特許第6954870号(P6954870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金エンジニアリング株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954870
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】ステーブおよびステーブの設置方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/10 20060101AFI20211018BHJP
   F27D 1/12 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   C21B7/10 301
   F27D1/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-135645(P2018-135645)
(22)【出願日】2018年7月19日
(65)【公開番号】特開2020-12162(P2020-12162A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2021年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎也
(72)【発明者】
【氏名】湯越 正義
(72)【発明者】
【氏名】古舘 昭二
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−121079(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/147251(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00− 9/16
F27B 1/00− 3/28
F27D 7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄皮の炉内側面に沿って配列されて側面どうしが対向される板状のステーブ本体と、前記ステーブ本体の下面側に固定されて前記鉄皮との間隔を封止するシール部材とを有し、
前記シール部材は、端縁が前記ステーブ本体の側面より突出し、かつ前記ステーブ本体の厚み方向に対して傾斜されていることを特徴とするステーブ。
【請求項2】
請求項1に記載されたステーブにおいて、
前記シール部材は、両側の前記端縁が同側に傾斜されていることを特徴とするステーブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたステーブにおいて、
前記シール部材の前記端縁には端縁側弾性部材が装着され、前記シール部材の前記鉄皮に対向する炉外側辺縁には炉外側弾性部材が装着されていることを特徴とするステーブ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたステーブにおいて、
前記シール部材は、前記シール部材に沿って移動可能に支持されて前記端縁から突出可能な延長板を有することを特徴とするステーブ。
【請求項5】
鉄皮の炉内側面に沿って配列されて側面どうしが対向される板状のステーブ本体と、前記ステーブ本体の下面側に固定されて前記鉄皮との間隔を封止するシール部材とを有し、前記シール部材は、端縁が前記ステーブ本体の側面より突出し、かつ前記ステーブ本体の厚み方向に対して傾斜されている中間ステーブ、始端ステーブおよび終端ステーブを用い、
前記中間ステーブでは、前記シール部材の両側の前記端縁をともに第1方向もしくは前記第1方向とは逆の第2方向に傾斜させ、
前記始端ステーブでは、前記シール部材の一方の前記端縁を前記第1方向としかつ他方の前記端縁を前記第2方向に傾斜させ、
前記終端ステーブでは、前記シール部材の一方および他方の前記端縁を前記始端ステーブとは逆に傾斜させておき、
前記鉄皮の内側に、前記始端ステーブを設置し、
前記始端ステーブの隣に前記中間ステーブを設置し、
前記中間ステーブの隣に別の前記中間ステーブを設置することを繰り返し、
前記中間ステーブと前記始端ステーブとの間に、前記終端ステーブを設置することを特徴とするステーブの設置方法。
【請求項6】
鉄皮の炉内側面に沿って配列されて側面どうしが対向される板状のステーブ本体と、前記ステーブ本体の下面側に固定されて前記鉄皮との間隔を封止するシール部材とを有し、前記シール部材は、端縁が前記ステーブ本体の側面より突出し、かつ前記ステーブ本体の厚み方向に対して傾斜されている中間ステーブ、始端ステーブおよび延長ステーブを用い、
前記延長ステーブには、前記シール部材に沿って移動可能に支持されて前記端縁から突出可能な延長板を設置しておき、
前記鉄皮の内側に設置されていた既存ステーブを、所定の残留区間にある残留ステーブを残して撤去し、
前記既存ステーブを撤去した範囲で前記残留ステーブの隣以外に前記始端ステーブを設置し、前記始端ステーブの隣に前記中間ステーブを設置し、
前記中間ステーブの隣に別の前記中間ステーブを設置することを繰り返し、
前記中間ステーブと前記残留区間の端にある前記残留ステーブとの間に、前記延長ステーブを設置し、前記延長ステーブの前記延長板を前記残留ステーブに向けて突出させることを特徴とするステーブの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステーブおよびステーブの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉には、鉄皮の炉内側面に多数の冷却用ステーブが設置される。ステーブと鉄皮との間の隙間には、不定形耐火材(キャスタブル)が充填される。充填されたキャスタブルの漏れ出しを防止するために、ステーブの目地には帯状のシール材が貼られる(特許文献1,2参照)。
最下段に配列されるステーブについては、その下面側にシール板を設置し、炉外側縁を鉄皮まで延長することで、ステーブと鉄皮との間の隙間を封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−291456号公報
【特許文献2】特開2011−214076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高炉の新設時には、前述した最下段のステーブの下面側にシール板を設置する作業は、炉内作業により行うことができる。
一方、休風時にステーブを更新する際には、元のシール板は消失しており、新たにシール板を設置する必要がある。休風時のシール板の設置は、高温かつ高粉塵下での炉内作業となるため長時間継続できず、作業効率が低く工期が長期化するという問題があった。また、休風中の炉内はCOガス(一酸化炭素ガス)発生が懸念されるため、休風中の炉内作業は安全の面からも好ましくない。
