(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る接合工程ライン監視システムの利用形態の一例を示す図である。本実施形態は、ろう付けや溶接などの接合工程の製造ライン監視システムに適用した例である。
【0015】
本実施形態では、ガスろう付けを例に説明するが、ガスろう付けに限定するものではない。
【0016】
図1(a)に示すように、ろう付け作業エリア10には、接合対象の部材1と、接合ツールを保持した接合作業者Xがおり、この接合作業者Xが接合作業を行う。例えば、ガスろう付けの場合、接合ツールは、ガスバーナー2のトーチ(バーナ炎)2aである。接合作業者Aは、このガスバーナー2を用いて、接合対象の部材1を加熱し、溶金材3によるさしろうを施して、接合する。
【0017】
このとき、接合工程ライン監視システム100は、ろうの流れを撮影する。撮影には、例えば、動画が収録できるデジタルカメラや高速カメラ4(接合現象データ取得手段)を用いることができる。また、接合対象の部材1の温度は、サーモカメラ5(接合現象データ取得手段)で計測する。接合対象の部材1の温度の計測には、サーモカメラ5のほか、赤外線カメラ、赤外線センサ、熱電対を用いることができる。温度の計測に熱電対を用いた場合、接合対象の部材1の温度を精確に測定することができる。ただし、熱電対を用いた場合、設置個所は制限される。本実施形態では、接合に影響を与えない非接触のサーモカメラ5を用いている。
【0018】
さらに、ろう付けの作業において、接合作業者Xのろう持ち手までの距離を測定する距離センサ6(作業状態データ取得手段)と、接合作業者Xのトーチ持ち手の動きを測定する慣性センサ7(作業状態データ取得手段)を備え、距離センサ6および慣性センサ7の測定値をデータ化する。距離センサ6は、接合作業者Xの身体の部位をとらえ、姿勢、手の動き、身体の位置を計測する。また、慣性センサ7は、接合ツール(トーチ2aなど)に設置され、接合ツールの細かな動きをとらえることができる。
【0019】
図1(a)に示すように、接合工程ライン監視システム100は、接合工程ライン監視プログラムを実行するデータ処理装置として例えばサーバ20を用いることができる。
【0020】
接合工程ライン監視システム100は、高速カメラ4、サーモカメラ5、距離センサ6および慣性センサ7の各計測データを処理し、接合作業者Xに異常や、作業の状況を報知する。例えば、
図1(b)に示すように、サーバ20の表示部20a(提示手段)に、接合現象の基準データ(後記)との差異が大きい部分をエラーとして表示する。また、サーバ20は、補修にかかる時間を算出し、表示部20aに、この補修作業可能時間(ここでは、10:00秒)を表示する。なお、
図1(b)中の符号a,bについては後記する。
【0021】
図2は、上記第1の実施形態に係る接合工程ライン監視システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
図2に示すように、接合工程ライン監視システム100は、データ取得手段110と、データ評価手段120(評価データ算出手段)と、相違データ抽出手段130と、異常箇所判定手段140と、提示手段150と、を備える。
【0023】
接合工程ライン監視システム100は、ろう付けや溶接などの接合工程の製造ラインにおいて、接合作業を実行するろう付け作業エリア10を備える。
【0024】
ろう付け作業エリア10には、接合対象の部材1と、データ取得手段110(接合現象データ取得手段,作業状態データ取得手段)と、提示手段150と、が配置される。また、接合対象の部材1の近で、接合作業者が作業を行う。
【0025】
<データ取得手段110>
データ取得手段110は、接合現象データ(後記)および作業状態データ(後記)を取得する。
【0026】
データ取得手段110は、接合現象データ取得部111と、作業状態データ取得部112と、時刻同期部113と、を備える。
【0027】
接合現象データ取得部111は、
図2では省略しているが、ろうの流れ映像を撮影する高速カメラ4と、接合対象の部材1の接合部の温度分布映像を取得するサーモカメラ5と、接続されている。接合現象データ取得部111は、高速カメラ4およびサーモカメラ5が撮影したデータを接合現象データとして取得する。接合現象データは、ろうの流れ映像と接合部の温度分布映像である。
【0028】
作業状態データ取得部112は、
図2では省略しているが、ろう持ち手などまでの距離を計測する距離センサ6と、接合ツール(ガスバーナー2)に設置され、ガスバーナー2のトーチ2a先端位置の動きを計測する慣性センサ7と、接続されている。作業状態データ取得部112は、距離センサ6および慣性センサ7が測定したデータを、接合作業(ろう付け作業)の作業状態データとして取得する。
【0029】
時刻同期部113は、接合現象データ取得部111の接合現象データと、作業状態データ取得部112の作業状態データの取得タイミングと時間的に対応させる時刻同期を行う。これにより、ろう付け作業(ろうの流れ映像、接合部の温度分布映像)計測時点における、人の手の動きおよびガスバーナー2のトーチ2aの動きが対応付けられる。
【0030】
<データ評価手段120>
データ評価手段120は、取得した接合現象データと作業状態データとを時刻同期し、かつ、接合作業箇所毎に紐付けて、評価データを算出する。
【0031】
データ評価手段120は、接合現象データ評価部121と、作業状態データ評価部122と、接合現象作業状態分析部123と、を備える。
【0032】
接合現象データ評価部121は、接合現象データ取得部111が取得した接合現象データをもとに、接合対象部材の接合現象を評価する。接合現象データ評価部121は、接合対象部材の接合現象を評価できる(有意な接合現象データとして評価対象となる)場合、接合現象評価結果を接合現象作業状態分析部123に出力する。
【0033】
作業状態データ評価部122は、作業状態データ取得部112が取得した作業状態データをもとに、接合対象部材の接合作業状態を評価する。作業状態データ評価部122は、接合対象部材の接合作業状態を評価できる(有意な接合作業状態データとして評価対象となる)場合、接合作業状態評価結果を接合現象作業状態分析部123に出力する。
【0034】
接合現象作業状態分析部123は、接合現象評価結果と接合作業状態評価結果を時刻同期し、かつ、接合作業箇所毎に紐付けて接合現象作業状態を分析し、評価データを算出する。
【0035】
<相違データ抽出手段130>
