特許第6954903号(P6954903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6954903ブロッコリーにおけるA.カンジダ レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6954903
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】ブロッコリーにおけるA.カンジダ レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/20 20180101AFI20211018BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20211018BHJP
   A01H 5/12 20180101ALI20211018BHJP
   A01H 5/04 20180101ALI20211018BHJP
   A01H 5/06 20180101ALI20211018BHJP
   A01H 5/08 20180101ALI20211018BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20211018BHJP
   A01H 1/02 20060101ALI20211018BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20211018BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20211018BHJP
【FI】
   A01H6/20ZNA
   C12N5/04
   A01H5/12
   A01H5/04
   A01H5/06
   A01H5/08
   A01H5/10
   A01H1/02 A
   C12Q1/6869 Z
   !C12N15/11 Z
【請求項の数】22
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2018-527016(P2018-527016)
(86)(22)【出願日】2016年8月12日
(65)【公表番号】特表2018-525036(P2018-525036A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2016069241
(87)【国際公開番号】WO2017025627
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2019年6月24日
(31)【優先権主張番号】15306288.0
(32)【優先日】2015年8月12日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】2015255211
(32)【優先日】2015年11月11日
(33)【優先権主張国】AU
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB-42433
(73)【特許権者】
【識別番号】518049164
【氏名又は名称】ビルモラン エ コンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ピエリック ベルティ
(72)【発明者】
【氏名】ペリーヌ ダビド
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ユリエ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴワール マランデル
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/135782(WO,A1)
【文献】 特開2018−057374(JP,A)
【文献】 SANTOS M R; DIAS J S,EVALUATION OF A CORE COLLECTION OF BRASSICA OLERACEA ACCESSIONS FOR RESISTANCE TO WHITE RUST OF CRUCIFERS (ALBUGO CANDIDA) AT THE COTYLEDON STAGE,GENETIC RESOURCES AND CROP EVOLUTION,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,2004年11月,VOL:51, NR:7,PAGE(S):713 - 722,http://dx.doi.org/10.1023/B:GRES.0000034577.82868.5d
【文献】 PETKOWSKI J E; CUNNINGTON J H; MINCHINTON E J AND CAHILL D M,MOLECULAR PHYLOGENETIC RELATIONSHIPS BETWEEN ALBUGO CANDIDA COLLECTIONS ON THE BRASSICACEAE IN AUSTRALIA,PLANT PATHOLOGY,2010年04月,VOL:59, NR:2,PAGE(S):282 - 288,http://dx.doi.org/10.1111/j.1365-3059.2009.02204.x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H6/20
A01H5/00−5/12
A01H1/00−1/08
C12N5/04
C12Q1/68−1/6897
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵菌類アルブゴ・カンジダ(Albugo candida)レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病(white blister rust)に抵抗性がある、ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ(Brassica oleracea var. italica)ブロッコリー植物であって、
抵抗性を付与するロマネスコ(romanesco)B.オレラセア植物由来の遺伝子移入された配列をそのゲノム中に有し、
ここで、前記遺伝子移入された配列が、第4染色体上に、SNP BO−0108436(配列番号5)及びSNP BN−0067793(配列番号15)によって区切られた染色体領域内に位置し、
ここで、前記遺伝子移入された配列が、NCIMB受託番号NCIMB−42433で寄託されたB.オレラセアBROCCO−C4の種子のゲノムに存在する遺伝子移入された配列から選択され、ここで、前記種子のゲノムに存在する遺伝子移入された配列が、第4染色体上にあり、かつ抵抗性を付与する、ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物。
【請求項2】
前記遺伝子移入された配列が、前記ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物のゲノム中にホモ接合性に又はヘテロ接合性に存在する、請求項1に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物
【請求項3】
前記抵抗性を付与する遺伝子移入された配列が、SNP BO−0108436(配列番号5)及びSNP BO−0108751(配列番号11)によって区切られた染色体領域内に位置している、請求項1又は2に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物
【請求項4】
前記遺伝子移入された配列が、SNP BO−0108746(配列番号6)を含む遺伝子座に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物
【請求項5】
前記遺伝子移入された配列が、SNP BO−0108746(配列番号6)の対立遺伝子Cと連鎖不平衡にある、請求項1から3のいずれか一項に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物
【請求項6】
少なくとも1つの第4染色体上にあり、かつ前記抵抗性を付与する、前記遺伝子移入された配列の存在が、SNP BO−0108436(配列番号5)、SNP BO−0108746(配列番号6)、SNP BO−0108747(配列番号7)、SNP BO−0108748(配列番号8)、SNP BO−0108749(配列番号9)、SNP BO−0108750(配列番号10)、SNP BO−0108751(配列番号11)、SNP BO−0108752(配列番号12)、SNP BO−0108753(配列番号13)、SNP BN−0067786(配列番号14)及びSNP BN−0067793(配列番号15)、からなる群から選択される、少なくとも1つのマーカーによって特徴づけられる、請求項1から5のいずれか一項に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物
【請求項7】
前記遺伝子移入された配列の存在が、以下:
− SNP BO−0108436(配列番号5)の対立遺伝子Gの存在;及び/又は
− SNP BO−0108746(配列番号6)の対立遺伝子Cの存在;及び/又は
− SNP BO−0108747(配列番号7)の対立遺伝子Gの存在;及び/又は
− SNP BO−0108748(配列番号8)の対立遺伝子Aの存在;及び/又は
− SNP BO−0108749(配列番号9)の対立遺伝子Cの存在;及び/又は
− SNP BO−0108750(配列番号10)の対立遺伝子Aの存在;及び/又は
− SNP BO−0108751(配列番号11)の対立遺伝子Gの存在;及び/又は
− SNP BO−0108752(配列番号12)の対立遺伝子Cの存在;及び/又は
− SNP BO−0108753(配列番号13)の対立遺伝子Cの存在;及び/又は
− SNP BN−0067786(配列番号14)の対立遺伝子Tの存在;及び/又は
− SNP BN−0067793(配列番号15)の対立遺伝子Gの存在、
によって特徴づけられる、請求項6に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物
【請求項8】
前記遺伝子移入された配列が、前記抵抗性を付与する一遺伝子性かつ優性である抵抗性遺伝子を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物
【請求項9】
前記ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物が、BROCCO−C4(NCIMB受託番号42433)の植物の後代であるか、又はBROCCO−C4(NCIMB受託番号42433)の植物に由来する、請求項1から8のいずれか一項に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物の細胞であって、そのゲノム中に、卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に対する抵抗性を付与するロマネスコ B.オレラセア植物由来の遺伝子移入された配列を含み、ここで、前記遺伝子移入された配列が、BROCCO−C4(NCIMB受託番号42433)の植物のゲノム中の、SNP BO−0108436(配列番号5)及びSNP BN−0067793(配列番号15)によって区切られた染色体領域内に存在する配列から選択される、ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物の細胞。
【請求項11】
前記抵抗性を付与する遺伝子移入された配列が、SNP BO−0108436(配列番号5)及びSNP BO−0108751(配列番号11)によって区切られた染色体領域内に位置している、請求項10に記載の細胞。
【請求項12】
そのゲノム中に、卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に対する抵抗性を付与する遺伝子移入された配列を有する、ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物の植物部位、外植片、接ぎ穂、切り穂(cutting)、種子、根、根茎、花粉、胚珠、胚、長角果、プロトプラスト、葉、葯、茎、葉柄又は頭部(head)であって、
前記ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物、外植片、接ぎ穂、切り穂、種子、根、根茎、花粉、胚珠、胚、長角果、プロトプラスト、葉、葯、茎、葉柄又は頭部、及び/又は植物部位が、請求項1から9のいずれか一項に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物から得られ、かつ、請求項10又は11に記載の細胞を含む、ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物の植物部位、外植片、接ぎ穂、切り穂、種子、根、根茎、花粉、胚珠、胚、長角果、プロトプラスト、葉、葯、茎、葉柄又は頭部。
【請求項13】
植物全体を再生することができない、請求項10又は11に記載の細胞。
【請求項14】
成長すると、請求項1から9のいずれか一項に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物を生じる、ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物の種子。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載のブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物の再生可能な細胞の組織培養物であって、前記再生可能な細胞が、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根の先端、長角果、種子、花、子葉、及び/又は胚軸に由来し、かつ、それらのゲノム中に、卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に対する抵抗性を付与するロマネスコ B.オレラセア植物由来の、第4染色体上の遺伝子移入された配列を含み、
ここで、前記遺伝子移入された配列が、NCIMB受託番号NCIMB−42433で寄託されたB.オレラセアBROCCO−C4の種子のゲノムに存在する遺伝子移入された配列から選択され、ここで、前記種子のゲノムに存在する遺伝子移入された配列が、第4染色体上にあり、かつ抵抗性を付与する、ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物の再生可能な細胞の組織培養物。
【請求項16】
BROCCO−C4(NCIMB受託番号42433)の植物のゲノム中に見られるような遺伝子移入された配列を有する、B.オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物を検出し及び/又は選択するための方法であって、
前記遺伝子移入された配列が卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に対する抵抗性を付与し、以下:
B.オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物の遺伝物質試料中に、以下の対立遺伝子:SNP BO−0108436(配列番号5)の対立遺伝子G、SNP BO−0108746(配列番号6)の対立遺伝子C、SNP BO−0108747(配列番号7)の対立遺伝子G、SNP BO−0108748(配列番号8)の対立遺伝子A、SNP BO−0108749(配列番号9)の対立遺伝子C、SNP BO−0108750(配列番号10)の対立遺伝子A、SNP BO−0108751(配列番号11)の対立遺伝子G、SNP BO−0108752(配列番号12)の対立遺伝子C、SNP BO−0108753(配列番号13)の対立遺伝子C、SNP BN−0067786(配列番号14)の対立遺伝子T、及びSNP BN−0067793(配列番号15)の対立遺伝子G、の少なくとも1つを検出すること;及び任意により、
