(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の技術では、キャップ部の後端側から先端側に亘ってキャップ部の肉厚がほぼ一定なので、キャップ部の先端側の部位が冷え易く、火炎を含むガス流の熱エネルギーがキャップ部に奪われ易くなる。そのため、貫通孔から燃焼室に噴射される噴流のエネルギーが低下して、燃焼室内の燃焼速度が低下したり失火したりするなど、燃焼が不安定になるという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、安定に燃焼できる点火プラグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の点火プラグは、先端側から後端側へ向かって軸線に沿って延びる筒状の主体金具と、主体金具の内側に絶縁保持された中心電極と、主体金具に電気的に接続され、中心電極と自身の端部との間に火花ギャップを形成する接地電極と、主体金具の先端部に接続され、中心電極および接地電極の端部を先端側から覆うと共に、接地電極よりも先端側に複数の貫通孔が形成されたキャップ部と、を備え、軸線を含む断面において、キャップ部は、接地電極の端部の先端を通り軸線に垂直な第1仮想直線と、複数の貫通孔の最も先端側の内側開口端の後端を通り軸線に垂直な第2仮想直線と、の間の領域の少なくとも一部に、キャップ部の外面から内面までの最短距離が、後端側から先端側へ向かうにつれて大きくなる拡大部が存在し、拡大部に囲まれた領域の、軸線に垂直な断面積は、後端側から先端側へ向かうにつれて小さくなる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の点火プラグによれば、接地電極の端部の先端とキャップ部の複数の貫通孔の最も先端側の内側開口端の後端との間に、キャップ部の外面から内面までの最短距離が、後端側から先端側へ向かうにつれて大きくなる拡大部が存在する。
キャップ部は主体金具の先端部に溶融部を介して接続され、拡大部は溶融部の先端から内側開口端の後端まで延びている。拡大部では、先端側から後端側へ向かうにつれて後端側へ熱伝導し難くなり、後端側から先端側へ向かうにつれて熱容量が大きくなる。よって、拡大部の先端側の温度が低下し過ぎないようにできる。その結果、燃焼室に噴射される噴流の熱エネルギーを確保できる。
【0008】
さらに拡大部に囲まれた領域の、軸線に垂直な断面積は、後端側から先端側へ向かうにつれて小さくなるので、拡大部の先端側におけるガス流の速度を速くできる。これにより燃焼室に噴射される噴流の運動エネルギーを確保できる。噴流の熱エネルギー及び運動エネルギーを確保できるので、燃焼室内の可燃混合気を安定に燃焼できる。
【0009】
請求項2記載の点火プラグによれば、軸線を含む断面において、拡大部の内面を示す線が略同じ曲率半径からなる。これにより、拡大部の内面に突起部分が形成され難くなる。その結果、拡大部の内面の突起部分での過熱を抑制できるので、請求項1の効果に加え、燃焼室から貫通孔を通ってキャップ部の内側に流入した可燃混合気の、拡大部の内面の突起部分を着火源とする過早着火(プレイグニッション)を抑制できる。
【0010】
請求項3記載の点火プラグによれば、軸線を含む断面において、キャップ部の外面から内面までの最短距離が、キャップ部の内面の先端で最も小さくなる。これにより拡大部の先端の部位の熱容量より、キャップ部の内面の先端を含む部位の熱容量を小さくできるので、キャップ部の内面の先端を含む部位の温度を低下させ易くできる。よって、請求項1又は2の効果に加え、燃焼室から貫通孔を通ってキャップ部の内側に流入した可燃混合気の、キャップ部の内面の先端を着火源とするプレイグニッションを抑制できる。
【0011】
請求項4記載の点火プラグによれば、軸線を含む断面において、キャップ部の外面から内面までの最短距離が、キャップ部の外面の先端で最も小さくなる。これによりキャップ部の内面の先端を含む部位のうち外面の先端を含む部位の熱容量を小さくできるので、キャップ部の外面の先端を含む部位の温度を低下させ易くできる。よって、請求項3の効果に加え、燃焼室内の可燃混合気の、キャップ部の外面の先端を着火源とするプレイグニッションを抑制できる。
【0012】
請求項5記載の点火プラグによれば、キャップ部の外面の先端は平面をなすので、キャップ部の外面の先端の過熱を抑制できる。よって、請求項1から4のいずれかの効果に加え、燃焼室内の可燃混合気の、キャップ部の外面の先端を着火源とするプレイグニッションを抑制できる。
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施の形態における点火プラグ10の部分断面図である。
図1では、紙面下側を点火プラグ10の先端側、紙面上側を点火プラグ10の後端側という(
図2から
図5においても同じ)。