これに対し、最下段のステーブとして、下面側に予めシール板が固定されたステーブを用い、これを炉内に配置することでシール板の設置までを完了することが考えられる。
しかし、順次ステーブを配列してゆくだけでは、シール板の継ぎ目を封止することができない。例えば、シール板の継ぎ目にスポンジ等の封止部材を貼っておき、設置時に封止部材を挟み込むことで、継ぎ目を封止することも考えられる。ところが、順次ステーブを設置する際に相互に擦れ、封止部材が損傷ないし脱落してしまう可能性がある。また、ステーブの設置誤差でシール板どうしの隙間が大きくなった場合など、封止部材を十分に挟み込むことができず、封止できなくなる可能性もある。
【0005】
本発明の目的は、炉外側操作により設置できかつ下面側の隙間を確実に封止できるステーブおよびステーブの設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステーブは、鉄皮の炉内側面に沿って配列されて側面どうしが対向される板状のステーブ本体と、前記ステーブ本体の下面側に固定されて前記鉄皮との間隔を封止するシール部材とを有し、前記シール部材は、端縁が前記ステーブ本体の側面より突出し、かつ前記ステーブ本体の厚み方向に対して傾斜されていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明では、鉄皮の炉内側面に所定間隔をあけてステーブ本体を固定し、順次配列してゆく。ステーブ本体の固定に伴って、シール部材は、隣接するステーブのシール部材と互いの端縁どうしが隣接して配置される。シール部材の端縁は、ステーブ本体の厚み方向(高炉の径方向)に対して傾斜されているため、ステーブ本体をその厚み方向(高炉の径方向)に変位させることで、厚み方向と交差する方向(高炉の周方向)にシール部材の端縁が変位し、隣接するシール部材との距離(端縁どうしの間隔)を増減させることができる。
例えば、隣接する一対のシール部材の端縁が、互いに平行となるように同じ角度で傾斜されていれば、ステーブ本体の厚み方向の変位により、互いの隙間を一様に増減させることができる。さらに、対向する端縁の一方に弾性部材を装着しておけば、この弾性部材を一対の端縁で挟み込むことにより、互いの隙間を確実に封止することができる。
この際、ステーブ本体をその厚み方向に変位させる操作は、ステーブを炉内に吊り込むクレーン等によっても行え、また鉄皮の開孔を通して炉外側から操作することもできる。
従って、炉外側操作により設置でき、かつ下面側の隙間を確実に封止できるステーブを提供することができる。
なお、鉄皮とシール部材とは、弾性部材をシール部材に装着しておき、設置の際に挟み込んで封止してもよい。シール部材あるいは弾性部材は、鉄皮に直に接するのではなく、鉄皮に沿って残された既存のシール板の残部などを介して鉄皮との間を封止するとしてもよい。
【0008】
本発明のステーブにおいて、前記シール部材は、両側の前記端縁が同側に傾斜されていることが好ましい。
このような本発明では、シール部材の両側の端縁が同側に傾斜されているため、ステーブ本体を順次配列することで、隣接するシール部材の端縁どうしが平行となり、前述した厚み方向の変位により端縁どうしの間隔が一様に増減され、端縁の全長にわたって確実な封止を行うことができる。
なお、シール部材の端縁は、例えば既存のステーブに隣接して設置する場合など、片側だけ傾斜したものも利用可能である。また、両側の端縁が、互いに逆側に傾斜した形状としてもよい。ただし、順次配列してゆく際には、調整作業が一様になることから、両側の端縁が同側に傾斜していることが好ましい。
【0009】
本発明のステーブにおいて、前記シール部材の前記端縁には端縁側弾性部材が装着され、前記シール部材の前記鉄皮に対向する炉外側辺縁には炉外側弾性部材が装着されていることが好ましい。
このような本発明では、隣接する一対のシール部材の端縁どうしの隙間を増減させた際に、端縁側弾性部材が隣接する端縁の間に挟み込まれて互いの隙間が確実に封止できる。
また、炉外側弾性部材により、シール部材の炉外側辺縁と鉄皮との間の隙間を確実に封止できる。端縁の隙間を増減させるためにステーブ本体を厚み方向に変位させる場合でも、炉外側弾性部材があることで、鉄皮との間の封止を維持できる。
なお、端縁どうしの封止および鉄皮との間の封止は、例えば端縁に加熱等で膨張する材料を塗布したり、炉外側弾性部材を鉄皮に固定したりしてもよいが、シール部材の側に各弾性部材を装着しておくことで挟み込みを確実に行うことができる。
【0010】
本発明のステーブにおいて、前記シール部材は、前記シール部材に沿って移動可能に支持されて前記端縁から突出可能な延長板を有することが好ましい。
このような本発明では、例えば高炉の一部に本発明のステーブを設置し、従来のステーブが残るような場合など、端縁が傾斜していない従来のシール部材との隙間が大きい場合でも、延長板を引き出して間隔に掛け渡し、別途充填材などを補うことで、互いの隙間を封止することができる。
【0011】
本発明のステーブの設置方法は、鉄皮の炉内側面に沿って配列されて側面どうしが対向される板状のステーブ本体と、前記ステーブ本体の下面側に固定されて前記鉄皮との間隔を封止するシール部材とを有し、前記シール部材は、端縁が前記ステーブ本体の側面より突出し、かつ前記ステーブ本体の厚み方向に対して傾斜されている中間ステーブ、始端ステーブおよび終端ステーブを用い、前記中間ステーブでは、前記シール部材の両側の前記端縁をともに第1方向もしくは前記第1方向とは逆の第2方向に傾斜させ、前記始端ステーブでは、前記シール部材の一方の前記端縁を前記第1方向としかつ他方の前記端縁を前記第2方向に傾斜させ、前記終端ステーブでは、前記シール部材の一方および他方の前記端縁を前記始端ステーブとは逆に傾斜させておき、前記鉄皮の内側に、前記始端ステーブを設置し、前記始端ステーブの隣に前記中間ステーブを設置し、前記中間ステーブの隣に別の前記中間ステーブを設置することを繰り返し、前記中間ステーブと前記始端ステーブとの間に、前記終端ステーブを設置することを特徴とする。
【0012】
このような本発明では、始端ステーブから複数の中間ステーブまでが、それぞれ第1方向に傾斜した端縁どうしが対向した状態で配列される。これらのステーブにおいては、ステーブ本体を厚み方向に変位させることで、互いの端縁の間隔を適切に調整できる。
