(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
観察者の左眼用の画像表示素子、該左眼用の画像表示素子の画像を観察者の左眼に導くための左眼用光学系、該観察者の右眼用の画像表示素子、該右眼用の画像表示素子の画像を観察者の右眼に導くための右眼用光学系、を有する画像表示装置であって、
一方の眼に導かれる観察像は、他方の眼に導かれる観察像の一部と同じ画角を表示した両眼領域と、該両眼領域とは異なる単眼領域と、を有し、
前記左眼用光学系の少なくとも1つの面において前記左眼に導かれる光線の領域である光線有効領域を前記左眼から見たときに前記左眼の視軸に対して左側よりも右側が小さく、
前記右眼用光学系の少なくとも1つの面において前記右眼に導かれる光線の領域である光線有効領域を前記右眼から見たときに前記右眼の視軸に対して右側よりも左側が小さく、
前記観察者が前記両眼領域と前記単眼領域との境界部または正面を観察した際に、該観察者の左眼の瞳に入射する前記境界部からの光束の一部が前記左眼用光学系に入射もしくは前記左眼用光学系から出射しないように、前記左眼用光学系の少なくとも1つの面の前記光線有効領域が、前記左眼用の画像表示素子から前記左眼に導かれる光束の光線有効領域よりも狭く、
前記観察者が前記境界部または正面を観察した際に、該観察者の右眼の瞳に入射する前記境界部からの光束の一部が前記右眼用光学系に入射もしくは前記右眼用光学系から出射しないように、前記右眼用光学系の少なくとも1つの面の前記光線有効領域が、前記右眼用の画像表示素子から前記右眼に導かれる光束の光線有効領域よりも狭い
ことを特徴とする画像表示装置。
前記左眼用光学系の中で、前記左眼用の画像表示素子から前記左眼に導かれる光束の光線有効領域よりも光線有効領域が狭い面と前記左眼との距離であるL1、前記左眼用の画像表示素子の画像が前記左眼用光学系で拡大された観察像と前記左眼との距離であるD1、がL1<D1×0.1を満たしており、
前記右眼用光学系の中で、前記右眼用の画像表示素子から前記右眼に導かれる光束の光線有効領域よりも光線有効領域が狭い面と前記右眼との距離であるL2、前記右眼用の画像表示素子の画像が前記右眼用光学系で拡大された観察像と前記右眼との距離であるD2、がL2<D2×0.1を満たしている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
無限遠を観察した際の右眼の視軸と一致するように前記右眼用光学系の射出瞳の中心に導かれる光線の前記右眼用の画像表示素子からの出射角度が前記右眼用の画像表示素子の法線とは異なり、
無限遠を観察した際の左眼の視軸と一致するように前記左眼用光学系の射出瞳の中心に導かれる光線の前記左眼用の画像表示素子からの出射角度が前記左眼用の画像表示素子の法線とは異なる
ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
前記左眼用光学系の少なくとも1つの反射面の反射率が前記左眼から見たときに左側よりも右側の方が小さく、前記右眼用光学系の少なくとも1つの反射面の反射率が前記右眼から見たときに右側よりも左側の方が小さいことを特徴とする請求項3又は4に記載の画像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態は、本発明を具体的に実施した場合の一例を示すもので、特許請求の範囲に記載した構成の具体的な実施例の1つである。
【0013】
[第1の実施形態]
先ず、本実施形態に係る画像表示装置について、該画像表示装置における表示画面(画像表示素子)及び光学系(接眼光学系)、そして該画像表示装置における該表示画面を観察する観察者の眼との関係について、
図1を用いて説明する。
【0014】
表示画面105は、観察者の右眼101に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面105に表示された画像からの光束は、光学系(右眼用光学系)103を介して右眼101に導かれる。これにより、表示画面105に表示されている画像は光学系103で拡大されて右眼101で観察されることになる。また、表示画面105及び光学系103のセットは、右眼101の入射瞳中心を中心に、右眼視軸107(正面を観察するときの右眼101の視軸)から図中時計回りに7.5度傾いている。また、表示画面105及び光学系103のセットにより右眼101に導かれる画像の画角は、右眼101の入射瞳中心を中心に右眼視軸107から時計回りに50度、反時計回りに35度である。以下では、表示画面105及び光学系103のセットを右眼用表示ユニットと呼称する。
【0015】
表示画面106は、観察者の左眼102に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面106に表示された画像からの光束は、光学系104(左眼用光学系)を介して左眼102に導かれる。これにより、表示画面106に表示されている画像は光学系104で拡大されて左眼102で観察されることになる。また、表示画面106及び光学系104のセットは、左眼102の入射瞳中心を中心に、左眼視軸108(正面を観察するときの左眼102の視軸であり、右眼視軸107と平行)から図中反時計回りに7.5度傾いている。また、表示画面106及び光学系104のセットにより左眼102に導かれる画像の画角は、左眼102の入射瞳中心を中心に左眼視軸108から時計回りに35度、反時計回りに50度である。以下では、表示画面106及び光学系104のセットを左眼用表示ユニットと呼称する。
【0016】
このような左眼用表示ユニット及び右眼用表示ユニットにより供給された画像を観察者が観察する場合、観察者の正面方向(右眼視軸107及び左眼視軸108と平行)から反時計回りに50度〜35度の範囲(単眼領域)は左眼102のみで観察することになる。また、観察者の正面方向から反時計回りに35度〜時計回りに35度の範囲(両眼領域)は右眼101及び左眼102の両眼で観察することになる。また、観察者の正面方向から時計回りに35度〜50度の範囲(単眼領域)は右眼101のみで観察することになる。その結果、観察者の視界(水平画角)は100度となる。
【0017】
このように左右の眼に対して異なる画角の観察像を表示させて、一部の画角のみ左右の眼で重なるようにすることで、左右の表示画面の大きさが同じときには、左右の眼に同じ画角の観察像を表示させる場合よりも広画角の画像が観察可能となる。つまり、一方の眼に導かれる観察像は、他方の眼に導かれる観察像の一部と同じ画角を表示した両眼領域と、該両眼領域とは異なる単眼領域と、を有する。
