データテーブルに格納したワイヤフレームデータとを比較し、両データの差異のある領域を特定するデータベースサーバとを備える画像分析システムが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる損傷判断装置30と、これを用いた修理・補修費用演算装置50及び期間・スケジュール演算装置40を具体的に説明する。特に本実施の形態は、自動車の中古部品の商取引を中心として説明しているが、他の物品を対象とする事もできる。また本発明の要旨を逸脱しない範囲において、実施形態を適宜変更する事もできる。
【0019】
図1は、本実施の形態にかかる損傷判断装置30の処理内容を示す全体構成図である。本実施の形態にかかる損傷判断装置30は、
図1に示す様に、インターネットその他の情報ネットワーク520を使用して、各種の情報を送受信するように構成している。具体的には、判断対象となる物品(以下「対象物品10」とする)の販売者や所有者などの第1ユーザー11から送信された、当該物品を撮影した撮影画像を取得し、取得した撮影画像を使用して情報ネット上に存在する情報を画像検索して、当該対象物品10について、欠損の有無、損傷の有無、損傷の程度及び色(たとえば、変色)の少なくとも何れかを検査する。そして欠損、損傷又は変色が有る場合には、その欠損箇所、損傷個所や損傷程度又は変色を判断するように構成している。
【0020】
本実施の形態にかかる一連の処理を開始するにあたっては、最初に物品を撮影した画像(撮影画像)を取得する事が必要である。この撮影画像の取得は、カメラ付き携帯電話で撮影した画像をネットワーク経由で取得する他、コンピュータ等の端末からネットワークを介して取得した撮影画像であって良い。更に、当該損傷判断装置30が取得する撮影画像は、インターネット上に公開されている撮影画像、例えばEコマースサイト(例えば、中古品売買サイト)に登録されている画像であっても良い。商品として中古品が掲載されており、それが損傷などを有する場合に、その程度や修理費用などを知りたい場合もある為である。
【0021】
上記の様に各種物品の撮影画像を取得する場合、撮影画像データ取得手段32が取得する撮影画像データは、物品の欠損箇所、損傷個所、損傷程度及び色の少なくとも何れかが撮影されている必要がある。本実施形態にかかる損傷判断装置30は、撮影画像に基づいて、これらを判断する為である。
【0022】
また上記対象物品10は、第1ユーザー11によって写真撮影されて、前記損傷判断装置30に送信される。第1ユーザー11としては、対象物品10の所有者や販売者が考えられ、例えば個人である他、中古品(部品や完成品)の販売業者や購入業者などが考えられる。これら第1ユーザー11は、カメラ付き携帯電話やカメラを使用して対象物品10を撮影する事ができ、当該撮影画像を、カメラ付き携帯電話やコンピュータなどの端末を使用し、インターネットなどの情報通信ネットワークを介して、前記損傷判断装置30に送信する事ができる。
【0023】
上記の処理によって取得した撮影画像データは、画像判断手段において、コンピュータで実行される人工知能33によって解析され、当該撮影された物品の欠損箇所、損傷個所、損傷程度及び色の少なくとも何れかが判断される。
【0024】
上記画像判断手段の人工知能33によって実行される物品の欠損箇所、損傷個所、損傷程度及び色の少なくとも何れかの判断は、例えば、当該人工知能33が、撮影画像データに基づいて画像検索を行い、撮影対象となった物品を特定した上で実行する事ができる。そして当該特定した物品についての、物品の基準となる形状又は色を備える正規物品の画像を取得して、これと、取得した撮影画像データ(損傷などが写っている撮影画像データ)とを対比する事により、撮影された物品の欠損箇所、損傷個所、損傷程度及び色の少なくとも何れかを判断する事ができる。これにより人工知能33を利用することによる、精度を高めて自動化処理を実現するとの課題を解決することができる。
【0025】