最後の終端ステーブを設置する場合、一方の側では中間ステーブに対して第1方向に傾斜した端縁どうしが対向し、反対側では他の中間ステーブまたは一巡した始端ステーブに対して第2方向に傾斜した端縁どうしが対向した状態となる。第1方向と第2方向とは逆向きであるため、例えば終端ステーブのステーブ本体を鉄皮に向けて変位させること(周方向外向きに変位させること)により、中間ステーブの端縁との間隔および始端ステーブの端縁との間隔をそれぞれ短縮することができる。
第1方向と第2方向とが同じ向き(例えば始端ステーブおよび終端ステーブの端縁が全て第1方向)であると、ステーブ本体を厚み方向に変位させることで、一方の間隔(例えば中間ステーブの端縁との間隔)は短縮するが、他方の間隔(例えば始端ステーブの端縁との間隔)は拡大することになる。
このように、傾斜する向きが逆になった始端ステーブおよび終端ステーブを用いることで、炉内を一巡するようにステーブを配列しつつ、径方向の変位によるシール部材どうしの隙間の封止など、前述した本発明のステーブによる効果を得ることができる。
【0013】
本発明のステーブの設置方法は、鉄皮の炉内側面に沿って配列されて側面どうしが対向される板状のステーブ本体と、前記ステーブ本体の下面側に固定されて前記鉄皮との間隔を封止するシール部材とを有し、前記シール部材は、端縁が前記ステーブ本体の側面より突出し、かつ前記ステーブ本体の厚み方向に対して傾斜されている中間ステーブ、始端ステーブおよび延長ステーブを用い、前記延長ステーブには、前記シール部材に沿って移動可能に支持されて前記端縁から突出可能な延長板を設置しておき、前記鉄皮の内側に設置されていた既存ステーブを、所定の残留区間にある残留ステーブを残して撤去し、前記既存ステーブを撤去した範囲で前記残留ステーブの隣以外に前記始端ステーブを設置し、前記始端ステーブの隣に前記中間ステーブを設置し、前記中間ステーブの隣に別の前記中間ステーブを設置することを繰り返し、前記中間ステーブと前記残留区間の他端にある前記残留ステーブとの間に、前記延長ステーブを設置し、前記延長ステーブの前記延長板を前記残留ステーブに向けて突出させることを特徴とする。
【0014】
このような本発明では、高炉のステーブの部分更新時など、鉄皮の内側に設置されていた既存ステーブを、所定の残留区間にある残留ステーブを残して撤去し、その跡の更新区間に本発明に基づくステーブを設置することができる。この際、残留区間の一端および他端にある残留ステーブには、傾斜した端縁を有するシール部材がないが、各々に隣接して延長ステーブを設置し、延長ステーブの延長板を残留ステーブに向けて突出させることで、延長ステーブと残留ステーブとの間の隙間を封止することができる。一方の延長ステーブから他方の延長ステーブまでの間は中間ステーブを配列することができる
このように、残留ステーブに対しては延長ステーブで隙間を封止することで、炉内の一部区間だけに本発明のステーブを配列することができ、径方向の変位によるシール部材どうしの隙間の封止など、前述した本発明のステーブによる効果を得ることができる。
その後、残留区間に残された残留ステーブの更新を行う際には、先に更新された区間は本発明のステーブが設置されているため、本発明に基づく傾斜した端縁によるシール部材どうしの隙間の封止を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炉外側操作により設置できかつ下面側の隙間を確実に封止できるステーブおよびステーブの設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態の鉄皮およびステーブを示す断面図。
図2】前記第1実施形態の鉄皮およびステーブの炉内側からの正面図。
図3】前記第1実施形態のステーブを示す分解斜視図。
図4】前記第1実施形態のステーブを示す平面図。
図5】前記第1実施形態のシール部材を示す拡大断面図。
図6】前記第1実施形態のステーブの設置状態を示す平面図。
図7】前記第1実施形態の設置状態のシール部材の端部を示す拡大平面図。
図8】前記第1実施形態の中間ステーブ、始端ステーブおよび終端ステーブを示す模式図。
図9】前記第1実施形態のステーブの設置作業の第1の状態を示す模式図。
図10】前記第1実施形態のステーブの設置作業の第2の状態を示す模式図。
図11】前記第1実施形態のステーブの設置作業の第3の状態を示す模式図。
図12】前記第1実施形態のステーブの設置作業の第4の状態を示す模式図。
図13】本発明の第2実施形態のステーブを示す模式図。
図14】前記第2実施形態のステーブの設置作業の第1の状態を示す模式図。
図15】前記第2実施形態のステーブの設置作業の第2の状態を示す模式図。
図16】前記第2実施形態のステーブの設置作業の第3の状態を示す模式図。
図17】本発明の第3実施形態のステーブを示す分解斜視図。
図18】前記第3実施形態のシール部材を示す拡大縦断面図。
図19】前記第3実施形態のステーブの端部を示す拡大平断面図。
図20】前記第3実施形態のステーブの設置作業の第1の状態を示す模式図。
図21】前記第3実施形態のステーブの設置作業の第2の状態を示す模式図。
図22】前記第3実施形態のステーブの設置作業の第3の状態を示す模式図。
図23】前記第3実施形態のステーブの端部を示す拡大平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1ないし図12には、本発明の第1実施形態が示されている。
図1および図2において、高炉1の鉄皮2には、炉内側面に沿って冷却用のステーブ3が複数配列されている。
ステーブ3は、銅製または鋳鉄製のステーブ本体10を有する。
ステーブ本体10は、鉄皮2を貫通する固定ボルト11により、鉄皮2に固定されている。固定されたステーブ本体10の炉外側面12と鉄皮2との間には、所定の隙間が空けられている。
ステーブ本体10の炉外側面12には、給水ポート13および排水ポート14が形成され、各々はステーブ本体10の内部に形成された図示しない冷媒通路に連通されている。給水ポート13および排水ポート14は、鉄皮2に形成された開口2Hを通して炉外側に引き出され、図示しない給水管および排水管に接続されている。
【0018】
ステーブ3と鉄皮2との間の隙間(ステーブ本体10の炉外側面12と鉄皮2の炉内側面2Fとの隙間)には、不定形耐火材であるキャスタブル4が充填されている。
キャスタブル4は、鉄皮2にステーブ3を固定したのち、互いの隙間に流動状態で充填され、固化したものである。
【0019】
充填されるキャスタブル4の漏れ出しを防止するために、ステーブ3の縦目地および横目地には、各々を覆う帯状のシール材6が貼られる。
シール材6は、薄い鉄板6Sの片面に、ブチルゴム製スポンジなどの弾性体6Eを貼ったものであり、ステーブ3の縦目地および横目地に段差があっても、その変位を吸収することができる。
一方、最下段のステーブ3の下面側の鉄皮2との隙間からキャスタブル4が漏れ出すことを防止するために、最下段のステーブ3として本発明に基づくステーブ3Lが設置されている。