前記対立遺伝子の少なくとも1つを有するB.オレラセア・変種イタリカ ブロッコリー植物を選択すること、
を含む、方法。
【請求項17】
そのゲノム中に、抵抗性を付与するロマネスコ B.オレラセア植物由来の遺伝子移入された配列を有する、卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に抵抗性があるブラッシカ・オレラセア植物であって、
前記遺伝子移入された配列が、第4染色体上に、SNP BO−0108436(配列番号5)及びSNP BN−0067793(配列番号15)によって区切られた染色体領域内に位置し、
ここで、前記遺伝子移入された配列が、NCIMB受託番号NCIMB−42433で寄託されたB.オレラセアBROCCO−C4の種子のゲノムに存在する遺伝子移入された配列から選択され、ここで、前記種子のゲノムに存在する遺伝子移入された配列が、第4染色体上にあり、かつ抵抗性を付与し、かつ、
ここで、前記ブラッシカ・オレラセア植物が、カリフラワー(B.オレラセア・亜種ボトリティス・変種ボトリティス(B. oleracea convar. botrytis var. botrytis))、芽キャベツ(B.オレラセア・亜種オレラセア・変種ゲミフェラ(B. oleracea convar. oleracea var. gemnifera))、白キャベツ、オックスハートキャベツ(oxheart cabbage)(B.オレラセア・亜種カピタータ・変種アルバ(B. oleracea convar. capitata var. alba))及びサボイキャベツ(B.オレラセア・亜種カピタータ・変種サバウダ(B. oleracea convar. capitata var. sabauda))から選択される、
ブラッシカ・オレラセア植物。
【請求項18】
NCIMB受託番号NCIMB−42433で寄託されているB.オレラセアBROCCO−C4の植物又は種子、あるいは白発疹さび病に対する抵抗性を付与する配列を有するそれらの後代の使用であって、卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に抵抗性があるブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ、ブロッコリー植物を得るための、育種プログラムにおける繁殖パートナーとしての、使用。
【請求項19】
卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に抵抗性がある、ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ、ブロッコリー植物の作出のための方法であって、以下のステップ:
(a)寄託された種子NCIMB 42433から成長した植物、又は白発疹さび病に対する抵抗性を付与する配列を有するその後代と、感受性のあるB.オレラセア ブロッコリー植物とを交配し;
(b)白発疹さび病に対する抵抗性を付与する配列を有する、結果として得られた後代の中で1つの抵抗性植物を選択し;
(c)場合により、ステップb)で得られた抵抗性植物を1又は数回自家受粉し、そして、結果として得られた後代の中で白発疹さび病に抵抗性がある植物を選択し;
(d)場合により、ステップb)又はc)で選択された抵抗性植物と、感受性のあるB.オレラセア ブロッコリー植物とを戻し交配し、並びに
(e)白発疹さび病に抵抗性がある植物を選択すること、
を含み、
ここで、SNPマーカーが、ステップb)、c)及び/又はe)で、白さび病に抵抗性がある植物を選択するために使用される、方法。
【請求項20】
卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性がある、B.オレラセア ブロッコリー植物の作出のための方法であって、以下のステップ:
a1)寄託された種子NCIMB 42433から成長した植物、又は白発疹さび病に対する抵抗性を付与する配列を有するその後代と、感受性のあるB.オレラセア ブロッコリー植物とを交配し、結果としてF1集団を生成し;
a2)F1集団を進めてF2集団を作成し;
b)結果として得られた後代の中で1つの抵抗性植物を選択し;
c)場合により、ステップb)で得られた抵抗性植物を1又は数回自家受粉し、そして、結果として得られた後代の中で白さび病に抵抗性がある植物を選択し;
d)場合により、ステップb)又はc)で選択された抵抗性植物と、感受性のあるB.オレラセア ブロッコリー植物とを戻し交配し、並びに
e)白さび病に抵抗性がある植物を選択すること、
を含み、
ここで、SNPマーカーが、ステップb)、c)及び/又はe)で、白さび病に抵抗性がある植物を選択するために使用される、方法。
【請求項21】
卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性がある、B.オレラセア ブロッコリー植物の商業的入手方法であって、以下のステップ:
(a)寄託された種子BROCCO−C4 NCIMB受託番号42433を発芽させることによって得られた植物、又は白発疹さび病に対する抵抗性を付与する配列を有するその後代と、白さび病に感受性のあるB.オレラセア ブロッコリー植物とを戻し交配し;
(b)卵菌類アルブゴ・カンジダのレース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性がある植物を選択すること、
を含む、方法。
【請求項22】
前記ステップb)、c)及び/又はe)における選択が、以下の対立遺伝子:SNP BO−0108436(配列番号5)の対立遺伝子G、SNP BO−0108746(配列番号6)の対立遺伝子C、SNP BO−0108747(配列番号7)の対立遺伝子G、SNP BO−0108748(配列番号8)の対立遺伝子A、SNP BO−0108749(配列番号9)の対立遺伝子C、SNP BO−0108750(配列番号10)の対立遺伝子A、SNP BO−0108751(配列番号11)の対立遺伝子G、SNP BO−0108752(配列番号12)の対立遺伝子C、SNP BO−0108753(配列番号13)の対立遺伝子C、SNP BN−0067786(配列番号14)の対立遺伝子T、及びSNP BN−0067793(配列番号15)の対立遺伝子G、の少なくとも1つの検出によって行われる、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵菌類アルブゴ・カンジダ(Albugo candida)レース9、特にアルブゴ・カンジダ レース9のオーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病(white blister rust)に対する、ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)の植物における抵抗性に関する。本発明によれば、前記抵抗性は、ブラッシカ・オレラセア植物のゲノム中の、第4染色体上に遺伝子移入された、DNA配列によって提供される。前記遺伝子移入された配列は、ブラッシカ・オレラセア植物のゲノム中にホモ接合性に又はヘテロ接合性に存在し得る。特に好ましい抵抗性植物は、ブロッコリーである。本発明はさらに、白発疹さび病に抵抗性があるB.オレラセア植物を提供するための方法、白発疹さび病抵抗性のためのDNAマーカー、並びに、卵菌類アルブゴ・カンジダ レース9、特にオーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に抵抗性がある植物の同定における当該DNAマーカーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景:
卵菌類アルブゴ・カンジダ(Pers. ex. Lev.)クンツェ(Kuntze)は、十字花科(crucifer family)としても知られているアブラナ科の偏性生体栄養性病原菌であり、白さび病(白発疹(white blister)、白発疹さび病、スタグヘッド(staghead)、A.クルシフェラム(A.cruciferum)又はA.クルシフェラタム(A.cruciferatum)としても知られている)として知られている広範な病気を引き起こす。この病気は多くの野菜及び油糧種子作物、例えばブロッコリー、キャベツ、レイプ(rape)、カラシナ及びダイコンにとって有害である。
【0003】
白さび病は世界中で、インド、カナダ、ヨーロッパ及びオーストラリアなど地理的にも環境的にも多様な国々で観察されている。オーストラリアでは、白発疹さび病は、国の南部におけるアブラナ科の作物に広まっている。
【0004】
A.カンジダは高度に特殊化しており、生きた宿主細胞間で増殖し、並びに、局所感染又は全身感染の結果であり得る、ある範囲の症状を引き起こす。アルブゴ属は、ある範囲の宿主に対して白さび病を引き起こすいくつかの種を含み、A.カンジダの中で様々な宿主特異的形態が報告されている。したがってA.カンジダの特徴の1つはその高度な宿主特異性である。
【0005】
A.カンジダの増殖は、局所又は全身の2つのタイプの感染をもたらす。局所感染は、宿主の表皮の下で形成する白色又は乳黄色の遊走子嚢の小隆起(pustule)を特徴とする。これらは通常、葉の下方(背軸)表面に、そしてより低い程度で上方(向軸)表面に発症し、より一般的には成熟した葉で生じる。しかしながら、それらは任意の空中の(aerial)宿主器官に局在し得る。小隆起は、最初は小さく個別であるが、最終的に大きく融合する。小隆起が完全に発達すると、宿主の表皮は破裂して、乾燥した粉末状の遊走子嚢の破裂を放出する。その後、周囲の葉組織の壊死が起こり得る。
【0006】
局所感染は通常、大幅な収量低下を招くことはないが、それでも市場向きでない製品をもたらすことになる。全身感染は、種子又は花部のために栽培された作物の生産性に重大な影響を及ぼし得る。全身感染は、卵菌の有性生殖を誘発すると考えられ、そして、花序、茎及び葉の歪み、過形成、肥大を引き起こす。病気の結果として花の花弁、胚珠及び花粉が奇形であると、不稔性がもたらされる場合もある。
【0007】
A.カンジダは、10〜20℃の適度な温度で、かつ湿潤条件において、最もよく成長する。2.5時間の葉の湿潤期間が感染をもたらすのに十分であり、これは10〜14日のインキュベーション期間後に症状が現れる。
【0008】
アブラナ属(ブラッシカ)(Brassica)は、アブラナ科(以前は十字花科と呼ばれていた)の植物属である。アブラナ属は、レイプ、カリフラワー、ブロッコリー及びカブを含む、多くの重要な農作物及び園芸作物を含む。これら植物のほぼすべての部分が食用であり得る。レイプ及びレイプ種子はまた、食用及び燃料用の両方の油のために使用される。白色又は紫色の花、あるいは独特の色又は形状の葉を有するいくつかの種は、装飾目的で栽培されている。アブラナ科は、世界中に発生し、一年生植物、二年生植物及び多年生植物を含む。当該科はまた、多数の野生種を含む。
【0009】
一部の作物では、白さび病が重大な収量の損失を引き起こし得る。他のアブラナ属作物では、白さび病は植物の外観に影響を与え、従って当該作物は、表面的な損傷のために、もはや商業的に実現可能ではなくなる。それゆえ、白さび病に抵抗性があるアブラナ属作物が大いに必要とされている。
【0010】
白発疹さび病に対する抵抗性の遺伝的形質は、宿主種間及び宿主種内の両方で変化することが示されている。白さび病に対する抵抗性は、B.ラパ(B.rapa)、セイヨウアブラナ(B.napus)及びシロイヌナズナ(A.thaliana)において研究されており、そして、カラシナ(B.juncea)、アビシニアガラシ(B.carinata)、クロガラシ(B.nigra)におけるような、単一優性遺伝子によって、あるいは、前記抵抗性が多遺伝子性(polygenic)であると言われている複数遺伝子によってのいずれかで、制御されることが見出されている。白さび病に対する抵抗性はまた、宿主の特定の生化学的特性、例えば特定の糖、クロロフィルII又はフェノールのレベルの上昇と関連している。
【0011】
A.カンジダは現在、特定の宿主に感染するようにいくつかのレースに細分化されている。A.カンジダの生物学的レースの現在の分類は、A.カンジダの様々な分離株による感染に対するアブラナ科宿主の応答に基づいている。これまでに同定された異なるレースを表1に示す。A.カンジダについて、用語「レース(race)」とは、本明細書で使用される場合、宿主属のいくつかの種に感染することができ、かつ他の種には感染することができない病原体の種類を指す一方で、ほとんどの病理システムでは、いくつかの種類の宿主種に感染することができるが、他の宿主種には感染することができない病原体の種類を意味すると解釈されることに留意すべきである。
【0012】
【表1】
【0013】
ここ数年で、これらのA.カンジダのレースは、レース内で異なる変異体の存在を認識するために細分化された。レース7の2つの広範な変異体が、2種類のB.ラパ(B.rapa)に対するそれらの病原性に基づいて同定され、並びに、レース2の4つの変異体が、11品種のカラシナ(B.juncea)に対するそれらの病原性に基づいて特徴づけられた。
【0014】
A.カンジダ レース9は、オーストラリア南西部で、B.オレラセア・変種イタリカ(B. oleracea var.italica)(ブロッコリー)及びB.オレラセア・変種ボトリティス(B. oleracea var. botrytis)(カリフラワー)作物に拡大しており、この病原体はオーストラリアにおけるブロッコリー及びカリフラワー育種にとって一番の関心事となっている。この卵菌類病原体は、ブロッコリーの葉、茎又は花蕾(curd)上で増殖し、葉に白色の斑点症状を示し、そして蕾を白い直立したピンヘッド(pin heads)に変形させ、これは花蕾の品質及び貯蔵寿命に影響を与える。B.オレラセアに感染するオーストラリアのA.カンジダ株は、世界の他の地域で一般的に見られるヨーロッパ変異体と呼ばれるA.カンジダ レース9とは異なり;このヨーロッパ変異体は本質的にキャベツに病気を引き起こす。
【0015】
実際に、オーストラリアのレース9は、いくつかの実験において、キャベツに対するよりもブロッコリーに対して積極的であるが、ヨーロッパでは、レース9はキャベツ及び芽キャベツに対してより積極的であるように見える。それゆえ、レース9は、キャベツに対してより積極的なヨーロッパ変異体と、ブロッコリーに対してより積極的なオーストラリア変異体の、少なくとも2つの変異体を含むことが報告されている(Petkowski et al、Proc.Vth IS on Brassica & XVIth Crucifer Genetics WS:133-141;2010);例えば、国際公開第2010/135782号に報告されているように、Iron CMS及びBelstar商業品種はヨーロッパ変異体には抵抗性を示すが、オーストラリア変異体には感受性がある。
【0016】
多くのブロッコリー作物においてA.カンジダによって引き起こされる白さび病の発生は、非常に深刻なものであると報告されている。多くの場合、感染率は100%と高く、唯一の手段は作物全体を破壊することである。放置された畑では、全ての植物の全ての部分、葉からブロッコリー頭部までの完全な感染がしばしば観察される。成熟胞子嚢からの胞子負荷(spore load)は非常に大きいため、感染した植物の物理的破壊時に、胞子の雲が見られる。
【0017】
現時点では、アブラナ属における白さび病を制御するために使用できる薬剤はほとんど知られていない。現在の制御方法は一般的に、管理慣行(制御された給水、換気、バランスの取れた栄養プログラム)及び殺菌スプレープログラムの組み合わせを含む。しかしながら、化学作物保護剤の使用を低減することを目的とした政策を実施している国が増加している。化学制御剤の使用が完全に禁止された場合、これはアブラナ属の種の栽培における主要な問題をもたらすであろう。
【0018】
ブロッコリー(ブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ)におけるA.カンジダに対する遺伝的抵抗性は、白発疹さび病の制御に有用であろう。そのような抵抗性は、作物保護の安定性を増大させるだけでなく、環境に有害であり必ずしも効果的でない殺菌剤の必要性が減少し又は排除される結果となる。そのような抵抗性は、他のB.オレラセア植物、例えばカリフラワー、芽キャベツ(Brussel sprouts)、白キャベツ、サボイキャベツ等にとっても有益であり得る。
