特許第6955712号(P6955712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6955712ベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6955712
(24)【登録日】2021年10月6日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20211018BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20211018BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   F28D15/04 B
   F28D15/02 101H
   H01L23/46 B
【請求項の数】10
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2020-202159(P2020-202159)
(22)【出願日】2020年12月4日
(62)【分割の表示】特願2018-534996(P2018-534996)の分割
【原出願日】2018年2月23日
(65)【公開番号】特開2021-50905(P2021-50905A)
(43)【公開日】2021年4月1日
【審査請求日】2020年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2017-33622(P2017-33622)
(32)【優先日】2017年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-217633(P2017-217633)
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-217593(P2017-217593)
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】竹松 清隆
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/155641(WO,A1)
【文献】 特開2007−266153(JP,A)
【文献】 特開2015−59693(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0023308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/04
F28D 15/02
H01L 23/427
H01L 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が封入されたベーパーチャンバであって、
第1金属シートと、
前記第1金属シート上に設けられた第2金属シートと、
記作動液の蒸気が通る蒸気流路部と、
液状の前記作動液が通る液流路部と、を備え、
前記液流路部は、前記第1金属シートの前記第2金属シートの側の面に設けられ、
前記液流路部は、第1連絡溝を介して第1方向に配列された複数の第1凸部を含む第1凸部列と、前記第1方向に延びて液状の前記作動液が通る主流溝と、第2連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第2凸部を含む第2凸部列と、を有し
前記第1凸部列、前記主流溝および前記第2凸部列は、前記第1方向に直交する第2方向にこの順に配置され、
前記第1連絡溝および前記第2連絡溝は、前記主溝と連通し、
記主流溝は、前記第2連絡溝が前記第1凸部に対向する第2交差部を含み、
前記第1凸部は、前記第2交差部と対向する部分において、平面視で前記第1凸部の内部に向かって凹んでいる、ベーパーチャンバ。
【請求項2】
前記主流溝は、前記第1連絡溝が前記第2凸部に対向する第1交差部を含み、
前記第2凸部は、前記第1交差部と対向する部分において、平面視で前記第2凸部の内部に向かって凹んでいる、請求項1に記載のベーパーチャンバ。
【請求項3】
前記主流溝の前記第1交差部と前記第2交差部は、互いに隣り合っている、請求項2に記載のベーパーチャンバ。
【請求項4】
前記主流溝は、複数の前記第1交差部と、複数の前記第2交差部と、を含み、
前記主流溝の前記第1交差部と前記第2交差部は、交互に配置されている、請求項3に記載のベーパーチャンバ。
【請求項5】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されたデバイスと、
前記デバイスに熱的に接触した、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベーパーチャンバと、を備えた、電子機器。
【請求項6】
作動液が封入された、前記作動液の蒸気が通る蒸気流路部と、液状の前記作動液が通る液流路部と、を有するベーパーチャンバのためのベーパーチャンバ用金属シートであって、
第1面と、
前記第1面とは反対側に設けられた第2面と、を備え、
前記第1面に、前記液流路部が設けられ、
前記液流路部は、第1連絡溝を介して第1方向に配列された複数の第1凸部を含む第1凸部列と、前記第1方向に延びて液状の前記作動液が通る主流溝と、第2連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第2凸部を含む第2凸部列と、を有し、
前記第1凸部列、前記主流溝および前記第2凸部列は、前記第1方向に直交する第2方向にこの順に配置され、
前記第1連絡溝および前記第2連絡溝は、前記主流溝と連通し、
前記主流溝は、前記第2連絡溝が前記第1凸部に対向する第2交差部を含み、
前記第1凸部は、前記第2交差部と対向する部分において、平面視で前記第1凸部の内部に向かって凹んでいる、ベーパーチャンバ用金属シート。
【請求項7】
前記主流溝は、前記第1連絡溝が前記第2凸部に対向する第1交差部を含み、
前記第2凸部は、前記第1交差部と対向する部分において、平面視で前記第2凸部の内部に向かって凹んでいる、請求項6に記載のベーパーチャンバ用金属シート。
【請求項8】
前記主流溝の前記第1交差部と前記第2交差部は、互いに隣り合っている、請求項7に記載のベーパーチャンバ用金属シート。
【請求項9】
前記主流溝は、複数の前記第1交差部と、複数の前記第2交差部と、を含み、
前記主流溝の前記第1交差部と前記第2交差部は、交互に配置されている、請求項8に記載のベーパーチャンバ用金属シート。
【請求項10】
第1金属シートと、前記第1金属シート上に設けられた第2金属シートと、作動液の蒸気が通る蒸気流路部と、液状の前記作動液が通る液流路部と、を備えるベーパーチャンバの製造方法であって、
ハーフエッチングにより、前記第1金属シートの前記第2金属シートの側の面に前記液流路部を形成するハーフエッチング工程と、