図1には、点火プラグ10の先端側の部位の軸線Oを含む断面が図示されている。
図1に示すように点火プラグ10は、絶縁体11、中心電極13、主体金具20、接地電極30及びキャップ部40を備えている。
【0016】
絶縁体11は、軸線Oに沿う軸孔12が形成された略円筒状の部材であり、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミックスにより形成されている。絶縁体11の軸孔12の先端側には中心電極13が配置されている。中心電極13は、軸孔12内で端子金具14と電気的に接続されている。端子金具14は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具14は絶縁体11の後端に固定されている。
【0017】
主体金具20は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具20は、外周面におねじ21が形成される先端部22と、先端部22の後端側に隣接する座部23と、座部23の後端側に形成される工具係合部24と、を備えている。おねじ21はエンジン1のねじ穴2に螺合する。座部23は、エンジン1のねじ穴2とおねじ21との隙間を塞ぐための部位であり、おねじ21の外径よりも外径が大きく形成されている。工具係合部24は、エンジン1のねじ穴2におねじ21を締め付けるときに、レンチ等の工具が係合する。
【0018】
接地電極30は、Ni等を主成分とする金属材料によって形成された棒状の部材である。本実施形態では接地電極30はおねじ21の位置に配置されており、先端部22を貫通して先端部22の内側に突き出ている。接地電極30は端部31が中心電極13に対向している。主体金具20の先端部22にはキャップ部40が接続されている。
【0019】
キャップ部40は、中心電極13及び接地電極30の端部31を先端側から覆う部位である。キャップ部40は、Ni等を主成分とする金属材料によって形成されている。キャップ部40には、接地電極30よりも先端側に複数の貫通孔41が形成されている。おねじ21によってエンジン1のねじ穴2に点火プラグ10が取り付けられた状態で、キャップ部40はエンジン1の燃焼室3に露出する。貫通孔41はキャップ部40が形成する副室42と燃焼室3とを連通する。
【0020】
図2は
図1のIIで示す部分を拡大した点火プラグ10の軸線Oを含む断面図である。主体金具20の先端部22には、おねじ21の部位に、径方向の内側に向けて凹む凹部25が形成されている。先端部22には、凹部25の径方向の内側に凹部25よりも細い穴26が形成されている。穴26は先端部22を径方向に貫通する。穴26に挿入された接地電極30は、溶融部27により先端部22に接合されている。接地電極30の端部31は中心電極13との間に火花ギャップ33を形成する。接地電極30は主体金具20のおねじ21の部位に接合されているので、接地電極30の熱は、おねじ21からエンジン1に伝わる。
【0021】
キャップ部40は外面43が球冠状に形成され、内面44が円錐状に形成されている。キャップ部40には、貫通孔41によって外面43に外側開口端45が形成され、内面44に内側開口端46が形成されている。貫通孔41は、内側開口端46から外側開口端45へ近づくにつれて先端側へ向かって傾斜している。本実施形態では、複数の貫通孔41の内側開口端46の後端47は、全てが、軸線Oに垂直な平面上に位置する。キャップ部40は溶融部48を介して主体金具20の先端部22に接合されている。
【0022】
軸線Oを含む断面において、キャップ部40は、接地電極30の端部31の先端32を通り軸線Oに垂直な第1仮想直線49と、最も先端側の内側開口端46の後端47を通り軸線Oに垂直な第2仮想直線50と、の間の領域51に、第1拡大部53及び第2拡大部55が存在する。第2拡大部55は第1拡大部53より先端側に位置する。第1拡大部53及び第2拡大部55は、キャップ部40の外面43から内面44までの最短距離が、後端側から先端側へ向かうにつれて大きくなる部位である。キャップ部40の外面43から内面44までの最短距離とは、領域51内の外面43上の点と内面44上の点とを結ぶ線分のうち最も短い線分の長さである。
【0023】
キャップ部40の領域51には、第1拡大部53及び第2拡大部55以外に、第1ストレート部52、第2ストレート部54及び第3ストレート部56が存在する。後端側から先端側に、第1ストレート部52、第1拡大部53、第2ストレート部54、第2拡大部55及び第3ストレート部56の順に並んでいる。溶融部48の先端は、第1ストレート部52に接している。
【0024】
第1ストレート部52の先端側に第1拡大部53が隣接し、第1拡大部53の先端側に第2ストレート部54が隣接する。第2ストレート部54の先端側に第2拡大部55が隣接し、第2拡大部55の先端側に第3ストレート部56が隣接する。内側開口端46の後端47は、第3ストレート部56に接している。
