【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかる過給機は、
回転軸と、
前記回転軸の一端に設けられるコンプレッサホイールと、
前記回転軸に嵌合されるスラスト部材と、
前記回転軸の軸線方向において前記スラスト部材に隣接して配置されるとともに、前記回転軸をスラスト方向に支持するスラストベアリングと、
前記スラスト部材および前記スラストベアリングを収納するハウジングと、を備え、
前記軸線方向に直交する方向における前記スラスト部材の外周面と前記ハウジングとの間には前記回転軸の軸線方向および周方向の少なくとも一部にクリアランスが形成され、前記クリアランスにはオイルが流れ込むように構成され、
前記回転軸および前記スラスト部材が回転した際に、前記クリアランスに流れ込んだ前記オイルが、前記スラスト部材を前記軸線方向に直交する方向に沿って押圧する油膜圧力を発生させるように構成されている。
【0009】
上記(1)の構成によれば、過給機は、回転軸と、回転軸の一端に設けられるコンプレッサホイールと、回転軸に嵌合されるスラスト部材と、回転軸の軸線方向においてスラスト部材に隣接して配置されるとともに、回転軸をスラスト方向に支持するスラストベアリングと、スラスト部材およびスラストベアリングを収納するハウジングと、を備えている。回転軸の軸線方向に直交する方向におけるスラスト部材の外周面とハウジングとの間には回転軸の軸線方向および周方向の少なくとも一部にクリアランスが形成され、クリアランスにはオイルが流れ込むように構成されている。そして、回転軸およびスラスト部材が回転した際に、クリアランスに流れ込んだオイルがスラスト部材を軸線方向に直交する方向に沿って押圧する油膜圧力を発生させるように構成されている。
【0010】
このため、クリアランスに流れ込んだオイルは、回転軸およびスラスト部材が回転した際に潤滑膜を形成し、スラスト部材を軸線方向に直交する方向に沿って軸線に向かって押圧する油膜圧力を発生させるので、回転軸の回転時における軸線の傾きを抑制することができる。したがって、回転軸やスラスト部材がスラストベアリングに接触することを防止することもできる。回転軸やスラスト部材とスラストベアリングとの接触を防止することで、回転軸、スラスト部材およびスラストベアリングの摩耗による損傷を抑制することができ、過給機を長期間にわたり使用することが可能になる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記クリアランスの大きさをC、前記スラスト部材の外側寸法をDとした場合に、少なくとも一部における前記クリアランスは、クリアランス比C/Dが5/1000≦C/D≦10/1000の条件を満たす。
【0012】
上記(2)の構成によれば、少なくとも一部におけるクリアランスが上述した条件を満たすので、クリアランスに流れ込んだオイルが適切な油膜圧力を発揮することができる。なお、クリアランス比がC/D<5/1000の場合には、回転軸の回転時における傾きにより、回転軸やスラスト部材がスラストベアリングに接触する虞がある。また、クリアランス比が10/1000<C/Dの場合には、オイルが十分な油膜圧力を発揮できない虞がある。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記クリアランスは、前記軸線方向における前記スラストベアリング側の少なくとも一部が前記スラストベアリングから離れた側に比べて大きく形成されている。
【0014】
上記(3)の構成によれば、オイルがクリアランスのスラストベアリング側から容易に流れ込むことができ、且つ、オイルがクリアランスのスラストベアリングから離れた側から流れ出し難くなっている。このため、オイルによるスラスト部材を軸線方向に直交する方向に沿って押圧する油膜圧力を増加させることができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記ハウジングの前記クリアランスを形成する部分の内側寸法は、前記軸線方向における前記スラストベアリング側の少なくとも一部が前記スラストベアリングから離れた側に比べて大きく形成されている。
【0016】
上記(4)の構成によれば、オイルがクリアランスのスラストベアリング側から容易に流れ込むことができ、且つ、オイルがクリアランスのスラストベアリングから離れた側から流れ出し難くなっている。このため、オイルによるスラスト部材を軸線方向に直交する方向に沿って押圧する油膜圧力を増加させることができる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、