前記第1金属シートと前記第2金属シートとを接合する接合工程と、
前記作動液を封入する封入工程と、を備え、
前記液流路部は、第1連絡溝を介して第1方向に配列された複数の第1凸部を含む第1凸部列と、前記第1方向に延びて液状の前記作動液が通る主流溝と、第2連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第2凸部を含む第2凸部列と、を有し、
前記第1凸部列、前記主流溝および前記第2凸部列は、前記第1方向に直交する第2方向にこの順に配置され、
前記第1連絡溝および前記第2連絡溝は、前記主流溝と連通し、
前記主流溝は、前記第2連絡溝が前記第1凸部に対向する第2交差部を含み、
前記第1凸は、前記第2交差部と対向する部分において、平面視で前記第1凸部の内部に向かって凹んでいる、ベーパーチャンバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動液が密封された密封空間を有するベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末やタブレット端末といったモバイル端末等で使用される中央演算処理装置(CPU)や発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱を伴うデバイスは、ヒートパイプ等の放熱用部材によって冷却されている(例えば、特許文献1乃至5参照)。近年では、モバイル端末等の薄型化のために、放熱用部材の薄型化も求められており、ヒートパイプよりも薄型化を図ることができるベーパーチャンバの開発が進められている。ベーパーチャンバ内には、作動液が封入されており、この作動液がデバイスの熱を吸収して外部に放出することで、デバイスの冷却を行っている。
【0003】
より具体的には、ベーパーチャンバ内の作動液は、デバイスに近接した部分(蒸発部)でデバイスから熱を受けて蒸発して蒸気になり、その後蒸気が、蒸発部から離れた位置に移動して冷却され、凝縮して液状になる。ベーパーチャンバ内には、毛細管構造(ウィック)としての液流路部が設けられており、液状になった作動液は、この液流路部を通過して蒸発部に向かって輸送され、再び蒸発部で熱を受けて蒸発する。このようにして、作動液が、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながらベーパーチャンバ内を還流することによりデバイスの熱を移動させ、放熱効率を高めている。
【0004】
ところで、液流路部は、第1方向に延びる溝を複数有している。作動液は、毛細管作用を受けて蒸発部に向かう推進力を得て、溝内を蒸発部に向かって通過するようになっている。また、隣り合う溝同士で作動液を往来させるために、第1方向に直交する第2方向に延びる他の溝が設けられている。このようにして、液流路部においては複数の溝が格子状に形成されており、液流路部内に均等に作動液が行き渡るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−59693号公報
【特許文献2】特開2015−88882号公報
【特許文献3】特開2016−17702号公報
【特許文献4】特開2016−50682号公報
【特許文献5】特開2016−205693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、格子状に複数の溝を形成する場合、外気から受ける圧力によって問題が生じ得る。
【0007】
すなわち、ベーパーチャンバは、2つの金属シートによって構成されており、上述した溝は、少なくとも一方の金属シートに形成されている。このことにより、金属シートのうち溝が形成された部分では、金属材料の厚みが小さくなっている。液流路部内の空間は減圧されているために、金属シートは、外気から内側に凹む方向の圧力を受ける。このため、金属シートは、溝に沿って内側に凹むおそれがある。とりわけ、上述したようにベーパーチャンバの薄型化を図る場合には、金属シートの厚みが小さくなり、凹みやすくなり得る。
【0008】
互いに直交する溝同士が交わる交差部において、第2方向に沿う溝に沿って金属シートが凹むと、この凹みが、第1方向に沿う溝を横断するように形成され得る。この場合、第1方向に沿う溝の流路断面積が小さくなり、作動液の流路抵抗が増大し得る。このため、蒸発部への液状の作動液の輸送機能が低下し、蒸発部への作動液の供給量が低減し得る。この場合、蒸発部からの熱の輸送量が低減し、熱輸送効率が低下するという問題が生じる。
【0009】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、液流路部の流路断面積を確保して液状の作動液の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができるベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
作動液が封入されたベーパーチャンバであって、
第1金属シートと、
前記第1金属シート上に設けられた第2金属シートと、
前記第1金属シートと前記第2金属シートとの間に設けられた密封空間であって、前記作動液の蒸気が通る蒸気流路部と、液状の前記作動液が通る液流路部と、を有する密封空間と、を備え、
前記液流路部は、前記第1金属シートの前記第2金属シートの側の面に設けられ、
前記液流路部は、各々が第1方向に延びて液状の前記作動液が通る第1主流溝、第2主流溝および第3主流溝を有し、
前記第1主流溝、前記第2主流溝および前記第3主流溝は、前記第1方向に直交する第2方向にこの順に配置され、
前記第1主流溝と前記第2主流溝との間に、第1連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第1凸部を含む第1凸部列が設けられ、
前記第2主流溝と前記第3主流溝との間に、第2連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第2凸部を含む第2凸部列が設けられ、
前記第1連絡溝は、前記第1主流溝と前記第2主流溝とを連通し、
前記第2連絡溝は、前記第2主流溝と前記第3主流溝とを連通し、
前記第2主流溝は、前記第1連絡溝の少なくとも一部が前記第2凸部に対向する第1交差部と、前記第2連絡溝の少なくとも一部が前記第1凸部に対向する第2交差部と、を含んでいる、ベーパーチャンバ、
を提供する。
【0011】
なお、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第2主流溝の前記第1交差部と前記第2交差部は、互いに隣り合っている、
ようにしてもよい。
【0012】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第2主流溝は、複数の前記第1交差部と、複数の前記第2交差部と、を含み、
