特許第6955545号(P6955545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6955545多孔性プラスチックコーティングを生成するためのポリオールエステルの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6955545
(24)【登録日】2021年10月5日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】多孔性プラスチックコーティングを生成するためのポリオールエステルの使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20211018BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20211018BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20211018BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20211018BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20211018BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D5/02
   C09D7/63
   C09D175/04
   C08G18/42
   C08G18/00 F
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-502608(P2019-502608)
(86)(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公表番号】特表2019-527277(P2019-527277A)
(43)【公表日】2019年9月26日
(86)【国際出願番号】EP2017067655
(87)【国際公開番号】WO2018015260
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2020年5月29日
(31)【優先権主張番号】16180041.2
(32)【優先日】2016年7月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クロステルマン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】グロス,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォン ホフ,ヤン マリアン
(72)【発明者】
【氏名】ダール,ヴェレーナ
(72)【発明者】
【氏名】エイルブラクト,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】スプリンガー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンク,ハンス ヘニング
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−034863(JP,A)
【文献】 特開昭61−072003(JP,A)
【文献】 特表2015−529537(JP,A)
【文献】 特開昭64−043576(JP,A)
【文献】 国際公開第02/033001(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01283296(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00、
101/00−201/10
C08G 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性ポリマーコーティングを生成するための、水性ポリマー分散液中の添加剤としてのポリオールエステルの使用であって、
使用される前記ポリオールエステルが、ポリグリセロールエステルを含むことを特徴とする、ポリオールエステルの使用。
【請求項2】
多孔性ポリマーコーティングを生成するための、水性ポリマー分散液中の添加剤としてのポリオールエステルの使用であって、
使用される前記ポリオールエステルが、一般式1、
式1
(ここで、
M=[C(OR’)1/2]、
D=[C(OR’)2/2]、
T=[C3/2]であり、
a=1〜10
b=0〜10
c=0〜3であり、
前記R’ラジカルは、独立して、R’’−C(O)−型又はHの同一又は異なるラジカルであり、
R’’は、3〜39個の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和又は不飽和ヒドロカルビルラジカルであり、
少なくとも1つのR’ラジカルは、前記R’’−C(O)−型のラジカルに対応する)、
及び/又は一般式2、
式2
(ここで、
【化1】
であり、
x=1〜10
y=0〜10
z=0〜3であるが、
但し、少なくとも1つのR’ラジカルは、水素ではなく、なおも上で定義されたようなR’である)、
及び/又は一般式3、
【化2】
(ここで、
k=1〜10であり、
m=0〜10であるが、
但し、前記R’ラジカルの少なくとも1つは、前記R’’−C(O)−型のラジカル、さらには、上で定義されたようなR’であり、k+mの合計は、0より大きく、添え字k及びmを有するフラグメントは、統計的に分布する)
に対応するポリグリセロールエステルの群から選択されるポリオールエステルを含むことを特徴とする、ポリオールエステルの使用。
【請求項3】
前記式1、2及び/又は3のポリオールエステルが、リン酸化されていることを特徴とする、請求項に記載の使用。
【請求項4】
多孔性ポリマーコーティングを生成するための、水性ポリマー分散液中の添加剤としてのポリオールエステルの使用であって、
前記ポリオールエステルが、少なくとも1つのイオン性コサーファクタントとの調合物中において、水性ポリマー分散液中の添加剤として使用され
リオールエステルとコサーファクタントとの総量に基づくイオン性コサーファクタントの割合は、0.1〜50重量%の範囲内であることを特徴とする、ポリオールエステルの使用。
【請求項5】
前記ポリオールエステルが、少なくとも1つのイオン性コサーファクタントとの調合物中において、水性ポリマー分散液中の添加剤として使用され
リオールエステルとコサーファクタントとの総量に基づくイオン性コサーファクタントの割合は、0.1〜50重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の使用。
【請求項6】
多孔性ポリマーコーティングを生成するための、水性ポリマー分散液中の添加剤としてのポリオールエステルの使用であって、
前記水性ポリマー分散液が、水性ポリスチレン分散液、ポリブタジエン分散液、ポリ(メタ)アクリレート分散液、ポリビニルエステル分散液及びポリウレタン分散液の群から選択され、これらの分散液の固体含有量は、20〜70重量%の範囲内であることを特徴とする、ポリオールエステルの使用。
【請求項7】
前記水性ポリマー分散液が、水性ポリスチレン分散液、ポリブタジエン分散液、ポリ(メタ)アクリレート分散液、ポリビニルエステル分散液及びポリウレタン分散液の群から選択され、これらの分散液の固体含有量は、20〜70重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記水性ポリマー分散液中の前記ポリオールエステルの使用濃度が、前記分散液の総重量に基づいて、0.2〜15重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の使用。
【請求項9】
多孔性ポリマーコーティングを生成するための、水性ポリマー分散液中の添加剤としてのポリオールエステルの使用であって、
前記ポリオールエステルが、前記水性ポリマー分散液を発泡させるために発泡助剤又は気泡安定剤として働き、また、乾燥助剤、平滑化添加剤、湿潤剤及び/又はレオロジー添加剤として働くことを特徴とする、ポリオールエステルの使用。
【請求項10】
前記ポリオールエステルが、前記水性ポリマー分散液を発泡させるために発泡助剤又は気泡安定剤として働き、また、乾燥助剤、平滑化添加剤、湿潤剤及び/又はレオロジー添加剤として働くことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の使用。
【請求項11】