【0019】
国際公開第2008/133503号は、A.カンジダに対する一遺伝子性優性抵抗性遺伝子を含んでいるが、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性遺伝子を含まないとされる、B.オレラセア植物を示す。
【0020】
国際公開第2011/036108号は、第2染色体上に存在するA.カンジダに対する一遺伝子性半優性抵抗性遺伝子を含んでいるが、オーストラリア変異体に対する抵抗性を付与しないとされる、B.オレラセア植物を示す。
【0021】
国際公開第2010/135782号は、第1染色体上に位置するA.カンジダに対する一遺伝子性優性抵抗性遺伝子を含む、B.オレラセア植物を示す。この遺伝子は、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体のいくつかの株に対して抵抗性を付与することができたが、一般的に、菌株に関わらず、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体によって引き起こされる、白さび病に対する抵抗性を付与することはできないと考えられる。同様に、品種Tyson(Minchintonら、Australian Plant Pathol 2013;42:169-178)は、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体に抵抗性があると開示されているが、一般的に、実施例に示されているように、菌株に関わらず、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与することができないと考えられる(実施例6及び7参照)。
【0022】
それゆえ、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性、すなわちいくつかの株に限定されない一般的な抵抗性を有するブロッコリー植物についての未だ満たされていない必要性がある。
【発明の概要】
【0023】
概要
本発明者らは、A.カンジダ レース9病原体のオーストラリア変異体に対する抵抗性を同定し、B.オレラセア植物にこの抵抗性を遺伝子移入することができ、したがって抵抗性B.オレラセア植物、より具体的にはブロッコリーの抵抗性植物を得た。本発明の抵抗性は、新たに発見された抵抗性を付与する配列によって与えられ、前記抵抗性は、一遺伝子性かつ優性性質であり、異なるB.オレラセアの遺伝的背景に転移可能である。
【0024】
本発明は、ホモ接合性又はヘテロ接合性状態で存在する場合、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性の表現型を付与する、遺伝子移入された配列を提供する。本発明はまた、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性を示すB.オレラセア植物、特にブロッコリー植物、並びに、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性を示すB.オレラセア植物を作出又は同定する方法、並びに、抵抗性を付与する遺伝子移入された配列を含む種子、根及び他の植物部位、例えば花粉及び胚珠を提供する。本発明はまた、抵抗性を付与する遺伝子移入された配列に関連している、すなわち優性性質である抵抗性遺伝子座に関連している、分子遺伝学的マーカー、特にSNPを開示する。
【0025】
定義:
卵菌類A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性があるB.オレラセア植物の植物は、B.オレラセア・亜種ボトリティス・変種イタリカ(ブロッコリー)、B.オレラセア・亜種ボトリティス・変種ボトリティス(カリフラワー)、B.オレラセア・亜種ボトリティス・変種アスパラゴイデス(B. oleracea convar. botrytis var. asparagoides )(発芽(sprouting)ブロッコリー)、B.オレラセア・亜種オレラセア・変種ゲミフェラ(芽キャベツ)、B.オレラセア・亜種カピタータ・変種アルバ(白キャベツ、オックスハートキャベツ)、B.オレラセア・亜種カピタータ・変種ルブラ(B. oleracea convar. capitata var. rubra)(赤キャベツ)、B.オレラセア・亜種カピタータ・変種サバウダ(サボイキャベツ)、B.オレラセア・亜種アセフェラ・変種サベリカ(B. oleracea convar. acephela var. sabellica)(カーリーケールキャベツ(curly cale cabbage))、B.オレラセア・亜種アセフェラ・変種ゴンジロイデス(B. oleracea convar. acephela var. gongyloides)(カブカンラン(turnip cabbage))及びB.オレラセア・変種トロンチューダ・異名コスタータ(B. oleracea var. tronchuda syn. costata)(ポルトガルキャベツ)、からなる群から、最も好ましくはブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、白キャベツ及びサボイキャベツから選択されてもよく、さらに最も好ましくはブロッコリーである。
【0026】
A.カンジダ レース9オーストラリア変異体は、1963年にPound及びWilliamによって確立された、A.カンジダの生物学的レースの現在の分類に従ってレース9に対応するA.カンジダの株であり(Pound及びWilliam、1963、Phytopathology 53:1146-1149)、これはさらに、キャベツ及び芽キャベツに対してより積極的であるヨーロッパ変異体レース9とは反対に、キャベツに対するよりもブロッコリーに対して積極的であると特徴づけられる。オーストラリア変異体はまた、2001〜2002年の夏にビクトリアンブロッコリー(Victorian broccoli)及びカリフラワー作物における白発疹さび病の発生、そして全てのオーストラリアのブロッコリー及びカリフラワー作付け地域への、その後の病気の蔓延の原因である、変異体であるとして知られている(Petkowski et al、Proc.Vth IS on Brassica & XVIth Crucifer Genetics WS:133-141)。
【0027】
A.カンジダ レース9オーストラリア変異体の異なる株は、とりわけ圃場感染中に、共存し、これは感染した植物に対して異なる病原性を有し得る。
【0028】
用語「抵抗性(Resistance)」は、害虫又は病原体、及び野菜種子産業(Vegetable Seed Industry)の非生物的ストレスに対する植物の反応について記載する、ISF(国際種子連盟(International Seed Federation))の野菜及び鑑賞用作物セクションによって定義されている。
【0029】
具体的には、抵抗性とは、類似の環境条件及び害虫又は病原体圧の下で感受性のある植物品種と比較した場合、特定の害虫又は病原体の成長及び発達、及び/又はそれらが引き起こす損傷を制限する、植物品種の能力を意味する。抵抗性品種は、重篤な害虫又は病原体圧の下で、いくつかの病気の症状又は損傷を示し得る。
【0030】
感受性:植物品種が、特定の害虫又は病原体の成長及び発達を制限できないこと。
【0031】
白さび病、特にA.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に感受性のあるB.オレラセア(B.olearacea)植物は、例えば、Bejoからの市販の植物「Belstar」又は「Fiesta」、HM.Clauseからの品種「Rumba」、Sakataからの品種「Patriot」及び「Green Belt」、あるいはSyngentaからの品種「Monaco」である。全ての市販の品種のB.オレラセア(B.olearacea)ブロッコリーはこれまで、HM.Clause SAのBooster 品種及びSyngentaのTyson品種を除いて、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に感受性であるが、しかしながら、これらはA.カンジダ レース9オーストラリア変異体による全ての感染に抵抗性であるわけではない。
【0032】
したがって、本発明に係る植物は、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に対して少なくとも改善された抵抗性を有し、及び特にブロッコリー植物ブースター(Booster)に関し、より一般的には任意の市販品種のブロッコリーに関する。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「子孫(offspring)」又は「後代(progeny)」は、1又は複数の親植物又はその子孫(descendants)からの栄養生殖又は有性生殖由来の後代として生じる任意の植物を指す。 例えば、子孫植物は、親植物のクローニング又は自家受粉によって、あるいは2つの親植物の交配によって得られてもよく、そして、自家受粉(selfings)並びにF1若しくはF2又はさらに別の世代を含んでもよい。F1は、親から生じる第一世代の子孫であり、その少なくとも1つが形質のドナーとして最初に使用されるが、第二世代(F2)又はそれ以降の世代(F3、F4等)の子孫はF1、F2等の自家受粉から生じる標本(specimens)である。したがってF1は、2つの真の繁殖パートナー(true breeding parents)(真の繁殖(true-breeding)は、形質についてホモ接合性である)間での交配から得られるハイブリッドであり得る(通常はある)が、F2は、前記F1ハイブリッドの自家受粉から得られる子孫であり得る(通常はある)。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「交配(cross)」、「交配する(crossing)」、「異花受粉(cross pollination)」又は「交雑育種(cross-breeding)」は、1つの植物上の1つの花の花粉が、別の植物上の花の胚珠(柱頭)に(人為的に又は自然に)付けられるプロセスを指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」は、生物学的機能に関連するDNAの任意のセグメントを指す。したがって、遺伝子は、これらに限定されるものではないが、コード配列及び/又はそれらの発現に必要とされる調節配列(regulatory sequence)を含む。遺伝子はまた、例えば他のタンパク質のための認識配列を形成する、非発現DNAセグメントを含むことができる。遺伝子は、目的の供給源からのクローニング、あるいは既知の又は予測された配列情報からの合成を含む、様々な供給源から得ることができ、並びに、所望のパラメータを有するように設計された配列を含み得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子型」は、個々の細胞、細胞培養物、組織、生物(例えば、植物)、又は生物群の遺伝的構成を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロ接合体(heterozygote)」は、少なくとも1つの遺伝子座に存在する異なる対立遺伝子(所与の遺伝子又は配列の形態)を有する、二倍体又は倍数体の個々の細胞又は植物を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロ接合性(heterozygous)」は、特定の遺伝子座における異なる対立遺伝子(所与の遺伝子又は配列の形態)の存在を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「ホモログ(homolog)」又は「ホモログ(homologue)」は、別の種由来の核酸又はペプチド配列と同様に、共通の起源及び/又機能を有する核酸又はペプチド配列を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「ホモ接合体(homozygote)」は、全ての相同染色体上の1又は複数の遺伝子座に同じ対立遺伝子を有する、個々の細胞又は植物を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「ホモ接合性(homozygous)」は、相同染色体セグメントにおける1又は複数の遺伝子座にある同一の対立遺伝子の存在を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「ハイブリッド(hybrid)」は、1又は複数の遺伝子が異なっている親間での交配から生じる、任意の個々の細胞、組織又は植物を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子座(locus)」(複数形:「遺伝子座(loci)」)は、遺伝的に定義された任意の部位を指す。遺伝子座は、遺伝子、若しくは遺伝子の一部、又はDNA配列であってもよく、異なる配列で占められてもよい。遺伝子座はまた、1つのSNP(一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism))によって、又はいくつかのSNPによって定義されてもよい。
【0044】
遺伝子移入とは、1つの種、変異体若しくは株の遺伝子の又はゲノム配列の、これら種、変異体若しくは株の間の最初のハイブリッドからの別の種、変異体若しくは株の遺伝子プールへの、侵入を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明:
本発明は、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性を示すB.オレラセア植物、好ましくはB.オレラセア ブロッコリー植物、並びに、A.カンジダ レース9のオーストラリア変異体による感染に対する抵抗性を示すB.オレラセア、特にブロッコリー植物を作出又は同定する方法に関する。本発明はまた、抵抗性遺伝子座に関連している分子遺伝学的マーカー、特にSNPを開示する。本発明者らはまた、抵抗性を担う配列を異なる遺伝的背景に遺伝子移入することができ、さらに抵抗性表現型を与えることを示した(とりわけ、実施例1では異なるF2集団で、及び実施例4では2つの近交系で示されたように)。
【0046】
本発明に係る種子及び植物は、ロマネスコ植物、目的の表現型を示す遺伝子移入パートナー、及びブロッコリーの近交系、再発性(recurrent)感受性の親の間での最初の交配、次いで、戻し交配及び二倍体形成(dihaploidization)プログラムにより得られた。このブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ(ブロッコリー)BROCCO−C4種子の試料は、HM.Clause S.A.Rue Louis Saillant、Z.I.La Motte、26800 Porte les Valence、Franceによって、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約(「ブダペスト条約」)の要件に準じて、及びそれを充足して、国立産業食品及び海洋菌保存機関(National Collection of Industrial, Food and Marine Bacteria)(NCIMB)、(NCIMB Ltd、Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen AB21 9YA、United Kingdom)で、2015年7月9日に、受託番号NCIMB 42433として寄託されている。
【0047】
これらの寄託された種子から成長した植物は、A.カンジダ レース9の任意のオーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に抵抗性があるブロッコリー植物であり、かつ商業的に受け入れられる表現型である。
【0048】
このブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ− BROCCO−C4種子の寄託は、HM.Clause S.A.Rue Louis Saillant、Z.I.La Motte、26800 Porte les Valence、Franceによって維持されている。
【0049】
第1の態様によれば、本発明はしたがって、卵菌類アルブゴ・カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に抵抗性がある、B.オレラセア植物又は種子であって、そのゲノム中に、白発疹さび病に対する前記抵抗性を付与する遺伝子移入された配列又は区間(interval)を含む、B.オレラセア植物又は種子に関する。前記遺伝子移入された配列は、ホモ接合性、又はヘテロ接合性のいずれかで存在する場合、B.オレラセア植物又は種子に抵抗性を付与する。
【0050】
遺伝子移入された区間は、表現型に関与する抵抗性遺伝子の単一優性対立遺伝子として作用する(すなわち抵抗性形質は一遺伝子性かつ優性である)。遺伝子移入された区間についてホモ接合性及びヘテロ接合性の植物はいずれも、白さび病抵抗性表現型を完全に示す。この表現型は、請求された遺伝子移入された配列又は区間を有する後代を同定するために使用することができる。抵抗性遺伝子として作用する遺伝子移入された区間は、目的の表現型を付与し、かつ予想外にも植物、種子又は頭部の市場性とは不適合な負の特徴、例えば葉柄上の小葉(leaflets)の存在、又は「キャット−アイズ(cat-eyes)」、すなわち未成熟に急に黄色の花になるいくつかのビーズの存在、とは関連していない。
【0051】
A.カンジダ レース9オーストラリア変異体感染に対する抵抗性は、有利には、感受性のある(市販の)系統、例えばBelstar、Fiesta又はRumbaとの比較、あるいは一部の株にのみ抵抗性である系統、例えばBooster又はTysonとの比較によって、決定される。抵抗性は、実施例1に記載された病理学的試験によって、好ましくは接種の15日後に、決定され得る。この抵抗性の評点付けにおいて、「1」のスコアは表面の75%超に胞子形成を伴う葉に対応し、「3」のスコアは51〜75%に胞子形成を伴う表面に対応し、「5」のスコアは26〜40%の表面が胞子形成を伴い、「7」のスコアは13〜25%であり、「8」のスコアは1〜12%であり、そして「9」は葉に胞子形成が存在しないことに対応する。スコア9を有する植物、すなわち葉の表面上に胞子形成のない植物は、抵抗性、より具体的には高度に抵抗性であると考えられることになる。
【0052】
遺伝子移入された配列は好ましくは、B.オレラセアのゲノム中の第4染色体上に見られ、従って、それらが第4相同染色体の一方又は両方のいずれかに存在する場合、卵菌類A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に対する抵抗性を付与する。
【0053】
抵抗性を付与する遺伝子移入された配列は、より好ましくは、第4染色体の染色体領域内に位置し、当該領域は、一方の側がSNP BO−0108436(配列番号5)により、そして他方の側がSNP BN−0067793(配列番号15)により区切られており、好ましくはSNP BO−0108436(配列番号5)とSNP BO−0108751(配列番号11)との間である。
【0054】
本明細書で言及されるSNP(一塩基多型)に対応する特定の多型、並びにB.オレラセアゲノム中のこれらSNPのフランキング配列は、実験のセクション(とりわけ表11参照)及び添付の配列表に示されている。第4染色体上にある、ブラッシカ・オレラセアTO1000ゲノムのバージョンV2.1に対するそれらの位置は、表11に示されており、それらのフランキング配列も表11に示されている。
【0055】
抵抗性を付与する遺伝子移入された配列又は区間は、好ましくは、B.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4の植物のゲノムに存在する遺伝子移入された配列から選択され、その代表的種子はNCIMBに受託番号NCIMB 42433の下で寄託されている。それらは特に、前記B.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4の第4染色体上に存在する遺伝子移入された配列から選択される。実際に、寄託された種子は、1つの第4染色体ホモログ上に、目的の表現型を付与する遺伝子移入された配列を含み、ここで、前記遺伝子移入された配列はまた、B.オレラセアの遺伝的背景に表現型を付与している。このB.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4種子の試料は、国立産業食品及び海洋菌保存機関(NCIMB)、(NCIMB Ltd、Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen AB21 9YA、United Kingdom)で、2015年7月9日に、受託番号NCIMB 42433の下で寄託されている。寄託された種子はハイブリッド種子であり、それらは、抵抗性を付与する、1つの第4染色体ホモログ上のみにある遺伝子移入配列を有する。抵抗性配列は、とりわけ本願に開示されたマーカーによって、容易に同定することができる。
【0056】
抵抗性を付与する配列は、全ての寄託された種子のゲノム中に存在し;したがって、これら寄託された種子のゲノムそれ自体が、本発明に係るA.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与する、B.オレラセアゲノム中の遺伝子移入された配列のリザーバー(reservoir)を務める。本発明の植物又は種子は、そのゲノム中に、このリザーバーから選択される遺伝子移入された配列を含む。
【0057】
全ての寄託された種子は、遺伝子移入されたフラグメントを保有し、当該フラグメントは1つの第4染色体上の同じ遺伝子座にあり、かつ本発明に係る表現型を付与するが、この遺伝子移入されたフラグメントは種子間で長さがわずかに変化し得る。
【0058】
したがって、本発明はまた、B.オレラセア種子又は植物、好ましくは栽培されたB.オレラセア種子又は植物、最も好ましくはブロッコリー種子又は植物であって、そのゲノム中に、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与する遺伝子移入された配列を有し、ここで、前記抵抗性を付与する遺伝子移入された配列は、NCIMB 42433の寄託に対応するB.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4の種子のゲノムに存在する遺伝子移入された配列から選択される、B.オレラセア種子又は植物に関する。
【0059】
「所与の遺伝子座における遺伝子移入された配列又は区間」又は「所与の遺伝子座に存在する/見られる遺伝子移入された配列又は区間」とは、この所与の遺伝子座に見られるゲノム区間が、遺伝子移入前にB.オレラセア ブロッコリーの生殖質(germplasm)に見られる対応するゲノム区間と同じ配列を有しないが、この遺伝子座において、同じ遺伝子座にB.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4(NCIMB 42433)の対応するゲノム区間に見られる配列を有し;したがって遺伝子移入された配列は本発明の植物に対して外生であることと、理解されるべきである。「同じ配列」を有するとは、比較されるべき2つの配列が、後代へのゲノム区間の伝達の間に起こり得る潜在的な点突然変異を除いて同一であること、すなわち好ましくは1kbaseの長さで少なくとも99%同一であることを意味する。試験下でのゲノム区間は、本発明の意味において、同じ遺伝子座におけるB.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4に見られる対応するゲノム区間と同じ配列を有することが推測でき、それはまた、前記試験下でのゲノム区間が、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与することができる場合である。
【0060】
B.オレラセア植物、種子又は細胞のゲノム中の遺伝子移入された配列の存在は、例えば、GISH(遺伝的イン・サイチュ・ハイブリダイゼーション(genetic in situ hybridization))によって示され得る。GISHは実際に、1つの種又は株からのクロマチン物質の、別の種又は株に対する遺伝子移入の検出のための強力な技術である。GISHの利点は、遺伝子移入プロセスが「遺伝子移入されたゲノムの写真」によって可視化されることである。この技術を用いると、共優性である分子細胞遺伝学的マーカーの使用によって、ゲノムの特定の領域がホモ接合性又はヘテロ接合性であるかを確認することも可能である。本技術によって、目的の遺伝子移入された遺伝子がどの染色体に存在するかを決定することも可能である。
【0061】
好ましい実施形態によれば、本発明の抵抗性表現型、すなわち卵菌類アルブゴ・カンジダ・レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に対する抵抗性を付与する遺伝子移入された配列は、ロマネスコB.オレラセア植物から遺伝子移入される。
【0062】
好ましい実施形態によれば、抵抗性を付与する遺伝子移入された配列、また、寄託された種子のゲノム中に見られることになる抵抗性を付与する遺伝子移入された配列は、本発明に係るB.オレラセア植物、好ましくはブロッコリーの第4染色体上に遺伝子移入され、それらはより正確には第4染色体の染色体領域内にあり、当該領域は、一方の側がSNP BO−0108436(配列番号5)により、そして他方の側がSNP BN−0067793(配列番号15)により区切られており、より好ましくはSNP BO−0108436(配列番号5)とSNP BO−0108751(配列番号11)との間である。換言すれば、本発明のB.オレラセア植物又は種子のゲノムにおいて、一方の側がSNP BO−0108436(配列番号5)により、そして他方の側がSNP BN−0067793(配列番号15)により区切られた領域内の第4染色体上のセクションは、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性に関与する配列を、B.オレラセアの遺伝的背景に、より好ましくはSNP BO−0108436(配列番号5)とSNP BO−0108751(配列番号11)との間に、含む。前記遺伝子移入された配列は、好ましくは、ロマネスコB.オレラセア植物由来である。
【0063】
好ましい実施形態によれば、本発明の植物又は種子のゲノム中に存在する遺伝子移入された配列は、以下の遺伝子座の1又は複数に見られることになる:
−SNP BN−0067786(配列番号14)を含む遺伝子座、及び/又は
−SNP BO−0108746(配列番号6)を含む遺伝子座。
【0064】
SNP BO−0108746を含む遺伝子座が非常に好ましい。
【0065】
この点において、前記SNPのフランキング配列が定義される限りにおいて、染色体における特定の位置が実際に、一塩基多型に関して定義され得ることに留意されたい。本発明者らはSNPを使用しており、当該SNPは、それらのフランキング配列によって同定され、全てのB.オレラセアゲノム、特にB.オレラセア・変種イタリカ及びロマネスコB.オレラセアに存在し、遺伝子移入された配列と内在的に存在する配列とを区別するための、並びにB.オレラセア ブロッコリーゲノム中のロマネスコから遺伝子移入された配列を見つけ出すためのものである。
【0066】
本発明者らは、目的の表現型、すなわちA.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に必須の遺伝子移入された配列が、SNP BN−0067786(配列番号14)の近傍に、又は好ましくはSNP BO−0108746(配列番号6)の近傍に、あるいは両方のSNPの近傍に見られることになることを同定した。好ましくは、遺伝子移入された配列は、SNP BO−0108746の位置を含む遺伝子座に見られることになる。SNP BN−0067786及びSNP BO−0108746の遺伝子座は、上記で定義された染色体領域、すなわちB.オレラセア第4染色体上で一方の側がSNP BO−0108436により、そして他方の側がSNP BN−0067793により区切られた染色体領域内に位置していることに留意すべきである。
【0067】
抵抗性を付与する遺伝子移入された配列が、SNP BN−0067786を含む遺伝子座に見られる場合、SNP BN−0067786の対立遺伝子は、ロマネスコ遺伝子移入パートナーに、及び寄託された抵抗性B.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4にも見られ、かつ実験のセクションで遺伝的に関連している抵抗性として実証された、SNP BN−0067786の対立遺伝子であり、すなわちSNP BN−0067786の対立遺伝子Tである。SNP BN−0067786の5’フランキング領域、又はSNP BN−0067786の3’フランキング領域、あるいは両方の領域はまた、この領域において同一のB.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4配列である。それゆえ、SNP BN−0067786は、遺伝子移入された区間の3’境界又は5’境界の一部を形成してもよく、あるいは所望の表現型を付与する遺伝子移入された区間内にあってもよい。
【0068】
抵抗性を付与する遺伝子移入された配列が、SNP BO−0108746を含む遺伝子座に見られる場合、SNP BO−0108746の対立遺伝子は、ロマネスコ遺伝子移入パートナーに、及び寄託された抵抗性BROCCO−C4にも見られ、かつ実験のセクションで遺伝的に関連している抵抗性として実証された、SNP BO−0108746の対立遺伝子であり、すなわちSNP BO−0108746の対立遺伝子Cである。SNP BO−0108746の5’フランキング領域、又はSNP BO−0108746の3’フランキング領域、あるいは両方の領域はまた、この領域におけるB.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4配列と同一である。それゆえ、SNP BO−0108746は、遺伝子移入された区間の3’境界又は5’境界の一部を形成してもよく、あるいは所望の表現型を付与する遺伝子移入された区間内にあってもよい。
【0069】
遺伝子移入された目的の配列の存在は実際に、所与のSNPの特定の対立遺伝子の存在によって明らかにすることができ、ここで、前記対立遺伝子は遺伝子移入パートナーの特徴であり、したがって抵抗性に関連し、そして感受性に関連したこれらSNPについて再発性B.オレラセア ブロッコリー親の対立遺伝子とは異なる。したがって、所与のSNPの対立遺伝子は、本発明の遺伝子移入配列の存在を反映することができる。適切なSNPの例は、以下、SNP BO−0108436(配列番号5)、SNP BO−0108746(配列番号6)、SNP BO−0108747(配列番号7)、SNP BO−0108748(配列番号8)、SNP BO−0108749(配列番号9)、SNP BO−0108750(配列番号10)、SNP BO−0108751(配列番号11)、SNP BO−0108752(配列番号12)、SNP BO−0108753(配列番号13)、SNP BN−0067786(配列番号14)及びSNP BN−0067793(配列番号15)、からなるリストの全て又は一部である。
【0070】
抵抗性に関連したこれら対立遺伝子はとりわけ、SNP BO−0108436(配列番号5)の対立遺伝子G;SNP BO−0108746(配列番号6)の対立遺伝子C;SNP BO−0108747(配列番号7)の対立遺伝子G;SNP BO−0108748(配列番号8)の対立遺伝子A;SNP BO−0108749(配列番号9)の対立遺伝子C;SNP BO−0108750(配列番号10)の対立遺伝子A;SNP BO−0108751(配列番号11)の対立遺伝子G;SNP BO−0108752(配列番号12)の対立遺伝子C;SNP BO−0108753(配列番号13)の対立遺伝子C;SNP BN−0067786(配列番号14)の対立遺伝子T及びSNP BN−0067793(配列番号15)の対立遺伝子Gであり;これら対立遺伝子は、寄託された種子NCIMB 42433に見られるこれらSNPの対立遺伝子に対応する。表11は本発明の11個のSNPについて開示し、その対立遺伝子は抵抗性表現型に関連しており、すなわちその対立遺伝子は抵抗性表現型と共分離し、かつその対立遺伝子は感受性に関連している。