前記第2主流溝の前記第1交差部と前記第2交差部は、交互に配置されている、
ようにしてもよい。
【0013】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記液流路部は、前記第1方向に延びて液状の前記作動液が通る第4主流溝を更に有し、
前記第4主流溝は、前記第3主流溝に対して前記第2主流溝の側とは反対側に配置され、
前記第3主流溝と前記第4主流溝との間に、第3連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第3凸部を含む第3凸部列が設けられ、
前記第3連絡溝は、前記第3主流溝と前記第4主流溝とを連通し、
前記第3主流溝は、前記第2連絡溝の少なくとも一部が前記第3凸部に対向する第1交差部と、前記第3連絡溝の少なくとも一部が前記第2凸部に対向する第2交差部と、を含んでいる、
ようにしてもよい。
【0014】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第3主流溝の前記第1交差部と前記第2交差部は、互いに隣り合っている、
ようにしてもよい。
【0015】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第3主流溝は、複数の前記第1交差部と、複数の前記第2交差部と、を含み、
前記第3主流溝の前記第1交差部と前記第2交差部は、交互に配置されている、
ようにしてもよい。
【0016】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第2金属シートは、前記第1金属シートの前記第2金属シートの側の面に当接するとともに前記第2主流溝を覆う平坦状の当接面を有している、
ようにしてもよい。
【0017】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第2主流溝の幅は、前記第1凸部の幅および前記第2凸部の幅よりも大きい、
ようにしてもよい。
【0018】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第1連絡溝の幅は、前記第1主流溝の幅および前記第2主流溝の幅よりも大きく、
前記第2連絡溝の幅は、前記第2主流溝の幅および前記第3主流溝の幅よりも大きい、
ようにしてもよい。
【0019】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第1連絡溝の深さは、前記第1主流溝の深さおよび前記第2主流溝の深さよりも深く、
前記第2連絡溝の深さは、前記第2主流溝の深さおよび前記第3主流溝の深さよりも深い、
ようにしてもよい。
【0020】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第2主流溝の前記第1交差部の深さおよび前記第2交差部の深さは、前記第2主流溝のうち互いに隣り合う前記第1凸部と前記第2凸部との間の部分の深さよりも深い、
ようにしてもよい。
【0021】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第2主流溝の前記第1交差部の深さおよび前記第2交差部の深さは、前記第1連絡溝の深さおよび前記第2連絡溝の深さよりも深い、
ようにしてもよい。
【0022】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第1凸部は、前記第1方向における両端部に設けられた一対の第1凸部端部と、一対の前記第1凸部端部の間に設けられた第1凸部中間部と、を含み、
前記第1凸部中間部の幅は、前記第1凸部端部の幅よりも小さい、
ようにしてもよい。
【0023】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第1凸部の角部に、丸みを帯びた湾曲部が設けられている、
ようにしてもよい。
【0024】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第2金属シートは、前記第2金属シートの前記第1金属シートの側の面から、前記第1金属シートの前記第1主流溝、前記第2主流溝および前記第3主流溝にそれぞれ突出する複数の主流溝凸部を有している、
ようにしてもよい。
【0025】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記主流溝凸部の横断面は、湾曲状に形成されている、
ようにしてもよい。
【0026】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記第2金属シートは、前記第2金属シートの前記第1金属シートの側の面から、前記第1金属シートの前記第1連絡溝および前記第2連絡溝にそれぞれ突出する複数の連絡溝凸部を有している、
ようにしてもよい。
【0027】
また、上述したベーパーチャンバにおいて、
前記連絡溝凸部の横断面は、湾曲状に形成されている、
ようにしてもよい。
【0028】
また、本発明は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されたデバイスと、
前記デバイスに熱的に接触した、上述のベーパーチャンバと、を備えた、電子機器、
を提供する。
【0029】
また、本発明は、
作動液が封入された、前記作動液の蒸気が通る蒸気流路部と、液状の前記作動液が通る液流路部と、を含む密封空間を有するベーパーチャンバのためのベーパーチャンバ用金属シートであって、
前記第1面と、
前記第1面とは反対側に設けられた第2面と、を備え、
前記第1面に、前記液流路部が設けられ、
前記液流路部は、各々が第1方向に延びて液状の前記作動液が通る第1主流溝、第2主流溝および第3主流溝を有し、
前記第1主流溝、前記第2主流溝および前記第3主流溝は、前記第1方向に直交する第2方向にこの順に配置され、
前記第1主流溝と前記第2主流溝との間に、第1連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第1凸部を含む第1凸部列が設けられ、
前記第2主流溝と前記第3主流溝との間に、第2連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第2凸部を含む第2凸部列が設けられ、
前記第1連絡溝は、前記第1主流溝と前記第2主流溝とを連通し、
前記第2連絡溝は、前記第2主流溝と前記第3主流溝とを連通し、
前記第2主流溝は、前記第1連絡溝の少なくとも一部が前記第2凸部に対向する第1交差部と、前記第2連絡溝の少なくとも一部が前記第1凸部に対向する第2交差部と、を含んでいる、ベーパーチャンバ用金属シート、
を提供する。
【0030】
また、本発明は、
