特許第6955439号(P6955439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6955439
(24)【登録日】2021年10月5日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20211018BHJP
   B60W 40/114 20120101ALI20211018BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20211018BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20211018BHJP
【FI】
   B60L15/20 S
   B60W40/114
   B60W30/02
   !B60L9/18 P
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-250572(P2017-250572)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-118187(P2019-118187A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章也
(72)【発明者】
【氏名】米田 毅
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0050536(US,A1)
【文献】 特開2012−095378(JP,A)
【文献】 特開平07−046721(JP,A)
【文献】 特開2004−135471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−58/40
B60W 40/114
B60W 30/02
B60W 10/00−20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前輪の駆動力を発生させる第1モータを制御し、前記第1モータが発生可能な最大定格トルクを上限として前記第1モータを運転する第1モードと、前記最大定格トルクよりも低い連続定格トルクを上限として前記第1モータを運転する第2モードと、を切り換え可能な第1モータ制御部と、
前記車両の後輪の駆動力を発生させる第2モータを制御し、前記第2モータが発生可能な最大定格トルクを上限として前記第2モータを運転する第1モードと、前記最大定格トルクよりも低い連続定格トルクを上限として前記第2モータを運転する第2モードと、を切り換え可能な第2モータ制御部と、を備え、
前記第1モータ制御部及び前記第2モータ制御部は、前記第1モータ及び前記第2モータの一方のみについて前記第1モードでの運転が許容される場合に、前記第1モータ及び前記第2モータの他方を前記第2モードで制御するとともに、前輪と後輪の駆動力配分に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御することを特徴とする、車両の制御装置。
【請求項2】
前記第1モータ制御部及び前記第2モータ制御部は、前記第1モータ及び前記第2モータの他方について前記第1モードでの運転が許容されると、前記第1モータ及び前記第2モータの双方の駆動力を前輪と後輪の駆動力配分に基づいて制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記第1モータ及び前記第2モータの一方を前記駆動力配分に基づいて制御する際に、車両のスタビリティファクタに基づいて制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記スタビリティファクタの目標値及び実測値の乖離度合と極性に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御することを特徴とする、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記第1モータ及び前記第2モータの一方を前記駆動力配分に基づいて制御する際に、車両の横滑り角速度に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記横滑り角速度及び車両のヨーレートの乖離度合と極性に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御することを特徴とする、請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記第1モータ及び前記第2モータの一方を前記駆動力配分に基づいて制御する際に、車両のヨーレートに基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記ヨーレートの目標値及び実測値の乖離度合に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御することを特徴とする、請求項7に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