上記人工知能33による画像検索は、ネットワーク520(インターネットやイントラネットを含む)で接続されたコンピュータに保存されているデータ等を対象とすることができる。また、この損傷判断装置30がデータベースを伴っている場合には、当該データベースを対象とする事ができる。この画像検索では、検索対象となる物品の基準となる形状または色を備える正規状態の物品画像を直接取得する他、画像検索によって当該物品の名称や型式等を取得し、この名称や型式に基づいて、前記正規状態の物品画像を抽出するように構成する事ができる。ここで、当該基準となる形状とは、損傷や欠損の無い形状であり、基準となる色とは変色が生じていない色とすることができる。そして正規状態の物品画像は、損傷や欠損を判断する場合には基準となる形状に着目して取得し、色を判断する場合には基準となる色に着目して取得するように構成する事ができる。当然のことながら、当該画像検索では基準となる形状及び色の両方に着目して正規状態の物品画像を取得するように構成する事もできる。
【0026】
上述した欠損や損傷の有無、及びその個所や程度、或いは色の情報は、当該対象物品10を特定する情報と共に損傷判断装置30が備える記憶手段に保存される。これにより、購入者や保険業者などの第2ユーザー21は、当該損傷判断装置30にアクセスして、対象物品10を検索し、当該対象物品10の情報として、当該対象物品10に関する欠損や損傷の有無、及びその個所や程度、或いは色の情報も取得する事ができる。
【0027】
本実施の形態にかかる損傷判断装置30において、対象物品10として、
図1には扇風機などの電化製品、椅子等の家具、自動車、及び自動車の部品を示しているが、これらに限定されるものではなく、一定の形態を有する各種物品を対象とする事ができる。
【0028】
即ち、本実施の形態にかかる損傷判断装置30は、日用品、家具、電化製品、車両、航空機、船舶などの一定の形状を有する様々な物品について使用する事ができる。但し、前記撮影画像が可視光を撮影した画像である場合には、外から見える形状や構造、或いは色についての損傷などを判断する事になる。一方で撮影画像がX線等の様に物品を透過する光を撮影したものである場合には、外見のみでなく内部構造についても損傷などを判断する事ができる。更に紫外光や赤外光等のように一定の波長を有する光、又はレーザー光等の様に指向性を有する電磁波を使用した撮影画像である場合には、表面粗さなどの目に見えない特性について損傷を判断する事ができる。
【0029】
図2は、この損傷判断装置30、期間・スケジュール演算装置40及び修理・補修費用演算装置50における処理内容の一例を示すシーケンス図である。この図に示す様に、当該損傷判断装置30による処理は、第1ユーザー11からの「利用要求送信」ステップS1によって開始することができる。特にこの実施の形態では、損傷判断装置30との会話形式で写真画像をアップロードするように構成しているが、その他にも、電子メールに添付して写真画像を送信するように構成しても良い。また、第1ユーザー11からのアクセス要求に際しては、ユーザー認証等を実施する事もできる。特にユーザー登録を行うか、少なくとも返信用メールアドレスを登録しておくことにより、損傷判断装置30は、送信された撮影画像の受信を契機として一意の受信IDを第1ユーザー11の端末に送信する事ができる。
【0030】
損傷判断装置30は、第1ユーザー11から送信された利用要求を受け付けると(利用要求送信ステップS1)、「物品選択、損傷部選択、撮影方向指示」ステップS2において、対象物品10の選択、損傷部位の選択等の入力を要求し、更に当該入力情報に基づいた撮影方向の指示情報を第1ユーザー11に提供する事ができる。但し、必ずしもステップS2の利用要求を必要とするものではなく、これを省略する事もできる。例えば第1ユーザー11からの撮影画像の送信によって、当該損傷判断装置30は処理を開始する事もできる。この場合には、当該第1ユーザー11の特定は、画像が送信されたメールアドレスによって行う事ができる。特に対象物品10の選択などを要求すること無く、単に写真画像を受信して処理を開始する損傷判断装置30とした場合には、対象物品10を撮影して、これを送信するだけで、撮影された対象物品10の欠損や損傷の有無、及びその個所や程度、或いは変色を損傷判断装置30によって実行される人工知能33が判断する事ができ、第1ユーザー11における対象物品10に関する知識を不要とし、物品選択の手間を省略する事ができる。
【0031】
図3は、上記
