特許第6954844号(P6954844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6954844造血幹細胞を培養するため及び/又は造血幹細胞を前駆体へ分化させるための方法及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954844
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】造血幹細胞を培養するため及び/又は造血幹細胞を前駆体へ分化させるための方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0789 20100101AFI20211018BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20211018BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20211018BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20211018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211018BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   C12N5/0789
   A61K35/28
   A61K35/51
   A61K35/545
   A61P43/00 107
   A61L27/38 300
【請求項の数】13
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-563211(P2017-563211)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公表番号】特表2018-516089(P2018-516089A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】CA2016050630
(87)【国際公開番号】WO2016191879
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月29日
(31)【優先権主張番号】62/171,492
(32)【優先日】2015年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/335,983
(32)【優先日】2016年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502134649
【氏名又は名称】エマ−ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ・ラガニエ
(72)【発明者】
【氏名】ネリー・デュモン
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−504902(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0266557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00− 7/08
A61K 35/00−35/768
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞を培養するためのインビトロの方法であって、
(a)前記造血幹細胞を、造血幹細胞拡大を促進するピリミド [4,5-b]インドール誘導体を含む細胞培養培地において増殖させる工程と、
(b)前記造血幹細胞を、前記細胞培養培地中で38℃から40℃の間のインキュベーション温度でインキュベートする工程と
を含み、
前記細胞培養培地が、造血幹細胞培養培地又は造血幹細胞の巨核球系統への分化を促進する培地である、方法。
【請求項2】
前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記造血幹細胞が、
(a)臍帯血、
(b)骨髄、
(c)末梢血、
(d)人工多能性幹細胞、
(e)胚性幹細胞、
(f)非造血由来の分化細胞から分化転換されたもの、
(g)遺伝子改変された造血幹細胞、
(h)不死化造血幹細胞、
(i)多能性若しくは複能性細胞の他の供給源、又は
(j)それらの任意の組合せ
由来である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記造血幹細胞が、動員末梢血細胞由来である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記造血幹細胞が、未動員末梢血細胞由来である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記造血幹細胞が、白血球低減化、白血球除去、及び/又はその他の血液精製若しくは末梢血の処理後に残存している細胞由来である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記造血幹細胞が、前記ピリミド[4,5-b]インドール誘導体を含む細胞培養培地において、38℃から40℃の間のインキュベーション温度で、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21日間インキュベートされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記インキュベーション温度が、39℃である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
造血幹細胞拡大の前記ピリミド [4,5-b]インドール誘導体が
(a)(1r,4r)-N1-(2-ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-イル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
(b)メチル4-(3-(ピペリジン-1-イル)プロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート、
(c)メチル4-(3-(ピペリジン-1-イル)プロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート塩酸塩、
(d)(a)から(c)のいずれか1つの薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、若しくは立体異性体、又は
(e)(a)から(d)の任意の組合せ
である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞培養培地が、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、又はSCF及びTPOの両方を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記造血幹細胞培養培地が、ヒトFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、低密度リポタンパク質(LDL)、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
造血幹細胞の巨核球系統への分化を促進する前記培地が、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、ヒトFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3)、IL-6、IL-9、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(c)前記ピリミド[4,5-b]インドール誘導体を除去し、38℃から40℃の間のインキュベーション温度、又は約37℃のインキュベーション温度で前記細胞を増殖させ続けることにより、前記細胞を同調させる工程を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、造血幹細胞に関する。より詳細には、本明細書は、軽度温熱(mild hyperthermia)下(例えば、38℃から40℃の間)及び造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストの存在下において造血幹細胞を培養することに関する。
【背景技術】
【0002】
造血幹細胞(HSC)は中胚葉由来であり、骨髄又はリンパ系統にかかわらず血液中に見られるすべての細胞成分の産生に関与する。HSCは、骨髄系共通前駆体(CMP)及びリンパ系共通前駆体(CLP)に分化する。CMPは、赤血球、顆粒球、単球、巨核球、及び樹状系統の細胞を生じるのに対し、CLPは、Tリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、ナチュラルキラー細胞及びリンパ系樹状細胞の誘導につながる。骨髄系統細胞の最終分化は、最終的に赤血球、顆粒球、単球、骨髄由来樹状細胞、及び血小板の形成及び複製に至る。更に、HSC(未分化又は長期)は、自己複製の能力を有し、それにより確実に個体の一生涯に対して前駆体及び最終分化した血液細胞を十分に供給する。これらの細胞の自己複製する能力は、医療分野、すなわち、血液癌又は骨髄機能不全に苦しむ患者の処置様式としてのHSC移植における大きな進歩につながった。歴史的に、骨髄は、HSCの主要な供給源であり、今日に至るまで依然として骨髄置換のための細胞の重要な供給源である。それ以来、G-CSF動員ドナーの臍帯血及び末梢血もHSC供給源として使用されてきた。
【0003】
診療所におけるそれらの使用と同時に、HSCは、実験室における様々な系統の細胞へのインビトロの培養、拡大、分化、及び血液成分の産生を目的とした多大な調査研究努力の対象であった。この研究は、いくつかの系統特異的サイトカインの発見をもたらし、それは、現在では造血幹細胞の特定の系統への優先的成長及び/又は分化を可能にする各種培養方法に日常的に使用されている。更に、発熱様の軽度温熱下(37℃の標準的な温度の代わりに39℃)におけるHSCの培養が巨核球誘導サイトカインカクテルの存在下において巨核球系統への拡大及び分化を加速させることも発見された(Proulxら、2004年)。更に最近、ピリミドインドール化合物のあるクラスは、長期造血幹細胞を拡大する能力が確認された(Faresら、2014年)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 1993/020078
【特許文献2】WO 1995/019970
【特許文献3】WO 1997/002266
【特許文献4】WO 1998/042708
【特許文献5】WO 2000/066585
【特許文献6】WO 2003/037898
【特許文献7】WO 2004/058764
【特許文献8】WO 2005/037825
【特許文献9】WO 2006/116733
【特許文献10】WO 2008/055233
【特許文献11】WO 2009/004329
【特許文献12】WO 2010/006032
【特許文献13】WO 2013/110198
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Mack Publishing Co., Philadelphia, Pa., 第18版(1995年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした進歩にもかかわらず、インビトロにおけるHSCの拡大及びそれらの特定の骨髄系統への優先的分化に対して多くの欠点が存在する。例えば、未分化表現型及び制御された分化を維持しながらインビトロにおいてHSCを拡大することは依然として特に難しい。特定の系統への細胞の効率的な拡大及び維持にも難題が残されている。例えば、インビトロにおける血液成分の産生を構想するために必要とされる拡大のレベルが今日の技術では依然として不十分なままである。更に、現行の培養方法は、一般に特定の臨床的徴候に対する医学用途に適用できない不均一な細胞集団をもたらす。診療所におけるそれらの使用を可能にするために、特定の幹細胞及び前駆体の集団のインビトロにおける作製にはかなりの改善が必要であると予想される。このように、臨床用途及び大量作製のために同時に造血幹細胞及び前駆細胞の均一な細胞集団への分化の方向及び程度の制御を可能にしながらインビトロにおける大量の拡大を可能にする方法及び技術に対するニーズがある。
【0007】
本明細書は多くの文献を参照し、その内容全体を参照によって本明細書に組み込むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本記述は、造血幹細胞(HSC)が、軽度温熱下(例えば、38℃から40℃の間)及び造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストの存在下において有利に培養することができるという驚くべき発見から生じた。軽度温熱及びピリミドインドール誘導体を組み合わせた使用は、相乗的に作用して(長期HSCを含む)CD34+HSCの拡大及び/又は「系統刺激された(lineage-primed)」若しくは前駆細胞への分化、及び/又はそれらの維持(例えば、骨髄系前駆体、巨核球前駆体)を促進することが本明細書に示されている。
