特許第6955204号(P6955204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6955204-開閉体駆動装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6955204
(24)【登録日】2021年10月5日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】開閉体駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/689 20150101AFI20211018BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20211018BHJP
   E05F 15/77 20150101ALI20211018BHJP
【FI】
   E05F15/689
   B60J1/17 A
   E05F15/77
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-176788(P2017-176788)
(22)【出願日】2017年9月14日
(65)【公開番号】特開2019-52468(P2019-52468A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和之
(72)【発明者】
【氏名】水谷 伸生
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−098687(JP,A)
【文献】 特開2006−315462(JP,A)
【文献】 特開2008−082166(JP,A)
【文献】 特開2010−037767(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0005963(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第19618484(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/79
B60J 1/17
B60R 25/10−25/104
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた開閉体を開閉させるためのモータと、
前記モータの駆動による前記開閉体の動作速度を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
車両に搭載の操作スイッチの操作によって出力される車両側操作信号に基づいて通常速度で前記開閉体を動作させ、
前記車両のイグニッションスイッチがオフであることを示す信号と、携帯機の操作によって出力される遠隔操作信号とが共に入力されることに基づいて前記通常速度よりも低速で前記開閉体を動作させることを特徴とする開閉体駆動装置。
【請求項2】
車両に設けられた開閉体を開閉させるためのモータと、
前記モータの駆動による前記開閉体の動作速度を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、車両に搭載の操作スイッチの操作によって出力される車両側操作信号に基づいて通常速度で前記開閉体を動作させ、携帯機の操作によって出力される遠隔操作信号に基づいて前記通常速度よりも低速で前記開閉体を動作させるものであって、
前記制御部は、全閉位置から開方向側に所定長さを有する閉じ切り領域における前記開閉体の閉動作において、前記遠隔操作信号に基づく動作を前記車両側操作信号に基づく動作よりも低速とすることを特徴とする開閉体駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の開閉体駆動装置において、
前記制御部は、前記開閉体の位置に対する閉動作の速度制御パターンを有するとともに、前記速度制御パターンに基づいて前記開閉体の閉動作の速度を制御し、
前記速度制御パターンは、通常速度制御パターンと該通常速度制御パターンよりも低速の低速制御パターンとを少なくとも含む複数種類が用意され、
前記制御部は、前記車両側操作信号に基づいて前記通常速度制御パターンを用いた前記開閉体の閉動作を実行し、前記遠隔操作信号に基づいて前記低速制御パターンを用いた前記開閉体の閉動作を実行することを特徴とする開閉体駆動装置。