記第1モータ及び前記第2モータの一方を前記駆動力配分に基づいて制御する際に、前輪と後輪の駆動力配分が所定範囲となるように、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記所定範囲は、前輪と後輪の駆動力配分が40:60から60:40の範囲であることを特徴とする、請求項9に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記最大定格トルクは、前記第1モータ又は前記第2モータを前記最大定格トルクで運転する場合に持続時間が制限されるトルクであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項12】
前記連続定格トルクは、前記第1モータ又は前記第2モータを前記連続定格トルクで運転する場合に持続時間が制限されないトルクであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項13】
車両の前輪の駆動力を発生させる第1モータと、前記車両の後輪の駆動力を発生させる第2モータとが過負荷であるか否かを判定するステップと、
前記第1モータ及び前記第2モータの一方が過負荷であると判定された場合に、前記一方のモータが発生可能な最大定格トルクを上限として前記一方のモータを運転する第1モードから、前記最大定格トルクよりも低い連続定格トルクを上限として前記一方のモータを運転する第2モードへ切り換えるステップと、
前輪と後輪の駆動力配分に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの他方を制御するステップと、
を備えることを特徴とする、車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置及び車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1には、基準時間T0以上であると判定されたときに、基準時間T0以上であると判定されたモータの駆動トルクを基準トルクTrq0よりも減少させると共に、他方のモータの駆動トルクを増大させることにより要求トルクTrqdを満足させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−95378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載されている技術では、フロントモータ及びリアモータの一方の駆動トルクを減少させ、他方のモータの駆動トルクを増大させるものであるため、前後の駆動力配分が大きく変化してしまう問題がある。このため、ドライバが予期せぬ車両挙動が発生し、車両挙動が不安定になる問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、前輪と後輪のそれぞれを駆動するモータの過負荷を抑えるとともに、車両挙動を安定させることが可能な、新規かつ改良された車両の制御装置及び車両の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両の前輪の駆動力を発生させる第1モータを制御し、前記第1モータが発生可能な最大定格トルクを上限として前記第1モータを運転する第1モードと、前記最大定格トルクよりも低い連続定格トルクを上限として前記第1モータを運転する第2モードと、を切り換え可能な第1モータ制御部と、前記車両の後輪の駆動力を発生させる第2モータを制御し、前記第2モータが発生可能な最大定格トルクを上限として前記第2モータを運転する第1モードと、前記最大定格トルクよりも低い連続定格トルクを上限として前記第2モータを運転する第2モードと、を切り換え可能な第2モータ制御部と、を備え、前記第1モータ制御部及び前記第2モータ制御部は、前記第1モータ及び前記第2モータの一方のみについて前記第1モードでの運転が許容される場合に、前記第1モータ及び前記第2モータの他方を前記第2モードで制御するとともに、前輪と後輪の駆動力配分に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御する、車両の制御装置が提供される。
【0007】
前記第1モータ制御部及び前記第2モータ制御部は、前記第1モータ及び前記第2モータの他方について前記第1モードでの運転が許容されると、前記第1モータ及び前記第2モータの双方の駆動力を前輪と後輪の駆動力配分に基づいて制御するものであっても良い。
【0008】
また、前記第1モータ及び前記第2モータの一方を前記駆動力配分に基づいて制御する際に、車両のスタビリティファクタに基づいて制御するものであっても良い。
【0009】
また、前記スタビリティファクタの目標値及び実測値の乖離度合と極性に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御するものであっても良い。
【0010】
また、前記第1モータ及び前記第2モータの一方を前記駆動力配分に基づいて制御する際に、車両の横滑り角速度に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御するものであっても良い。