【0009】
実際に、一部の実施形態において、軽度温熱及び造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストの組合せは、造血幹細胞の自己複製に好都合な培養培地が使用された場合、指数関数的にHSC(CD34+細胞)を拡大することが示された。理論に縛られるものではないが、本明細書中で開示されている結果は、軽度温熱をピリミドインドール化合物の使用と組み合わせるとピリミドインドール化合物の分化抑制効果を保持する一方で、同時に軽度温熱インキュベーション温度の促進効果を助長することを示唆する。
【0010】
他の実施形態において、軽度温熱及び造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストの組合せはまた、巨核球系統への分化に有利な培養条件が使用された場合、指数関数的にHSCの前駆細胞(例えば、骨髄系前駆体、巨核球前駆体)への分化を増加させることも示した。理論に縛られるものではないが、本明細書中で開示されている結果は、ピリミドインドール化合物が、成熟巨核球段階前のHSCの温熱誘導分化を阻止し、及び/又は巨核球前駆体を優先的に拡大し、保持することを示唆する。したがって、一部の実施形態において、ピリミドインドール化合物は除去されてもよく、細胞は軽度温熱の条件下において更に増殖させられてもよく、それにより更に同調した細胞集団を作製する。
【0011】
したがって、本明細書は、以下の態様に関する場合もある。
1.造血幹細胞を培養するためのインビトロの方法であって、
(a)前記造血幹細胞を、造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストを含む細胞培養培地において増殖させる工程と、
(b)前記造血幹細胞を、38℃から40℃の間のインキュベーション温度でインキュベートする工程と
を含む、方法。
【0012】
2.前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である、態様1に記載の方法。
【0013】
3.前記造血幹細胞が、
(a)臍帯血、
(b)骨髄、
(c)末梢血、
(d)人工多能性幹細胞、
(e)胚性幹細胞、
(f)非造血由来の分化細胞から分化転換されたもの、
(g)遺伝子改変された造血幹細胞、
(h)不死化造血幹細胞、
(i)多能性若しくは複能性細胞の他の供給源、又は
(j)それらの任意の組合せ
由来である、態様1又は2に記載の方法。
【0014】
4.前記造血幹細胞が、動員末梢血細胞由来である、態様3に記載の方法。
【0015】
5.前記造血幹細胞が、未動員末梢血細胞由来である、態様3に記載の方法。
【0016】
6.前記造血幹細胞が、白血球低減化(leukoreduction)、白血球除去(deleukocytation)、及び/又はその他の血液精製若しくは末梢血の処理後に残存している細胞由来である、態様4又は5に記載の方法。
【0017】
7.前記造血幹細胞が、造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストを含む細胞培養培地において、及び/又は38℃から40℃の間のインキュベーション温度で、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21日間インキュベートされる、態様1から6のいずれか一態様に記載の方法。
【0018】
8.前記インキュベーション温度が、39℃である、態様1から7のいずれか一態様に記載の方法。
【0019】
9.前記造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストが、
(a)ピリミド[4,5-b]インドール誘導体、
(b)(1r,4r)-N1-(2-ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-イル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
(c)メチル4-(3-(ピペリジン-1-イル)プロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート、
(d)メチル4-(3-(ピペリジン-1-イル)プロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート塩酸塩、
(e)(a)から(d)のいずれか1つの薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、若しくは立体異性体、又は
(f)(a)から(e)の任意の組合せ
である、態様1から8のいずれか一態様に記載の方法。
【0020】
10.前記細胞培養培地が、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、又はSCF及びTPOの両方を含む、態様1から9のいずれか一態様に記載の方法。
【0021】
11.前記方法が、造血幹細胞を拡大するためであり、前記細胞培養培地が、造血幹細胞培養培地である、態様1から9のいずれか一態様に記載の方法。
【0022】
12.前記造血幹細胞培養培地が、ヒトFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、低密度リポタンパク質(LDL)、又はそれらの任意の組合せを含む、態様11に記載の方法。
【0023】
13.前記方法が、造血幹細胞を培養して、巨核球前駆細胞を作製するためであり、前記細胞培養培地が、造血幹細胞の巨核球系統への分化を促進する培地である、態様1から9のいずれか一態様に記載の方法。
【0024】
14.造血幹細胞の巨核球系統への分化を促進する前記培地が、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、ヒトFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3)、IL-6、IL-9、又はそれらの任意の組合せを含む、態様13に記載の方法。
【0025】
15.前記方法が、造血幹細胞を培養して、骨髄系前駆細胞を作製するためであり、前記細胞培養培地が、造血幹細胞の骨髄系前駆細胞系統への分化を促進する培地である、態様1から9のいずれか一態様に記載の方法。
【0026】
16.(c)造血幹細胞拡大の前記ピリミドインドール誘導体アゴニストを除去し、38℃から40℃の間のインキュベーション温度、又は約37℃のインキュベーション温度で前記細胞を増殖させ続けることにより、前記細胞を同調させる工程を更に含む、態様1から15のいずれか一態様に記載の方法。
【0027】
17.(a)態様11若しくは12に記載の方法によって作製された拡大された造血幹細胞の集団、
(b)巨核球前駆細胞の集団であって、
(i)態様13若しくは14に記載の方法によって作製された、及び/又は
(ii)少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%のCD34+/CD41+細胞を含む、集団、
(c)態様15に記載の方法によって作製された骨髄系前駆細胞の集団、
(d)態様16に記載の方法によって作製された同調した細胞集団、又は
(e)(a)から(d)の任意の組合せ
である、インビトロにおいて拡大された細胞集団。
【0028】
18.対象における移植に使用するための、態様17に記載のインビトロにおいて拡大された細胞集団。
【0029】
19.(a)拡大された造血幹細胞の前記集団が、造血幹細胞移植に使用するため、又はそのための治療用組成物の製造のためであるか、
(b)巨核球前駆細胞の前記集団が、血小板減少症の処置に使用するため、又はそのための治療用組成物の製造のためであるか、又は
(c)骨髄系前駆細胞の前記集団が、骨髄系前駆細胞移植に使用するため、又はそのための治療用組成物の製造のためである、態様17に記載のインビトロにおいて拡大された細胞集団。
【0030】
20.(a)造血幹細胞移植のための態様17に規定の拡大された造血幹細胞の集団、
(b)血小板減少症の処置のための態様17に規定の巨核球前駆細胞の集団、又は
(c)骨髄系前駆細胞移植のための態様17に規定の骨髄系前駆細胞の集団
の使用。
【0031】
21.(a)態様17に規定の拡大された造血幹細胞の集団、
(b)態様17に規定の巨核球前駆細胞の集団、又は
(c)態様17に規定の骨髄系前駆細胞の集団
を含む、医薬組成物。
【0032】
一般的定義
小見出し及びその他の識別名、例えば、(a)、(b)、(i)、(ii)等は、単に明細書及び請求項を読み易くするために提示される。明細書又は請求項における小見出し又はその他の識別名の使用により、必ずしも工程又は要素がアルファベット若しくは数の順序又はそれらが提示される順序で実施される必要はない。
【0033】
「1つの(a又はan)」という語の使用は、請求項及び/又は明細書において「含むこと」という用語と併せて使用されるとき、「1つ(one)」を意味する場合もあるが、「1つ又は複数」、「少なくとも1つの」、及び「1つ又は1つを超える」の意味とも一致する。
【0034】
「約」という用語は、値が、値を決定するために利用されるデバイス又は方法に対する誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。一般に、術語「約」は、最大10%の起こりうる変動を示すことが意図される。したがって、値の1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10%の変動が「約」という用語に含まれる。別のことが示されない限り、範囲の前の用語「約」の使用は、範囲の両端に適用される。
【0035】
本明細書及び請求項において使用される場合、単語「含むこと(comprising)」(及び「含む(comprise及びcomprises)」等の含むことの任意の形態)、「有すること(having)」(及び「有する(have及びhas)」等の有することの任意の形態)、「含むこと(including)」(及び「含む(includes及びinclude)」等の含むことの任意の形態)又は「含有すること(containing)」(及び「含有する(contains及びcontain)」等の含有することの任意の形態)は、包括的であるか、又は制限がなく、列挙されていない追加の要素又は方法ステップを排除するものではない。
【0036】
本明細書のその他の目的、利点及び特徴は、添付の図面を参照して例としてのみ与えられる以下のその特定の実施形態の非限定的な説明を読めば更に明白になると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】巨核球系統への分化を促進する条件下において培養されたCD34+細胞に対する時間の関数としてのCD34+/CD41+巨核球前駆細胞の拡大倍数を示すグラフである。4つの条件を試験した:(1)「37℃」:標準的な温度、造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニスト(PIC)の非存在下;(2)「37℃+PIC」:標準的な温度、35nM PICの存在下;(3)「39℃」:軽度温熱下、PICの非存在下;又は(4)「39℃+PIC」:軽度温熱下、35nM PICの存在下。
図2】標準的なCFU-MKアッセイによって決定された図1において試験した4つの培養条件下においてもたらされた巨核球系コロニー形成単位(CFU-MK)の数を示すグラフである。
図3図3(A)は、分化を制限しながら造血幹細胞拡大を促進する条件下において培養したCD34+細胞に関する時間の関数としてのCD34+造血幹細胞の拡大倍数を示すグラフである。4つの条件を試験した:(1)「37℃」:標準的な温度、造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニスト(PIC)の非存在下;(2)「37℃+PIC」:標準的な温度、35nM PICの存在下;(3)「39℃」:軽度温熱下、PICの非存在下;又は(4)「39℃+PIC」:軽度温熱下、35nM PICの存在下。図3(B)は、分化を制限しながら造血幹細胞拡大を促進する条件下において培養した精製CD34+細胞の最初の集団で開始した、時間の関数としてのCD34+/CD45RA-長期造血幹細胞(LT-HSC)の拡大倍数を示すグラフである。4つの条件を試験した:(1)「37℃」:標準的な温度、造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニスト(PIC)の非存在下;(2)「37℃+PIC」:標準的な温度、35nM PICの存在下;(3)「39℃」:軽度温熱下、PICの非存在下;又は(4)「39℃+PIC」:軽度温熱下、35nM PICの存在下。
図4】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における14日間にわたるCD34+/CD41+細胞(巨核球前駆体)の拡大倍数を示すグラフである。拡大は、臍帯血CD34+細胞から行った。