相違データ抽出手段130は、評価データとあらかじめ収録された基準データとの相違データを抽出する。
【0036】
相違データ抽出手段130は、作業箇所決定部131と、データ範囲抽出部132と、基準データ格納部133(基準データ格納手段)と、相違度算出部134と、を備える。
【0037】
作業箇所決定部131は、あらかじめ設定されている作業手順抽出データをもとに、作業箇所を決定する。
【0038】
データ範囲抽出部132は、決定した作業箇所に紐付いた時刻に基づき、評価データに対応する時刻におけるデータ範囲を抽出する。
【0039】
基準データ格納部133は、あらかじめ準備された基準となる接合作業に対して、熟練接合作業者による理想のながれ動作や基準となる接合作業などを、基準データとしてあらかじめ収録する。また、基準データ格納部133は、異常箇所を判定するときの閾値を格納する。基準データ格納部133は、作業者の熟練度に応じた基準データを格納することが好ましい。
【0040】
相違度算出部134は、評価データと基準データ格納部133にあらかじめ収録された基準データとの相違を抽出する。具体的には、相違度算出部134は、基準データの収録時には、あらかじめ用意された基準となる接合作業に対して、決定した作業箇所に対応する時刻を取り出すことで、作業箇所毎に紐付けられた基準データを生成する。
【0041】
一方、相違度算出部134は、異常箇所提示時には、データ範囲抽出部132により取り出されたデータと、上記基準データとの相違度を算出し、相違データとして異常箇所判定手段140に出力する。
【0042】
<異常箇所判定手段140>
異常箇所判定手段140は、相違データに基づき、接合部の異常箇所を判定する。具体的には、異常箇所判定手段140は、相違データ抽出手段130で得られる相違度に対してあらかじめ設定した閾値に基づき異常箇所を判定する。異常箇所判定手段140は、接合現象の基準データとの差異が大きい部分を異常箇所であると判定する。異常箇所判定手段140は、作業箇所毎に異常判定を行って、各作業箇所の異常箇所を判定する。上記異常箇所は、接合箇所の見直し箇所に該当する。
【0043】
また、異常箇所判定手段140は、異常箇所(接合箇所の見直し箇所)を補修するために与えられる猶予時間である補修作業可能時間(作業割り当て時間)を算出する。すなわち、接合工程ライン監視システム100では、製造中に、接合対象の部材1がラインで流れる。上記補修作業可能時間(作業割り当て時間)が接合作業者に指示されると、接合作業者はその時間内で補修を行えばよいことが分かる。
【0044】
<提示手段150>
提示手段150は、異常箇所判定手段140の判定結果に基づいて、接合作業者Xに異常箇所を提示(通知)する。提示方法は限定されないが、例えば、提示手段150は、表示部150a(
図1(b)のサーバ20の表示部20aに対応する)に異常箇所をエラー(
図1(b)の符号a参照)として表示する。また、提示手段150は、投光部150b(
図2参照)を用いて、実物の接合対象の部材1の異常箇所にレーザ光等の光を投影し、投影された光により異常箇所を接合作業者Xへ通知する。これにより、接合作業者Xは、補修箇所を迅速に把握することができる。
【0045】
提示手段150は、異常箇所判定手段140の判定結果に基づいて、異常箇所を補修するための補修作業可能時間(作業割り当て時間)(
図1(b)の符号b参照)を提示(表示)する。これにより、接合作業者は、表示(通知)された補修作業可能時間内で補修を行えばよいことが分かるので、その時間に合わせて補修を行うことができる。逆に、補修作業可能時間内では、補修が完了しないという目途も立てることができる。接合工程ライン監視システム100に接合作業者の熟練度のレベルを登録しておけば、作業可能時間内では、補修が完了しないという目途も立てを熟練度のレベルで判定する。補修作業可能時間に補修が完了しないと判断した場合には、アラームを上げることで、補修が完了していないことを他の作業者や管理者等に知らせる。補修作業可能時間を大幅に超える補修作業を行ってしまい、ライン全体に影響を与えるような事態を避けることができる。その結果、工程持ち時間を調整でき、生産遅延を低減することができる。
【0046】
なお、上記データ評価手段120、相違データ抽出手段130、および異常箇所判定手段140は、例えば、
図1(a)に示すPC20などの汎用または専用処理サーバにより構成される。データ評価手段120、相違データ抽出手段130、および異常箇所判定手段140は、このサーバの記憶部(図示省略)に格納されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)がRAMに展開し実行することにより実現される。また、上記提示手段150は、例えば上記サーバ等の表示部である。
【0047】
以下、上述のように構成された接合工程ライン監視システム100の接合工程ライン監視方法について説明する。
【0048】
図3は、ガスろう付けを用いた2つの管部品(接合対象の部材1)の接合を例に説明する図である。
【0049】
図3(a)に示すように、ガスろう付けを用いる接合対象の部材1は、2つの円柱状の管部品1aと管部品1bである。管部品1aと管部品1bは、さしこみ組み立てができるようにするため、接合部の管内径が異なる。管部品1bは、管部品1aよりも大径であり、管部品1bの上端には外縁部1b1が形成されている。
図3(a)の矢印に示すように、管部品1aの底部を、管部品1bの外縁部1b1の内側に差し込む。
【0050】
図3(b)に示すように、管部品1aの底部が、管部品1bの上端の外縁部1b1に組み合わされる。
【0051】
図3(c)に示すように、管部品1aと管部品1bの接合部を、斜め上からガスバーナー2のトーチ2aで加熱する。このとき、ガスバーナー2が、管部品1aと管部品1bの接合部全体を均等に熱するようにする。このため、ガスバーナー2のトーチ2aの方向を上下に少しずつずらしながら外周方向に回して加熱する。
【0052】
図3(d)に示すように、接合対象の管部品1aと管部品1bとが十分に温まった場合、溶金材3としてさしろうを施す。溶金材3がとけ、毛細管現象に従い管部品1aと管部品1bとの間の隙間に入り込み、管部品1aと管部品1bとが接合される。なお、接合対象が圧力容器などのように、密閉性の確保が重要である場合、この溶金材が、全体を塞いでいるかどうかが品質の良否に関わってくる。
【0053】
次に、
図4〜
図13を参照して接合作業をデータ化するデータ取得手段110について説明する。