【0018】
本実施形態では、右眼101で観察する観察画像の中で両眼領域が画角70°、右眼領域が画角15°であるので、以下の式(1)より、両眼領域の観察画像の面積に対する右眼領域の観察画像の面積の割合Rは約35%となる。
【0019】
R=(tan(50°)−tan(35°))/(2×tan(35°))
=0.35 … (式1)
この割合Rは45%以下であることが望ましく、割合Rが45%より大きいと両眼領域と単眼領域との境界部が観察画像の中央付近にくるため、境界部が目立ちやすくなる。また、割合Rが45%より大きいと、両眼領域の割合が少ないため、立体視できる領域が狭く、自然な立体観察ができない。また、この割合Rは5%以上が望ましく、割合Rが5%より小さい場合には単眼領域が狭くなり、広画角化の効果が小さい。以上の割合Rに係る説明は左眼の観察画像についても同様である。
【0020】
そこで本実施形態では
図1に示す如く、光学系103において観察者の鼻N側は切り欠いている。仮に、光学系103の代わりにこの切り欠きがない光学系103’を用いると、
図2に示す如く、「観察者が正面を観察した際に観察者の右眼101に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束198」が光学系103’に入射してしまう。そこで本実施形態では、
図1に示す如く、観察者の鼻N側を切り欠いている光学系103を用いることで、光束198が光学系103に入射しないようにしている。つまり、光学系における光線有効範囲(光線有効領域)(光学系において観察者の瞳に導かれる光線が通過する範囲)に着目した場合、光学系103’の光線有効範囲において右眼視軸107より左側の範囲を狭めたものが光学系103である。
【0021】
同様に本実施形態では
図1に示す如く、光学系104において観察者の鼻N側は切り欠いている。仮に、光学系104の代わりにこの切り欠きがない光学系104’を用いると、
図2に示す如く、「観察者が正面を観察した際に観察者の左眼102に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束199」が光学系104’に入射してしまう。そこで本実施形態では、
図1に示す如く、観察者の鼻N側を切り欠いている光学系104を用いることで、光束199が光学系104に入射しないようにしている。つまり、光学系における光線有効範囲に着目した場合、光学系104’の光線有効範囲において左眼視軸108より右側の範囲を狭めたものが光学系104である。
【0022】
ここで、
図2の構成において表示画面105に表示される画像及び表示画面106に表示される画像をそれぞれ右眼101及び左眼102で観察した観察者が観察したと知覚する1枚の画像について、
図3(a)、(b)を用いて説明する。
【0023】
画像1501は表示画面106に表示された画像、画像1502は表示画面105に表示された画像である。画像1501が光学系104’を介して観察者の左眼102に提示され、画像1502が光学系103’を介して観察者の右眼101に提示されると、観察者は1枚の画像1590を観察したものと知覚する。画像1501の左端は画像1590の左端に対応しており、画像1501の右端は境界1505bに対応している。また、画像1502の左端は境界1505aに対応しており、画像1502の右端は画像1590の右端に対応している。そして、画像1590の左端と境界1505aとの間の領域である左眼領域は、左眼102のみで観察可能な画像部分であり、画像1590の右端と境界1505bとの間の領域である右眼領域は、右眼101のみで観察可能な部分画像である。また、境界1505aと境界1505bとの間の領域である両眼領域は、右眼101及び左眼102の両眼で観察可能な部分画像である。
【0024】
このような1枚の画像1590を観察したと観察者が知覚した場合、
図3(b)に示す如く、画像1590の左端から境界1505aに向けて徐々に暗くなっており、且つ画像1590の右端から境界1505bに向けて徐々に暗くなっている。これは、左眼領域及び右眼領域において、片眼には画像が表示されるが、もう片方の眼には画像が表示されず、その結果、パネルの枠などの黒部が見えてしまうことに起因している。その結果、片方の目において急激な輝度差を観察することで左右の眼の視野闘争により生じてしまう。
【0025】
そこで本実施形態では、右眼及び左眼のそれぞれについて、観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束(上記の光束198、199)が光学系に入射しないようにする。これにより、境界部に対応する光束が光学系に入射せず、境界部付近の光束は光学系でケラレるため、境界部が
図3(b)のように観察されることを防ぐことができる。その際、本実施形態のように観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する光束のすべてが光学系に入射しないようにしてもよいし、一部が入射しないようにしてもよい。望ましくは、正面観察時に単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が入射する割合が観察者の瞳径の半分以下であると、境界部がより目立ちにくくなる。
【0026】
本実施形態では、表示画面と光学系との間に遮光部材を配置するのではなく、光学系の光線有効範囲を狭くすることで、単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が光学系に入射しないようにしている。表示画面と光学系との間に遮光部材を配置する場合、観察者がピントを合わせている表示画面上の位置に遮光部材が近いため、遮光部材のエッジが観察されてしまい、黒スジ対策の効果が少なくなってしまう。しかし、本実施形態のように光学系で境界部からの光束が入射しないようにすることで、光学系のエッジが大きくボケて観察され、より自然な画像観察が可能になる。また、遮光部材が不要になり、部品点数削減および軽量化が可能となる。
【0027】
また本実施形態では観察画像の位置は観察者の眼から1.4mになるように光学系で拡大しており、光学系の中で光線有効範囲が狭くなっている面と眼との間隔は20mmであり、観察画像の位置の0.1倍より近い。そのため、光学系の中で光線有効範囲が狭い面と観察画像との距離は充分に離れており、光学系のエッジのボケが大きく境界部は目立ちにくくなる。より望ましくは、上記間隔は観察像の位置の0.03倍よりも近いことが望ましい。
【0028】