【0020】
なお、高炉1においては、前回のステーブ3の設置時に、鉄皮2にシール板2Sを設け、最下段のステーブ3の下面側の鉄皮2との隙間をシール板2Sで封止していた。
本実施形態では、ステーブ3Lの設置にあたって、シール板2Sは炉内側部分を切除し、鉄皮2には残部2Rを残しておく。なお、高炉1の稼働中に残部2Rが損耗してなくなっていた場合は、別部材を装着して残部2Rを再度形成する。最下段のステーブ3の下に、別の残留ステーブがある場合で、この残留ステーブの上面が損耗消失している場合も、残部2Rを追加する等してその長さを調整することで、最下段のステーブ3の下面側の鉄皮2との隙間を封止することができる。
【0021】
図3において、ステーブ3Lは、上段に配列されるステーブ3と同様なステーブ本体10と、その下面15に固定されたシール部材20とを有する。
ステーブ本体10には、上側の辺縁および一方の側縁に沿って、それぞれシール材6が予め貼られている。これらのシール材6は、ステーブ3Lを鉄皮2に設置した際に、隣接する他のステーブ3Lの側縁との間の縦目地を覆うとともに、上段のステーブ3の下縁との間の横目地を覆うことが可能である。なお、ステーブ3Lを先に設置し、後から上方のステーブ3を設置する場合は、シール材6は後に取り付けるステーブ3の下部に予め貼っておき、ステーブ3の設置の際にステーブ3Lとの間の目地を覆うようにしてもよい。
【0022】
シール部材20は、ステーブ本体10の下面15を被覆可能な板、例えば鋼製のベース板21を有し、ベース板21は複数のボルト22でステーブ本体10の下面15に装着される。
ベース板21の炉内側辺縁には起立部23が形成され、起立部23はシール部材20がステーブ本体10に装着された際にステーブ本体10の炉内側面に沿って配置される。
【0023】
ベース板21の下面には鋼製の枠体24が溶接などで固定され、シール部材20は下面が開放された箱状とされている。
枠体24には、鉄皮2に対向する側面に弾性部材25(炉外側弾性部材)が装着され、隣接する他のステーブ3Lに対向する側面に弾性部材26(端縁側弾性部材)が装着されている。弾性部材25,26は、それぞれブチルゴム製スポンジなどで形成され、それぞれ複数のボルト251,261で枠体24に固定されている。
【0024】
図4おいて、シール部材20は、鉄皮2に対向する辺縁(具体的には弾性部材25およびベース板21の炉外側の部分)が、ステーブ本体10の炉外側面12より突出されている。
図5において、ステーブ3Lを鉄皮2に設置した状態では、ステーブ本体10の炉外側面12より突出された弾性部材25が、鉄皮2に残されている残部2Rに圧接される。これにより、ステーブ本体10の全幅にわたって、ステーブ本体10の炉外側面12と鉄皮2の炉内側面2Fとの間の隙間が封止可能である。
【0025】
図4において、シール部材20は、両側の端縁201,202が、それぞれステーブ本体10の側面16から突出するとともに、ステーブ本体10の厚み方向に対して同じ側に傾斜され、平面形状が略平行四辺形とされている。
本実施形態のシール部材20においては、弾性部材25の辺縁により一方の端縁201が形成され、反対側のベース板21の辺縁により他方の端縁202が形成されている。
図6において、ステーブ3Lを鉄皮2に設置した状態では、各々の端縁201,202が互いに圧接される。これにより、ステーブ本体10の下面側に生じるステーブ本体10どうしの隙間が封止可能である。
【0026】
ステーブ3Lを鉄皮2に設置する際には、ステーブ3Lの吊り込み位置精度の関係で、隣接するステーブ3Lの端縁201,202が密着するとは限らない。
これに対し、本実施形態では、ステーブ3Lを鉄皮2に取付けるために炉外側に移動させる(ステーブ本体10の厚み方向に変位させる)ことで、端縁201,202の間隔が短縮されるため、互いを圧接させることができる。
【0027】
図7において、図中左側のステーブ3L1が先に設置されており、続いて、図中右側のステーブ3L2が設置される。ステーブ3L2は、吊り込まれる途中段階では2点鎖線の状態にあり、ステーブ3L1の端縁201とステーブ3L2の端縁202との間には隙間Gが空いており、ステーブ3L1の弾性部材26はステーブ3L2のシール部材20に接触していない。
そこで、ステーブ3L2を、実線で示す正規の状態まで更に炉外側に移動させると、それぞれ同じ側に傾斜しているステーブ3L1の端縁201とステーブ3L2の端縁202とが近接し、やがて互いの隙間Gが0となり、さらに圧接状態に至る。ステーブ3L1の端縁201の弾性部材26が所定量圧縮された状態となることで、ステーブ3L1とステーブ3L2との隙間の封止が得られる。
【0028】
なお、ステーブ3L2を変位させる手段としては、図1のように、給水ポート13を挿通するために形成されている鉄皮2の開口2Hを通して、炉外側から棒2Pを挿入することで、吊り下げられた状態のステーブ3L2の下部を操作することができる。下部を操作する手段としては、例えば、ステーブ取付用の固定ボルト11やステーブ冷却配管の給水ポート13や排水ポート14を利用し、そこから工具などを挿入してステーブ3L2を動かすことができる。
前述した通り、鉄皮2との間の隙間を封止するために、ステーブ3L2においては、弾性部材25が鉄皮2に残されている残部2Rに圧接されている。ステーブ3L2を変位させた際には、同部分の圧接が維持されるように配慮する必要がある。しかし、本実施形態では、弾性部材25を介して残部2Rに圧接させているため、過大な変位を与えない限り、同部分の圧接を維持することができる。なお、前述した稼働時に損耗して残部2Rが無くなっている場合に、枠体24を残部2Rに相当する分だけ鉄皮2側へ延長し、残部2Rを用いずに鉄皮2と弾性部材25とを直接圧接させてよい。
【0029】
以上のようなシール部材20を有するステーブ3Lを用いることで、鉄皮2とステーブ本体10の炉外側面12との隙間あるいはステーブ本体10どうしの隙間からキャスタブル4が漏れ出すことを防止することができる。
【0030】
〔第1実施形態における設置作業〕
本実施形態では、高炉1の更新にあたり、鉄皮2の炉内側面2Fから稼働済の古いステーブ3を全て撤去したのち、鉄皮2の炉内側面2Fに新しいステーブ3を設置する。ステーブ3を設置する際には、最下段の全周にわたって本発明のステーブ3Lを設置し、その上段に新たなステーブ3を順次設置してゆく。
最下段のステーブ3Lを全周に設置する際には、最初のステーブ3L(図8の始端ステーブ3LF)を炉内側面2Fの所定位置に設置し、その隣に別のステーブ3L(図8の中間ステーブ3LM)を設置し、以下同様にステーブ3Lの設置を繰り返す。ステーブ3Lが炉内側面2Fを一巡したら、最後のステーブ3L(図8の終端ステーブ3LE)を、直前に設置したステーブ3Lと最初のステーブ3Lとの間に設置する。