【0011】
また、前記横滑り角速度及び車両のヨーレートの乖離度合と極性に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御するものであっても良い。
【0012】
また、前記第1モータ及び前記第2モータの一方を前記駆動力配分に基づいて制御する際に、車両のヨーレートに基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御するものであっても良い。
【0013】
また、前記ヨーレートの目標値及び実測値の乖離度合に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御するものであっても良い。
【0014】
また、前記第1モータ及び前記第2モータの一方を前記駆動力配分に基づいて制御する際に、前輪と後輪の駆動力配分が所定範囲となるように、前記第1モータ及び前記第2モータの一方の駆動力を制御するものであっても良い。
【0015】
また、前記所定範囲は、前輪と後輪の駆動力配分が40:60から60:40の範囲であっても良い。
【0016】
また、前記最大定格トルクは、前記第1モータ又は前記第2モータを前記最大定格トルクで運転する場合に持続時間が制限されるトルクであっても良い。
【0017】
また、前記連続定格トルクは、前記第1モータ又は前記第2モータを前記連続定格トルクで運転する場合に持続時間が制限されないトルクであっても良い。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両の前輪の駆動力を発生させる第1モータと、前記車両の後輪の駆動力を発生させる第2モータとが過負荷であるか否かを判定するステップと、前記第1モータ及び前記第2モータの一方が過負荷であると判定された場合に、前記一方のモータが発生可能な最大定格トルクを上限として前記一方のモータを運転する第1モードから、前記最大定格トルクよりも低い連続定格トルクを上限として前記一方のモータを運転する第2モードへ切り換えるステップと、前輪と後輪の駆動力配分に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの他方を制御するステップと、を備える、車両の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、前輪と後輪のそれぞれを駆動するモータの過負荷を抑えるとともに、車両挙動を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の構成を示す模式図である。
図2】制御装置とその周辺の構成を詳細に示す模式図である。
図3】前輪のモータの出力特性を示す模式図である。
図4】後輪のモータの出力特性を示す模式図である。
図5】前後のモータの駆動力の配分率(横軸)と、車両の操縦安定性(縦軸)との関係を規定したマップを示す特性図である。
図6】本実施形態の制御装置における処理の手順を示すフローチャートである。
図7】理想駆動力線図を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る車両500の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両500の構成を示す模式図である。図1に示すように、車両500は、前輪及び後輪の4つのタイヤ(車輪)12,14,16,18、制御装置(コントローラ)100、外界認識部200、前輪のタイヤ12,14の回転を制御するモータ20、後輪のタイヤ16,18の回転を制御するモータ22、モータ20の制御を行うインバータ19、モータ22の制御を行うインバータ21、モータ20の駆動力をタイヤ12,14に伝達するギヤボックス23及びドライブシャフト24、モータ22の駆動力をタイヤ16,18に伝達するギヤボックス25及びドライブシャフト26、前輪の各タイヤ12,14の回転から車輪速(車両速度)を検出する車輪速センサ40,42、後輪の各タイヤ16,18の回転から車輪速(車両速度)を検出する車輪速センサ28,30、アクセル開度センサ32、ヨーレートセンサ33、前輪12,14を操舵するステアリングホイール34、ステアリングホイールの操舵角δを検出する操舵角センサ35、パワーステアリング機構36、表示装置38、スピーカ39、前輪のモータ20の温度を検出する温度センサ44、後輪のモータ22の温度を検出する温度センサ46、を有して構成されている。
【0023】
なお、図1に示す構成では、前輪を駆動する1つのモータ20と後輪を駆動する1つのモータ22を備えているが、この構成に限定されるものではなく、4つの各輪のそれぞれを駆動するモータと各モータに対応するギヤボックスが設けられていても良い。
【0024】
本実施形態では、制御装置100によりモータ20,22の制駆動力を演算し、制御装置100がモータ20,22へ制駆動力を指示することで、モータ20,22を協調制御する。
【0025】