前記スラスト部材の外側寸法は、前記軸線方向における前記スラストベアリング側の少なくとも一部が前記スラストベアリングから離れた側に比べて小さく形成されている。
【0018】
上記(5)の構成によれば、オイルがクリアランスのスラストベアリング側から容易に流れ込むことができ、且つ、オイルがクリアランスのスラストベアリングから離れた側から流れ出し難くなっている。このため、オイルによるスラスト部材を軸線方向に直交する方向に沿って押圧する油膜圧力を増加させることができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記スラスト部材は、前記軸線方向における前記スラストベアリング側の端部の少なくとも一部に面取り面を有する。
【0020】
上記(6)の構成によれば、スラスト部材の軸線方向におけるスラストベアリング側の端部の少なくとも一部に面取り面を有しているので、オイルがクリアランスのスラストベアリング側から容易に流れ込むことができ、且つ、オイルがクリアランスのスラストベアリングから離れた側から流れ出し難くなっている。このため、オイルによるスラスト部材を軸線方向に直交する方向に沿って押圧する油膜圧力を増加させることができる。また、面取り面は切削などにより容易に形成可能である。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の構成において、
前記ハウジングは、前記回転軸の周方向において前記クリアランスが部分的に拡大される拡径部が均等に配置されるように構成されている。
【0022】
上記(7)の構成によれば、ハウジングによりクリアランスが部分的に拡大される拡径部と拡径部よりもクリアランスが小さい部分とを設けることで、オイルがクリアランスの拡径部に容易に流れ込むことができ、且つ、オイルがクリアランスの拡径部よりもクリアランスが小さい部分から流れ出し難くなっている。このため、周方向における複数箇所に油膜圧力のピーク部を形成できるので、オイルによるスラスト部材を軸線方向に直交する方向に沿って押圧する油膜圧力を増加させることができる。
【0023】
特に、軸線方向におけるスラストベアリング側の少なくとも一部のクリアランスがスラストベアリングから離れた側のクリアランスに比べて大きく形成されている場合には、周方向における複数箇所に形成された油膜圧力のピーク部における油膜圧力を上昇させることができる。
【0024】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の構成において、
前記ハウジングは、前記コンプレッサホイールの背面に対向する面に複数の凹部を含む非接触シールが設けられた。
上記(8)の構成によれば、複数の凹部を含む非接触シールにより、コンプレッサホイールの背面と当該背面に対向するハウジングの面との間に流れ込んだ圧縮気体は、回転軸およびコンプレッサホイールが回転した際に潤滑膜を形成し、コンプレッサホイールを軸線方向に沿って押圧する気体膜圧力を発生させるので、回転軸の回転時における軸線の傾きを抑制することができる。したがって、コンプレッサホイールがハウジングに接触することを防止することもできる。コンプレッサホイールとハウジングとの接触を防止することで、コンプレッサホイールおよびハウジングの摩耗による損傷を抑制することができ、過給機を長期間にわたり使用することが可能になる。
【0025】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)の構成において、
前記回転軸の他端に設けられるタービンホイールをさらに備える。
上記(9)の構成によれば、過給機は、コンプレッサホイールおよびタービンホイールを備えるターボチャージャである。ターボチャージャは、コンプレッサホイールに作用する例えば圧縮空気などの気体の圧力が、タービンホイールに作用する例えば排ガスなどの気体の圧力よりも低いので、回転軸の回転時においてコンプレッサホイール側がタービンホイール側に比べて大きく触れ回ることになる。このようなターボチャージャの回転軸であっても、上述したようにクリアランスに流れ込んだオイルがスラスト部材に対して油膜圧力を作用させることで、回転軸の回転時における傾きを抑制することができる。