水性ポリマー分散液中の添加剤としてポリオールエステルを使用して、多孔性ポリマーコーティングを生成するためのプロセスであって、
a)水性ポリマー分散液、ポリグリセロールエステル、並びに必要に応じてさらなる添加剤を含む混合物を提供する工程、
b)前記混合物を発泡させて、発泡体を得る工程、
c)必要に応じて少なくとも1つの増粘剤を加えて、所望の粘度の湿潤発泡体を確立する工程、
d)前記発泡されたポリマー分散液のコーティングを好適な担体に適用する工程、
e)前記コーティングを乾燥させる工程
を含む、プロセス。
【請求項12】
多孔性ポリマーコーティングであって、係るポリマーコーティングの生成において水性ポリマー分散液中の添加剤として、ポリグリセロールエステルを含む、ポリオールエステルを使用することによって入手可能であり
但し、前記多孔性ポリマーコーティングは、150μm未満の平均セルサイズを有する、多孔性ポリマーコーティング。
【請求項13】
(a)少なくとも1種のカルボン酸による、ポリオールのエステル化、及び
(b)その後のリン酸化試薬との反応、及び
(c)その後の自由選択の中
によって入手可能な、リン酸化されたポリオールエステルであって、前記リン酸化試薬は、オキシ塩化リン、五酸化リン(P4O10)及び/又はポリリン酸を含む、リン酸化されたポリオールエステル。
【請求項14】
リン酸化されたポリグリセロールエステル及び/又はリン酸化されたソルビタンエステルであることを特徴とする、請求項13に記載のリン酸化されたポリオールエステル。
【請求項15】
一般式1a、
式1a
(ここで
M=[C(OR’)1/2]、
D=[C(OR’)2/2]、
T=[C3/2]であり、
a=1〜10
b=0〜10
c=0〜3であり、
前記R’ラジカルは、独立して、(R’’’O)P(O)−、R’’−C(O)−型又はHの同一又は異なるラジカルであり、
R’’は、3〜39個の炭素原子の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和又は不飽和ヒドロカルビルラジカルであり、
少なくとも1つのR’ラジカルは、前記R’’−C(O)−型のラジカルに対応し、少なくとも1つのR’ラジカルは、前記(R’’’O)P(O)−型のラジカルに対応し、
前記R’’’ラジカルは、各々独立して、陽イオン、は官能化されたアルキルラジカルでもあり得る、モノ−、ジ−及びトリアルキルアミンのアンモニウムイオン、又はH、又はR’’’’−O−であり、
R’’’’は、3〜39個の炭素原子の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和もしくは不飽和ヒドロカルビルラジカル、又はポリオールラジカルである)
及び/又は一般式2a、
式2a
(ここで、
【化3】
であり、
x=1〜10
y=0〜10
z=0〜3であるが、
但し、少なくとも1つのR’ラジカルは、前記R’’−C(O)−型のラジカルに対応し、少なくとも1つのR’ラジカルは、前記(R’’’O)P(O)−型、さらには、上で定義されたようなR’のラジカルに対応する)
及び/又は一般式3a、
【化4】
(ここで、
k=1〜10
m=0〜10であるが、
但し、少なくとも1つのR’ラジカルは、前記R’’−C(O)−型のラジカルに対応し、少なくとも1つのR’ラジカルは、前記(R’’’O)P(O)−型のラジカル、さらには、上で定義されたようなR’に対応し、k+mの合計は、0より大きく、添え字k及びmを有するフラグメントは、統計的に分布する)
に対応する、リン酸化されたポリグリセロールエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックコーティング、合成皮革及びポリオールエステルの分野におけるものである。
【0002】
本発明は、より詳細には、添加剤としてポリオールエステルを使用した多孔性ポリマーコーティング、特に、多孔性ポリウレタンコーティングの生成に関する。
【背景技術】
【0003】
プラスチックでコーティングされた布地、例えば、合成皮革は、一般に、多孔性ポリマー層を積層した布地担体からなり、その多孔性ポリマー層はさらに、上層又はトップコートでコーティングされる。
【0004】
多孔性ポリマー層は、この文脈において、好ましくはマイクロメートル範囲の細孔を有し、空気透過性したがって通気性、すなわち水蒸気を透過するが、耐水性である。多孔性ポリマー層は、多孔性ポリウレタンを含むことが多い。現在、多孔性ポリウレタン層は、通常、DMFを溶媒として使用する凝固法によって生成される。しかしながら、環境への懸念のため、この生成方法はますます非難されるようになっているので、より環境に優しい他の技術に徐々に引き継がれるべきである。これらの技術の1つは、PUDと呼ばれる水性ポリウレタン分散液に基づくものである。これらは一般に、水に分散されたポリウレタン微小粒子からなり、固体含有量は通常30〜60重量%の範囲内である。多孔性ポリウレタン層を生成するために、これらのPUDは機械的に発泡され、担体にコーティングされ(典型的には300〜2000μmの厚さの層)、次いで、高温で乾燥される。この乾燥工程中に、PUD系に存在する水の蒸発が生じ、それにより、ポリウレタン粒子のフィルムが形成される。このフィルムの機械的強度をさらに高めるために、生成プロセス中のPUD系に親水性(ポリ)イソシアネートを加えることがさらに可能であり、これらは、乾燥工程中に、ポリウレタン粒子の表面上に存在する遊離OHラジカルと反応できるので、ポリウレタンフィルムのさらなる架橋がもたらされる。
【0005】
このように生成されたPUDコーティングの機械的特性と触覚特性の両方が、多孔性ポリウレタンフィルムのセル構造によって重要な程度に決定される。さらに、多孔性ポリウレタンフィルムのセル構造は、その材料の空気透過性及び通気性に影響する。特に良好な特性は、非常に微細な均一に分布したセルによって達成され得る。上記の生成プロセス中にセル構造に影響を及ぼす通例の手法は、機械的発泡前又は機械的発泡中にPUD系に界面活性剤を加えることである。適切な界面活性剤の第1の効果は、発泡操作中に、十分な量の空気がPUD系に撹拌されながら加えられ得ることである。第2に、それらの界面活性剤は、そのようにして形成される気泡の形態に直接影響を及ぼす。気泡の安定性もまた、界面活性剤のタイプによって重要な程度に影響される。このようにしてセルの粗大化又は乾燥亀裂などの乾燥作用を防止することが可能であるので、これは特に、発泡されたPUDコーティングの乾燥において重要である。
【0006】
従来技術は、多孔性のPUD系繊維複合材料を作製するために使用され得るいくつかのイオン性及び非イオン性界面活性剤を開示している。通常、ステアリン酸アンモニウムに基づく陰イオン性の界面活性剤が、この文脈において特に好ましい。例えば、米国特許出願公開第2015/0284902(A1)号明細書又は米国特許出願公開第2006/0079635(A1)号明細書を参照のこと。
【0007】
しかしながら、ステアリン酸アンモニウムの使用は、様々な不都合を伴う。第1に、ステアリン酸アンモニウムは、硬水の影響を受けやすい。カルシウムイオンを含むポリマー分散液では、不溶性カルシウム石鹸が形成することがあり、それにより、ポリマー分散液のフロキュレーション又はゲル化が生じる。さらに、ステアリン酸アンモニウムに基づいて作製された合成皮革は、硬水と接触するとカルシウム石鹸が合成皮革表面に形成することがあり、これらが白斑として現れるという欠点を有する。これは特に暗色の合成皮革の場合に望ましくない。さらに、ステアリン酸アンモニウムは、乾燥したポリウレタンフィルムにおいてかなり高い移動能力を有するという欠点を有する。特に、水と接触すると、不快と認知される潤滑なフィルムが合成皮革コーティングの表面に生じることがある。ステアリン酸アンモニウムのさらなる欠点は、十分な気泡安定性に到達できるために、通常、他の界面活性剤と併用して使用されなければならないという点である。従来技術は、例えば、スルホスクシナメートを記載している。これらのさらなる成分によって、使用の複雑さが高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明によって対処される課題は、ステアリン酸アンモニウムの使用に関連する従来技術で詳述された欠点を受け入れずにPUD系を効率的に発泡させることを可能にすることであった。驚くべきことに、ポリオールエステルを使用することによって、述べた課題が解決できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、多孔性ポリマーコーティングを生成するため、好ましくは、多孔性ポリウレタンコーティングを生成するための、水性ポリマー分散液中での添加剤としてのポリオールエステルの使用を提供する。本発明に従って生成される多孔性ポリマー層(すなわち、多孔性ポリマーコーティング)は、好ましくはマイクロメートル範囲の細孔を有し、平均セルサイズは、好ましくは150μm未満、好ましくは120μm未満、特に好ましくは100μm未満、最も好ましくは75μm未満である。好ましい層の厚さは10〜10000μm、好ましくは50〜5000μm、さらに好ましくは75〜3000μm、特に100〜2500μmの範囲内である。