つまり、左眼用光学系の中で、左眼用の画像表示素子から左眼に導かれる光束の光線有効領域よりも光線有効領域が狭い面と左眼との距離をL1、左眼用の画像表示素子の画像が左眼用光学系で拡大された観察像と左眼との距離をD1、とする。このとき、L1<D1×0.1を満たしている。また、右眼用光学系の中で、右眼用の画像表示素子から右眼に導かれる光束の光線有効領域よりも光線有効領域が狭い面と右眼との距離をL2、右眼用の画像表示素子の画像が右眼用光学系で拡大された観察像と右眼との距離をD2、とする。このとき、L2<D2×0.1を満たしている。
【0029】
また、
図1から分かるように、光学系103及び光学系104において鼻N側の切り欠き部は、レンズを切断した形状となっており、光学系103と光学系104とは異なっている。これは、境界部付近の光束を光学系でケって黒スジが観察されないようにするだけでなく、光学系の小型・軽量化につなげるとともに、左右の光学系が内側で干渉することを回避するためである。さらに、内側の光学系を小さくできるので、観察者の鼻Nにぶつかりにくい画像表示装置とすることができ、快適な観察が可能となる。
【0030】
本実施形態の光学系は球面形状の単レンズで構成されているが、これに限るものではなく、非球面形状を用いたり、複数のレンズを用いることでより高い光学性能のレンズとしても良い。また、本実施形態に係る表示画面は自発光の有機ELを用いているが、これに限るものではなく、透過型液晶、反射型液晶、DMDなどを表示画面として用いても良い。その場合、別途光源と照明光学系が必要となる。
【0031】
[第2の実施形態]
先ず、本実施形態に係る画像表示装置について、該画像表示装置における表示画面及び光学系、そして該画像表示装置における該表示画面を観察する観察者の眼との関係について、
図4を用いて説明する。
【0032】
表示画面205は、観察者の右眼201に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面205に表示された画像からの光束は、光学系203を介して右眼201に導かれる。これにより表示画面205に表示されている画像は光学系203で拡大されて右眼201で観察されることになる。また、表示画面205の中心は右眼視軸207(正面を観察するときの右眼201の視軸)を含む垂直断面に対して右側に規定量シフトした位置にある。また、表示画面205及び光学系203のセットにより右眼201に導かれる画像の画角は、右眼201の入射瞳中心を中心に右眼視軸207から時計回りに40度、反時計回りに30度である。以下では、表示画面205及び光学系203のセットを右眼用表示ユニットと呼称する。
【0033】
表示画面206は、観察者の左眼202に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面206に表示された画像からの光束は、光学系204を介して左眼202に導かれる。これにより表示画面206に表示されている画像は光学系204で拡大されて左眼202で観察されることになる。また、表示画面206の中心は左眼視軸208(正面を観察するときの左眼202の視軸であり、右眼視軸207と平行)を含む垂直断面に対して左側に規定量シフトした位置にある。また、表示画面206及び光学系204のセットにより左眼202に導かれる画像の画角は、左眼202の入射瞳中心を中心に左眼視軸208から時計回りに30度、反時計回りに40度である。以下では、表示画面206及び光学系204のセットを左眼用表示ユニットと呼称する。
【0034】
このような左眼用表示ユニット及び右眼用表示ユニットにより供給された画像を観察者が観察する場合、観察者の正面方向(右眼視軸207及び左眼視軸208と平行)から反時計回りに40度〜30度の範囲(単眼領域)は左眼202のみで観察することになる。また、観察者の正面方向から反時計回りに30度〜時計回りに30度の範囲(両眼領域)は右眼201及び左眼202の両眼で観察することになる。また、観察者の正面方向から時計回りに30度〜40度の範囲(単眼領域)は右眼201のみで観察することになる。その結果、観察者の視界(水平画角)は80度となる。
【0035】
このように左右の眼に対して異なる画角の観察像を表示させて、一部の画角のみ左右の眼で重なるようにすることで、左右の表示画面の大きさが同じときには、左右の眼に同じ画角の観察像を表示させる場合よりも広画角の画像が観察可能となる。
【0036】
本実施形態では、右眼201で観察する観察画像の中で両眼領域が画角60°、右眼領域が画角10°であるので、以下の式(2)より、両眼領域の観察画像の面積に対する右眼領域の観察画像の面積の割合Rは約23%となる。
【0037】
R=(tan(40°)−tan(30°))/(2×tan(30°))
=0.23 … (式2)
上記の通り、この割合Rは45%以下且つ5%以上が望ましい。そこで本実施形態でも第1の実施形態と同様、
図4に示す如く、光学系203において観察者の鼻N側は切り欠いており、光束198が光学系203に入射しないようにしている。また、
図4に示す如く、光学系204において観察者の鼻N側は切り欠いており、光束199が光学系204に入射しないようにしている。
【0038】
このように本実施形態では、右眼及び左眼のそれぞれについて、観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が光学系に入射しないようにする。これにより、境界部に対応する光束が光学系に入射せず、境界部付近の光束は光学系でケラレるため、境界部が
図3(b)のように観察されることを防ぐことができる。その際、本実施形態のように観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する光束のすべてが光学系に入射しないようにしてもよいし、一部が入射しないようにしてもよい。望ましくは、正面観察時に単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が入射する割合が観察者の瞳径の半分以下であると、境界部がより目立ちにくくなる。
【0039】
また、本実施形態では、観察画像の位置は観察者の眼から1mになるように光学系で拡大しており、光学系の中で光線有効範囲が狭くなっている面と眼との間隔は25mmであり、観察画像の位置の0.1倍より近い。そのため、光学系の中で光線有効範囲が狭い面と観察画像との距離は充分に離れており、光学系のエッジのボケが大きく境界部は目立ちにくくなる。
【0040】
また本実施形態に係る光学系203と光学系204の観察者側の面は同じ曲率半径の球面形状であり、光学系203と光学系204の表示画面側の面も同じ曲率半径の球面形状である。そのため、光学系203のすべての光学面が、それぞれの光学面と同じ位置関係にある光学系204の光学面と光学的パワーが同じである。