【0025】
第1ストレート部52で囲まれた第1内側領域57の、軸線Oに垂直な断面積は、第1ストレート部52の軸線方向の全長に亘って同一である。第1内側領域57の軸線Oに垂直な断面積は、接地電極30の端部31の先端32における副室42の軸線Oに垂直な断面積と同一面積である。
【0026】
第1拡大部53に囲まれた第2内側領域58の、軸線Oに垂直な断面積は、後端側から先端側に向かうにつれて小さくなる。第2ストレート部54で囲まれた第3内側領域59の、軸線Oに垂直な断面積は、第2ストレート部54の軸線方向の全長に亘って同一である。第2拡大部55に囲まれた第4内側領域60の、軸線Oに垂直な断面積は、後端側から先端側に向かうにつれて小さくなる。第3ストレート部56で囲まれた第5内側領域61の、軸線Oに垂直な断面積は、第3ストレート部56の軸線方向の全長に亘って同一である。
【0027】
副室42のうち第5内側領域61よりも先端側の先端領域62は、キャップ部40の内面44の先端63を含む。先端領域62の後端における軸線Oに垂直な断面積は、第1拡大部53の後端における軸線Oに垂直な断面積より小さい。内面44の先端63は球冠状の湾曲面の一部である。内面44の先端63は、貫通孔41の内側開口端46と離隔している。内面44の先端63は軸線O上に位置する。キャップ部40の外面43から内面44までの最短距離は、内面44の先端63で最も小さくなる。特に本実施形態では、キャップ部40の外面43から内面44までの最短距離は、キャップ部40の外面43の先端64と内面44の先端63との間で最も小さくなる。外面43の先端64は軸線Oに垂直な平面をなす。
【0028】
点火プラグ10は、火花ギャップ33における放電により、燃焼室3から貫通孔41を通ってキャップ部40の内側に流入した可燃混合気に点火する。その燃焼によって生じる膨張圧力により火炎を含むガス流を貫通孔41から燃焼室3に噴射し、噴流によって燃焼室3内の可燃混合気を燃焼させる。
【0029】
点火プラグ10は、接地電極30の端部31の先端32とキャップ部40の複数の貫通孔41の最も先端側の内側開口端46の後端47との間の領域51に、軸線Oを含む断面におけるキャップ部40の外面43から内面44までの最短距離が、後端側から先端側へ向かうにつれて大きくなる第1拡大部53及び第2拡大部55が存在する。第1拡大部53及び第2拡大部55では、先端側から後端側へ向かうにつれて後端側へ熱伝導し難くなり、後端側から先端側へ向かうにつれて熱容量が大きくなる。よって、エンジン1の負荷が低いとき等に、第2拡大部55の先端側の温度が低下し過ぎないようにできる。これにより燃焼室3に噴射される噴流の熱エネルギーを確保できる。
【0030】
さらに第1拡大部53に囲まれた第2内側領域58、及び、第2拡大部55に囲まれた第4内側領域60の、軸線Oに垂直な断面積は、後端側から先端側へ向かうにつれてそれぞれ小さくなるので、第2拡大部55の先端側における火炎を含むガス流の速度を速くできる。これにより燃焼室3に噴射される噴流の運動エネルギーを確保できる。その結果、高エネルギーの噴流によって、燃焼室3内の燃焼速度の低下や失火などを抑制し、燃焼室3内の可燃混合気を急速に燃焼させることができる。
【0031】
第1拡大部53と第2拡大部55との間に第2ストレート部54が介在するので、軸線Oを含む断面において、キャップ部40の内面44の軸線Oに対する傾きが変わる。その結果、副室42内に乱流を生じさせ易くできる。よって、副室42内の燃焼速度を上げることができる。
【0032】
点火プラグ10は、軸線Oを含む断面において、キャップ部40の外面43から内面44までの最短距離が、キャップ部40の内面44の先端63で最も小さくなる。これにより第1拡大部53及び第2拡大部55の先端の部位の熱容量より、キャップ部40の内面44の先端63を含む部位の熱容量を小さくできるので、放射などによりキャップ部40の内面44の先端63を含む部位の温度を低下させ易くできる。よって、エンジン1の負荷が高いとき等に、燃焼室3から貫通孔41を通ってキャップ部40の内側に流入した可燃混合気の、キャップ部40の内面44の先端63を着火源とする過早着火(プレイグニッション)を抑制できる。
【0033】
点火プラグ10は、軸線Oを含む断面において、キャップ部40の外面43から内面44までの最短距離が、キャップ部40の外面43の先端64で最も小さくなる。これによりキャップ部40の内面44の先端63を含む部位のうち外面43の先端64を含む部位の熱容量を小さくできるので、放射などによりキャップ部40の外面43の先端64を含む部位の温度を低下させ易くできる。よって、エンジン1の負荷が高いとき等に、燃焼室3内の可燃混合気の、キャップ部40の外面43の先端64を着火源とするプレイグニッションを抑制できる。