図2は、制御装置100とその周辺の構成を詳細に示す模式図である。図2に示すように、制御装置100は、前後のモータ20,22の制御を行う走行制御部150を備えている。走行制御部150は、前輪のモータ20を制御する第1モータ制御部110、後輪のモータ22を制御する第2モータ制御部120、駆動力配分部140、モータ運転状態信号生成部145、を有して構成されている。モータ運転状態信号生成部145は、前輪のモータ20と後輪のモータ22の運転状態を示すモータ運転状態信号を生成する。
【0026】
第1モータ制御部110は、モータ20の運転状態が過負荷状態であり、モータ20の保護が必要であることを示す過負荷保護フラグをインバータ19から取得する。同様に、第2モータ制御部120は、モータ22の運転状態が過負荷状態であり、モータ22の保護が必要であることを示す過負荷保護フラグをインバータ21から取得する。第1モータ制御部110及び第2モータ制御部120は、いずれかのモータ20,22について過負荷保護フラグが出されている場合に、そのモータを連続定格モードで運転するように制御を行う。
【0027】
以下では、制御装置100が行う制御について具体的に説明する。制御装置100の駆動力配分部140は、アクセル開度センサ32からアクセル開度を取得すると、車両500の総要求駆動力を演算し、総駆動力を前輪のモータ20と後輪のモータ22へ配分する。第1モータ制御部110は、前輪のモータ20を制御するインバータ19に対し、要求駆動力の指令値を送る。インバータ19は、前輪のモータ20の要求駆動力の指令値に基づいて、前輪のモータ20を制御する。第2モータ制御部120は、後輪のモータ22を制御するインバータ21に要求駆動力の指令値を送る。インバータ21は、後輪のモータ22の要求駆動力の指令値に基づいて、後輪のモータ22を制御する。これにより、モータ20,22のそれぞれが要求駆動力に従って制御される。
【0028】
図3は、前輪のモータ20の出力特性を示す模式図である。また、図4は、後輪のモータ22の出力特性を示す模式図である。図3及び図4では、前輪のモータ20、または後輪のモータ22について、駆動力(縦軸:トルク)と速度(横軸:回転数)の関係を示している。
【0029】
モータ20,22の運転モードとして、最大定格モードと連続定格モードがある。最大定格モードでは、モータが発揮し得る最大トルク値(最大定格トルク)を出力できるが、最大トルク値の持続時間は制限される。モータを最大定格モードで使用すると、内部の発熱量が上昇し、モータの劣化等に影響することから、最大定格モードでは最大トルク値の持続時間(許容時間)が定められている。一方、連続定格モードでは、最大定格モードよりもトルク値が制限され、長時間連続して出力可能なトルク値(連続定格トルク)が上限とされる。図3及び図4では、最大定格モードと連続定格モードのそれぞれについてのトルク特性を示している。
【0030】
ここで、例えばドライバがスポーツ走行を楽しみたい場合など、モータ20,22に過負荷がかかるような状況下では、モータ20,22が過熱してしまう場合がある。このような場合、例えば温度センサ44,46が検出したモータ20,22の温度に基づいて、連続定格モードによる制御に切り換えることで、モータ20,22の発熱を抑えることができる。しかし、このような方法で最大定格モードから連続定格モードへの切り換えを行うと、モータ20,22の出力が突然ダウンしてしまうことになり、ドライバが想定する運転ができなくなったり、予期せぬ車両挙動が発生し、車両500の挙動が不安定になることが懸念される。特に、前後のモータ20,22の規格が異なる場合や、前後のモータ20,22にかかる負荷が均等でないと、いずれかのモータが過熱しやすくなり、出力が突然ダウンしてしまう可能性がある。また、一方のモータを最大定格モードから連続定格モードに切り換えた後、再び最大定格モードに復帰した場合に、車両挙動が不安定になることも想定される。
【0031】
本実施形態では、モータ20,22のそれぞれを独立して制御できるため、前輪のモータ20と後輪のモータ22のトルクの前後配分を最適に制御することで、車両500の安定性を高めることができる。特に、本実施形態では、前輪のモータ20と後輪のモータ22の一方のみ最大定格モードでの運転が許容される場合に、前輪のモータ20と後輪のモータ22の他方については、操縦安定性が確保できる範囲内で前後の駆動力配分を制御する。
【0032】
図3に示すように、前輪のモータ20は、最大定格モードで駆動され、点Aで示すトルク(最大定格トルク)、回転数で駆動されている。また、図4に示すように、後輪のモータ20は、最大定格モードで駆動され、点Aで示すトルク(最大定格トルク)、回転数で駆動されている。この場合に、前輪のモータ20の最大定格モードでの運転が許容範囲(許容運転持続時間)を超えると、前輪のモータ20に過負荷がかかってしまう。この場合、インバータ19は、第1のモータ制御部110に対して、過負荷がかかっていることを示す情報(過負荷保護フラグ)を送る。
【0033】