【0041】
また、光学系203の光軸は右眼視軸207と一致しており、すべての光学面の形状は、右眼視軸207を含む垂直断面に対して対称な形状で表現されている。同様に、光学系204の光軸も左眼視軸208と一致しており、すべての光学面の形状は、左眼視軸208を含む垂直断面に対して対称な形状で表現されている。
【0042】
そのため、右眼201と左眼202で同じ画角を観察した場合、その画角の光線が通過する光学系の面の形状は左右の光学系で同じであり、光学系で発生する収差の出方も左右で同じである。そのため、解像力や歪の形の左右での差がほとんどなく、両眼で融像しやすい画像となる。
【0043】
本実施形態の画像表示装置で左右に視差のある画像を観察する場合には、同じ画角を観察した際に光線が通過する光学系の面の形状は左右の光学系でまったく同じではない。しかし、
図2の画像表示装置に比べると左右での面の形状の差は小さいため、解像力や歪の形の左右での差が小さく両眼で融像しやすい画像となる。
【0044】
[第3の実施形態]
先ず、本実施形態に係る画像表示装置について、該画像表示装置における表示画面及び光学系、そして該画像表示装置における該表示画面を観察する観察者の眼との関係について、
図5を用いて説明する。
【0045】
表示画面305は、観察者の右眼301に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面305に表示された画像からの光束は、光学系303を介して右眼301に導かれる。これにより表示画面305に表示されている画像は光学系303で拡大されて右眼301で観察されることになる。また、表示画面305の中心は右眼視軸307(観察者が正面の無限遠を見た際の右眼301の視軸)を含む垂直断面に対して右側に規定量シフトした位置にある。また、表示画面305及び光学系303のセットにより右眼301に導かれる画像の画角は、右眼301の入射瞳中心を中心に右眼視軸307から時計回りに40度、反時計回りに25度である。以下では、表示画面305及び光学系303のセットを右眼用表示ユニットと呼称する。
【0046】
表示画面306は、観察者の左眼302に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面306に表示された画像からの光束は、光学系304を介して左眼302に導かれる。これにより表示画面306に表示されている画像は光学系304で拡大されて左眼302で観察されることになる。また、表示画面306の中心は左眼視軸308(観察者が正面の無限遠を見た際の左眼302の視軸であり、右眼視軸307と平行)を含む垂直断面に対して左側に規定量シフトした位置にある。また、表示画面306及び光学系304のセットにより左眼302に導かれる画像の画角は、左眼302の入射瞳中心を中心に左眼視軸308から時計回りに25度、反時計回りに40度である。以下では、表示画面306及び光学系304のセットを左眼用表示ユニットと呼称する。
【0047】
このような左眼用表示ユニット及び右眼用表示ユニットにより供給された画像を観察者が観察する場合、観察者の正面方向(右眼視軸307及び左眼視軸308と平行)から反時計回りに40度〜25度の範囲(単眼領域)は左眼302のみで観察することになる。また、観察者の正面方向から反時計回りに25度〜時計回りに25度の範囲(両眼領域)は右眼301及び左眼302の両眼で観察することになる。また、観察者の正面方向から時計回りに25度〜40度の範囲(単眼領域)は右眼301のみで観察することになる。その結果、観察者の視界(水平画角)は80度となる。
【0048】
このように左右の眼に対して異なる画角の観察像を表示させて、一部の画角のみ左右の眼で重なるようにすることで、左右の表示画面の大きさが同じときには、左右の眼に同じ画角の観察像を表示させる場合よりも広画角の画像が観察可能となる。
【0049】
本実施形態では、右眼301で観察する観察画像の中で両眼領域が画角50°、右眼領域が画角15°であるので、以下の式(4)より、両眼領域の観察画像の面積に対する右眼領域の観察画像の面積の割合Rは約40%となる。
【0050】
R=(tan(40°)−tan(25°))/(2×tan(25°))
=0.40 … (式3)
上記の通り、この割合Rは45%以下且つ5%以上が望ましい。そこで本実施形態でも第1の実施形態と同様、
図5に示す如く、光学系303において観察者の鼻N側は切り欠いている。これにより、「観察者が正面を観察した際に観察者の右眼301に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束398」が光学系303に入射しないようにしている。また、
図5に示す如く、光学系304において観察者の鼻N側は切り欠いている。これにより、「観察者が正面を観察した際に観察者の左眼302に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束399」が光学系304に入射しないようにしている。このような光学系の構成により、観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束が観察者の眼に入射しないようにしている。
【0051】
ここで、本実施形態に係る光学系303は、
図6に示す如く、表示画面305からの光束を該光学系303内の偏心反射曲面で反射させて該光束の光路を該光学系303内で折りたたむことで該光束を観察者の右眼301に導くように構成されている。
図6では、表示画面305からの光束は光学系303内で2回反射してから右眼301に導かれている。なお、光学系303内の眼球への出射面は反射と透過の作用を持つ面であるため、反射は光量のロスをなくすために内部全反射であることが望ましい。光学系304についても同様に、表示画面306からの光束を該光学系304内の偏心反射曲面で反射させて該光束の光路を該光学系304内で折りたたむことで該光束を観察者の左眼302に導くように構成されている。なお、光学系304内の眼球への出射面は反射作用と透過作用を持つ面であるため、反射は光量のロスをなくすために内部全反射であることが望ましい。
【0052】
このような光学系の構成により、光学系の厚さを薄型化している。なお、光学系303及び光学系304は、屈折率が1より大きいガラスやプラスチック等の光学媒質で満たされた透明体により構成される。
【0053】