図2に示した処理内容における物品選択処理の流れを示す画面遷移図である。この図に示す様に、本実施の形態では、第1ユーザー11が操作する端末において、物品を選択するように構成している。特に、この物品の選択では、「自動車」、「電化製品」、「家具」、「運動用具」、「釣り具」、「時計」、「自転車」、「船舶」等の様に、対象物品10を大きい概念で分類しており、個々の分類におけるメーカーや型式等の詳細項目の特定を不要としている。そして対象物品10を選択した後においては、欠損や損傷、或いは変色のある部分を特定する損傷部選択画面を第1ユーザー11の端末に表示させる。この損傷部選択画面では、物品選択画面で選択した物品に対応して、損傷部となり得る項目を表示することで、欠損や損傷のある部分を特定できるように構成している。特にこの
図3では、自動車を選択した場合において、その損傷部位として、当該自動車に対応する「フロント」、「リヤ」、「右サイド」、「左サイド」等の様に表示するように構成している。
【0032】
そして、このように対象物品10のカテゴリーを選択し、その欠損や損傷部位を特定した後においては、これらの情報に基づいて、撮影ガイド手段35で対象物品10の撮影方向を抽出し、第1ユーザー11の端末に表示させる。これにより、第1ユーザー11は、「写真撮影」ステップS3において、この撮影方向指示画面に従って対象物品10を撮影し、指定された全ての方向からの撮影を行う事ができる。
【0033】
上記撮影ガイド手段35は、画像を撮影する撮影手段(損傷判断装置30の外部に位置する)に対して、撮影の仕方をガイドする撮影ガイド情報を送信する為に機能する。各種物品を対象として、その欠損や損傷等を撮影する際には、その撮影の仕方によって異なるように写る事がある為である。かかる撮影ガイド手段35は、撮影対象となる物品ごとに、更には当該物品における欠損や損傷個所ごとに、どの部位を、どの方向から、どの大きさで撮影するか等を表示する説明や撮影枠等を撮影ガイド情報として送信するように構成する事ができる。その他にも、当該対象物品10を撮影する撮影装置におけるレンズやシャッタ―などの撮影機構を制御する為の情報を撮影ガイド情報として送信し、対象物品10を撮影する撮影機器を制御する事もできる。これにより、様々な物品を対象とする場合であっても、その物品に適した画像を撮影できるようにするとの課題を解決することができる。
【0034】
かかる撮影ガイド情報を撮影手段に送信する事により、撮影対象となる物品ごとに、或いは欠損や損傷の位置や程度ごとに、最適な撮影画像を取得する事ができる。よって人工知能33における解析の精度を高める事ができる。
【0035】
以上のようにして、撮影ガイド手段35の指示のもとに撮影が完了した後は、「撮影画像送信」ステップS4において、当該複数の撮影画像を前記損傷判断装置30に送信する。かかる物品選択の処理、損傷部位選択の処理、及び撮影方向の指示処理は、前記
図2に示した様に、損傷判断装置30との対話形式で実行する事ができるが、その他にも、例えば第1ユーザー11が操作する端末に導入したアプリケーションでの処理によって実行することもできる。
【0036】
上記の通り第1ユーザー11側の端末から撮影画像を損傷判断装置30に送信すると、損傷判断装置30においては、「撮影画像受信」ステップS5において、これを受信する。そして当該撮影画像における特徴部を「特徴部抽出」ステップS6で抽出し、当該撮影画像の特徴部を検索キーとして、複数の画像データを保持する画像データベース又はインターネット上において画像検索を行う。かかる画像検索の実行は、コンピュータからなる損傷判断装置30で実行される人工知能33によって行う事ができる。当該人工知能33による画像検索は、当該撮影画像の色、形状、テクスチャ、特徴点などさまざまな特徴量を用いて類似度を判定する類似画像検索技術であるCBIR (Content Based Image Retrieval)法で行う他、画像にテキストデータを紐付けて、テキストを元に検索するTBIR (Text Based Image Retrieval)法、或いはCBIR法とTBIR法の併用などによって行う事ができる。また、その他の画像検索方法によって行う事も当然に可能である。
【0037】
上記画像データベースは、対象物品10について、方向や色などを異ならせた複数の画像(以下、「疑似画像」とする。)を保持するデータベースとして構築することができる。例えば、対象物品10が自動車のバンパーであれば、上下左右、又は斜め方向など様々な方向から見た画像によって構成することができ、更に色が異なる様々なパターンの画像によって構成することができる。かかる疑似画像は、当該損傷判断装置において作成する他、インターネットなどの情報通信ネットワーク上に存在する他のコンピュータを利用して、分散コンピューティングによって作成することもできる。特に分散コンピューティングを利用することにより、スループットが向上し、様々な疑似画像を効率的に作成することができる。