【0010】
ポリオールエステルの本発明の使用は、驚くべきことに、様々な利点を有する。
【0011】
それは、ポリマー分散液の効率的な発泡を可能にする。そのように生成された発泡体は、特に均一なセル分布を有する極めて微細な細孔構造について注目すべきであり、これは、これらの発泡体に基づいて生成された多孔性ポリマーコーティングの機械的特性及び触覚特性に対して非常に有益な影響を及ぼす。さらに、このようにしてコーティングの空気透過性又は通気性を改善することが可能である。
【0012】
本発明に従って使用するためのポリオールエステルのさらなる利点は、それらが特に安定した気泡を生成することが可能であるという点である。これは第1に、それらの加工性に対して有益な効果がある。第2に、高い気泡安定性は、対応する発泡体の乾燥中に、セルの粗大化又は乾燥亀裂などの乾燥欠陥を回避できるという利点を有する。さらに、改善された気泡安定性のおかげで、より迅速な発泡体の乾燥が可能になり、環境的観点と経済的観点の両方から加工利点がもたらされる。
【0013】
本発明に従って使用するためのポリオールエステルのさらに別の利点は、特に、乾燥中にさらなる(親水性)(ポリ)イソシアネートがその系に加えられたとき、それらが、乾燥されたポリマーフィルム、特にポリウレタンフィルムにおいてもはや移動できないという点である。
【0014】
本発明に従って使用するためのポリオールエステルのさらなる利点は、それらが、発泡された未乾燥の分散液の粘度を高め得るという点である。これは、さらに、発泡体の加工性に対して有益な効果があり得る。さらに、場合によっては、結果的に、発泡体の粘度を調整するための追加の増粘剤の使用を不要にするか又はその使用濃度を低下させることが可能である場合があり、これは、経済的利点をもたらす。
【0015】
本発明に従って使用するためのポリオールエステルのさらに別の利点は、それらが、硬水に対して、仮にあったとしても低い感受性しか有しないという点である。
【0016】
本発明に従って使用するためのポリオールエステルのさらなる利点は、さらなる界面活性剤を使用しなくても水性ポリマー分散液に基づいて十分な気泡の安定化がもたらされるという点である。これにより、ユーザー側の好適な発泡体配合物のアセンブリの複雑さが低下し得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語「ポリオールエステル」は、本発明全部の文脈において、そのアルコキシル化された付加物も包含し、その付加物は、ポリオールエステルとアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応によって得ることができる。
【0018】
用語「ポリオールエステル」は、本発明全体の文脈において、そのイオン性誘導体、好ましくは、リン酸化された誘導体及び硫酸化された誘導体、特に、リン酸化されたポリオールエステルも包含する。ポリオールエステルのこれらの誘導体、特に、リン酸化されたポリオールエステルは、本発明に従って好ましく使用可能なポリオールエステルである。ポリオールエステルのこれらの誘導体及びさらなる誘導体は、本明細書中以後に詳細に記載され、本発明の文脈において好ましく使用可能である。
【0019】
本発明は、本明細書中以後、さらに例示として記載されるが、本発明がこれらの例証的な実施形態に限定されるといういかなる意図もない。化合物の範囲、一般式又はクラスが下記で明示されるとき、これらは明示的に述べられた化合物の対応する範囲又は群だけでなく、個別の値(範囲)又は化合物を除外することによって導くことができる化合物の部分的な範囲及びサブグループのすべても包含すると意図される。本説明の文脈において文献が引用されるとき、その内容、特にその文献が引用されている文脈を形成している主題に関する内容は、それらの全体が本発明の開示内容の一部を形成するとみなされる。別段述べられない限り、パーセンテージは重量パーセントを単位とする数である。計測値によって明らかにされたパラメータが下記で報告されるとき、その計測値は別段述べられない限り25℃という温度及び101325Paという圧力において測定された。
【0020】
本発明の文脈において、好ましいものとしては、特に、少なくとも1種のカルボン酸によるポリオールのエステル化によって入手可能なポリエステルが挙げられる。これは、本発明の好ましい実施形態に対応する。
【0021】
本発明に係るポリオールエステルを調製するために使用される好ましいポリオールは、C−Cポリオール並びにそのオリゴマー及び/又はコオリゴマーの群から選択される。コオリゴマーは、異なるポリオールの反応、例えば、プロピレングリコールとアラビトールとの反応によって生じる。特に好ましいポリオールは、プロパン−1,3−ジオール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトール、イソソルビド、エリトリトール、トレイトール、ペンタエリトリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、フシトール、マンニトール、ガラクチトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール及びグルコースである。特に非常に好ましいものとしては、グリセロールが挙げられる。好ましいポリオールオリゴマーは、1〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2.5〜8個の繰り返し単位を有するC−Cポリオールのオリゴマーである。特に好ましいのは、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ジエリトリトール、トリエリトリトール、テトラエリトリトール、ジ(トリメチロールプロパン)、トリ(トリメチロールプロパン)並びに二糖及びオリゴ糖である。特に非常に好ましいものとしては、ソルビタン並びにオリゴグリセロール及び/又はポリグリセロールが挙げられる。特に、異なるポリオールの混合物を使用することが可能である。さらに、本発明に係るポリエステルを調製するために、C−Cポリオール、そのオリゴマー及び/又はコオリゴマーと、アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応によって得ることができる、C−Cポリオールのアルコキシル化付加物、そのオリゴマー及び/又はコオリゴマーを得ることも可能である。
【0022】
本発明に係るポリオールエステルを調製するために、モノカルボン酸及び/又は多官能ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸を使用することが可能である。本発明に係るポリオールエステルを調製するために使用される好ましいカルボン酸は、一般形態R−C(O)OH(式中、Rは、3〜39個の炭素原子、好ましくは7〜21個、より好ましくは9〜17個の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和又は不飽和ヒドロカルビルラジカルである)に対応する。特に好ましいのは、酪酸(ブタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキン酸(エイコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラコサン酸)、パルミトレイン酸((Z)−9−ヘキサデセン酸)、オレイン酸((Z)−9−ヘキサデセン酸)、エライジン酸((E)−9−オクタデセン酸)、cis−バクセン酸((Z)−11−オクタデセン酸)、リノール酸((9Z,12Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アルファ−リノレン酸((9Z,12Z,15Z)−9,12,15−オクタデカトリエン酸)、ガンマ−リノレン酸((6Z,9Z,12Z)−6,9,12−オクタデカトリエン酸)、ジ−ホモ−ガンマ−リノレン酸((8Z,11Z,14Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)、アラキドン酸((5Z,8Z,11Z,14Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、エルカ酸((Z)−13−ドコセン酸)、ネルボン酸((Z)−15−テトラコセン酸)、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸及びウンデセニル酸並びにそれらの混合物から選択されるカルボン酸、例えば、菜種油酸、大豆脂肪酸、ヒマワリ脂肪酸、落花生脂肪酸及びトール油脂肪酸である。特に非常に好ましいものとしては、パルミチン酸及びステアリン酸、特に、これらの物質の混合物が挙げられる。