本実施形態に係る光学系303と光学系304の観察者側の面は同じ関数で表現された自由曲面形状であり、表示画面側の面と反射面も同様に光学系303と光学系304とで同じ関数で表現された自由曲面形状である。そのため、光学系303のすべての光学面が、それぞれの光学面と同じ位置関係にある光学系304の光学面と光学的パワーが同じである。
【0054】
また、光学系303のすべての光学面の形状は、右眼視軸307を含む垂直断面に対して対称な形状で表現されている。同様に、光学系304のすべての光学面の形状は、左眼視軸308を含む垂直断面に対して対称な形状で表現されている。
【0055】
そのため、右眼301と左眼302で同じ画角を観察した場合、その画角の光線が通過する光学系の面の形状は左右の光学系で同じであるため、光学系で発生する収差の出方も左右で同じである。その結果、解像力や歪の形の左右での差がほとんどなく、両眼で融像しやすい画像となる。また、光学系303と光学系304を構成する面を自由曲面形状とすることで、偏心収差補正の自由度が増し、良好な画質での画像表示が可能となる。
【0056】
図6に示す如く、本実施形態では、右眼視軸307と一致するように光学系303の射出瞳の中心に導かれる光束の表示画面305からの光束の出射角度は10°であり、表示画面305の法線の方向とは異なる。これは光学系304についても同様である。このようにすることで、設計の自由度が向上し、より光学性能の高い光学系を実現することが可能となる。
【0057】
このように本実施形態では、右眼及び左眼のそれぞれについて、観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が観察者の眼に入射しないようにしている。これにより、境界部に対応する光束が光学系から出射せず、境界部付近の光束は光学系でケラレるため、境界部が
図3(b)のように観察されることを防ぐことができる。その際、本実施形態のように観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する光束のすべてが光学系から出射しないようにしてもよいし、一部が出射しないようにしてもよい。望ましくは、正面観察時に単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が入射する割合が観察者の瞳径の半分以下であると、境界部がより目立ちにくくなる。
【0058】
また、本実施形態では、観察画像の位置は観察者の眼から1.4mになるように光学系で拡大しており、光学系の中で光線有効範囲が狭くなっている面と眼との間隔は18mmであり、観察画像の位置の0.1倍より近い。そのため、光学系の中で光線有効範囲が狭い面と観察画像との距離は充分に離れており、光学系のエッジのボケが大きく境界部は目立ちにくくなる。
【0059】
また、
図5から分かるように、本実施形態の光学系303の切り欠き部と光学系304の切り欠き部は何れも、プリズムを切断した形状となっており、光学系303と光学系304は異なっている。これは、光線の有効範囲以外の光学系をなくすことで、光学系の小型・軽量化につなげるとともに、左右の光学系が内側で干渉することを回避するためである。さらに、内側の光学系を小さくできるので、観察者の鼻にぶつかりにくい画像表示装置とすることができ、快適な観察が可能となる。
【0060】
ここで、光学系の表示画面側の面の光線有効範囲は表示画面の大きさと同等であり、この面の光線有効範囲を光学系303の光線有効範囲と光学系304の光線有効範囲を含む範囲としても光学系の大きさには影響しない。そのため、光学系303と光学系304の表示画面側の面の光線有効範囲は等しくしても良い。そのようにすることで、左右の光学系で形状も光線有効範囲も等しい面ができ、加工及び製作を容易にすることができる。
【0061】
また、光学系303と光学系304の反射面は、
図7(a)のように反射膜の反射率が等しくなるように蒸着されている。この反射膜を、
図7(b)の光学系311と光学系312のように単眼領域と両眼領域の境界部からの光束が反射する部分の反射率を下げるようにグラデーションをかけた反射膜とすることで、
図8のように光学系の面形状自体は光線有効範囲よりも狭くしなくてもよい。このようにすることで、単眼領域と両眼領域の境界部からの光束が反射面で反射されにくくなるため、境界部が目立ちにくくなる。
【0062】
このとき、光学系の中で光線有効範囲が狭くなっている面は反射膜が形成されている面になり、その面と眼との間隔は40mmである。そのときも観察画像の位置の0.1倍より近い。そのため、光学系の中で光線有効範囲が狭い面と観察画像との距離は充分に離れており、光学系のエッジのボケが大きく境界部は目立ちにくくなる。
【0063】
[第4の実施形態]
先ず、本実施形態に係る画像表示装置について、該画像表示装置における表示画面及び光学系、そして該画像表示装置における該表示画面を観察する観察者の眼との関係について、
図9を用いて説明する。
【0064】
表示画面405は、観察者の右眼401に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面405に表示された画像からの光束は、光学系403を介して右眼401に導かれる。これにより表示画面405に表示されている画像は光学系403で拡大されて右眼401で観察されることになる。また、表示画面405の中心は右眼視軸407(観察者が正面の無限遠を見た際の右眼401の視軸)を含む垂直断面に対して右側に規定量シフトした位置にある。また、表示画面405及び光学系403のセットにより右眼401に導かれる画像の画角は、右眼401の入射瞳中心を中心に右眼視軸407から時計回りに45度、反時計回りに30度である。以下では、表示画面405及び光学系403のセットを右眼用表示ユニットと呼称する。
【0065】
表示画面406は、観察者の左眼402に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面406に表示された画像からの光束は、光学系404を介して左眼402に導かれる。これにより表示画面406に表示されている画像は光学系404で拡大されて左眼402で観察されることになる。また、表示画面406の中心は左眼視軸408(観察者が正面の無限遠を見た際の左眼402の視軸であり、右眼視軸407と平行)を含む垂直断面に対して左側に規定量シフトした位置にある。また、表示画面406及び光学系404のセットにより左眼402に導かれる画像の画角は、左眼402の入射瞳中心を中心に左眼視軸408から時計回りに30度、反時計回りに45度である。以下では、表示画面406及び光学系404のセットを左眼用表示ユニットと呼称する。
【0066】
