(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の洗濯兼脱水槽および洗濯機を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態の洗濯機の一例としての縦型洗濯機を前側の斜め上方から見た外観図を示し、
図2は上記縦型洗濯機の上面図を示している。
【0019】
この第1実施形態の縦型洗濯機は、
図1,
図2に示すように、金属または合成樹脂製の本体ケーシング1と、水槽2(
図3に示す)および洗濯兼脱水槽100(
図3に示す)の開口を開閉する上蓋4と、本体ケーシング1の上面に設けられた操作表示部5とを備える。ユーザは操作表示部5を操作して運転動作を選択する。また、操作表示部5は運転状態を文字および数字などで表示する。
【0020】
また、
図3は
図2のIII−III線から見た縦断面図を示している。
【0021】
この縦型洗濯機は、
図3に示すように、本体ケーシング1は、四角筒状に成形され、上面に上面開口部を有する一方、下面に下面開口部を有している。本体ケーシング1の上面開口部には、操作表示部5等が設けられた合成樹脂製の上面板11が固定されている。本体ケーシング1の下面開口部には、合成樹脂製のベース12が固定されている。
【0022】
上記縦型洗濯機内に洗濯物を投入するための洗濯物投入口1aが上面板11に設けられている。この洗濯物投入口1aを開閉する上蓋4は、縦型洗濯機の奧側(後側)で上面板11に回動可能に支持されている。この上蓋4を上下に回動させることにより、洗濯物投入口1aが開閉される。
【0023】
上記本体ケーシング1内には水槽2が配置され、洗濯兼脱水槽100が水槽2内に配置されている。すなわち、本体ケーシング1内には、洗濯兼脱水槽100と、その洗濯兼脱水槽100を収納する水槽2を収容している。この洗濯兼脱水槽100内には、洗濯物を洗うための水、または、洗濯物を濯ぐための水が溜まる。水槽2および洗濯兼脱水槽100は、それぞれ、上側が開口した有底筒状になっており、中心軸が鉛直方向に平行になっている。また、水槽2の中心軸は洗濯兼脱水槽100の中心軸と一致する。
【0024】
上記洗濯兼脱水槽100の上側開口部の縁には環状のバランサー40を装着している。この環状のバランサー40は、洗濯物の脱水のために洗濯兼脱水槽100を高速回転させたときに振動を抑制する働きをする。また、洗濯兼脱水槽100内の底面には、合成樹脂製の撹拌翼(パルセータ)20を回転可能に配置している。
【0025】
上記水槽2の下側には、洗濯兼脱水槽100および撹拌翼20を駆動する駆動ユニットを構成するクラッチ・ブレーキ機構50および駆動モータ(図示せず)が設置されている。このクラッチ・ブレーキ機構50の回転軸51の先端には撹拌翼20の中央部が取り付けられ、回転軸51において先端よりも下側の箇所には水槽2の底部が取り付けられている。
【0026】
また、上記縦型洗濯機は、洗濯兼脱水槽100内に給水するための給水部10を備えている。
【0027】
図4は上記洗濯兼脱水槽100の要部を拡大した縦断面図を示している。
図4では、
図3と同一の構成部には同一参照番号を付している。
【0028】
図4に示すように、洗濯兼脱水槽100は、金属(例えばステンレス鋼)製の筒状胴部101と、筒状胴部101の下端側に配置された合成樹脂(例えばプラスチック)製の底部102とを備えている。この筒状胴部101は、洗濯時水位より上方に脱水用水抜き孔101d(
図9に示す)を有し、上側に近づくにつれて径が大きくなる周壁からなる(
図6参照)。また、底部102は、撹拌翼20を収容する凹部が形成されたカップ形状をしている。
【0029】
上記筒状胴部101の内周面には、上下方向に延在する複数の排水用溝(図示せず)が設けられている。脱水運転時に洗濯兼脱水槽100が高速回転したとき、洗濯兼脱水槽100内の水が遠心力を受けて洗濯兼脱水槽100の内周面に沿って上昇する。このとき、洗濯兼脱水槽100の内周面に沿って上昇する水は、排水用溝によって上部に設けられた隙間(図示せず)に案内されて、その隙間および脱水用水抜き孔101dから水槽2と洗濯兼脱水槽100の間に出るようになっている。
【0030】
上記筒状胴部101の周壁は、洗濯兼脱水槽100の中心軸に対して傾斜するコニカル形状の無孔壁である。筒状胴部101は、まず、例えばステンレス鋼からなる薄板(板厚0.5〜0.6mm)を扇形状に裁断した後、ロール成形することにより上方に向かって拡径するコニカル形状の胴板材とし、ロール成形した継目部分をハゼ折りカシメによって接合することにより筒状に形成されている。