[高速カメラ撮影例]
まず、高速カメラ4(
図1参照)の撮影例について説明する。
<正常品>
図4は、正常品の場合の管部品(接合対象の部材1)の接合部を高速カメラ4で撮影した一例を示す図である。
【0054】
図4(a)では、管部品1aと管部品1bの加熱が十分に行われた後、溶金材3を接合部に当てる様子を撮影している。
【0055】
図4(b)に示すように、管部品1aと管部品1bの接合部において、溶金材3が溶け、溶けた溶金材3aが隙間に流動した様子を撮影している。
【0056】
図4(c)に示すように、最終的な出来栄えとして、管部品1aと管部品1bの接合部の隙間全体に凝固した溶金材3aの形状を撮影している。
【0057】
図4(d)は、
図4(c)の破線で囲んだ部分の要部断面図である。
図4(d)に示すように、溶金材3aが、接合部を十分に塞いでいる。このような曲面形状は、フィレット(fillet)と呼ばれ、このフィレット形状の溶金材3aが接合部の接合線L全体(全周)に得られる。
【0058】
<異常品>
図5は、異常品の場合の管部品(接合対象の部材1)の接合部を高速カメラ4で撮影した一例を示す図である。
【0059】
図5(a)では、管部品1aと管部品1bの加熱が十分に行われた後、溶金材3を接合部に当てる様子を撮影している。
【0060】
図5(b)に示すように、溶金材3をさす場所が、接合部に対して適切でない。このため、ろう(溶金材3b)が管部品1aと管部品1bとの隙間に入り込めない様子を撮影している。
【0061】
図5(c)に示すように、最終的な出来栄えとして、管部品1aと管部品1bの接合部の隙間に凝固した溶金材3bの形状を撮影している。
【0062】
図5(d)は、
図5(c)の破線で囲んだ部分の要部断面図である。
図5(d)に示すように、溶金材3bが、接合部に十分に入り込んでいないため、フィレット形状が接合線全体(全周)に得られない。
図5(d)に示すように、溶金材3bが、不足するため、管部品1aと管部品1bとが重なる入り口で、へこんだ形状になる。
【0063】
このように、管部品(接合対象の部材1)の接合部を高速カメラ4(
図1参照)で撮影することによって下記の計測データを得ることができる。すなわち、高速カメラ4(
図1参照)の撮影により、溶金材3が管部品(接合対象の部材1)に接触する接触位置と、ろうが流れる位置とを撮影し、溶金材3のフィレット形状の仕上がりをデータ化することができる。ろう流れをデータ化することによって、不良や未完了部につながる現象を把握することができる。
【0064】
[サーモカメラ撮影例]
次に、サーモカメラ5(
図1参照)の撮影例について説明する。
<正常品>
図6は、正常品の場合の管部品(接合対象の部材1)の接合部をサーモカメラ5で撮影した一例を示す図である。
図6において、接合対象部材の温度を、
図6の網掛けの粗密で表記している。温度が高い場合は、網掛けを密に、温度が低くなるほど網掛けを粗で表している(以下同様の表記方法を採る)。
【0065】
図6(a)では、管部品1aと管部品1bをガスバーナー2(図示省略)などで加熱する。加熱が十分に行われた後、溶金材3を接合部に当てる。サーモカメラ5は、管部品(接合対象の部材1)の温度上昇や温度分布を映像としてとらえる。
【0066】
図6(b)に示すように、サーモカメラ5は、管部品(接合対象の部材1)の温度上昇や温度分布を映像としてとらえる。
図6(b)の場合、管部品1bの温度が管部品1aの温度より高く、管部品1bの外縁部1b1の全周にわたって十分に加熱されるとともに、管部品1aにも適度な加熱が行われている温度分布を映像としてとらえる。
【0067】
図6(c)に示すように、溶接後には管部品1aと管部品1bの温度は共に下がっている。溶金材3が、ろう付けされた時の温度変動や温度分布を映像としてとらえる。
図6(c)の場合、溶金材3aが、接合部を十分に塞いでいる。
【0068】
溶金材3が、ろう付けされた時の温度変動や温度分布を映像としてとらえることができるため、ろう流れと温度のデータを収録することができる。
【0069】
ここで、溶金材3が、接合部を十分に塞ぐには、管部品(接合対象の部材1)の温度は、部材自体の融点より低く、溶金材3の融点より高い条件を作り、さらに溶金材3が流れ込む時間保持する。
【0070】
<異常品>
図7は、異常品の場合の管部品(接合対象の部材1)の接合部をサーモカメラ5で撮影した一例を示す図である。
【0071】
図7(a)では、管部品1aと管部品1bをガスバーナー2(図示省略)などで加熱する。加熱が十分に行われた後、溶金材3を接合部に当てる。サーモカメラ5は、管部品(接合対象の部材1)の温度上昇や温度分布を映像としてとらえる。
【0072】
図7(b)に示すように、加熱の箇所が偏っている温度分布を映像としてとらえる。
図7(b)の場合、管部品1bの一部が十分に加熱されていない、すなわち温度が低い部分ができる。このように、温度の低い部分ができると、溶金材3bは、温度の低い部分に流れにくくなるため、接合部へ適切にろうが入らない。
【0073】
図7(c)に示すように、溶金材3bが、接合部に十分に入り込んでいないため、フィレット形状が接合線全体(全周)に得られない。溶金材3が、ろう付けされた時の温度変動や温度分布を映像としてとらえることができるため、ろう流れと温度のデータを収録することができる。
【0074】
このように、管部品(接合対象の部材1)の接合部をサーモカメラ5(
図1参照)で撮影することによって下記の計測データを得ることができる。すなわち、サーモメラ5では、管部品(接合対象の部材1)と溶金材3の温度、管部品(接合対象の部材1)の温度分布、温度の保持時間をデータ化することができる。ろう流れに対する温度をデータ化することによって、不良や未完了部につながる現象を把握することができる。
【0075】
[距離センサ計測例]
次に、距離センサ6(
図1参照)の計測例について説明する。
<例1>
図8は、距離センサ6を用いて人の動作を捉えた一例を示す図であり、
図8(a)は人の骨格の推定例、
図8(b)は、(a)の数値化例、
図8(c)は、(b)の判定例をそれぞれ示す。
【0076】
距離センサ6(
図1参照)を用いて人の手、足、体などの距離を測定し、映像に映し出す。測定した距離データをもとに、手、足、体などを認識して、これらの点をつないで動作をデータ化する。
【0077】
図8(a)に示すように、距離センサ6のデータに基づいて、人の骨格(ハッチング部参照)を推定し、データ化する。各骨格は、相対的な距離で数値化することができる。
【0078】