【0038】
図4は、上記人工知能33における画像検索処理を示す略図である。この図に示す様に、第1ユーザー11が操作する端末によって、欠損や損傷等を有する対象物品10の撮影画像を損傷判断装置30に送信する。この損傷判断装置30では、「物品検索・抽出」ステップS7において、人工知能33によって、送信された画像に近似した画像を検索する。この時、検索によって抽出する画像は、損傷の無い(特定した物品の基準となる形状および色を備える)画像を抽出する。かかる損傷の無い画像の抽出は、同種の画像を複数検索した後において、第1ユーザー11から送信された画像と最も共通点の多い画像を特定する事によって行う事ができる。この図では、対象物品10と、輪郭や、窓の形状、及びドアノブの位置や形状などの特徴部が共通する画像を抽出するように構成している。特に、この「物品検索・抽出」ステップS7では、前記複数の疑似画像を保持する画像データベースを構築した上で、当該画像データベースに対して、前記「撮影画像受信」ステップS5で受信した撮影画像で画像検索を行うことにより、より迅速かつ正確に、損傷のない画像を抽出することができる。
【0039】
上記の様に、対象物品10の撮影画像に基づいて、当該対象物品10における損傷の無い画像(物品の基準となる形状または色を備える正規物品の画像)を検索・抽出した後においては、「損傷部抽出」ステップS8において、当該撮影画像についての損傷の有無や、損傷の程度を比較判断する。
図5は、この損傷の有無や損傷の程度の判断処理を示す略図である。本実施の形態では、前記した画像検索処理によって抽出した画像と、第1ユーザー11から送信された対象物品10の撮影画像とを対比する事により、損傷の有無や損傷箇所・程度を抽出し、判断する事ができる。本実施の形態では、両画像を対比する事により、対象物品10は、ドアのパネル部分が凹んでいる事を判断する事ができる。かかる判断は前記
図2に示す様に損傷判断装置30によって行う事ができる。
【0040】
そして、当該損傷判断装置30は、物品の欠損箇所、損傷箇所・損傷程度及び変色の少なくとも何れかを判断した後において、これを修理又は補修するための費用を演算することができる。かかる修理費用の演算は、上記損傷判断装置30を用いて構成された修理・補修費用演算装置50によって行う事ができる。
【0041】
たとえば中古品(部品も含む。以下同じ。)の流通に際しては、欠損や損傷した状態で取引されることもあり、使用者において当該物品の欠損や損傷が気にならない場合や、取引対象となる物品から部品を取り出して使用する場合などがある。そこで本実施の形態では、撮影された物品の欠損、損傷又は色を修理又は補修するのに要する費用を演算する修理・補修費用演算装置を提供する事を課題とすると共に、当該課題を解決して、撮影された物品の欠損、損傷又は色を修理又は補修するのに要する費用を演算する修理・補修費用演算装置を提供することができる。
【0042】
この修理・補修費用演算装置50は、損傷判断装置30によって抽出・判断した物品の欠損箇所、損傷個所、損傷程度及び色の少なくとも何れかの判断結果に基づいて、「修理費用算出」ステップS9において、部品工数抽出手段が当該物品の修理又は補修に要する部品や工数を抽出するように構成する事ができる。特に、前記対象物品が車両又は車両部品(外板等)であり、前記損傷判断装置30の判断結果が凹み、変色又は傷などの損傷である場合には、前記「損傷部抽出」ステップS8では、当該損傷の程度も人工知能によって特定し、当該損傷の程度を考慮した上で、「修理費用算出」ステップS9を実行することができる。
【0043】
損傷の修理費用の算出では、交換部品や修理材料の選択、および作業工数の算出が必要になる所、これは当該損傷判断装置30又は外部のデータベースとして構成する事のできる部品・工数データベースを備えた部品工数抽出手段51によって行う事ができる。そして当該抽出した部品の価格や工賃は、夫々の価格や費用に基づいて、修理費用積算手段52によって算出する事ができる。かかる交換部品や修理材料の選択は、オペレータの操作によって行う事もできるが、人工知能33による処理によっても実施する事ができる。
【0044】
