(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガスタービンエンジンで発電される電力によって駆動する電気モータで回転することによって推力を得るためのプロペラと、前記ガスタービンエンジンで発電された余剰電力を蓄電するバッテリとを備えた航空機の制御システムであって、
前記航空機の飛行中において、前記バッテリに蓄電された電力量に基づいて、前記ガスタービンエンジンを動作状態及び停止状態との間で切換え、かつ少なくとも前記ガスタービンエンジンが停止状態に切換えられている間は前記電気モータを回転させるための電力を、前記ガスタービンエンジンで発電される電力から前記バッテリから供給される電力に切換えるように構成され、
更に、前記航空機の位置に基づいて着陸目的となり得る最寄りの空港を特定し、前記最寄りの空港へのアプローチ開始から着陸までの期間において前記バッテリから供給される電力のみで前記電気モータを回転させられるようにするために必要な電力量が前記アプローチ開始前に前記バッテリに蓄電されるように、前記バッテリに蓄電されている電力量に基づいて前記ガスタービンエンジンを停止状態から動作状態に切換えるように構成される航空機の制御システム。
前記バッテリに蓄電された電力量が、前記必要な電力量又は前記必要な電力量にマージンを加えた電力量まで減少した場合には、前記ガスタービンエンジンを停止状態から動作状態に切換えるように構成される請求項1記載の航空機の制御システム。
ガスタービンエンジンで発電される電力によって駆動する電気モータで回転することによって推力を得るためのプロペラと、前記ガスタービンエンジンで発電された余剰電力を蓄電するバッテリとを備えた航空機の制御方法であって、
前記航空機の飛行中において、前記バッテリに蓄電された電力量に基づいて、前記ガスタービンエンジンを動作状態及び停止状態との間で切換え、かつ少なくとも前記ガスタービンエンジンが停止状態に切換えられている間は前記電気モータを回転させるための電力を、前記ガスタービンエンジンで発電される電力から前記バッテリから供給される電力に切換え、
更に、前記航空機の位置に基づいて着陸目的となり得る最寄りの空港を特定し、前記最寄りの空港へのアプローチ開始から着陸までの期間において前記バッテリから供給される電力のみで前記電気モータを回転させられるようにするために必要な電力量が前記アプローチ開始前に前記バッテリに蓄電されるように、前記バッテリに蓄電されている電力量に基づいて前記ガスタービンエンジンを停止状態から動作状態に切換える航空機の制御方法。
ガスタービンエンジンで発電される電力によって駆動する電気モータで回転することによって推力を得るためのプロペラと、前記ガスタービンエンジンで発電された余剰電力を蓄電するバッテリとを備えた航空機の制御プログラムであって、
前記航空機の制御回路に、
前記航空機の飛行中において、前記バッテリに蓄電された電力量に基づいて、前記ガスタービンエンジンを動作状態及び停止状態との間で切換え、かつ少なくとも前記ガスタービンエンジンが停止状態に切換えられている間は前記電気モータを回転させるための電力を、前記ガスタービンエンジンで発電される電力から前記バッテリから供給される電力に切換えるステップ及び
前記航空機の位置に基づいて着陸目的となり得る最寄りの空港を特定し、前記最寄りの空港へのアプローチ開始から着陸までの期間において前記バッテリから供給される電力のみで前記電気モータを回転させられるようにするために必要な電力量が前記アプローチ開始前に前記バッテリに蓄電されるように、前記バッテリに蓄電されている電力量に基づいて前記ガスタービンエンジンを停止状態から動作状態に切換えるステップ
を実行させる航空機の制御プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る航空機の制御システム、航空機の制御方法、航空機の制御プログラム及び航空機について添付図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る制御システムを搭載した航空機の構成を示す正面図であり、
図2は
図1に示す航空機の上面図である。
【0017】
制御システム1は、プロペラ2で推力を得る航空機3に搭載される。尚、
図1は、航空機3が、機体先端に単一のプロペラ2を取付けた固定翼機3Aである場合の例を示しているが、航空機3が2つ以上のプロペラ2を取付けた固定翼機3Aであっても良い。複数のプロペラ2が固定翼機3Aに取付けられる場合には、主翼にプロペラ2が取付けられる場合が多い。また、航空機3は、有人機であっても良いし、無人機であっても良い。
【0018】
航空機3は、制御システム1及びプロペラ2の他、電気モータ4、発電機5、ガスタービンエンジン6、燃料タンク7及びバッテリ8を有する。電気モータ4は、プロペラ2を回転させるための動力装置である。すなわち、プロペラ2は、電気モータ4の駆動によって回転する。発電機5は、電力を生成し、生成した電力を電気モータ4に供給するための動力源である。ガスタービンエンジン6は、発電機5を作動させることによって電力を生成するための動力装置である。燃料タンク7は、ガスタービンエンジン6を駆動するための航空燃料を貯留し、ガスタービンエンジン6に航空燃料を供給するタンクである。
【0019】
バッテリ8には、ガスタービンエンジン6の駆動によって発電機5において発電された電力のうち、電気モータ4によって消費されなかった余剰電力を蓄電することができる。バッテリ8に蓄電された電力も電気モータ4の駆動のために使用することができる。
【0020】
つまり、航空機3は、主にガスタービンエンジン6で駆動する発電機5によって発電される電力によって電気モータ4を駆動させ、電気モータ4によって回転するプロペラ2によって推力を得るように構成される。また、発電機5において発電された余剰電力をバッテリ8に蓄電し、電気モータ4を駆動するための電力として利用することができる。
【0021】
