特許第6955327号(P6955327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6955327
(24)【登録日】2021年10月5日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】背圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/22 20060101AFI20211018BHJP
   A61L 2/04 20060101ALI20211018BHJP
   F16K 7/04 20060101ALI20211018BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   A23L3/22
   A61L2/04
   F16K7/04 Z
   F16L55/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-175892(P2016-175892)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-38338(P2018-38338A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157946
【氏名又は名称】岩井機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】福岡 良道
(72)【発明者】
【氏名】安西 竜也
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実公平05−038639(JP,Y2)
【文献】 国際公開第2003/106870(WO,A1)
【文献】 特開2006−233987(JP,A)
【文献】 特開2004−164033(JP,A)
【文献】 特開2013−104440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/22
A61L 2/04
F16K 7/04
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物を含む被処理液を加熱殺菌する殺菌機の下流に設けられ、前記被処理液に背圧を付与する背圧制御装置であって、
前記被処理液が流通し、可撓性を有する円筒状の流路部と、
前記流路部の断面積が小さくなるように前記流路部の側面の一部を押圧するアクチュエーターと、を備え、
前記流路部の前記被処理液の流れに垂直な断面形状は、前記アクチュエーターにより前記流路部が押圧された状態では、前記アクチュエーターに直接押圧された部分の両側に形成された前記アクチュエーターに直接押圧されていない部分であって前記固形物が流通する第1流路及び第2流路を有し、
前記第1流路及び前記第2流路は、前記アクチュエーターに直接押圧された部分よりも広く開口している
ことを特徴とする背圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の背圧制御装置において、
前記断面形状は、前記アクチュエーターにより前記流路部の内面同士が接触した部分の前記アクチュエーターが伸縮する方向とは直交する方向における幅が、前記第1流路及び前記第2流路の当該方向における幅よりも短い
ことを特徴とする背圧制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する背圧制御装置において、
前記アクチュエーターの前記流路部を押圧する押圧部は、前記流路部よりも幅が短い
ことを特徴とする背圧制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載する背圧制御装置において、
前記アクチュエーターの前記流路部に当接する押圧面は曲面状に形成されている
ことを特徴とする背圧制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載する背圧制御装置において、
少なくとも一対の前記アクチュエーターが前記流路部を挟むように前記流路部の側面を押圧する
ことを特徴とする背圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物を含む飲料など処理する殺菌機の下流に配置される背圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果肉などの固形物を含む飲料を製造する設備は、当該飲料を殺菌機で処理している。この殺菌機の下流側には、背圧弁が設けられている(例えば、特許文献1参照)。背圧弁を設けることで、背圧弁よりも上流側において飲料の圧力を高め、殺菌機において飲料が沸騰してしまうことを防止している。
【0003】
飲料に背圧を掛けるために背圧弁の開度を絞ると、固形物が背圧弁を通過する際に、破壊されてしまう虞がある。固形物が背圧弁で破壊されずに通過させるために、背圧弁の開度を大きくすると、十分な背圧を掛けられなくなってしまう。
【0004】
このような問題を解決するために、殺菌機の下流に、殺菌機の流路の口径よりも小径であり、かつ固形物の粒子径よりも大径の長尺な管体によって背圧を付与する構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、固形物の粒子径に合わせて様々な口径の管体を用意しなければならない。また、長尺な管体を用いているため、設置スペースも広く取らなくてはならない。なお、このような問題は、固形物を含む飲料に限らず、殺菌機で被処理液を殺菌する場合について一般に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−262380号公報
