(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954791
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】パイロット式給水弁
(51)【国際特許分類】
F16K 51/00 20060101AFI20211018BHJP
F16K 31/385 20060101ALI20211018BHJP
F16K 31/40 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
F16K51/00 Z
F16K31/385
F16K31/40 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-175079(P2017-175079)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-52651(P2019-52651A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】武部 重樹
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−200876(JP,U)
【文献】
特開2009−287700(JP,A)
【文献】
特開平07−224966(JP,A)
【文献】
特開昭57−163788(JP,A)
【文献】
特開2007−247823(JP,A)
【文献】
特開平01−255775(JP,A)
【文献】
特開2017−067127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 1/00−4/00
E03B 1/00−11/16
E03C 1/00−1/264
1/266−1/33
F16K 31/12−31/165
31/36−31/42
39/00−51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流入する流入口と、水が流出する流出口と、筒状の主弁座と、流入口に連通する、主弁座を囲う流入室と、流出口に連通する、主弁座で囲われる流出室とを有する弁筐と、主弁座の軸方向に対向させた状態で流入室を覆うように設けられ、主弁座から離隔したときに流入室と流出室とを連通させ、主弁座に着座したときに流入室と流出室との連通を遮断するダイヤフラム弁と、ダイヤフラム弁の主弁座とは反対の背面側に蓋部材によって画成される背圧室と、背圧室を流入口から流入室までの流入側経路に連通させるイコライザ通路と、背圧室を流出口から流出室までの流出側経路に連通させるパイロット通路と、パイロット通路を開通、遮断する電磁弁から成るパイロット弁とを備えるパイロット式給水弁であって、主弁座の軸方向が水平になる所定姿勢で弁筐が配置可能なものにおいて、
イコライザ通路として、第1イコライザ通路と、弁筐が前記所定姿勢のときに第1イコライザ通路よりも下方になる位置で背圧室に連通する第2イコライザ通路とが設けられ、第1イコライザ通路と第2イコライザ通路は、パイロット弁の開弁時に背圧室からパイロット通路を介して流出側経路に流出する水量よりも流入側経路から第1と第2の両イコライザ通路を介して背圧室に流入する水量が少なくなるように形成され、
第2イコライザ通路は、弁筐が前記所定姿勢のときに蓋部材の下端になる部分に形成した孔を介して背圧室に連通するように構成されることを特徴とするパイロット式給水弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を使用する機器に設けられるパイロット式給水弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパイロット式給水弁は、水が流入する流入口と、水が流出する流出口と、筒状の主弁座と、流入口に連通する、主弁座を囲う流入室と、流出口に連通する、主弁座で囲われる流出室とを有する弁筐と、主弁座の軸方向に対向させた状態で流入室を覆うように設けられ、主弁座から離隔したときに流入室と流出室とを連通させ、主弁座に着座したときに流入室と流出室との連通を遮断するダイヤフラム弁と、ダイヤフラム弁の主弁座とは反対の背面側に蓋部材によって画成される背圧室と、背圧室を流入口から流入室までの流入側経路に連通させるイコライザ通路と、背圧室を流出口から流出室までの流出側経路に連通させるパイロット通路と、パイロット通路を開通、遮断する電磁弁から成るパイロット弁とを備えている。