【0031】
図5は上記洗濯兼脱水槽100の裏面図を示している。
図5では、
図3,
図4と同一の構成部には同一参照番号を付している。
【0032】
また、
図6は
図5のVI−VI線から見た縦断面図を示している。
図6に示す領域A(点線の円部分)は、底部102に環状のパッキン押さえ103(
図7Aに示す)をネジで固定する部分を示し、
図6に示す領域B(点線の円部分)は、底部102に環状のパッキン押さえ103(
図8Aに示す)を介して筒状胴部101をネジで固定する部分を示している。
【0033】
図7Aは
図6の領域Aの拡大断面図(環状のパッキン104なし)を示しており、
図7Bは
図6の領域Aの環状のパッキン104を装着した状態の拡大断面図を示している。
図7A,
図7Bの環状のパッキン押さえ103において、103aは外周壁部、103bは上端部、103cは環状底部、103dは内周壁部である(
図10参照)。
【0034】
図7A,
図7Bに示すように、底部102の上端部の外周面の全周にわたって第1フランジ部102aを設けている。また、底部102の外周面の第1フランジ部102aよりも下側に所定の間隔をあけて全周にわたって第2フランジ部102bを設けている。また、底部102の外周面の第2フランジ部102bよりも下側に所定の間隔をあけて全周にわたって第3フランジ部102cを設けている。また、底部102の第3フランジ部102cの根元側から下方に向かって延びる環状のリブ102dを立設している(
図14参照)。
【0035】
また、筒状胴部101の下端部には、底部102の第1フランジ部102aよりも上側でかつ第1フランジ部102aの外周縁よりも径方向内側に突出する位置決め部110が全周にわたって設けられている。この位置決め部110の断面は、略V字形状をしている。
【0036】
筒状胴部101の下端開口に、下側から底部102を挿入し、底部102の第1フランジ部102aの上部が位置決め部110に当接して、筒状胴部101に対して底部102を位置決めしている。このとき、筒状胴部101の位置決め部110よりも下側と底部102の環状のリブ102dの外周面との間、かつ、第3フランジ部102cの下側に環状のパッキン保持部H1が形成される。この環状のパッキン保持部H1に環状のパッキン104が保持される。この環状のパッキン104の断面は円形状(周囲から圧力がかかっていない状態)である。なお、環状のパッキン104の断面形状は、円形状に限らず、筒状胴部や底部の構成などに応じて適宜設定すればよい。
【0037】
そして、筒状胴部101の内周面と底部102の環状のリブ102dの外周面との間に、環状のパッキン押さえ103を下方から挿入し、環状のパッキン押さえ103を底部102にネジ121により取り付ける。このとき、ネジ121を底部102のネジ穴122に下側から締め付けることにより、環状のパッキン押さえ103の上端部103bで環状のパッキン104を押し付ける。これによって、環状のパッキン104を弾性変形させて、筒状胴部101の内周面に対して環状のパッキン104が径方向外側に向かって付勢する。環状のパッキン押さえ103の上端部103bは、ほぼ平坦な形状をしており、内周側および外周側の全周にわたって面取りされている。
【0038】
なお、このネジ121による締め付け箇所は、環状のパッキン押さえ103に周方向かつ等間隔に複数設けられており、環状のパッキン押さえ103の上端で環状のパッキン104を均等に押し付けている。
【0039】
このとき、さらに底部102の第3フランジ部102cの下面に環状のパッキン104が押し付けられる。したがって、筒状胴部101と底部102との間を確実にシールすることができる。
【0040】
このように、環状のパッキン押さえ103を底部102に取り付けるネジ121を締め付けると同時に、環状のパッキン押さえ103の上端で環状のパッキン104を押し付けることによって、環状のパッキン104を弾性変形させて、筒状胴部101の内周面に対して環状のパッキン104が径方向外側に向かって付勢するので、組立性が向上する。
【0041】
一方、
図8Aは
図6の領域Bの拡大断面図(環状のパッキン104なし)を示しており、
図8Bは
図6の領域Bの環状のパッキン104を装着した状態の拡大断面図を示している。
図8A,
図8Bにおいて、
図7Aと同一の構成部には同一参照番号を付している。
【0042】
図8A,
