(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記IDT電極において、前記第1の電極指と前記第2の電極指とが弾性波伝搬方向に重なり合っている交差領域が、前記第1及び前記第2の電極指の延びる方向中央における中央領域と、前記中央領域の前記第1及び前記第2の電極指の延びる方向両外側に配置された第1及び第2のエッジ領域とを有し、前記第1及び前記第2のエッジ領域の音速が、前記中央領域の音速よりも低くされている、請求項1に記載の弾性波装置。
前記第1及び前記第2のエッジ領域において、前記第1及び前記第2の電極指の弾性波伝搬方向に沿う寸法である幅が、前記中央領域における前記第1及び前記第2の電極指の幅よりも太くされている、請求項2に記載の弾性波装置。
前記第1及び前記第2のバスバーが、弾性波伝搬方向に沿って延びる複数の開口を有し、前記第1及び前記第2のバスバーにおける、前記複数の開口の前記交差領域側の部分が、それぞれ第1及び第2の細バスバー部とされており、前記第1及び前記第2のバスバーにおける、前記複数の開口の前記交差領域とは反対側の部分がそれぞれ第1及び第2の外側バスバー部とされており、前記第1及び前記第2の細バスバー部と、前記第1及び前記第2の外側バスバー部とが、前記複数の開口間に配置された連結部により連結されている、請求項2または3に記載の弾性波装置。
前記第1及び前記第2の電極指の前記第1及び前記第2のエッジ領域に位置している部分に質量付加膜として金属膜が積層されている、請求項3または4に記載の弾性波装置。
前記IDT電極上に周波数調整膜として第2の誘電体膜が積層されており、前記第2の誘電体膜を介して、前記第1の誘電体膜が積層されている、請求項10に記載の弾性波装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているように、従来、電極指先端と、バスバーとの間のギャップの長さは長いことが望ましいと考えられていた。
【0005】
しかしながら、圧電基板が積層型基板である弾性波装置においては、ギャップを大きくすると、伝搬損失が大きくなることを、本願発明者が新たに見出した。特に、高音速材料層、低音速材料層及び圧電膜が積層されている積層型基板の場合に、伝搬損失が大きくなりがちであった。なお、高音速材料とは、圧電膜を伝搬する弾性波の伝搬速度よりも、伝搬するバルク波の音速が高速である材料である。低音速材料とは、圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも、伝搬するバルク波の音速が低い材料である。
【0006】
本発明の目的は、上述した本願発明者により新たに見出された課題を解決することにある。すなわち、本発明の目的は、積層型基板を有し、伝搬損失が小さい、弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弾性波装置は、圧電膜と、前記圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも低速のバルク波が伝搬する低音速材料層と、前記圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも高速のバルク波が伝搬する高音速材料層とを有し、前記高音速材料層と前記圧電膜との間に前記低音速材料層が配置されており、逆速度面が凸である積層型基板と、前記圧電膜上に設けられたIDT電極とを備え、前記IDT電極が、対向し合っている第1及び第2のバスバーと、前記第1のバスバーから前記第2のバスバー側に延ばされた複数本の第1の電極指と、前記第2のバスバーから前記第1のバスバーに向かって延ばされた複数本の第2の電極指とを有し、前記第1の電極指の先端と前記第2のバスバーとの間の第1のギャップ、及び前記第2の電極指の先端と前記第1のバスバーとの間の第2のギャップの前記第1及び前記第2の電極指が延びる方向に沿う寸法であるギャップ長が、0.23λ以下である。
【0008】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、前記IDT電極において、前記第1の電極指と前記第2の電極指とが弾性波伝搬方向に重なり合っている交差領域が、前記第1及び前記第2の電極指の延びる方向中央における中央領域と、前記中央領域の前記第1及び前記第2の電極指の延びる方向両外側に配置された第1及び第2のエッジ領域とを有し、前記第1及び前記第2のエッジ領域の音速が、前記中央領域の音速よりも低くされている。この場合には、横モードリップルを小さくすることができる。