従来は損傷箇所・損傷範囲・程度を、オペレータが見積プログラムにおいて、画面上でマウス等のポインティングデバイスを使って指定したり、キーボードより入力したりすることで、修理費用や作業工数を計算していたが、そのためには、たとえば車両情報を予め指定することが前提条件であった(たとえば特開平10−329664号公報を参照)。これに対し、本実施形態によれば、撮影画像から類似画像を判別しているため、車両情報を自動的に取得することができる。
【0045】
部品工数抽出手段51の抽出結果を、修理費用積算手段52が積算する際には、工数に一定の値を乗算した値を工賃として積算し、また部品については部品の単価を必要個数に乗算した値を部品代として積算する事ができる。
【0046】
以上の様にして対象物品10について、損傷の有無や修理費用(部品代/工賃)を算出した後においては、これらの情報を、対象物品10の取引情報の1項目として販売サイト上に表示する事ができる(「販売サイト掲載」ステップS10)。
図6は、中古部品の販売画面を示す略図である。本実施の形態では、この図に示す様に、第1のユーザーから提供されるか、或いは他の中古部品流通サイトから取得した対象部品の情報とともに、当該損傷判断装置30が算出した修理費用を併記した情報(中古部品の販売情報)を表示している。その結果、
図5に示す様に、当該中古部品の販売情報にアクセス可能な第2ユーザー21(物品購入者)は、「閲覧・照会」ステップS11において当該情報にアクセスし、修理費用を併記した中古部品の販売情報を比較考量した上で、何れの対象物品10を購入するかを判断する事ができる。特に本実施の形態では、修理を要しないドアパネルは、部品価格25,000円で表示され、線キズなどの軽微な損傷を有するドアパネルでは、部品価格15,000円とその修理費用3,000円の合計18,000円が表示され、凹みを伴う損傷があるドアパネルでは、部品価格7,000円とその修理費用10,000円の合計17,000円が表示されている。そこで、第2ユーザー21は、この価格を比較考量した上で、何れのドアパネルを購入するかを特定する事ができる。特に、本実施の形態では、修理費用は参考価格として表示しており、当該修理を行わずに、損傷が残った状態において売買する事もできる。また、当該損傷の修理は、販売者側が修理した上で販売する事もできる。即ち、この実施の形態では、損傷の有無は問わずに定まる取引対象物品自体の価格と、当該取引対象物品の修理費用を別に表示することにより、前記のような販売方法を実現することができる。
【0047】
即ち、本実施の形態にかかる損傷判断装置30、より詳細には修理・補修演算装置によれば、損傷の状態や、その修理費用を確認した上で、中古部品の商取引を実現する事ができる。
【0048】
更に前記損傷判断装置30は、物品の欠損箇所、損傷箇所、損傷程度及び色の少なくとも何れかを判断した後において、これを修理又は補修する為の期間又はスケジュールを期間・スケジュール演算装置40によって演算することができる(「修理期間算出」ステップS12)。
【0049】
欠損又は損傷した物品を修理する場合、当該修理に要する期間も利用者の関心事の1つである。特に自動車などの車両の修理に際しては、その修理を保険会社が管理する事もあり、その場合には修理の進捗を管理する必要もある。そこで本実施の形態では、撮影された物品を修理又は補修するのに要する期間やスケジュールを演算する期間・スケジュール演算装置を提供する事を課題とすると共に、当該課題を解決して、撮影された物品を修理又は補修するのに要する期間やスケジュールを演算する期間・スケジュール演算装置を提供することができる。
【0050】
かかる期間・スケジュール演算装置40は、修理や補修に要する工数や平均期間を保持したデータベースを伴って構成する事ができる。このデータベースは、当該期間・スケジュール演算手段を構成するコンピュータが備える他、ネットワークで接続された外部に保持していても良い。また、修理や補修に別途部品や部材を要する場合には、当該部品や部材の在庫の有無や、在庫が無い場合の納品日を、ネットワークで接続された外部のコンピュータシステムから取得するように構成する事もできる。そして当該部品や部材の入手タイミングと、修理や補修に要する工数とにより、当該物品の修理・補修期間やスケジュールを演算する事ができる。
【0051】
以上のように演算した当該物品の修理・補修期間やスケジュールは、「修理状況照会」ステップS13において、修理・補修の依頼者だけでなく、第三者にも提供する事ができる。これにより、例えば修理・補修対象となる物品が車両である場合には、当該車両が契約している保険会社に提供する事もでき、保険会社においては、当該車両の期間・スケジュールなどを管理する事も可能になる。