図8(b)に示すように、右腕(1)と左腕(2)の相対的な距離を数値化した例について述べる。
【0079】
図8(c)は、時間軸(横軸)に対して、
図8(b)に示す右腕(1)と左腕(2)の位置をグラフ化した図である。
図8(c)の例では、両腕は下方向に向いており、右腕(1)が右腕(1)基準値に、また左腕(2)が左腕(2)基準値に対して、いずれも値が下回っている状況が時刻T1まで続いていることを示している。
【0080】
<例2>
図9は、距離センサ6を用いて人の動作を捉えた
図8とは別の他例を示す図であり、
図9(a)は人の骨格の推定例、
図9(b)は、(a)の数値化例、
図9(c)は、(b)の判定例をそれぞれ示す。
図9は、
図8の表記に対応している。
【0081】
図9(a)に示すように、距離センサ6(
図1参照)のデータに基づいて、人の骨格(ハッチング部参照)を推定し、データ化する。
図9(a)では、左腕(2)を上に挙げている。
【0082】
図9(b)は、右腕(1)と左腕(2)の相対的な距離を数値化した例である。ある時刻で左腕(2)を上に挙げている。
【0083】
図9(c)は、時間軸(横軸)に対して、
図9(b)に示す右腕(1)と左腕(2)の位置をグラフ化した図である。
図9(c)の例では、時刻T1までは両腕を下方向に向いていたが、時刻T1後に左腕(2)を上に挙げたときのデータである。右腕(1)は、右腕(1)基準値を下回ったままである。一方、左腕(2)は、左腕(2)基準値に対して、値が上回る推移を取得している。
【0084】
このように、人の手、足、体などの距離を距離センサ6(
図1参照)で撮影することによって人の骨格情報を推定し、人の動作、位置を時系列でデータ化することができる。これによって、接合対象との位置関係、作業の手順を数値化し、把握することができる。
【0085】
[慣性センサ計測例]
次に、
図10〜
図13を参照して慣性センサ7(
図1参照)の計測例について説明する。
<熟練接合作業員>
図10は、慣性センサ7を用いて熟練接合作業員が使うガスバーナー2の動きを捉えた一例を示す図であり、
図10(a)は熟練接合作業員が使うガスバーナー2の動きを示す図、
図10(b)はこのガスバーナー2の動きをデータ化した図である。
【0086】
慣性センサ7(
図1参照)は、接合ツール(ここではガスバーナー2)に取り付けられている。慣性センサ7は、ジャイロセンサ、地磁気センサ、加速度センサなどを用いることができる。特に、三方向に感度を有する三軸方式の加速度センサを利用すれば、直交座標系のx、y、z方向の動きを捉えることができる。
【0087】
図10(a)に示すように、熟練接合作業員は、管部品(接合対象の部材1)の温度を広く均一に保つために、ガスバーナー2を左右に振ってトーチ2aを管部品(接合対象の部材1)の接合部に均一にあてる。
【0088】
図10(b)は、慣性センサ7の計測データをもとにガスバーナー2を左右に振っている様子をデータ化して示す。
図10(b)に示すように、慣性センサ7の計測データは、時間軸(横軸)に対して、ガスバーナー2の左右の動きの数値が正弦波状に推移している。より詳細には、ガスバーナー2の左右の動きは、作業開始時には、振幅とピッチ(時間幅)はいずれも大きく、作業時間に経過に従って、振幅およびピッチはいずれも小さくなり、基準値近傍で収束する傾向にある。また、
図10(b)に示す基準値に対して、左右の振幅はほぼ均等である。
【0089】
<非熟練接合作業員>
図11は、慣性センサ7を用いて
図10とは違い非熟練接合作業員が使うガスバーナー2の動きを捉えた一例を示す図であり、
図11(a)は非熟練接合作業員が使うガスバーナー2の動きを示す図、
図11(b)はこのガスバーナー2の動きをデータ化した図である。
【0090】
上記熟練接合作業員では、ガスバーナー2を左右に振って管部品(接合対象の部材1)の温度分布を広く均一に保っていた。また、作業開始時には、振幅およびピッチ(時間幅)を大きく、作業時間に経過に従って、振幅およびピッチを小さくしていた。これに対し、
図11(a)に示すように、非熟練作業員のガスバーナー2の動きは、左右いずれか(ここでは左側)に偏っている。しかも、左右の振りも小さく、また時間軸(横軸)に対して、不均一である。最後には、右側の加熱不足を考慮してか右側に大きく振っている。
図11(b)では、慣性センサ7の計測データは、時間軸に対して、左側の動きを示す数値に偏り、細かいばらつきも多いことを示している。
【0091】
このように、接合ツール(ガスバーナー2)の動きを慣性センサ7(
図1参照)で計測することによって、接合ツール(ガスバーナー2)の動作を時系列でデータ化することができる。これによって、管部品(接合対象の部材1)に応じた接合ツール(ガスバーナー2)の取扱いがなされているか否かを把握することができる。
【0092】
<三軸方式の慣性センサ(熟練作業員)>
図12は、三軸方式の慣性センサ7を用いた接合ツールの先端位置(ガスバーナー2のトーチ2a先端位置)の動きのデータの一例を示す図であり、
図10で示した熟練接合作業者のデータの例である。
図12(a)−(c)は熟練接合作業員が使う接合ツールの先端位置(ガスバーナー2のトーチ2a先端位置)の動きを示す図、
図12(d)はこのガスバーナー2のトーチ2a先端位置の動きをデータ化した図である。
図12(b),(f)の符号cは、ガスバーナー2のトーチ2aの上方向を示す。
【0093】
前記
図1(b)に示すサーバ20が、三軸方式の慣性センサ7により計測したx、y、zのデータをもとに、三次元空間に仮想的に上記トーチ2a先端位置の動きを再現する。また、サーバ20は、表示画面20a(
図1(b)参照)に、ガスバーナー2のトーチ2a先端位置の動きの軌跡を、ろう付け作業エリア10(
図1(a)参照)に対応させて表示する。これにより、ガスバーナー2のトーチ2a先端位置の動きの軌跡を、ろう付け作業エリア10に対応させてして分析することができる。
【0094】
図12(a)−(c)は、
図10で示した熟練接合作業者がガスバーナー2のトーチ2aを左右に大きく振っている様子を三次元空間に再現している。
図12(b)(c)の破線に示すように、トーチ2a先端位置の履歴を軌跡として表示する。ガスバーナー2のトーチ2a先端位置の履歴を軌跡として表示することで、熟練作業者がトーチ2aをどのように動かしたのか可視化することができる。
【0095】
図12(d)は、ガスバーナー2のトーチ2a先端位置のx、y、zデータを、横軸時間として、推移をプロットしたグラフである。