【0009】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記第1及び前記第2のエッジ領域において、前記第1及び前記第2の電極指の弾性波伝搬方向に沿う寸法である幅が、前記中央領域における前記第1及び前記第2の電極指の幅よりも太くされている。
【0010】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記第1及び前記第2のバスバーが、弾性波伝搬方向に沿って延びる複数の開口を有し、前記複数の開口の前記交差領域側の部分が、それぞれ第1及び第2の細バスバー部とされており、前記複数の開口の前記交差領域とは反対側の部分がそれぞれ第1及び第2の外側バスバー部とされており、前記第1及び前記第2の細バスバー部と、前記第1及び前記第2の外側バスバー部とが、前記複数の開口間に配置された連結部により連結されている。
【0011】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電膜がLiTaO
3からなり、厚みが3.5λ以下である。この場合には、Q値を高めることができる。
【0012】
本発明において、前記高音速材料層は、高音速材料からなる支持基板であってもよい。また、本発明に係る弾性波装置では、高音速材料層を支持している支持基板がさらに備えられていてもよい。
【0013】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記第1及び前記第2のエッジ領域に質量付加膜として第1の誘電体膜が積層されている。
【0014】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記第1及び前記第2の電極指の前記第1及び前記第2のエッジ領域に位置している部分に質量付加膜として金属膜が積層されている。
【0015】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記第1の誘電体膜が、前記第1及び前記第2のバスバー、及び前記第1及び前記第2のギャップにおいても積層されている。
【0016】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記IDT電極上に周波数調整膜として第2の誘電体膜が積層されており、前記第2の誘電体膜を介して、前記第1の誘電体膜が積層されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高音速材料層、低音速材料層及び圧電膜が積層されている積層型基板を用いている弾性波装置において、伝搬損失を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の電極構造の要部を示す部分切欠き平面図である。
【
図2】第1の実施形態の弾性波装置の略図的正面断面図である。
【
図3】第1の実施形態の弾性波装置の電極構造を示す模式的平面図である。
【
図4】
図1の一部を拡大して示す部分切欠き拡大平面図である。
【
図5】LiTaO
3及び第1の実施形態で用いられている積層型基板の逆速度面を示す図である。
【
図6】ギャップ長Gが、0.17λ、0.28λまたは0.61λである弾性波装置のリターンロス特性を示す図である。
【
図7】IDT電極におけるギャップ長Gと、リターンロスとの関係を示す図である。
【
図8】第1の実施形態の弾性波装置において、伝搬損失が低下する理由を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の電極構造と各領域の音速を示す部分切欠き平面図である。
【
図10】第3の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を説明するための平面図である。
【
図11】第4の実施形態に係る弾性波装置のIDT電極を説明するための平面図である。
【
図12】第5の実施形態の弾性波装置のIDT電極の電極構造を説明するための平面図である。
【
図13】第6の実施形態に係る弾性波装置の略図的側面断面図である。
【
図14】第7の実施形態に係る弾性波装置のIDT電極の電極構造を説明するための平面図である。
【
図15】第7の実施形態の弾性波装置の略図的側面断面図である。
【
図16】第8の実施形態に係る弾性波装置の略図的側面断面図である。
【
図17】第8の実施形態の弾性波装置の変形例を説明するための略図的側面断面図である。
【
図18】第8の実施形態の弾性波装置の他の変形例を説明するための略図的側面断面図である。
【
図19】第4の実施形態に係る弾性波装置におけるエッジ領域の長さと横モードの電気機械結合係数との関係を示す図である。
【
図20】第7の実施形態に係る弾性波装置におけるエッジ領域の長さと横モードの電気機械結合係数との関係を示す図である。
