特許第6955424号(P6955424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6955424
(24)【登録日】2021年10月5日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】関節リウマチ体験装具
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20211018BHJP
【FI】
   G09B9/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-211437(P2017-211437)
(22)【出願日】2017年11月1日
(65)【公開番号】特開2019-82652(P2019-82652A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】521076580
【氏名又は名称】辻 聡一郎
(73)【特許権者】
【識別番号】521076591
【氏名又は名称】楠元 政幸
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】楠元 政幸
【審査官】 奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】 独国実用新案第9204652(DE,U1)
【文献】 MP関節装具,金沢義肢製作所 [online],2015年9月27日時点のウェブアーカイブ,2015年09月27日,URL:https://web.archive.org/web/20150927034816/http://www.kanazawagishi.sakura.ne.jp/jyousi.htm,[2021年9月9日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00
A61F 5/00−5/58,13/00−13/14,15/00−17/00
A61H 1/00−1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手の甲部の略指側半分を覆う手甲被覆部(110)と、人差指、中指、薬指及び小指のそれぞれにおけるPIP関節とMP関節との間の基節部甲側を覆う基節部甲側被覆部(120)と、を有し、前記基節部甲側被覆部(120)と前記手甲被覆部(110)とは隙間無く連続形成されている、MP関節を屈曲位に位置させる側面視略への字形の硬質のMP関節屈曲具(100)と、
前記MP関節屈曲具(100)の手のひら側である内側面に配置されており、人差指、中指、薬指及び小指のそれぞれの基節部甲側に当接する弾性の第1パッド(210)と、
前記第1パッド(210)と間隔をあけて前記MP関節屈曲具(100)の内側面に配置されており、手の甲部の略指側半分に当接する弾性の第2パッド(220)と、を有し、前記第1パッド(210)と前記第2パッド(220)との間の空間(230)に人差指、中指、薬指及び小指のそれぞれのMP関節が収容される一対のパッド(200)と、
一端が前記MP関節屈曲具(100)の小指側の側面に設けられた固定端(310)とし、他端を自由端(320)とすると共にこの自由端(320)を前記MP関節屈曲具(100)の親指側の側面に設けられた差込み部(130)に対して挿通されて前記MP関節屈曲具(100)と協働して結束用ループ状体を形成して4指基底部を押圧して手を前記MP関節屈曲具(100)に押しつけてMP関節を屈曲位に固定させる可撓性バンド(300)と、
を有することを特徴とする関節リウマチ体験装具(900)。
【請求項2】
前記可撓性バンド(300)の手のひら側の面の固定端(310)側に面ファスナのメス(311)又はオスのいずれかが設けられ、前記可撓性バンド(300)の手のひら側の面の自由端(320)側に面ファスナのオス(321)又はメスのいずれかが設けられ、
前記可撓性バンド(300)の自由端(320)が前記差込み部(130)に対して挿通されて、前記可撓性バンド(300)の自由端(320)側に設けられた面ファスナのオス(321)又はメスが、前記可撓性バンド(300)の固定端(310)側に設けられた面ファスナのメス(311)又はオスと対向するように折り返しされ且つ、前記可撓性バンド(300)の自由端(320)側に設けられた面ファスナのオス(321)又はメスが、前記可撓性バンド(300)の固定端(310)側に設けられた面ファスナのメス(311)又はオスに押付け係着されて、前記可撓性バンド(300)が前記MP関節屈曲具(100)と協働して結束用ループ状体を形成してMP関節を屈曲位に固定させることを特徴とする請求項1に記載の関節リウマチ体験装具(900)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチ体験装具に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチは多発性の滑膜関節炎を主病変とする全身性炎症疾患である。30〜50歳代の女性に好発するが、小児発症や高齢発症もみられる。日本における患者数は約70万人とされ、そのうち約1割は身障者とされている。倦怠感等の全身症状、朝のこわばりと共に関節の疼痛、腫張、発赤、圧痛を対称性に認める。関節炎による骨・関節破壊の進行は、靱帯の弛緩、腱鞘炎等と共に亜脱臼や種々の関節変形をもたらす。
【0003】
関節リウマチの進行による病型は3型に分類され、多くは多周期型(70%)であるが、2年以内に寛解をみる単周期型(20%)や進行型(10%)もみられる。
【0004】
関節リウマチは症状の激しい急性炎症期と症状が鎮静化する慢性期とにわかれるが、関節に起きた変形が回復することはなく、その変形により機能障害が起こり遂には日常生活さえも不自由する身体障害となる。この様な症状の経過の中で使われる装具としては、炎症の鎮静化、変形出現の防止乃至遅帯化、又は変形の矯正等の医療効果を期待する装具がある(非特許文献1)。
【0005】