図12(d)に示すように、三軸方式の慣性センサ7の計測データは、時間軸(横軸)に対して、xデータの数値が正弦波状に均等に推移している。y、zデータの数値は、時間経過に従って基準値に収束している。
【0096】
<三軸方式の慣性センサ(非熟練作業員)>
図13は、三軸方式の慣性センサ7を用いた
図12とは違い接合ツールの先端位置(ガスバーナー2のトーチ2a先端位置)の動きのデータの一例を示す図であり、
図11で示した非熟練作業者のデータの例である。
図13(a)−(c)は非熟練接合作業員が使う接合ツールの先端位置(ガスバーナー2のトーチ2a先端位置)の動きを示す図、
図13(d)はこのガスバーナー2のトーチ2a先端位置の動きをデータ化した図である。
【0097】
図13(a)−(c) は、
図11で示した非熟練作業者がガスバーナー2のトーチ2aを左側に偏って振っている様子を三次元空間に再現している。
図13(b)(c)の破線に示すように、ガスバーナー2のトーチ2a先端位置の履歴を軌跡として表示する。
【0098】
図13(d)は、トーチ2a先端位置のx、y、zデータを、横軸時間として、推移をプロットしたグラフである。
図13(d)に示すように、三軸方式の慣性センサ7の計測データは、時間軸(横軸)に対して、左側の動きを示す数値に偏り、細かいばらつきも多いことを示している。なお、y、zデータの数値は、時間経過に従って基準値に収束している。
【0099】
このように、接合ツール(ガスバーナー2のトーチ2a)の動きを三軸方式の慣性センサ7(
図1参照)で計測することによって、接合ツール(ガスバーナー2のトーチ2a)の動作を時系列でデータ化することができる。これによって、管部品(接合対象の部材1)の三次元的な位置に応じた接合ツール(ガスバーナー2のトーチ2a)の取扱いがなされているか否かを把握することができる。
【0100】
以上、
図4〜
図13を参照して接合作業をデータ化するデータ取得手段110について説明した。
【0101】
[基準データの収録時]
図14は、接合作業の基準となるデータ(基準データ)を収録する基準データ収録処理を示すフローチャートである。本フローは、例えば上記データ評価手段120、相違データ抽出手段130、および異常箇所判定手段140を構成するサーバなどのCPUにより実行される。
【0102】
まず、ステップS1で練接合作業者の接合作業において、高速カメラ4(
図1参照)を用いて接合対象の部材の接合部を撮影する。すなわち、高速カメラ4により、接合部のろう流れ映像が撮影される。
【0103】
ステップS2では、練接合作業者の接合作業において、サーモカメラ5(
図1参照)を用いて接合対象の部材の接合部の温度分布映像を取得する。
【0104】
ステップS3では、データ取得手段110の作業状態データ取得部112は、距離センサ6(
図1参照)を用いてろう持ち手などまでの距離を計測する。
【0105】
ステップS4では、データ取得手段110の作業状態データ取得部112は、慣性センサ7(
図1参照)を用いて接合ツール(ガスバーナー2のトーチ2a)先端位置の動きを計測する。
【0106】
ステップS5では、データ取得手段110の接合現象データ取得部111(
図2参照)は、撮影した接合部撮影映像(ろうの流れ映像)および接合部の温度分布映像をろう付け現象データ(接合現象データ)として取得する。
【0107】
ステップS6では、データ取得手段110の作業状態データ取得部112(
図2参照)は、距離センサ6および慣性センサ7が測定したデータを、熟練接合作業者の接合作業における接合作業(ろう付け作業)の作業状態データとして取得する。
【0108】
ステップS7では、データ取得手段110の時刻同期部113(
図2参照)は、接合現象データ取得部111の接合現象データと、作業状態データ取得部112の作業状態データの取得タイミングと時間的に対応させる時刻同期を行う。これにより、ろう付け作業(ろうの流れ映像、接合部の温度分布映像)計測時点における、人の手の動きおよびガスバーナー2のトーチ2aの動きが対応付けられる。
【0109】
ステップS8では、データ評価手段120は、データ取得手段110により取得した接合現象データおよび作業状態データをもとに、接合現象および接合作業状態を評価し、接合現象作業を分析する。具体的には、データ評価手段120は、取得した接合現象データと作業状態データとを時刻同期し、かつ、接合作業箇所毎に紐付けて、評価データを算出する。
【0110】
ステップS9では、相違データ抽出手段130のデータ範囲抽出部132(
図2参照)は、作業箇所に紐付いた時刻に基づき、評価データに対応する時刻におけるデータ範囲を抽出する。
【0111】
ステップS10では、相違データ抽出手段130の相違度算出部134(
図2参照)は、抽出したデータ範囲毎に、熟練接合作業者による理想的な流れ動作や基準となる接合動作などを基準データとして収録する。具体的には、相違度算出部134は、基準データの収録時には、あらかじめ用意された基準となる接合作業に対して、決定した作業箇所に対し、対応する時刻を取り出すことで、作業箇所毎に紐付けられた基準データを生成する。
【0112】
上記フローを実行することにより、相違データ抽出手段130の基準データ格納部133(
図1参照)には、ある接合対象の部材の作業箇所毎に、熟練接合作業者による理想のながれ動作や基準となる接合作業などの基準データが蓄積される。
【0113】
なお、本登録処理は、後記異常箇所提示処理に先立ってあらかじめ実行され、基準データとして基準データ格納部133に格納される。
【0114】
また、被溶接品の形状・種類、溶接機(抵抗溶接、レーザ溶接、摩擦攪拌溶接)、加工機器(プレス機)などの使用条件に応じて、各被溶接品について基準データが蓄積されている。
【0115】
[異常箇所提示処理]
図15は、接合対象部材の接合部の異常箇所を提示する異常箇所提示処理を示すフローチャートである。
【0116】
まず、ステップS11で接合作業者の接合作業において、高速カメラ4(
図1参照)を用いて接合対象の部材の接合部を撮影する。すなわち、高速カメラ4により、接合部のろう流れ映像が撮影される。
【0117】
ステップS12では、接合作業者の接合作業において、サーモカメラ5(
図1参照)を用いて接合対象の部材の接合部の温度分布映像を取得する。
【0118】
ステップS13では、データ取得手段110の作業状態データ取得部112は、距離センサ6(
図1参照)を用いてろう持ち手などまでの距離を計測する。
【0119】