制御システム1は、発電機5から電気モータ4に出力される電力と、バッテリ8から電気モータ4に出力される電力を調整する出力調整装置(PCU:Power Control Unit)である。具体的には制御システム1は、ガスタービンエンジン6の燃費が良好となるように、発電機5及びバッテリ8の双方から電気モータ4に電力を供給するのか、或いは、発電機5及びバッテリ8のいずれから電気モータ4に電力を供給するのかといった電力の供給経路を制御する機能を有している。
【0022】
図3は
図1に示すガスタービンエンジン6の燃費特性を示すグラフである。
【0023】
図3に示すグラフにおいて、縦軸はガスタービンエンジン6の燃費を示し、横軸はガスタービンエンジン6の出力を示す。
図1に示すようにガスタービンエンジン6の燃費は、出力が最大に近いほど向上する。従って、航空機3の離陸から着陸までの間において、ガスタービンエンジン6の出力ができるだけ常に最大出力となる条件でガスタービンエンジン6を使用すれば、ガスタービンエンジン6の燃費を向上させることができる。
【0024】
そこで、制御システム1を、ガスタービンエンジン6を動作状態及び停止状態との間で切換え、ガスタービンエンジン6の作動時には、ガスタービンエンジン6の出力制御値を最大値とする制御を行うように構成することができる。これにより、ガスタービンエンジン6の燃費を最適化することができる。すなわち、ガスタービンエンジン6のエネルギ効率を良好とし、燃料消費量を最小限とすることができる。
【0025】
プロペラ2を回転させるための電気モータ4をガスタービンエンジン6で駆動させる典型的な航空機3では、電気モータ4における消費電力が航空機3の離陸時において一時的に大きくなるが、航空機3の離陸後には航空機3の離陸時における消費電力の60%から70%程度となる。従って、適切な出力レンジを有するガスタービンエンジン6を、出力制御値を最大値として使用すると、電気モータ4における消費電力として消費されない余剰電力が生じる。余剰電力は、バッテリ8に蓄電し、電気モータ4用の電力として利用することができる。
【0026】
ガスタービンエンジン6によって駆動する発電機5において発電される電力のみによって、航空機3の離陸時における電気モータ4の最大消費電力を賄えるようにすることもできる。すなわち、ガスタービンエンジン6の最大出力を電気モータ4の最大消費電力以上とすることもできる。この場合、航空機3の離陸後においてバッテリ8に蓄電される余剰電力量を大きくすることができる。しかしながら、ガスタービンエンジン6の最大出力が大きくなる程、ガスタービンエンジン6が大型になり航空機3の重量増加に繋がる。
【0027】
そこで、航空機3の離陸時、具体的には、航空機3が離陸するために電気モータ4における消費電力が最大値付近となっている間には、電気モータ4を回転させるための電力を、ガスタービンエンジン6で発電される電力及びバッテリ8から供給される電力の双方とすることができる。これにより、ガスタービンエンジン6の最大出力を、電気モータ4における最大消費電力よりも小さくし、ガスタービンエンジン6のサイズを小型にすることができる。
【0028】
逆に、航空機3の離陸が完了し、電気モータ4における消費電力が低下した後は、ガスタービンエンジン6によって駆動する発電機5又はバッテリ8のみから電気モータ4に電力を供給することができる。つまり、ガスタービンエンジン6の出力制御値を最大値として動作させる一方、バッテリ8に蓄電された電力も電気モータ4用の電力として利用するためには、ガスタービンエンジン6を間欠的に動作させ、ガスタービンエンジン6の停止期間中にバッテリ8に蓄電された電力を電気モータ4に出力する制御が必要となる。
【0029】
そこで、電気モータ4への電力の供給経路の制御モードとして、航空機3を離陸させるための離陸モード、航空機3の離陸後においてガスタービンエンジン6によって発電した電力のみを供給して電気モータ4を駆動させる発電モード及び航空機3の離陸後においてバッテリ8に蓄電された電力のみを供給して電気モータ4を駆動させる放電モードを設定し、制御システム1において各制御モードを切換える制御を行うようにすることができる。
【0030】
図4は
図1に示す制御システム1の離陸モードにおけるエネルギの供給経路を示す図である。
【0031】
航空機3の離陸時に選択される離陸モードの場合には、
図4に示すように発電機5及びバッテリ8の双方から制御システム1を通じて電気モータ4に電力が供給される。従って、燃料タンク7から航空燃料がガスタービンエンジン6に供給され、ガスタービンエンジン6が駆動する。ガスタービンエンジン6が駆動すると、ガスタービンエンジン6のエネルギが発電機5に伝達され、発電機5において発電が行われる。そして、発電機5において生成された電力が制御システム1を通じて電気モータ4に供給される。
【0032】
一方、バッテリ8は航空機3の離陸前に予め充電され、航空機3の離陸時にはバッテリ8に蓄電された電力も制御システム1を通じて電気モータ4に供給される。これにより、ガスタービンエンジン6で発電することが可能な電力を超える大きな電力を一時的に電気モータ4に供給することができる。
【0033】
図5は
図1に示す制御システム1の発電モードにおけるエネルギの供給経路を示す図である。
【0034】
航空機3の離陸後に選択される発電モードの場合には、
図5に示すように発電機5のみから制御システム1を通じて電気モータ4に電力が供給される。従って、燃料タンク7から航空燃料がガスタービンエンジン6に供給され、ガスタービンエンジン6の駆動によって発電機5において発電が行われる。そして、発電機5において生成された電力が制御システム1を通じて電気モータ4に供給される。
【0035】
航空機3の離陸後には、電気モータ4における消費電力が、航空機3の離陸時における最大消費電力の60%から70%程度まで低下する。従って、発電機5において生成された電力の全てが電気モータ4で消費されず、余剰電力が生じる。発電機5において生成された余剰電力は制御システム1を通じてバッテリ8に蓄電される。
【0036】
尚、航空機3の離陸後において発電機5において余剰電力を発生させるためには、ガスタービンエンジン6の駆動によって発電可能な最大電力を、電気モータ4に供給すべき電力よりも大きくすることが必要である。上述したように、航空機3の離陸時における電気モータ4の消費電力は、航空機3の離陸時における最大消費電力の60%から70%程度である。