【請求項4】
請求項に記載の開閉体駆動装置において、
前記通常速度制御パターンは、前記開閉体を一定の第1の速度で閉動作させる定速区間と、前記定速区間の閉方向側に設定され、前記開閉体の閉動作を前記第1の速度から減速させる減速区間と、前記減速区間から全閉位置までの間に設定され、前記第1の速度よりも遅い一定の第2の速度で前記開閉体を閉動作させる一定低速区間とを有することを特徴とする開閉体駆動装置。
【請求項5】
請求項に記載の開閉体駆動装置において、
前記低速制御パターンは、前記通常速度制御パターンにおける前記一定低速区間の速度を前記第2の速度よりも遅くしたパターンであることを特徴とする開閉体駆動装置。
【請求項6】
請求項又はに記載の開閉体駆動装置において、
前記低速制御パターンは、前記通常速度制御パターンにおける前記減速区間の開始位置を開方向側にずらしたパターンであることを特徴とする開閉体駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるパワーウインド装置やサンルーフ装置などの開閉体駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の開閉体駆動装置では、携帯機を用いた遠隔操作によって、車両から離れた場所からでも開閉体を動作させることが可能なものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−104665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔操作にて開閉体を動作させる場合には、操作する者が車両周辺の状況を確認できない場合がある。そのため、遠隔操作にて開閉体を動作させる場合では、通常操作(車両に搭載された操作スイッチの操作)にて開閉体を動作させる場合に比べて、異物との干渉(閉動作時の異物の挟み込み又は開動作時の異物の巻き込み)の発生リスクが高まることが懸念されている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、遠隔操作による開閉体の動作時における開閉体と異物との干渉を抑制できる開閉体駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する開閉体駆動装置は、車両に設けられた開閉体を開閉させるためのモータと、前記モータの駆動による前記開閉体の動作速度を制御する制御部とを備え、前記制御部は、車両に搭載の操作スイッチの操作によって出力される車両側操作信号に基づいて通常速度で前記開閉体を動作させ、前記車両のイグニッションスイッチがオフであることを示す信号と、携帯機の操作によって出力される遠隔操作信号とが共に入力されることに基づいて前記通常速度よりも低速で前記開閉体を動作させる。
【0007】
この構成によれば、イグニッションスイッチがオフである時の遠隔操作の場合には、通常速度よりも低速で開閉体が動作されるため、遠隔操作にて動作される開閉体と異物との干渉を抑制できる。また、車両に搭載された操作スイッチにて開閉体を動作させる場合(通常操作の場合)には、操作する者が開閉体近辺の状況を間近で確認できる。このため、通常操作による動作の場合には、通常操作時の使用感を損なわないことに配慮して通常速度で開閉体を動作させることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、イグニッションスイッチがオフである時の遠隔操作の場合に、開閉体が通常速度よりも低速で動作される。イグニッションスイッチのオフ時、つまり停車時には、遠隔操作する者が遠い場所に居るおそれがあるため、遠隔操作時における異物との干渉抑制効果をより好適に発揮させることができる。
【0010】
上記課題を解決する開閉体駆動装置車両に設けられた開閉体を開閉させるためのモータと、前記モータの駆動による前記開閉体の動作速度を制御する制御部とを備え、前記制御部は、車両に搭載の操作スイッチの操作によって出力される車両側操作信号に基づいて通常速度で前記開閉体を動作させ、携帯機の操作によって出力される遠隔操作信号に基づいて前記通常速度よりも低速で前記開閉体を動作させるものであって、前記制御部は、全閉位置から開方向側に所定長さを有する閉じ切り領域における前記開閉体の閉動作において、前記遠隔操作信号に基づく動作を前記車両側操作信号に基づく動作よりも低速とする。