図5】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における14日間にわたるCD34+/CD41+細胞(巨核球前駆体)の拡大倍数を示すグラフである。拡大は、動員末梢血CD34+細胞から行った。
図6】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における14日間にわたるCD34+/CD41+細胞(巨核球前駆体)の拡大倍数を示すグラフである。拡大は、骨髄CD34+細胞から行った。
図7】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又は別の造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニスト(PIC2)の存在下若しくは非存在下における14日間にわたるCD34+/CD41+細胞(巨核球前駆体)の拡大倍数を示すグラフである。
図8】軽度温熱の条件下、巨核球(MK)前駆体(CD41+細胞)の優先的な拡大に好都合な培養培地中でインビトロにおいて拡大したヒト臍帯血CD34+細胞を移植した免疫不全マウスにおける5日目のヒト血小板産生の結果を示すグラフである。「MK-6M」:PICの非存在下において作製した6百万のCD41+細胞の注入;「(MK+PIC)-1M」:PICの存在下において作製した百万のCD41+細胞の注入;「(MK+PIC)-6M」:PICの存在下において作製した6百万のCD41+細胞の注入;及び「PBS」:対照としてリン酸緩衝生理的食塩水の注入。ダッシュ記号の右にある数は、各条件に対するヒト血小板/血液μLの平均数を表す。
図9】軽度温熱の条件下、巨核球(MK)前駆体(CD41+細胞)の優先的な拡大に好都合な培養培地中でインビトロにおいて拡大したヒト臍帯血CD34+細胞を移植した免疫不全マウスにおける2.5週目のヒト血小板産生の結果を示すグラフである。「MK-6M」:PICの非存在下において作製した6百万のCD41+細胞の注入;「(MK+PIC)-1M」:PICの存在下において作製した百万のCD41+細胞の注入;「(MK+PIC)-6M」:PICの存在下において作製した6百万のCD41+細胞の注入;及び「PBS」:対照としてリン酸緩衝生理的食塩水の注入。ダッシュ記号の右にある数は、各条件に対するヒト血小板/血液μLの平均数を表す。
図10】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における14日間にわたる臍帯血由来のCD71+細胞(赤血球前駆体)の拡大倍数を示すグラフである。
図11】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における14日間にわたる全細胞の拡大倍数(全細胞拡大)を示すグラフである。
図12】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における14日間にわたるCD34+細胞(HSC)の拡大倍数を示すグラフである。
図13】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における14日間にわたるCD34+/CD71+細胞(赤血球前駆体)の拡大倍数を示すグラフである。
図14】商業的に入手可能なCC110サイトカインカクテル(図14A)又は自作の(HM)サイトカインカクテル(図14B)のいずれかを加えた培地において培養した臍帯血由来のCD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示すグラフである。細胞は、軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下において培養した。
図15】CC110サイトカインカクテル(図15A)又は自作の(HM)サイトカインカクテル(図15B)のいずれかを加えた培地において培養した臍帯血由来のCD34+/CD45RA-(長期造血幹細胞:LT-HSC)細胞の拡大倍数を示すグラフである。細胞は、軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下において培養した。
図16】CC110サイトカインカクテル(図16A)又は自作の(HM)サイトカインカクテル(図16B)のいずれかを加えたStemSpan(商標)SFEM培地において培養した臍帯血由来のCD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示すグラフである。細胞は、軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下において培養した。
図17】CC110サイトカインカクテル(図17A)又は自作の(HM)サイトカインカクテル(図17B)のいずれかを加えたStemSpan(商標)SFEM II培地において培養した臍帯血由来のCD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示すグラフである。細胞は、軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下において培養した。
図18A】CC110サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地において培養した臍帯血由来のCD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示すグラフである。細胞は、軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下において培養した。
図18B】自作の(HM)サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地において培養した臍帯血由来のCD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示すグラフである。細胞は、軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下において培養した。
図18C】BS1サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)SFEM培地中、軽度温熱下、PICの存在下(「39」)若しくは非存在下(「CTL」)において培養したCB CD34+/CD45RA-細胞(長期造血幹細胞;LT-HSC)の拡大倍数を示すグラフである。
図19】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPIC2の存在下若しくは非存在下における培養の7、10、及び14日後のCD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示すグラフである。
図20】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPIC2の存在下若しくは非存在下における培養の7、10、及び14日後のCD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)の拡大倍数を示すグラフである。
図21】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPIC2の存在下若しくは非存在下における培養の7、10、及び14日後のCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大倍数を示すグラフである。
図22】軽度温熱(39℃)及びPIC下における14日間の培養後のCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大倍数を示すグラフである。
図23】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における培養の10、14、及び17日後の動員末梢血由来のCD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示すグラフである。
図24】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における培養の10、14、及び17日後の動員末梢血由来のCD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)の拡大倍数を示すグラフである。
図25】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における培養の10、14、及び17日後の動員末梢血由来のCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大倍数を示すグラフである。
図26】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における培養の10、14、及び17日後のヒト骨髄由来のCD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示すグラフである。
図27】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における培養の10、14、及び17日後のヒト骨髄由来のCD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)の拡大倍数を示すグラフである。
図28】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における培養の10、14、及び17日後のヒト骨髄由来のCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大倍数を示すグラフである。
図29】軽度温熱の存在下(「39」)若しくは非存在下(「37」)及び/又はPICの存在下若しくは非存在下における培養の21日間にわたるCD34+/ALDHBright細胞の拡大倍数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本記述は、軽度温熱(例えば、38℃から40℃の間)及び造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストの存在を含む細胞培養条件が相乗的に作用して、造血幹細胞(HSC)の拡大及び/又は前駆細胞への分化(例えば、骨髄系前駆体、巨核球前駆体)を促進するという驚くべき発見から生じた。実際に、一部の実施形態において、軽度温熱及び造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストの組合せが造血幹細胞を指数関数的に拡大することが示された。更に、この組合せはまた、一部の実施形態では、HSCの前駆細胞(例えば、骨髄系前駆体、巨核球前駆体)への分化を指数関数的に増加させることも示された。
【0039】
一部の態様において、本記述は、造血幹細胞を培養するためのインビトロの方法に関し、本方法は、(a)前記造血幹細胞を、造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストを含む細胞培養培地において増殖させる工程と、(b)軽度温熱の条件下(例えば、38℃から40℃の間のインキュベーション温度)において前記造血幹細胞をインキュベートする工程とを含む。一部の実施形態において、本方法は、(c)造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストを除去し、38℃から40℃の間のインキュベーション温度で細胞を増殖させ続けることにより、更に同調した細胞集団を作製する工程を更に含んでもよい。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「造血幹細胞」又は「HSC」とは、多分化能(すなわち、白血球、赤血球、血小板等の血液中に見られるすべての細胞成分を産生することができる)、及び自己複製する能力の両方を持つ細胞を指す。正の選択マーカーとしてCD34を使用すると造血幹細胞を濃縮することができるため、一部の実施形態では、CD34+細胞が造血幹細胞として使用されてもよい。当該技術分野において公知の方法(例えば、FACS、免疫磁気粒子)によって所与のHSCの集団を特定、濃縮及び/又は単離するために、CD34に加えて複数の他の造血幹細胞マーカーが単独で、又は組み合わせて使用されてもよい。このために有用な可能性のあるその他のマーカーの例としては、CD133/AC133+、Lin-、ALDHhi又はALDHBright、CD38-、CD71-、HLA-DR-、CD33-、CD117/c-kit+、CD59+、CD90/Thy-1+、及びCD49f+が挙げられる。特に、一部の実施形態において、CD34+/CD45RA-、CD34+/CD38-/CD45RA-、及びCD49f+等のマーカーを使用して長期造血幹細胞(LT-HSC)が特定、濃縮及び/又は単離されてもよい。本明細書中で挙げられていないその他のマーカーも、所与のHSCの集団を特定、濃縮及び/又は単離するために有用である場合もあり、そのようなマーカーも本明細書の範囲内と見なされる。