【0037】
従って、ガスタービンエンジン6で発電可能な最大電力を、航空機の離陸時における電気モータ4の最大消費電力の70%以上又は航空機の離陸後のクルーズ状態における電気モータ4の最大消費電力以上とすれば、発電モードにおいて安定的かつ継続的に余剰電力を生成し、生成した余剰電力をバッテリ8に蓄電することが可能となる。
【0038】
また、上述したようにガスタービンエンジン6で発電可能な最大電力を過大に設定すると、ガスタービンエンジン6の大型化を招いてしまうことから、ガスタービンエンジン6で発電可能な最大電力を、航空機の離陸時における電気モータ4の最大消費電力の80%以下とすることがガスタービンエンジン6の出力性能上における好ましい条件となる。
【0039】
図6は
図1に示す制御システム1の放電モードにおけるエネルギの供給経路を示す図である。
【0040】
航空機3の離陸後に選択される放電モードの場合には、
図6に示すようにバッテリ8のみから制御システム1を通じて電気モータ4に電力が供給される。従って、ガスタービンエンジン6及び発電機5はいずれも停止状態となり、航空燃料の消費も行われない。
【0041】
制御モードの切換は、制御システム1において自動的に行うことができる。例えば、離陸モードから発電モード又は放電モードへの切換は、航空機3に通常備えられる高度計によって検出される高度をトリガとして自動的に行うことができる。具体的には、航空機3の高度が閾値以上又は閾値よりも大きくなった場合に離陸が完了したとみなして離陸モードから発電モード又は放電モードに自動的に切換えることができる。
【0042】
或いは、電気モータ4における消費電力の減少をトリガとして自動的に行うようにしても良い。その場合には、電流計やトルクセンサ等のセンサを電気モータ4又はプロペラ2の回転軸等に取付け、電気モータ4における消費電力が閾値以下又は閾値未満となった場合に離陸モードから発電モード又は放電モードに自動的に切換えることができる。
【0043】
一方、発電モードと放電モードとの間における切換は、バッテリ8に蓄電されている電力量の増減をトリガとして自動的に行うことができる。具体的には、バッテリ8に蓄電されている電力量が閾値以上又は閾値を超えた場合には制御モードを発電モードから放電モードに切換える一方、バッテリ8に蓄電されている電力量が閾値以下又は閾値未満となった場合には制御モードを放電モードから発電モードに切換えることができる。
【0044】
制御モードが発電モードから放電モードに切換えられる場合には、制御システム1によって、ガスタービンエンジン6が動作状態から停止状態に切換えられ、かつバッテリ8が発電機5から切離されて電気モータ4と接続されることになる。逆に、制御モードが放電モードから発電モードに切換えられる場合には、制御システム1によって、ガスタービンエンジン6が停止状態から動作状態に切換えられ、かつバッテリ8が電気モータ4から切離されて発電機5と接続されることになる。
【0045】
つまり、航空機3の飛行中、特に航空機3の高度が所定の高度に達した後には、制御システム1において、バッテリ8に蓄電された電力量に基づいて、ガスタービンエンジン6を動作状態及び停止状態との間で切換え、かつ少なくともガスタービンエンジン6が停止状態に切換えられている間は電気モータ4を回転させるための電力を、ガスタービンエンジン6で発電される電力からバッテリ8から供給される電力に切換える制御が実行されることになる。
【0046】
図7は
図1に示す制御システム1の回路構成例を示す図である。
【0047】
制御システム1は、電気回路で構成することができる。具体例として、制御システム1は、コンバータ10、分配回路11、複数のインバータ12、複数のスイッチ回路13及び制御回路14で構成することができる。
【0048】
コンバータ10の入力側は発電機5の電流出力側と接続され、コンバータ10の出力側は分配回路11の入力側と接続される。このため、発電機5から出力された交流電流は、コンバータ10において直流電流に変換され、分配回路11に出力される。
【0049】
分配回路11の入力側はコンバータ10の出力側及びバッテリ8の出力側と接続され、分配回路11の出力側にはバッテリ8の入力側が接続される他、複数のインバータ12の入力側が並列接続される。分配回路11は、制御回路14による制御下において、直流電流の入力先をコンバータ10及びバッテリ8から選択する一方、直流電流の出力先としてインバータ12以外にバッテリ8を含めるか否かを決定するスイッチ回路として機能する。
【0050】
インバータ12の各入力側は分配回路11の出力側と接続され、インバータ12の各出力側は電気モータ4と接続される。このため、分配回路11から出力された直流電流は、インバータ12において所定の周波数を有する交流電流に変換され、電気モータ4に出力される。
【0051】
インバータ12から電気モータ4に出力される交流電流の周波数は、制御回路14によって制御することができる。インバータ12から電気モータ4に出力される交流電流の周波数の制御によって、電気モータ4の出力を可変制御することができる。従って、インバータ12は、電気モータ4の交流電源として機能する。
【0052】
制御回路14は、制御システム1による制御対象となる各機器及び制御システム1を構成する各回路にそれぞれ制御信号を出力することによって統括制御する機能を有している。制御回路14は、航空機3の制御プログラムを演算装置にインストールすることによって構築することができる。演算装置にインストールされる航空機3の制御プログラムは、情報記録媒体に記録してプログラムプロダクトとして航空機3のユーザに提供することもできる。
【0053】
航空機3の制御プログラムには、航空機3の飛行中、特に航空機3の高度が所定の高度に達した後には、バッテリ8に蓄電された電力量に基づいて、ガスタービンエンジン6を動作状態及び停止状態との間で切換え、かつ少なくともガスタービンエンジン6が停止状態に切換えられている間は電気モータ4を回転させるための電力を、ガスタービンエンジン6の駆動によって発電機5で発電される電力から、バッテリ8から供給される電力に切換える制御を航空機3の制御回路14に実行させるプログラムが含まれている。