モータ20,22が過負荷状態であるか否かは、上述した許容運転継続時間に基づく判定の他にも、モータ20,22の運転状態を示す各種パラメータ(温度、電流値、電圧値等)と、継続時間に応じて判定できる。例えば、モータ20,22の温度が所定のしきい値を超えた状態が許容継続時間を超えた場合は、モータ20,22が過負荷状態であると判定する。また、モータ20,22の電流値が所定のしきい値を超えた状態が許容継続時間を超えた場合は、モータ20,22が過負荷状態であると判定する。同様に、モータ20,22の電圧値が所定のしきい値を超えた状態が許容継続時間を超えた場合は、モータ20,22が過負荷状態であると判定する。いずれの場合も、第1モータ制御部110又は第2モータ制御部120に過負荷保護フラグが送られる。温度に基づいてモータ20,22が過負荷状態と判定する場合、第1モータ制御部110及び第2モータ制御部120は、温度センサ44,46の検出値に基づいて過負荷状態を判定し、判定結果に基づいてモータ20,22を制御する。
【0034】
なお、上述した各種パラメータによる判定は、いずれか1つのパラメータを用いて判定を行っても良いし、複数のパラメータを組み合わせて判定を行っても良い。また、これらのパラメータを、CAN(Controller Area Network)などを経由して制御装置100に送ることで、制御装置100側で判定を行っても良い。
【0035】
第1モータ制御部110は、インバータ19から過負荷保護フラグを受信すると、前輪のモータ20を最大定格モードから連続定格モードへ落とす制御を行う。これにより、前輪のモータ20は、図3中に点Bで示すトルク(連続定格トルク)、回転数で駆動される。また、第1モータ制御部110は、前輪のモータ20を最大定格モードから連続定格モードへ落とした旨の情報を第2モータ制御部120へ送る。
【0036】
第2モータ制御部120は、前輪のモータ20を最大定格モードから連続定格モードへ落とした旨の情報を第1モータ制御部110から受け取ると、後輪のモータ22を最大定格トルクよりも低いトルクで制御する。これにより、後輪のモータ22は、図4中に点Cで示すトルク(連続定格トルク)、回転数で駆動される。従って、後輪のモータ22については最大定格トルクよりも低いトルクで駆動することで、前後の駆動力配分が大きく変化することを抑制でき、車両挙動を安定させることができる。なお、後輪のモータ22のトルクを低下させない場合は、例えば前後の駆動力配分は前輪:後輪=30:70程度となり、車両500がスピン傾向となることが懸念される。前輪のモータ20を連続定格モードに落とした場合に、後輪のモータ22のトルクを落とすことで、このような事態を確実に回避できる。
【0037】
より詳細には、後輪のモータ22については、過負荷保護フラグが元々出されていないため、最大定格トルクを上限とした出力の制御が可能である。このため、後輪のモータ22については、操縦安定性が所定レベルとなるように前輪と後輪の駆動力配分を調整しながらトルクを制御することができる。
【0038】
なお、上述の説明では、前輪のモータ20を最大定格モードから連続定格モードに落とした場合について説明しているが、後輪のモータ22を最大定格モードから連続定格モードに落とした場合も、前輪のモータ20の制御については、上述の後輪のモータ22の制御と同様に行う。
【0039】
また、インバータ19,21のいずれからも過負荷保護フラグが出されていない場合は、前後のモータ20,22の運転モードを変更することなく、モータ20,22の運転を継続する。
【0040】
以上のように、モータ20を最大定格トルクで駆動すると、モータ20の内部の発熱量が上昇し、モータ劣化の要因となる。このため、インバータ19からの過負荷保護フラグの取得に応じて、モータ20の運転モードを最大定格モードから連続定格モードに落とすことで、モータ20の劣化を抑制できる。
【0041】
特に、前輪のモータ20と後輪のモータ22で仕様が異なる場合、または前後のトルク配分を均等にしない制御を行う場合、一方のモータ20に対して過負荷保護フラグが出される場合がある。このような場合に、一方のモータ20のみを最大定格モードから連続定格モードへ落とすと、前後のトルク配分が変化し、ドライバが想定している運転ができなくなったり、予期せぬ車両挙動が発生する可能性がある。
【0042】
本実施形態では、前輪のモータ20と後輪のモータ22の一方を最大定格モードから連続定格モードに切り換えた場合に、前輪のモータ20と後輪のモータ22の他方については、操縦安定性が所定のレベルを満たすように前後の駆動力配分を調整しながら、制御を行う。これにより、一方のモータが最大定格モードから連続定格モードに切り換わったとしても、前後のトルク配分に大きな変化が生じることがなく、車両500の挙動安定性を維持することが可能である。
【0043】
過負荷保護フラグの出されていない他方のモータについては、連続定格トルク以上のトルクで駆動することが可能である。このため、図4中に点Cで示したように、過負荷保護フラグの出されていない他方のモータについては、操安性が所定のレベルになるように前後の駆動力配分を調整しながら、駆動力を制御する。これにより、一方のモータに過負荷保護フラグが出されて最大定格モードから連続定格モードに切り換わった場合に、過負荷保護フラグの出されていない他方のモータが走行状態に応じた出力を発生するので、加速不良や操安性の低下を抑制することができる。なお、前輪のモータ20と後輪のモータ22の一方を最大定格モードから連続定格モードに切り換えた場合に、前輪のモータ20と後輪のモータ22の他方についても連続定格モードに一旦切り換え、その後にトルクアップしても良い。