【0023】
好適な脂肪酸又は脂肪酸エステル、特にグリセリドの起源は、植物性又は動物性の脂肪、油又は蝋であり得る。例えば、豚脂、牛脂、ガチョウ脂肪、アヒル脂肪、ニワトリ脂肪、ウマ脂肪、鯨油、魚油、パーム油、オリーブ油、アボカド油、種子核油、ヤシ油、パーム核油、カカオバター、綿実油、カボチャ種子油、トウモロコシ核油、ヒマワリ油、麦芽油、ブドウ種油、ゴマ油、アマニ油、ダイズ油、落花生油、ルピナス油、菜種油、カラシ油、ヒマシ油、ジャトロファ(jatropha)油、クルミ油、ホホバ油、レシチン、例えば、ダイズ、ナタネ又はヒマワリに基づくレシチン、骨油、牛脚油、ルリヂサ油、ラノリン、エミューオイル、シカ脂、マーモット油、ミンク油、ルリヂサ油、ベニバナ油、ヘンプオイル、カボチャ油、月見草油、トール油、及びまた、カルナウバロウ、蜜蝋、カンデリラロウ、オウリカリロウ、サトウキビロウ、レタモワックス、キャランデイワックス、ラフィアワックス、エスパルトワックス、アルファルファワックス、竹蝋、ヘンプワックス、松葉蝋、コルク蝋、シサル蝋、亜麻ワックス、綿実蝋、ダンマルワックス、ティーワックス、コーヒーワックス、ライスワックス、キョウチクトウワックス、蜜蝋又は羊毛蝋を使用することが可能である。
【0024】
さらに、それは、多官能ジカルボン酸及びトリカルボン酸又はジカルボン酸及びトリカルボン酸の環状無水物が、本発明に係るポリオールエステルを調製するために使用されるとき有益であり得、それによって、ポリオールポリエステルが入手可能である。四官能性及び高官能性カルボン酸又はそれらの無水物も同様に、本発明の文脈において好ましく使用可能である。好ましいものとしては、2〜18個の炭素原子の鎖長を有する脂肪族の直鎖又は分枝鎖のジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸及び/又は12〜22個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の触媒的二量体化によって得られる二量体脂肪酸が挙げられる。対応する多官能酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、タプシン酸、タルトロン酸、酒石酸、リンゴ酸又はクエン酸である。特に好ましくは、多官能ジカルボン酸及びトリカルボン酸は、上記のような単官能性カルボン酸と組み合わせて使用され、それによって、部分的に架橋されたポリオールエステルが入手可能である。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態において、ポリオールエステルは、ソルビタンエステル及び/又はポリグリセロールエステルの群から選択される。特に非常に好ましいものとしては、ポリグリセロールエステル、特に、ポリグリセロールパルミテート及びポリグリセロールステアレート並びにこれらの物質の混合物が挙げられる。
【0026】
ここで特に好ましいのは、一般式1に対応するポリグリセロールエステルである。
式1
ここで、
M=[C(OR’)1/2]、
D=[C(OR’)2/2]、
T=[C3/2]であり、
a=1〜10、好ましくは2〜3、特に好ましくは、
b=0〜10、好ましくは0より大きく5まで、特に好ましくは1〜4、
c=0〜3、好ましくは0であり、
R’ラジカルは、独立して、R’’−C(O)−型又はHの同一又は異なるラジカルであり、
R’’は、3〜39個の炭素原子、好ましくは7〜21個、より好ましくは9〜17個の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和又は不飽和ヒドロカルビルラジカルであり、
少なくとも1つのR’ラジカルは、R’’−C(O)−型のラジカルに対応する。
【0027】
さらにより好ましいのは、一般式2に対応するポリグリセロールエステルである。
式2
式中、
【化1】
x=1〜10、好ましくは2〜3、特に好ましくは2であり、
y=0〜10、好ましくは0より大きく5まで、特に好ましくは1〜4であり、
z=0〜3、好ましくは0より大きく2まで、特に好ましくは0であるが、
但し、少なくとも1つのR’ラジカルは、水素ではなく、なおも式1で定義されたようなR’である。
【0028】
さらに好ましいのは、一般式3のポリグリセロールエステルである。
【化2】
ここで、
k=1〜10、好ましくは2〜3、特に好ましくは2、
m=0〜10、好ましくは0より大きく5まで、特に好ましくは1〜3であるが、
但し、R’ラジカルの少なくとも1つは、R’’−C(O)−型のラジカルであり、k+mの合計は、0より大きく、添え字k及びmを有するフラグメントは、統計的に分布する。
【0029】
本発明の文脈において、用語「ポリグリセロール」は、グリセロールも含み得るポリグリセロールを意味すると特に理解される。したがって、量、質量などを計算する目的では、いずれのグリセロール部分も考慮されるべきである。ゆえに、本発明の文脈において、ポリグリセロールは、少なくとも1つのグリセロールオリゴマー及びグリセロールを含む混合物でもある。グリセロールオリゴマーは、いずれの場合にも、関連するすべての構造、すなわち、例えば、直鎖、分枝鎖及び環式の化合物を意味すると理解されるべきである。
【0030】
ランダム分布は、任意の所望のブロック数、及び任意の所望の配列、すなわちランダム化された分布を有するブロックから構成され、それらはまた、交互の構造を有し得るか、又は鎖に沿って勾配を形成し得る。特に、それらは、異なる分布の群が必要に応じて互いに用い得る任意の混合型も構成し得る。特定の実施形態の性質は、ランダム分布に対して制限をもたらし得る。その制限に影響されないすべての領域において、ランダム分布に対する変更はない。
【0031】
好ましくは、本発明に従って使用可能なポリグリセロールエステルは、多くとも4つ、より好ましくは多くとも3つ、なおもさらに好ましくは多くとも2つのR’’−C(O)−型のR’ラジカルを有する。特に好ましくは、R’ラジカルは上記のようなカルボン酸の群から選択される。
【0032】
本発明の同様に好ましい実施形態において、水性ポリマー分散液中で添加剤として使用されるポリグリセロールエステルは、少なくとも1つのポリグリセロールと上記のような少なくとも1種のカルボン酸との反応によって入手可能なポリグリセロールエステルである。この反応に適した反応条件は、好ましくは200〜260℃の温度、好ましくは20〜800mbar、好ましくは50〜500mbarの範囲内の減圧であり、これにより、容易に水の除去が可能になる。
【0033】
構造上の用語において、ポリオールエステルは、湿式化学の指標、例えば、ヒドロキシル価、酸価及び加水分解価によって特徴づけられ得る。ヒドロキシル価を求めるための好適な方法は、特に、DGF C−V17a(53)、Ph.Eur.2.5.3 Method A及びDIN53240に従った方法である。酸価を求めるための好適な方法は、特に、DGF C−V2、DIN EN ISO2114、Ph.Eur.2.5.1、ISO3682及びASTM D974に従った方法である。加水分解価を求めるための好適な方法は、特に、DGF C−V3、DIN EN ISO3681及びPh.Eur.2.5.6に従った方法である。
【0034】
それは、本発明に従って好ましく、ポリグリセロールエステルを調製するために、1〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2.5〜8という平均縮合度を有するポリグリセロールが使用されるとき、本発明の特に好ましい実施形態に対応する。平均縮合度Nは、ここではポリグリセロールのOH価(OHN、単位はmgKOH/g)に基づいて求めることができ、
N=(112200−18・OHN)/(75・OHN−56100)
に従ってそれに関連づけられる。
【0035】