図8Bに示すように、底部102は、筒状胴部101の下端側に環状のパッキン押さえ103を介してネジ123により取り付けられている。このとき、ネジ123を底部102のネジ穴124に筒状胴部101の外周面側から締め付けることにより、筒状胴部101の下端側の環状のパッキン104近傍に底部102の固定部分を設けることができ、環状のパッキン押さえ103を筒状胴部101と底部102との固定に兼用できる。なお、このネジ123による締め付け箇所は、筒状胴部101の下端側に周方向かつ等間隔に複数設けられている。
【0043】
上記構成の洗濯兼脱水槽100では、底部102の外周面の全周にわたってかつ上下方向に間隔をあけて設けられた複数のフランジ部102a,102b,102cのうち、上側のフランジ部102aは筒状胴部101の位置決め部110に対する位置決めに用いられる。また、複数のフランジ部102a,102b,102cのうち、下側のフランジ部102cは環状のパッキン104の位置決めに用いられる。さらに、中間のフランジ部102bは底部102の強度を補強するのに用いられる。
【0044】
また、底部102の外周面に複数のフランジ部102a,102b,102cを上下方向に間隔をあけて設けて、環状のパッキン104を位置決めするフランジ部102cを下方に配置することで、環状のパッキン104の位置を低くすることが可能になる。これにより、環状のパッキン押さえ103の上下方向の寸法を短くでき、環状のパッキン押さえ103の挿入が容易になると共に、環状のパッキン104を強くかつ均一に押さえ付けることができ、シール性能が向上する。
【0045】
図9は上記洗濯兼脱水槽100の分解斜視図を示している。
図9に示すように、洗濯兼脱水槽100は、筒状胴部101の下端内周に底部102が取り付けられる。次に、筒状胴部101の内周面と底部102の外周面との間の環状のパッキン保持部H1(
図7A,
図8Aに示す)に環状のパッキン104を挿入した後、筒状胴部101の内周面と底部102の外周面との間に下方から環状のパッキン押さえ103を挿入する。
【0046】
次に、ネジ121(
図7Aに示す)を下方から締め付けることにより環状のパッキン押さえ103を底部102に取り付けた後、ネジ123(
図8Aに示す)を径方向外側から締め付けることにより環状のパッキン押さえ103を介して筒状胴部101と底部102を固定する。
【0047】
図10は上記洗濯兼脱水槽100の環状のパッキン押さえ103の斜視図を示し、
図11は上記環状のパッキン押さえ103の上面図を示している。この環状のパッキン押さえ103は、
図10,
図11に示すように、短円筒形の外周壁部103aと、その外周壁部103aの上端に設けられた上端部103bと、外周壁部103aの下端側の内周面の全周にわたって設けられた環状底部103cと、環状底部103cの内周側に全周にわたって設けられた短円筒形の内周壁部103dと、外周壁部103aの内周面と内周壁部103dの外周面との間を連結する複数のリブ103eとを有する。内周壁部103dの上端は、外周壁部103aの上端に設けられた上端部103bよりも低い。
【0048】
上記外周壁部103aの周方向に間隔をあけて複数の第1ネジ穴部103fを設けている。この第1ネジ穴部103fは、
図8Aに示すネジ穴124を有する。また、環状底部103cには、周方向に間隔をあけて複数の第2ネジ穴部103gを設けている。この第2ネジ穴部103gは、
図7Aに示すネジ穴122を有する。
【0049】
図12は上記環状のパッキン押さえ103の側面図を示し、
図13は
図11のXIII−XIII線から見た縦断面図である。を示している。
図12,
図13において、
図11と同一の構成部には同一参照番号を付している。
【0050】
また、
図14は上記洗濯兼脱水槽100の底部102を斜め下方から見た斜視図を示している。
図14において、
図7A,
図8Aと同一の構成部には同一参照番号を付している。
【0051】
図14に示すように、底部102の上端部の外周面の全周にわたって第1フランジ部102aと第2フランジ部102bおよび第3フランジ部102cを上下方向に間隔をあけて設けている。また、底部102の第3フランジ部102cの根元側から下方に向かって延びる環状のリブ102dを立設している。
【0052】
上記構成の洗濯兼脱水槽100によれば、筒状胴部101の内周面と底部102の外周面との間の環状のパッキン保持部H1に保持された環状のパッキン104を、環状のパッキン押さえ103の上端で上方に押し付けて弾性変形させることによって、筒状胴部101の内周面に対して環状のパッキン104が径方向外側に向かって付勢する。これにより、筒状胴部101の内周面を環状のパッキン104に密着させることができ、筒状胴部101の内周面と環状のパッキン104との間の水密性を向上できる。