【
図21】第9の実施形態の弾性波装置の正面断面図である。
【
図22】LiTaO
3膜厚と、Q特性との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0020】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の略図的正面断面図であり、
図3は、この弾性波装置の電極構造を示す模式的平面図である。
【0022】
弾性波装置1は、積層型基板2を有する。積層型基板2は、高音速材料層としての高音速支持基板3と、低音速材料層4と、LiTaO
3からなる圧電膜5とを有する。高音速支持基板3上に、低音速材料層4及び圧電膜5がこの順序で積層されている。圧電膜5上に、IDT電極6及び反射器7,8が設けられている。それによって、1ポート型弾性波共振子が構成されている。
【0023】
高音速材料層を構成している高音速材料とは、伝搬するバルク波の音速が、圧電膜5を伝搬する弾性波の音速よりも高速である材料である。低音速材料層4を構成している低音速材料とは、伝搬するバルク波の音速が、圧電膜5を伝搬する弾性波の音速よりも低速である材料をいう。高音速支持基板3上に低音速材料層4及び圧電膜5が積層されている積層型基板2では、弾性波のエネルギーを、圧電膜5内に効果的に閉じ込めることができる。
【0024】
もっとも、前述したように、本願発明者は、このような積層型基板2を用いた場合には、IDT電極6におけるギャップの寸法が大きくなると、伝搬損失が大きくなることを新たに見出した。
【0025】
図3に示すように、IDT電極6は、対向し合う第1及び第2のバスバー11,12を有する。複数本の第1の電極指13の一端が第1のバスバー11に接続されている。第1の電極指13は、第2のバスバー12側に向かって延ばされている。複数本の第2の電極指14の一端が第2のバスバー12に接続されている。第2の電極指14は、第1のバスバー11側に向かって延ばされている。
【0026】
第1の電極指13の先端と、第2のバスバー12との間が第1のギャップであり、第2の電極指14の先端と、第1のバスバー11との間が第2のギャップである。この第1及び第2のギャップの第1及び第2の電極指13,14の延びる方向の寸法を、以下、ギャップ長Gとする。
【0027】
弾性波装置1では、ギャップ長Gが、0.23λ以下であるため、伝搬損失を小さくすることができる。
【0028】
なお、
図3では、IDT電極6を略図的に示しているが、
図1及び
図4に、IDT電極6の要部を拡大して示す。また、
図4では、各部分の音速も示すこととする。第1の電極指13は、太幅部13a,13bを有する。ここで、電極指の幅とは、弾性波伝搬方向に沿う寸法をいうものとする。第2の電極指14も、太幅部14a,14bを有する。太幅部13a,14aは、第1及び第2の電極指13,14の先端側に位置している。太幅部13bは、太幅部14aと弾性波伝搬方向において対向する位置に設けられている。太幅部14bは、太幅部13aと弾性波伝搬方向において対向するように設けられている。
【0029】
従って、第1の電極指13と第2の電極指14とが弾性波伝搬方向において重なり合っている領域である交差領域Cは、中央領域C1と、中央領域C1の弾性波伝搬方向外側に配置された第1及び第2のエッジ領域C2,C3とを有する。また、第1のエッジ領域C2の外側が、第2のギャップが位置しているギャップ領域であり、これを第2のギャップ領域とする。第2のエッジ領域C3の弾性波伝搬方向外側が、第1のギャップが位置している第1のギャップ領域である。第1及び第2のギャップ領域の外側は、第1のバスバー11または第2のバスバー12が位置している領域となる。これらの各領域の音速を、
図4に、模式的に示す。
図4における各領域の音速は、
図4の右側にいくほど高速であることを意味する。
【0030】
弾性波装置1では、IDT電極6において、中央領域C1の音速V1に比べて、第1及び第2のエッジ領域C2,C3の音速V2が低められている。そして、第1及び第2のエッジ領域C2,C3の外側に、音速V3のギャップ領域が設けられている。さらに、第1及び第2のバスバー11,12が設けられている部分の音速がV4であり、V4は、V3より低速である。音速V1〜V4の高低は、V3>V4>V1>V2となる。
【0031】
積層型基板の場合、横モードが問題となるため、このような音速関係を有するようにIDT電極6を構成することで、音速差を利用して横モードを抑制することができる。もっとも、本発明は、横モードを抑制するための電極構造を有するものに限定されるものではない。
【0032】