この構成によれば、遠隔操作の場合には、通常速度よりも低速で開閉体が動作されるため、遠隔操作にて動作される開閉体と異物との干渉を抑制できる。また、車両に搭載された操作スイッチにて開閉体を動作させる場合(通常操作の場合)には、操作する者が開閉体近辺の状況を間近で確認できる。このため、通常操作による動作の場合には、通常操作時の使用感を損なわないことに配慮して通常速度で開閉体を動作させることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、異物の挟み込みが比較的生じやすい閉じ切り領域において、遠隔操作による開閉体の閉動作が低速とされるため、開閉体による異物の挟み込みの発生を好適に抑制できる。
【0012】
上記開閉体駆動装置において、前記制御部は、前記開閉体の位置に対する閉動作の速度制御パターンを有するとともに、前記速度制御パターンに基づいて前記開閉体の閉動作の速度を制御し、前記速度制御パターンは、通常速度制御パターンと該通常速度制御パターンよりも低速の低速制御パターンとを少なくとも含む複数種類が用意され、前記制御部は、前記車両側操作信号に基づいて前記通常速度制御パターンを用いた前記開閉体の閉動作を実行し、前記遠隔操作信号に基づいて前記低速制御パターンを用いた前記開閉体の閉動作を実行する。
【0013】
この構成によれば、制御部は、車両側操作信号に基づいて通常速度制御パターンを用いた開閉体の閉動作を実行し、遠隔操作信号に基づいて低速制御パターンを用いた開閉体の閉動作を実行する。このため、遠隔操作による開閉体の閉動作を、通常操作による閉動作よりも低速とすることが可能となる。
【0014】
上記開閉体駆動装置において、前記通常速度制御パターンは、前記開閉体を一定の第1の速度で閉動作させる定速区間と、前記定速区間の閉方向側に設定され、前記開閉体の閉動作を前記第1の速度から減速させる減速区間と、前記減速区間から全閉位置までの間に設定され、前記第1の速度よりも遅い一定の第2の速度で前記開閉体を閉動作させる一定低速区間とを有する。
【0015】
この構成によれば、通常操作による開閉体の閉動作において、開閉体が全閉位置に近づいたときに開閉体を減速して低速で全閉位置に到達させる所謂スローストップ制御がなされる。このため、通常操作による開閉体の閉動作において、異物の挟み込みの発生を好適に抑制できる。
【0016】
上記開閉体駆動装置において、前記低速制御パターンは、前記通常速度制御パターンにおける前記一定低速区間の速度を前記第2の速度よりも遅くしたパターンである。
この構成によれば、異物の挟み込みが比較的生じやすい全閉位置付近(一定低速区間)において、遠隔操作による開閉体の閉動作がより低速とされるため、開閉体による異物の挟み込みの発生を好適に抑制できる。
【0017】
上記開閉体駆動装置において、前記低速制御パターンは、前記通常速度制御パターンにおける前記減速区間の開始位置を開方向側にずらしたパターンである。
この構成によれば、遠隔操作による開閉体の閉動作において減速区間の開始位置を早めることができるため、異物の挟み込みの発生を好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の開閉体駆動装置によれば、遠隔操作による開閉体の動作時における開閉体と異物との干渉を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態のパワーウインド装置の概略構成図。
図2】(a)通常速度制御パターンを示すグラフ、(b)第1低速制御パターンを示すグラフ、(c)第2低速制御パターンを示すグラフ。
図3】同形態における制御部の処理を説明するためのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、開閉体駆動装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両ドアDには、開閉体としてのウインドガラスWGが上下動可能に設けられている。ウインドガラスWGには、ワイヤ式やXアーム式などのレギュレータ(図示略)を介してパワーウインド装置1のモータMが駆動連結されている。なお、モータMには、ブラシ付きモータとブラシレスモータのいずれでも用いることができる。
【0021】