【0054】
従って、制御回路14には、バッテリ8に蓄電された電力量をバッテリ8に取付けられたセンサから取得する機能と、バッテリ8に蓄電された電力量に基づいてガスタービンエンジン6の作動スイッチに制御信号を出力することによってガスタービンエンジン6の動作状態をオン状態とオフ状態の間で切換える機能も備えられる。
【0055】
また、航空機3の制御プログラムには、航空機3の離陸時にはガスタービンエンジン6の駆動によって発電機5で発電される電力及びバッテリ8に充電されている電力の双方が電気モータ4に供給される一方、航空機3の離陸が完了して航空機3の高度が所定の高度に達し、電気モータ4における消費電力が低下した後は、発電機5で発電される電力及びバッテリ8に充電されている電力のいずれか一方のみが電気モータ4に供給されるように制御モードを自動的に切換えるプログラムも含めることができる。
【0056】
従って、制御回路14には、航空機3に備えられる高度計から高度を取得する機能と、高度計から取得した高度に基づいてガスタービンエンジン6の作動スイッチに制御信号を出力することによってガスタービンエンジン6の動作状態をオン状態とオフ状態の間で切換える機能も備えることもできる。或いは、高度の代わりに、電気モータ4又は回転翼2に取付けられたセンサから電気モータ4の消費電力又は出力を制御回路14が取得するようにしてもよい。
【0057】
更に、制御回路14には、バッテリ8に蓄電された電力量や高度又は電気モータ4の消費電力等の制御モードの切換条件を検出した場合には、分配回路11に制御信号を出力することによって、制御モードを切換える機能が備えられる。すなわち、電気モータ4への電力の供給元が、発電機5とバッテリ8の双方、発電機5のみ或いはバッテリ8のみとなるように制御回路14から分配回路11に制御信号が出力される。これにより、制御モードの自動切換が可能となる。
【0058】
より具体的には、制御回路14による制御によって分配回路11の入力側としてコンバータ10及びバッテリ8の双方が選択されており、分配回路11の出力側としてインバータ12のみが選択されていれば、ガスタービンエンジン6を動作させて発電機5において生成した電流と、バッテリ8から出力される電流の双方が分配回路11及びインバータ12を介して電気モータ4に出力されることになる。つまり、航空機3を離陸モードで制御することができる。
【0059】
一方、制御回路14による制御によって分配回路11の入力側としてコンバータ10のみが選択されており、分配回路11の出力側としてインバータ12及びバッテリ8が選択されていれば、ガスタービンエンジン6を動作させて発電機5において生成した電流が分配回路11においてバッテリ8及びインバータ12に接続された電気モータ4に分配されることになる。つまり、バッテリ8の充電を伴う発電モードで航空機3を制御することができる。
【0060】
また、制御回路14による制御によって分配回路11の入力側としてバッテリ8のみが選択されており、分配回路11の出力側としてインバータ12のみが選択されていれば、バッテリ8に充電された電流が分配回路11及びインバータ12を介して電気モータ4に出力されることになる。つまり、ガスタービンエンジン6を停止させ、航空機3を放電モードで制御することができる。
【0061】
尚、航空機3の飛行中において航空機3のフライトプランが変更される場合もあることから、制御モードを手動で切換えられるようにすることが望ましい。そこで、入力装置15から制御モードの切換指示情報が入力された場合には、制御回路14が制御モードを切換えるように構成することができる。また、制御モードを自動的に切換える自動切換モードと、制御モードを手動で切換える手動切換モードとを、入力装置15の操作によって選択できるようにすることもできる。
【0062】
航空機3が有人機である場合には入力装置15はパイロットの操縦席に配置される。一方、航空機3が無人機であり、操縦者によって遠隔操作される場合には、入力装置15は操縦が在席する遠隔地に配置される。また、航空機3が自律型の無人機である場合には、入力装置15は無人機に搭載されるフライトコンピュータとなる。
【0063】
制御回路14では、上述した制御モードの切換の他、インバータ12から出力される交流電流の周波数の制御、すなわち電気モータ4の出力制御を行うことができる。電気モータ4の出力制御は、予め定められたアルゴリズムに従って自動的に行っても良いし、パイロット又は遠隔操縦を行う操縦者が手動で行うようにしても良い。電気モータ4の出力制御を手動で行う場合には、操縦桿やコントローラ等の入力装置15の操作によって、電気モータ4の出力制御情報を制御回路14に入力することができる。
【0064】
また、制御システム1を搭載した航空機3には、冗長性を付与することが航空機3の安全性及び信頼性を向上する観点から好ましい。すなわち、航空機3には、エネルギ効率の向上のみならず、重要なシステムの冗長化による安全性及び信頼性の向上が要求される。
【0065】
尚、ここで定義する冗長性の必要範囲は、ある装置が故障しても、予備の装置によって緊急着陸に必要な飛行状態の継続が可能であるなど、飛行安全を保つことが可能である性質であり、目的地の変更などを伴わない目的を達するための飛行継続をするための冗長ではない。
【0066】
小型航空機の事故のうち約3割は動力系の故障による事故であることが知られている。従って、航空機3のプロペラ2に動力を与える電気モータ4、インバータ12及びバッテリ8を含む各機器に冗長性を付与することが事故の低減に寄与する。尚、ガスタービンエンジン6及び発電機5はバッテリ8を代替として使用することが可能であるため、ガスタービンエンジン6及び発電機5に冗長性を付与しなくても飛行安全の確保は可能となる。従って、例えば、電気モータ4、インバータ12及びバッテリ8の少なくとも1つを必要数以上搭載することによって冗長化を行うことができる。
【0067】