【0034】
点火プラグ10は、キャップ部40の外面43の先端64が平面をなすので、球冠のように外面43の先端が細くなっている場合に比べ、キャップ部40の外面43の先端64の過熱を抑制できる。よって、エンジン1の負荷が高いとき等に、燃焼室3内の可燃混合気の、キャップ部40の外面43の先端64を着火源とするプレイグニッションを抑制できる。
【0035】
キャップ部40は、貫通孔41の後端47と第2拡大部55との間に第3ストレート部56が形成されている。第3ストレート部56で囲まれた第5内側領域61の、軸線Oに垂直な断面積は、第3ストレート部56の軸線方向の全長に亘って同一面積なので、第3ストレート部56においてガス流の損失を抑制しつつガス流を加速できる。その結果、燃焼室3に噴射される噴流の運動エネルギーを確保できるので、燃焼室3内の可燃混合気を安定に燃焼できる。
【0036】
図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、キャップ部40に拡大部が複数(第1拡大部53及び第2拡大部55)形成される場合について説明した。これに対し第2実施形態では、キャップ部71に拡大部73が1つ形成される場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図3は第2実施の形態における点火プラグ70の軸線Oを含む断面図である。
図3は、第1実施形態と同様に、点火プラグ70のII(
図1参照)で示す部分の拡大図である(
図4及び
図5においても同じ)。
【0037】
点火プラグ70のキャップ部71は、溶融部48を介して主体金具20の先端部22に接合されている。キャップ部71には、貫通孔41によって外面43に外側開口端45が形成され、キャップ部71の内面72に内側開口端46が形成されている。
【0038】
キャップ部71は領域51に拡大部73が存在する。拡大部73では、軸線Oを含む断面において、キャップ部71の外面43から内面72までの最短距離が、後端側から先端側へ向かうにつれて大きくなる。溶融部48の先端は拡大部73に接している。内側開口端46の後端47は拡大部73に接している。拡大部73に囲まれた内側領域74の、軸線Oに垂直な断面積は、後端側から先端側に向かうにつれて小さくなる。副室42のうち内側領域74よりも先端側の先端領域75は、キャップ部71の内面72の先端63を含む。
【0039】
軸線O
を含む断面において、拡大部73の内面72を示す線は、略同じ曲率半径からなる。拡大部73の内面72に大きな変曲点が無いので、拡大部73の内面72に突起部分が形成され難くなる。その結果、拡大部73の内面72の突起部分での過熱を抑制できるので、燃焼室3から貫通孔41を通ってキャップ部71の内側に流入した可燃混合気の、拡大部73の内面72の突起部分を着火源とするプレイグニッションを抑制できる。なお、軸線Oに垂直な断面において、拡大部73の内面72を示す線の曲率半径は、拡大部73の軸線方向の全長に亘って全く同じであることが好ましい。
【0040】
図4を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施形態では、キャップ部40の第1拡大部53と第2拡大部55との間に第2ストレート部54が形成される場合について説明した。これに対し第3実施形態では、キャップ部81の拡大部84に、軸線Oに垂直な垂直面83が形成される場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図4は第3実施の形態における点火プラグ80の軸線Oを含む断面図である。
【0041】
点火プラグ80のキャップ部81は、溶融部48を介して主体金具20の先端部22に接合されている。キャップ部81の内面82の一部に、軸線Oに垂直な円環状の垂直面83が存在する。キャップ部81には、貫通孔41によって外面43に外側開口端45が形成され、キャップ部81の内面82に内側開口端46が形成されている。
【0042】
キャップ部81は領域51に拡大部84が存在する。溶融部48の先端は拡大部84に接している。内側開口端46の後端47は拡大部84に接している。拡大部84に囲まれた内側領域85の、軸線Oに垂直な断面積は、後端側から先端側に向かうにつれて小さくなる。副室42のうち内側領域85よりも先端側の先端領域86は、キャップ部81の内面82の先端63を含む。
【0043】
拡大部84に垂直面83が存在する。軸線Oを含む断面において、垂直面83上の各点においては、垂直面83を含む直線83aと外面43との交点43aから垂直面83(内面82の一部)までの最短距離が、垂直面83の径方向の外側から内側へ向かうにつれて大きくなる。拡大部84では、交点43aよりも先端側の外面43の各点と内面82との最短距離は、交点43aよりも後端側の外面43の各点と内面82との最短距離より大きい。よって、拡大部84では、キャップ部81の外面43から内面82までの最短距離が、後端側から先端側へ向かうにつれて大きくなる。