パワーウインド装置1は、モータMの回転を検出するホールICなどの回転検出センサ2と、該回転検出センサ2からの信号及び後述の駆動指令信号に基づいてバッテリ3の電源をモータMに供給する制御部4とを備える。回転検出センサ2は、モータMの回転に応じたパルス信号を制御部4に出力する。そして、制御部4は、入力されるパルス信号によりウインドガラスWGの位置や速度を把握しながら種々の制御を行い、モータMを駆動制御する。
【0022】
詳述すると、制御部4は、駆動指令信号の入力に基づいてウインドガラスWGを閉動作又は開動作させるべくモータMを駆動制御する。この駆動指令信号としては、車両ドアDに設けられた自席操作スイッチ5の操作に基づいて出力される自席操作信号Sd1、車両ドアD以外の車両ドアに設けられた他席操作スイッチ6の操作に基づいて出力される他席操作信号Sd2、及び、ワイヤレスキーなどの携帯機7の操作に基づいて出力される遠隔操作信号Srが挙げられる。
【0023】
また、制御部4は、回転検出センサ2からのパルス信号等に基づいて挟み込みが発生したと判定するとウインドガラスWGの閉動作を停止させる(または、停止させた後に反転駆動させる)挟み込み防止制御を行う。
【0024】
また、制御部4は、必要な各種の車両情報を図示しないボディECU(上位ECU)から取得する。制御部4がボディECUから取得する車両情報としては、例えば、車両に備えられる周知のイグニッションスイッチのオン/オフ信号(イグニッション信号IG)等が挙げられる。
【0025】
次に、制御部4によるウインドガラスWGの閉動作の速度制御について説明する。
制御部4は、ウインドガラスWGの位置に対する閉動作の速度制御パターンを有し、その速度制御パターンに基づいてウインドガラスWGの開閉動作の速度制御を行う。なお、当該速度制御パターンは、図示しないメモリに予め記憶されている。また、本実施形態では、速度制御パターンは複数種類用意されている。詳しくは、図2(a)に示す通常速度制御パターンPaと、図2(b)に示す第1低速制御パターンPbと、図2(c)に示す第2低速制御パターンPcとが用意されている。
【0026】
図2(a)に示すように、通常速度制御パターンPaは、ウインドガラスWGを一定の第1の速度V1で閉動作させる定速区間A1を有し、ウインドガラスWGの位置が定速区間A1を過ぎるとウインドガラスWGの動作速度を減速させる所謂スローストップ制御を実現するものである。本実施形態の通常速度制御パターンPaは、全閉位置からその開方向側の所定の位置G1までの区間である一定低速区間A2と、定速区間A1と一定低速区間A2との間に設定された減速区間A3とを有している。通常速度制御パターンPaの一定低速区間A2では、第1の速度V1よりも遅い一定の第2の速度V2でウインドガラスWGが閉動作され、減速区間A3では、ウインドガラスWGの閉動作の速度が第1の速度V1から第2の速度V2まで減速される。
【0027】
図2(b)に示すように、第1低速制御パターンPbは、通常速度制御パターンPaにおける減速区間A3及び一定低速区間A2の開始位置を開方向側にずらしたパターンである。具体的には、第1低速制御パターンPbにおける定速区間A1では、通常速度制御パターンPaと同様に、ウインドガラスWGを一定の第1の速度V1で閉動作させる。また、第1低速制御パターンPbの一定低速区間A2では、通常速度制御パターンPaと同様に、ウインドガラスWGを一定の第2の速度V2で閉動作させる。また、第1低速制御パターンPbにおける減速区間A3では、ウインドガラスWGの閉動作を第1の速度V1から第2の速度V2まで減速させる。
【0028】
そして、第1低速制御パターンPbにおける減速区間A3の開始位置G2は、通常速度制御パターンPaにおける減速区間A3の開始位置G3よりも開方向側に設定されている。また、第1低速制御パターンPbにおける一定低速区間A2の開始位置G4は、通常速度制御パターンPaにおける一定低速区間A2の開始位置G1よりも開方向側に設定されている。つまり、第1低速制御パターンPbの一定低速区間A2の長さは、通常速度制御パターンPaの一定低速区間A2の長さよりも長く設定されている。なお、本実施形態では、第1低速制御パターンPbの減速区間A3の長さは、通常速度制御パターンPaの減速区間A3の長さと等しく設定されている。つまり、通常速度制御パターンPaと第1低速制御パターンPbとでは、減速区間A3における減速度合いは等しくなっている。