バッテリ8及び電気モータ4については、1つのプロペラ2につき最低1つ必要である。このため、1つのプロペラ2につきバッテリ8及び電気モータ4の少なくとも一方を複数個設けることによって冗長性を付与することができる。また、電気モータ4の電源となるインバータ12については、少なくとも電気モータ4の数だけ必要である。このため、電気モータ4の数よりも多い数のインバータ12を設けることによって冗長性を付与することができる。
【0068】
図7は、電気モータ4、インバータ12及びバッテリ8にそれぞれ冗長性を付与した一例を示している。すなわち、電気モータ4、インバータ12及びバッテリ8の全てが、必要数より多く設けられている。
【0069】
図7に示す例では、プロペラ2にトルクを付与するためのギアボックス16に4つの電気モータ4が接続されている。このため、例えば、一時的に出力最大値を増加させることが可能な緊急出力モードを有する電気モータ4を使用すれば、電気モータ4の何れかが故障した場合であっても、緊急出力モードを使用することにより、特に離陸時にける冗長性を確保することができる。
【0070】
すなわち、電気モータ4の消費電力が最大となるのは航空機3の離陸時のみであることから、航空機3の離陸時に電気モータ4の1つが故障した場合には、残りの電気モータ4を一時的に緊急出力モードで使用することによって、プロペラ2に必要なトルクを付与することができる。この場合、航空機3の離陸後には電気モータ4の消費電力が低下するため、正常な電気モータ4を通常出力モードに戻して使用しても、プロペラ2に必要なトルクを付与し続けることができる。
【0071】
また、
図7に示す例では、4つの電気モータ4に対して5つのインバータ12がスイッチ回路13を介して接続されている。具体的には、4つの電気モータ4にそれぞれ電力を供給するための4つのインバータ12Aに加えて、予備のインバータ12Bがスイッチ回路13を介して接続されている。予備のインバータ12Bは、予備でない4つのインバータ12Aのいずれかが故障した場合に、故障したインバータ12Aに接続されている電気モータ4に対して電力を供給するために使用される代替インバータである。
【0072】
従って、予備のインバータ12Bは、スイッチ回路13の切換によって4つの電気モータ4のいずれとも接続可能となっている。換言すれば、1つの電気モータ4がスイッチ回路13の切換によって2つのインバータ12のいずれかと接続可能となっている。そして、予備でない4つのインバータ12Aが故障せずに稼働している間は、スイッチ回路13によって4つの電気モータ4がそれぞれ対応する予備でないインバータ12Aと接続される。一方、予備でない4つのインバータ12Aのいずれかが故障した場合には、スイッチ回路13が動作し、電気モータ4に電力を供給するインバータ12が、故障した予備でないインバータ12Aから予備のインバータ12Bに切換えられる。
【0073】
これにより、4つのインバータ12Aのいずれかが故障しても、電気モータ4への電力供給を継続することができる。インバータ12Aに取付けられた電流計等のセンサからの検出信号に基づいてインバータ12Aの故障を検知し、インバータ12Aの故障が検知された場合に対応するスイッチ回路13を動作させる制御についても制御回路14において行うことができる。
【0074】
バッテリ8については、分配回路11に2つ接続することによって、一方のバッテリ8が故障した場合であっても、他方のバッテリ8を使用できるようにすることができる。すなわち、必要な容量を有する単一のバッテリを使用せずに、複数のバッテリ8を並列接続することによって容量を確保することが冗長性を付与する観点から望ましい。尚、冗長性を考慮したバッテリ8の容量として、エマージェンシー対応のための一時的な飛行に必要な容量を確保するのか、或いは、継続して飛行を続けるために必要な容量を確保するのかという点については、機体設計コンセプトによって任意に決定することができる。
【0075】
(動作及び作用)
次に制御システム1による航空機3の制御方法について説明する。
【0076】
図8は
図1に示す制御システム1による電気モータ4への電力供給の切換制御の流れの一例を示すフローチャート、
図9は
図8に示す電気モータ4への電力供給の切換制御を伴うフライトプランに沿って航空機3を飛行させた場合における動力系の出力変化の一例を示すグラフ、
図10は
図9に示すフライトプランに対応する空港の位置関係を示す図である。
【0077】
尚、
図9において横軸は時間(分)を示し、縦軸は、電気モータ4の最大出力に対する割合として表した相対出力(%)、バッテリ8の最大蓄電容量に対する割合として表した相対蓄電力量(%)及び電気モータ4の最大出力に対する割合として表した発電機5の相対出力(%)を示す。
【0078】
航空機3が
図10に示すように出発空港Aから目的空港Bに向かって所要時間が180分のフライトを行う場合には、
図9に示すようなフライトプランで電力供給に関する制御モードの切換を実行することができる。尚、典型的な小型航空機のフライト時間は概ね120分から240分程度である。
【0079】
まず、
図8のフローチャートに示すステップS1において、離陸モードにて航空機3が出発空港Aを離陸する。
【0080】
具体的には、制御システム1の制御回路14からガスタービンエンジン6に制御信号が出力され、ガスタービンエンジン6が動作状態に切換えられる。また、制御回路14から分配回路11に制御信号が出力され、発電機5に接続されたコンバータ10及び予め充電されたバッテリ8の双方が分配回路11の入力元として選択される一方、各電気モータ4にそれぞれ電力を供給するための各インバータ12のみが分配回路11の出力先として選択される。
【0081】
このため、ガスタービンエンジン6が駆動し、発電機5において発電が行われる。そして、発電機5によって生成された電力がコンバータ10、分配回路11及びインバータ12を通じて電気モータ4に出力される。他方、バッテリ8に予め蓄電された電力も、分配回路11及びインバータ12を通じて電気モータ4に出力される。
【0082】
すなわち、発電機5及びバッテリ8の双方から電力が電気モータ4に供給される。これにより、電気モータ4は、航空機3の離陸に必要な最大出力でプロペラ2を回転させ、航空機3の離陸に必要な揚力及び推力を得ることができる。
【0083】