【0044】
また、過負荷保護フラグが出されたことにより前輪のモータ20と後輪のモータ22の一方を最大定格モードから連続定格モードに切り換えた後、その一方のモータについて最大定格モードでの運転が許容される状態になると、そのモータをトルクアップする制御を行う。図3中に点Dで示したように、過負荷保護フラグが出された前輪のモータ20につついて、過負荷保護フラグが解除されると、連続定格トルクからトルクアップが行われ、図4中に点Dで示した回転数、トルクで制御が行われる。
【0045】
以下では、図3及び図4に示す例において、過負荷保護フラグの出されていない後輪のモータ22について、図4中の点Aから点Cへトルク及び回転数を制御する方法について詳細に説明する。後輪のモータ22を連続定格モードに落とした後、摩擦円利用率の余裕の範囲内で、走行状態に応じて操安性を確保できる配分まで前後の出力を変化させる。具体的な方法として、スタビリティファクタAに基づく方法、横滑り角度に基づく方法、ヨーレートγに基づく方法が挙げられる。前後配分は、駆動力配分部140によって算出され、第1モータ制御部110、第2モータ制御部120は、駆動力配分部140が算出した前後配分に基づいて前後のモータ20,22を制御する。
【0046】
スタビリティファクタAに基づく方法では、車両速度V、ヨーレートγ、ステアリングホイールの操舵角δからスタビリティファクタAを算出し、予め設定した目標値からの乖離分(極性を考慮)から車両500のアンダーステア(US)傾向(プロウ傾向)またはオーバーステア(OS)傾向(スピン傾向)の強さを求め、その大きさから後輪のモータ22の出力に制限をかける。
【0047】
スタビリティファクタAは、車両500の操縦安定性のポテンシャルを示す指標である。スタビリティファクタAの目標値は、以下の式(1)から算出することができる。
【0048】
【数1】
【0049】
式(1)において、mは車重、lはホイールベース、Ifは前軸〜重心点距離、Irは後軸〜重心点距離、Kfは前輪コーナリングパワー、Krは後輪コーナリングパワー、を示している。
【0050】
式(1)において、lf・Kf−lr・Kr=0の場合は、車両500がニュートラルステア(NS)であることを示している。また、lf・Kf−lr・Kr<0の場合は、車両500がアンダーステア傾向であることを示している。また、lf・Kf−lr・Kr>0の場合は、車両500がオーバーステア傾向であることを示している。
【0051】
なお、スタビリティファクタAの目標値を滑り角速度(=γ−Ay/V)とすることもできる。
【0052】
また、スタビリティファクタAの実測値は、車両速度V、ヨーレートγ、操舵角δ、ホイールベースlに基づいて、以下の式(2)をスタビリティファクタAについて解くことで算出することができる。
【0053】
【数2】
【0054】
スタビリティファクタAに基づく判定では、車両500の諸元から、式(1)に基づいて目標値を算出する。また、車両速度V、ヨーレートγ、操舵角δから、式(2)に基づいてスタビリティファクタAの実測値を算出する。そして、目標値と実測値を比較し、目標値と実測値の符号が同じで、且つ両者の絶対値の差分がしきいを超える場合は、オーバーステア状態と判断し、前輪寄りの駆動力配分とする。また、目標値と実測値の符号が異なり、且つ両者の絶対値の差分がしきい値を超える場合は、アンダーステア状態と判断し、後輪寄りの駆動力配分とする。
【0055】
また、車両500の横滑り角速度(車体すべり角速度)は、以下の式(3)から求めることができる。
【0056】
【数3】
【0057】
なお、式(3)において、横滑り角βの一階微分は横滑り角速度を示し、横移動量yの二階微分は横加速度を示している。
【0058】
横滑り角速度に基づく判定では、ヨーレートγの符号と車体すべり角速度の符号が同じで、且つ両者の絶対値の差分が所定のしきい値を超える場合は、オーバーステア状態と判断し、後輪のコーナリングパワーを確保するため、前輪寄りの駆動力配分とする。
【0059】
また、ヨーレートγの符号と横滑り角速度の符号が異なり、且つ両者の絶対値の差分が所定のしきい値を超える場合は、アンダーステア状態と判断し、前輪のコーナリングパワーを確保するため、後輪寄りの駆動力配分とする。
【0060】
車両500のヨーレートγ(目標ヨーレート)は、以下の式(4)から算出することができる。なお、式(4)は式(2)と同じ式を示している。
【0061】
【数4】
【0062】
ヨーレートγに基づく判定では、式(4)に基づいて、操舵角δと車両速度Vから演算される目標ヨーレートγと、ヨーレートセンサ33が検出する実ヨーレートとを比較する。そして、目標ヨーレートの絶対値よりも実ヨーレートの絶対値が小さい場合は、車両500の実際の旋回量が小さく、アンダーステア傾向であることから、前輪のコーナリングパワーを上げるため後輪寄りの駆動力配分とする。また、目標ヨーレートの絶対値よりも実ヨーレートの絶対値が大きい場合は、車両500の実際の旋回量が大きく、オーバーステア傾向であることから、後輪のコーナリングパワーを下げるため前輪寄りの駆動力配分とする。