【0029】
図2(c)に示すように、第2低速制御パターンPcは、第1低速制御パターンPbにおける減速区間A3及び一定低速区間A2の開始位置を開方向側にずらし、かつ、一定低速区間A2における動作速度が第2の速度V2よりも遅い一定の第3の速度V3に設定されたパターンである。具体的には、第2低速制御パターンPcにおける定速区間A1では、通常速度制御パターンPaと同様に、ウインドガラスWGを一定の第1の速度V1で閉動作させる。また、第2低速制御パターンPcの一定低速区間A2では、第2の速度V2よりも遅い一定の第3の速度V3でウインドガラスWGを閉動作させる。また、第2低速制御パターンPcの減速区間A3では、ウインドガラスWGの閉動作を第1の速度V1から第3の速度V3まで減速させる。
【0030】
そして、第2低速制御パターンPcにおける減速区間A3の開始位置G5は、第1低速制御パターンPbにおける減速区間A3の開始位置G2よりも開方向側に設定されている。また、第2低速制御パターンPcにおける一定低速区間A2の開始位置G6は、第1低速制御パターンPbにおける一定低速区間A2の開始位置G4よりも開方向側に設定されている。つまり、第2低速制御パターンPcの一定低速区間A2の長さは、第1低速制御パターンPbの一定低速区間A2の長さよりも長く設定されている。また、本実施形態では、第2低速制御パターンPcの減速区間A3の長さは、第2低速制御パターンPc及び通常速度制御パターンPaの減速区間A3の長さと等しく設定されている。
【0031】
なお、上記した3つの制御パターンPa,Pb,Pcでは、定速区間A1の開始位置が同位置に設定され、全開位置から定速区間A1の開始位置までの区間で、ウインドガラスWGの動作速度を第1の速度V1まで加速させるようになっている(所謂スロースタート制御)。
【0032】
次に、ウインドガラスWGの閉動作における制御部4の制御態様について説明する。
図3に示すように、ステップS1において、制御部4は、ウインドガラスWGを閉動作させる旨の駆動指令信号が入力されると、ステップS2に移行する。
【0033】
制御部4は、ステップS2において、イグニッション信号IGのオンオフを判定し、イグニッション信号IGがオンのとき、ステップS3に移行する。
ステップS3において、制御部4は、ステップS1で入力された駆動指令信号が自席操作信号Sd1であるか否かを判定し、当該駆動指令信号が自席操作信号Sd1である場合、ステップS4に移行する。
【0034】
制御部4は、ステップS4において、通常速度制御パターンPaを選択し、ステップS5に移行する。
制御部4は、ステップS5において、前段のステップ(ステップS4,S7,S8のいずれか)で選択した速度制御パターンに基づくウインドガラスWGの閉動作を開始する。
【0035】
制御部4は、ステップS2において、イグニッション信号IGがオフのとき、ステップS6に移行する。
ステップS6において、制御部4は、ステップS1で入力された駆動指令信号が遠隔操作信号Srであるか否かを判定し、当該駆動指令信号が遠隔操作信号Srでない場合、つまり、駆動指令信号が自席操作信号Sd1又は他席操作信号Sd2である場合、ステップS7に移行する。
【0036】
制御部4は、ステップS7において、第1低速制御パターンPbを選択し、ステップS5に移行する。
また、ステップS3において、制御部4は、ステップS1で入力された駆動指令信号が自席操作信号Sd1でないと判定した場合(つまり、当該駆動指令信号が他席操作信号Sd2又は遠隔操作信号Srである場合)、ステップS7に移行する。
【0037】
ステップS6において、制御部4は、ステップS1で入力された駆動指令信号が遠隔操作信号Srであると判定した場合、ステップS8に移行する。
制御部4は、ステップS8において、第2低速制御パターンPcを選択し、ステップS5に移行する。
【0038】
次に、上記のように構成されたパワーウインド装置1の作用について説明する。
イグニッションスイッチがオンの時に自席操作スイッチ5が閉操作されると、通常速度制御パターンPaに基づく速度でウインドガラスWGが閉動作される。また、イグニッションスイッチがオンの時に他席操作スイッチ6が閉操作されると、第1低速制御パターンPbに基づく速度でウインドガラスWGが閉動作される。また、イグニッションスイッチがオンで携帯機7による閉操作がなされた時にも、第1低速制御パターンPbに基づく速度でウインドガラスWGが閉動作される。