第1金属シートと第2金属シートとの間に設けられた、作動液が封入される密封空間であって、前記作動液の蒸気が通る蒸気流路部と、液状の前記作動液が通る液流路部と、を含む密封空間を有するベーパーチャンバの製造方法であって、
ハーフエッチングにより、前記第1金属シートの前記第2金属シートの側の面に前記液流路部を形成するハーフエッチング工程と、
前記第1金属シートと前記第2金属シートとを接合する接合工程であって、前記第1金属シートと前記第2金属シートとの間に前記密封空間を形成する接合工程と、
前記密封空間に前記作動液を封入する封入工程と、を備え、
前記液流路部は、各々が第1方向に延びて液状の前記作動液が通る第1主流溝、第2主流溝および第3主流溝を有し、
前記第1主流溝、前記第2主流溝および前記第3主流溝は、前記第1方向に直交する第2方向にこの順に配置され、
前記第1主流溝と前記第2主流溝との間に、第1連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第1凸部を含む第1凸部列が設けられ、
前記第2主流溝と前記第3主流溝との間に、第2連絡溝を介して前記第1方向に配列された複数の第2凸部を含む第2凸部列が設けられ、
前記第1連絡溝は、前記第1主流溝と前記第2主流溝とを連通し、
前記第2連絡溝は、前記第2主流溝と前記第3主流溝とを連通し、
前記第2主流溝は、前記第1連絡溝の少なくとも一部が前記第2凸部に対向する第1交差部と、前記第2連絡溝の少なくとも一部が前記第1凸部に対向する第2交差部と、を含んでいる、ベーパーチャンバの製造方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、液流路部の流路断面積を確保して液状の作動液の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態による電子機器を説明する模式斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態によるベーパーチャンバを示す上面図である。
図3図3は、図2のベーパーチャンバを示すA−A線断面図である。
図4図4は、図2の下側金属シートの上面図である。
図5図5は、図2の上側金属シートの下面図である。
図6図6は、図4の液流路部を示す拡大上面図である。
図7図7は、図6のB−B線断面に、上側金属シートの上側流路壁部を追加して示す断面図である。
図8図8は、本発明の第1の実施の形態のベーパーチャンバの製造方法において、下側金属シートの準備工程を説明するための図である。
図9図9は、本発明の第1の実施の形態のベーパーチャンバの製造方法において、下側金属シートの第1ハーフエッチング工程を説明するための図である。
図10図10は、本発明の第1の実施の形態のベーパーチャンバの製造方法において、下側金属シートの第2ハーフエッチング工程を説明するための図である。
図11図11は、本発明の第1の実施の形態のベーパーチャンバの製造方法において、仮止め工程を説明するための図である。
図12図12は、本発明の第1の実施の形態のベーパーチャンバの製造方法において、恒久接合工程を説明するための図である。
図13図13は、本発明の第1の実施の形態のベーパーチャンバの製造方法において、作動液の封入工程を説明するための図である。
図14図14は、図6の変形例を示す図である。
図15図15は、図6に示す液流路凸部の変形例を示す上面図である。
図16図16は、図6に示す液流路凸部の他の変形例を示す上面図である。
図17図17は、図6の他の変形例を示す図である。
図18図18は、図3の他の変形例を示す図である。
図19図19は、本発明の第2の実施の形態におけるベーパーチャンバにおいて、液流路部を示す拡大上面図である。
図20図20は、図19のC−C線断面に、上側金属シートの上側流路壁部を追加して示す断面図である。
図21図21は、図19のD−D線断面に、上側金属シートの上側流路壁部を追加して示す断面図である。
図22図22は、図19のE−E線断面に、上側金属シートの上側流路壁部を追加して示す断面図である。
図23図23は、本発明の第3の実施の形態におけるベーパーチャンバにおいて、主流溝凸部を示す拡大断面図であって、図20に対応する図である。
図24図24は、本発明の第3の実施の形態におけるベーパーチャンバにおいて、連絡溝凸部を示す拡大断面図であって、図21に対応する図である。
図25図25は、本発明の第3の実施の形態におけるベーパーチャンバにおいて、連絡溝凸部を示す拡大断面図であって、図22に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0034】
(第1の実施の形態)
図1乃至図18を用いて、本発明の第1の実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。本実施の形態におけるベーパーチャンバ1は、電子機器Eに収容された発熱体としてのデバイスDを冷却するために、電子機器Eに搭載される装置である。デバイスDの例としては、携帯端末やタブレット端末といったモバイル端末等で使用される中央演算処理装置(CPU)や発光ダイオード(LED)、パワートランジスタ等の発熱を伴う電子デバイス(被冷却装置)が挙げられる。
【0035】
ここではまず、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が搭載される電子機器Eについて、タブレット端末を例にとって説明する。図1に示すように、電子機器E(タブレット端末)は、ハウジングHと、ハウジングH内に収容されたデバイスDと、ベーパーチャンバ1と、を備えている。図1に示す電子機器Eでは、ハウジングHの前面にタッチパネルディスプレイTDが設けられている。ベーパーチャンバ1は、ハウジングH内に収容されて、デバイスDに熱的に接触するように配置される。このことにより、電子機器Eの使用時にデバイスDで発生する熱をベーパーチャンバ1が受けることができる。ベーパーチャンバ1が受けた熱は、後述する作動液2を介してベーパーチャンバ1の外部に放出される。このようにして、デバイスDは効果的に冷却される。電子機器Eがタブレット端末である場合には、デバイスDは、中央演算処理装置等に相当する。
【0036】
次に、本実施の形態によるベーパーチャンバ1について説明する。ベーパーチャンバ1は、作動液2が封入された密封空間3を有しており、密封空間3内の作動液2が相変化を繰り返すことにより、上述した電子機器EのデバイスDを効果的に冷却するようになっている。
【0037】
ベーパーチャンバ1は、概略的に薄い平板状に形成されている。ベーパーチャンバ1の平面形状は任意であるが、図2に示すような矩形状であってもよい。この場合、ベーパーチャンバ1は、平面外輪郭をなす4つの直線状の外縁1a、1bを有する。このうち2つの外縁1aが、後述する第1方向Xに沿うように形成され、残りの2つの外縁1bが、後述する第2方向Yに沿うように形成される。ベーパーチャンバ1の平面形状は、例えば、1辺が1cmで他の辺が3cmの長方形であってもよく、1辺が15cmの正方形であってもよく、ベーパーチャンバ1の平面寸法は任意である。