また、航空機3の離陸時においてバッテリ8に蓄電された電力を併用することによって、ガスタービンエンジン6の最大出力を、電気モータ4を最大出力で駆動するために必要な出力よりも小さい出力とすることができる。その結果、ガスタービンエンジン6の小型化が可能となる。
【0084】
図9に示す例では、ガスタービンエンジン6の最大出力が、電気モータ4の最大出力の80%となっている。そして、航空機3の離陸時には、ガスタービンエンジン6が最大出力で駆動することによって、最適なエネルギ効率で発電された電力が電気モータ4に供給される。加えて、蓄電力量が100%となるように充電されたバッテリ8から電力が電気モータ4に供給される。このため、航空機3の離陸期間中においてバッテリ8に蓄電された電力量は徐々に減少する。
【0085】
次に、ステップS2において、制御回路14において航空機3の離陸が完了し、高度が所定の高度に達したか否かが判定される。航空機3の離陸が完了したか否かは、例えば、航空機3の高度変化を高度計でモニタリングすることによって自動判定することができる。具体的には、航空機3の高度が閾値以上又は閾値を超えたことを検出することによって、航空機3の離陸完了を自動判定することができる。
【0086】
航空機3の離陸が完了したと判定された場合には、航空機3の制御モードが、ガスタービンエンジン6の駆動のみによって電気モータ4に電力を供給する発電モード及びバッテリ8から出力される電力のみを電気モータ4に供給する放電モードのいずれかに切換えられる。制御モードを発電モードとするか放電モードとするかの判定は、バッテリ8に蓄電された電力量に基づいて自動的に行うことができる。
【0087】
例えば、バッテリ8に十分な電力量が蓄電されている場合であれば、放電モードに切換えることが望ましい。逆に、バッテリ8の蓄電力量が減少し、充電が可能であれば、発電モードに切換えてバッテリ8を充電することが好ましい。一般に、航空機3の離陸直後には、
図9に例示されるようにバッテリ8の蓄電力量が減少している。
【0088】
そこで、航空機3の離陸が完了したと判定された場合には、ステップS3に示すように、航空機3の制御モードを発電モードに切換えるように制御アルゴリズムを決定することができる。
【0089】
航空機3の制御モードを発電モードに切換える場合には、制御回路14から分配回路11に制御信号が出力され、発電機5に接続されたコンバータ10のみが分配回路11の入力元として選択される一方、各電気モータ4にそれぞれ電力を供給するための各インバータ12及びバッテリ8が分配回路11の出力先として選択される。
【0090】
その結果、ガスタービンエンジン6の駆動によって発電機5において発電された電力のうち電気モータ4の駆動に必要な電力が分配回路11からインバータ12を通じて電気モータ4に出力される。また、発電機5において発電された電力のうち電気モータ4で消費されなかった残りの電力は、余剰電力としてバッテリ8のフロート充電に使用される。すなわち、発電機5のみから電力が電気モータ4に供給される。換言すれば、ガスタービンエンジン6で生成されるエネルギのみで航空機3が巡航する。
【0091】
航空機3の離陸後における電気モータ4の出力は、航空機3の離陸時における電気モータ4の出力よりも小さくなる。具体的には、
図9に示すように電気モータ4の最大出力の70%前後となる。従って、電気モータ4の最大出力の80%に相当する最大出力でガスタービンエンジン6を駆動させれば、発電機5において必ず余剰電力を継続的に発生させることができる。発電機5において生成された、
図9において斜線で示される余剰電力は、継続的にバッテリ8のフロート充電に使用される。これにより、バッテリ8に蓄電されている電力量が次第に増加する。
【0092】
バッテリ8に十分な電力量が蓄電された場合には、ガスタービンエンジン6の駆動を停止して、バッテリ8に蓄電された電力を利用して電気モータ4を駆動させることがガスタービンエンジン6の燃費の向上に繋がる。そこで、バッテリ8に十分な電力量が蓄電されたか否かが制御回路14において自動判定される。
【0093】
より具体的には、ステップS4において、制御回路14により、バッテリ8に蓄電された電力量が閾値以上又は閾値を超えたか否かが自動判定される。閾値は、例えば、バッテリ8の蓄電容量又は蓄電容量からマージンを差し引いた電力量とすることができる。
【0094】
そして、バッテリ8に蓄電された電力量が閾値未満又は閾値以下であると判定された場合には、引き続き制御モードを発電モードとする航空機3の電力供給制御が行われる。一方、バッテリ8に蓄電された電力量が閾値以上又は閾値を超えたと判定された場合には、ステップS5において、制御回路14は、制御モードを発電モードから放電モードに自動的に切換える。
【0095】
具体的には、制御回路14からガスタービンエンジン6に制御信号が出力され、ガスタービンエンジン6が停止状態に切換えられる。また、制御回路14から分配回路11に制御信号が出力され、バッテリ8のみが分配回路11の入力元として選択される一方、各電気モータ4にそれぞれ電力を供給するための各インバータ12のみが分配回路11の出力先として選択される。
【0096】
その結果、バッテリ8に充電された電力のみが分配回路11からインバータ12を通じて電気モータ4に出力される。換言すれば、バッテリ8に充電された電力のみで航空機3が飛行する。
【0097】
このようにして、バッテリ8に蓄電された電力量がバッテリ8の蓄電容量又は蓄電容量からマージンを差し引いた電力量に達した場合のように、バッテリ8に十分な電力量が蓄電された場合には、ガスタービンエンジン6を動作状態から停止状態に自動的に切換え、かつバッテリ8のみから電気モータ4に電力を供給する放電モードに切換えることができる。
【0098】
ガスタービンエンジン6の出力をオフとし、バッテリ8のみから電気モータ4に電力を供給すると、
図9に示すようにバッテリ8に蓄電された電力量は次第に減少していく。バッテリ8に蓄電されている電力量がゼロとなるまでバッテリ8のみから電気モータ4に電力を供給するようにしても良い。
【0099】