【0063】
図4中の点Cまで後輪のモータ22をトルクアップする際に、上述した内容を総合したマップを作成しておき、マップに基づいて制御を行うことができる。図5は、前後のモータ20,22の駆動力の配分率(横軸)と、車両の操縦安定性(縦軸)との関係を規定したマップを示す特性図である。図5において、横軸の配分率は、前後のモータ20,22の総駆動力に対する前輪のモータ20の駆動力の比率を示している。なお、図5に示すマップは、車両500の運転状態(車両速度など)に応じて複数設けても良い。また、図5に示すマップは、実車の適合により作成しても良い。
【0064】
車両500の操縦安定性が図5に示す許容限界を超えると、車両挙動が安定する。一方、操縦安定性が図5に示す許容限界以下であると、車両挙動は不安定になる。図5に示す例では、前後のモータ20,22の総駆動力に対する前輪のモータ20の駆動力の比率を40%〜60%の範囲内とすることで、車両挙動が安定する。つまり、前後の駆動力配分は、前輪40:後輪60
〜 前輪60:後輪40の範囲に制限することが望ましい。
【0065】
図7は、理想駆動力線図を示す模式図である。図7に示す理想駆動力線図は、車両加速度に対する理想的な前輪又は後輪の駆動力配分を示したものであり、車重、ホイールベース、重心高、ロール率から求まる。
【0066】
図7において、横軸は前輪の接地荷重Fzfに対する前輪の前後力Fx(front)の比(=Fx(front)/Fzf)を示している。ここで、前輪の静止時の接地荷重をFzf0、加速による荷重移動量をΔFzxとすると、前輪の接地荷重Fzfは以下の式(5)から算出できる。
Fzf=Fzf0−ΔFzx ・・・(5)
【0067】
また、図7において、縦軸は後輪の接地荷重Fzrに対する後輪の前後力Fx(rear)の比(=Fx(rear)/Fzr)を示している。ここで、後輪の静止時の接地荷重をFzr0、加速による荷重移動量をΔFzxとすると、後輪の接地荷重Fzrは以下の式(6)から算出できる。
Fzr=Fzr0+ΔFzxである。 ・・・(6)
【0068】
また、加速による荷重移動量をΔFzxは、車両重量m、前後加速度a、重心高h、ホイールベースlを用いて、以下の式(7)から算出できる。
ΔFzx=(m・a・h)/(2・l) ・・・(7)
【0069】
図7において、実線で示す曲線は車両500の直進時の特性を示している。また、一点鎖線で示す曲線は車両500の旋回時の特性を示している。
【0070】
また、図7において、5つの二点鎖線は、路面摩擦係数μが、μ=0.2,μ=0.4,μ=0.6,μ=0.8,μ=1.0のそれぞれの場合を示している。更に、5つの破線は、加速度が0.2G、0.4G、0.6G、0.8G、1.0Gのそれぞれの場合を示している。
【0071】
図7によれば、直進の場合、加速度0.2Gでは、前後の駆動力配分が前輪:後輪=52:48程度が理想駆動力配分となり、この状態でμ=0.2の路面にて限界まで駆動力を出力することができる。また、加速度0.6Gでは、前後の駆動力配分が前輪:後輪=47:53程度が理想的な駆動力配分となり、この状態でμ=0.6の路面にて限界まで駆動力を出力することができる。
【0072】
図7に基づく制御方法としては、基本的には領域Rで示す理想駆動力配分となるように前後の駆動力を配分する。すなわち、前輪:後輪=40:60〜前輪:後輪=60:40とする。例えば、図7において、点Eで走行中に前輪のモータ20が最大定格モードから連続定格モードになった場合、前後配分を点F(前輪:後輪=30:70)にすると、車両500が不安定になるため、点G(前輪:後輪=40:60)に制限する。これにより、後輪のモータ22の駆動力を抑制することで、理想駆動力配分の領域内で車両500を駆動することができる。また、点Eで走行中に後輪のモータ22が最大定格モードから連続定格モードになった場合も同様に、後輪の駆動力配分が低下することを抑えるために前輪のモータ20の駆動力を制御し、前後配分を点H(前輪:後輪=60:40)に制限する。このように、太い一点鎖線で示す領域R内で前後の駆動力配分を制御することで、車両500の操縦安定性を高めることが可能である。
【0073】
更に、路面摩擦係数を推定することで、図7に基づいて、車両500が加速する際の加速度の上限をより精度良く定めることができる。路面摩擦係数の推定は、例えば特開2006−46936号公報に記載されている方法等を用いることができる。これにより、領域Rの範囲内で、路面摩擦係数に応じた加速度で車両500を走行させることができる。
【0074】
次に、図6のフローチャートに基づいて、本実施形態の制御装置100における処理の手順について説明する。図6の処理は、所定の制御周期毎に行われる。先ず、ステップS10では、モータ運転状態信号を取得する。
【0075】