前述したように、弾性波装置1の特徴は、前述したギャップ長Gが0.23λ以下であることを特徴とする。弾性波装置1では、ギャップ領域と、第1及び第2のバスバー11,12が設けられている部分が高音速領域を構成している。従って、上記ギャップ長Gが小さくても、ピストンモードを形成して横モードを抑圧することができる。それによって、伝搬損失を小さくすることができる。これを、具体的な実験例に基づき説明する。
【0033】
弾性波装置1を以下の設計パラメータで作製した。
【0034】
積層型基板2の構成。高音速支持基板3:Si基板、低音速材料層4:SiO
2膜、厚みは0.3λ。圧電膜5:オイラー角(0°,140°,0°)のLiTaO
3膜、厚みは0.3λ
IDT電極6及び反射器7,8の電極材料:Al
IDT電極6の電極指の対数:100対
IDT電極6のデューティ:0.45
反射器7,8の電極指の本数:20対
IDT電極6及び反射器7,8の膜厚:0.05λ
λ=2μmとした。
【0035】
ギャップ長Gを0.17λ、0.28λまたは0.61λとされている3種類の弾性波装置1を作製した。これらの弾性波装置のリターンロス特性を
図6に示す。
【0036】
図6から明らかなように、ギャップ長が0.61λの場合、リターンロス特性が最も悪く、0.28λで若干改善されており、0.17λの場合、リターンロス特性が最も良好であることがわかる。すなわち、ギャップ長を0.17λとすれば、伝搬損失を小さくし得ることがわかる。
【0037】
そこで、上記の結果を踏まえ、弾性波装置1において、ギャップ長Gをさらに種々変更し、リターンロス特性を評価した。結果を
図7に示す。なお、
図7に示すリターンロスの値は、2600MHz付近におけるリターンロスが最も悪化している部分の値を示す。
【0038】
図7から明らかなように、ギャップ長Gが0.24λ以上では、リターンロスが大きいのに対し、0.23λ以下では、リターンロスを小さくし、伝搬損失を小さくし得ることがわかる。
【0039】
上記のように、ギャップ長Gを小さくし得るのは、以下の理由によると考えられる。
図5の実線は、上記積層型基板2の逆速度面を示し、破線は、LiTaO
3単体からなる圧電基板の逆速度面を示す。
図5から明らかなように、積層型基板2を用いた場合、逆速度面が凸になる。また、積層型基板2の逆速度面は、LiTaO
3単体からなる圧電基板の逆速度面とは異なっている。この違いが、ギャップ長Gを大きくした場合に、伝搬損失が悪化する理由と考えられる。すなわち、低音速材料層4におけるSH成分のバルク波の音速は、3750m/秒程度であり、IDT電極6で励振する弾性波の音速に非常に近い。従って、上記バルク波が、弾性波として利用するモードと結合し易い。そのため、ギャップ長Gが大きくなると、主モードとして励振された弾性波が、圧電膜5の深さ方向に漏洩する。それによって、伝搬損失が悪化していると考えられる。
【0040】
これに対して弾性波装置1では、ギャップ長Gが小さくされている。従って、
図8に矢印Aで示すように、深さ方向に漏洩しようとした主モードが近接している第1のバスバー11の内側端縁により反射され、厚み方向への漏洩が抑制されていると考えられる。従って、リターンロス特性の改善、すなわち伝搬損失を小さくすることが実現されていると考えられる。
【0041】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置の電極構造の要部を拡大して示す部分切欠き平面図である。第2の実施形態の弾性波装置では、IDT電極26において、第1及び第2のバスバー11,12の構造が、
図1に示したIDT電極6と異なることを除いては、第1の実施形態の弾性波装置1と同様に構成されている。
【0042】
IDT電極26では、第1及び第2のバスバー11,12に、複数の開口31,35がそれぞれ設けられている。複数の開口31は、弾性波伝搬方向に沿って並べられている。複数の開口35も、弾性波伝搬方向に沿って並べられている。
【0043】
そして、開口31,35の交差領域側の部分が、第1及び第2の細バスバー部32,36とされている。複数の開口31,35の交差領域とは反対側の部分が、第1及び第2の外側バスバー部33,37とされている。第1の細バスバー部32と、第1の外側バスバー部33とは、複数の連結部34により連結されている。連結部34は、隣り合う開口31の間に位置している。
【0044】
同様に、第2のバスバー12においても、第2の細バスバー部36と、第2の外側バスバー部37とが、複数の連結部38により連結されている。
【0045】
なお、連結部34は、第1の電極指13を交差領域の外側方向に延長した位置に配置されている。連結部38は、第2の電極指14を交差領域の外側方向に延長した位置に設けられている。
【0046】