【0053】
また、環状のパッキン押さえ103の上端で環状のパッキン104を上方に押し付けるときに、底部102の外周面の全周にわたってかつ上下方向に間隔をあけて設けられた複数のフランジ部102a,102b,102cのうちの最も下側のフランジ部102cは、環状のパッキン104の軸方向の上方への移動を規制するので、第3フランジ部102cの下面に環状のパッキン104が密着する。これにより、底部102の最も下側のフランジ部102cと環状のパッキン104との間の水密性を向上できる。
【0054】
このように、筒状胴部101の内周面と底部102の外周面との間かつ底部102の外周面に環状のパッキン104が外嵌された状態で、環状のパッキン押さえ103を底部102に取り付けるときに、環状のパッキン104を上端で環状のパッキン104に押し付けることで、環状のパッキン104を容易に弾性変形させることができ、組立性よく水密性を確保できる。
【0055】
したがって、上記洗濯兼脱水槽100では、簡単な構成で金属製の筒状胴部101と合成樹脂製の底部102との間の水密性を向上できる。
【0056】
なお、合成樹脂製の底部102を用いることによって、コストを低減できると共に、軽量化を図ることができる。さらに、撹拌翼(パルセータ)20と底部102との隙間にコインなどの異物の混入を防止できるように、撹拌翼20と底部102との隙間を容易に最適化できる。
【0057】
上記洗濯兼脱水槽100の筒状胴部101と底部102のネジ穴部のための側面方向(径の外側)へのスライド金型構造が必要になるが、本構造にすれば第1フランジ部102a下面と第3フランジ部102cの上面の間で十分な距離を確保できるので、強度に問題のないスライド金型構造を作ることができる。そのため、第1フランジ部102aと第3フランジ部102cは上下方向の金型にて作成可能なため、正確な径で、金型の継ぎ目段差のないものを作ることができる。そうすると、真円度が高く振動の少ない品質の良い洗濯兼脱水槽100や、段差なくパッキン104とのシール性が高い節水性能の高い洗濯兼脱水槽100を作ることができる。
【0058】
これに対して、もし底部にフランジ部が1個しかないものでは、ネジ穴部用のスライド金型構造が強度、構造上問題ない状態ではできず、フランジ部の周囲は真円度が低下すると共にシール部に段差ができてシール性が低下し、品質が低下するという問題が発生する。
【0059】
また、最も下側のフランジ部102cによって環状のパッキン104が位置決めされるので、環状のパッキン104が上方にはみ出すことがなくなり、美観を保つことができる。
【0060】
また、上記筒状胴部101の下端部に設けられた位置決め部110が、底部102の複数のフランジ部102a,102b,102cのうちの最も上側のフランジ部102aよりも上側でかつ該フランジ部102aの外周縁よりも径方向内側に突出していることにより、筒状胴部101の下端側に底部102を配置するとき、底部102の最も上側のフランジ部102aの上側が筒状胴部101の位置決め部110に当接して、筒状胴部101に対して底部102を位置決めすることができる。
【0061】
また、上記筒状胴部101の位置決め部110よりも下側の領域を円筒形状にすることによって、筒状胴部101の内径とほぼ同じ外径の底部102を下方から組み付け可能となるので、隙間なく筒状胴部101と底部102とを組み付けることができる。これにより、真円度、振れの精度の高い洗濯兼脱水槽100を作成することが可能になり、洗濯兼脱水槽100の振れによって発生する脱水時の振動を小さく抑えることが可能となる。
【0062】
また、上記環状のパッキン押さえ103に底部102の材料よりも剛性の高い材料を用いることによって、底部102の強度を向上できる。
【0063】
また、簡単な構成で金属製の筒状胴部101と合成樹脂製の底部102との水密性を向上できる洗濯兼脱水槽100を備えた縦型洗濯機を実現することができ、節水性能の低下を防ぐことができる。
【0064】
なお、上記第1実施形態では、上端部103bの形状がほぼ平坦な環状のパッキン押さえ103を用いたが、環状のパッキン押さえの上端部の形状はこれに限らず、環状のパッキン104を弾性変形させる形状であればよい。
【0065】
〔第2実施形態〕
図15はこの発明の第2実施形態の洗濯機の一例としての縦型洗濯機の洗濯兼脱水槽の要部の拡大断面図(