【0052】
図7は、上記期間・スケジュール演算装置40による演算結果の表示画面を示している。この
図7に示す表示画面では、対象物品10を特定する為の「ユーザID」及び「物品ID」が表示されており、ユーザは、当該IDを入力する事により対象となる物品の修理・補修期間やスケジュールにアクセスする事ができる。また、当該表示画面には、前記損傷判断装置30が取得した物品の撮影画像を表示しており、これにより対象物品10の初期の状況を確認する事ができる。そして当該表示画面には、対象物品10の入庫日から完成予定日に至るまでの修理・補修の「作業内容」と、その「予定日」を、期間・スケジュール演算装置40の演算結果に従って表示させる。そして実際の作業状況に応じて、「進捗状況」の欄に、作業が完了した日付を入力するように構成している。これにより、特定のユーザが、アクセス可能な物品の修理・補修期間やスケジュールにアクセスし、現在の修理・補修状況を迅速に確認する事ができる。
【0053】
図8は上記本実施の形態にかかる損傷判断装置30の構成を示すブロック図である。かかる損傷判断装置30は、インターネットなどの情報通信網に接続する為の通信インターフェース31を備えており、当該通信インターフェース31には前記撮影画像データ取得手段32が接続されており、インターネットを介して第1ユーザー11が撮影した撮影画像データを取得する。取得した撮影画像データは、コンピュータで実行される人工知能33を備えた画像判断手段34に出力され、当該撮影された物品の欠損箇所、損傷個所、損傷程度及び色の少なくとも何れかが解析される。また、この画像判断手段34も前記通信インターフェース31に接続されており、これによりインターネットを介して画像検索を実施する事ができる。更に、この実施の形態に示す損傷判断装置30は、第1ユーザー11が操作する端末に対して撮影ガイド情報を送信する撮影ガイド手段35を備えており、これも通信インターフェース31に接続されている。
【0054】
また
図9は、本実施の形態にかかる期間・スケジュール演算装置40の構成を示すブロック図である。この図に示す期間・スケジュール演算装置40は、前記損傷判断装置30を用いて構成しており、更に前記画像判断手段の判断結果を取得して、撮影された物品の欠損、損傷又は色を修理又は補修する期間及びスケジュールの少なくとも何れかを演算する演算手段(期間・スケジュール演算手段41)を備えている。かかる期間・スケジュール演算装置40は、期間・スケジュール演算手段41を損傷判断装置30に組み込んで構成する事もできる。
【0055】
そして
図10は、本実施の形態にかかる修理・補修費用演算装置50の構成を示すブロック図である。この図に示す修理・補修費用演算装置50は、前記損傷判断装置30を用いて構成しており、更に前記画像判断手段の判断結果を取得して、撮影された物品の欠損、損傷又は色を修理又は補修するのに要する部品及び工数の少なくとも何れかを抽出する部品工数抽出手段51を備えている。そして、この部品工数抽出手段51の抽出結果に基づいて、部品価格や作業係数から修理費用を算出する修理費用積算手段52を備えて構成している。かかる部品工数抽出手段51や修理費用積算手段52は、その何れか又は両方を損傷判断装置30に組み込んで構成する事もできる。
【0056】
図11は、上記損傷判断装置30、期間・スケジュール演算装置40及び修理・補修費用演算装置50を構成するコンピュータハードウエア構成図である。ただし、
図11のコンピュータ500は、代表的な構成例を示したに過ぎず、上記した処理を実行する演算装置やメモリ及びプログラムを備える限りにおいて、専用の装置として構成しても良い。
【0057】
この
図11に示すコンピュータ500は、CPU501、メモリ502、音声出力装置503、ネットワークインタフェース504、ディスプレイコントローラ505、ディスプレイ506、入力機器インタフェース507、キーボード508、マウス509、外部記憶装置510、外部記録媒体駆動装置511、およびこれらの構成要素を互いに接続するバス512を含んで構成されている。
【0058】