ポリグリセロールのOH価は、上記のように求めることができる。したがって、本発明に係るポリグリセロールエステルを調製するための好ましいポリグリセロールは、好ましくは1829〜824、より好ましくは1352〜888、特に好ましくは1244〜920mgKOH/gというOH価を有するポリグリセロールである。
【0036】
使用されるポリグリセロールは、種々の従来の方法、例えば、グリシドールの重合(例えば、塩基によって触媒されるもの)、エピクロロヒドリンの重合(例えば、NaOHなどの塩基の存在下におけるもの)又はグリセロールの重縮合によって提供され得る。本発明によれば、好ましいものとしては、特に、触媒量の塩基、特に、NaOH又はKOHの存在下における、グリセロールの縮合によるポリグリセロールの提供が挙げられる。好適な反応条件は、200〜260℃の温度及び20〜800mbar、特に、50〜500mbarの範囲内の減圧であり、これにより、容易に水の除去が可能になる。さらに、様々な市販のポリグリセロールが、例えば、Solvay、Inovyn、Daicel及びSpiga Nord S.p.Aから入手可能である。
【0037】
ポリグリセロールとカルボン酸、特に、脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル(例えば、トリグリセリド)との反応、並びにポリグリセロールの提供は、両方とも、当業者によく知られた広く実践されているプロセスによって実施され得る。対応するプロセスは、例えば、Rompp−Chemie Lexikon(Thieme−Verlag,1996)に記載されている。
【0038】
本発明の文脈において好ましいソルビタンエステルは、主に1,4−及び1,5−ソルビタンエステルの混合物をもたらす、200〜260℃の温度における、必要に応じて好適な触媒の存在下での、ソルビトール又はソルビトール水溶液と上記のような少なくとも1種のカルボン酸との反応によって得られるソルビタンエステルである。対応するプロセスは、例えば、Rompp−Chemie Lexikon(Thieme−Verlag,1996)に記載されている。
【0039】
用語「ポリオールエステル」は、本発明全体の文脈において、そのイオン性誘導体、好ましくはリン酸化された誘導体及び硫酸化された誘導体、特に、リン酸化されたポリオールエステルも包含することが、すでに明らかにされている。リン酸化されたポリオールエステルは、ポリオールエステルとリン酸化試薬との反応、及びその後の自由選択の、好ましくは必須の、中和によって入手可能である(特に、Industrial Applications of Surfactants.II.Preparation and Industrial Applications of Phosphate Esters.D.R.Karsa編,Royal Society of Chemistry,Cambridge,1990を参照)。本発明の文脈において好ましいリン酸化試薬は、オキシ塩化リン、五酸化リン(P10)、より好ましくはポリリン酸である。用語「リン酸化されたポリオールエステル」は、本発明の全範囲にわたって、部分的にリン酸化されたポリオールエステルも網羅し、用語「硫酸化されたポリオールエステル」は、本発明の全範囲にわたって、部分的に硫酸化されたポリオールエステルも網羅する。
【0040】
さらに、本発明全部の文脈において、ポリエステルとジカルボン酸もしくはトリカルボン酸又は対応する環状無水物、より好ましくは、無水コハク酸との反応、及び自由選択の、好ましくは必須の、中和によって、ポリオールエステルのイオン性誘導体を得ることも可能である。これらのポリオールエステルは、本発明の文脈において特に好ましく使用可能である。
【0041】
さらに、本発明全部の文脈において、ポリエステルと、不飽和ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸又は対応する環状無水物との反応、及びその後のスルホン化、及び自由選択の、好ましくは必須の、中和によって、ポリオールエステルのイオン性誘導体を得ることも可能である。これらのポリオールエステルはまた、本発明の文脈において特に好ましく使用可能である。
【0042】
用語「中和」は、本発明の全範囲にわたって、部分的な中和も網羅する。部分的な中和を含む中和のために、通例の塩基を使用することが可能である。これらには、水溶性金属水酸化物、例えば、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化タリウム(I)、好ましくは、水溶液中で遊離金属イオン及び水酸化物イオンに解離するアルカリ金属の水酸化物、特に、NaOH及びKOHが含まれる。これらには、水と反応して、水酸化物イオンを形成するアンヒドロ塩基、例えば、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化リチウム、酸化銀及びアンモニアも含まれる。塩基として使用可能な物質は、これらの上述のアルカリのみならず、水に溶解されるとアルカリ性反応を同様に起こすHO−を有しない(固体化合物において)物質でもある。これらの例としては、例えば、アミドアミン、モノ−、ジ−及びトリアルカノールアミン、モノ−、ジ−及びトリアミノアルキルアミンの場合におけるような官能化されたアルキルラジカルでもあり得る、アミン、例えば、モノ−、ジ−及びトリアルキルアミン、並びに例えば、弱酸の塩、例えば、シアン化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどが挙げられる。
【0043】
本発明に係るポリオールエステルのイオン性誘導体について、特に非常に好ましいものとしては、リン酸化されたソルビタンエステル及び/又はリン酸化されたポリグリセロールエステル、特に、リン酸化されたポリグリセロールエステルが挙げられる。より詳細には、リン酸化され中和されたポリグリセロールステアレート及びポリグリセロールパルミテート並びにそれらの2つの物質の混合物が、本発明の文脈において、ポリオールエステルの好ましいイオン性誘導体である。
【0044】
本発明の特に好ましい実施形態は、上で明示されたような式1、2及び/又は3のポリオールエステルの本発明に従った使用を想定するが、但し、それらは、式1、2及び/又は3のこれらのポリエステルが、特に、R’ラジカルとして少なくとも1つの(R’’’O)P(O)−ラジカルを有するように、(少なくとも部分的に)リン酸化され、R’’’ラジカルは、独立して、陽イオン、好ましくは、Na+、K+もしくはNH4+、又は例えば、アミドアミン、モノ−、ジ−及びトリアルカノールアミン、モノ−、ジ−及びトリアミノアルキルアミンの場合におけるような、官能化されたアルキルラジカルでもあり得る、モノ−、ジ−及びトリアルキルアミンのアンモニウムイオン、又はH、又はR’’’’−O−であり、
R’’’’は、3〜39個の炭素原子、好ましくは7〜22個、より好ましくは9〜18個の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和もしく又は不飽和ヒドロカルビルラジカル、又はポリオールラジカルである。
【0045】
硫酸化されたポリオールエステルの場合、好ましいものとしては、特に、ポリオールエステルと三酸化硫黄又はアミドスルホン酸との反応によって入手可能なものが挙げられる。好ましいものとしては、硫酸化されたソルビタンエステル及び/又は硫酸化されたポリグリセロールエステル、特に、硫酸化されたポリグリセロールステアレート及び硫酸化されたポリグリセロールパルミテート並びにこれらの2つの物質の混合物が挙げられる。本発明の特に好ましい実施形態において、ポリエステルは、ニートの形態で使用されず、少なくとも1つのコサーファクタントとの調合物において水性ポリマー分散液中の添加剤として使用される。本発明に従って好ましいコサーファクタントは、例えば、脂肪酸アミド、アルコールアルコキシレート、例えば、脂肪アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体、ベタイン、例えば、アミドプロピルベタイン、アミンオキシド、四級アンモニウム界面活性剤又は両性酢酸塩である。さらに、コサーファクタントは、シリコン系界面活性剤、例えば、トリシロキサン界面活性剤又はポリエーテルシロキサンを含み得る。
【0046】