但し、航空機3が着陸する際には、ガスタービンエンジン6の出力をオフとし、バッテリ8からの電力供給のみで電気モータ4及びプロペラ2を駆動することが騒音の低減に繋がる。すなわち、ガスタービンエンジン6のエンジン音が騒音の主要な原因であることから制御モードを放電モードとして航空機3を着陸させることが、騒音を低減する観点から好ましい。
【0100】
従って、バッテリ8に蓄電されている電力量が、少なくとも航空機3が放電モードで着陸するために必要な電力量未満となる前に、放電モードから発電モードに切換えることが航空機3の着陸時における騒音を低減する観点から好ましい。
【0101】
航空機3は、トラブル等により当初の目的地とは異なる空港に着陸する場合がある。一般に航空機が目的地以外の代替空港に着陸することはダイバードと呼ばれる。従って、航空機3は、目的空港Bのみならず、他の空港に着陸する可能性がある。そこで、ダイバード先の空港に着陸することになった場合であっても、放電モードでダイバード先の空港に着陸できるようにすることが一層確実な騒音の低減対策となる。
【0102】
その場合には、航空機3の現在の位置に基づいてダイバード先として着陸目的となり得る最寄りの空港を特定し、ダイバード先となり得る最寄りの空港に放電モードで着陸するために要するバッテリ8の電力量を、放電モードから発電モードに切換えるべき基準となる電力量の閾値とすることができる。
【0103】
航空機3の現在の位置は、航空機3に備えられている慣性航法装置、全地球測位網(GPS:Global Positioning System)航法装置及びドップラ・レーダ航法装置等の航法装置によって検出することができる。このため、制御回路14に航法装置から現在の航空機3の位置を取得する機能を設けることができる。一方、航空機3の記憶装置に保存されているダイバード先の候補となる空港の位置情報を参照したり、或いは無線通信によって空港の位置情報を含む地区情報にアクセスすることによって、現在の航空機3の位置に最も近い空港を特定することができる。
【0104】
更に、ダイバード先の候補となる各空港にバッテリ8からの給電のみで、すなわち放電モードで着陸するために必要なバッテリ8の蓄電量を航空機3のフライト前に予め制御回路14内の記憶回路にパラメータとして保存しておくことができる。騒音低減のためにガスタービンエンジン6をオフとすべき期間は、着陸すべき空港へのアプローチ開始から着陸までとすることができる。
【0105】
そうすると、制御回路14において、航空機3の現在の位置及び着陸目的となり得る最寄りの空港を自動的に特定し、かつ特定した空港に放電モードで着陸するために必要なバッテリ8の蓄電量を自動的に算出することができる。
【0106】
そして、ステップS6において、制御回路14により、バッテリ8に蓄電された現在の電力量が、発電モードへの切換に適した電力量まで減少したか否かが判定される。すなわち、バッテリ8に蓄電された現在の電力量が、ダイバード先として着陸目的となり得る最寄りの空港へのアプローチ開始から着陸までの期間においてバッテリ8から供給される電力のみで電気モータ4を回転させられるようにするために必要な電力量又は必要な電力量にマージンを加えた電力量まで減少したか否かが自動判定される。
【0107】
この自動判定処理は、着陸目的となり得る最寄りの空港へのアプローチ開始から着陸までの期間においてバッテリ8から供給される電力のみで電気モータ4を回転させられるようにするために必要な電力量又は必要な電力量にマージンを加えた電力量を閾値とし、バッテリ8に蓄電された現在の電力量が閾値まで減少したか否かを判定する閾値処理となる。
【0108】
ステップS6において、バッテリ8に蓄電された現在の電力量が閾値まで減少していないと判定された場合には、引き続き制御モードを放電モードとする航空機3の電力供給制御が行われる。一方、バッテリ8に蓄電された現在の電力量が閾値まで減少したと判定された場合には、再びステップS3において、制御回路14は、制御モードを放電モードから発電モードに自動的に切換える。
【0109】
これにより、航空機3の飛行中においてパイロットによる特別な操作を必要とすることなくガスタービンエンジン6を停止状態から動作状態に切換え、ガスタービンエンジン6の駆動によって生成された電力を電気モータ4に供給しつつ、余剰電力を利用してバッテリ8の充電を行うことができる。
【0110】
このようにして、着陸目的となり得る最寄りの空港へのアプローチから着陸までの期間においてバッテリ8から供給される電力のみで電気モータ4を回転させられるようにするために必要な電力量がアプローチ前にバッテリ8に蓄電されるように、バッテリ8に蓄電されている電力量に基づいてガスタービンエンジン6を停止状態から動作状態に自動的に切換えることができる。
【0111】
図9及び
図10に示す例は、航空機3の飛行経路付近に存在する空港Cにダイバートできるように、バッテリ8に蓄電された電力量が最大蓄電容量の45%程度まで減少したところで制御モードが放電モードから発電モードに切換えられている。
【0112】
ガスタービンエンジン6の駆動を伴う発電モードでの航空機3の航続距離が長くなると、燃料タンク7内における航空燃料の残量が減少する。その結果、航空機3の重量が次第に軽くなる。このため、航空機3のパイロットによる手動操縦又は自動操縦によって電気モータ4の出力を徐々に下げる調整を行うことができる。
【0113】
電気モータ4の出力を低下させた場合においても、ガスタービンエンジン6は引き続き最大出力付近で駆動させることができる。従って、バッテリ8に蓄電される電力は増加する。このため、より短時間でバッテリ8を充電することが可能となる。
【0114】
そして、ステップS4において、バッテリ8に蓄電された電力量が閾値以上又は閾値を超えたと判定された場合には、ステップS5において、制御モードが発電モードから放電モードに切換えられる。更に、同様なアルゴリズムで制御モードの自動切換を伴う航空機3の飛行が継続される。
図9及び
図10に示す例では、航空機3の飛行経路付近に存在する空港Cの他、空港D及び空港Eにもダイバードできるように、制御モードの自動切換が実行されている。
【0115】