一部の実施形態において、HSCは、臍帯血、骨髄、末梢血、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、非造血分化細胞の分化転換によって得られた細胞、遺伝子改変されたHSC、不死化若しくは遺伝子操作されたHSC、多能性若しくは複能性細胞の他の供給源、又はそれらの任意の組合せの細胞から単離されても、又はそれから誘導されてもよい。一部の実施形態において、HSCは、(例えば、G-CSFにより動員された)動員末梢血細胞から単離されても、又はそれから誘導されてもよい。一部の実施形態において、HSCは、未動員末梢血細胞(すなわち、例えば、G-CSFにより動員されていない末梢血細胞)から単離されても、又はそれから誘導されてもよい。一部の実施形態において、HSCは、動員、若しくは未動員末梢血細胞の白血球低減化及び/又は白血球除去後に残存する細胞から単離されても、又はそれから由来してもよい(例えば、血小板アフェレーシス装置の白血球低減化チャンバーに残存する細胞、若しくは全血回収セットの白血球低減化フィルターから回収された細胞;これらの白血球低減化デバイスはそうでなければ処分される)。本記述は、様々な供給源からのHSC並びに精製、処理、及び/又は濃縮の方法に適用されてもよいことを理解されたい。そのような供給源及び方法の非限定例が本明細書に記載されるが、本明細書において明確に言及されていないHSCの他の供給源も本記述に従って使用されてよい。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「増殖させること」という用語は、特定の細胞集団(例えば、HSC及び/又はCD34+細胞)を拡大すること、及び/又は所望の細胞系統(例えば、巨核球系統、若しくは骨髄系前駆細胞から生じるその他の系統)への細胞分化を促進すること等の特定の目的を達成するための細胞(例えば、造血幹細胞)のインビトロの培養を指す。一部の実施形態において、「増殖させること」は、小さな「研究室規模」の細胞培養又は(例えば、バイオリアクターを使用した)より大規模な細胞培養を指す場合もある。一部の実施形態において、細胞を増殖させるために使用される細胞培養培地の組成は、特定の細胞種(例えば、HSC及び/又はCD34+細胞)の拡大を促進するよう、又は所望の細胞系統(例えば、巨核球系統、若しくは骨髄系前駆細胞から生じるその他の系統)への分化を促進するよう選択されてもよい。一部の実施形態において、本記述の細胞培養培地は、1つ又は複数のサイトカインを含んでもよい。一部の実施形態において、サイトカインは、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、又はその両方を含んでもよい。本明細書中で使用される場合、「〜への分化を促進する」という表現は、特定の終了点への細胞分化の一般的な方向を指すが、必ずしも終了点(すなわち、成熟した完全に分化した細胞への細胞の最終分化)に達する必要はない。そのような培地及び添加物(例えば、拡大及び/又は特定の系統への分化に影響を与えるための様々なサイトカインカクテル及び/又はその他の細胞培養培地構成成分)は、当業者に一般に公知である。適した培地及び添加物の多くは、当業者が商業的に入手可能である。
【0042】
例えば、本記述と関連した分化が制限されたCD34+細胞培養及び拡大に対して、細胞は、CC110(STEMCELL Technologies、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)等の商業的に入手可能なサイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF、SFEM、又はSFEM II等の様々な商業的に入手可能な培地において増殖させてもよい。一部の実施形態において、自作の(HM)サイトカインカクテルが調製されてもよく、これは、ヒトFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3)(例えば、100ng/mL)、幹細胞因子(SCF)(例えば、100ng/mL)、トロンボポエチン(TPO)(例えば、50ng/mL)、低密度リポタンパク質(LDL)(例えば、10μg/mL)、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。本記述と関連した自己複製条件下においてHSC(例えば、CD34+細胞)の増殖を可能にするそのような細胞培養培地/サイトカインカクテル及びその他のものは、本明細書において「造血幹細胞培養培地」と呼ばれる。ただし、他のタイプの細胞培養培地及び/又は添加物(例えば、サイトカインカクテル)が使用されてもよく、本記述は、本実施例に利用される細胞培養培地に限定されるべきではない。
【0043】
本記述と関連した巨核球系統の培養及びそれへの分化に対して、精製したCD34+細胞は、Robertら、2011年に記載されているOMPCサイトカインカクテル、又はCortinら、2005年に記載されているBS1巨核球拡大及び分化サイトカインカクテル等のサイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF又はSFEM培地(STEMCELL(商標)Technologies社)等の培地において培養されてもよい。OMPCサイトカインカクテルは、TPO(例えば、35ng/mL)、SCF(例えば、10ng/mL)、及びヒトFLT3(11ng/mL)を含む。BS1サイトカインカクテルは、TPO(例えば、30ng/mL TPO)、SCF(1ng/mL)、IL-6(例えば、7.5ng/mL)、及びIL-9(例えば、13.5ng/mL)を含む。本記述と関連したHSCの巨核球系統への分化を促進するそのような細胞培養培地/サイトカインカクテル及びその他のものは、本明細書において「造血幹細胞の巨核球系統への分化を促進する培地」と呼ばれる。ただし、他のタイプの細胞培養培地及び/又は添加物(例えば、サイトカインカクテル)が使用されてもよく、本記述は、本実施例に利用される細胞培養培地に限定されるべきではない。
【0044】
一部の実施形態において、更に効果を高めるために本明細書に記載される様々な細胞拡大方法又は細胞集団が一緒に使用されてもよい(例えば、血小板回復の加速を促進するために、例えば、対象に注入又は移植される細胞集団を作製する)。
【0045】
一部の実施形態において、細胞は、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21日間増殖させてもよい。一部の実施形態において、本記述の方法は、細胞生存率及び/又は「幹細胞性」を相当に失うことなく少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21日間の造血幹細胞の増殖を可能にする。本明細書中で使用される場合、「細胞生存率を相当に失うこと」という表現は、目的とする全生細胞の正味の拡大がもはや観察されない程、細胞死率が細胞拡大率よりも大きい場合を指す。当業者は、細胞培養培地は、拡大及び/又は分化の特定の必要性に適切なように適合されてもよいことを認識していると予想される。一部の実施形態において、細胞培養培地は、非分化培地(non-differentiating medium)であってもよい。
【0046】
一部の実施形態において、軽度温熱及び造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストの添加は、様々な時点及び/又は多様な時間の長さ(例えば、同時及び/又は所与のインビトロの培養期間中に交互の様式)で培養の所望の結果に応じて組み合わされてもよい。そのような変形は、本記述のいくつかの実施形態の範囲内にあり、この変形は、所与のインビトロの培養期間に軽度温熱又は造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストのみを使用したHSCの培養と比較して細胞拡大の量の向上をもたらす。
【0047】
したがって、いくつかの実施形態において、本記述は、造血幹細胞を拡大するための方法に関し、前記細胞培養培地は、造血幹細胞培養培地である。いくつかの実施形態において、インビトロにおいて造血幹細胞を拡大するための方法は、成人においてうまく生着するのに十分な細胞の数に達するよう臍帯血由来のHSCを拡大するのに有用である場合もある。いくつかの実施形態において、本記述は、造血幹細胞を拡大するためのインビトロの方法に関し、本方法は、(a)造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストを含む造血幹細胞培養培地において前記造血幹細胞を増殖させる工程と、(b)前記造血幹細胞を、38℃から40℃の間のインキュベーション温度でインキュベートする工程とを含み、得られる造血幹細胞拡大のレベルは、(a)又は(b)のいずれか単独で前記造血幹細胞を培養することによって得られるレベルよりも高い。いくつかの実施形態において、HSCは、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000倍(例えば、5から21日の間の培養)で拡大される。いくつかの実施形態において、HSCは、CD34+/CD45RA-細胞、CD34+/CD38-/CD45RA-又はCD49f+細胞等の長期再構築HSC(LT-HSC)である。いくつかの実施形態において、LT-HSCは、少なくとも2、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、又は200倍(例えば、5から21日の間の培養)で拡大される。当業者は、得られる拡大倍数の実際の値が出発材料細胞の品質及び/又は数量等の多くの要因により変化することもあることを理解していると予想される。これらの変形は本記述の範囲内にある。
【0048】
いくつかの実施形態において、本記述は、骨髄系前駆体を作製するために造血幹細胞を培養するための方法に関し、前記細胞培養培地は、骨髄系前駆体への造血幹細胞の分化を促進する培地である。本明細書中で使用される場合、「骨髄系前駆体」とは、1つ又は複数の巨核球、1つ又は複数の赤血球、1つ又は複数のマスト細胞又は1つ又は複数の骨髄芽球に分化するよう誘導され得る造血細胞を指す。いくつかの実施形態において、骨髄系前駆体は、CD34+/CD41+細胞(巨核球前駆体)と特定されてもよい。いくつかの実施形態において、本記述は、骨髄系前駆体を作製するために造血幹細胞を培養するためのインビトロの方法に関し、本方法は、(a)造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストを含む、骨髄系前駆体への造血幹細胞の分化を促進する細胞培養培地において前記造血幹細胞を増殖させる工程と、(b)前記造血幹細胞を、38℃から40℃の間のインキュベーション温度でインキュベートする工程とを含み、得られる骨髄系前駆体のレベルは(a)又は(b)のいずれか単独で前記造血幹細胞を培養することによって得られるレベルよりも高い。いくつかの実施形態において、骨髄系前駆体は、巨核球へ分化するよう促進されてもよい。いくつかの実施形態において、骨髄系前駆体は、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000倍(例えば、5から21日の間の培養)で拡大される。当業者は、得られる拡大倍数の実際の値が出発材料細胞の品質及び/又は数量等の多くの要因により変化することもあることを理解していると予想される。これらの変形は本記述の範囲内にある。
【0049】
いくつかの実施形態において、本記述は、造血幹細胞を培養して、巨核球前駆細胞を作製するための方法に関し、前記細胞培養培地は、造血幹細胞の巨核球系統への分化を促進する培地である。本明細書中で使用される場合、「巨核球前駆体」とは、1つ又は複数の巨核球に分化するよう誘導され得る造血細胞を指す。いくつかの実施形態において、本明細書は、巨核球前駆細胞を作製するために造血幹細胞を培養するためのインビトロの方法に関し、本方法は、(a)造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストを含む、造血幹細胞の巨核球系統への分化を促進する細胞培養培地において前記造血幹細胞を増殖させる工程と、(b)前記造血幹細胞を、38℃から40℃の間のインキュベーション温度でインキュベートする工程とを含み、得られる巨核球前駆細胞のレベルは、(a)又は(b)のいずれか単独で前記造血幹細胞を培養することによって得られるレベルよりも高い。いくつかの実施形態において、巨核球前駆体は、血小板又は血小板様断片(platelet-like fragment)へ分化するよう促進されてもよい。いくつかの実施形態において、巨核球前駆体は、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、又は100倍(例えば、5から14日の間の培養)で拡大される。当業者は、得られる拡大倍数の実際の値が出発材料細胞の品質及び/又は数量等の多くの要因により変化することもあることを理解していると予想される。これらの変形は本記述の範囲内にある。
【0050】