【0039】
イグニッションスイッチがオフの時に自席操作スイッチ5が閉操作されると、第1低速制御パターンPbに基づく速度でウインドガラスWGが閉動作される。また、イグニッションスイッチがオフで他席操作スイッチ6が閉操作された時にも、第1低速制御パターンPbに基づく速度でウインドガラスWGが閉動作される。
【0040】
そして、イグニッションスイッチがオフの時に携帯機7による閉操作がなされると、第2低速制御パターンPcに基づく速度でウインドガラスWGが閉動作される。第2低速制御パターンPcは、上記のように、通常速度制御パターンPa及び第1低速制御パターンPbよりも低速でウインドガラスWGを閉動作させる制御パターンであるため、遠隔操作によって閉動作されるウインドガラスWGが異物と干渉(挟み込みなど)することを抑制できるようになっている。
【0041】
次に、本実施形態の効果を記載する。
(1)制御部4は、車両に搭載の自席操作スイッチ5の操作によって出力される自席操作信号Sd1に基づいて、通常速度(通常速度制御パターンPaに基づく速度)でウインドガラスWGを閉動作させる。そして、制御部4は、携帯機7の操作によって出力される遠隔操作信号Srに基づいて、通常速度よりも低速(第2低速制御パターンPcに基づく速度)でウインドガラスWGを閉動作させる。これにより、遠隔操作にて閉動作されるウインドガラスWGと異物との干渉(異物の挟み込みなど)を抑制できる。また、遠隔操作時に、万が一、異物の挟み込みが生じたときには、前述したように、制御部4による挟み込み防止制御が実行されるが、遠隔操作時の動作が低速とされることで、挟み込み防止制御の実行時に異物に掛かる荷重を低減させることが可能となる。
【0042】
また、自席操作スイッチ5にてウインドガラスWGを閉動作させる場合(通常操作の場合)には、操作する者がウインドガラスWGの近辺の状況を間近で確認できる。このため、通常操作による閉動作の場合には、通常操作時の使用感を損なわないことに配慮して通常速度(通常速度制御パターンPaに基づく速度)でウインドガラスWGを閉動作させることが好ましい。
【0043】
(2)制御部4は、車両のイグニッションスイッチがオフであることを示す信号と遠隔操作信号Srとが共に入力されることに基づいて、通常速度よりも低速(第2低速制御パターンPcに基づく速度)でウインドガラスWGを閉動作させる。イグニッションスイッチのオフ時、つまり停車時には、遠隔操作する者が遠い場所に居るおそれがあるため、遠隔操作時における異物との干渉抑制効果をより好適に発揮させることができる。
【0044】
(3)制御部4は、全閉位置から開方向側に所定長さを有する閉じ切り領域(位置G1から全閉位置までの区間を少なくとも含む領域)におけるウインドガラスWGの閉動作において、遠隔操作信号Srに基づく動作を自席操作信号Sd1に基づく動作よりも低速とする。この構成によれば、異物の挟み込みが比較的生じやすい閉じ切り領域において、遠隔操作によるウインドガラスWGの閉動作が低速とされるため、ウインドガラスWGによる異物の挟み込みの発生を好適に抑制できる。
【0045】
(4)通常速度制御パターンPaは、ウインドガラスWGを一定の第1の速度V1で閉動作させる定速区間A1と、定速区間A1の閉方向側に設定され、ウインドガラスWGの閉動作を第1の速度V1から減速させる減速区間A3と、減速区間A3から全閉位置までの間に設定され、第1の速度V1よりも遅い一定の第2の速度V2でウインドガラスWGを閉動作させる一定低速区間A2とを有する。この構成によれば、ウインドガラスWGが全閉位置に近づいたときにウインドガラスWGを減速して低速で全閉位置に到達させる所謂スローストップ制御がなされるため、ウインドガラスWGの閉動作において異物の挟み込みの発生を好適に抑制できる。
【0046】
(5)第2低速制御パターンPcは、通常速度制御パターンPaにおける一定低速区間A2の速度を第2の速度V2よりも遅い第3の速度V3としたパターンである。この構成によれば、異物の挟み込みが比較的生じやすい全閉位置付近(一定低速区間A2)において、遠隔操作によるウインドガラスWGの閉動作がより低速とされるため、ウインドガラスWGによる異物の挟み込みの発生を好適に抑制できる。
【0047】