【0031】
最下段に設置されるステーブ3Lは、鉄皮2に固定される際に、ステーブ本体10を鉄皮2がある炉外側に移動させる(鉄皮2との間隔を短縮させる)ことで、直前に設置されたステーブ3Lとの間で端縁201と端縁202とが圧接される。しかし、最後のステーブ3Lについては、直前に設置したステーブ3Lおよび最初のステーブ3Lの両方に対して端縁201,202を圧接させる必要がある。
そこで、本実施形態では、最初と最後のステーブ3Lについては、両側の端縁201,202が互いに逆向きに傾斜したものを用いる。
【0032】
図8において、鉄皮2の炉内側面2Fには、始端ステーブ3LFおよび終端ステーブ3LEが隣接して設置され、他の領域には中間ステーブ3LMが設置されている。
中間ステーブ3LMは、シール部材20の両側の端縁201,202がともに第1方向(炉外側に向けて時計回り)に傾斜され、平面形状が略平行四辺形状とされている。
始端ステーブ3LFは、シール部材20の一方の端縁201が第1方向とされ、他方の端縁202は第1方向とは逆の第2方向(炉外側に向けて反時計回り)に傾斜され、平面形状が炉外側に拡がった略台形状または扇状とされている。
終端ステーブ3LEは、シール部材20の一方の端縁201および他方の端縁202が始端ステーブ3LFとは逆、すなわち端縁201が第2方向で端縁202が第1方向に傾斜され、平面形状が炉外側へ拡がった略台形状とされている。
【0033】
図9ないし図12には、始端ステーブ3LF、中間ステーブ3LMおよび終端ステーブ3LEの設置手順が示されている。
図9において、始端ステーブ3LF、中間ステーブ3LMおよび終端ステーブ3LEを設置する際には、予め鉄皮2の炉内側面2Fから古いステーブ3を全て撤去しておく。
なお、更新前の高炉1においては、最下段を含めた全てが既存のステーブ3とされ、最下段のステーブ3の下面側からのキャスタブル4の漏れ出しを防止するために、鉄皮2にシール板2Sが設置されていた。高炉1の更新にあたっては、稼働を終えたステーブ3を全て撤去したのち、シール板2Sの内側部分を切断して撤去し、残部2Rを鉄皮2に固定されたままにしておき、最下段のステーブ3Lによる鉄皮2との隙間の封止に残部2Rを利用する(図1および図5参照)。なお、稼働時の損耗に拘わらずシール板2Sが消失してない場合、シール板2Sの内側部分の切断撤去が困難な場合、あるいは最下段のステーブ3Lの下面側に他の残留ステーブが存在している場合は、枠体24を延長して鉄皮2と弾性部材25とを直接圧接させてよい。
この状態で、鉄皮2の炉内側面2Fの所定位置に、始端ステーブ3LFを設置する。
【0034】
図10において、始端ステーブ3LFが設置されたら、隣接して中間ステーブ3LMを設置する。
中間ステーブ3LMは、始端ステーブ3LFの端縁201の側に吊り込まれ、炉内側面2Fに沿って保持される。この状態で、始端ステーブ3LFのシール部材20の端縁201(第1方向に傾斜)と、中間ステーブ3LMのシール部材20の端縁202(第1方向に傾斜)とは、互いに対向される。始端ステーブ3LFの端縁201と中間ステーブ3LMの端縁202との間に隙間があれば、中間ステーブ3LMを鉄皮2がある炉外側に移動させることで、この隙間をなくし、始端ステーブ3LFの端縁201と中間ステーブ3LMの端縁202とを圧接させる。
【0035】
図11において、中間ステーブ3LMが設置されたら、次の中間ステーブ3LMを吊り込んで同様な調整を行い、各々のシール部材20の端縁201と端縁202とを圧接させる。このような操作を繰り返すことで、複数の中間ステーブ3LMを順次時計回りに設置してゆく。
図12において、予定した中間ステーブ3LMが全て設置されたら、直前に設置された中間ステーブ3LMと最初に設置した始端ステーブ3LFとの間に、終端ステーブ3LEを設置する。
【0036】
終端ステーブ3LEは、中間ステーブ3LMの端縁201と始端ステーブ3LFの端縁202との間に吊り込まれ、炉内側面2Fに沿って保持される。この状態で、終端ステーブ3LEのシール部材20の端縁202(第1方向に傾斜)は、中間ステーブ3LMのシール部材20の端縁201(第1方向に傾斜)に対向配置される。一方、終端ステーブ3LEのシール部材20の端縁201(第2方向に傾斜)は、始端ステーブ3LFのシール部材20の端縁202(第2方向に傾斜)に対向配置される。
【0037】
各側の端縁201,202どうしの間に隙間があれば、中間ステーブ3LMを鉄皮2がある炉外側に移動させることで、各側の端縁201,202どうしの隙間を並行してなくすことができる。すなわち、対向する終端ステーブ3LEの端縁202および中間ステーブ3LMの端縁201の傾斜方向は第1方向であり、終端ステーブ3LEの端縁201および始端ステーブ3LFの端縁202の傾斜方向は第2方向であり、各々の傾斜方向が互いに逆方向となっていることから、終端ステーブ3LEは、いわば楔のような形で中間ステーブ3LMと始端ステーブ3LFとの間に押込むことができ、設置が容易にできるとともに、両側の端縁201,202における圧接が得られる。
【0038】
以上のように、鉄皮2の炉内側面2Fの全周に最下段のステーブ3Lを設置することで、ステーブ3Lと鉄皮2との隙間はシール部材20と残部2Rとの圧接により封止され、ステーブ3Lどうしの目地はシール材6で封止される。
こののち、最下段のステーブ3Lの上段に、ステーブ本体10およびシール材6を有する通常のステーブ3を設置してゆき、相互の目地をシール材6で封止できたら、鉄皮2とステーブ3との間にキャスタブル4を充填し、固化させることで、高炉1の更新が行われる。
【0039】
〔第1実施形態の効果〕
本実施形態においては、鉄皮2の炉内側面2Fに所定間隔をあけてステーブ本体10を固定し、順次配列してゆく。ステーブ本体10の固定に伴って、シール部材20は、隣接するステーブ3Lのシール部材20と互いの端縁201,202どうしが隣接して配置される。シール部材20の端縁201,202は、ステーブ本体10の厚み方向(高炉1の径方向)に対して傾斜されているため、ステーブ本体10をその厚み方向(高炉の径方向)に変位させることで、厚み方向(高炉の径方向)と交差する方向(高炉1の周方向)にシール部材20の端縁201,202が変位し、隣接するシール部材20との距離(端縁201,202どうしの間隔)を増減させることができる。
【0040】
本実施形態のステーブ3Lでは、シール部材20の両側の端縁201,202が同側に傾斜されているため、ステーブ本体10を順次配列することで、隣接するシール部材20の端縁201,202どうしが平行となり、前述した鉄皮2がある炉外側に移動させることで端縁201,202どうしの間隔が一様に縮小され、端縁201,202の全長にわたって確実な封止を行うことができる。