その一方で、関節リウマチ治療の早期介入を目指し生活動作を守るために、医療関係者及び家族等の患者介護者に対して手指関節の機能障害を体験して頂き関節リウマチ患者の気持ちを体感することは重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】リハビリテーション医学、vol,34 No.5 1997年5月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、関節リウマチ患者が実際に体験する手指関節の機能障害を健常者にも正確に体験可能とする関節リウマチ体験装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる関節リウマチ体験装具は、手の甲部の略指側半分を覆う手甲被覆部と、人差指、中指、薬指及び小指のそれぞれにおけるPIP関節とMP関節との間の基節部甲側を覆う基節部甲側被覆部と、を有し、前記基節部甲側被覆部と前記手甲被覆部とは隙間無く連続形成されている、MP関節を屈曲位に位置させる側面視略への字形の硬質のMP関節屈曲具と、前記MP関節屈曲具の手のひら側である内側面に配置されており、人差指、中指、薬指及び小指のそれぞれの基節部甲側に当接する弾性の第1パッドと、前記第1パッドと間隔をあけて前記屈曲具の内側面に配置されており、手の甲部の略指側半分に当接する弾性の第2パッドと、を有し、前記第1パッドと前記第2パッドとの間の空間に人差指、中指、薬指及び小指のそれぞれのMP関節が収容される一対のパッドと、一端が前記MP関節屈曲具の小指側の側面に設けられた固定端とし、他端を自由端とすると共にこの自由端を前記MP関節屈曲具の親指側の側面に設けられた差込み部に対して挿通されて前記MP関節屈曲具と協働して結束用ループ状体を形成して4指基底部を押圧して手を前記MP関節屈曲具に押しつけてMP関節を屈曲位に固定させる可撓性バンドと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、関節リウマチ患者が実際に体験する手指関節の機能障害を健常者であっても正確に体験できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態にかかる関節リウマチ体験装具の手の甲部側に対応する平面図である。
図2】本実施形態にかかる関節リウマチ体験装具の手の親指側に対応する側面図である。
図3】本実施形態にかかる関節リウマチ体験装具の手のひら側に対応する平面図である。
図4】本実施形態にかかる関節リウマチ体験装具の手の小指側に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0012】
本実施形態にかかる関節リウマチ体験装具900は、MP関節屈曲具100と、一対のパッド200と、可撓性バンド300と、を備えて構成される。図1は本実施形態にかかる関節リウマチ体験装具900の手の甲部側に対応する平面図である。図1に示されるように、MP関節屈曲具100は、手の甲部の略指側半分を覆う手甲被覆部110と、人差指、中指、薬指及び小指のそれぞれにおけるPIP関節とMP関節との間の基節部甲側を覆う基節部甲側被覆部120とを有する。基節部甲側被覆部120と手甲被覆部110とは隙間無く連続形成されている。
【0013】
図2は本実施形態にかかる関節リウマチ体験装具900の手の親指側に対応する側面図である。図2に示されるように、MP関節屈曲具100は側面視略への字形である。MP関節屈曲具100は硬質の材質で形成されており、MP関節を屈曲位に位置させる。硬質の材質であれば特に限定されるものではないが例えばポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0014】
図3は本実施形態にかかる関節リウマチ体験装具900の手のひら側に対応する平面図である。図3に示されるように、一対のパッド200は、弾性の第1パッド210と弾性の第2パッド220とを有して構成される。第1パッド210は、MP関節屈曲具100の手のひら側である内側面に配置されており、また、第2パッド220も、MP関節屈曲具100の手のひら側である内側面に配置されている。第1パッド210は、人差指、中指、薬指及び小指のそれぞれの基節部甲側に当接する。第2パッド220は、手の甲部の略指側半分に当接する。第1パッド210と第2パッド220とは間隔あけて設けられており、第1パッド210と第2パッド220との間の空間230に、人差指、中指、薬指及び小指のそれぞれのMP関節が収容される。
【0015】
図3に示されるように、可撓性バンド300は、一端はMP関節屈曲具100の小指側の側面に設けられた固定端310であり、他端は自由端320である。自由端320はMP関節屈曲具100の親指側の側面に設けられたリング状の差込み部130に対して挿通可能である。自由端320が差込み部130に挿通されてMP関節屈曲具100と協働して結束用ループ状体が形成されて4指基底部を押圧して手がMP関節屈曲具100に押しつけられてMP関節が屈曲位に制限固定される。
【0016】
図4は本実施形態にかかる関節リウマチ体験装具900の手の小指側に対応する側面図である。図4に示されるように可撓性バンド300の手のひら側の面の固定端310側に面ファスナのメス311が設けられ、可撓性バンド300の手のひら側の面の自由端320側に面ファスナのオス321が設けられる。なお、可撓性バンド300の手のひら側の面の固定端310側に面ファスナのオスが設けられ、可撓性バンド300の手のひら側の面の自由端320側に面ファスナのメスを設ける構成とすることも可能である。
【0017】
図4に示されるように、可撓性バンド300の自由端320が差込み部130に挿通され、可撓性バンド300の自由端320側に設けられた面ファスナのオス321が、可撓性バンド300の固定端310側に設けられた面ファスナのメス311と対向するように折り返しされる。そして、可撓性バンド300の自由端320側に設けられた面ファスナのオス321が、可撓性バンド300の固定端310側に設けられた面ファスナのメス311に押付け係着されて、可撓性バンド300がMP関節屈曲具100と協働して結束用ループ状体を形成してMP関節を屈曲位に固定させる。これにより、使用者は、MP関節が屈曲位に固定されてMP関節の伸展が制限されるため、関節リウマチ患者の機能障害を正確に体験できる。
【0018】
なお上述の実施形態では、可撓性バンドは、一端はMP関節屈曲具の小指側の側面に設けられた固定端であり他端は自由端と構成されているが、本発明はこのような実施形態に制限されるものではなく、一端はMP関節屈曲具の親指側の側面に設けられた固定端であり他端は自由端と構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
関節リウマチの体験に利用できる。
【符号の説明】
【0020】
100:MP関節屈曲具
110:手甲被覆部
120:基節部甲側被覆部
130:差込み部
200:一対のパッド
210:第1パッド
220:第2パッド
230:空間
300:可撓性バンド
310:固定端
320:自由端
900:関節リウマチ体験装具
図1
図2
図3
図4