【0038】
図2および図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、上面10a(第1面)と、上面10aとは反対側に設けられた下面10b(第2面)とを有する下側金属シート10(第1金属シート)と、下側金属シート10上に設けられた上側金属シート20(第2金属シート)と、を備えている。下側金属シート10および上側金属シート20は、いずれもベーパーチャンバ用金属シートに相当する。上側金属シート20は、下側金属シート10の上面10a(上側金属シート20の側の面)に重ね合わされた下面20a(下側金属シート10の側の面)と、下面20aとは反対側に設けられた上面20bと、を有している。下側金属シート10の下面10b(とりわけ、後述する蒸発部11の下面)に、冷却対象物であるデバイスDが取り付けられる。
【0039】
ベーパーチャンバ1の厚さは、例えば0.1mm〜1.0mmである。図3では、下側金属シート10の厚さT1および上側金属シート20の厚さT2が等しい場合を示しているが、これに限られることはなく、下側金属シート10の厚さT1と上側金属シート20の厚さT2は、等しくなくてもよい。
【0040】
下側金属シート10と上側金属シート20との間には、作動液2が封入された密封空間3が形成されている。本実施の形態では、密封空間3は、主として作動液2の蒸気が通る蒸気流路部(後述する下側蒸気流路凹部12および上側蒸気流路凹部21)と、主として液状の作動液2が通る液流路部30と、を有している。作動液2の例としては、純水、エタノール、メタノール、アセトン等が挙げられる。
【0041】
下側金属シート10と上側金属シート20とは、後述する拡散接合によって接合されている。図2および図3に示す形態では、下側金属シート10および上側金属シート20は、平面視でいずれも矩形状に形成されている例が示されているが、これに限られることはない。ここで平面視とは、ベーパーチャンバ1がデバイスDから熱を受ける面(下側金属シート10の下面10b)、および受けた熱を放出する面(上側金属シート20の上面20b)に直交する方向から見た状態であって、例えば、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態(図2参照)、または下方から見た状態に相当している。
【0042】
なお、ベーパーチャンバ1がモバイル端末内に設置される場合、モバイル端末の姿勢によっては、下側金属シート10と上側金属シート20との上下関係が崩れる場合もある。しかしながら、本実施の形態では、便宜上、デバイスDから熱を受ける金属シートを下側金属シート10と称し、受けた熱を放出する金属シートを上側金属シート20と称して、下側金属シート10が下側に配置され、上側金属シート20が上側に配置された状態で説明する。
【0043】
図4に示すように、下側金属シート10は、作動液2が蒸発して蒸気を生成する蒸発部11と、上面10aに設けられ、平面視で矩形状に形成された下側蒸気流路凹部12(第1蒸気流路凹部)と、を有している。このうち下側蒸気流路凹部12は、上述した密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気が通るように構成されている。
【0044】
蒸発部11は、この下側蒸気流路凹部12内に配置されており、下側蒸気流路凹部12内の蒸気は、蒸発部11から離れる方向に拡散して、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に向かって輸送される。なお、蒸発部11は、下側金属シート10の下面10bに取り付けられるデバイスDから熱を受けて、密封空間3内の作動液2が蒸発する部分である。このため、蒸発部11という用語は、デバイスDに重なっている部分に限られる概念ではなく、デバイスDに重なっていなくても作動液2が蒸発可能な部分をも含む概念として用いている。ここで蒸発部11は、下側金属シート10の任意の場所に設けることができるが、図2および図4においては、下側金属シート10の中央部に設けられている例が示されている。この場合、ベーパーチャンバ1が設置されたモバイル端末の姿勢によらずに、ベーパーチャンバ1の動作の安定化を図ることができる。
【0045】
本実施の形態では、図3および図4に示すように、下側金属シート10の下側蒸気流路凹部12内に、下側蒸気流路凹部12の底面12a(後述)から上方(底面12aに垂直な方向)に突出する複数の下側流路壁部13(第1流路壁部)が設けられている。本実施の形態では、下側流路壁部13が、ベーパーチャンバ1の第1方向X(長手方向、図4にける左右方向)に沿って細長状に延びている例が示されている。この下側流路壁部13は、後述する上側流路壁部22の下面22aに当接する上面13a(第1当接面、突出端面)を含んでいる。この上面13aは、後述する2つのエッチング工程によってエッチングされない面であり、下側金属シート10の上面10aと同一平面上に形成されている。また、各下側流路壁部13は等間隔に離間して、互いに平行に配置されている。このようにして、各下側流路壁部13の周囲を作動液2の蒸気が流れて、下側蒸気流路凹部12の周縁部に向かって蒸気が輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。また、下側流路壁部13は、上側金属シート20の対応する上側流路壁部22(後述)に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。下側流路壁部13の幅w0は、例えば、0.1mm〜30mm、好ましくは0.1mm〜2.0mmであり、互いに隣り合う下側流路壁部13同士の間隔dは、0.1mm〜30mm、好ましくは0.1mm〜2.0mmである。ここで、幅w0は、下側流路壁部13の第1方向Xに直交する第2方向Yにおける下側流路壁部13の寸法を意味しており、例えば、図4における上下方向の寸法に相当する。また、下側流路壁部13の高さ(言い換えると、下側蒸気流路凹部12の深さ)h0(図3参照)は、後述する下側金属シート10の厚さT1よりも10μm以上小さいことが好ましい。この場合、厚さT1と高さh0との差、すなわち下側蒸気流路凹部12が形成された部分における下側金属シート10の金属材料の厚さを10μm以上にすることができる。このため、当該部分の強度を確保し、外気から受ける圧力に対して内側に凹むように変形することを防止できる。このような高さh0は、10μm〜300μmであってもよい。例えば、ベーパーチャンバ1の厚さT0が0.5mmで、下側金属シート10の厚さT1と上側金属シート20の厚さT2が等しい場合、高さh0は、200μmとすることができる。