第2の実施形態の弾性波装置においても、第1及び第2の電極指13,14の先端と、第1及び第2のバスバー11,12との間のギャップ長は、0.23λ以下とされている。従って、第1の実施形態と同様に、伝搬損失を小さくすることができる。
【0047】
また、第2の実施形態の弾性波装置では、IDT電極26の弾性波伝搬方向と直交する各領域の音速は、
図9に示す通りとなる。
【0048】
中央領域の音速はV1、第1及び第2のエッジ領域の音速はV2とする。第1及び第2のギャップ領域の音速はV10、第1及び第2の細バスバー部32,36の音速はV11、開口31,35が設けられている領域の音速はV12、第1及び第2の外側バスバー部33,37が設けられている領域の音速はV13とする。音速V1,V2,V10〜V13には、V10>V12>V11=V13>V1>V2の関係がある。
【0049】
この場合、第1及び第2のエッジ領域に対し、第2または第1のギャップと第1または第2の細バスバー部32,36とにより高音速領域が構成されている。従って、第1の実施形態と同様に横モードリップルを抑圧することができる。
【0050】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す平面図である。第3の実施形態の弾性波装置では、IDT電極41は、正規型のIDT電極である。第1のバスバー42と第2のバスバー43とが対向し合っている。複数本の第1の電極指44の一端が第1のバスバー42に接続されている。複数本の第2の電極指45の一端が第2のバスバー43に接続されている。そして、第1及び第2の電極指44,45は、その全長にわたり、幅が一定とされている。このように、正規型のIDT電極を有する弾性波装置であってもよい。
【0051】
本実施形態においても、第1及び第2の電極指44,45の先端と、第2のバスバー43または第1のバスバー42との間のギャップのギャップ長Gは、0.23λ以下とされている。従って、第1及び第2の実施形態の場合と同様に、伝搬損失を小さくすることができる。
【0052】
図11は、本発明の第4の実施形態に係る弾性波装置におけるIDT電極を説明するための平面図である。第4の実施形態の弾性波装置では、IDT電極51において複数本の第1の電極指52と複数本の第2の電極指53が積層されている。そして、第1の電極指52及び第2の電極指53の幅は、一定とされている。他方、第1及び第2のエッジ領域において、質量付加膜としての第1の誘電体膜54が積層されている。
【0053】
第1の誘電体膜54は、酸化ケイ素、五酸化タンタル、酸化テルルなどの誘電体からなる。第1の誘電体膜54が第1及び第2の電極指52,53に積層されている部分において、音速が低められることになる。第1の誘電体膜54は、弾性波伝搬方向に延びるように設けられている。従って、第1の誘電体膜54は、第1及び第2の電極指52,53間の圧電膜上にも積層されている。
【0054】
図12は、第5の実施形態に係る弾性波装置のIDT電極を示す平面図である。IDT電極61では、第1及び第2の電極指52,53の第1及び第2のエッジ領域に位置している部分において、質量付加膜としての金属膜62が積層されている。それによって、第1及び第2のエッジ領域における音速が低められている。
【0055】
図13は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の略図的側面断面図である。弾性波装置71では、第1の誘電体膜54Aが、IDT電極51Aの下方に積層されている。すなわち、第1の誘電体膜54Aが、第1及び第2のエッジ領域において、第1の電極指52の下方に積層されている。このように、第1の誘電体膜54Aは、第1の誘電体膜54とは逆に、IDT電極51Aの下方に設けられていてもよい。弾性波装置71では、さらに、第2の誘電体膜72が、IDT電極51Aを覆うように設けられている。第2の誘電体膜72を設けることにより、IDT電極51Aを保護することができ、かつ周波数調整を行なうことができる。すなわち、第2の誘電体膜72の厚みや材料を調整することにより、周波数を調整することができる。
【0056】
上記第4〜第6の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ギャップ長を0.23λ以下とすることにより、伝搬損失を小さくすることができる。
【0057】
図14は、第7の実施形態に係る弾性波装置のIDT電極を説明するための平面図である。
図15は、
図14に示した弾性波装置の略図的側面断面図である。
【0058】
第7の実施形態では、IDT電極51上に、第1の誘電体膜54が、積層されている。
図11では、第1の誘電体膜54は第1及び第2のエッジ領域に設けられていたが、