図6に示す領域Aに相当)を示しており、
図16は上記縦型洗濯機の洗濯兼脱水槽の要部の拡大断面図(
図6に示す領域Bに相当)を示している。この第2実施形態の洗濯兼脱水槽は、筒状胴部201と底部202および環状のパッキン押さえ203などを除いて第1実施形態の縦型洗濯機の洗濯兼脱水槽100と同一の構成をしており、
図1〜
図6を援用する。
【0066】
この第2実施形態の洗濯兼脱水槽は、
図15,
図16に示すように、筒状胴部201の位置決め部210よりも下側の領域S1(
図17に示す)を、下方に向かって徐々に拡径した円錐筒形状としている。
【0067】
また、底部202の上端部の外周面の全周にわたって第1フランジ部202aを設けている。また、底部202の外周面の第1フランジ部202aよりも下側に所定の間隔をあけて全周にわたって第2フランジ部202bを設けている。また、底部202の外周面の第2フランジ部202bよりも下側に所定の間隔をあけて全周にわたって第3フランジ部202cを設けている。また、底部202の第3フランジ部202cの根元側から下方に向かって延びる環状のリブ202dを立設している。
【0068】
また、筒状胴部201の下端部には、底部202の第1フランジ部202aよりも上側でかつ第1フランジ部202aの外周縁よりも径方向内側に突出する位置決め部210が全周にわたって設けられている。この位置決め部210の断面は、略V字形状をしている。
【0069】
筒状胴部201の下端開口に、下側から底部202を挿入し、底部202の第1フランジ部202aの上部が位置決め部210に当接して、筒状胴部201に対して底部202を位置決めしている。このとき、筒状胴部201の位置決め部210よりも下側と底部202の環状のリブ202dの外周面との間、かつ、第3フランジ部202cの下側に環状のパッキン保持部H2が形成される。この環状のパッキン保持部H2に環状のパッキン204が保持される。この環状のパッキン204の断面は、周囲から圧力がかかっていない状態で円形状である。
【0070】
そして、筒状胴部201の内周面と底部202の環状のリブ202dの外周面との間に、環状のパッキン押さえ203を下方から挿入し、環状のパッキン押さえ203を底部202にネジ221により取り付ける。このとき、ネジ221を底部202のネジ穴222に下側から締め付けることにより、環状のパッキン押さえ203の上端部203bで環状のパッキン204を押し付ける。これによって、環状のパッキン204を弾性変形させて、筒状胴部201の内周面に対して環状のパッキン204が径方向外側に向かって付勢する。
【0071】
図17は筒状胴部201の下端部の断面図を示しており、L1は筒状胴部201の位置決め部210から下方に延びる仮想円筒面の母線であり、L2はこの筒状胴部201の位置決め部210よりも下側の領域S1の円錐筒面の母線である。
図17に示すように、L1とL2は同一平面上で交差しており、L1とL2とのなす角度はθ1(例えば1deg〜2deg程度)である。
【0072】
上記第2実施形態によれば、筒状胴部201の位置決め部210よりも下側の領域S1が下方に向かって徐々に拡径した円錐筒形状とすることによって、外周面の全周にわたって複数のフランジ部202a,202b,202cが設けられた底部202を、筒状胴部201内に挿入しやすくなり、作業性が向上する。
【0073】
上記第2実施形態の洗濯兼脱水槽では、第1実施形態の洗濯兼脱水槽100と同様の効果を有する。
【0074】
〔第3実施形態〕
図18はこの発明の第2実施形態の洗濯機の一例としての縦型洗濯機の洗濯兼脱水槽の要部の拡大断面図(
図6に示す領域Aに相当)を示しており、
図19は上記縦型洗濯機の洗濯兼脱水槽の要部の拡大断面図(
図6に示す領域Bに相当)を示している。この第2実施形態の洗濯兼脱水槽は、筒状胴部301と底部302および環状のパッキン押さえ303などを除いて第1実施形態の縦型洗濯機の洗濯兼脱水槽100と同一の構成をしており、
図1〜
図6を援用する。
【0075】
この第3実施形態の洗濯兼脱水槽は、
図18,
図19に示すように、筒状胴部301の位置決め部310よりも下側の領域のうちの複数のフランジ部302a,302b,302cに対応する領域S21(
図20に示す)が円筒形状である。また、筒状胴部301の位置決め部310よりも下側の領域のうちの領域S21(
図20に示す)の下側の領域S22が、下方に向かって徐々に拡径した円錐筒形状である。
【0076】