いくつかの態様において、本記述は、「造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニスト」の存在下における細胞の増殖に関する。本明細書中で使用される場合、この表現は、HSC拡大を刺激する能力を有するピリミドインドールとある程度の構造的類似性を共有する小分子化合物を指す。「造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニスト」によって、所望の効果(例えば、HSC拡大を刺激する及び/又は本記述と関連した軽度温熱の使用と相乗作用を示す)を引き出すのに十分な濃度又は用量の化合物が細胞培養培地に存在することを理解されたい。いくつかの実施形態において、ピリミドインドール誘導体は、「ピリミド[4,5-b]インドール誘導体」であってもよい。そのような誘導体については、以前に例えばWO 1993/020078;WO 1995/019970;WO 1997/002266;WO 1998/042708;WO 2000/066585;WO 2003/037898;WO 2004/058764;WO 2005/037825;WO 2006/116733;WO 2008/055233;WO 2009/004329、及びWO 2010/006032に記載されていた。いくつかの実施形態において、ピリミド[4,5-b]インドール誘導体は、例えば、Faresら、2014年、又はWO 2013/110198に記載されている(1r,4r)-N1-(2-ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-イル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン[UM171]、若しくはメチル4-(3-(ピペリジン-1-イル)プロピルアミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート[UM729]等の化合物であってもよい。そのような化合物は、長期再構築HSC(LT-HSC)が濃縮されたCD34+/CD45RA-動員末梢血細胞の拡大をアリール炭化水素受容体(AhR)経路の抑制因子として働くことなく刺激することが示された(Faresら、2014年)。したがって、いくつかの実施形態において、ピリミドインドール誘導体は、CD34+/CD45RA-細胞拡大のAhR経路非依存的なピリミド[4,5-b]インドール誘導体アゴニストを含んでもよい。いくつかの実施形態において、造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストは、DMSO等の担体中の原液として調製されてもよい。いくつかの実施形態において、造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストの濃度は、10、15、20、25、又は30nMから50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900又は1000nMであってもよい。造血幹細胞拡大のピリミドインドール誘導体アゴニストの濃度は分子の効力に基づいて変更されてもよく、本明細書中において明確に挙げられていないその他の濃度も本記述の範囲内にある。いくつかの実施形態において、上記のピリミドインドール誘導体のいずれかの薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、又は立体異性体も本記述の範囲内にある場合もある。本明細書中で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、(例えばインビボにおいて)代謝されると、所望の活性化合物をもたらす化合物を指す。一般に、プロドラッグは不活性であるか、又は所望の活性化合物よりも活性が低いが、有利な取り扱い、投与、又は代謝特性をもたらす場合もある。他に指定がない限り、特定の化合物に対する言及は、そのプロドラッグも含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、本記述のピリミドインドール誘導体は、アリール炭化水素受容体(AhR)のアンタゴニスト(例えば、SR1:4-[2-[[2-ベンゾ[b]チエン-3-イル-9-(1-メチルエチル)-9H-プリン-6-イル]アミノ]エチル]-フェノール)等のその他の化合物と組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態において、アリール炭化水素受容体化合物のアンタゴニスト(例えば、SR1)は、担体中のDMSO等の原液として調製されてもよい。いくつかの実施形態において、アリール炭化水素受容体化合物のアンタゴニスト(例えば、SR1)は、例えば、100から1000nMの間、200から900nMの間、300から800nMの間、400から800nMの間、450から750nMの間、700から800nMの間、又は450から550nMの間で使用されてもよい。
【0052】
いくつかの態様において、本記述は、軽度温熱下における細胞の増殖に関する。いくつかの実施形態において、「軽度温熱」とは、38℃から40℃の間、好ましくは39℃のインキュベーション温度で細胞を増殖させることを指す。当然、当業者は、細胞が所与の細胞集団に対する推奨温度(例えば、一般に37℃)よりも1〜3℃高い温度で一般に培養され/増殖させられる限り、上記の温度範囲外へのいくらかの一時的な変動は許容され得ることを理解していると予想される。いくつかの実施形態において、細胞は、軽度温熱下に少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21日間維持される。いくつかの実施形態において、細胞は、軽度温熱下に少なくとも連続した4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21日間維持される。
【0053】
いくつかの態様において、本記述は、本明細書において定義される方法によって作製された拡大された造血幹細胞、骨髄系前駆細胞、巨核球前駆細胞の集団、又はそれらの任意の組合せであるインビトロにおいて拡大された細胞集団に関する。いくつかの実施形態において、本記述のインビトロにおいて拡大された様々な細胞集団は、更なる治療上の利益のため(例えば、血小板回復の加速を促進するため)に組み合わされてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、本記述のインビトロにおいて拡大された細胞集団は、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%のCD34+/CD41+細胞を含んでもよい。
【0055】
いくつかの態様において、本記述は、対象に移植するため、又は対象に移植するための治療用組成物の製造のための本明細書に記載されているインビトロにおいて拡大された細胞集団の使用に関する。いくつかの実施形態において、インビトロにおいて拡大された細胞集団は、造血幹細胞移植に使用するため、又はそのための治療用組成物の製造のために拡大された造血幹細胞の集団であってもよい。いくつかの実施形態において、インビトロにおいて拡大された細胞集団は、血小板減少症の処置に使用するため、又はそのための治療用組成物の製造のための巨核球前駆細胞の集団であってもよい。したがって、いくつかの態様において、本記述は、本明細書中で定義されるとおりに拡大された造血幹細胞、骨髄系前駆細胞、又は巨核球前駆細胞の集団を含む医薬組成物に関する。
【0056】
いくつかの実施形態において、本医薬組成物は、通常の緩衝生理的食塩水(例えば、約135〜150mM NaCl)等の薬学的に許容される担体を含んでもよい。その他の適した担体としては、水、緩衝水、0.4%生理的食塩水、0.3%グリシン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の培養幹細胞を送達する際に使用するのに適した付加的な担体については、例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Mack Publishing Co., Philadelphia, Pa., 第18版(1995年)に記載されている。
【0057】
本明細書のその他の目的、利点及び特徴は、添付の図面を参照して、単なる例として記載された以下のその特定の実施形態の非限定的な説明を読むことで、更に明白になると予想される。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
実施例2〜5に関する材料及び方法
1.1 材料
すべての化学薬品は、他に記載がない限りSigma-Aldrich社(オークビル、オンタリオ州、カナダ)から購入した。
【0059】
1.2 ヒト臍帯血由来のCD34+細胞の単離及び培養
CD34+細胞を、標準的な手順に従った正の選択によってヒト臍帯血から単離した。臍帯血の単一単位又はいくつかの単位からプールした精製CD34+細胞のいずれかを、24ウェルプレート中の1mLの適切な培養培地におよそ105細胞/mLの密度で播いた。培養全体をとおして希釈及び/又は培地交換によって105〜106細胞/mLの密度で細胞を維持した。
【0060】
培養及び巨核球系統への分化のために、精製CD34+細胞を、抗生物質及び前に記載した「BS1」サイトカインカクテル(Cortinら、2005年)を加えたStemSpan(商標)ACF培地(STEMCELL(商標)Technologies社、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)において培養し、6、10及び14日目に細胞カウントを行った。
【0061】
分化を制限しながらのCD34+細胞培養及び拡大に関して、StemSpan(商標)CC110サイトカインカクテル(STEMCELL(商標)Technologies社)を加えたStemSpan(商標)-ACF培地(STEMCELL(商標)Technologies社)において細胞を成長させ、4、7、10、14、17、及び21日目にカウントした。
【0062】
製造業者の説明書に従ってNucleoCounter(登録商標)NC-250(商標)Viability and Cell Count Assayシステム(ChemoMetec Inc社、デービス、カナダ)を使用して細胞数及び生存率を測定した。
【0063】
1.3 細胞表現型分析
細胞表現型は、以下の標識化一次抗体:CD34-FITC、CD45RA-APC、CD41a-APC、CD42b-PE、及びCD235-PEのパネルを使用し、示した日のフローサイトメトリーによって決定した。
【0064】
1.4 CFU-MKアッセイ
StemSpan(商標)ACF+BS1培養培地において成長させた細胞のアリコートを示した日に採取し、製造業者の説明書に従ってSTEMCELL(商標)Technologies社のMegacult(商標)Cキットを使用してCFU-MKを決定した。
【0065】
(実施例2)
軽度温熱及びピリミドインドール化合物PIC下における培養の組合せは、巨核球前駆細胞の拡大を増加させる
一般に実施例1.2に記載されるとおりに巨核球系統への分化のためにCD34+細胞を単離し、培養した。巨核球前駆(MKP)細胞拡大に対する軽度温熱及びピリミドインドール化合物の組合せの効果を決定するために、CD34+細胞を37℃又は39℃で、本明細書において「PIC」と呼ぶ35nM(最終濃度)のピリミドインドール化合物:
(1r,4r)-N1-(2-ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-イル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン塩酸塩(「UM171」)
を加えた又は加えていない細胞培養培地の存在下において培養した。CD34+/CD41+MKP細胞の拡大を経時的に監視するために、実施例1.3に記載されるとおりフローサイトメトリーを使用した。
【0066】
図1に示されるとおり、PICの存在下(「37℃+PIC」)又は非存在下(「37℃」)において37℃で培養された細胞は、CD34+/CD41+MKP細胞の拡大が5倍未満であり、軽度温熱下におけるPICの非存在下(「39℃」)で培養された細胞も同様であった。興味深く、驚くべきことに、軽度温熱及びPICの組合せ(「39℃+PIC」)は、14日目までにほぼ100倍に達するCD34+/CD41+MKP細胞の拡大をもたらし、CD34+/CD41+細胞の純度は一般に40%を超えた(データは示していない)。これらの結果は、CD34+細胞のMKP細胞の拡大を刺激するピリミドインドール化合物と組み合わされた軽度温熱の強力な相乗作用を示している。
【0067】
(実施例3)
軽度温熱及びピリミドインドール化合物PIC下における培養の組合せは、更に均一な巨核球前駆細胞の集団をもたらす
実施例2で単離し、培養したCD34+細胞の更に完全な細胞表現型プロファイルを、実施例1.3に記載されるとおりのフローサイトメトリーによって6、10及び14日目に決定した。示した細胞表面マーカー又はマーカーの組合せを持つ細胞のパーセンテージを示すTable 1(表1)に結果の概要を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