【0046】
図3および図4に示すように、下側金属シート10の周縁部には、下側周縁壁14が設けられている。下側周縁壁14は、密封空間3、とりわけ下側蒸気流路凹部12を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。また、平面視で下側周縁壁14の四隅に、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めをするための下側アライメント孔15がそれぞれ設けられている。
【0047】
本実施の形態では、上側金属シート20は、後述する液流路部30が設けられていない点を除けば、下側金属シート10と略同一の構造を有している。以下に、上側金属シート20の構成についてより詳細に説明する。
【0048】
図3および図5に示すように、上側金属シート20は、下面20aに設けられた上側蒸気流路凹部21(第2蒸気流路凹部)を有している。この上側蒸気流路凹部21は、密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気を拡散して冷却するように構成されている。より具体的には、上側蒸気流路凹部21内の蒸気は、蒸発部11から離れる方向に拡散して、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に向かって輸送される。また、図3に示すように、上側金属シート20の上面20bには、モバイル端末等のハウジングH(図1参照)の一部を構成するハウジング部材Haが配置される。このことにより、上側蒸気流路凹部21内の蒸気は、上側金属シート20およびハウジング部材Haを介して外部によって冷却される。
【0049】
本実施の形態では、図2図3および図5に示すように、上側金属シート20の上側蒸気流路凹部21内に、上側蒸気流路凹部21の底面21aから下方(底面21aに垂直な方向)に突出する複数の上側流路壁部22(第2流路壁部)が設けられている。本実施の形態では、上側流路壁部22がベーパーチャンバ1の第1方向X(図5における左右方向)に沿って細長状に延びている例が示されている。この上側流路壁部22は、下側金属シート10の上面10a(より具体的には、上述した下側流路壁部13の上面13a)に当接するとともに液流路部30を覆う平坦状の下面22a(第2当接面、突出端面)を含んでいる。また、各上側流路壁部22は、等間隔に離間して、互いに平行に配置されている。このようにして、各上側流路壁部22の周囲を作動液2の蒸気が流れて、上側蒸気流路凹部21の周縁部に向かって蒸気が輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。また、上側流路壁部22は、下側金属シート10の対応する下側流路壁部13に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。なお、上側流路壁部22の幅、高さは、上述した下側流路壁部13の幅w0、高さh0と同一であることが好適である。ここで、上側蒸気流路凹部21の底面21aは、図3等に示すような下側金属シート10と上側金属シート20との上下配置関係では、天井面と言うこともできるが、上側蒸気流路凹部21の奥側の面に相当するため、本明細書では、底面21aと記す。
【0050】
図3および図5に示すように、上側金属シート20の周縁部には、上側周縁壁23が設けられている。上側周縁壁23は、密封空間3、とりわけ上側蒸気流路凹部21を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。また、平面視で上側周縁壁23の四隅に、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めをするための上側アライメント孔24がそれぞれ設けられている。すなわち、各上側アライメント孔24は、後述する仮止め時に、上述した各下側アライメント孔15に重なるように配置され、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めが可能に構成されている。
【0051】
このような下側金属シート10と上側金属シート20とは、好適には拡散接合で、互いに恒久的に接合されている。より具体的には、図3に示すように、下側金属シート10の下側周縁壁14の上面14aと、上側金属シート20の上側周縁壁23の下面23aとが当接し、下側周縁壁14と上側周縁壁23とが互いに接合されている。このことにより、下側金属シート10と上側金属シート20との間に、作動液2を密封した密封空間3が形成されている。また、下側金属シート10の下側流路壁部13の上面13aと、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aとが当接し、各下側流路壁部13と対応する上側流路壁部22とが互いに接合されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させている。とりわけ、本実施の形態による下側流路壁部13および上側流路壁部22は等間隔に配置されているため、ベーパーチャンバ1の各位置における機械的強度を均等化させることができる。なお、下側金属シート10と上側金属シート20とは、拡散接合ではなく、恒久的に接合できれば、ろう付け等の他の方式で接合されていてもよい。
【0052】
また、図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、第1方向Xにおける一対の端部のうちの一方の端部に、密封空間3に作動液2を注入する注入部4を更に備えている。この注入部4は、下側金属シート10の端面から突出する下側注入突出部16と、上側金属シート20の端面から突出する上側注入突出部25と、を有している。このうち下側注入突出部16の上面に下側注入流路凹部17が形成され、上側注入突出部25の下面に上側注入流路凹部26が形成されている。下側注入流路凹部17は、下側蒸気流路凹部12に連通しており、上側注入流路凹部26は、上側蒸気流路凹部21に連通している。下側注入流路凹部17および上側注入流路凹部26は、下側金属シート10と上側金属シート20とが接合された際、作動液2の注入流路を形成する。当該注入流路を通過して作動液2は密封空間3に注入される。なお、本実施の形態では、注入部4は、ベーパーチャンバ1の第1方向Xにおける一対の端部のうちの一方の端部に設けられている例が示されているが、これに限られることはない。
【0053】
次に、下側金属シート10の液流路部30について、図3図4図6および図7を用いてより詳細に説明する。
【0054】
図3および図4に示すように、下側金属シート10の上面10a(より具体的には、各下側流路壁部13の上面13a)に、液状の作動液2が通る液流路部30が設けられている。液流路部30は、上述した密封空間3の一部を構成しており、上述した下側蒸気流路凹部12および上側蒸気流路凹部21に連通している。