モータ運転状態信号は、モータ運転状態信号生成部145によって生成される。モータ運転状態信号生成部145は、前輪のモータ20の過負荷保護フラグと、後輪のモータ22の過負荷保護フラグの状態を確認する。そして、モータ運転状態信号生成部145は、前輪のモータ20に過負荷保護フラグが出されておらず、後輪のモータ22に過負荷保護フラグが出されている場合は、前輪のモータ20のみ最大定格モードが許容されるため、モータ運転状態信号“1”を生成する。また、モータ運転状態信号生成部145は、前輪のモータ20に過負荷保護フラグが出されており、後輪のモータ22に過負荷保護フラグが出されていない場合は、後輪のモータ22のみ最大定格モードが許容されるため、モータ運転状態信号“2”を生成する。また、モータ運転状態信号生成部145は、前輪のモータ20と後輪のモータ22に共に過負荷保護フラグが出されている場合は、前後のモータ20,22のいずれも最大定格モードは許容されないため、モータ運転状態信号“3”を生成する。
【0076】
ステップS12では、モータ運転状態信号が“1”であるか否かを判定し、モータ運転状態信号が“1”の場合はステップS14へ進む。ステップS14では、摩擦円利用率の余裕の範囲内で、走行状態に応じた操縦安定性を確保できる配分となるように、前輪のモータ20の出力を制御する。
【0077】
ステップS14の後はステップS16へ進む。ステップS16では、後輪のモータ22について最大定格モードでの運転が許容されたか否かを判定し、最大定格モードでの運転が許容された場合は、ステップS18へ進む。ステップS18では、走行状態に応じた操安性を確保できる配分となるように、前輪及び後輪のモータ20,22の出力を制御する。これにより、前輪のモータ20は、図3中に点Dで示す回転数、トルクで制御される。
【0078】
一方、ステップS12でモータ運転状態信号が“1”でない場合は、ステップS20へ進む。ステップS20では、モータ運転状態信号が“2”であるか否かを判定し、モータ運転状態信号が“2”の場合はステップS22へ進む。ステップS22では、摩擦円利用率の余裕の範囲内で、走行状態に応じた操安性を確保できる配分となるように、後輪のモータ22の出力を制御する。
【0079】
ステップS22の後はステップS24へ進む。ステップS24では、前輪のモータ20ついて最大定格モードでの運転が許容されたか否かを判定し、最大定格モードでの運転が許容された場合は、ステップS18へ進む。ステップS18では、走行状態に応じた操安性を確保できる配分となるように、前輪及び後輪のモータ20,22の出力を制御する。
【0080】
ステップS14,S18,S22における前輪又は後輪のモータ20,22の出力の制御は、上述したスタビリティファクタA、横滑り角速度、又はヨーレートγに基づく判定により、前輪のモータ20または後輪のモータ22の駆動力配分を調整することで行われる。この際、駆動力配分部140が調整後の駆動力配分を算出し、算出された駆動力配分に基づいて、第1モータ制御部110、第2モータ制御部120が前輪又は後輪のモータ20,22の制御を行う。
【0081】
また、ステップS16,S24における判定では、過負荷保護フラグが解除されたか否かに応じて判定が行われる。例えば、ステップS16では、後輪のモータ22について出されていた過負荷保護フラグが解除された場合に、後輪のモータ22について最大定格モードでの運転が可能になったものと判定する。ステップS24においても同様である。
【0082】
また、ステップS20でモータ運転状態信号が“2”でない場合、すなわち、モータ運転状態信号が“3”の場合、前後のモータ20,22について、連続定格モードでの運転を継続し、次の周期の処理(ステップS10以降)に進む。
【0083】
なお、以上の説明では、前輪を駆動する1つのモータ20と後輪を駆動する1つのモータ22を備えた構成を例に挙げて説明した。各輪を駆動するモータをそれぞれ備える場合は、前輪の1のモータが最大定格モードから連続定格モードに落ちた場合に、上述した手法により前後の駆動力配分に基づいて後輪のモータの制御を行うことができる。
【0084】
以上説明したように本実施形態によれば、前輪のモータ20と後輪のモータ22の一方が最大定格モードの許容範囲を超え、最大定格モードから連続定格モードに落ちた場合に、他方については、操縦安定性を確保できる範囲内で前後の駆動力配分を制御する。これにより、最大定格モードの許容範囲を超えたモータの劣化を抑え、前後のトルク配分に大きな変化が生じさせることなく駆動力を確保するとともに、車両500の操縦安定性を維持することが可能となる。
【0085】
また、前輪のモータ20と後輪のモータ22の一方について最大定格モードによる運転が許容される状態となった場合は、前輪のモータ20と後輪のモータ22の一方についても、操縦安定性を確保できる範囲内で前後の駆動力配分を制御する。これにより、車両500の操縦安定性を維持した状態で、車両500の駆動力を増加することができる。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0087】
19,21 インバータ
20,22 モータ
100 制御装置
110 第1モータ制御部
120 第2モータ制御部
106 駆動力配分制御部
500 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7