このような左眼用表示ユニット及び右眼用表示ユニットにより供給された画像を観察者が観察する場合、観察者の正面方向(右眼視軸407及び左眼視軸408と平行)から反時計回りに45度〜30度の範囲(単眼領域)は左眼402のみで観察することになる。また、観察者の正面方向から反時計回りに30度〜時計回りに30度の範囲(両眼領域)は右眼401及び左眼402の両眼で観察することになる。また、観察者の正面方向から時計回りに30度〜45度の範囲(単眼領域)は右眼401のみで観察することになる。その結果、観察者の視界(水平画角)は90度となる。
【0067】
このように左右の眼に対して異なる画角の観察像を表示させて、一部の画角のみ左右の眼で重なるようにすることで、左右の表示画面の大きさが同じときには、左右の眼に同じ画角の観察像を表示させる場合よりも広画角の画像が観察可能となる。
【0068】
本実施形態では、右眼401で観察する観察画像の中で両眼領域が画角60°、右眼領域が画角15°であるので、以下の式(4)より、両眼領域の観察画像の面積に対する右眼領域の観察画像の面積の割合Rは約37%となる。
【0069】
R=(tan(45°)−tan(30°))/(2×tan(30°))
=0.37 … (式4)
この割合Rは45%以下且つ10%以上が望ましく、その理由は、割合Rが45%以下且つ5%以上が望ましい理由と同じである。そこで本実施形態でも第1の実施形態と同様、
図9に示す如く、光学系403において観察者の鼻N側は切り欠いている。これにより、「観察者が正面を観察した際に観察者の右眼401に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束498」が光学系403に入射しないようにしている。また、
図9に示す如く、光学系404において観察者の鼻N側は切り欠いている。これにより、「観察者が正面を観察した際に観察者の左眼402に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束499」が光学系404に入射しないようにしている。このような光学系の構成により、観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束が観察者の眼に入射しないようにしている。
【0070】
ここで、本実施形態に係る光学系403は、
図10に示す如く、表示画面405からの光束を該光学系403内の偏心反射曲面で反射させて該光束の光路を該光学系403内で折りたたむことで該光束を観察者の右眼401に導くように構成されている。
図10(a)では、表示画面405からの光束は光学系403内の偏心反射曲面で4回反射してから右眼401に導かれている。なお、光学系403内の眼球への出射面は反射と透過の作用を持つ面であるため、反射は光量のロスをなくすために内部全反射であることが望ましい。光学系404についても同様に、表示画面406からの光束を該光学系404内の偏心反射曲面で反射させて該光束の光路を該光学系404内で折りたたむことで該光束を観察者の左眼402に導くように構成されている。なお、光学系404内の眼球への出射面は反射作用と透過作用を持つ面であるため、反射は光量のロスをなくすために内部全反射であることが望ましい。
【0071】
このような光学系の構成により、光学系の厚さを薄型化している。なお、光学系403及び光学系404は、屈折率が1より大きいガラスやプラスチック等の光学媒質で満たされた透明体により構成される。
【0072】
図10(a)から分かる通り、光学系403(光学系404)は、光学系の内部で中間結像面を有している。中間結像面を有する光学系とすることで、焦点距離を短くすることができ、表示画角を大きくすることができる。
【0073】
本実施形態に係る光学系403と光学系404の観察者側の面は同じ関数で表現された自由曲面形状であり、表示画面側の面と反射面も同様に光学系403と光学系404とで同じ関数で表現された自由曲面形状である。そのため、光学系403のすべての光学面が、それぞれの光学面と同じ位置関係にある光学系404の光学面と光学的パワーが同じである。
【0074】
また、光学系403のすべての光学面の形状は、右眼視軸407を含む垂直断面に対して対称な形状で表現されている。同様に、光学系404のすべての光学面の形状は、左眼視軸408を含む垂直断面に対して対称な形状で表現されている。そのため、右眼401と左眼402で同じ画角を観察した場合、その画角の光線が通過する光学系の面の形状は左右の光学系で同じであるため、光学系で発生する収差の出方も左右で同じである。その結果、解像力や歪の形の左右での差がほとんどなく、両眼で融像しやすい画像となる。また、光学系403と光学系404を構成する面を自由曲面形状とすることで、偏心収差補正の自由度が増し、良好な画質での画像表示が可能となる。
【0075】
図10(a)のように、本実施形態では、右眼視軸407と一致するように光学系403の射出瞳の中心に導かれる光束の表示画面405からの出射角度は15°であり、表示画面405の法線の方向とは異なる。これは、光学系404についても同様である。このようにすることで、設計の自由度が向上し、より光学性能の高い光学系を実現することが可能となる。
【0076】
本実施形態では、
図9に示す如く、光学系403の4回目の反射面と出射面の光線有効範囲を、表示画面405から右眼401に導かれる光束の光線有効範囲よりも狭くしている。そしてこれにより、観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束が観察者の眼に入射しないようにしている。同様に、光学系404の4回目の反射面と出射面の光線有効範囲を、表示画面406から左眼402に導かれる光束の光線有効範囲よりも狭くし、観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束が観察者の眼に入射しないようにしている。
【0077】
このように本実施形態では、右眼及び左眼のそれぞれについて、観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が光学系から出射しないようにする。これにより、境界部付近の光束は光学系でケラレるため、境界部が
図3(b)のように観察されることを防ぐことができる。その際、本実施形態のように観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する光束のすべてが光学系から射出しないようにしてもよいし、一部が射出しないようにしてもよい。望ましくは、正面観察時に単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が入射する割合が観察者の瞳径の半分以下であると、境界部がより目立ちにくくなる。