航空機3が当初の目的空港B或いはダイバード先の空港を着陸目的の空港として着陸する場合には、入力装置15から着陸の指示情報が制御回路14に入力される。そうすると、航空機3の空港へのアプローチ開始前後には一般にプロペラ2におけるエネルギ消費量が低下することから、
図9に示すように電気モータ4の出力が下げられる。そして、航空機3の着陸目的となる空港へのアプローチ開始時には、空港へのアプローチが開始されることを通知する情報が入力装置15から制御回路14に入力される。
【0116】
このため、ステップS4の判定において制御回路14は、航空機3が着陸のためのアプローチを開始すると判定し、制御モードを発電モードから放電モードに切換える。これにより、航空機3の着陸目的となる空港へのアプローチから着陸までの期間には、ガスタービンエンジン6を停止状態とすることによって騒音を低減することができる。
【0117】
尚、バッテリ8の残量は常に放電モードで空港に着陸できるように断続的に充電されるため、アプローチ開始時には確実に放電モードに切換えてガスタービンエンジン6を起動させることなく航空機3を着陸させることができる。また、
図9に示す例では、航空機3のアプローチ開始前において電気モータ4の出力が低下した結果、航空機3のアプローチの開始タイミングにおいてバッテリ8の残量が最大容量の100%付近まで増加しているが、航空機3がバッテリ8に充電された電力のみで空港へのアプローチ及び着陸できればバッテリ8の残量を必ずしも100%付近まで増加させる必要はない。
【0118】
(効果)
以上のような航空機3の制御システム1及び制御方法は、ガスタービンエンジン6で発電された余剰電力をバッテリ8に蓄電するようにし、バッテリ8に十分な電力が蓄電された場合には、バッテリ8からの電力のみで電気モータ4及びプロペラ2を回転させるようにしたものである。
【0119】
このため、航空機3の制御システム1及び制御方法によれば、ガスタービンエンジン6を常に最大出力付近で使用することができる。すなわち、従来の航空機では、離陸時においてのみガスタービンエンジンが最大出力付近で使用される一方、離陸後にはガスタービンエンジンが最大出力の60%から70%程度の出力として使用されていたが、制御システム1を搭載した航空機3であれば、常に最も燃費が良好な最大出力付近でガスタービンエンジン6を使用することができる。
【0120】
しかも、制御システム1を用いれば、ガスタービンエンジン6の燃費を改善するためのギア等の可動機構を備えた複雑な機械要素が不要となる。このため、制御システム1はもちろん、ガスタービンエンジン6の構造が簡易となり、ガスタービンエンジン6の設計及び開発が容易となる。すなわち、ガスタービンエンジン6の最適化と、燃費の向上が容易となるのみならず、ガスタービンエンジン6の実証等のための試験も容易となる。
【0121】
また、ガスタービンエンジンやレシプロエンジン等のエンジンに比べてエネルギ変換効率が高く、出力が安定している電気モータ4でプロペラ2を回転させることによって、エンジンで直接プロペラを回転させる従来の航空機と比較して、エネルギ効率の向上と安定化を図ることができる。
【0122】
更に、電気モータ4の消費電力が最大となる航空機3の離陸時には、ガスタービンエンジン6及びバッテリ8の双方によって電気モータ4に電力を供給することによって、ガスタービンエンジン6の小型化が可能である。その結果、航空機3の重量増加を回避することができる。
【0123】
また、既存の小型航空機において広く使用されているレシプロエンジンに比べて、ガスタービンエンジン6は騒音を低減させることができる。特に、航空機3の着陸アプローチを行う場合のように、航空機3が地上付近を飛行する場合には、ガスタービンエンジン6を停止させることによって騒音の発生を効果的に防止することができる。
【0124】
また、制御システム1を含む航空機3の構成要素に冗長性を付与することによって、航空機3の安全性及び信頼性を向上させることができる。具体例として、電気モータ4、電気モータ4の電源となるインバータ12、インバータ12への電力供給源となるバッテリ8を、必要数以上設けることによって、いずれか1つか故障した場合であっても、プロペラ2を回転させるために必要な動力を確保することができる。
【0125】
(第2の実施形態)
図11は本発明の第2の実施形態に係る制御システムを搭載した航空機の構成を示す正面図である。
【0126】
図11に示す第2の実施形態のように、ガスタービンエンジン6の排気を外部に排出して推力として利用することもできる。換言すれば、ガスタービンエンジン6の排気を推力として利用する固定翼機3Bにおいても、制御システム1で離陸モード、発電モード及び放電モードを切換えて電力供給の切換制御を行うことができる。第2の実施形態における制御システム1の構成及び作用については第1の実施形態における制御システム1と実質的に同じである。
【0127】
第2の実施形態によれば、ガスタービンエンジン6の排気を推力として利用するため、ガスタービンエンジン6のエネルギ活用及び燃費を一層向上させることができる。
【0128】
(第3の実施形態)
図12は本発明の第3の実施形態に係る制御システムを搭載した航空機の構成を示す正面図である。
【0129】
図12に示す第3の実施形態のように制御システム1を回転翼航空機3Cに搭載することもできる。制御システム1の構成及び作用については第1の実施形態において説明した通りである。
【0130】
典型的な回転翼航空機3Cの場合、プロペラ2としてメインロータ2Aの他、テールロータ2Bを備えている。従って、メインロータ2Aを回転させる電気モータ4A及びテールロータ2Bを回転させる電気モータ4Bの双方を、ガスタービンエンジン6の駆動によって発電機5で発電される電力及びバッテリ8に蓄電された電力の供給先とすることができる。そして、第1の実施形態において説明したように、離陸モード、発電モード及び放電モードを切換えて電力供給の制御を行うことができる。もちろん、複数のメインロータ2Aを備えた回転翼航空機3Cの場合には、各メインロータ2Aを回転させるための電気モータ4を制御対象とすることができる。
【0131】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。