【0044】
第3実施形態における点火プラグ80は拡大部84を備えているので、第1拡大部53及び第2拡大部55を備える第1実施形態における点火プラグ10と同様の作用効果が得られる。また、拡大部84に垂直面83があるので、副室42内に乱流を生じさせ易くできる。その結果、副室42内の燃焼速度を上げることができる。
【0045】
図5を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施形態から第3実施形態では、キャップ部40,71,81に形成された複数の貫通孔41の軸線方向における位置が同一の場合について説明した。これに対し第4実施形態では、貫通孔93,97,99の軸線方向における位置が異なる場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図5は第4実施の形態における点火プラグ90の断面図である。
【0046】
点火プラグ90のキャップ部91は、溶融部48を介して主体金具20の先端部22に接合されている。キャップ部91には複数の貫通孔93,97,99が形成されている。貫通孔93によってキャップ部91の外面43に外側開口端94が形成され、キャップ部91の内面92に内側開口端95が形成されている。貫通孔97によって内面92に内側開口端98が形成されている。貫通孔99によって外面43に外側開口端100が形成され、内面92に内側開口端101が形成されている。内側開口端95は最も先端側に位置し、内側開口端101は最も後端側に位置する。貫通孔93,97,99は、キャップ部91の内面92から外面43に近づくにつれて先端側へ向かって傾斜している。
【0047】
軸線Oを含む断面において、キャップ部91は、接地電極30の端部31の先端32を通り軸線Oに垂直な第1仮想直線49と、最も先端側の内側開口端95の後端96を通り軸線Oに垂直な第2仮想直線103と、の間の領域104に、拡大部105が存在する。拡大部105では、キャップ部91の外面43から内面92までの最短距離が、後端側から先端側へ向かうにつれて大きくなる。拡大部105に囲まれた第1内側領域107の、軸線Oに垂直な断面積は、後端側から先端側に向かうにつれて小さくなる。
【0048】
拡大部105の先端側にストレート部106が隣接している。ストレート部106は、貫通孔93.97,99のうち最も後端側に位置する貫通孔99の内側開口端101の後端102に接している。ストレート部106で囲まれた第2内側領域108の、軸線Oに垂直な断面積は、ストレート部106の軸線方向の全長に亘って同一である。副室42のうち第2内側領域108よりも先端側の先端領域109は、キャップ部91の内面92の先端63を含む。
【0049】
第4実施形態における点火プラグ90は拡大部105及びストレート部106を備えているので、第2拡大部55及び第3ストレート部56を備える第1実施形態における点火プラグ10と同様の作用効果が得られる。また、軸線Oを含む断面において、拡大部105の内面92のうちストレート部106の近くに、径方向の内側に凸の変曲点があるので、副室42内に乱流を生じさせ易くできる。その結果、副室42内の燃焼速度を上げることができる。
【0050】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えばキャップ部40,71,81,91の形状や貫通孔41,93,97,99の数や形状、大きさ等は適宜設定できる。
【0051】
実施形態では、主体金具20にキャップ部40,71,81,91が溶接される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、先端が閉じた筒状部材を主体金具20の先端部22に接続し、筒状部材の先端部をキャップ部にすることは当然可能である。筒状部材は、主体金具20の先端部22の外周を取り囲むように配置される。筒状部材の外周面に形成されたおねじが、エンジン1のねじ穴2に螺合する。
【0052】
主体金具20の先端部22に筒状部材(キャップ部)を接続する手段としては、例えば筒状部材の内周面にめねじを形成し、先端部22に形成されたおねじ21にめねじを接合することができる。また、筒状部材の後端部と主体金具20の座部23とを溶接等によって接合することができる。さらに、筒状部材の後端部にフランジを形成し、主体金具20の座部23とフランジとを溶接等によって接合することができる。筒状部材は、例えば、ニッケル基合金等の金属材料や窒化ケイ素等のセラミックスにより形成できる。
【0053】