ステップS14では、データ取得手段110の作業状態データ取得部112は、慣性センサ7(
図1参照)を用いて接合ツール(ガスバーナー2のトーチ2a)先端位置の動きを計測する。
【0120】
ステップS15では、データ取得手段110の接合現象データ取得部111(
図2参照)は、撮影した接合部撮影映像(ろうの流れ映像)および接合部の温度分布映像をろう付け現象データ(接合現象データ)として取得する。
【0121】
ステップS16では、データ取得手段110の作業状態データ取得部112(
図2参照)は、距離センサ6および慣性センサ7が測定したデータを、接合作業者の接合作業における接合作業(ろう付け作業)の作業状態データとして取得する。
【0122】
ステップS17では、データ取得手段110の時刻同期部113(
図2参照)は、接合現象データ取得部111の接合現象データと、作業状態データ取得部112の作業状態データの取得タイミングと時間的に対応させる時刻同期を行う。これにより、ろう付け作業(ろうの流れ映像、接合部の温度分布映像)計測時点における、人の手の動きおよびガスバーナー2のトーチ2aの動きが対応付けられる。
【0123】
ステップS18では、データ評価手段120は、データ取得手段110により取得した接合現象データおよび作業状態データをもとに、接合現象および接合作業状態を評価し、接合現象作業を分析する。具体的には、データ評価手段120は、取得した接合現象データと作業状態データとを時刻同期し、かつ、接合作業箇所毎に紐付けて、評価データを算出する。
【0124】
ステップS19では、相違データ抽出手段130のデータ範囲抽出部132(
図2参照)は、作業箇所に紐づいた時刻に基づき、評価データに対応する時刻におけるデータ範囲を抽出する。
【0125】
ステップS20では、相違データ抽出手段130の相違度算出部134(
図2参照)は、データ範囲抽出部132により取り出されたデータと、基準データ格納部133に収録された基準データとの相違度を算出し、相違データとして異常箇所判定手段140に出力する。
【0126】
ステップS21では、異常箇所判定手段140(
図1参照)は、相違データをもとに接合部の異常箇所を判定する。具体的には、異常箇所判定手段140は、相違データ抽出手段130で得られる相違度に対してあらかじめ設定した閾値に基づき、接合現象の差異が大きい部分を異常箇所であると判定する。
【0127】
ステップS22では、提示手段150(
図2参照)は、判定結果をもとに接合作業者に異常箇所、および/または、補修作業可能時間を提示する。例えば、提示手段150は、表示部150aに異常箇所をエラー(
図1(b)の符号a参照)として表示する。また、提示手段150は、表示部150aに補修作業可能時間(作業割り当て時間)(
図1(b)の符号b参照)を表示する。さらに、提示手段150は、投光部150b(
図2参照)を用いて、実物の接合対象の部材1の異常箇所にレーザ光等の光を投影し、投影された光により異常箇所を接合作業者へ通知する。これにより、接合作業者は、補修箇所を迅速に把握することができる。
【0128】
上述したように、接合現象の差異が大きい箇所を異常箇所をエラー(
図1(b)の符号a参照)として表示することで、接合作業員が補修箇所を迅速に把握することができる。また、補修作業可能時間を提示することで、補修作業可能時間内に補修を完了できるか否かの目途を立てることができる。補修作業可能時間内に補修が完了できる場合は、現工程において補修を完了する。また、補修作業可能時間内に補修が完了できない場合は、例えば次工程において、補修を完了させる。いずれにしても、作業割り当て時間が提示されるので、工程持ち時間を調整することができ、生産遅延を低減できる。
【0129】
ここで、作業者の熟練度に応じて、補修の指示(例えば補修作業可能時間)を変えることが好ましい。
【0130】
以上説明したように、本実施形態の接合工程ライン監視システム100(
図2参照)は、接合対象部材の接合現象を現象データとして取得する接合現象データ取得部111と、接合対象部材の接合作業状態を作業状態データとして取得する作業状態データ取得部112と、取得した現象データと作業状態データとを時刻同期し、かつ、接合作業箇所毎に紐付けて、評価データを算出するデータ評価手段120と、評価データとあらかじめ設定された基準データとの相違を相違データとして抽出する相違データ抽出手段130と、接合現象の差異が大きい部分を異常箇所であると判定する異常箇所判定手段140と、相違データをもとに、接合対象部材の接合部の異常箇所を提示する提示手段150と、を備える。また、相違データ抽出手段130は、あらかじめ準備された基準となる接合作業に対して、接合作業箇所毎に紐付けられた基準データを格納する。
【0131】
提示手段150は、前記のように、判定結果をもとに接合作業者に異常箇所をエラー表示する(
図1(b)の符号a参照)。また、提示手段150は、表示部150aに補修作業可能時間(作業割り当て時間)(
図1(b)の符号b参照)を表示する。
【0132】
従来技術では、接合した結果に対して、破壊検査、非破壊検査で調査するが、検査の工程と、不良や、未完了部が判明した後の手直し工程に時間を要する。また、度重なる加熱、冷却によって品質が下がってしまう。
【0133】
これに対して、本実施形態では、接合作業中に、未完了箇所を検知し、接合作業者に通知し、その作業を監視することで、接合品質の低下と、作業遅延を防止することができる。
【0134】
また、異常箇所を特定後、接合作業者に異常箇所を提示し、その作業時間を計算することで効率のよいシステムを実現することができる。すなわち、データ取得手段110で得られるデータに基づき、不良や不完全部の候補を提示して、熟練度が高くない作業員を配置した接合工程ラインでも、品質の低下を防止することができる。
【0135】
例えば、提示手段150は、接合現象の差異が大きい箇所を異常箇所をエラー(
図1(b)の符号a参照)として表示することで、接合作業員が補修箇所を迅速に把握することができる。また、補修作業可能時間を提示することで、補修作業可能時間内に補修を完了できるか否かの目途を立てることができる。作業割り当て時間が提示されるので、工程持ち時間を調整することができ、生産遅延を低減できる。これによって、不良や未完了部を迅速に認識させることができ、品質の低下や作業の遅れを防止することができる。
【0136】
また、提示手段150は、投光部150b(
図2参照)を用いて、異常箇所に光を投影し、投影された光により異常箇所を接合作業者へ通知することで、接合作業者は、補修箇所を迅速に把握することができる。