【0071】
本発明の植物又は種子は好ましくは、BO−0108746の対立遺伝子Cによって特徴づけられ、好ましくは以下、BO−0108436の対立遺伝子G、BO−0108747の対立遺伝子G、BO−0108748の対立遺伝子A、BO−0108749の対立遺伝子C、BO−0108750の対立遺伝子A、BO−0108751の対立遺伝子G、BO−0108752の対立遺伝子C、BO−0108753の対立遺伝子C、BN−0067786の対立遺伝子T、及びBN−0067793の対立遺伝子G、の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2、3、5つ又は全てとの組み合わせである。実施例4に開示されているように、BO−0108746の対立遺伝子Cは、表現型と非常に高度に関連しているようであり、したがって本発明によれば最も好ましい。
【0072】
別の実施形態によれば、本発明の植物又は種子のゲノム中に存在する遺伝子移入された配列は、先の実施形態に係るSNP BN−0067786及び/又は好ましくはSNP BO−0108746を含む遺伝子座に見られる遺伝子移入された配列に加えて、あるいはそれに代えて、以下の遺伝子座:
−SNP BO−0108436(配列番号5)を含む遺伝子座;
−SNP BO−0108747(配列番号7)を含む遺伝子座;
−SNP BO−0108748(配列番号8)を含む遺伝子座;
−SNP BO−0108749(配列番号9)を含む遺伝子座;
−SNP BO−0108750(配列番号10)を含む遺伝子座;
−SNP BO−0108751(配列番号11)を含む遺伝子座;
−SNP BO−0108752(配列番号12)を含む遺伝子座;
−SNP BO−0108753(配列番号13)を含む遺伝子座;及び/又は
−SNP BN−0067793(配列番号15)を含む遺伝子座、
の1又は複数に見られ、好ましくはこれら11個全ての遺伝子座に見られることになる。
【0073】
好ましい実施形態によれば、遺伝子移入された配列は、SNP BO−0108436、SNP BO−0108746、SNP BO−0108747、SNP BO−0108748、SNP BO−0108749、SNP BO−0108750及びSNP BO−0108751を含む遺伝子座に見られることになる。
【0074】
その結果、本発明の抵抗性植物又は種子はまた、SNP BN−0067786の対立遺伝子Tにより、又は好ましくはSNP BO−0108746の対立遺伝子C、あるいはその両方によって特徴づけられてもよい。それらは、BO−0108746の対立遺伝子Cに加えて、以下の対立遺伝子:SNP BO−0108436の対立遺伝子G;SNP BO−0108747の対立遺伝子G;SNP BO−0108748の対立遺伝子A;SNP BO−0108749の対立遺伝子C;SNP BO−0108750の対立遺伝子A;SNP BO−0108751の対立遺伝子G;SNP BO−0108752の対立遺伝子C;SNP BO−0108753の対立遺伝子C;SNP BN−0067786の対立遺伝子T及びSNP BN−0067793の対立遺伝子G、の少なくとも1つによって特徴づけられてもよい。
【0075】
遺伝子移入された配列の存在はまた、本発明によって定義されたSNP、特にSNP BO−0108746に近接した配列の遺伝子増幅、並びに、NCIMBに受託番号NCIMB 42433の下で寄託された種子に対して増幅を実行することによって得られるそれぞれの増幅フラグメントの配列との比較によって、明らかにすることができる。遺伝子増幅のためのプライマーは、本発明に開示されたフランキング配列の使用によって定義することができ、潜在的には、利用可能なB.オレラセアゲノムアセンブリと組み合わせて定義することができる。
【0076】
好ましくは、目的の表現型を付与する遺伝子移入された配列は、SNP BO−0108746の対立遺伝子と連鎖不平衡にある。好ましい実施形態によれば、SNP BO−0108746の対立遺伝子は「C」である。別の実施形態によれば、SNP BN−0067786の対立遺伝子「T」、及びSNP BO−0108746の対立遺伝子Cは、抵抗性を付与する遺伝子移入された配列と連鎖不平衡にある。連鎖不平衡は実際に、連鎖が存在しない場合の交配集団解析におけるゲノム配列の共通の遺伝的形質を説明するために使用される。連鎖は、組み換えの頻度に依存する集団構造におけるゲノム配列の共通の遺伝的形質を説明する。
【0077】
連鎖不平衡スコアは、SNP BO−0108746と遺伝子移入された配列との関連がランダムでないことを意味する、任意の陽性のスコアであり得る。
【0078】
したがってそのゲノム中に遺伝子移入された配列を含む本発明の植物又は種子において、前記遺伝子移入された配列は好ましくは、SNP BO−0108746に対応する遺伝子座から20cM未満、好ましくは15cM未満、最も好ましくは10cM未満、及びさらに好ましくは5cM未満の遺伝的距離でゲノム中に見られることになる。
【0079】
別の実施形態では、遺伝子移入された配列は、本発明の植物又は種子のゲノム中の、SNP BO−0108746及びSNP BN−0067786の両方の近傍に、好ましくは両方のSNPから20cM未満で、又は好ましくは両方から15cM未満に、見られることになり;例えば遺伝子移入された配列は、SNP BO−0108746に対応する遺伝子座から5cM未満に、及びSNP BN−0067786から15cM以下に、位置する。
【0080】
一実施形態によれば、本発明の種子又は植物、好ましくはブロッコリー種子又は植物は、第4染色体上のSNP BO−0108746の対立遺伝子Cの存在によって特徴づけられ、場合により前記SNPの対立遺伝子Aの非存在と組み合わせて、特徴づけられる。実際に、SNP BO−0108746の対立遺伝子Cの存在は、SNP BO−0108746の遺伝子座における遺伝子移入された配列の存在、従って抵抗性の存在を確認し;さらに、対立遺伝子Aの非存在は、遺伝子移入された配列がホモ接合性に存在すること、すなわち第4染色体の全てのホモログ上に存在することを示す。あるいは、本発明の種子又は植物、好ましくはブロッコリー種子又は植物は、第4染色体上のSNP BO−0108746の対立遺伝子CとA両方の存在によって特徴づけられ、遺伝子移入された配列のヘテロ接合性の存在を確認する。
【0081】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の種子又は植物、特にブロッコリー種子又は植物のゲノム中に存在し、かつ、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与する、遺伝子移入された配列又は区間は、少なくとも5キロベースの長さ、好ましくは少なくとも8、10又は15kbの長さである。
【0082】
好ましくは、遺伝子移入された配列又は区間はしかしながら、ロマネスコ遺伝子移入パートナーに関連する非商業的特徴の遺伝子移入を避けるために、あまり長くはない。したがって、本発明によれば、上述された遺伝子移入された配列は、25cM未満の長さ、好ましくは20cM未満又は15cM未満であることが好ましい。
【0083】
より好ましい実施形態によれば、遺伝子移入された配列は、連鎖引きずり(linkage drag)を避け又は制限するために、10cM未満、又はさらに5cM未満の長さ、及び最も好ましくは5cM未満である。
【0084】
好ましい実施形態によれば、前記遺伝子移入された配列は、所望の表現型に関連しない配列を可能な限り含まないように最小化される。
【0085】
本発明に係る抵抗性は、オーストラリア変異体の株に関わらず、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体感染によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性であり、これは、Petkowskiらに言及され、かつ国際公開第2010/135782号に記載された、植物Booster、あるいは、Minchintonらに言及された植物Tysonに反している。この点において、圃場では、白さび病感染は一般的に、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体の複数の異なる株に起因し、オーストラリア変異体の株に関わらない抵抗性の重要性を強めていることに留意すべきである。
【0086】
本発明のこの態様に係る種子又は植物は、好ましくは、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に対して高度に抵抗性であり、とりわけ、自然感染条件下で栽培された季節の終わりまで、症状がないままである。いずれの場合においても、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に対して抵抗性である本発明の種子又は植物は、葉の表面の25%未満に胞子形成を伴い、好ましくは実施例1に記載の病理試験に従って10%未満、さらに好ましくは葉の表面上に胞子形成を有さない。
【0087】
A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に対して抵抗性である、本発明の植物又は種子はまた、好ましくは、別の害虫、特に主として農業上重要な害虫に対して抵抗性又は耐性である。
【0088】
本発明の植物又は種子は好ましくはまた、他の白さび病抵抗性遺伝子、好ましくは国際公開第2010/135782号に開示されたような第1染色体上の一遺伝子性優性遺伝子を含み、より好ましくは、前記植物又は種子は、そのゲノム中に国際公開第2010/135782号に定義された配列番号1及び/又は配列番号2を含む。
【0089】
上記で詳述したように、本発明は、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体感染に対して抵抗性であるB.オレラセア植物、好ましくはブロッコリー植物、並びに、これら植物を生じる種子に関する。
【0090】
本発明に係るB.オレラセア植物は、商業的な植物又は系統又は品種であってもよく、好ましくはその頭部のために栽培され得る。そのような商業的な植物又は系統は、好適な条件下で栽培された場合に、市場性のある頭部を生じる。
【0091】
本発明に係る植物は、近交系又は二倍体植物又はハイブリッド、好ましくはブロッコリーであり得る。当該植物は、好ましくは栽培されたB.オレラセアである。
【0092】
本発明に係る植物はまた、細胞質雄性不稔性であり得、例えばオグラ型ミトコンドリア不稔性(Ogura mitochondrial sterility)を有し得る。
【0093】
特に好ましい本発明に係る植物又は種子はブロッコリー植物(B.オレラセア・変種イタリカ)である。あるいは、本発明はまた、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体のための宿主として知られている他のB.オレラセア植物、すなわちカリフラワー(B.オレラセア・亜種ボトリティス・変種ボトリティス)、芽キャベツ(B.オレラセア・亜種オレラセア・変種ゲミフェラ)、白キャベツ、オックスハートキャベツ(B.オレラセア・亜種カピタータ・変種アルバ)及びサボイキャベツ(B.オレラセア・亜種カピタータ・変種サバウダ)に関する。抵抗性を付与する遺伝子移入された配列は、抵抗性ブロッコリー、とりわけBROCCO−C4から、別のB.オレラセア植物へと、実施例に例示されたマーカーを用いる育種プログラムによって、転移され得る。本発明の植物又は種子は有利には、ロマネスコ植物又は種子ではない。
【0094】
この点において、本発明者らは、初めて、抵抗性に関与する配列を同定し、これら配列に関連するSNPマーカーを同定し、そして、ロマネスコ植物に最初に存在する前記配列が、別のB.オレラセア植物へと、抵抗性表現型を失うことなく、かつ他の有害な表現型を引き起こすことなく、転移され得ることを証明したことに留意すべきである。本発明者らは、そのような抵抗性遺伝子が存在し、1つの遺伝的背景から別の遺伝的背景へと、負の特徴を与えることなく抵抗性を付与するその能力(浸透)を保持しながら転移され得ることを実証し、並びに、この抵抗性に関連している遺伝的マーカーを同定すると、育種プログラムによって、前記配列を別のB.オレラセア植物へと、従ってカリフラワー、芽キャベツ、白キャベツ及びサボイキャベツへと、転移させることが可能である。
【0095】
本発明に係る植物又は種子は、B.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4、NCIMB 42433の寄託された種子から成長した植物の、後代又は子孫であり得る。寄託された種子から成長した植物は実際に、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に対して抵抗性であり、したがってそれらは、そのゲノム中に抵抗性を付与する遺伝子移入された配列を有する。前記寄託された種子から成長した植物は、交配及び自家受粉及び/又は戻し交配、並びに目的の植物の選択によって、これら配列を別の背景に転移させるために使用することができる。
【0096】
本発明はまた、寄託された種子のB.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4(NCIMB 42433)、及びこれら種子の1つから成長した植物に関する.これら種子は、目的の表現型を付与する遺伝子移入された配列を、ヘテロ接合性に含む。
【0097】
本発明に係る遺伝子移入された配列の存在は、本発明者らによって同定されたSNPのシークエンシングによって、及びより具体的にはSNP BO−0108746の対立遺伝子Cによって、明らかにすることができる。遺伝子移入された目的の配列に関する、植物、種子又は植物部位のゲノムのヘテロ接合性状態は、SNP BO−0108746の対立遺伝子C及びAの同時存在によって明らかになり得る。遺伝子移入された目的の配列に関する植物、種子又は植物部位のゲノムのホモ接合性状態は、SNP BO−0108746の対立遺伝子Cのみの存在によって明らかになり得る。
【0098】
本発明はまた、上述した本発明の種子又は植物から得られることになる可能性のある任意の植物、好ましくはブロッコリー種子又は植物、及びまた、そのような植物の植物部位、及び最も好ましくは外植片、接ぎ穂、切り穂(cutting)、種子、根、根茎、花粉、胚珠、胚、長角果、プロトプラスト、葉、葯、茎、葉柄、頭部及び任意の他の植物部位に関し、ここで、前記植物、外植片、接ぎ穂、切り穂、種子、根、根茎、花粉、胚珠、胚、長角果、プロトプラスト、葉、葯、茎、葉柄、頭部及び/又は植物部位は、本発明の第1の態様に係る種子又は植物から得られる、すなわちホモ接合性又はヘテロ接合性のいずれかでそのゲノム中に遺伝子移入された目的の配列を有する。これら植物部位、とりわけ外植片、接ぎ穂、切り穂、種子、根、根茎、花粉、胚珠、胚、長角果、プロトプラスト、葉、葯、茎、葉柄又は頭部は、そのゲノム中に、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与する遺伝子移入された配列を含む。本発明の本態様において言及される遺伝子移入された配列は、本発明の植物の文脈において上記で定義された配列である。本発明の第1の態様との関連で定義された遺伝子移入された配列の異なる特徴は、本発明の本態様に準用する。したがって遺伝子移入された配列は、好ましくは、寄託された材料B.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4(NCIMB受託番号42433)に対応する植物のゲノム中に存在する配列から選択され、かつ抵抗性を付与する。それらは有利には、SNP BN−0067786(配列番号14)の対立遺伝子T及び/又はSNP BO−0108746(配列番号6)についての対立遺伝子Cの存在、好ましくはSNP BO−0108746についての対立遺伝子Cにより特徴づけられる。