特に好ましいコサーファクタントは、イオン性、好ましくは、陰イオン性のコサーファクタントである。好ましいイオン性コサーファクタントは、脂肪酸のアンモニウム塩及び/又はアルカリ金属塩、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルスルホスクシネート、アルキルスルホスクシナメート及びアルキルサルコシネートである。特に好ましいのは、12〜20個の炭素原子、より好ましくは14〜18個の炭素原子、なおもより好ましくは16個を超えて18個までの炭素原子を有するアルキルサルフェートである。脂肪酸のアンモニウム塩及び/又はアルカリ金属塩の場合、それは、それらが25重量%未満のステアリン酸塩を含むとき、特に、ステアリン酸塩を含まないとき、好ましい。
【0047】
コサーファクタントを使用する場合、それは、ポリオールエステル及びコサーファクタントの総量に基づくコサーファクタントの割合が、0.1〜50重量%の範囲内、好ましくは0.2〜40重量%の範囲内、より好ましくは0.5〜30重量%の範囲内、なおもより好ましくは1〜25重量%の範囲内であるとき、特に好ましい。
【0048】
すでに記載されたように、本発明は、多孔性ポリマーコーティングを生成するための、水性ポリマー分散液中の添加剤としてのポリオールエステルの使用を提供する。ポリマー分散液は、好ましくは、水性ポリスチレン分散液、ポリブタジエン分散液、ポリ(メタ)アクリレート分散液、ポリビニルエステル分散液及びポリウレタン分散液の群から選択される。これらの分散液の固体含有量は、好ましくは20〜70重量%の範囲内、より好ましくは25〜65重量%の範囲内である。特に好ましいものとしては、本発明に従って、水性ポリウレタン分散液中の添加剤としてのポリオールエステルの使用が挙げられる。特に好ましいのは、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール及びポリエーテルポリオールに基づくポリウレタン分散液である。
【0049】
水性ポリマー分散液における本発明に係るポリオールエステルの使用濃度は、その分散液の総重量に基づいて、好ましくは0.2〜15重量%の範囲内、より好ましくは0.4〜10重量%の範囲内、特に好ましくは0.5〜7.5重量%の範囲内である。
【0050】
ポリオールエステルは、ニートで又は好適な溶媒で希釈された状態で水性分散液に加えられ得る。好ましい溶媒は、水、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、EO、PO、BO及び/又はSOに基づくポリアルキレングリコール、並びにこれらの物質の混合物から選択される。本発明のポリオールエステルの水溶液又は調合物の場合、それは、配合物の特性(粘度、均一性など)を改善するためにその調合物に向水性化合物が加えられるとき、有益であり得る。向水性化合物は、親水性部分及び疎水性部分からなる水溶性有機化合物であるが、分子量が小さすぎて界面活性剤特性を有しない。それらは、水性配合物中の有機物質、特に、疎水性有機物質の溶解度又は溶解特性を改善する。用語「向水性化合物」は、当業者に公知である。本発明の文脈における好ましい向水性化合物は、アルカリ金属及びアンモニウムトルエンスルホネート、アルカリ金属及びアンモニウムキシレンスルホネート、アルカリ金属及びアンモニウムナフタレンスルホネート、アルカリ金属及びアンモニウムクメンスルホネート、並びにフェノールアルコキシレート、特に、最大6つのアルコキシレート単位を有する、フェニルエトキシレートである。
【0051】
水性ポリマー分散液は、本発明に係るポリオールエステルのみならず、さらなる添加剤、例えば、充填剤、有機及び無機色素、艶消し剤、安定剤、例えば、加水分解安定剤又はUV安定剤、酸化防止剤、吸収剤、架橋剤、平滑化添加剤、増粘剤又は必要に応じて上記のような他のコサーファクタントも含み得る。
【0052】
本発明の文脈において、特に非常に好ましいものとしては、各々の場合において、
(a)陰イオン性コサーファクタント、好ましくはアルキルサルフェート、最も好ましくはセテアリールサルフェートとの調合物におけるポリグリセロールエステル、特に、ポリグリセロールパルミテート及び/又はポリグリセロールステアレート、又は、
(b)ポリグリセロールエステルと、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸又は対応する環状無水物、より好ましくは、無水コハク酸との反応産物、及びその後の中和、例えば、より詳細には、アルカリ金属ポリグリセロールパルミテートスクシネート及び/又はアルカリ金属ポリグリセロールステアレートスクシネート、又は、
(c)リン酸化され中和されたポリグリセロールステアレート及び/又はリン酸化され中和されたポリグリセロールパルミテート、の本発明の使用が挙げられる。
【0053】
都合の良いことに、本発明に係るポリグリセロールエステル、特に、上述の種は、溶媒中の調合物としての水性ポリマー分散液中の添加剤として使用され、最も好ましく使用される溶媒は、水である。そしてそれは、対応する調合物が、10%〜50重量%、より好ましくは15%〜40重量%、なおもより好ましくは20%〜30重量%の本発明に係るポリグリセロールエステルを含むとき、好ましい。
【0054】
好ましくは、本発明に係るポリオールエステルは、分散液の発泡のために発泡助剤又は気泡安定剤として水性ポリマー分散液中で使用される。しかしながら、さらにそれらは、乾燥助剤、平滑化添加剤、湿潤剤及びレオロジー添加剤としても使用され得る。
【0055】
上記のように、ポリオールエステルは、水性ポリマー分散液から生成される多孔性ポリマーコーティングの明確な改善をもたらすので、本発明は同様に、上で詳細に記載されたような、本発明のポリオールエステルの少なくとも1つを含む水性ポリマー分散液を提供する。
【0056】
本発明はなおもさらに、上で詳細に記載されたように本発明に係るポリオールエステルを添加剤として使用して得られる水性ポリマー分散液から生成された多孔性ポリマー層を提供する。
【0057】
好ましくは、本発明に係る多孔性ポリマーコーティングは、
a)上記のような水性ポリマー分散液、本発明に係るポリオールエステルの少なくとも1つ及び必要に応じてさらなる添加剤を含む混合物を提供する工程、
b)混合物を発泡させて、均一な微細なセルの発泡体を得る工程、
c)必要に応じて少なくとも1つの増粘剤を加えて、湿潤発泡体の粘度を確立する工程、
d)発泡されたポリマー分散液のコーティングを好適な担体に適用する工程、
e)コーティングを乾燥させる工程
を含むプロセスによって生成され得る。
【0058】
好ましい構成、特に、プロセスにおいて好ましく使用可能なポリオールエステル及び好ましく使用可能な水性ポリマー分散液に関しては、前述の説明及びまた、特に、請求項2〜10において詳述されるような上述の好ましい実施形態を参照されたい。
【0059】
上に示されたような本発明に係るプロセスのプロセス工程は、いかなる固定された時間的順序にも支配されないことが明らかにされている。例えば、プロセス工程c)は、プロセス工程a)と同時の初期段階において実行され得る。
【0060】
それは、プロセス工程b)において、水性ポリマー分散液が高剪断力の適用によって発泡されるとき、本発明の好ましい実施形態である。発泡は、当業者によく知られた剪断装置、例えば、Dispermats、溶解機、Hansaミキサー又はOakesミキサーを用いて、ここでは実施され得る。
【0061】
それは、プロセス工程c)の終わりに生成される湿潤発泡体が、少なくとも3、好ましくは、少なくとも5、より好ましくは、少なくとも7.5、なおもより好ましくは、少なくとも10Pa・sという粘度を有するとき、さらに好ましい。発泡体の粘度は、例えば、LV−4スピンドルが備え付けられたBrookfield粘度計であるLVTDモデルを用いて、測定され得る。湿潤発泡体の粘度を測定するための対応する試験方法は、当業者に公知である。
【0062】
すでに上記したように、湿潤発泡体の粘度を調整するために、追加の増粘剤がその系に加えられ得る。
【0063】
好ましくは、本発明の文脈において有利に使用され得る増粘剤は、結合性増粘剤のクラスからここでは選択される。結合性増粘剤は、ポリマー分散液に存在する粒子の表面における会合によって増粘作用をもたらす物質である。この用語は、当業者に公知である。好ましい結合性増粘剤は、ポリウレタン増粘剤、疎水変性ポリアクリレート増粘剤、疎水変性ポリエーテル増粘剤及び疎水変性セルロースエーテルから選択される。特に非常に好ましいものとしては、ポリウレタン増粘剤が挙げられる。さらに、それは、分散液の全組成に基づく増粘剤の濃度が、0.01〜10重量%の範囲内、より好ましくは0.05〜5重量%の範囲内、最も好ましくは0.1〜3重量%の範囲内であるとき、本発明の文脈において好ましい。
【0064】