【0078】
また、本実施形態では、観察画像の位置は観察者の眼から1.4mになるように光学系で拡大しており、光学系の中で光線有効範囲が狭くなっている面と眼との間隔は15mmであり、観察画像の位置の0.1倍より近い。そのため、光学系の中で光線有効範囲が狭い面と観察画像との距離は充分に離れており、光学系のエッジのボケが大きく境界部は目立ちにくくなる。
【0079】
また、
図9から分かるように、本実施形態の光学系403の切り欠き部と光学系404の切り欠き部は何れも、プリズムを切断した形状となっており、光学系403と光学系404は異なっている。これは、光線の有効範囲以外の光学系をなくすことで、光学系の小型・軽量化につなげるとともに、左右の光学系が内側で干渉することを回避するためである。さらに、内側の光学系を小さくできるので、観察者の鼻にぶつかりにくい画像表示装置とすることができ、快適な観察が可能となる。
【0080】
ここで、光学系の表示画面側の面の光線有効範囲は表示画面の大きさと同等であり、この面の光線有効範囲を光学系403の光線有効範囲と光学系404の光線有効範囲を含む範囲としても光学系の大きさには影響しない。そのため、光学系403と光学系404の表示画面側の面の光線有効範囲は等しくしても良い。そのようにすることで、左右の光学系で形状も光線有効範囲も等しい面ができ、加工及び製作を容易にすることができる。
【0081】
また、
図10(b)から分かるように、表示画面405からの光束が光学系403に入射して1回目に反射する面と、2回目に反射する面は光学系403の瞳結像面に近い。そのため、この2つの面の光線有効範囲を狭くすると、単眼領域と両眼領域の境界部からの光束以外の光束もケラレてしまうことから、この2つの面の光線有効範囲は狭くしないことが望ましい。
【0082】
[第5の実施形態]
先ず、本実施形態に係る画像表示装置について、該画像表示装置における表示画面及び光学系、そして該画像表示装置における該表示画面を観察する観察者の眼との関係について、
図11を用いて説明する。
【0083】
表示画面505は、観察者の右眼501に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面505に表示された画像からの光束は、光学系503を介して右眼501に導かれる。これにより表示画面505に表示されている画像は光学系503で拡大されて右眼501で観察されることになる。また、表示画面505の中心は右眼視軸507(観察者が正面の無限遠を見た際の右眼501の視軸)を含む垂直断面に対して左側に規定量シフトした位置にある。また、表示画面505及び光学系503のセットにより右眼501に導かれる画像の画角は、右眼501の入射瞳中心を中心に右眼視軸507から時計回りに32度、反時計回りに36度である。以下では、表示画面505及び光学系503のセットを右眼用表示ユニットと呼称する。
【0084】
表示画面506は、観察者の左眼502に提示するために生成された画像を表示するための画面で、表示画面506に表示された画像からの光束は、光学系504を介して左眼502に導かれる。これにより表示画面506に表示されている画像は光学系504で拡大されて左眼502で観察されることになる。また、表示画面506の中心は左眼視軸508(観察者が正面の無限遠を見た際の左眼502の視軸であり、右眼視軸507と平行)を含む垂直断面に対して右側に規定量シフトした位置にある。また、表示画面506及び光学系504のセットにより左眼502に導かれる画像の画角は、左眼502の入射瞳中心を中心に左眼視軸508から時計回りに36度、反時計回りに32度である。以下では、表示画面506及び光学系504のセットを左眼用表示ユニットと呼称する。
【0085】
このような左眼用表示ユニット及び右眼用表示ユニットにより供給された画像を観察者が観察する場合、観察者の正面方向(右眼視軸507及び左眼視軸508と平行)から反時計回りに36度〜32度の範囲(単眼領域)は左眼502のみで観察することになる。また、観察者の正面方向から反時計回りに32度〜時計回りに32度の範囲(両眼領域)は右眼501及び左眼502の両眼で観察することになる。また、観察者の正面方向から時計回りに36度〜32度の範囲(単眼領域)は右眼501のみで観察することになる。その結果、観察者の視界(水平画角)は72度となる。
【0086】
このように左右の眼に対して異なる画角の観察像を表示させて、一部の画角のみ左右の眼で重なるようにすることで、左右の表示画面の大きさが同じときには、左右の眼に同じ画角の観察像を表示させる場合よりも広画角の画像が観察可能となる。
【0087】
本実施形態では、第1〜4の実施形態とは異なり、観察者の耳側ではなく鼻側に単眼領域を設けて画角を広げている。第1〜4の実施形態では、右眼用の光学系の右側の表示画角が左眼用の光学系の右側の表示画角よりも大きく、左眼用の光学系の左側の表示画角が右眼用の光学系の左側の表示画角よりも大きい。そのため、右眼の観察画像と左眼の観察画像とが100%重なることがない。
【0088】
しかし、本実施形態では右眼用の光学系の右側の表示画角が左眼用の光学系の右側の表示画角よりも小さく、左眼用の光学系の左側の表示画角が右眼用の光学系の左側の表示画角よりも小さい。そのため、ある距離において左眼で観察した画像と右眼で観察した画像とが100%重なり、右眼と左眼の間隔を63mmとすると、本実施形態の表示画角の場合、約0.6mの距離において左眼で観察した画像と右眼で観察した画像とが100%重なる。そのため、観察距離が0.6m付近の近い距離のときには第1〜4の実施形態に比べて両眼領域と単眼領域との境界部が目立ちにくい。
【0089】
本実施形態では、右眼501で観察する観察画像の中で両眼領域が画角64°、右眼領域が画角4°であるので、以下の式(5)より、両眼領域の観察画像の面積に対する右眼領域の観察画像の面積の割合Rは約8%となる。
【0090】
R=(tan(36°)−tan(32°))/(2×tan(32°))
=0.08 … (式5)
上記の通り、この割合Rは45%以下且つ5%以上が望ましい。そこで本実施形態でも第1の実施形態と同様、光学系503において観察者の鼻N側は切り欠いている。これにより、「観察者が正面を観察した際に観察者の右眼501に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束」が光学系503に入射しないようにしている。また、