【0099】
本発明はまた、B.オレラセア細胞の細胞に関し、これら細胞はそのゲノム中に、目的の表現型を付与する遺伝子移入された配列を含む。好ましくは、これら細胞はB.オレラセア・変種イタリカの細胞である。遺伝子移入された配列は、本発明の枠組みで既に定義された配列であり、それらは、本発明の先行する実施形態に係る植物及び種子に関して既に開示された同じ特徴及び好ましい実施形態によって特徴づけられる。これら遺伝子移入された配列の存在は、上記に開示され、かつ当業者によく知られている技術によって明らかにされ得る。とりわけ、遺伝子移入された配列が、本発明のそのような細胞のゲノム中にホモ接合性に又はヘテロ接合性に存在するかどうかが決定され得る。それらは有利には、SNP BN−0067786(配列番号14)についての対立遺伝子T及び/又はSNP BO−0108746(配列番号6)についての対立遺伝子C、好ましくはSNP BO−0108746についての対立遺伝子Cの存在によって特徴づけられる。
【0100】
上記で定義された植物、外植片、接ぎ穂、切り穂、種子、根、根茎、花粉、胚珠、胚、長角果、プロトプラスト、葉、葯、茎、葉柄、頭部及び/又は植物部位は、好ましくは、少なくとも1つの本発明の細胞を含み、好ましくはその細胞の大部分が本発明に係る細胞であり、より好ましくは定義された植物部位の全ての細胞が本発明の細胞である。
【0101】
本発明に係る細胞は、任意のタイプのB.オレラセア細胞、好ましくはB.オレラセア・変種イタリカ、とりわけB.オレラセア植物全体を再生することができる細胞であって、遺伝子移入された配列を有する細胞であり得る。あるいは、本発明に係る細胞は、特にB.オレラセア植物全体を再生することができない細胞であり得る。
【0102】
本発明に係る細胞は単離された細胞であってもよい。
【0103】
本発明はまた、本発明に係る上記で定義された植物の再生可能な細胞の組織培養物に関し;好ましくは、当該再生可能な細胞は、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根の先端、長角果、種子、花、子葉、及び/又は胚軸に由来し、かつ、そのゲノム中に、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与する第4染色体上の遺伝子移入された配列を含む。
【0104】
組織培養物は好ましくは、前記ブロッコリー植物の生理学的及び形態学的特徴を有する植物を再生することができ、かつ、前記ブロッコリー植物と実質的に同じ遺伝子型を有する植物を再生することができることになる。本発明はまた、本発明の組織培養物から再生されるブロッコリー植物を提供する。
【0105】
本発明はまた、上記で定義された植物の、又は上記で定義された組織培養物由来のプロトプラストを提供し、前記プロトプラストは、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に対する抵抗性を付与する前記遺伝子移入された配列を含む。
【0106】
別の態様によれば、本発明はまた、本発明の第1の態様により詳述されたB.オレラセア植物の使用に関し、すなわち抵抗性がある、特にブロッコリー植物の、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性があるB.オレラセア植物を得るための、育種プログラムにおける繁殖パートナーとしての、使用に関する。実際に、第1の態様に係るそのような植物は、そのゲノム中に、目的の表現型、すなわち抵抗性を付与する遺伝子移入された配列を有する。この植物と、感受性のある又は抵抗性の低い植物とを交配することによって、結果として、所望の表現型を付与するこれら配列を後代へと転移させることが可能であり、それは当該表現型が一遺伝子性形質であるためである。好ましくは、繁殖パートナーとして使用されることになる植物は、抵抗性を付与する遺伝子移入された配列に関してホモ接合性の植物であって、この植物と別のB.オレラセアとの交配によって得られる全てのハイブリッド植物はまた、抵抗性表現型を付与する遺伝子移入された配列を有することになる。
あるいは、本発明の第1の態様に係るヘテロ接合性植物が使用されてもよく;この場合、選択ステップが有利には、表現型の分離の観点から、例えば本発明のSNPマーカーの存在に基づいて、加えられることになる。
【0107】
したがって本発明に係る植物は、所望の表現型を付与する配列をB.オレラセア植物又は生殖質に遺伝子移入するための、繁殖パートナーとして使用され得る。
【0108】
遺伝子移入された目的の配列は有利には、他の望ましい遺伝的形質、例えば他の病気に対する抵抗性を含む植物又は品種に導入されることになる。
【0109】
遺伝子移入された目的の配列は有利には、他の白さび病抵抗性遺伝子、例えば国際公開第2010/135782号に開示された第1染色体上の一遺伝子性優性遺伝子を含む、植物又は品種に導入されることになり;より好ましくは、それらはそのゲノム中に、国際公開第2010/135782号に定義された配列番号1及び/又は配列番号2を含む。
【0110】
本発明はまた、NCIMBに受託番号NCIMB 42433の下で寄託されたB.オレラセア・変種イタリカ−BROCCO−C4の植物又は種子、あるいは白発疹さび病に対する抵抗性を付与する本発明の遺伝子移入された配列を有するそれらの後代、特にSNP BO−0108746の対立遺伝子Cを有するそれらの後代による同じ使用に関する。前記植物はまた、目的の遺伝子移入配列についてヘテロ接合性であるが、所望の表現型をB.オレラセア植物又は生殖質に付与することを目的とする、育種プログラムにおける遺伝子移入パートナーとして適しており、すなわちA.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に抵抗性があるB.オレラセア植物を得るために適している。
【0111】
そのような育種プログラムにおいて、所望の表現型を示すか、又は所望の表現型に関連している配列を有する、後代の選択は、有利には、SNPマーカーの対立遺伝子に基づいて実行され得る。後代は好ましくは、第4染色体上のSNP BO−0108746の対立遺伝子Cの存在により選択される。あるいは、選択は、SNP BN−0067786の対立遺伝子T及びSNP BO−0108746の対立遺伝子Cの同時存在に基づいて行われ得る。
【0112】
あるいは、本発明の他のSNP、すなわちSNP BO−0108436、SNP BO−0108747、SNP BO−0108748、SNP BO−0108749、SNP BO−0108750、SNP BO−0108751、SNP BO−0108752、SNP BO−0108753及びSNP BN−0067793はまた、上記で詳述したように使用され得る。
【0113】
所望の表現型を有する後代の選択はまた、とりわけ実施例1(病理試験)に開示されたような、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体感染の条件で行われ得る。
【0114】
したがって、本発明に係る植物、又は受託番号NCIMB 42433の下で寄託された種子から成長した植物は、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性がある商業的なブロッコリー系統及び品種、並びに白発疹さび病に対する抵抗性を付与する本発明の遺伝子移入された配列を有するそれらの後代、特にSNP BO−0108746の対立遺伝子Cを有するそれらの後代を得るための、マーカー補助選択に特に有用である。
【0115】
本発明はまた、所望の表現型、すなわち卵菌類アルブゴ・カンジダ・レース9のオーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に対する抵抗性を付与する遺伝子の、同定、シークエンシング及び/又はクローニングを目的とするプログラムにおける前記植物の使用に関する。
【0116】
本発明の先行する態様のために記載された任意の特定の実施形態はまた、特に抵抗性を付与する遺伝子移入された配列の特徴に関して、本発明の本態様に適用可能である。
【0117】
さらに別の態様によれば、本発明はまた、所望の表現型を有するB.オレラセア植物、好ましくはブラッシカ・オレラセア・変種イタリカ、ブロッコリー植物、特に商業的な植物の作出のための方法又はプロセスに関する。
【0118】
実際に、本発明はまた、抵抗性を付与する遺伝子移入された配列を、ブロッコリー植物から、他のB.オレラセア品種及び種に、特に他のブロッコリー種に、又はカリフラワー(B.オレラセア・亜種ボトリティス・変種ボトリティス)、芽キャベツ(B.オレラセア・亜種オレラセア・変種ゲミフェラ)、白キャベツ、オックスハートキャベツ(B.オレラセア・亜種カピタータ・変種アルバ)及びサボイキャベツ(B.オレラセア・亜種カピタータ・変種サバウダ)に、転移させることに関し;本発明は、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体抵抗性ブロッコリーの新たなタイプ及び品種を作出するために有用である。
【0119】
これらの特徴、すなわちA.カンジダ レース9オーストラリア変異体に対する抵抗性を有する植物の作出のための方法又はプロセスは、以下のステップ:
a)本発明の第1の態様に係る植物と、所望の表現型が取り込まれ又は改善されるべき、感受性のある又は抵抗性の低いB.オレラセア植物、好ましくはブロッコリー植物とを交配し;
b)抵抗性を付与する配列を有する結果として得られた後代の中で植物を選択し;
c)場合により、ステップb)で得られた植物を1又は複数回自家受粉し、そして、結果として得られた後代の中で抵抗性植物を選択すること、
を含み得、
ここで、SNPマーカーが好ましくは、ステップb)及びc)において、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与する配列を有する植物を選択するために、使用される。
【0120】
SNPマーカーは、好ましくは、本発明の11個のSNPマーカーの1又は複数であり、好ましくはSNP BO−0108746である。好ましい実施形態によれば、選択は、少なくとも部分的には、SNP BN−0067786及びSNP BO−0108746の対立遺伝子を検出することによって行われる。あるいは、選択は、SNP BO−0108436、SNP BO−0108747、SNP BO−0108748、SNP BO−0108749、SNP BO−0108750、SNP BO−0108751、SNP BO−0108752、SNP BO−0108753及びSNP BN−0067793の内から選択された少なくとも2個のSNPの対立遺伝子の検出により行うことができ、好ましくは、少なくとも3個のSNP、例えば少なくとも4、5又は6個であって、そのうちの1つがSNP BO−0108746である。選択はまた、これら11個全てのSNPの対立遺伝子の検出により行うことができる。上記で開示した選択ステップにおいて選択される植物は、好ましくは、SNP BO−0108746の対立遺伝子Cの存在で選択される。
【0121】
好ましくは、ステップa)の感受性のある又は抵抗性の低いB.オレラセア植物は、エリート(elite)系統であり、商業的に所望される形質又は所望される園芸形質を導入するために使用される。それは好ましくはブロッコリー植物である。
【0122】
これらの特徴を有する植物の作出のための方法又はプロセスはまた、以下の付加的なステップ:
d)ステップc)で選択された抵抗性植物と、感受性のあるB.オレラセア植物とを戻し交配し;
e)A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に対する抵抗性を付与する配列を有する後代の中で植物を選択し;
f)ステップe)で得られた植物を自家受粉し、又は、ステップe)で得られた別個の植物を交配し、並びに
g)A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に抵抗性がある植物を選択すること、
を含んでもよい。
【0123】
先の方法のステップb)、c)又はg)で選択された植物は、商業的な植物であってもよい。ステップd)、e)及び/f)は、2回又は3回以上繰り返されてもよく、必ずしも同じ感受性のあるB.オレラセア植物でなくともよい。前記感受性のあるB.オレラセア植物は、好ましくは育種系統である。この植物は好ましくは、商業的に所望される形質又は所望される園芸形質を導入するために使用される、エリート系統である。それは好ましくはブロッコリー植物である。
【0124】
自家受粉/交配及び戻し交配ステップは、任意の順序で実行されてもよく、挿入され得る。
【0125】
さらに、本発明の方法は有利には、抵抗性に関連している遺伝子移入された配列を有する植物を選択するため、又は目的の表現型を有する植物を選択するための、選択ステップの1又は複数のために、SNPマーカーを用いて実行される。
【0126】
したがって、抵抗性B.オレラセア ブロッコリー植物の作出のための本発明の方法は、有利には、以下のステップ:
a)本発明の第1の態様に係る植物と、感受性のあるB.オレラセア ブロッコリー植物とを交配し;
b)白発疹さび病に対する抵抗性を付与する配列を有する、結果として得られた後代の中で1つの抵抗性植物を選択し;
c)場合により、ステップb)で得られた抵抗性植物を1又は数回自家受粉し、そして、結果として得られた後代の中で白発疹さび病に抵抗性がある植物を選択し;
d)場合により、ステップb)又はc)で選択された抵抗性植物と、感受性のあるB.オレラセア ブロッコリー植物とを戻し交配し、並びに、白発疹さび病に抵抗性がある植物を選択すること、
を含み、
ここで、SNPマーカーが、ステップb)、c)及び/又はd)で、本明細書に開示された白さび病に抵抗性がある植物を選択するために使用される。
【0127】
SNPマーカーは好ましくは、本発明の11個のSNPマーカーの1又は複数であり、好ましくはSNP BO−0108746である。好ましい実施形態によれば、選択は、少なくとも部分的には、第4染色体上のSNP BO−0108746の対立遺伝子に基づいて行われる。選択は、例えば、SNP BN−0067786及びSNP BO−0108746を有し/によって特徴づけられる、対立遺伝子を検出することによって行われる。
【0128】
上記で開示された選択ステップで選択された植物は、好ましくは、SNP BO−0108746の対立遺伝子Cの存在により選択される。抵抗性に関与する遺伝子移入された配列をホモ接合性に有する植物を同定するために、SNP BO−0108746の対立遺伝子Cの存在は、SNP BO−0108746の対立遺伝子Aの非存在と組み合わせて検出される。
【0129】
あるいは、本発明の他のSNPも、有利には使用することができ、すなわち、SNP BO−0108746に代えて、又は有利にはSNP BO−0108746に加えて、SNP BO−0108436、SNP BO−0108747、SNP BO−0108748、SNP BO−0108749、SNP BO−0108750、SNP BO−0108751、SNP BO−0108752、SNP BO−0108753、SNP BN−0067786及びSNP BN−0067793を使用することができる。
【0130】
所望の表現型を有する後代の選択はまた、とりわけ実施例1に開示されたような、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体感染の条件で行うことができる。
【0131】
対立遺伝子検出のために使用される方法は、特定の染色体遺伝子座上のSNPの2つの異なる対立遺伝子間の区別を可能にする、任意の技術に基づき得る。
好ましくは、方法のステップaで使用される本発明の第1の態様に係る植物は、寄託された種子BROCCO−C4 NCIMB受託番号42433を発芽させることによって得られた植物、又は白発疹さび病に対する抵抗性を付与する配列を有するそれらの後代、特にSNP BO−0108746の対立遺伝子Cを有するそれらの後代である。
【0132】
別の実施形態によれば、本発明はまた、卵菌類アルブゴ・カンジダ・レース9のオーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性があるB.オレラセア植物、好ましくはブロッコリーの作出のための方法であって、以下のステップ:
a1)本発明の第1の態様に係る植物、又は寄託された種子NCIMB 42433から成長した植物と、感受性のあるB.オレラセア植物、好ましくはブロッコリーとを交配し、結果としてF1集団を生成し;
a2)F1集団を進めてF2集団を作成し;
b)結果として得られた後代の中で1つの抵抗性植物を選択し;
c)場合により、ステップb)で得られた抵抗性植物を1又は数回自家受粉し、そして、結果として得られた後代の中で白さび病に抵抗性がある植物を選択し;
d)場合により、ステップb)又はc)で選択された抵抗性植物と、感受性のあるB.オレラセア植物、好ましくはブロッコリーとを戻し交配し、並びに白さび病に抵抗性がある植物を選択すること、
を含み、
ここで、SNPマーカーが、ステップb)、c)及び/又はd)で、本明細書に開示されたような白さび病に抵抗性がある植物を選択するために使用される、
方法を提供する。
【0133】
本発明はまた、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に抵抗性がある、商業的なブロッコリー植物を得るための方法であって、以下のステップ:
a)寄託された種子BROCCO−C4 NCIMB受託番号42433を発芽させることによって得られた植物、又は本発明の第1の態様に係る植物と、前記白発疹さび病に感受性のあるB.オレラセア ブロッコリー植物とを戻し交配し;
b)卵菌類アルブゴ・カンジダ・レース9のオーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に抵抗性がある植物を選択すること、
を含む、方法を提供する。
【0134】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、抵抗性植物の選択は、以下の対立遺伝子:BO−0108436の対立遺伝子G、BO−0108746の対立遺伝子C、BO−0108747の対立遺伝子G、BO−0108748の対立遺伝子A、BO−0108749の対立遺伝子C、BO−0108750の対立遺伝子A、BO−0108751の対立遺伝子G、BO−0108752の対立遺伝子C、BO−0108753の対立遺伝子C、BN−0067786の対立遺伝子T、及びBN−0067793の対立遺伝子G、の少なくとも1つの検出によって、好ましくはBO−0108746の対立遺伝子Cを検出することによって、行われる。
【0135】
好ましくは、これら方法のステップa1)又はa)で使用される本発明の第1の態様に係る植物は、寄託された種子BROCCO−C4 NCIMB受託番号42433を発芽させることによって得られた植物、又は白発疹さび病に対する抵抗性を付与する配列を有するそれらの後代、特にSNP BO−0108746の対立遺伝子Cを有するそれらの後代である。
【0136】
本発明はまた、上述された方法の1つによって得られた、又は得られる植物に関する。そのような植物は実際に、本発明の第1の態様に係る所望の表現型を有する、すなわちA.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性がある、B.オレラセア植物である。特に好ましい植物は、ブロッコリー植物(B.オレラセア・変種イタリカ)である。
【0137】
本発明はさらに、対立遺伝子検出に基づいて、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与する遺伝子移入された配列を有するB.オレラセア植物を、検出し及び/又は選択するための方法に関する。そのような方法は、本発明の11個のSNPの少なくとも1つの対立遺伝子(複数)の検出に基づいており、特に、本発明のSNPの少なくとも1つについての、抵抗性に関連している対立遺伝子の検出に基づいている。この点において、本発明の11個のSNPについて、抵抗性に関連した対立遺伝子の検出はそれ自体で、感受性に関連した対立遺伝子も検出されるか否かに関わらず、抵抗性表現型を示すが、一方で、抵抗性に関連した対立遺伝子の検出が無いことは感受性を示すことに留意されたい。「感受性のある」対立遺伝子の検出は、それ自体が有益であるわけではない。したがって、当該方法は有利には、以下の対立遺伝子:BO−0108436の対立遺伝子G、BO−0108746の対立遺伝子C、BO−0108747の対立遺伝子G、BO−0108748の対立遺伝子A、BO−0108749の対立遺伝子C、BO−0108750の対立遺伝子A、BO−0108751の対立遺伝子G、BO−0108752の対立遺伝子C、BO−0108753の対立遺伝子C、BN−0067786の対立遺伝子T、及びBN−0067793の対立遺伝子G、の少なくとも1つが試験下の植物に存在するか否かの検出を含み、これら対立遺伝子の少なくとも1つの検出は、試験下の植物が、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性であることを結論付けさせる。好ましくは、当該方法は、第4染色体上のSNP BN−0067786及びSNP BO−0108746の中から選択された少なくとも1つのSNP、好ましくはSNP BO−0108746の対立遺伝子の検出を含むが、BO−0108746の対立遺伝子C及び/又はSNP BN−0067786の対立遺伝子Tの検出は抵抗性を示す。当該方法は、白さび病に抵抗性があるB.オレラセア植物に対して行うことができ;したがって当該方法は、そのような植物が、そのゲノム中に本発明に係る遺伝子移入された配列を含み、従って本発明に従って得られたことを確認するために使用することができる。
【0138】
好ましくは、SNP BO−0108746の対立遺伝子Cが、選択されるべき植物の遺伝物質試料中に検出される場合に、遺伝子移入された配列を有する植物が選択される。目的の対立遺伝子は、選択された植物においてホモ接合性に又はヘテロ接合性に存在し得る。
【0139】
したがって、特に好ましい実施形態によれば、選択は、SNP BN−0067786の対立遺伝子T及びSNP BO−0108746の対立遺伝子Cの同時存在時に行われる。抵抗性の表現型をホモ接合性に示す植物の選択のために、選択は好ましくは、SNP BN−0067786の対立遺伝子T及びSNP BO−0108746の対立遺伝子C同時検出時に、これらSNPについての他の対立遺伝子の検出が無い組み合わせで行われ、特にSNP BN−0067786の対立遺伝子C又はSNP BO−0108746の対立遺伝子Aの検出が無い組み合わせで行われる。逆に、SNPの両方の対立遺伝子の検出は、抵抗性配列に関してヘテロ接合性植物を示す。
【0140】
そのような対立遺伝子の組み合わせは、寄託された種子から成長した植物において見られることになる。
【0141】
本発明の方法は、本発明の所与のSNPについて抵抗性に関連した対立遺伝子のみを示す植物を検出することによって、抵抗性配列をホモ接合性に有する植物の選択を可能にし、並びに、抵抗性及び感受性に関連した両方の対立遺伝子を示す植物を検出することによって、これら配列をヘテロ接合性に有する植物の選択も可能にする。
【0142】
当該方法はまた、これら2つのタイプの抵抗性植物間での区別を可能にし、配列をヘテロ接合性に有する抵抗性植物は、本発明のSNPの少なくとも1つについて、抵抗性及び感受性に関連した両方の対立遺伝子の同時存在によって特徴づけられる。
【0143】
検出又は選択はまた、以下:SNP BO−0108436、SNP BO−0108747、SNP BO−0108748、SNP BO−0108749、SNP BO−0108750、SNP BO−0108751、SNP BO−0108752、SNP BO−0108753、SNP BN−0067786及びSNP BN−0067793、の少なくとも1つの対立遺伝子、又は少なくとも2、3、若しくは4つ全てのSNPの対立遺伝子の同定、あるいは、以下:SNP BO−0108436、SNP BO−0108747、SNP BO−0108748、SNP BO−0108749、SNP BO−0108750、SNP BO−0108751の少なくとも1つの対立遺伝子の同定を、好ましくはSNP BO−0108746に加えて、含み得る。
【0144】
したがって本発明の方法は、例えばBROCCO−C4(NCIMB受託番号42433)の植物のゲノム中に見られるように、卵菌類A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白発疹さび病に対する抵抗性を付与する遺伝子移入された配列を有する、B.オレラセア、特にブロッコリー植物を検出し及び/又は選択するのに適しており、選択及び/又は検出されるべき植物の遺伝物質試料において、以下の対立遺伝子:BO−0108436の対立遺伝子G、BO−0108746の対立遺伝子C、BO−0108747の対立遺伝子G、BO−0108748の対立遺伝子A、BO−0108749の対立遺伝子C、BO−0108750の対立遺伝子A、BO−0108751の対立遺伝子G、BO−0108752の対立遺伝子C、BO−0108753の対立遺伝子C、BN−0067786の対立遺伝子T、及びBN−0067793の対立遺伝子G、の少なくとも1つの検出を含む。BO−0108746の対立遺伝子Cの検出が非常に好ましい。
【0145】
本発明のSNPマーカーはまた、表現型を付与する最小限の遺伝子移入が同定され及び/又は選択され得るように、抵抗性遺伝子座をマッピングするために使用することができる。
【0146】
本発明の方法において詳述されたように、抵抗性を付与する配列の遺伝子移入に加えて、本発明のこれら配列はまた、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に抵抗性がある商業的なB.オレラセア植物を得るために、遺伝子工学によって、B.オレラセアの背景に導入され得る。所望の表現型を付与する遺伝子移入された配列の、とりわけ寄託NCIMB 42433からの、同定及びクローニングは、当業者によって、本願及び寄託された材料に与えられた配列情報に基づいて、行われ得る。
【0147】
本発明はまた、表現型を付与する遺伝子移入された配列をクローニングすること、及び/又はそれら配列をB.オレラセア植物に組み込むことを目的とする遺伝子操作、並びに、結果として得られた植物、好ましくはブロッコリー植物に関する。
【0148】
さらなる態様によれば、本発明はまた、本発明の第1の態様に係る抵抗性植物を交配することによって得られるB.オレラセアのハイブリッド植物、あるいは、B.オレラセアの植物、例えばA.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に感受性のある植物を用いて、上記で開示された方法によって得られる抵抗性植物、あるいは、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性の異なるレベルを有する植物に関する。抵抗性植物は好ましくは、抵抗性を付与する配列についてホモ接合性である。抵抗性植物が抵抗性を付与する配列についてヘテロ接合性である場合、後代の半分のみが抵抗性であろう;したがって抵抗性を付与する配列を有する植物の選択ステップが加えられることが好ましい。
【0149】
特に好ましいハイブリッドB.オレラセア植物は、雄性不稔、あるいは農業目的の任意の他の形質又は表現型を示す植物である。
【0150】
本発明はまた、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体による感染から、B.オレラセア植物、特にブロッコリー植物の圃場を保護する方法を提供し、前記方法は、抵抗性表現型を示す本発明に係る種子を植えること、又は本発明に係る植物を育成すること、を含む。
【実施例】
【0151】
実施例:
実施例1:抵抗性植物の同定
フランスのブルターニュで行われた圃場試験において、ロマネスコ ブラッシカ・オレラセア植物は、高い天然のアルブゴ・カンジダ圧下で抵抗性を示した。
【0152】
ロマネスコ ブラッシカ・オレラセア植物は、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体の好ましい宿主であると知られていないが、次に本発明者らは、ブルターニュで見られた抵抗性表現型がアルブゴ・カンジダ オーストラリア変異体の圧に耐えうるかを確認するために、圃場試験においてまさにこの同じロマネスコB.オレラセア植物を試験することを決めた。結果は肯定的であり、ヨーロッパ変異体及びオーストラリア変異体両方に対する抵抗性決定論はおそらく、ユニークな遺伝子配列によって引き起こされたと考えられた。
【0153】
しかしながら、病理試験とともにする予備マッピング作業はそうではないことを示した。これは集団の分離に関するマッピング作業が、2つの異なる染色体上に2つの異なる局在を同定したためである。それゆえ、アルブゴ・カンジダ レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性を付与する遺伝子配列は、ヨーロッパ変異体に対する抵抗性を付与しなかった。最初に試験されたロマネスコ植物はおそらく両方の配列を有していた。
【0154】
ブロッコリー抵抗性植物の作成:
本発明者らは、元のロマネスコB.オレラセア植物とブロッコリー近交系とを交配して、第1世代ハイブリッドを得た。これをさらにブロッコリー近交系に2回戻し交配した。それらの得られた植物を、ヨーロッパA.カンジダ レース9株を用いて以下に記載された病理試験を通じてスクリーニングし、症状の無い植物を次のステップの戻し交配ステップのために維持した。次世代植物を、今度はオーストラリアA.カンジダ レース9変異体を用いて、再度病理試験で試験した。
【0155】
抵抗性植物のうちの1つを二倍体プログラムに使用して、オーストラリアA.カンジダ レース9変異体に対する抵抗性についてホモ接合性の抵抗性近交系を作出した。この植物をさらに感受性のあるブロッコリー植物に交配し、抵抗性をヘテロ接合性の方法で有する得られたハイブリッド後代植物BROCCO−C4は、オーストラリアA.カンジダ レース9変異体に対して抵抗性である。それらの種子を、NCIMBに2015年7月9日に、受託番号NCIMB 42433の下で寄託した。
【0156】
抵抗性の同定:
オーストラリア変異体に対する抵抗性の性質をより良く同定するため、並びにこの新しい抵抗性の遺伝的位置をマッピングするために、5つの異なるF2集団からなる試験を設定した;実際に、元のロマネスコ抵抗性植物を5つの異なる感受性のあるブロッコリー植物に交配し、そして得られたF1植物を自家受粉して、F2種子を作出した。
【0157】
病理試験:
オーストラリア変異体A.カンジダ株をオーストラリアのテンプルストー(Templestowe)に集め、冷凍庫で−80℃に保存する。2〜3か月ごとに、感受性のある品種上で定期的に増殖させる:小隆起を含む凍結子葉を脱塩水で洗浄して、胞子を懸濁し、次いで懸濁液を、育成チャンバー(夜間は16℃、昼間は15℃、各条件につき12時間)に置いた感受性のある植物上で蒸発させる(子葉期、播種後1週間)。
【0158】
新鮮な、新しい小隆起を有する子葉を、500mlの蒸留水とともにエルレンマイヤーフラスコに回収し、溶液を2.5lの蒸留水で2.105胞子/mlに調整し、それによって接種材料を作製する。
【0159】
植物材料は、1つの感受性対照及び1つの抵抗性対照とともに、試験されるべき遺伝子型につき192植物からなる(すなわちF2集団につき192植物):種子を播種し、1〜2葉期まで約3週間温室に入れる。次いで、葉をやさしくこすって葉のワックスを除去し、接種材料を葉に噴霧する。読み取りを噴霧後15日で実施し、植物を育成チャンバー(夜間は16℃、昼間は15℃、各条件につき12時間)内で栽培する。
【0160】
読み取りを1〜9のスケールで実施し、ここで、「1」は表面の75%超に胞子形成を伴う葉に対応し、「3」は51〜75%、「5」は26〜40%の胞子形成、「7」は13〜25%、「8」は1〜12%、であり、そして「9」は胞子形成が無い。結果を表2に示す。
【0161】
【表2】
【0162】
いくつかの種子は発芽しなかった、従って集団当たりの植物の正確な数は192よりもわずかに低かった。
【0163】
全ての結果は3:1の分離比を支持し、A.カンジダ オーストラリア変異体に対する抵抗性が優性抵抗性として作用することを実証している。集団n°3は5%でわずかな偏差を示すが、1%では示さない(カイ二乗検定によって評価された有意性)。