本発明の文脈において、それはさらに、プロセス工程d)において、10〜10,000μm、好ましくは50〜5000μm、より好ましくは75〜3000μm、なおもより好ましくは100〜2500μmという層の厚さを有する発泡されたポリマー分散液のコーティングが生成されるとき、好ましい。発泡されたポリマー分散液のコーティングは、当業者によく知られた方法、例えば、ナイフコーティングによって生成され得る。直接又は間接的なコーティングプロセス(トランスファーコーティングと呼ばれる)を用いることが可能である。
【0065】
プロセス工程e)において、発泡され、コーティングされたポリマー分散液の乾燥が高温で実施されるときも、それは、本発明の文脈において好ましい。好ましいものとしては、ここでは、本発明に従って、最低でも50℃、好ましくは60℃、より好ましくは、少なくとも70℃という乾燥温度が挙げられる。さらに、乾燥欠陥の発生を回避するために、発泡され、コーティングされたポリマー分散液を、異なる温度での複数の段階において乾燥させることが可能である。対応する乾燥手法は、産業界において一般的であり、当業者に公知である。
【0066】
すでに記載したように、プロセス工程c)〜e)は、当業者に公知の広く行われている方法を用いて実施され得る。これらの概要は、例えば「Coated and laminated Textiles」(Walter Fung,CR−Press,2002)に記載されている。
【0067】
本発明の文脈において、好ましいものとしては、特に、250μm未満、好ましくは150μm未満、特に好ましくは100μm未満、最も好ましくは75μm未満の平均セルサイズを有する、ポリオールエステルを含む多孔性ポリマーコーティングが挙げられる。平均セルサイズは、好ましくは顕微鏡法、好ましくは電子顕微鏡法によって測定され得る。この目的のために、多孔性ポリマーコーティングの断面を、十分な倍率の顕微鏡を用いて検鏡し、少なくとも25個のセルのサイズを確かめる。この評価方法に対して十分な統計結果を得るために、選択される顕微鏡の倍率は、好ましくは、少なくとも10×10セルが観察視野内に存在するような倍率であるべきである。次いで、検鏡したセル又はセルサイズの算術平均として、平均セルサイズが計算される。この顕微鏡を用いたセルサイズの測定は、当業者によく知られている。
【0068】
ポリオールエステルを含む本発明に係る多孔性ポリマー層(又はポリマーコーティング)は、例えば、繊維産業、例えば、合成皮革材料のため、建築産業及び建設業、エレクトロニクス産業、例えば、発泡シールのため、スポーツ産業、例えば、スポーツ用マットの製造のため、又は自動車産業において、使用され得る。
【0069】
本発明はさらに、少なくとも1種のカルボン酸による、ポリオール、好ましくは、ポリグリセロール及び/又はソルビタンのエステル化、並びにその後のリン酸化試薬との反応、並びにその後の自由選択の、好ましくは必須の、中和によって入手可能なリン酸化されたポリオールエステルを提供し、
そのリン酸化試薬は、特に、オキシ塩化リン、五酸化リン(P4O10)及び/又はポリリン酸を含む。用語「リン酸化されたポリオールエステル」は、本明細書中及び本明細書中以後において、部分的にリン酸化されたポリオールエステルも包含する。用語「中和」は、本明細書中及び本明細書中以後において、部分的な中和も包含する。中和のために使用可能な好ましい塩基は、すでに列挙した。
【0070】
好ましい構成、特に、好ましく使用可能なポリオール及びカルボン酸に関しては、不必要な繰り返しを回避するために、前述の説明及びその中で述べられた好ましい構成を十分に参照されたい。
【0071】
特に好ましいリン酸化されたポリオールエステルは、リン酸化されたポリグリセロールエステル、好ましくは、リン酸化され中和されたポリグリセロールエステル、特に、リン酸化され中和されたポリグリセロールパルミテート、リン酸化され中和されたポリグリセロールステアレート又はこれらの物質の混合物である。同様に、特に好ましいのは、リン酸化されたソルビタンエステル、好ましくは、リン酸化され中和されたソルビタンエステルである。
【0072】
ポリグリセロールエステルを調製するために好ましく使用されるポリグリセロールは、1829〜824、より好ましくは1352〜888、特に好ましくは1244〜920mgKOH/gというOH価を有する。
【0073】
リン酸化されたポリオールエステル、好ましくはリン酸化されたポリグリセロールエステル、特に、リン酸化され中和されたポリグリセロールエステルは、最初に述べられたすべての利点に関連するPUD系の特に非常に効率的な発泡を可能にする。
【0074】
上述の主題であるリン酸化されたポリオールエステルは、請求項1〜10(すなわち、本発明に係る使用)、請求項11(すなわち、本発明に係るプロセス)及び請求項12(すなわち、本発明に係るポリマーコーティング)の主題の実行に対して高度に有益な様式で使用可能である。
【0075】
本発明はさらに、好ましくはポリオールエステル、好ましくはポリグリセロールエステルを三酸化硫黄又はアミドスルホン酸と反応させることによって入手可能な硫酸化されたポリオールエステル、特に、硫酸化されたポリグリセロールエステルを提供する。これらもまた、最初に述べられたすべての利点に関連するPUD系の特に非常に効率的な発泡を可能にする。この主題である硫酸化されたポリオールエステルもまた、請求項1〜12のすべての主題の実行のために高度に有益な様式で使用可能である。
【0076】
本発明はさらに、
(a)少なくとも1種のカルボン酸による、ポリオール、好ましくは、ポリグリセロール及び/又はソルビタン、特に、ポリグリセロールのエステル化、及び
(b)その後のリン酸化試薬との反応、及び
(c)その後の自由選択の、好ましくは必須の、中和
によって入手可能なリン酸化されたポリオールエステルを提供し、そのリン酸化試薬は、特に、オキシ塩化リン、五酸化リン(P4O10)及び/又はポリリン酸を含む。
【0077】
本発明の好ましい実施形態において、リン酸化されたポリオールエステルが、リン酸化されたポリグリセロールエステル及び/又はリン酸化されたソルビタンエステル、好ましくは、リン酸化され中和されたポリグリセロールエステル及び/又はリン酸化され中和されたソルビタンエステル、特に、リン酸化され中和されたポリグリセロールパルミテート、リン酸化され中和されたポリグリセロールステアレート又はこれらの物質の混合物であることが、リン酸化されたポリオールエステルの特徴である。
【0078】
ポリグリセロールエステルを調製するために使用されるポリグリセロールが1829〜824、より好ましくは1352〜888、特に好ましくは1244〜920mgKOH/gというOH価を有するとき、これもまた本発明の好ましい実施形態である。
【0079】
さらに好ましい構成に関しては、前述の説明を参照されたい。
【0080】
本発明はさらに、一般式1aに対応するリン酸化されたポリグリセロールエステルを提供する。
式1a
ここで、
M=[C(OR’)1/2]、
D=[C(OR’)2/2]、
T=[C3/2]であり、
a=1〜10、好ましくは2〜3、特に好ましくは2、
b=0〜10、好ましくは0より大きく5まで、特に好ましくは1〜4であり、
c=0〜3、好ましくは0であり、
R’ラジカルは、独立して、(R’’’O)P(O)−、R’’−C(O)−型又はHの同一又は異なるラジカルであり、
R’’は、3〜39個の炭素原子、好ましくは7〜21個、より好ましくは9〜17個の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和又は不飽和ヒドロカルビルラジカルであり、
少なくとも1つのR’ラジカルは、R’’−C(O)−型のラジカルに対応し、少なくとも1つのR’ラジカルは、(R’’’O)P(O)−型のラジカルに対応し、
R’’’ラジカルは、各々独立して、陽イオン、好ましくは、Na、KもしくはNH、又は例えば、アミドアミン、モノ−、ジ−及びトリアルカノールアミン、モノ−、ジ−及びトリアミノアルキルアミンの場合におけるような、官能化されたアルキルラジカルでもあり得る、モノ−、ジ−及びトリアルキルアミンのアンモニウムイオン、又はH、又はR’’’’−O−であり、
R’’’は、3〜39個の炭素原子、好ましくは7〜22個、より好ましくは9〜18個の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和もしく又は不飽和ヒドロカルビルラジカル、又はポリオールラジカルである。
及び/又は一般式2aに対応する。
式2a
【化3】
ここで、
x=1〜10、好ましくは2〜3、特に好ましくは2、
y=0〜10、好ましくは0より大きく5まで、特に好ましくは1〜4、