Table 1(表1)に示されるとおり、軽度温熱下、PICの存在下における(「39℃+PIC」)CD34+細胞の培養は、6、10及び14日目に標準的な温度におけるPICの非存在下(「37℃」)若しくは存在下(「37℃+PIC」)でのCD34+細胞の培養よりも、又は軽度温熱下、PICを用いない(「39℃」)細胞の培養よりも大きな割合のCD34+/CD41+MKP細胞をもたらす。より詳細には、軽度温熱下、PICの存在下において(「39℃+PIC」)14日間培養したCD34+細胞は、76.5%のCD34+/CD41+MKP細胞をもたらした一方、PIC単独(「37℃+PIC」)又は軽度温熱単独(「39℃」)の使用はそれぞれ11%及び10%のCD34+/CD41+MKP細胞しかもたらさなかった。これらの結果は、巨核球前駆体の更に均一な細胞集団は、ピリミドインドール化合物及び39℃のインキュベーション温度の組合せによって変更された巨核球前駆体への分化に好都合な標準的な条件においてCD34+造血幹細胞を培養することによって得られることを示す。
【0070】
更に、Table 1(表1)に示されるとおり、39℃で、PICの存在下において成長させた培養物(「39℃+PIC」)には14日目に成熟巨核球に特有の表現型CD41+/CD42+の細胞が27%だけ含まれているが、39℃で、PICの非存在下において(「39℃」)成長させた培養物にはCD41+/CD42+成熟巨核球が68%含まれている。37℃で、PICの存在下において(「37℃+PIC」)成長させた培養物は、14日目に実質的にCD41+/CD42+成熟巨核球を含まないが、37℃で、PICの非存在下において(「37℃」)成長させた培養物にはCD41+/CD42+成熟巨核球が44%含まれている。これらの結果は、ピリミドインドール化合物が、成熟CD41+/CD42+巨核球段階前のCD34+細胞の温熱誘導分化を阻止し、且つ/又はCD34+/CD41+巨核球前駆体を優先的に拡大及び保持することを示唆する。したがって、いくつかの実施形態において、ピリミドインドール化合物は、除去されてもよく、細胞は軽度温熱の条件下において更に増殖させられてもよく、それにより更に同調した細胞集団を作製する。
【0071】
理論に縛られるものではないが、軽度温熱及びPICを組み合わせた場合に得られる細胞表現型の分布は、両作動体が相乗作用で前駆体レベルまでの巨核球系統へのCD34+細胞分化に向かわせ、それを維持するよう作用し、その結果、14日間の培養後、全集団の大部分の細胞がCD34+/CD41+MKPであることを強く示唆する。
【0072】
(実施例4)
軽度温熱及びピリミドインドール化合物下における培養の組合せは、CFU-MKの数を増加させる
実施例2に記載されているとおりに、単離及び培養した精製CD34+細胞から開始し、得られたCFU-MKの数に対する39℃のインキュベーション温度及びPICピリミドインドール化合物の単独の効果又は組合せの効果を、実施例1.4に記載されている標準的な前駆細胞アッセイによって分析した。
【0073】
図2に示されるとおり、39℃のインキュベーション温度及びPIC(「39℃+PIC」)の複合効果は、個々に試験したいずれかの条件(「39℃」又は「37℃+PIC」)と比較してより多いCFU-MKの数をもたらした。より詳細には、「39℃+PIC」に対して得られたCFU-MKの数は、培養物を37℃でPICとともに(「37℃+PIC」)成長させた場合に得られる数の2倍を超え、培養物を39℃でPICの非存在下において(「39℃」)成長させた場合に得られたCFU-MKの数の4倍を超えた。更に、39℃でPICとともに(「39℃+PIC」)培養した細胞から得られたCFU-MKの数は、個々に試験したいずれかの条件(「39℃」及び「37℃+PIC」)のCFU-MKの数を加えることによって得られる数よりも大きかった。これらの結果は、軽度温熱及びPICの組合せが、得られるCFU-MKの数を増加させるために相乗作用を示したことを示す。現行の技術はインビトロにおいてCFU-MKの可能性のある細胞を拡大することに対して非効率であるため、この予想外の効果は特に興味深い。
【0074】
(実施例5)
軽度温熱及びピリミドインドール化合物PIC下における培養の組合せは、未分化表現型を保持しながらのCD34+細胞の拡大を増加させる
CD34+細胞を単離し、前駆体への分化を制限しながら自己複製を維持するのに適した培地において培養した(実施例1.2に記載されているとおりのStemSpan(商標)CC110サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF)。CD34+細胞を37℃又は39℃で、35nM(最終濃度)のピリミドインドール化合物PICを加えたか、又はそれを含まない細胞培養培地の存在下において培養した。
【0075】
図3(A)に示されるとおり、37℃でPICを用いずに培養した細胞(「37℃」)は、培養中の任意の時点において中程度のCD34+細胞の拡大を得た。細胞培養培地にPICを加えると、21日目の拡大が100〜200倍に高まった。著しく、39℃でPICを用いずに培養した細胞(「39℃」)は、最小限のCD34+細胞の細胞拡大を得たが、39℃、PICの存在下において細胞を培養することによって(「39℃+PIC」)、CD34+細胞拡大の劇的な増加をもたらし、21日目に1000倍を超える拡大であった。これらの結果は、CD34+細胞の拡大に対する軽度温熱及びピリミドインドール化合物の強力な相乗作用を示す。
【0076】
拡大したCD34+細胞の細胞表現型プロファイルを、実施例1.3に記載されるとおりのフローサイトメトリーによって4、7、10、14、17、及び21日目に決定した。示した細胞表面マーカー又はマーカーの組合せを持つ細胞のパーセンテージを示すTable 2(表2)にその結果の概要を示す。
【0077】
【表2】
【0078】
Table 2(表2)に提示した表現型分析の結果は、軽度温熱とPICとを組み合わせた処理が巨核球及び赤血球(CD235+)系統への細胞の分化の向上につながらなかったことを示し、これは、「幹細胞性」がある程度維持されたことを示唆する。理論に縛られるものではないが、これらの結果をまとめて、軽度温熱をピリミドインドール化合物の使用と組み合わせると、ピリミドインドール化合物の分化抑制効果を保持する一方で、細胞のインビトロにおける拡大に対する39℃のインキュベーション温度の促進効果を同時に助長することを示唆する。
【0079】
図3(A)に提示されている結果は、CD34+細胞の全集団から導き出されている。CD34+/CD45RA-細胞の少数の集団は、本当の長期造血幹細胞(LT-HSC)であると考えられる。全細胞拡大の結果及びTable 2(表2)の結果を組み合わせると、CD34+/CD45RA-LT-HSCの絶対数及び拡大倍数を決定することが可能であった。図3(B)に示されるとおり、CD34+/CD45RA-LT-HSCの拡大は、39℃でPIC化合物の存在下(「39℃+PIC」)において細胞を培養することによって大きく向上した。この結果は、軽度温熱及び造血幹細胞拡大のピリミドインドールアゴニストの相乗作用が、様々な目的のため、及びいくつかの造血系統の誘導のために活用できると予想されることを示す。
【0080】
(実施例6)
実施例7〜16に関する材料及び方法
6.1 CD34+細胞の供給源
本発明者らの病院の研究倫理委員会ガイドラインに従ってドナーから書面のインフォームドコンセントを得た後にヒト臍帯血(CB)を採取した。単核細胞(MNC)をFicoll-Hypaque(商標)密度勾配(GE Healthcare社)により最初に分離した後、-180℃でCryostor CS10(商標)培地(STEMCELL Technologies社)中で凍結保存した。6から8つのCBからの解凍したMNCをCD34単離前にプールした。CB CD34+細胞を、製造業者の説明書(STEMCELL Technologies社)に従ってEasySep(商標)CD34濃縮キットを使用した正の選択によって濃縮した。
【0081】
ヒト骨髄及びG-CSF動員末梢血CD34+細胞をAllCells社から購入した。
【0082】
6.2 培養及びCD34+濃縮細胞の巨核球系統への分化
ヒトCD34+濃縮細胞(純度≧90%)を、24ウェルプレートに100000細胞/mLで(1)OMPCサイトカインカクテル(Robertら、2011年)を加えたStemSpan(商標)ACF(ACF;STEMCELL Technologies社)、又は(2)BS1巨核球拡大及び分化カクテル(Cortinら、2005年)を加えたStemSpan(商標)SFEM(STEMCELL Technologies社)のいずれかから成る拡大培地中に播いた。OMPCは、35ng/mLトロンボポエチン(TPO、Feldan Therapeutics社)、10ng/mL幹細胞因子(SCF、Peprotech社)、及び11ng/mLヒトFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3、Peprotech社)から成る。BS1は、1ng/mL SCF、30ng/mL TPO、7.5ng/mL IL-6及び13.5ng/mL IL-9(Feldan Therapeutics社)から成る。
【0083】
実施例に示されるとおり、5%CO2、37℃又は39℃の加湿雰囲気に培養物を維持した。3から4日毎に新しい培地により300000細胞/mLに細胞を希釈した。DMSOに溶解させることによってPIC及びPIC2の原液を調製し、その後、以下の最終有効濃度で培養細胞に直接添加した:PIC:35nM(実施例2を参照);PIC2:500nM(実施例7.4を参照)。
【0084】
6.3 CD34+濃縮細胞培養及びその赤血球系統への分化
ヒトCB CD34+濃縮細胞(純度≧90%)を、24ウェルプレートに100000細胞/mLで、20ng/mL SCF(Peprotech社)及び2U/mLエリスロポエチン(EPO、Feldan Therapeutics社)を加えたEaveの基本培地(イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、20% BIT (10ng/mLウシ血清アルブミン、10μg/mLウシ膵臓インスリン、200μg/mLヒトトランスフェリン;STEMCELL Technologies社)、0.1mg/mL低密度リポタンパク質(STEMCELL Technologies社)、50μM 2-メルカプトエタノール)から成る拡大培地中に播いた。実施例に示されるとおり、5%CO2、37℃又は39℃の加湿雰囲気に培養物を維持した。3から4日毎に新しい培地により300000細胞/mLに細胞を希釈した。DMSOに溶解させることによってPICの原液を調製し、その後、35nMの最終有効濃度で培養細胞に直接添加した。
【0085】
6.4 自己複製に好都合な条件におけるCD34+濃縮造血幹細胞の培養
ヒトCD34+濃縮細胞(純度≧90%)を、24又は96ウェルプレートに500000細胞/mLで、CC110(STEMCELL Technologies社)若しくは100ng/mLヒトFLT3(Peprotech社)、100ng/mL SCF(Peprotech社)、50ng/mL TPO(Feldan Therapeutics社)及び10μg/mL低密度リポタンパク質(LDL、STEMCELL Technologies社)から成る自作の(HM)サイトカインカクテルのいずれかを加えたStemSpan(商標)ACF(ACF)、SFEM、又はSFEM II(STEMCELL Technologies社)から成る3つの拡大培地のうちの1つの拡大培地中に播いた。実施例に示されるとおり、5%CO2、37℃又は39℃の加湿雰囲気に培養物を維持した。3から4日毎に新しい培地で500000細胞/mLに細胞を希釈した。DMSOに溶解させることによってPIC及びPIC2の原液を調製し、その後、以下の最終有効濃度で培養細胞に直接添加した:PIC:35nM;PIC2:500nM。
【0086】
6.5 培養細胞の分析
細胞数及び生存率を溶液18(Acridine Orange及びDAPI溶液、ChemomMetec社)を添加し、検出のためにNucleoCounter(商標)NC-250(ChemomMetec社)を使用することによって決定した。
【0087】
MK系統への分化に好都合な条件において拡大した細胞に対して、以下の抗体:CD34-FITC、CD41a-APC及びCD42b-PEを使用して表面マーカーを検出した。Immunotech社から購入したCD34-FITCを除くすべての抗体は、BD Biosciences社から購入した。生存率用色素として7AADを使用した。すべてのサンプルをAccuri(商標)C6フローサイトメーター(BD Biosciences社)で分析し、各サンプルに対して得られた少なくとも15000の生細胞事象の未処理データをFCS Express 5 Flow Research Editionソフトウェアで分析した。製造業者の説明書(STEMCELL Technologies社)に従って、MegaCult-C(商標)を使用して巨核球系コロニー形成単位(CFU-MK)をアッセイした。
【0088】