また、底部302の上端部の外周面の全周にわたって第1フランジ部302aを設けている。また、底部302の外周面の第1フランジ部302aよりも下側に所定の間隔をあけて全周にわたって第2フランジ部302bを設けている。また、底部302の外周面の第2フランジ部302bよりも下側に所定の間隔をあけて全周にわたって第3フランジ部302cを設けている。また、底部302の第3フランジ部302cの根元側から下方に向かって延びる環状のリブ302dを立設している。
【0077】
また、筒状胴部301の下端部には、底部302の第1フランジ部302aよりも上側でかつ第1フランジ部302aの外周縁よりも径方向内側に突出する位置決め部310が全周にわたって設けられている。この位置決め部310の断面は、略V字形状をしている。
【0078】
筒状胴部301の下端開口に、下側から底部302を挿入し、底部302の第1フランジ部302aの上部が位置決め部310に当接して、筒状胴部301に対して底部302を位置決めしている。このとき、筒状胴部301の位置決め部310よりも下側と底部302の環状のリブ302dの外周面との間、かつ、第3フランジ部302cの下側に環状のパッキン保持部H3が形成される。この環状のパッキン保持部H3に環状のパッキン304が保持される。この環状のパッキン304の断面は、周囲から圧力がかかっていない状態で円形状である。
【0079】
そして、筒状胴部301の内周面と底部302の環状のリブ302dの外周面との間に、環状のパッキン押さえ303を下方から挿入し、環状のパッキン押さえ303を底部302にネジ321により取り付ける。このとき、ネジ321を底部302のネジ穴322に下側から締め付けることにより、環状のパッキン押さえ303の上端部303bで環状のパッキン304を押し付ける。これによって、環状のパッキン304を弾性変形させて、筒状胴部301の内周面に対して環状のパッキン304が径方向外側に向かって付勢する。
【0080】
図20は筒状胴部301の下端部の断面図を示しており、L21は筒状胴部301の位置決め部310から下方に延びる領域S21の円筒面の母線であり、L22はこの筒状胴部301の領域S21の下側の領域S22の円錐筒面の母線である。
図20に示すように、L21とL22は同一平面上で交差しており、L21とL22とのなす角度はθ2(例えば1deg〜2deg程度)である。
【0081】
上記第3実施形態によれば、筒状胴部301の位置決め部310よりも下側の領域のうち、複数のフランジ部302a,302b,302cに対応する領域S21を円筒形状にすることによって、筒状胴部301の内径とほぼ同じ外径の底部302を下方から組み付け可能となるので、隙間なく筒状胴部301と底部302とを組み付けることができる。これにより、真円度、振れの精度の高い洗濯兼脱水槽を作成することが可能になり、洗濯兼脱水槽の振れによって発生する脱水時の振動を小さく抑えることが可能となる。
【0082】
また、筒状胴部301の領域S21よりも下側の領域S22を下方に向かって徐々に拡径した円錐筒形状にすることによって、環状のパッキン304を筒状胴部301内に下側から挿入するための開口の径が底部302よりも広くなっているので、作業性が向上する。これにより、品質の向上、生産の時間短縮が可能となる。
【0083】
上記第3実施形態の洗濯兼脱水槽では、第1実施形態の洗濯兼脱水槽100と同様の効果を有する。
【0084】
なお、上記第1〜第3実施形態では、無孔周壁からなる金属製の筒状胴部101,201,301を備えた縦型洗濯機について説明したが、これに限らず、周壁に複数の孔を有する筒状胴部を備えた洗濯兼脱水槽およびその洗濯兼脱水槽を備えた洗濯機にこの発明を適用してもよい。
【0085】
また、上記第1〜第3実施形態では、底部102の外周面の全周にわたってかつ上下方向に間隔をあけて3つのフランジ部102a,102b,102cを設けたが、底部の外周面に設けられるフランジ部は2つでもよく、4以上のフランジ部を設けてもよい。
【0086】
また、上記第1〜第3実施形態では、洗濯兼脱水槽を備えた縦型洗濯機について説明したが、これに限らず、乾燥機能を有する洗濯乾燥機にこの発明を適用してもよい。
【0087】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1〜第3実施形態で記載した内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0088】
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