【0137】
(第2の実施形態)
図16は、本発明の第2の実施形態に係る接合工程ライン監視システムの構成を示すブロック図である。
図2と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0138】
図16に示すように、接合工程ライン監視システム200は、データ取得手段110と、データ評価手段220(評価データ算出手段)と、接合現象作業状態分析部230と、相違データ抽出部130と、を備える。
【0139】
<データ評価手段220>
データ評価手段220は、接合現象データ評価部221と、作業状態データ評価部222と、を備える。
【0140】
接合現象データ評価部221は、動画像データ時刻評価部2211と、流動箇所抽出部2212と、温度分布評価部2213と、を備える。
【0141】
動画像データ時刻評価部2211は、高速カメラ4の動画像データと、サーモカメラ5の動画像データとの、時刻の対応づけを行う。
【0142】
流動箇所抽出部2212は、高速カメラ4の動画像データから、接合部の動画像データに基づき、溶金材の流動箇所を抽出する。
【0143】
温度分布評価部2213は、サーモカメラ5の動画像データと、流動箇所抽出部2212に基づき、接合部の温度分布を評価する。すなわち、取得した温度分布が有意な現象データとして評価対象となるか否かを評価する。
【0144】
作業状態データ評価部222は、トレンドデータ時刻評価部2221と、作業手順抽出部2222と、接合ツール動作抽出部2223と、を備える。
【0145】
トレンドデータ時刻評価部2221は、距離センサ6(
図1参照)の計測データの過渡特性であるトレンドデータと、慣性センサ7(
図1参照)の計測データの過渡特性であるトレンドデータとの、時刻の対応付けを行う。
【0146】
作業手順抽出部2222は、距離センサ6のトレンドデータから、接合部に対する作業手順を抽出した作業手順抽出データを生成する。
【0147】
接合ツール動作抽出部2223は、慣性センサ7のトレンドデータより、接合ツールの動作を抽出した接合ツール動作抽出データを生成する。
【0148】
本実施形態では、データ取得手段110の接合現象データ取得部111が、接合部の変化の動画像を撮影する高速カメラ4(
図1参照)と、上記動画像に対応する温度分布変化を計測するサーモカメラ5(
図1参照)とを備えている場合、相違データ抽出部130は、上記動画像およびその温度分布変化をもとに、接合部の溶金材の流動箇所の相違データを抽出することが可能である。
【0149】
<接合現象作業状態分析部230>
接合現象作業状態分析部230は、接合現象データ評価部221の接合現象の評価データと、作業状態データ評価部222の評価データを合成することによって、現象と作業プロセスを時間軸で対応させた分析を行う。
【0150】
時間軸で対応させる分析は、接合ツール(バーナー)の位置、動作方向および動作速度と、温度分布との対応関係がある。また、時間軸で対応させる分析の他の分析は、接合ツール(バーナー)の位置、動作方向および動作速度と、ろう流れの状況の対応関係など、が対象である。
【0151】
接合現象作業状態分析部230は、接合現象データ作業状態対応データ生成部2231と、接合条件記憶部2232と、比較部2233と、を備える。
【0152】
接合現象データ作業状態対応データ生成部2231は、接合現象データ評価部221の接合現象の評価データと、作業状態データ評価部222の評価データとを合成し、接合現象データ作業状態対応データを生成する。
【0153】
接合条件記憶部2232は、接合現象データ作業状態対応データに対応する基準の接合条件を記憶する。
【0154】
比較部2233は、生成した接合現象データ作業状態対応データと接合条件とを比較し、比較結果を相違データ抽出手段130に出力する。
【0155】
以下、上述のように構成された接合工程ライン監視システム200の接合工程ライン監視方法について説明する。
【0156】
接合工程ライン監視システム200の基本動作は、第1の実施形態の接合工程ライン監視システム100と同様である。
【0157】
データ評価手段220の動作に特徴がある。
【0158】
図17および
図18は、データ評価手段220の接合現象データ評価部221について説明する図である。
【0159】
図17は、接合現象データ評価部221の流動箇所抽出部2212の流動箇所の抽出の一例を示す図である。
図17(a)は、接合対象の管部品1aと管部品1bの接合部に、溶金材3によるさしろうを施して接合することを示している。
図17(b)−(g)は、
図17(a)の破線囲んだ部分の要部拡大図であり、高速カメラ4(
図1参照)により撮影された各画像(コマ)に対して、ろうの流れの軌跡を抽出している様子を示す。
【0160】
図17(b)−(g)に示すように、ろう流れは、接合部の各画像において、変化部分として映像が収録される。この例では、
図17(b)に示すろう付け作業の開始の計測時点では、溶金材3は溶けていない。
図17(c)に示す計測時点では、接合部に溶けた溶金材3aがろう付けされ、
図17(d)に示す計測時点では、接合部に溶けた溶金材3aが全周にわたってろう付けされている。流動箇所抽出部2212は、あらかじめ時間的に少なくとも1コマ以上前の画像との差分をすることで、変化部分を抽出する。
【0161】
流動箇所抽出部2212は、上記変化部分の閾値検出や、パターン画像を用いた画像認識により位置を特定する。
【0163】
図17(e)−(g)に示すように、流動箇所抽出部2212は、溶金材3の変化部分を抽出することで、ろうの流れの軌跡をデータ化する。また、溶金材3の先端を抽出することで、溶金材3の先端が、接合開始点となる位置の情報を習得することができる。溶金材3の先端の接合開始点の位置情報を得ることで、次に説明する溶金材先端部での温度状況を評価するのに有効になる。なお、
図17(d)(e)に示すように、フィレット形状の溶金材3aが接合部の接合線L全体(全周)に得られている。
【0164】
図18は、接合現象データ評価部221の温度分布評価部2213(
図16参照)の温度分布の一例を示す図である。
図18(a)は、管部品1bの温度と管部品1aの温度とがいずれも低く、加熱が不十分な温度分布を示し、
図18(b)は、管部品1bの温度が管部品1aの温度より高く、管部品1bの外縁部1b1の全周にわたって十分に加熱されるとともに、管部品1aにも適度な加熱が行われている温度分布を示す。