図5に示す如く、光学系504において観察者の鼻N側は切り欠いている。これにより、「観察者が正面を観察した際に観察者の左眼502に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束」が光学系504に入射しないようにしている。このような光学系の構成により、観察者が正面を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部からの光束が観察者の眼に入射しないようにしている。
【0091】
ここで、本実施形態に係る光学系503は、
図12に示す如く、表示画面505からの光束を該光学系503内の偏心反射曲面で反射させて該光束の光路を該光学系503内で折りたたむことで該光束を観察者の右眼501に導くように構成されている。
図12では、表示画面505からの光束は光学系503内の偏心反射曲面で2回反射してから右眼501に導かれている。なお、光学系503内の眼球への出射面は反射と透過の作用を持つ面であるため、反射は光量のロスをなくすために内部全反射であることが望ましい。光学系504についても同様に、表示画面506からの光束を該光学系504内の偏心反射曲面で反射させて該光束の光路を該光学系504内で折りたたむことで該光束を観察者の左眼502に導くように構成されている。なお、光学系504内の眼球への出射面は反射作用と透過作用を持つ面であるため、反射は光量のロスをなくすために内部全反射であることが望ましい。
【0092】
このような光学系の構成により、光学系の厚さを薄型化している。なお、光学系503及び光学系504は、屈折率が1より大きいガラスやプラスチック等の光学媒質で満たされた透明体により構成される。
【0093】
本実施形態に係る光学系503と光学系504の観察者側の面は同じ関数で表現された自由曲面形状であり、表示画面側の面と反射面も同様に光学系503と光学系504とで同じ関数で表現された自由曲面形状である。そのため、光学系503のすべての光学面が、それぞれの光学面と同じ位置関係にある光学系504の光学面と光学的パワーが同じである。
【0094】
また、光学系503のすべての光学面の形状は、右眼視軸507を含む垂直断面に対して対称な形状で表現されている。同様に、光学系504のすべての光学面の形状は、左眼視軸508を含む垂直断面に対して対称な形状で表現されている。そのため、右眼501と左眼502で同じ画角を観察した場合、その画角の光線が通過する光学系の面の形状は左右の光学系で同じであるため、光学系で発生する収差の出方も左右で同じである。その結果、解像力や歪の形の左右での差がほとんどなく、両眼で融像しやすい画像となる。また、光学系503と光学系504を構成する面を自由曲面形状とすることで、偏心収差補正の自由度が増し、良好な画質での画像表示が可能となる。
【0095】
図12のように、本実施形態では、右眼視軸507と一致するように光学系503の射出瞳の中心に導かれる光束の表示画面505からの出射角度は8°であり、表示画面505の法線の方向とは異なる。これは、光学系504についても同様である。このようにすることで、設計の自由度が向上し、より光学性能の高い光学系を実現することが可能となる。
【0096】
本実施形態では、
図11に示す如く、光学系503において右眼視軸507よりも左側を、表示画面505から右眼501に導かれる光束の光線有効範囲において右眼視軸507よりも左側の範囲よりも狭くしている。そのため、
図13(a)に示す如く、観察者が光学系503の左側36°の方向を観察した際には、光束は観察者の眼に入射しない。また、
図13(b)に示す如く、観察者が両眼領域と単眼領域との境界部である左側32°の方向を観察した際には、光束の約40%が観察者の眼に入射する。これは、左眼502についても同様である。
【0097】
このように本実施形態では、観察者が両眼領域と単眼領域との境界部を観察した際に観察者の瞳に入射する単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が光学系でケラレるため、境界部が
図3(b)のように観察されることを防ぐことができる。その際、本実施形態のように観察者が境界部を観察した際に観察者の瞳に入射する光束の40%が光学系から出射しないようにしてもよいし、全部が出射しないようにしてもよい。望ましくは、境界部の観察時に単眼領域と両眼領域の境界部に対応する光束が入射する割合が観察者の瞳径の半分以下であると、境界部がより目立ちにくくなる。
【0098】
また、本実施形態では、観察画像の位置は観察者の眼から1.4mになるように光学系で拡大しており、光学系の中で光線有効範囲が狭くなっている面と眼との間隔は18mmであり、観察画像の位置の0.1倍より近い。そのため、光学系の中で光線有効範囲が狭い面と観察画像との距離は充分に離れており、光学系のエッジのボケが大きく境界部は目立ちにくくなる。
【0099】
また、
図14から分かるように、本実施形態の光学系503の切り欠き部と光学系504の切り欠き部は何れも、プリズムを切断した形状となっており、光学系503と光学系504は異なっている。これは、光線の有効範囲以外の光学系をなくすことで、光学系の小型・軽量化につなげるとともに、左右の光学系が内側で干渉することを回避するためである。さらに、内側の光学系を小さくできるので、観察者の鼻にぶつかりにくい画像表示装置とすることができ、快適な観察が可能となる。
【0100】
ここで、光学系の表示画面側の面の光線有効範囲は表示画面の大きさと同等であり、この面の光線有効範囲を光学系503の光線有効範囲と光学系504の光線有効範囲を含む範囲としても光学系の大きさには影響しない。そのため、光学系503と光学系504の表示画面側の面の光線有効範囲は等しくしても良い。そのようにすることで、左右の光学系で形状も光線有効範囲も等しい面ができ、加工及び製作を容易にすることができる。
【0101】
本実施形態の画像表示装置で左右に視差のある画像を観察する場合には、同じ画角を観察した際に光線が通過する光学系の面の形状は左右の光学系でまったく同じではない。しかし、左右での面の形状の差は小さいため、解像力や歪の形の左右での差が小さく両眼で融像しやすい画像となる。
【0102】
ここで、一方の眼に導かれる観察像の単眼領域の面積をA、両眼領域の面積をBとすると、0.05≦A/B≦0.45を満たす。なお、以上説明した各実施形態の一部若しくは全部を適宜組み合わせても構わないし、以上説明した各実施形態の一部若しくは全部を選択的に使用しても構わない。
【0103】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。