【0164】
カイ二乗検定を、R統計ソフトウェア(http://www.r-project.org/)を用いて行って、1つの優性抵抗性遺伝子の仮説を確認した。結果を表3に示す。
【0165】
【表3】
【0166】
実施例2:遺伝的解析:
各F2植物を個別にサンプリングし、そして磁気ビーズ(NucleoMag(登録商標) 96 Plant)を用いて、ビーズの製造業者(Macherey-Nagel)のプロトコルに従って、DNAを単離した。
【0167】
3:1の分離比に最もよく従った4つのF2集団、すなわち集団n°1、2、4及び5のそれぞれについて、22個のF2植物を、B.オレラセアゲノムに十分に広まった384個のSNPマーカーにより、Illumina Veracode Golden Gate技術を用いて、遺伝子型決定した。4つの集団のそれぞれについて、22個の植物のうち、それらの11個をスコア9の植物の中からランダムに選び、そしてそれらの11個をスコア1の植物から選んだ。所与の集団について、11個未満の植物がスコア1であった場合、全てのスコア1の植物が遺伝子型決定され、追加の植物をスコア3の植物の中から選び、合計11個の感受性のある植物が遺伝子型決定されるようにした。
【0168】
QTL検出を4つの集団にわたって(22×4=合計88個体)、Kruskal-Wallis検定(R統計ソフトウェアhttp://www.r-project.org/)を用いて行った。
結果は、抵抗性遺伝子座が第4染色体(C4)上の位置2 780 692と39 085 110との間に位置することを示し、そのようなゲノム上の物理的位置は、ヨーロッパヌクレオチドアーカイブ(European Nucleotide Archive)及びEnsemblPLants -http://plants.ensembl.org/Brassica_oleracea/Info/Indexにより公開された、ブラッシカ・オレラセアTO1000ゲノムのバージョンV2.1に基づいている。
【0169】
結果を表4に示す。(マーカー内の多型ヌクレオチドの)物理的位置は、ブラッシカ・オレラセアTO1000ゲノムのバージョンV2.1に関して、第4染色体上に与えられている。マーカーの配列を表11に詳細に示す。
【0170】
【表4】
【0171】
マーカーの検証:
遺伝子型決定をKASP(商標)技術を用いて行った。
【0172】
同定された最も密接に関連したマーカーを、4つの集団の全ての植物で試験した。同じゲノム領域内にあるが、発見に使用された384個のSNPのセットには最初はなかった、追加のマーカーも遺伝子型決定した。F2集団n°1はこの第1相では試験しなかった。QTL検出を各集団について個別にKruskal-Wallis検定(R統計ソフトウェアhttp://www.r-project.org/)を用いて行った。表5は、1又は複数の集団における各マーカーについての−log10(p−値)値を示す。NTは、表5において「試験されていない(not tested)」ことを意味する。結果は、F2集団のn°2について得られた結果を考慮して、C4:8 079 868に位置するマーカーBN−0067786が、より緊密に抵抗性に関連したマーカーであることを示した。
【0173】
【表5】
【0174】
第2の遺伝子型決定実験を、KASP(商標)技術を用いて行った。
【0175】
位置C4:6 069 705とC4:8 712 484との間に位置する24個のSNPを、F2集団n°1の2つの親系統間の多型についてスクリーニングした。それらのうち5つが多型性を示し、F2集団n°1全体に関してさらに遺伝子型決定された。したがってF2集団n°1はこの第2相で試験された。1つのマーカーは、予想された分離を示さず、したがって分析から除かれた。関連試験はKruskal-Wallis検定(R統計ソフトウェアhttp://www.r-project.org/)を用いて行った。結果を表6に示す。
【0176】
【表6】
【0177】
マーカー検証の第1相は、位置C4:8 081 104にあるBN−0067793上に位置する、抵抗性の右境界位置(すなわち、染色体に沿った座標に従った区間の下流境界)を精緻化することを可能にした。
【0178】
マーカー検証の第2相は、位置C4:6 069 705にあるマーカーBN−0000253上に位置する、抵抗性の左境界位置(すなわち、染色体に沿った座標に従った区間の上流境界)を精緻化することを可能にした。
【0179】
第1相は異なる集団に関して実施されたが、第2相は単一の集団、すなわちF2集団n°1に関して実施されたことに留意されたい。
【0180】
抵抗性を付与する最小の遺伝子移入フラグメントを決定するために、最初に所与の集団において最も高い−log p値が決定され、次いでこの値の減少を示す最も近いSNPに対する遺伝子移入フラグメントの境界を設定するために、好ましくは別の集団に関する結果によって確認されなければならない。
【0181】
したがって抵抗性を含む区間は、染色体C4上の位置6 069 705と8 081 104との間の2 011 399 bp領域にわたる。
【0182】
ファインマッピング:
遺伝子型決定をKASP(商標)技術を用いて行った。
【0183】
抵抗性遺伝子座をさらに詳細にマッピングするために、位置C4:7 366 478とC4:7 479 283との間に位置する11個のSNPを、5つのF2集団の親系統間の多型についてスクリーニングした。それらのうち1つのみ(位置C4:7 427 499に位置するマーカーBO−0108436)が多型性であり(集団n°3において)、集団n°3全体でさらに試験された。
【0184】
次に関連試験を、Kruskal-Wallis検定(R統計ソフトウェアhttp://www.r-project.org/)を用いて、集団n°3のマーカーBO−0108436について行った。結果を表7に示す。
【0185】
【表7】
【0186】
集団の研究及び信頼区間の重なりのために、抵抗性区間の境界は以下のように設けられた:左境界:C4:7 427 499、マーカーBO−0108436に対応する、並びに、右境界:C4:8 081 104、マーカーBN−0067793に対応する。したがって抵抗性を含む区間は、染色体C4上の位置7 427 499と8 081 104との間の653 605 bp領域にわたる。
【0187】
実施例3:染色体C4上のアルブゴ・カンジダに対する抵抗性に関連しているさらなるマーカーの同定
抵抗性を含む区間は、染色体C4上の位置7 427 499と8 081 104との間の653 605 bp領域にわたる。本明細書に前述した参照ゲノム配列を見ると、73個の遺伝子がこの領域内で同定された。これら遺伝子内の多型を、PCRによる増幅及び増幅領域のシークエンシング後に、より詳細に研究した。最も有望な増幅領域を、以下のプライマーを用いて生成した:
フォワードプライマー CGCTCAAACGGTTAACATGA(配列番号41)
リバースプライマー CCATCGCCACTTGACGTTAT(配列番号42)
【0188】
PCRミックスを以下のように調製した:
MilliQ水 4μL
10X緩衝液 1.5μL
dNTP 2,5mM 1.5μL
MgCl2 25 mM 1.5μL
フォワードプライマー10μM 0.7μL
リバースプライマー10μM 0.7μL
Taq Sigma Jump 0.1μL
DNAテンプレート 5μL
【0189】
PCR増幅を、以下のプログラムを用いてApplied Biosystems 2720 Thermal Cyclerで行った:
ステップ1:94℃で3分;ステップ2:94℃で30秒;ステップ3:60℃で30秒;ステップ4:72℃で2分;ステップ5:72℃で7分
ステップ2〜5を40回繰り返す
ステップ6は15℃で保持する。
【0190】
増幅を、5つの集団(抵抗性源を含む)の親系統、及び集団n°1の1つの組み換え植物に対して行った。この植物は病理試験においてスコア4であり、抵抗性領域上流に感受性のある親プロファイル、並びに抵抗性領域下流にヘテロ接合性プロファイルを有する。当該植物は表現型的に感受性があるので、抵抗性遺伝子位置に感受性のある対立遺伝子を有することが予想される。
【0191】
アンプリコンのシークエンシングを、GATC Biotech using Sangerシークエンシング技術によって両方の鎖に対して行った。配列解析を、両方の鎖の配列をマージする前に、BioEditソフトウェアを用いて行った。4つの感受性のある親及び感受性のある組み換え植物の間で多型は同定されなかった。コンセンサス感受性配列と抵抗性源配列との間のいくつかのヌクレオチド多型が、増幅フラグメントにおいて同定された;それらのうち、8個のSNPが、抵抗性親配列を感受性のある親コンセンサス配列及び参照配列から区別する際に、特に堅牢であるとして選択された。これらマーカーの対立遺伝子を表8に報告する。
【0192】
【表8】
【0193】
マッピング集団におけるマーカーの検証
遺伝子型決定を、KASP(商標)技術を用いて行った。マーカーのいくつかを、F2分離集団n°1及び3において遺伝子型決定した。
【0194】
関連試験を、各集団について個別にKruskal-Wallis検定(R統計ソフトウェアhttp://www.r-project.org/)を用いて行った。結果を表9に示す。
【0195】
【表9】
【0196】
したがって抵抗性を含む区間は、染色体C4上の位置6 069 705と7 463 248との間の領域において、非常に高い確率である。
【0197】
実施例4:育種生殖質(breeding germplasm)における分子マーカーの評価
遺伝子型決定を、KASP(商標)技術を用いて行った。488個の異なる遺伝子型をサンプリングし、磁気ビーズ(NucleoMag(登録商標)96 Plant)を用いて、ビーズの製造業者(Macherey-Nagel)のプロトコルに従って、DNAを単離した。488個の遺伝子型は以下によって構成されている:
− 最初のロマネスコ抵抗性源、
− 寄託されたハイブリッドBROCCO−C4、
− 本発明のフラグメントの遺伝子移入によって抵抗性にされた2個の抵抗性系統、
− 51個のブロッコリーの商業的なハイブリッド
− 433系統のブロッコリー。
【0198】
関連試験を、Kruskal-Wallis検定(R統計ソフトウェアhttp://www.r-project.org/)を用いてマーカーBO−0108746(配列番号6)について行った。−log10(p−値)の243.5(K統計値=487)が見られた。ピアソン相関検定も行った(R統計ソフトウェアhttp://www.r-project.org/)。相関係数1.0が95%信頼区間で観察された(t統計値=853277176、p−値=0.0)。
【0199】
これらの検定は、遺伝子型と表現型との間に100%の相関を示した。すなわち、全ての抵抗性植物(最初のロマネスコ、BROCCO−C4、及び2個の抵抗性系統)は、BO−0108746の対立遺伝子Cの存在を示す一方で、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に対して感受性のある全ての他の植物は、この対立遺伝子の存在を示さないが、BO−0108746の対立遺伝子Tのみを示す。
【0200】
マーカーBO−0108746を、A.カンジダ レース9オーストラリア変異体に抵抗性であるブロッコリー植物を同定及び選択するための最も予測的なSNPとして確認した。
【0201】
実施例5:BROCCO−C4の遺伝子型決定
実施例1に詳述したように、ロマネスコB.オレラセア植物と近交系ブロッコリー系統との間の最初の交配から得られた抵抗性植物を二倍体プログラムに用いて、オーストラリアA.カンジダ レース9変異体に対する抵抗性についてホモ接合性の抵抗性近交系を作出した。この植物をさらに感受性のあるブロッコリー植物に交配して、ヘテロ接合性の方法で抵抗性を有する得られたハイブリッド後代植物BROCCO−C4は、オーストラリアA.カンジダ レース9変異体に対して抵抗性である。抵抗性に関連している遺伝子移入された配列を有するハイブリッド植物を生じるBROCO−C4植物の種子を、NCIMBに、2015年7月9日に、受託番号NCIMB 42433の下で提出した。
【0202】
BROCCO−C4の植物を、実施例2〜4で同定されたマーカーについて遺伝子型決定した。表10に詳述したように、BROCCO−C4植物/種子が、抵抗性に関連しているとして上記に示されたSNPの全ての対立遺伝子を示すことを確認した。
【0203】
【表10】
【0204】
したがって、これら結果は、BROCCO−C4植物が、A.カンジダ レース9、オーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性を付与する遺伝子移入フラグメントを有する植物であることを確認する。
【0205】
表11:全て第4染色体上にある実施例で使用された全てのSNPのマーカー配列。感受性(S)表現型に関連する対立遺伝子が括弧内に最初に示され、抵抗性(R)表現型に関連する対立遺伝子が続く。SNP BO−0108436及びBN−0067793により、好ましくはSNP BO−0108436及びSNP BO−0108751によって区切られる、本発明の遺伝子移入フラグメントの外側では、感受性/抵抗性の表現型との関連は非常に低いか、又は存在しないことに留意しなければならない。
【0206】
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【0207】
実施例6:異なる植物の抵抗性レベルの比較
6つの異なる遺伝子型に対応する異なる植物を成長させ、実施例1に記載したように接種した。試験された植物は以下のとおりである:
− A:Tyson、Minchintonらによって言及された品種;
− B:TysonのF2;
− C:本発明で使用されたロマネスコ遺伝子移入パートナー;
− D:第1染色体上に抵抗性遺伝子を有する国際公開第2010/135782号に係るブロッコリー系統、
− E:BROCCO−C4に由来するブロッコリーハイブリッドCMS;
− F:BROCCO−C4に由来するブロッコリー系統。
【0208】
抵抗性アッセイを、各遺伝子型A〜Fにつき及び各繰り返しにおいて6つの植物で、4回繰り返した。結果を以下の表12に報告する。
【0209】
これらの結果から推測できるように、第4染色体上のBROCCO C4の遺伝子移入フラグメントを有する植物(遺伝子型C、E及びF)のみが、アルブゴ・カンジダ・レース9のオーストラリア変異体に対する抵抗性、すなわち高抵抗性を示している。
【0210】
Minchintonらによって言及された植物Tysonが本発明の遺伝子移入フラグメントを有さないことを確認するために、本発明者らはさらに、Tysonに存在するSNP BO−0108746の対立遺伝子を決定した。植物Tysonは、BO−0108746の対立遺伝子Aについてホモ接合性であるが、対照的に本発明の植物はこのSNPの対立遺伝子Cを有する。
【0211】
実施例7:圃場試験
寄託された種子に由来する異なるハイブリッドを得て、他の商業的なハイブリッドと共に圃場試験で試験した。圃場試験はオーストラリアで2年連続の秋に行った。表13(N年の秋)及び表14(N+1年の秋)は、各植物について、成長した植物の合計数、白さび病により感染した植物の数、及び感染した植物のパーセンテージを報告している。注目すべきは、特に厳しい抵抗性の試験をこれら圃場試験に採用し、植物は実際に、実施例1の病理試験において厳密に9未満のスコアを有する場合に、「白さび病により感染した」とみなされ、そして、胞子を全く有さない、すなわち高度に抵抗性である植物のみが、非感染とみなされた。
【0212】
これらの表から推測できるように、本発明に係る9個のハイブリッドが、試験された植物の100%が非感染である、唯一の抵抗性植物である。試験は、本発明に係る1つの所与のハイブリッドについてオーストラリアの異なる地域で再現された:白さび病はこのハイブリッドについて観察されず、卵菌類アルブゴ・カンジダ・レース9のオーストラリア変異体によって引き起こされる白さび病に対する抵抗性が、実際に株依存性でない一般的な抵抗性であることを確認した。
【0213】
【表12】
【表13】
【表14】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]