このものでは、パイロット弁を閉弁させて、パイロット通路を遮断すると、流入側経路からイコライザ通路を介して背圧室に流入する水が背圧室に封じ込められ、背圧室の内圧上昇によりダイヤフラム弁が主弁座に着座、即ち、閉弁して止水される。また、パイロット弁を開弁させて、パイロット通路を開通させると、背圧室内の水がパイロット通路を介して流出側経路に流出し、背圧室の内圧低下によりダイヤフラム弁が主弁座から離隔、即ち、開弁して給水される。
【0003】
従来、このようなパイロット式給水弁において、主弁座の軸方向が水平になる姿勢で弁筐を配置するものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、パイロット式給水弁は、通水して各種検査を行った後、水抜きすると共に水抜きの最後にパイロット弁を開弁させた状態でエアブローを行って出荷される。ここで、主弁座の軸方向が水平になる姿勢で弁筐が配置されていると、イコライザ通路と同レベル以下の背圧室の部分に水が残った状態で出荷される場合がある。そして、出荷から使用開始までの期間が長いと、背圧室内の残水が腐ってスライムが発生し、イコライザ通路がスライムによって目詰まりしてしまうことがある。すると、背圧室にイコライザ通路を介して水が流入しなくなるため、パイロット弁を閉弁しても、背圧室の内圧が上昇せず、ダイヤフラム弁が閉弁されずに止水不良を生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−287700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、主弁座の軸方向が水平になる姿勢で弁筐を配置しても、スライムに起因する止水不良の発生を防止できるようにしたパイロット式給水弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、水が流入する流入口と、水が流出する流出口と、筒状の主弁座と、流入口に連通する、主弁座を囲う流入室と、流出口に連通する、主弁座で囲われる流出室とを有する弁筐と、主弁座の軸方向に対向させた状態で流入室を覆うように設けられ、主弁座から離隔したときに流入室と流出室とを連通させ、主弁座に着座したときに流入室と流出室との連通を遮断するダイヤフラム弁と、ダイヤフラム弁の主弁座とは反対の背面側に蓋部材によって画成される背圧室と、背圧室を流入口から流入室までの流入側経路に連通させるイコライザ通路と、背圧室を流出口から流出室までの流出側経路に連通させるパイロット通路と、パイロット通路を開通、遮断する電磁弁から成るパイロット弁とを備えるパイロット式給水弁であって、主弁座の軸方向が水平になる所定姿勢で弁筐が配置可能なものにおいて、イコライザ通路として、第1イコライザ通路と、弁筐が前記所定姿勢のときに第1イコライザ通路よりも下方になる位置で背圧室に連通する第2イコライザ通路とが設けられ、第1イコライザ通路と第2イコライザ通路は、パイロット弁の開弁時に背圧室からパイロット通路を介して流出側経路に流出する水量よりも流入側経路から第1と第2の両イコライザ通路を介して背圧室に流入する水量が少なくなるように形成され
、第2イコライザ通路は、弁筐が前記所定姿勢のときに蓋部材の下端になる部分に形成した孔を介して背圧室に連通するように構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、弁筐を前記所定姿勢で配置しても、検査工程後の水抜き及びエアブローで第2イコライザ通路の連通箇所より上方の背圧室の部分の水は確実に排出される。そのため、出荷から使用開始までの間に背圧室内の残水が腐ってスライムが発生して、第2イコライザ通路の目詰まりを生じても、第2イコライザ通路より上方位置で背圧室に連通する第1イコライザ通路は目詰まりしない。その結果、流入側経路から第1イコライザ通路を介して背圧室に流入する水により、パイロット弁の閉弁時に背圧室の内圧が確実に上昇してダイヤフラム弁が閉弁し、止水不良の発生を防止できる。
【0009】