【特許文献2】実公平5−38639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、省スペースであり、殺菌機での沸騰を防止するのに必要な背圧を掛けることができる背圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、固形物を含む被処理液を加熱殺菌する殺菌機の下流に設けられ、前記被処理液に背圧を付与する背圧制御装置であって、前記被処理液が流通し、可撓性を有する円筒状の流路部と、前記流路部の断面積が小さくなるように前記流路部の側面の一部を押圧するアクチュエーターと、を備え、前記流路部の前記被処理液の流れに垂直な断面形状は、前記アクチュエーターにより前記流路部が押圧された状態では、前記アクチュエーターに直接押圧された部分の両側に形成された前記アクチュエーターに直接押圧されていない部分であって前記固形物が流通する第1流路及び第2流路を有し、前記第1流路及び前記第2流路は、前記アクチュエーターに直接押圧された部分よりも広く開口していることを特徴とする背圧制御装置にある。
【0009】
第1の態様では、アクチュエーターを伸長させる量を制御することで、被処理液に適切な背圧を掛けることができる。また、従来のように、背圧を調整するために配管を長くする必要がないので省スペースとすることができる。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の背圧制御装置において、前記断面形状は、前記アクチュエーターにより前記流路部の内面同士が接触した部分の前記アクチュエーターが伸縮する方向とは直交する方向における幅が、前記第1流路及び前記第2流路の当該方向における幅よりも短いことを特徴とする背圧制御装置にある。
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の背圧制御装置において、前記アクチュエーターの前記流路部を押圧する押圧部は、前記流路部よりも幅が短いことを特徴とする背圧制御装置にある。
【0010】
本発明の第の態様は、第1から第3の何れか一つの態様に記載する背圧制御装置において、前記アクチュエーターの前記流路部に当接する押圧面は曲面状に形成されていることを特徴とする背圧制御装置にある。
【0011】
の態様では、流路部を滑らかに変形させることができるので被処理液を円滑に流通
させることができる。
【0012】
本発明の第の態様は、第1から第4の何れか一つの態様に記載する背圧制御装置において、少なくとも一対の前記アクチュエーターが前記流路部を挟むように前記流路部の側面を押圧することを特徴とする背圧制御装置にある。
【0013】
の態様では、流路部を両側から均等、対称に変形させることができるので、被処理
液の流通をより円滑にさせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、省スペースであり、殺菌機での沸騰を防止するのに必要な背圧を掛けることができる背圧制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】飲料を製造する設備の概略図である。
図2】背圧制御装置の正面図である。
図3】背圧制御装置の側面図である。
図4図2のA−A’線断面図である。
図5】アクチュエーターの正面図および側面図である。
図6】アクチュエーターが流路部を変形させたときのA−A’線断面図である。
図7図6のB−B’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0021】
図1は飲料を製造する設備の概略図である。図示するように、製造設備Iは、被処理液が貯留されたタンク1を備えている。本実施形態では、被処理液は、果肉などの固形物を含む飲料である。固形物や被処理液は、特に限定されないが、果実や野菜を由来とする繊維などの固形物を含む果実飲料などを被処理液として挙げることができる。
【0022】
タンク1内の被処理液は、ポンプ2により配管3に圧送される。配管3には、殺菌機4が接続されている。殺菌機4は、例えば、プレート式、多管式などの各種の熱交換器であるが、形式に特に限定はない。殺菌機4により殺菌された飲料は、配管3に設けられた背圧制御装置10を通過して、次工程の各種装置に送られる。
【0023】
図2から図5を用いて、背圧制御装置の構成について説明する。図2は背圧制御装置の正面図であり、図3は背圧制御装置の側面図であり、図4図2のA−A’線断面図であり、図5はアクチュエーターの正面図および側面図である。
【0024】
背圧制御装置10は、流路部20と、アクチュエーター30と、ケース40とを備えている。
【0025】
流路部20は、被処理液が流通し、可撓性を有する部材である。本実施形態では、流路部20は、円筒状に形成されたゴムからなり、その内周面の全体にはフッ素樹脂が形成されたものである。
【0026】
このような流路部20は、本実施形態ではケース40に納められている。ケース40はステンレス等から形成された円筒状の部材である。ケース40には、軸方向に沿った流路41が形成されている。流路41は、内側にケース40が収納できる程度の大きさとなっている。このような流路41の内側に流路部20が収納されている。
【0027】
配管3は、上流側配管3A(殺菌機4側の配管)と、下流側配管3B(殺菌機4から次工程側の配管)とを有しており、それぞれがフランジ部5でケース40に取り付けられている。上流側配管3Aは流路41の上流側の開口に連通した状態でケース40に固定されている。また、下流側配管3Bは、流路41の下流側の開口に連通した状態でケース40に固定されている。
【0028】
流路部20の両端の開口は、ケース40の流路41から突出して外側に折り曲げられている。この折り曲げられた部分は、上流側ではケース40及び上流側配管3Aで固定され、下流側ではケース40及び下流側配管3Bで固定されている。このようにして、ケース40に固定された流路部20は、上流側配管3A及び下流側配管3Bに連通し、被処理液が流通するようになっている。
【0029】
アクチュエーター30は、流路部20の側面を押圧することが可能な装置である。本実施形態のアクチュエーター30は、例えば、シリンダ(図示せず)と、そのシリンダの軸線方向に摺動可能となるように設けられたピストン31とを備えている。ピストン31の先端側には、流路部20の側面に当接して押圧する押圧部32が設けられている。押圧部32の形状は特に限定されないが、押圧部32の流路部20に当接する押圧面33は曲面となっていることが好ましい。詳細は後述するが、このような押圧面33とすることで、流路部20内における被処理液に急激な圧力変化が生じることを抑制することができる。
【0030】
ケース40の側面には、流路部20が露出する開口部42が二つ設けられている。アクチュエーター30は、これらの開口部42を通過して、流路部20の側面を押圧するように配置されている。