(6)第1低速制御パターンPb及び第2低速制御パターンPcは、通常速度制御パターンPaにおける減速区間A3の開始位置G3を開方向側にずらしたパターンである。この構成によれば、遠隔操作によるウインドガラスWGの閉動作における減速区間A3の開始位置(第1低速制御パターンPbの減速区間A3の開始位置G2、又は第2低速制御パターンPcにの減速区間A3の開始位置G5)を早めることができるため、異物の挟み込みの発生を好適に抑制できる。
【0048】
(7)制御部4は、他席操作信号Sd2の入力に基づいて、通常速度制御パターンPaよりも低速である第1低速制御パターンPbを用いてウインドガラスWGを動作させる。これにより、他席操作スイッチ6の操作によるウインドガラスWGの動作時において、ウインドガラスWGと異物との干渉(異物の挟み込みなど)を抑制できる。
【0049】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・イグニッションスイッチがオフの時に自席操作スイッチ5が閉操作された場合、通常速度制御パターンPaに基づく速度でウインドガラスWGが閉動作される制御に変更してもよい。
【0050】
・イグニッションスイッチがオンの時に携帯機7による閉操作がなされた場合、第2低速制御パターンPcに基づく速度でウインドガラスWGが閉動作される制御に変更してもよい。また、イグニッションスイッチがオンの時に携帯機7による閉操作がなされた場合、通常速度制御パターンPaに基づく速度でウインドガラスWGが閉動作される制御に変更してもよい。
【0051】
・上記実施形態における低速制御パターンでは、第1及び第2低速制御パターンPb,Pcの2種類が用意されるが、これに限らず、第1及び第2低速制御パターンPb,Pcのいずれかのみを有した構成であってもよい。例えば、駆動指令信号が車両に搭載された操作スイッチ(自席操作スイッチ5及び他席操作スイッチ6)の操作に基づく信号である場合に、通常速度制御パターンPaが選択され、駆動指令信号が遠隔操作信号Srである場合に、第1低速制御パターンPb(又は第2低速制御パターンPc)が選択される制御に変更可能である。
【0052】
・低速制御パターンを必ずしも備える必要はなく、例えば、第2低速制御パターンPc(又は第1低速制御パターンPb)の代替として、通常速度制御パターンPaを基に算出される補正値を用いてもよい。
【0053】
・第1低速制御パターンPbの速度設定は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、第1低速制御パターンPbの一定低速区間A2の長さを通常速度制御パターンPaと同一としつつ、減速区間A3の開始位置のみを開方向側にずらしたパターンとしてもよい。
【0054】
・第2低速制御パターンPcの速度設定は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、減速区間A3及び一定低速区間A2の長さは、第2低速制御パターンPcと通常速度制御パターンPaとで同一であってもよい。また、例えば、第2低速制御パターンPcの定速区間A1の速度を、第1の速度V1よりも遅い速度に設定してもよい。つまり、全開位置から全閉位置までの範囲において、第2低速制御パターンPcの速度を通常速度制御パターンPaよりも低速としてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、異物の挟み込みなどに対処すべくウインドガラスWGの閉動作時に適用したが、異物の巻き込みなどに対処すべくウインドガラスWGの開動作時にも適用可能である。
【0056】
・上記実施形態では、車両のパワーウインド装置1に具体化したが、これに限定されず、ウインドガラスWG以外の開閉体(サンルーフやスライドドアなど)を駆動制御する開閉体駆動装置としてもよい。
【0057】
・上記した実施形態並びに各変形例は適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…パワーウインド装置(開閉体駆動装置)、4…制御部、5…自席操作スイッチ、6…他席操作スイッチ、7…携帯機、M…モータ、WG…ウインドガラス(開閉体)、Sd1…自席操作信号(車両側操作信号)、Sr…遠隔操作信号、Pa…通常速度制御パターン、Pb…第1低速制御パターン、Pc…第2低速制御パターン、A1…定速区間、A2…一定低速区間、A3…減速区間。
図1
図2
図3