【0089】
この発明の一態様に係る洗濯兼脱水槽は、
金属製の筒状胴部101,201,301と、
上記筒状胴部101,201,301の下端側に配置され、上記筒状胴部101,201,301の内周面との間に環状のパッキン保持部H1,H2,H3を形成する合成樹脂製の底部102,202,302と、
上記筒状胴部101,201,301の内周面と上記底部102,202,302の外周面との間の上記環状のパッキン保持部H1,H2,H3に保持された環状のパッキン104,204,304と、
上記環状のパッキン保持部H1,H2,H3に保持された上記環状のパッキン104,204,304を下方から上端で押し付けるように、上記底部102,202,302に取り付けられた環状のパッキン押さえ103,203,303と
を備え、
上記底部102,202,302は、外周面の全周にわたってかつ上下方向に間隔をあけて設けられた複数のフランジ部102a,102b,102c,202a,202b,202c,302a,302b,302cを有し、
上記複数のフランジ部102a,102b,102c,202a,202b,202c,302a,302b,302cのうちの最も下側のフランジ部102c,202c,302cの下面に上記環状のパッキン104,204,304が当接していると共に、
上記環状のパッキン押さえ103,203,303の上端が上記環状のパッキン104,204,304を押し付けることによって、上記環状のパッキン104,204,304を弾性変形させていることを特徴とする。
【0090】
上記構成によれば、筒状胴部101,201,301の内周面と底部102,202,302の外周面との間の環状のパッキン保持部H1,H2,H3に保持された環状のパッキン104,204,304を、環状のパッキン押さえ103,203,303の上端で上方に押し付けて弾性変形させることによって、筒状胴部101,201,301の内周面に対して環状のパッキン104,204,304が径方向外側に向かって付勢する。これにより、筒状胴部101,201,301の内周面を環状のパッキン104,204,304に密着させることができ、筒状胴部101,201,301の内周面と環状のパッキン104,204,304との間の水密性を向上できる。
【0091】
また、環状のパッキン押さえ103,203,303の上端で環状のパッキン104,204,304を上方に押し付けるときに、底部102,202,302の外周面の全周にわたってかつ上下方向に間隔をあけて設けられた複数のフランジ部102a,102b,102c,202a,202b,202c,302a,302b,302cのうちの最も下側のフランジ部102c,202c,302cは、環状のパッキン104,204,304の軸方向の上方への移動を規制するので、最も下側のフランジ部102c,202c,302cの下面に環状のパッキン104,204,304が密着する。これにより、底部102,202,302の最も下側のフランジ部102c,202c,302cと環状のパッキン104,204,304との間の水密性を向上できる。
【0092】
このように、筒状胴部101,201,301の内周面と底部102,202,302の外周面との間かつ底部102,202,302の外周面に環状のパッキン104,204,304が外嵌された状態で、環状のパッキン押さえ103,203,303を底部102,202,302に取り付けるときに、環状のパッキン104,204,304を上端で環状のパッキン104,204,304に押し付けることで、環状のパッキン104,204,304を容易に弾性変形させることができ、組立性よく水密性を確保できる。
【0093】
したがって、簡単な構成で金属製の筒状胴部101,201,301と合成樹脂製の底部102,202,302との間の水密性を向上できる。
【0094】
なお、合成樹脂製の底部102,202,302を用いることによって、コストを低減できると共に、軽量化を図ることができる。さらに、撹拌翼(パルセータ)20と底部102,202,302との隙間にコインなどの異物の混入を防止できるように、撹拌翼20と底部102,202,302との隙間を容易に最適化できる。
【0095】
また、最も下側のフランジ部102c,202c,302cによって環状のパッキン104,204,304が位置決めされるので、環状のパッキン104,204,304が上方にはみ出すことがなくなり、美観を保つことができる。
【0096】
また、一実施形態の洗濯兼脱水槽では、