【0031】
本実施形態ではアクチュエーター30は一対設けられており、流路部20を挟んで対向配置されている。一対のアクチュエーター30は、伸縮する方向が同一方向に揃えられており、また、各ピストン31が伸縮する方向は、流路部20の側面に対してほぼ垂直な方向になっている。このような一対のアクチュエーター30を伸長させることで、押圧部32で流路部20の中心を挟み込むようにして流路部20を変形させることができる。
【0032】
また、アクチュエーター30は、図示しない制御装置によって伸長又は収縮することが可能となっており、伸長する量を適宜制御することで、流路部20の側面を任意の強さで押圧し、変形の程度を調整することが可能となっている。
【0033】
図6及び図7を用いて、アクチュエーター30による流路部20の断面積の変化を説明する。図6はアクチュエーター30が流路部20を変形させたときのA−A’線断面図であり、図7図6のB−B’線断面図である。
【0034】
これらの図に示すように、一対のアクチュエーター30は、流路部20を挟んで互いの荷重が掛かるまで伸長している。すなわち、流路部20の中心が押し潰されるまでアクチュエーター30が伸長している。アクチュエーター30の押圧部32は、流路部20の中心を押圧して変形させているので、図7に示す断面では略8の字状となり、流路部20が2つの第1流路21、第2流路22に分割されている。
【0035】
このように、アクチュエーター30が流路部20を押圧して変形させることで、断面積が元の状態(図5参照)よりも小さくなっている。これにより、流路部20を流通する被処理液に背圧を掛けることができる。さらに、アクチュエーター30により直接押圧されていない部分である第1流路21及び第2流路22に、被処理液中の固形物を流通させることができる。
【0036】
換言すれば、アクチュエーター30の伸長量を適宜設定することで、殺菌機4で加熱された被処理液が沸騰しない程度の背圧を掛けることができるとともに、固形物が流通するだけの径の第1流路21、第2流路22を形成することができる。
【0037】
このように本実施形態の背圧制御装置10によれば、アクチュエーター30を伸長させる量を制御することで、固形物を破壊せずに流通させ、かつ被処理液に適切な背圧を掛けることができる。従来のように、背圧を調整するために配管の長さを長くする必要がないので、本実施形態の背圧制御装置10は省スペースとすることができる。なお、被処理液には固形物が含まれている必要はない。このような固形物を含まない被処理液に対しても、背圧制御装置10は、省スペースであり、かつ被処理液を沸騰させない程度の背圧をかけることができる。
【0038】
一般に、殺菌機4は、最終的に被処理液を充填するボトルの容量に合わせて、流量を可変させて使用される。一方、被処理液に掛ける背圧の量は、流量に関わらず変化させない。このように、流量の変化に応じて圧力損失も変化してしまう。これに対して、従来技術では、背圧源となる配管を複数用意し、その都度流路を切り換えることで背圧を一定値に合わせていた。このように背圧を一定にするためには、非常に手間が掛かっていた。
【0039】
一方、本実施形態の背圧制御装置10によれば、流量の変化に対応して被処理液に掛ける背圧を所望の一定値にするためには、アクチュエーター30により流路部20の絞り量(断面積)を変化させるだけよい。
【0040】
本実施形態の背圧制御装置10は、アクチュエーター30の押圧面33が曲面状に形成されている。このような押圧面33により押圧された流路部20は、図6に示すように、流路方向に沿って滑らかに変形する。したがって、流路部20において固形物を引っ掛かりにくくすることができ、固形物を円滑に流通させることができる。
【0041】
また、被処理液が流路部20の押し潰された部分を通過した後は減圧されるが、上述したように流路部20が滑らかに変形しているので、緩やかに減圧される。このため、流路部20を通過した後で急激に減圧されることによって被処理液が沸騰してしまうことを抑制することができる。
【0042】
なお、アクチュエーター30の押圧面33は、上述したような曲面状である構成に限定されず、流路部20の側面を押圧できる構成であればよい。
【0043】
本実施形態の背圧制御装置10は、一対のアクチュエーター30が流路部20を挟むように、流路部20の側面を押圧する。このような構成により、図6図7に示すように、流路部20を両側から均等、対称に変形させることができる。そして、変形した流路部20の両側部分(図7の上側及び下側)を断面積が広い第1開口部21及び第2開口部22とすることができるので、固形物を流通させやすい。このように流路部20を変形させるので、被処理液の流通をより円滑にさせることができる。
【0044】
なお、流路部20は、このように均等、対称に変形させる必要はない。例えば、一つのアクチュエーター30により流路部20をケース40の内面へ押し付けるようにして変形させてもよい。
【0045】
本実施形態の背圧制御装置10は、アクチュエーター30が流路部20の内面の一部が接触するように流路部20の側面を押圧する。すなわち、一対のアクチュエーター30が流路部20を挟んで互いの荷重が掛かるまで伸長している。流路部20の内面同士が接触するまで流路部20を変形させることで、断面積をより小さくし、より高い背圧を掛けることが可能となっている。なお、流路部20は、このように内面同士が接触するまで変形させる必要はない。
【0046】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0047】
例えば、製造設備Iの構成は、図1に示したものに限定されない。本発明の背圧制御装置は殺菌機を備える任意の製造設備に適用することができる。
【0048】
また、背圧制御装置10はアクチュエーター30を一対備えていたが、このような態様に限定されない。アクチュエーター30は1本でもよいし3本以上であってもよい。また、一対のアクチュエーター30は伸縮する方向が同一方向に揃えられていたが、このような態様に限定されない。
【符号の説明】
【0049】
I…製造設備、4…殺菌機、10…背圧制御装置、20…流路部、30…アクチュエーター、33…押圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7