【0055】
図6に示すように、液流路部30は、第1主流溝31と、第2主流溝32と、第3主流溝33と、第4主流溝34と、を有している。第1〜第4主流溝31〜34はそれぞれ、第1方向Xに直線状に延びて液状の作動液2が通るようになっており、上述した第2方向Yにこの順に配置されている。すなわち、第4主流溝34は、第3主流溝33に対して第2主流溝32の側とは反対側に配置されている。第1〜第4主流溝31〜34は、主として、蒸発部11で生成された蒸気から凝縮した作動液2を蒸発部11に向けて輸送するように構成されている。
【0056】
第1主流溝31と第2主流溝32との間に、第1凸部列41が設けられている。この第1凸部列41は、第1方向Xに配列された複数の第1凸部41aを含んでいる。図6においては、各第1凸部41aは、平面視で、第1方向Xが長手方向となるように矩形状に形成されている。互いに隣り合う第1凸部41aの間には、第1連絡溝51が介在されている。第1連絡溝51は、第2方向Yに延びるように形成され、第1主流溝31と第2主流溝32とを連通しており、第1主流溝31と第2主流溝32との間で作動液2が往来可能になっている。第1連絡溝51は、互いに隣り合う第1凸部41aの間の領域であって、第1主流溝31と第2主流溝32との間の領域としている。
【0057】
第2主流溝32と第3主流溝33との間に、第2凸部列42が設けられている。この第2凸部列42は、第1方向Xに配列された複数の第2凸部42aを含んでいる。図6においては、各第2凸部42aは、平面視で、第1方向Xが長手方向となるように矩形状に形成されている。互いに隣り合う第2凸部42aの間には、第2連絡溝52が介在されている。第2連絡溝52は、第2方向Yに延びるように形成され、第2主流溝32と第3主流溝33とを連通しており、第2主流溝32と第3主流溝33との間で作動液2が往来可能になっている。第2連絡溝52は、互いに隣り合う第2凸部42aの間の領域であって、第2主流溝32と第3主流溝33との間の領域としている。
【0058】
第2主流溝32は、第1連絡溝51が連通する第1交差部P1と、第2連絡溝52が連通する第2交差部P2と、を含んでいる。
【0059】
このうち第1交差部P1において、第1連絡溝51の少なくとも一部が第2凸部42aに対向している。図6に示すように、第1交差部P1において、第1連絡溝51の全体(第1連絡溝51の幅方向(第1方向X)における全領域)が第2凸部42aに対向している。このことにより、第1交差部P1の全体にわたって、第2主流溝32の第1方向Xに沿う一対の側壁35、36のうち第1連絡溝51の側とは反対側の側壁36(第2凸部42aの壁)が配置されている。図6に示す形態では、第2方向Yで見たときに、第1連絡溝51は、第2凸部42aの第1方向Xにおける中心に重なるように配置されている。このようにして、第1交差部P1において、第2主流溝32と第1連絡溝51とがT字状に交わっている。第1交差部P1は、第1方向Xにおいて互いに隣り合う主流溝本体部31a〜34aの間の領域であるとともに、第2方向Yにおいて互いに隣り合う連絡溝51〜54と凸部41a〜44aとの間の領域としている。言い換えると、主流溝31〜34と、連絡溝51〜54とが交わる領域(すなわち、重なる領域)としている。ここで、第1主流溝本体部31a〜34aは、第1〜第4主流溝31〜34の一部を構成しており、第1交差部P1と第2交差部P2との間に設けられた部分であって、互いに隣り合う凸部41a〜44aの間に位置する部分である。
【0060】
同様に、第2交差部P2において、第2連絡溝52の少なくとも一部が第1凸部41aに対向している。図6に示すように、第2交差部P2において、第2連絡溝52の全体(第2連絡溝52の幅方向(第1方向X)における全領域)が第1凸部41aに対向している。このことにより、第2交差部P2の全体にわたって、第2主流溝32の第1方向Xに沿う一対の側壁35、36のうち第2連絡溝52の側とは反対側の側壁35(第1凸部41aの壁)が配置されている。図6に示す形態では、第2方向Yで見たときに、第2連絡溝52は、第1凸部41aの第1方向Xにおける中心に重なるように配置されている。このようにして、第2交差部P2において、第2主流溝32と第2連絡溝52とがT字状に交わっている。第2交差部P2は、第1方向Xにおいて互いに隣り合う主流溝本体部31a〜34aの間の領域であるとともに、第2方向Yにおいて互いに隣り合う連絡溝51〜54と凸部41a〜44aとの間の領域としている。言い換えると、主流溝31〜34と、連絡溝51〜54とが交わる領域(すなわち、重なる領域)としている。
【0061】
上述したように、第2主流溝32の第1交差部P1において、第1連絡溝51は第2凸部42aに対向しているとともに、第2主流溝32の第2交差部P2において、第2連絡溝52は第1凸部41aに対向している。このことにより、第1連絡溝51と第2連絡溝52とは、一直線上に配置されていない。すなわち、第2主流溝32に一方の側で連通する第1連絡溝51と、他方の側で連通する第2連絡溝52とが、一直線上に配置されるようにはなっていない。
【0062】
本実施の形態においては、第1凸部41aと第2凸部42aは同一形状を有し、第1凸部41aの配列ピッチと第2凸部42aの配列ピッチは、同一になっている。そして、この配列ピッチの半分の寸法で、第1凸部41aと第2凸部42aは、第1方向Xに互いにずれて配置されている。
【0063】
また、本実施の形態では、第2主流溝32の第1交差部P1と第2交差部P2は、互いに隣り合っている。すなわち、第1交差部P1と第2交差部P2との間に、他の交差部(例えば、後述する図14に示すような第3交差部P3)が介在されていない。そして、第2主流溝32は、複数の第1交差部P1と、複数の第2交差部P2と、を含んでおり、第1交差部P1と第2交差部P2は、第1方向Xに交互に配置されている。すなわち、第2主流溝32の一対の側壁35、36が断続的に形成されており、各側壁35、36の分断位置が、第1方向Xに互いにずれている。
【0064】
ところで、第3主流溝33と第4主流溝34との間に、第3凸部列43が設けられている。この第3凸部列43は、第1凸部列41と同様に、第1方向Xに配列された複数の第3凸部43aを含んでいる。互いに隣り合う第3凸部43aの間には、第3連絡溝53が介在されている。第3連絡溝53は、第2方向Yに延びるように形成され、第3主流溝33と第4主流溝34とを連通しており、第3主流溝33と第4主流溝34との間で作動液2が往来可能になっている。第3連絡溝53は、互いに隣り合う第3凸部43aの間の領域であって、第3主流溝33と第4主流溝34との間の領域としている。
【0065】