一方、本実施形態では、中間ステーブ3LMでは端縁201,202の傾斜方向を同じ第1方向としつつ、始端ステーブ3LFのシール部材20の端縁202と終端ステーブ3LEのシール部材20の端縁201だけを第1方向とは逆向きの第2方向とすることで、ステーブ3Lを全周に設置する場合でも、終端ステーブ3LEを容易に設置でき、全ての端縁201,202どうしの圧接を得ることができる。
【0041】
本実施形態のステーブ3Lでは、シール部材20の一方の端縁201に端縁側弾性部材としての弾性部材26が装着されているため、隣接する他のステーブ3Lのシール部材20の端縁202との隙間を増減させた際に、弾性部材26が隣接する端縁201,202の間に挟み込まれて互いの隙間が確実に封止できる。
また、シール部材20の鉄皮2に対向する炉外側の弾性部材25が装着されているため、シール部材20の炉外側辺縁と鉄皮2との間の隙間を確実に封止できる。前述したステーブ本体10を鉄皮2がある炉外側に移動させて端縁201,202の隙間を短縮させる際に、炉外側に弾性部材25があることで、鉄皮2との間の封止を途中の段階でも常に維持することができる。
【0042】
本実施形態では、鉄皮2の内側の全周にわたってステーブ3Lを設置する際に、中間ステーブ3LM、始端ステーブ3LFおよび終端ステーブ3LEを用い、中間ステーブ3LMのシール部材20の端縁201,202の傾斜方向、始端ステーブ3LFのシール部材20の端縁201および終端ステーブ3LEのシール部材20の端縁202の傾斜方向を、それぞれ同じ第1方向としつつ、始端ステーブ3LFのシール部材20の端縁202と終端ステーブ3LEのシール部材20の端縁201だけを第1方向とは逆向きの第2方向とした。
このため、始端ステーブ3LFの端縁201から複数の中間ステーブ3LMの端縁201,202までは、それぞれ同じ第1方向に傾斜した状態とされ、ステーブ本体10を鉄皮2がある炉外側に移動させることで、互いの端縁201,202の間隔を適切に調整できる。
【0043】
一方、最後の終端ステーブ3LEにおいては、中間ステーブ3LMの端縁201に対しては第1方向に傾斜した端縁202が対向し、一巡した始端ステーブ3LFに対しては第2方向に傾斜した端縁201が対向した状態となる。第1方向と第2方向とは逆向きであるため、終端ステーブ3LEを鉄皮2がある炉外側に移動させることで(周方向外向きに変位させること)により、終端ステーブ3LEを中間ステーブ3LMと始端ステーブ3LFとの間に楔状に押込むことができ、中間ステーブ3LMの端縁201との間隔および始端ステーブ3LFの端縁202との間隔をそれぞれ短縮することができる。
第1方向と第2方向とが同じ向き(例えば始端ステーブ3LFおよび終端ステーブ3LEの端縁201,202が全て第1方向)であると、ステーブ本体10を鉄皮2がある炉外側に移動させることで、例えば一方の間隔(中間ステーブ3LMの端縁201との間隔)は短縮するが、他方の間隔(始端ステーブ3LFの端縁202との間隔)は拡大することになり、終端ステーブ3LEを適切な位置に設置することが困難となる。
これに対し、本実施形態では、傾斜する向きが両側で逆になった始端ステーブ3LFおよび終端ステーブ3LEを用いることで、炉内を一巡するようにステーブ3Lを配列しつつ、径方向の変位によるシール部材20どうしの隙間の封止など、前述した本発明のステーブによる効果を得ることができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図13ないし図16には、本発明の第2実施形態が示されている。
前述した第1実施形態では、ステーブ3Lとして始端ステーブ3LF,中間ステーブ3LM,終端ステーブ3LEを用い、始端ステーブ3LFから中間ステーブ3LMを順次接続し、最後の中間ステーブ3LMと始端ステーブ3LFとの間に終端ステーブ3LEを設置していた。つまり、第1実施形態では高炉1の内部を一方向に巡回するようにステーブ3Lを設置していた。これに対し、第2実施形態では高炉1の内部を逆向きの2方向に巡回するようにステーブ3Lを設置する。
【0045】
図13において、第2実施形態では、始端ステーブ3LFの両側に、それぞれ中間ステーブ3LM,3LGを順次接続してゆき、各々が合流する部分に終端ステーブ3LEを設置する。
本実施形態において、ステーブ3L(3LF,3LM,3LG,3LE)が設置される高炉1およびステーブ3L(3LF,3LM,3LE)それ自体の構成は、基本的に前述した第1実施形態と共通である。従って、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態で追加的に用いられる中間ステーブ3LGは、中間ステーブ3LMと基本構成が同様であるが、中間ステーブ3LMとは端縁201,202の傾斜方向(第1方向,第2方向)が逆、かつシール材6が設置される側が逆とされている。
【0046】
本実施形態のステーブ3L(3LF,3LM,3LG,3LE)の設置手順は次のようになる。
図14において、高炉1の内側の所定位置に始端ステーブ3LFを設置し、その両側にそれぞれ中間ステーブ3LMおよび中間ステーブ3LGを接続してゆく。
図15において、高炉1の片側では中間ステーブ3LMを順次接続してゆき、反対側では中間ステーブ3LGを順次接続してゆく。これにより、高炉1の内側の約半周分ずつが中間ステーブ3LM,3LGで覆われる。
図16において、最後の中間ステーブ3LMおよび中間ステーブ3LGの間に残された部分に、終端ステーブ3LEを設置する。
これにより高炉1の内側を全周にわたって覆うステーブ3Lが形成される。
【0047】
このような本実施形態では、高炉1の略半周ずつを中間ステーブ3LMおよび中間ステーブ3LGで覆うため、各々の設置作業を同時並行して行うことができ、施工期間を短縮することができる。
なお、本実施形態では、始端ステーブ3LFと終端ステーブ3LEとを高炉1の中心を挟んで反対側とし、中間ステーブ3LM,3LGを約半周分ずつとしたが、始端ステーブ3LFに対する終端ステーブ3LEの位置は適宜変更してよく、中間ステーブ3LM,3LGの一方が他方より長く設置されていてもよい。
また、本実施形態では、始端ステーブ3LFおよび終端ステーブ3LEを1組用い、各々の両側を中間ステーブ3LM,3LGで接続した。別の態様として、2組以上の始端ステーブ3LFおよび終端ステーブ3LEを交互に配置し、各々の両側を中間ステーブ3LM,3LGで接続してもよく、作業を4系統以上並列で行うことができ、さらなる工期短縮が期待できる。
【0048】
〔第3実施形態〕