z=0〜3、好ましくは0より大きく2まで、特に好ましくは0であるが、
但し、少なくとも1つのR’ラジカルは、R’’−C(O)−型のラジカルに対応し、少なくとも1つのR’ラジカルは、(R’’’O)P(O)−型のラジカル、さらには、上で定義されたようなR’に対応する。
及び/又は一般式3aに対応する。
【化4】
ここで、
k=1〜10、好ましくは2〜3、特に好ましくは2、
m=0〜10、好ましくは0より大きく5まで、特に好ましくは1〜3であるが、
但し、少なくとも1つのR’ラジカルは、R’’−C(O)−型のラジカルに対応し、少なくとも1つのR’ラジカルは、(R’’’O)P(O)−型のラジカルに対応し、k+mの合計は、0より大きく、添え字k及びmを有するフラグメントは、統計的に分布する。好ましい構成に関しては、前述の記載を参照されたい。
【実施例】
【0081】
物質
Impranil(登録商標)DLU:Covestro製の脂肪族ポリカーボネートエステル−ポリエーテル−ポリウレタン分散液
Impranil(登録商標)DL1537:Covestro製の脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散液
Impranil(登録商標)DL1554:Covestro製の脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散液
Impranil(登録商標)RSC1380:Covestro製のポリエステル−ポリウレタン分散液
Bayhydur(登録商標)3100:Covestro製の親水性脂肪族ポリイソシアネート
Stokal(登録商標)STA:Bozetto製のステアリン酸アンモニウム(H2O中、約30%)
Stokal(登録商標)SR:Bozetto製の獣脂系スルホスクシンアミド酸ナトリウム(HO中、約35%)
Tego(登録商標)Viscoplus3030:Evonik Industries AG製のポリウレタン系結合性増粘剤
【0082】
粘度の計測
すべての粘度計測を、LV−4スピンドルが備え付けられたBrookfield粘度計であるLVTDを12rpmという一定の回転速度で用いて行った。粘度計測のために、サンプルを100mlの広口瓶に移し、それに計測用スピンドルを沈めた。常に粘度計の安定した計測値の表示を待った。
【0083】
実施例1:ポリグリセロールステアレートの合成
ポリグリセロール(OHN=1124mgKOH/g、103.3g、0.431mol)及び工業グレードのステアリン酸(パルミチン酸:ステアリン酸=50:50、155.0g、0.574mol)の混合物を撹拌しながら240℃に加熱し、形成された水を1.0mgKOH/gという酸価が達成されるまで連続的に留去した。得られたポリグリセロールステアレートは、酸価:1.0mgKOH/g、加水分解価:129mgKOH/g、ヒドロキシル価:345mgKOH/gの指数を有した。
【0084】
実施例2:リン酸化されたポリグリセロールステアレートの合成
実施例1に記載されたように得られたポリグリセロールステアレート(97.62g)及びポリリン酸(115%H3PO4、2.38g)の混合物を、撹拌しながら4時間、80℃に加熱した。その後、その混合物は27.6mgKOH/gという酸価を有した。続いて、45%KOH水溶液(9.77g)を80℃において加え、その混合物を80℃においてさらに30分間撹拌した。その混合物は1.3mgKOH/gという酸価を有した。
【0085】
実施例3:カリウムポリグリセロールステアレートスクシネートの合成
実施例1に記載されたように得られたポリグリセロールステアレート(300g)を80℃に加熱し、無水コハク酸(9.15g)を1時間にわたって撹拌しながら小分けにして加えた。19.8mgKOH/gという酸価に達するまでその混合物を80℃でさらに2時間撹拌した。続いて、12.90gの45%KOH水溶液を加え、その混合物をさらに15分間撹拌した。得られたカリウムポリグリセロールステアレートスクシネートは酸価:8.8mgKOH/gの特徴を有した。
【0086】
実施例4:本発明に係る界面活性剤の配合及び調合
実施例1及び2からの本発明に係る界面活性剤を、表1に詳述される組成に従って調合し、次いで、80℃において均質化した。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例5:
150gの分散液Impranil(登録商標)DLUを、500mlのプラスチックビーカーに入れ、溶解機ディスク(φ=6cm)が備え付けられたPendraulik溶解機を用いて500rpmで3分間撹拌した。この時間の間に、シリンジを用いて界面活性剤を徐々に加えた。サンプルの正確な組成を表2に列挙する。
【0089】
次いで、混合物の発泡のために、適切なボルテックスが形成されるのに十分な程度に、常に溶解機ディスクが分散液に沈んでいることを確実にし、剪断速度を2000rpmに上げた。この速度において、混合物は約425mlという体積まで発泡した。その目的のために必要な剪断時間も同様に表2で述べる。その後、剪断速度を1000rpmに下げ、シリンジを用いてTego(登録商標)Viscoplus3030を加え、混合物をさらに15分間剪断した。この工程において、その系にさらに空気が入らないが全体積がなおも動くような程度に溶解機ディスクを混合物中に沈めた。
【0090】
【表2】
【0091】
すべての場合において、この発泡操作の終わりに均一な微細気泡が得られた。本発明に係る界面活性剤1〜3を用いて生成された発泡体が、より低い増粘剤濃度にもかかわらずわずかに高い粘度を有したことは注目すべきことであった(表2を参照のこと)。それらの発泡体をアプリケーターフレームが備え付けられたフィルムアプリケーター(TQC製のAB3220)を用いてシリコン化ポリエステルフィルムにコーティングし(コート厚さ=800μm)、次いで、60℃で10分間、及び120℃でさらに5分間乾燥させた。
【0092】
サンプル1と比べて、乾燥された本発明のサンプル2〜4は、より均一な巨視的外観及びより滑らかな感触を特徴とした。乾燥されたサンプルのセル構造を走査型電子顕微鏡を用いて評価した。比較サンプル1の場合、約120μmという平均セルサイズを測定できたのに対して、本発明のサンプル2及び3は約50μmというより微細なセルサイズを有した。
【0093】
実施例6:
表2に列挙された組成物を、実施例4に記載された方法と同じように発泡させ、アプリケーターフレームを用いてシリコン化ポリエステルフィルムにコーティングした(コート厚さ=800μm)。しかしながら今回は、サンプルを90℃で5分間及び120℃で3分間だけ乾燥させた。比較サンプル1は、乾燥後、明確な欠陥(乾燥亀裂)を示したのに対して、本発明のサンプル2〜4は短縮されたがより苛酷な乾燥条件にもかかわらず欠陥なく乾燥させることができたことを観察できた。
【0094】
さらに、すべてのサンプルに対して2000μmというコート厚さを有するコーティングを生成した。これらを60℃で10分間、90℃で10分間、及び120℃で10分間乾燥させた。ここでもまた、本発明に係る界面活性剤を含むサンプル2〜4は欠陥なく乾燥できたのに対して、比較サンプルは明確な乾燥亀裂1を有した。
【0095】
実施例7:
150gのポリウレタン分散液及び必要に応じて3gのポリイソシアネートBayhydur(登録商標)3100を、500mlのプラスチック容器に入れ、次いで、実施例4に記載されたように発泡させ均質化しシリコン化ポリエステルフィルムにコーティングし(コート厚さ800μm)、乾燥させた。表3及び表4に、サンプルのそれぞれの組成の概要を示す。乾燥後のすべてのサンプルが、実施例4において比較のために生成されたサンプル1よりも均一な外観を示した。乾燥された発泡体の走査型電子顕微鏡解析は、すべての場合においてセルサイズが40〜60μmの範囲内であったことを示した。これらの実験は、いくつかの異なるポリウレタン分散液中の本発明に係るポリグリセロールエステルの万能な用途を実証している。
【0096】
さらに、すべてのサンプルに対して2000μmという層の厚さの塗布物が発泡後に生成された。これらのコーティングを、60℃で10分間、90℃で10分間、及び120℃で10分間乾燥させた。すべての場合において、発泡体は欠陥なく乾燥でき、滑らかな感触の均一なサンプルが得られた。走査型電子顕微鏡解析は、すべてのサンプルのセルサイズがここでも40〜60μmの範囲内であったことを示した。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】