赤血球系統への分化に好都合な条件において拡大した細胞に対して、以下の抗体:CD34-FITC、CD71-APC及びCD235-PEを使用して表面マーカーを検出した。Immunotech社から購入したCD34-FITCを除くすべての抗体は、BD Biosciences社から購入した。生存率用色素として7AADを使用した。すべてのサンプルをAccuri(商標)C6フローサイトメーター(BD Biosciences社)で分析し、各サンプルに対して得られた少なくとも15000の生細胞事象の未処理データをFCS Express 5 Flow Research Editionソフトウェアで分析した。
【0089】
自己複製に好都合な条件において拡大した細胞に対して、以下の抗体:CD34-PE、CD45RA-FITC、及びCD38-BV421を使用して表面マーカーを検出した。Immunotech社から購入したCD34-PEを除くすべての抗体は、BD Biosciences社から購入した。製造業者の説明書に従ってALDEFLUOR(商標)キット(STEMCELL Technologies社)を使用してアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)陽性細胞の標識化を行った。生存率用色素として7AADを使用した。すべてのサンプルをFACS-Cy Flow MLシステム(Sysmex社)で分析し、各サンプルに対して得られる少なくとも15000の生細胞現象の未処理データをFCS Express 5 Flow Research Editionソフトウェアで分析した。
【0090】
6.6 CD41+細胞のマウスへの移植、及び骨髄生着の評価
7から9週齢の雌のNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスをJackson Laboratory社(バー・ハーバー、メイン州)から購入した。致死量以下で放射線照射したマウス(250cGy、137Cs)に、BS1カクテルを加えたStemSpan(商標)SFEM培地において10日間拡大したCB CD34+濃縮細胞を尾静脈注射により静脈内に移植した。各実験には、骨髄生着に関する陰性対照としてPBSを注射したマウスを含めた。骨髄(BM)生着及びヒト血小板産生の評価のための実験群及び対照群は少なくとも6匹のマウスで構成した。大腿骨及び脛骨を洗い流し、以下の抗体:ヒトCD45-PE-Cy7、マウスCD45-PE、ヒトCD41-APC、ヒトCD33-APC、ヒトCD34-PE、ヒトCD235-PE、ヒトCD3-FITCを使用したフローサイトメトリーによって新たに単離したBM細胞を分析することによって、移植後12から16週間、マウスの骨髄におけるヒト細胞の生着について評価した。生存率用色素として7AADを使用した。製造業者の説明書に従ってBD Lysing溶液を使用して赤血球を溶解させた。
【0091】
6.7 移植マウスにおけるヒト血小板産生の分析
EDTAコーティングキャピラリー(Drummond社)を使用して麻酔をかけたマウスから後眼窩静脈叢血液を採取した。移植マウスにおけるヒト血小板産生の評価は、二つの別個の段階から構成した。第1に、ラット抗マウスCD41-FITC抗体で全血中のネズミの血小板を染色することによってネズミの血小板数を決定した。次に、サンプルをPBS/1%BSA中1/18000に最終希釈し、BD Accuri(商標)C6機器を使用したフローサイトメトリーによってネズミの血小板の濃度をアッセイした。第2に、多血小板血漿(PRP)中のヒト血小板の割合を測定した。PRPは、全血をPBS(1/2)で希釈し、800RPMで30秒間遠心分離することによって調製した。10マイクロリットルのPRPをマウス抗ヒトCD41-APC及びラット抗マウスCD41-FITC抗体で染色した。次に、サンプルをBD Accuri(商標)C6機器で分析した。ドット・プロットの血小板領域に少なくとも400000の事象を得た。
【0092】
6.8 自己複製に好都合な条件におけるCB CD34+細胞のインビトロの培養によって得た新しいCB CD34+細胞又はその後代のマウスへの移植、及び骨髄生着の評価
7から9週齢の雌のNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスをThe Jackson Laboratory社(バー・ハーバー、メイン州)から購入した。致死量以下で放射線照射したマウス(250 cGy、137Cs)に新しいCD34+濃縮CB細胞、又は12日間インビトロにおいて拡大されたそれらの全細胞の後代のいずれかを尾静脈注射によって静脈内に移植した。各実験には、骨髄生着に関する陰性対照としてPBSを注射したマウスが含まれた。実験群及び対照群は、少なくとも5匹のマウスで構成した。大腿骨及び脛骨を洗い流し、以下の抗体:ヒトCD45-PE-Cy7、マウスCD45-PE、ヒトCD33-BV421、ヒトCD19-FITC、ヒトCD34-PE、及びヒトCD3-FITCを使用したフローサイトメトリーによって新たに単離したBM細胞を分析することによって、移植後27週目にマウスの骨髄におけるヒト細胞の生着について評価した。生存率用色素として7AADを使用した。
【0093】
(実施例7)
軽度温熱及びピリミドインドール化合物下におけるCD34+/CD41+巨核球前駆体の拡大に対するCD34+細胞の異なる供給源の影響
7.1 軽度温熱及びPICを組み合わせた使用は、臍帯血CD34+細胞由来の巨核球前駆体の相乗的な拡大をもたらす
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト臍帯血(CB)からヒトCD34+濃縮細胞を得、実施例6.2に記載されているとおりに軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PICの存在下若しくは非存在下においてOMPCサイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地中で培養した(実施例2を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0094】
図4は、14日間にわたって試験した異なる培養条件下におけるCD34+/CD41+細胞(巨核球前駆体)の拡大倍数を示す。これらの結果は、臍帯血CD34+細胞由来のCD34+/CD41+細胞の拡大に対する軽度温熱(39℃)及びPICを組み合わせた使用の相乗作用を示す。
【0095】
7.2 軽度温熱及びPICを組み合わせた使用は、動員末梢血CD34+細胞由来の巨核球前駆体の相乗的な拡大をもたらす
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒトG-CSF動員末梢血CD34+細胞を得、実施例6.2に記載されているとおりに軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PICの存在下若しくは非存在下においてBS1巨核球拡大及び分化カクテルを加えたStemSpan(商標)SFEM培地中で培養した(実施例2を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0096】
図5は、14日間にわたって試験した異なる培養条件下におけるCD34+/CD41+細胞(巨核球前駆体)の拡大倍数を示す。これらの結果は、動員末梢血CD34+細胞由来のCD34+/CD41+細胞の拡大に対する軽度温熱(39℃)及びPICを組み合わせた使用の相乗作用を示す。
【0097】
7.3 軽度温熱及びPICを組み合わせた使用は、骨髄CD34+細胞由来の巨核球前駆体の相乗的な拡大をもたらす
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト骨髄CD34+細胞を得、実施例6.2に記載されているとおりに軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PICの存在下若しくは非存在下においてBS1巨核球拡大及び分化カクテルを加えたStemSpan(商標)SFEM培地中で培養した(実施例2を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0098】
図6は、14日間にわたって試験した異なる培養条件下におけるCD34+/CD41+細胞(巨核球前駆体)の拡大倍数を示す。これらの結果は、骨髄CD34+細胞由来のCD34+/CD41+細胞の拡大に対する軽度温熱(39℃)及びPICを組み合わせた使用の相乗作用を示す。
【0099】
7.4 軽度温熱及びPIC2を組み合わせた使用は、臍帯血CD34+細胞由来の巨核球前駆体の相乗的な拡大をもたらす
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト臍帯血(CB)からヒトCD34+濃縮細胞を得、実施例6.2に記載されているとおりに軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物「PIC2」:
メチル4-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)-9H-ピリミド[4,5-b] インドール-7-カルボキシレート(「UM729」)
の存在下若しくは非存在下においてBS1サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)SFEM培地中で培養した。
【0100】
細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0101】
図7は、14日間にわたって試験した異なる培養条件下におけるCD34+/CD41+細胞(巨核球前駆体)の拡大倍数を示す。これらの結果は、CB CD34+/CD41+細胞の拡大に対する軽度温熱(39℃)及びPIC2を組み合わせた使用の相乗作用を示す。
【0102】
(実施例8)
インビトロにおいて拡大されたMK前駆体の注入後のマウスにおけるヒト血小板の産生
実施例6.2に記載されているとおりに、軽度温熱下、MK前駆体の優先的な拡大に好都合な条件でインビトロにおいてCB CD34+細胞を拡大することによってヒトCD41+細胞を調製した。StemSpan(商標)SFEM培地には、インビトロにおける拡大のためにBS1サイトカインカクテルを加えた。実施例6.6に記載されているとおりに、培養の10日後に得た測定した用量のCD41+細胞をNSGマウスに移植した。
【0103】
実施例6.2に記載されているとおりにMK前駆体の優先的な拡大に好都合な条件でインビトロにおいて拡大したCB CD34+細胞の注入の5日後又は2.5週後のいずれかにおいてネズミの血液中のヒト血小板をカウントすることによってマウスにおけるヒト血小板産生を決定した。図8及び図9は、それぞれ5日目及び2.5週目のマウスにおける短期間のヒト血小板産生の結果を示し、図中、「MK-6M」:StemSpan(商標)SFEM+BS1カクテルを使用して作製した6百万のCD41+細胞の注入;「(MK+PIC)-1M」:PICを加えたStemSpan(商標)SFEM+BS1カクテルを使用して作製した百万のCD41+細胞の注入;「(MK+PIC)-6M」:PICを加えたStemSpan(商標)SFEM+BS1カクテルを使用して作製した6百万のCD41+細胞の注入;及び「PBS」:対照としてリン酸緩衝生理的食塩水の注入。ダッシュ記号の右にある数は、各条件に対するヒト血小板/血液μLの平均数を表す。
【0104】
(実施例9)
軽度温熱及びPIC下におけるCD34+細胞の拡大に対する赤血球分化培地の効果
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト臍帯血(CB)からヒトCD34+濃縮細胞を得、実施例6.3に記載されているとおりに、軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PICの存在下若しくは非存在下において赤血球分化培地中で培養した(実施例2を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0105】
9.1 赤血球分化培地におけるCD71+細胞(赤血球前駆体)の拡大に対するPICの効果
図10は、14日間にわたって試験した異なる培養条件下におけるCB CD71+細胞(赤血球前駆体)の拡大倍数を示す。軽度温熱(39℃)の使用は、CD71+赤血球前駆体の拡大の増加をもたらした(図10を参照、「37」対「39」、及び「37+PIC」対「39+PIC」)。しかしながら、PICの添加は、CD71+赤血球前駆体の拡大の低下をもたらした(図10を参照、「37」対「37+PIC」、及び「39」対「39+PIC」)。
【0106】
図11は、14日間にわたって試験した異なる培養条件下における全細胞の拡大倍数(全細胞拡大)を示す。軽度温熱(39℃)の使用は、全細胞拡大の増加をもたらした(図11を参照、「37」対「39」、及び「37+PIC」対「39+PIC」)。しかしながら、PICの添加は、全細胞拡大の低下をもたらした(図11を参照、「37」対「37+PIC」、及び「39」対「39+PIC」)。
【0107】
9.2 赤血球分化培地におけるCD34+細胞(HSC)及びCD34+/CD71+細胞(赤血球前駆体)の拡大に対する軽度温熱及びPICの相加効果