上記筒状胴部101,201,301の下端部には、上記底部102,202,302の上記複数のフランジ部102a,102b,102c,202a,202b,202c,302a,302b,302cのうちの最も上側のフランジ部102a,202a,302aよりも上側でかつ該フランジ部102a,202a,302aの外周縁よりも径方向内側に突出する位置決め部110,210,310が設けられている。
【0097】
上記実施形態によれば、筒状胴部101,201,301の下端部に設けられた位置決め部110,210,310が、底部102,202,302の複数のフランジ部102a,102b,102c,202a,202b,202c,302a,302b,302cのうちの最も上側のフランジ部102a,202a,302aよりも上側でかつ該フランジ部102a,202a,302aの外周縁よりも径方向内側に突出していることにより、筒状胴部101,201,301の下端側に底部102,202,302を配置するとき、底部102,202,302の最も上側のフランジ部102a,202a,302aの上側が筒状胴部101,201,301の位置決め部110,210,310に当接して、筒状胴部101,201,301に対して底部102,202,302を位置決めすることができる。
【0098】
また、一実施形態の洗濯兼脱水槽では、
上記筒状胴部201は、上記位置決め部210よりも下側の領域S1が下方に向かって徐々に拡径した円錐筒形状である。
【0099】
上記実施形態によれば、筒状胴部201の位置決め部210よりも下側の領域S1が下方に向かって徐々に拡径した円錐筒形状することによって、外周面の全周にわたって複数のフランジ部が設けられた底部を、筒状胴部201内に挿入しやすくなり、作業性が向上する。
【0100】
また、一実施形態の洗濯兼脱水槽では、
上記筒状胴部301は、上記位置決め部310よりも下側の領域のうち、上記複数のフランジ部302a,302b,302cに対応する領域S21が円筒形状であり、その円筒形状の領域よりも下側の領域S22が下方に向かって徐々に拡径した円錐筒形状である。
【0101】
上記実施形態によれば、筒状胴部301の位置決め部310よりも下側の領域のうち、複数のフランジ部302a,302b,302cに対応する領域S21を円筒形状にすることによって、筒状胴部301の内径とほぼ同じ外径の底部302を下方から組み付け可能となるので、隙間なく筒状胴部301と底部302とを組み付けることができる。これにより、真円度、振れの精度の高い洗濯兼脱水槽を作成することが可能になり、洗濯兼脱水槽の振れによって発生する脱水時の振動を小さく抑えることが可能となる。
【0102】
また、筒状胴部301の複数のフランジ部302a,302b,302cに対応する円筒形状の領域S21よりも下側の領域S22を下方に向かって徐々に拡径した円錐筒形状にすることによって、環状のパッキン304を筒状胴部301内に下側から挿入するための開口の径が底部302よりも広くなっているので、作業性が向上する。これにより、品質の向上、生産の時間短縮が可能となる。
【0103】
また、一実施形態の洗濯兼脱水槽では、
上記底部102,202,302は、上記複数のフランジ部102a,102b,102c,202a,202b,202c,302a,302b,302cのうちの最も下側のフランジ部102c,202c,302cの下面と共に上記環状のパッキン104,204,304の位置決めするように、上記環状のパッキン104,204,304に対して径方向内側かつ下方に向かって立設された環状のリブ102d,202d,302dを有する。
【0104】
上記実施形態によれば、環状のパッキン104,204,304に対して径方向内側かつ下方に向かって環状のリブ102d,202d,302dを底部102,202,302に立設することによって、底部102,202,302の強度を向上しつつ、複数のフランジ部102a,102b,102c,202a,202b,202c,302a,302b,302cのうちの最も下側のフランジ部102c,202c,302cの下面と共に、環状のリブ102d,202d,302dの外周面で環状のパッキン104,204,304を位置決めすることが可能になる。
【0105】
また、この洗濯機では、
上記のいずれか1つの洗濯兼脱水槽100を備えたことを特徴とする。
【0106】
上記構成によれば、簡単な構成で金属製の筒状胴部101,201,301と合成樹脂製の底部102,202,302との水密性を向上できる洗濯兼脱水槽100を備えた洗濯機を実現することができ、節水性能の低下を防ぐことができる。