図17ないし図23には、本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態において、ステーブ3L(3LF,3LM)およびこれらが設置される高炉1の構成は、基本的に前述した第1実施形態と共通である。従って、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
前述した第1実施形態および第2実施形態では、高炉1の内部のステーブ3を全て撤去し、新たなステーブ3を設置する際にその最下段に本発明のステーブ3Lである始端ステーブ3LF、中間ステーブ3LM,3LGおよび終端ステーブ3LEを全周にわたって設置していた。
これに対し、本実施形態では、短期間の休風を複数回行うことにし、高炉1の内部の古いステーブ3の一部(例えば半周分)だけ撤去し、残る半周分の残留区間では古いステーブ3を残留ステーブ3Uとして残しておき、撤去された半周分の区間に本発明のステーブ3Lを設置する。
この際、新たに設置されるステーブ3Lの中間部分には前述した第1実施形態と同様な中間ステーブ3LM,3LGを用いる。さらに、本実施形態では第1実施形態あるいは第2実施形態のような終端ステーブ3LEは用いず、新たに設置されるステーブ3Lの両端部分においては、残留ステーブ3Uとの接続に適した延長板27を有する延長ステーブ3LS,3LTを用いる。
【0050】
図17において、延長ステーブ3LSは、前述した第1実施形態のステーブ3Lと同様なステーブ本体10およびシール部材20を有する。
ただし、本実施形態の延長ステーブ3LSでは、シール部材20の端縁202の側の下面に延長板27が設置されている。
【0051】
図18および図19において、シール部材20の枠体24には支持板241が固定されている。延長板27は、支持板241の下面に沿って配置され、一対の長孔272に挿通されたボルト271で支持板241に締め付け固定されている。固定方法は接着でも良い。
延長板27は、通常はシール部材20の端縁202から突出しない状態とされている。一方、ボルト271を緩めることで、延長板27は端縁202から突出した状態まで引き出すことができる。
【0052】
延長ステーブ3LTは、基本的な構成が延長ステーブ3LSと共通である。ただし、延長板27の配置、端縁201,202の傾斜方向およびシール材6の設置される側が延長ステーブ3LSとは逆になっている。
つまり、端縁201,202およびシール材6に関して、延長ステーブ3LSが中間ステーブ3LMをアレンジしたものに対し、延長ステーブ3LTが中間ステーブ3LGをアレンジしたものである。
さらに、延長板27に関して、延長ステーブ3LSでは、延長板27が端縁202の側に設置されていた。これに対して、延長ステーブ3LTでは、延長板27がシール部材20の端縁201の側の下面に設置されている。延長ステーブ3LTの延長板27は、引き出した際に、端縁201に設置される弾性部材26より十分突出した状態となりうる。
【0053】
鉄皮2には、残留区間の両端部において、残留ステーブ3Uの端部が見える位置に、それぞれ作業用開口2Uを開けておく。作業用開口2Uには、再度封止できるようにフランジを有するカラー2Vを溶接しておく。
作業用開口2Uを封止する際には、図22および図23に示すように、作業用開口2Uを板状の蓋2Wで覆ってカラー2Vにボルトナットで締結する構造、蓋2Wをカラー2Vに溶接する構造を用いることができる。なお、カラー2Vを用いず、作業用開口2Uの周囲の鉄皮2に蓋2Wを直接溶接してもよい。このうち、蓋2Wを溶接固定する構造によれば、確実なシールが期待できる。ただし、溶接された蓋2Wを再度取り外す際には溶接斫などの切断作業が必要である。一方、ボルトナット方式であれば、封止も取り外しも作業性が良好である。
【0054】
本実施形態における延長ステーブ3LS,3LTおよび中間ステーブ3LMの設置手順は以下の通りである。
図20において、高炉1の鉄皮2の内側に設置された古いステーブ3については、その半周分の区間(2点鎖線で表示された図中右側半分)のものを撤去し、残留区間(図中左側半分)のものは残留ステーブ3Uとして残しておく。
図21において、古いステーブ3が撤去された区間の中間の位置、つまり区間の端部を除いた1カ所に始端ステーブ3LFを取付ける。
図22において、始端ステーブ3LFの両側には、それぞれ中間ステーブ3LM,3LGを順次接続してゆく。
【0055】
始端ステーブ3LFから反時計回りに接続される中間ステーブ3LGについては、残留ステーブ3Uの端部(図中上側)との間に、端縁202に延長板27を有する延長ステーブ3LSを設置する。延長ステーブ3LSの設置の際には、延長ステーブ3LSの端縁202を残留ステーブ3Uの端部に近接させ、作業用開口2Uから操作することで、延長板27を引き出し、残留ステーブ3Uの端部に接続する。
始端ステーブ3LFから時計回りに接続される中間ステーブ3LMについては、残留ステーブ3Uの端部(図中下側)との間に、端縁201に延長板27を有する延長ステーブ3LTを設置する。延長ステーブ3LTの設置の際には、延長ステーブ3LTの端縁201を残留ステーブ3Uの端部に近接させ、作業用開口2Uから操作することで、延長板27を引き出し、残留ステーブ3Uの端部に接続する。
【0056】
図23に示すように、延長ステーブ3LS,3LTにおいて、延長板27と残留ステーブ3Uの端部との間(高炉1の周方向)、あるいは、延長板27と残部2Rおよび弾性部材25との間(高炉1の径方向つまり炉内炉外方向)には、それぞれ隙間が生じる可能性がある。これらの隙間が大きいと、キャスタブル4を充填した際にキャスタブル4が漏れ出す可能性がある。そこで、引き出した延長板27の上に不定形耐火材の塊4S,4Tを配置し、押し固めて隙間を塞いでおく。
塊4S,4Tを配置する作業は作業用開口2Uを通して行い、作業が完了したら作業用開口2Uを蓋2Wで封止する。
【0057】
以上により、古いステーブ3が撤去された区間には、シール部材20を有するステーブ3L(3LF,3LG,3LM,3LS,3LT)が設置される。
これらのステーブ3L(3LF,3LG,3LM,3LS,3LT)においては、それぞれの弾性部材25が残部2Rに押し付けられることで鉄皮2との間を封止され、ステーブ3Lどうしの間は弾性部材26が挟み込まれて封止される。さらに、両端に配置される延長ステーブ3LS,3LTは、それぞれ延長板27および不定形耐火材の塊4S,4Tによって残留ステーブ3Uとの間を封止される。
その結果、新たに設置された半周分のステーブ3L(3LF,3LG,3LM,3LS,3LT)と、撤去されずに残された半周分の残留ステーブ3Uとにより、全周におよぶ最下段のステーブ3が形成され、半周分のステーブ3Lの上段に新たなステーブ3を積んだのち、キャスタブル4を充填することで、高炉1の一部更新を行うことができる。