CPU501は、コンピュータ500の各構成要素の動作を制御し、OSの制御下で、前記した人工知能における処置等の実行をコントロールし、その動作を制御する。メモリ502は通常、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)、および揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)から構成される。ROMには、コンピュータ500の起動時に実行されるプログラム等が格納される。RAMには、CPU501で実行され、各装置の処理を実行する為のアプリケーションプログラムや、データベースプログラム、それらのプログラムが実行中に使用するデータ(たとえば、データベースやファイルシステムから読み出されたデータやスクリプト)が一時的に格納される。
【0059】
音声出力装置503は、スピーカ等の、音声を出力する機器であり、通信インタフェース504は、各種の機器と情報交換する為のネットワーク520に接続するためのインタフェースである。ディスプレイコントローラ505は、CPU501が発する描画命令を実際に処理するための専用コントローラである。ディスプレイコントローラ505で処理された描画データは、一旦グラフィックメモリに書き込まれ、その後、表示部としてのディスプレイ506に出力される。
【0060】
入力機器インタフェース507は、キーボード508やマウス509、或いはタッチパッドなどの入出力デバイスから入力された信号を受信して、その信号パターンに応じて所定の指令をCPU501に提供する。キーボード508やマウス509は、プログラムの実行や設定などの操作を行う場合に必要となる。
【0061】
外部記憶装置510も本明細書における記憶手段の範疇に含まれる。かかる外部記憶装置510は、たとえばハードディスクドライブ(HDD)のような記憶装置で構成することができる。この装置内には上述したプログラムやデータが記録され、実行時に、必要に応じてそこからメモリ502のRAMにロードされる。
【0062】
外部記録媒体駆動装置511は、CD(Compact Disc)、MO(Magnet−Optical Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの可搬型の外部記録媒体530の記録面にアクセスして、そこに記録されているデータを読み取る装置である。
【0063】
上記本実施形態にかかる損傷判断装置30は、撮影画像データを取得する撮影画像データ取得手段32と、取得した撮影画像データを、コンピュータで実行される人工知能33によって解析して、当該撮影された物品の欠損箇所、損傷個所、損傷程度及び色の少なくとも何れかを判断する画像判断手段とを備えていることから、単に撮影画像を取得するだけで、物品の欠損の有無、損傷の有無、損傷の程度及び色の少なくとも何れかの特定を、人工知能33によって自動化する事ができる。よって、損傷した物品についての知識が無く、当該物品の特定が困難な場合であっても、困難なく、物品の欠損の有無、損傷の有無、損傷の程度及び色の少なくとも何れかを判断することができる。また、従前においては、損傷した物品や、物品の欠損の有無、損傷の有無、損傷の程度及び色の少なくとも何れかを特定するオペレータの配置が必要不可欠であった作業を簡素化し、当該作業を、コンピュータで実行される人工知能33によって自動化する事ができる。
【0064】
また、本実施形態にかかる期間・スケジュール演算装置40は、前記損傷判断装置30と、当該損傷判断装置30における画像判断手段の判断結果を取得して、撮影された物品の欠損又は損傷を修理又は補修する期間及びスケジュールの少なくとも何れかを演算する修理期間演算手段とを備えていることから、撮影画像データに基づいて、撮影された物品の修理又は補修するのに要する期間やスケジュールを演算することができる。これにより、当該物品の欠損又は損傷を修理又は補修する期間及びスケジュールを、利用者に対して迅速に提供する事ができる。
【0065】
そして、本実施形態にかかる修理・補修費用演算装置50は、上記損傷判断装置30と、当該損傷判断装置30における画像判断手段の判断結果を取得して、撮影された物品の欠損又は損傷を修理又は補修するのに要する部品及び工数を抽出する部品工数抽出手段と、当該部品工数抽出手段の抽出結果を積算する修理・補修費用積算手段とを備えていることから、撮影画像データに基づいて、撮影された物品の欠損、損傷又は色を修理又は補修するのに要する費用を演算する事ができる。これにより、オペレータを介する事なく、簡易かつ迅速に修理・補修費用を提供する事ができる。