実施形態では、主体金具20の先端部22を貫通する接地電極30を、おねじ21の位置に設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、主体金具20の先端部22の先端面が露出するようにキャップ部を配置して、先端部22の先端面に接地電極を接続することは当然可能である。接地電極の形状は直線状であっても屈曲していても良い。キャップ部に接地電極を接合しても良い。
【0054】
実施形態では、貫通孔41,93,97,99の内側開口端46,95,98,101が、軸線Oを含む平面でキャップ部40,71,81,91を切断した切り口に現出する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。貫通孔の内側開口端が軸線Oを含む断面に現出しないように、軸線Oに対する内側開口端の位置をずらして、キャップ部40,71,81,91に貫通孔を設けることは当然可能である。この場合、貫通孔の内側開口端の位置は、軸線Oに平行な平面でキャップ部40,71,81,91を切断した切り口を作り、その切り口に現出する内側開口端に基づいて特定できる。そこで特定された貫通孔の内側開口端の位置に基づいて、軸線Oを含む断面における領域51,104が特定される。キャップ部40,71,81,91の外面43から内面44,72,82,92までの最短距離は、軸線Oを含む断面に基づいて測定される。
【0055】
実施形態では、キャップ部40,71,81,91の外面43の先端64が平面をなす場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。キャップ部40,71,81,91の外面43の先端64を球冠状や円錐状にすることは当然可能である。
【0056】
実施形態では、キャップ部40,71,81,91の内面44の先端63が湾曲面の一部である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。キャップ部40,71,81,91の内面44の先端63が平面をなすようにすることは当然可能である。
【0057】
実施形態では、キャップ部40,71,81,91の内面44の先端63と貫通孔41,93,97,99の内側開口端46,95,98,101の先端とが離隔している場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。貫通孔41,93,97,99の内側開口端46,95,98,101の先端が、内面44の先端63に接していても良い。
【0058】
実施形態では、キャップ部40,71,81,91に形成された貫通孔41,93の内側開口端46,95の先端が、キャップ部40,71,81,91の内面44,72,82,92の先端63よりも後端側に位置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。軸線方向における内側開口端46,95の先端の位置を、内面44,72,82,92の先端63の位置に合わせることは当然可能である。これにより副室42内のガス流が、貫通孔41,93にスムーズに導入される。
【0059】
第4実施形態では、軸線Oを含む断面において、拡大部105の内面92を示す線が、径方向の内側に凸の変曲点をもつ場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、拡大部105の内面92を示す線の、径方向の内側に凸の変曲点よりも後端側に、径方向の外側に凸の変曲点を設けることは当然可能である。他の実施形態においても同様に、拡大部の内面に、径方向の外側に凸の変曲点を設けることは当然可能である。
【0060】
なお、各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換したり、その実施形態が有する構成の一部を削除したりして、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。
【0061】
例えば第1実施形態において、第1ストレート部52を省略して、第1拡大部53が溶融部48に接するまで第1拡大部53を後端側へ延長することは当然可能である。第1実施形態において、第2ストレート部54を省略して、第1拡大部53と第2拡大部55とを連続させることは当然可能である。第1実施形態において、第3ストレート部56を省略して、第2拡大部55が内側開口端46の後端47に接するまで第2拡大部55を先端側へ延長することは当然可能である。第1実施形態において、第1拡大部53及び第2拡大部55の一方を省略したり、拡大部をさらに追加したりすることは当然可能である。
【0062】
また、第3実施形態において、拡大部84と内側開口端46の後端47との間に、ストレート部を設けることは当然可能である。第3実施形態において、軸線方向における位置を異ならせて垂直面83を複数設けることは当然可能である。