尚、第1と第2の両イコライザ通路を設けても、両イコライザ通路を介して背圧室に流入する水量がパイロット通路を介して流出側経路に流出する水量よりも少ないため、パイロット弁の開弁時には背圧室の内圧が低下してダイヤフラム弁が開弁し、給水不良を生じない。
【0010】
また、本発明において、第2イコライザ通路は、
上記の如く、弁筐が前記所定姿勢のときに蓋部材の下端になる部分に形成した孔を介して背圧室に連通するように構成される
ため、弁筐を前記所定姿勢で配置しても、背圧室内の残水量を可及的に少なくすることができ、衛生的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態のパイロット式給水弁の切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、水を使用する機器、例えば、給湯装置に、浴槽に湯張りする湯張り弁等として設けられる本発明の実施形態のパイロット式給水弁を示している。このパイロット式給水弁の弁筐1は、水が流入する流入口11aと、水が流出する流出口12aと、筒状の主弁座13と、流入口11aに連通する、主弁座13を囲う流入室11bと、流出口12aに連通する、主弁座13で囲われる流出室12bとを有している。尚、弁筐1は、主弁座13の軸方向が水平になり、流入口11aが下方を向く所定姿勢で配置される。
【0013】
また、パイロット式給水弁は、主弁座13の軸方向に対向させた状態で流入室11bを覆うように設けられたダイヤフラム弁2と、ダイヤフラム弁2の主弁座13とは反対の背面側に蓋部材3によって画成される背圧室4とを備えている。そして、ダイヤフラム弁2が主弁座13から離隔して開弁したときに、流入室11bと流出室12bとが連通して給水され、また、ダイヤフラム弁2が主弁座13に着座して閉弁したときに、流入室11bと流出室12bとの連通が遮断されて止水されるようにしている。
【0014】
ダイヤフラム弁2は、主体となるダイヤフラム21と、ダイヤフラム21の中央部背面に取付けられた硬質ディスク22とで構成されている。ダイヤフラム21の周縁部は、背面側から蓋部材3の周縁部で押え付けられている。硬質ディスク22には、ダイヤフラム21を貫通して主弁座13に挿入可能なガイド突起22aが形成されると共に、蓋部材3の内面に突設したピン部31が内挿される背面のガイド凹孔22bが形成され、ダイヤフラム弁2が傾き等を生ずることなく主弁座13の軸方向に変位するようにしている。
【0015】
パイロット式給水弁は、更に、背圧室4を流入口11aから流入室11bまでの流入側経路11に連通させる後述するイコライザ通路と、背圧室4を流出口12aから流出室12bまでの流出側経路12に連通させるパイロット通路6と、パイロット通路6を開通、遮断する電磁弁から成るパイロット弁7とを備えている。パイロット弁7を閉弁させて、パイロット通路6を遮断すると、流入側経路11からイコライザ通路を介して背圧室4に流入する水が背圧室4に封じ込められ、背圧室4の内圧上昇によりダイヤフラム弁2が閉弁(主弁座13に着座)し、また、パイロット弁7を開弁させて、パイロット通路6を開通させると、背圧室4内の水がパイロット通路6を介して流出側経路12に流出し、背圧室4の内圧低下によりダイヤフラム弁2が開弁(主弁座13から離隔)する。
【0016】
パイロット通路6は、蓋部材3の上端部(弁筐1が上記所定姿勢のときに蓋部材3の上端になる部分)に形成した、背圧室4に連通する溝61と、弁筐1に形成した、溝61から水平にのびる上流側の孔62と、同じく弁筐1に形成した、孔62に交差して下方にのび、流出側経路12の一部たる流出室12bに連通する下流側の孔63とで構成されている。
【0017】
パイロット弁7は、上流側の孔62と下流側の孔63との交差部に設けられた弁室71と、弁室71の孔63との連通部に設けられた弁座72と、弁室71に設けられた弁座72に対向する弁体73と、弁体73を連結したプランジャ74aを有する電磁ソレノイド74とで構成されている。常時は弁体73が弁座72に着座して、パイロット弁7が閉弁されており、パイロット通路6が遮断される。そして、電磁ソレノイド74に通電したときに、弁体73が弁座72から離隔してパイロット弁7が開弁され、パイロット通路6が開通する。
【0018】