図18(c)−(e)は、ろう付け作業の各時間における
図18(b)の破線囲んだ部分の要部拡大図である。
【0165】
図18(a)に示すように、温度分布評価部2213(
図16参照)は、部材全体の温度を把握するとともに、(b)溶金材周辺の温度変化を評価する(
図18(b)参照)。このとき、
図18(c)に示すように、流動箇所抽出部2212(
図16参照)では、抽出した溶金材先端周辺の位置情報を用いて、温度が適切な条件か否かを評価する。
【0166】
このように、接合現象データ評価部221では、ろう流れについて、流動現象および温度条件を分析するデータを生成する。
【0167】
図19は、作業状態データ評価部222の作業手順抽出部2222(
図16参照)の一例を示す図である。
図19は、作業手順抽出部2222が、距離センサ6(
図1参照)を用いて、作業エリア内の位置と姿勢を評価し、作業箇所とその順番をデータ化する様子を示している。
図19(a)は、接合作業者の、管部品(接合対象の部材1)の作業箇所AおよびBの接合作業を表す図、(b)は、(a)の接合箇所(作業箇所)を模式的に示す図である。また、
図19(c)は、接合作業者が移動した場合の管部品(接合対象の部材1)の作業箇所AおよびBを表す図、(d)は、(c)の接合箇所を模式的に示す図である。また、
図19(e)は、接合作業者の移動後の、管部品(接合対象の部材1)の接合箇所AまたはBの接合作業を表す図、(f)は、(e)の接合箇所を模式的に示す図である。
【0168】
図19において、接合作業者は、接合対象の部材1に対して、接合ツール(ガスバーナー2)を右手に保持し、左手に溶金材3を保持してさしろうを施す状態を示している。
【0169】
図19(a)では、接合作業者の体は、管部品(接合対象の部材1)の作業箇所Aに近い位置にある。上述したように、データ取得手段110の作業状態データ取得部112(
図2参照)は、距離センサ6(
図1参照)の骨格情報から、接合作業者の体の動き(姿勢)をデータ化する。データ評価手段220は、接合作業者の姿勢が、接合作業中と評価する。ここでは、現在、
図19(b)に示す接合箇所Aで作業中と認識される。
【0170】
図19(c)に示すように、接合作業者が、作業箇所Aのろう付け作業を終え、作業箇所Bに移動しながら体を開いている場合、作業中とは評価されず、
図19(d)に示すように、接合作業者の体は、どの接合箇所にも属しないと認識される。
【0171】
図19(e)に示すように、接合作業者の体が、管部品(接合対象の部材1)の次の作業箇所Bに近い位置にある場合、作業状態データ取得部112は、距離センサ6(
図1参照)の骨格情報より、接合作業者の体の動き(姿勢)をデータ化する。データ評価手段220は、接合作業者の姿勢が、接合作業中と評価する。ここでは、現在、
図19(f)に示す接合箇所Bで作業中と認識される。このとき、作業箇所の順番は、接合箇所Aの作業時刻と、接合箇所Bの作業時刻より、整理され、接合箇所の作業記録として管理する。
【0172】
図20は、三軸方式の慣性センサ7を用いた接合ツールの先端位置(ガスバーナー2のトーチ2a先端位置)の動きのデータの一例を示す図であり、
図19で示した接合作業者のデータの例である。
図20(b),(f)の符号cは、ガスバーナー2のトーチ2aの上方向を示す。
【0173】
図20(a)は、
図19(b)に対応し、
図20(b)は、
図19(b)に示す作業箇所Aで作業中と認識された場合を示す。また、
図20(e)は、
図19(f)に対応し、
図20(f)は、
図19(f)に示す接合箇所Bで作業中と認識された場合の接合作業員が使う接合ツールの先端位置(ガスバーナー2のトーチ2a先端位置)の動きを示す図である。
【0174】
また、
図20(c)は、
図19(d)に対応し、
図20(d)は、
図19(d)に示すように接合作業者の体が、どの接合箇所にも属しないと認識された場合を示す。また、
図20(e)は、
図19(f)に対応し、
図20(f)は、
図19(e)に示す接合箇所Bで作業中と認識された場合の接合作業員が使う接合ツールの先端位置(ガスバーナー2のトーチ2a先端位置)の動きを示す図である。
【0175】
図16に示す作業手順抽出部2222は、作業中と評価された接合箇所に対して、バーナー(トーチ)の三次元的な軌跡を表すことができる。これによって、各接合箇所に対する作業プロセスを整理することができる。
【0176】
[応用例]
接合工程ライン監視システム100(200)は、PLC(Programmable Logic Controller:プログラマブル論理制御装置)を介して製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)に連携することも可能である。製造実行システム(MES)は、生産計画に従って、各PLCを介して接続された部品加工工程、部品組立工程、本接合工程ライン監視システム100(200)、検査工程など生産システム全体を制御する。製造実行システム(MES)は、工場のサブ工程との情報を連携し、生産計画を評価する。本接合工程ライン監視システム100(200)を接合作業工程に適用することで、接合ラインの作業状況・不良情報をより的確かつ、迅速に把握することができる。製造実行システム(MES)は、本接合工程ライン監視システム100(200)からの情報提供を受けることで、生産ラインの稼働状況を制御することができ、生産遅延や品質低下を未然に抑制することができる。また、生産計画を評価・見直すことも可能になる。例えば、接合ラインの作業状況・不良情報に応じて、後工程へ遅延や、手直しの情報を渡し、作業指示する。特に、後工程の検査工程では、検査の重点項目を指示し、検査員が効率よく検査を実施することを可能とする。また、接合ラインの作業状況・不良情報に応じて、設備の保守の指示や計画の要否を提示することができる。さらに、作業状況・不良情報を利用して、作業者の熟練度のレベルを評価し、データとして蓄積することでMESにて、生産計画、内容に応じた作業者の配置を割り当てることができる。
【0177】
本発明は上記各実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。例えば、接合工程は、ろう付けには限定されない。
【0178】
また、例えば、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0179】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。