図14に示す第7の実施形態では、第1の誘電体膜54は、第1及び第2のエッジ領域だけでなく、ギャップ領域及び第1及び第2のバスバーを覆うように積層されている。この場合においても、第1及び第2のエッジ領域が、第1の誘電体膜54の積層により、音速が低められている。そして、この場合、中央領域の音速をV1、第1及び第2のエッジ領域の音速をV2、ギャップ領域の音速をV3、第1及び第2のバスバーが設けられている領域の音速をV4とした場合、V3>V1≒V4>V2の音速関係が成立する。従って、ギャップ長を0.23λ以下とすることにより、本実施形態においても、伝搬損失を小さくすることができる。
【0059】
図16は、第8の実施形態に係る弾性波装置の側面断面図である。第8の実施形態の弾性波装置では、第1の誘電体膜54と、IDT電極51との間に周波数調整膜としての第2の誘電体膜72が積層されている。第2の誘電体膜72は、適宜の誘電体、例えば酸化ケイ素などからなる。第2の誘電体膜72を設けることにより、周波数調整を行なうことができる。このように、第1の誘電体膜54とIDT電極51との間に第2の誘電体膜72を設けてもよい。
【0060】
また、
図15では、第1の誘電体膜54はIDT電極51上に積層されていたが、
図17に示すように、第1の誘電体膜54は、IDT電極51の下方に設けられていてもよい。この場合、周波数調整膜としての第2の誘電体膜72を、IDT電極51を覆うように設けてもよい。
【0061】
さらに、
図18に示すように、IDT電極51を覆うように第2の誘電体膜72が設けられており、第1の誘電体膜54が、第2の誘電体膜72内に埋設されていてもよい。
【0062】
図14〜
図18に示した構造においても、前述したように、ギャップ領域が高音速領域を構成しているため、ギャップ長を0.23λ以下と小さくしたとしても、伝搬損失を小さくすることができる。
【0063】
図19は、
図11に示したIDT電極を有する弾性波装置におけるエッジ領域の長さと、横モードの電気機械結合係数との関係を示す図である。なお、エッジ領域の長さは、第1及び第2のエッジ領域の第1及び第2の電極指の延びる方向の寸法である。また、
図20は、
図14に示したIDT電極を用いた弾性波装置におけるエッジ領域の長さと、横モードの電気機械結合係数との関係を示す図である。
図19及び
図20のいずれにおいても、3次、5次、7次または9次の横モードの場合の結果を示す。
図19に示す結果に比べ、
図20に示す結果では、IDT電極の先端の寸法ばらつきに対する横モードの抑制能力が高いことがわかる。従って、好ましくは、
図14に示したように、第1の誘電体膜54を、第1及び第2のエッジ領域だけでなく、ギャップ領域及び第1及び第2のバスバーが設けられている領域まで被覆するように設けることが望ましい。
【0064】
図21は、第9の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。弾性波装置91は、積層型基板2Aを有する。積層型基板2Aでは、支持基板3A上に、高音速材料層3B、低音速材料層4及びLiTaO
3からなる圧電膜5が積層されている。高音速材料層3Bが設けられているため、支持基板3Aは高音速材料以外の材料で形成されていてもよい。もっとも、支持基板3Aは、高音速材料からなるものであってもよい。
【0065】
弾性波装置91は、積層型基板2Aの構造が
図2に示した積層型基板2と異なることを除いては、同様に構成されている。従って、第4の実施形態の弾性波装置51においても、伝搬損失を小さくすることができる。
【0066】
なお、
図2や
図21に示した積層型基板2,2Aを用いる場合、圧電膜5の厚みは、3.5λ以下であることが好ましい。
図22に示すように、積層型基板2を用いた場合、LiTaO
3の膜厚が3.5λより厚くなると、Q特性が劣化する。従って、Q特性を高めることができるので、LiTaO
3の膜厚は、3.5λ以下であることが望ましい。
【0067】
なお、上述した高音速材料としては、Siなどの半導体、SiNもしくはAl
2O
3などの無機絶縁物、またはPt、Wなどの金属もしくは合金を用いることができる。
【0068】
また、上記低音速材料としては、酸化ケイ素もしくは酸窒化ケイ素などの無機絶縁物材料や、樹脂材料などを用いることができる。
【0069】
もっとも、高音速材料及び低音速材料としては、前述した音速関係を満たす限り、適宜の材料の組み合わせを用いることができる。
【0070】
また、第1〜第9の実施形態では、1ポート型弾性波共振子につき説明したが、本発明においては、IDT電極が上記構造を有する限り、弾性波フィルタなどの他の電極構造を有する弾性波装置であってもよい。