ところで、パイロット式給水弁を組み込んだ機器の製造後は、通水して各種検査を行い、その後で水抜きすると共に水抜きの最後にパイロット弁7を開弁させた状態でエアブローを行って出荷される。ここで、本実施形態の如く弁筐1が上記所定姿勢(主弁座13の軸方向が水平になる姿勢)で配置されていると、イコライザ通路と同レベル以下の背圧室4の部分に、水が残った状態で出荷される場合がある。そして、出荷から使用開始までの期間が長いと、背圧室4内の残水が腐ってスライムが発生し、イコライザ通路がスライムによって目詰まりする可能性がある。
【0019】
そこで、本実施形態では、イコライザ通路として、第1イコライザ通路5
1と、弁筐1が上記所定姿勢のときに第1イコライザ通路5
1よりも下方になる位置で背圧室4に連通する第2イコライザ通路5
2とを設けている。ここで、第1イコライザ通路5
1は、背圧室4を流入側経路11の一部たる流入室11bに連通するようにダイヤフラム弁2に形成した孔で構成されている。また、第2イコライザ通路5
2は、蓋部材3の下端部(弁筐1が上記所定姿勢のときに蓋部材3の下端になる部分)に形成した、背圧室4に連通する孔51と、弁筐1に形成した、孔51を流入側経路11の一部たる流入口11aと流入室11bとの間の通路部分に連通する孔52とで構成されている。尚、孔51は、蓋部材3の下端部に、背圧室4の下端から下方にのびるように形成した孔部51aと、この孔部51aに交差して孔52に連通するように水平にのびる孔部51bとで構成されている。また、孔部51aの下端は、蓋部材3の外面に開口するため、栓体51cで閉塞されている。
【0020】
上記の如く弁筐1が上記所定姿勢のときに第1イコライザ通路5
1よりも下方になる位置で背圧室4に連通する第2イコライザ通路5
2を設ければ、弁筐1を上記所定姿勢で配置しても、検査工程後の水抜き及びエアブローで第2イコライザ通路5
2の連通箇所より上方の背圧室4の部分の水は確実に排出される。そのため、出荷から使用開始までの間に背圧室4内の残水が腐ってスライムが発生し、第2イコライザ通路5
2の目詰まりを生じても、第2イコライザ通路5
2より上方位置で背圧室4に連通する第1イコライザ通路5
1は目詰まりしない。その結果、流入側経路11から第1イコライザ通路5
1を介して背圧室4に流入する水により、パイロット弁7の閉弁時に背圧室4の内圧が確実に上昇してダイヤフラム弁2が閉弁し、止水不良の発生を防止できる。更に、蓋部材3の下端部に形成した孔51を介して背圧室4に連通するように第2イコライザ通路5
2を構成しているため、背圧室4内の残水量を可及的に少なくすることができ、衛生的である。
【0021】
また、第1イコライザ通路5
1と第2イコライザ通路5
2は、パイロット弁7の開弁時に背圧室4からパイロット通路6を介して流出側経路12に流出する水量よりも流入側経路11から第1と第2の両イコライザ通路5
1,5
2を介して背圧室4に流入する水量が少なくなるように形成されている。そのため、第1と第2の両イコライザ通路5
1,5
2を設けても、パイロット弁7の開弁時には背圧室4の内圧が低下してダイヤフラム弁2が開弁し、給水不良を生じない。
【0022】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、パイロット通路6を弁筐1に形成した上流側と下流側の孔62,63を経由して背圧室4と流出室12bとを連通するように構成しているが、パイロット通路6の流出側経路12に対する連通箇所は、流出室12bと流出口12aとの間の通路部分であってもよい。また、ダイヤフラム弁2の中央部に背圧室4と流出室12bとを連通するように形成する孔でパイロット通路を構成することも可能である。この場合、パイロット弁は、背圧室4内でダイヤフラム弁2の中央部の孔開設箇所に対向する弁体を備えるものとすればよい。
【0023】
更に、第1イコライザ通路5
1と第2イコライザ通路5
2との間で背圧室4に連通するように第3のイコライザ通路を設けてもよい。また、弁筐1に、流入室11bとパイロット通路6の上流側の孔62とを連通する孔を形成し、この孔で第1イコライザ通路を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…弁筐、11…流入側経路、11a…流入口、11b…流入室、12…流出側経路、12a…流出口、12b…流出室、13…主弁座、2…ダイヤフラム弁、3…蓋部材、4…背圧室、5
1…第1イコライザ通路、5
2…第2イコライザ通路、51…蓋部材の下端部に形成した孔、6…パイロット通路、7…パイロット弁。