【0058】
高炉1の再稼働ののち、所定期間が経過して高炉1の内部の残りの一部(半周分の残留ステーブ3U)を更新する際には、次のような作業を行う。
休風後、残留ステーブ3Uを撤去するとともに、先に封止しておいた作業用開口2Uを再度開き、延長ステーブ3LS,3LTの延長板27を戻し、端縁201,202から突出しない状態としておく。この状態で、延長ステーブ3LS,3LTは、シール部材20の両側が端縁201,202で他と接続されることになり、中間ステーブ3LG,3LMと同様に扱うことができる。
【0059】
次に、一方の延長ステーブ3LSの端縁202に隣接して中間ステーブ3LGを設置するとともに、反対側の延長ステーブ3LTの端縁201に隣接して中間ステーブ3LMを設置する。さらに、中間ステーブ3LG,3LMをそれぞれ、順次接続してゆく。そして、所定数の中間ステーブ3LG,3LMが設置されたら、中間ステーブ3LMの端縁201と中間ステーブ3LGの端縁202との間に、前述した第2実施形態と同様な終端ステーブ3LEを設置する。
【0060】
以上により、高炉1の内部には、前回の更新により設置された半周分のステーブ3Lに続いて、残りの半周分のステーブ3Lが設置され、その結果、高炉1の全周にわたって最下段のステーブ3Lの更新が完了できる。
本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様な効果が得られるとともに、全周のステーブ3Lの更新を複数回に分けて実施することができ、休風期間を短縮することができる。
本実施形態では、更新しない残留ステーブ3Uと本発明のステーブ3Lとの接続に、延長板27を有する延長ステーブ3LS,3LTを用いるとしたため、各々の間の隙間を確実に封止できるとともに、構造を簡単なものにできる。延長板27の操作は、鉄皮2に形成した作業用開口2Uを通して行うとしたため、炉内作業を減らすことができる。
【0061】
〔変形例〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、中間ステーブ3LM,3LGでは、シール部材20の端縁201,202を、ともに炉外側に向けて時計方向(中間ステーブ3LM)または反時計方向(中間ステーブ3LG)に傾斜させたが、この傾斜角度(第1角度、ステーブ本体10の厚み方向に対する傾斜角度)は、実施にあたって適宜選択すればよい。
前記実施形態では、始端ステーブ3LFのシール部材20を炉外側縁が炉内側縁より長い略台形状とし、終端ステーブ3LEのシール部材20を炉外側縁が炉内側縁より短い逆向きの略台形状とし、各々の端縁201,202の一方および他方を第1角度および第2角度としたが、第2角度は、ステーブ本体10の厚み方向に対して反対向きに第1角度と同じ角度としてもよく、異なる角度としてもよい。ただし、終端ステーブ3LEの位置調整で、終端ステーブ3LEを高炉1の径方向へ移動させる(終端ステーブ3LEの厚み方向に変位させる)際に、両側の端縁201,202での隙間の変化が同じようになるため、第1角度と第2角度とを反対向きだが同じ角度とすることが好ましい。
【0062】
前記実施形態では、シール部材20の端縁201,202に弾性部材26(端縁側弾性部材)を装着し、シール部材20の鉄皮2に対向する炉外側辺縁に弾性部材25(炉外側弾性部材)を装着した。ただし、弾性部材25,26は一体、つまりシール部材20の端縁201,202の一方から鉄皮2に対向する炉外側辺縁まで連続していてもよい。
また、弾性部材25,26は、ブチルゴム製スポンジなどの合成ゴム発泡体に限らず、他の合成樹脂の発泡体、天然ゴムやシリコンゴムなど弾力性を有する素材の中実板材あるいは中空筒状材、または耐熱性が期待されるセラミックウールなどで形成されてもよい。
前記実施形態では、弾性部材25,26をボルト251,261で枠体24に固定したが、他の係止具などを用いてもよく、強度が確保できれば接着剤あるいは接着テープなどを用いてもよい。
前記実施形態では、鉄皮2との間の封止に、鉄皮2に残されたシール板2Sの残部2Rを流用したが、これらを完全に撤去して弾性部材25を鉄皮2の炉内側面2Fに直接圧接させてもよい。
【0063】
シール部材20は、ベース板21に枠体24を溶接して下面が開放された箱状に形成されたものに限らず、下面まで閉じた箱状であってもよく、あるいはH形鋼やC形鋼を用いてもよい。さらに、シール部材20は、鋼材による基本部分に弾性部材25,26を装着したものに限らず、全体が弾性部材で形成されていてもよい。
一方、シール部材20として、ベース板21および枠体24からなる基本部分に弾性部材25,26を装着することは必須ではなく、例えば隣接するシール部材20または鉄皮2に向けて進退する部材などを用いて隙間を解消できれば、弾性部材25,26は省略してもよい。
【0064】
前述した第3実施形態では、高炉1の更新を部分的に行うために、延長板27を有する延長ステーブ3LS,3LTを用いたが、これらは省略してもよい。その場合、残留ステーブ3Uとの接続にあたって、作業用開口2Uから不定形耐火材の塊4S,4Tを配置し、残留ステーブ3Uと本発明のステーブ3Lとの隙間が確実に封止されるように施工する必要がある。このような施工を確実に行うために、延長板27を有する延長ステーブ3LS,3LTを用いることが好ましい。
前記実施形態におけるステーブ本体10としては、銅製か鋳鉄製かあるいは表面形状など任意のステーブを用いることができる。また、本発明が適用される高炉1についても、任意の形式に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明はステーブおよびステーブの設置方法に関する。
【符号の説明】
【0066】
1…高炉、10…ステーブ本体、11…固定ボルト、12…炉外側面、13…給水ポート、14…排水ポート、15…下面、16…側面、2…鉄皮、20…シール部材、201,202…端縁、21…ベース板、22…ボルト、23…起立部、24…枠体、241…支持板、25,26…弾性部材、27…延長板、251,261,271…ボルト、272…長孔、2F…炉内側面、2H…開口、2P…棒、2R…残部、2S…シール板、2U…作業用開口、2V…カラー、3…ステーブ、3L,3L1,3L2…本発明に基づく最下段のステーブ、3LE…終端ステーブ、3LF…始端ステーブ、3LM…中間ステーブ、3LS,3LT…延長ステーブ、3U…残留ステーブ、4…キャスタブル、4S,4T…不定形耐火材の塊、6…シール材、6E…弾性体、6S…鉄板、G…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23