図12及び図13は、それぞれ14日間にわたって試験した異なる培養条件下におけるCD34+細胞及びCD34+/CD71+細胞(赤血球前駆体)の拡大倍数を示す。興味深いことに、これらの結果は、軽度温熱(39℃)及びPICの使用が赤血球分化培地におけるCB CD34+細胞(図12)及びCB CD34+/CD71+細胞(赤血球前駆体)(図13)の両方の拡大に対して相加効果があったことを示す。
【0108】
(実施例10)
軽度温熱及びPIC下におけるCD34+細胞(HSC)及びCD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)の拡大に対する様々なサイトカインカクテルの効果
実施例5で提示した結果は、軽度温熱(39℃)及びPICを組み合わせた使用が、商業的に入手可能なCC110サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地を使用した場合、分化を制限しながらCD34+細胞の拡大の増加をもたらしたことを示した。この実施例において提示した結果は、軽度温熱(39℃)及びPIC下におけるCB CD34+ HSCの相乗的な拡大が自作の(HM)サイトカインカクテルを使用して得られることを示す。
【0109】
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト臍帯血(CB)からヒトCB CD34+濃縮細胞を得、実施例6.4に一般に記載されているとおりに、軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PICの存在下若しくは非存在下において自己複製に好都合な条件で培養した(実施例2を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0110】
図14は、CC110サイトカインカクテル(図14A)又は自作の(HM)サイトカインカクテル(図14B)のいずれかを加えたStemSpan(商標)ACF培地において培養したCB CD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示す。
【0111】
図15は、CC110サイトカインカクテル(図15A)又は自作の(HM)サイトカインカクテル(図15B)のいずれかを加えたStemSpan(商標)ACF培地において培養したCB CD34+/CD45RA-(長期造血幹細胞:LT-HSC)細胞の拡大倍数を示す。
【0112】
Table 3(表3)は、自作の(HM)又はCC110サイトカインカクテルのいずれかを加えたStemSpan(商標)ACF培地におけるCB CD34+細胞の14日間の培養後の示したHSC部分集団のそれぞれのパーセンテージを示す。
【0113】
【表3】
【0114】
(実施例11)
軽度温熱及びPIC下におけるCD34+細胞(HSC)及びCD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)の拡大に対する様々な基本培地及びサイトカインカクテルの効果
この実施例において提示した結果は、軽度温熱(39℃)及びPIC下におけるCB CD34+ HSC及びCD34+/CD45RA- LT-HSCの相乗的な拡大が様々な商業的に入手可能な培地及び様々なサイトカインカクテルを使用して得られたことを示す。
【0115】
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト臍帯血(CB)からヒトCB CD34+濃縮細胞を得、実施例6.4に一般に記載されているとおりに、軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PICの存在下若しくは非存在下において自己複製に好都合な条件で培養した(実施例2を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0116】
図16は、CC110サイトカインカクテル(図16A)又は自作の(HM)サイトカインカクテル(図16B)のいずれかを加えたStemSpan(商標)SFEM培地において培養したCB CD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示す。
【0117】
図17は、CC110サイトカインカクテル(図17A)又は自作の(HM)サイトカインカクテル(図17B)のいずれかを加えたStemSpan(商標)SFEM II培地において培養したCB CD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示す。
【0118】
図18は、CC110サイトカインカクテル(図18A)又は自作の(HM)サイトカインカクテル(図18B)のいずれかを加えたStemSpan(商標)ACF培地において培養したCB CD34+細胞(造血幹細胞)の拡大倍数を示す。図18Cは、BS1サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)SFEM培地中、軽度温熱下、PICの存在下(「39」)若しくは非存在下(「CTL」)において培養したCB CD34+/CD45RA-細胞(長期造血幹細胞:LT-HSC)の拡大倍数を示す。
【0119】
Table 4 (表4)は、CC110又は自作の(HM)サイトカインカクテルを使用した様々な基本培地において培養したCB CD34+細胞からの長期造血幹細胞(LT-HSC)(CD34+/CD45RA-)の拡大倍数を示す。
【0120】
【表4】
【0121】
Table 5(表5)は、CC110又は自作の(HM)サイトカインカクテルを加えた様々な基本培地(SFEM、SFEM II、又はStemSpan ACF(ACF)培地)において14日間培養したCB CD34+細胞由来の示したHSC部分集団のそれぞれのパーセンテージを示す。
【0122】
【表5】
【0123】
図18Cは、BS1サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)SFEM培地において培養したCB CD34+/CD45RA-細胞(長期造血幹細胞:LT-HSC)の拡大倍数を示す。これらの結果は、巨核球前駆細胞(CD34+/CD41+)の拡大を促進することで公知の細胞培養培地が自己複製LT-HSCの拡大も可能にすることを示す。
【0124】
(実施例12)
CD34+細胞(HSC)、CD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)、及びCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大に対する軽度温熱及びPIC2又はPICを組み合わせた使用の効果
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト臍帯血(CB)からヒトCB CD34+濃縮細胞を得、実施例6.4に一般に記載されているとおりに、軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PIC2の存在下若しくは非存在下において自作の(HM)サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地中で自己複製に好都合な条件において培養した(実施例7.4を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0125】
図19図20及び図21は、それぞれ、培養の7、10、及び14日後のCD34+細胞(造血幹細胞)、CD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)、及びCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大倍数を示す(Majetiら、2007年)。
【0126】
図22は、自作の(HM)サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地において14日間培養したCB CD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大に関する軽度温熱(39℃)及びPIC下における14日の培養後のCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大倍数を示す。データは、4回の独立した実験の平均を示す。
【0127】
(実施例13)
動員末梢血(mPB)CD34+細胞(HSC)、CD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)、及びCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大に対する軽度温熱及びPICを組み合わせた使用の効果
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒトG-CSF-動員末梢血CD34+濃縮細胞を得、実施例6.4に一般に記載されているとおりに、軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PICの存在下若しくは非存在下において自作の(HM)サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地中で自己複製に好都合な条件において培養した(実施例2を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0128】
図23図24及び図25は、それぞれ培養の10、14、及び17日後のCD34+細胞(造血幹細胞)、CD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)、及びCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大倍数を示す。
【0129】
(実施例14)
骨髄CD34+細胞(HSC)、CD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)、及びCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大に対する軽度温熱及びPICを組み合わせた使用の効果
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト骨髄(BM)CD34+濃縮細胞を得、実施例6.4に一般に記載されているとおりに軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PICの存在下若しくは非存在下において自作の(HM)サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地中で自己複製に好都合な条件において培養した(実施例2を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0130】
図26図27及び図28は、それぞれ培養の10、14、及び17日後のCD34+細胞(造血幹細胞)、CD34+/CD45RA-細胞(LT-HSC)、及びCD34+/CD38-/CD45RA-細胞の拡大倍数を示す。
【0131】
(実施例15)
CB CD34+/ALDHBright細胞の拡大に対する軽度温熱及びPICを組み合わせた使用の効果
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト臍帯血(CB)からヒトCB CD34+濃縮細胞を得、実施例6.4に一般に記載されているとおりに軽度温熱(39℃)の存在下若しくは非存在下及び/又はピリミドインドール化合物PICの存在下若しくは非存在下において自作の(HM)サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地中で自己複製に好都合な条件において培養した(実施例2を参照)。細胞数及び生存率を、実施例6.5に記載されているとおりに決定した。
【0132】
図29は、培養の21日後のCD34+/ALDHBright細胞の拡大倍数を示す。これらの結果は、軽度温熱及びPICを組み合わせた使用がHSCのこの部分集団の相乗的な拡大をもたらすことを示す。
【0133】
(実施例16)
軽度温熱及びPIC下、インビトロにおいて拡大したヒトCB CD34+細胞(HSC)の免疫不全マウスにおける移植及び生着
実施例6.1に記載されているとおりに、ヒト臍帯血(CB)からヒトCB CD34+濃縮細胞を得、実施例6.4に一般に記載されているとおりに軽度温熱(39℃)及びピリミドインドール化合物PICの存在下において自作の(HM)サイトカインカクテルを加えたStemSpan(商標)ACF培地中で自己複製に好都合な条件において培養した(実施例2を参照)。実施例6.8に記載されているとおりに、新しいCB CD34+細胞、又は12日間拡大したCB CD34+細胞を免疫不全マウスに移植した。
【0134】
PBSを単独で移植したマウスと比較して、インビトロにおいて拡大したCB CD34+細胞を移植したマウスの骨髄におけるヒトCD45+細胞のパーセンテージの増加が観察され、このことは、生着がうまくいったことを示す(データは示していない)。
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29