第3主流溝33は、第2連絡溝52が連通する第1交差部P1と、第3連絡溝53が連通する第2交差部P2と、を含んでいる。このうち第1交差部P1において、第2連絡溝52の少なくとも一部が第3凸部43aに対向している。図6においては、第1交差部P1において、第2連絡溝52の全体(第2連絡溝52の幅方向(第1方向X)における全領域)が第3凸部43aに対向している。このことにより、第1交差部P1の全体にわたって、第3主流溝33の第1方向Xに沿う一対の側壁35、36のうち第2連絡溝52の側とは反対側の側壁36(第3凸部43aの壁)が存在している。図6に示す形態では、第2方向Yで見たときに、第2連絡溝52は、第3凸部43aの第1方向Xにおける中心に重なるように配置されている。このようにして、第1交差部P1において、第3主流溝33と第2連絡溝52とがT字状に交わっている。
【0066】
同様に、第2交差部P2において、第3連絡溝53の少なくとも一部が第2凸部42aに対向している。図6においては、第2交差部P2において、第3連絡溝53の全体(第3連絡溝53の幅方向(第1方向X)における全領域)が第2凸部42aに対向している。このことにより、第2交差部P2の全体にわたって、第3主流溝33の第1方向Xに沿う一対の側壁35、36のうち第3連絡溝53の側とは反対側の側壁35(第2凸部42aの壁)が配置されている。図6に示す形態では、第2方向Yで見たときに、第3連絡溝53は、第2凸部42aの第1方向Xにおける中心に重なるように配置されている。このようにして、第2交差部P2において、第3主流溝33と第3連絡溝53とがT字状に交わっている。
【0067】
すなわち、本実施の形態においては、第1凸部41a、第2凸部42aおよび第3凸部43aは同一形状を有し、第1凸部41aの配列ピッチ、第2凸部42aの配列ピッチおよび第3凸部43aの配列ピッチは、同一になっている。そして、この配列ピッチの半分の寸法で、第2凸部42aと第3凸部43aは、第1方向Xに互いにずれて配置されている。この結果、第1凸部41aと第3凸部43aは、第1方向Xにおいて同じ位置に配置されており、第2方向Yで見たときに、第1凸部41aと第3凸部43aは重なっている。
【0068】
本実施の形態では、第2主流溝32と同様に、第3主流溝33の第1交差部P1と第2交差部P2は、互いに隣り合っている。そして、第3主流溝33は、複数の第1交差部P1と、複数の第2交差部P2と、を含んでおり、第1交差部P1と第2交差部P2は、第1方向Xに交互に配置されている。すなわち、第3主流溝33の一対の側壁35、36が断続的に形成されており、各側壁35、36の分断位置が、第1方向Xに互いにずれている。
【0069】
以上のように第1凸部41a、第2凸部42aおよび第3凸部43aが配置されているため、本実施の形態では、第1凸部41a、第2凸部42aおよび第3凸部43aの配置は、千鳥状になっている。この結果、第1連絡溝51、第2連絡溝52および第3連絡溝53も、千鳥状に配置されている。
【0070】
図6においては、上述した第1〜第4主流溝31〜34を1セットとしたときの1セット分の主流溝が示されている。このセットは、複数設けられていてもよく、全体として多数の主流溝31〜34が、下側流路壁部13の上面13aに形成されていてもよい。なお、液流路部30を構成する主流溝は、第1〜第4主流溝31〜34を一つのセットとして構成する必要はなく、少なくとも3つの主流溝が形成されていれば、主流溝の個数は、4の倍数に限られることはなく任意である。
【0071】
この場合、第4主流溝34の第3主流溝33の側とは反対側には、上述した第1主流溝31が設けられており、この第4主流溝34と第1主流溝31との間に、第4凸部列44が設けられている。この第4凸部列44は、上述した第2凸部列42と同様に、第1方向Xに配列された複数の第4凸部44aを含んでいる。第4凸部44aと第2凸部42aは、第1方向Xにおいて同じ位置に配置されており、第2方向Yで見たときに、第4凸部44aと第2凸部42aは重なっている。互いに隣り合う第4凸部44aの間には、第4連絡溝54が介在されている。第4連絡溝54は、第2方向Yに延びるように形成され、第4主流溝34と第1主流溝31とを連通しており、第4主流溝34と第1主流溝31との間で作動液2が往来可能になっている。第4連絡溝54は、互いに隣り合う第4凸部44aの間の領域であって、第4主流溝34と第1主流溝31との間の領域としている。
【0072】
第4主流溝34は、第2主流溝32と同様な第1交差部P1および第2交差部P2を有している。ここでは、第1交差部P1において、第4主流溝34に第3連絡溝53が連通し、第2交差部P2において、第4主流溝34に第4連絡溝54が連通している。また、第1主流溝31は、第3主流溝33と同様な第1交差部P1および第2交差部P2を有している。ここでは、第1交差部P1において、第1主流溝31に第4連絡溝54が連通し、第2交差部P2において、第1主流溝31に第1連絡溝51が連通している。第1主流溝31および第4主流溝34における第1交差部P1および第2交差部P2は、第2主流溝32および第3主流溝33における第1交差部P1および第2交差部P2と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0073】
各凸部41a〜44aは、各液流路部30の全体にわたって、上述したように矩形状で、千鳥状に配置されていてもよい。
【0074】
ところで、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1(第2方向Yの寸法)は、第1〜第4凸部41a〜44aの幅w2(第2方向Yの寸法)よりも大きいことが好適である。この場合、下側流路壁部13の上面13aに占める第1〜第4主流溝31〜34の割合を大きくすることができる。このため、当該上面13aにおける主流溝31〜34の流路密度を増大させて、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。例えば、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1を、30μm〜200μm、第1〜第4凸部41a〜44aの幅w2を、20μm〜180μmとしてもよい。
【0075】
第1〜第4主流溝31〜34の深さh1は、上述した下側蒸気流路凹部12の深さh0よりも小さいことが好適である。この場合、第1〜第4主流溝31〜34の毛細管作用を高めることができる。例えば、第1〜第4主流溝31〜34の深さh1は、h0の半分程度が好ましく、5μm〜180μmとしてもよい。
【0076】
また、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3(第1方向Xの寸法)は、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1よりも小さいことが好適である。この場合、各主流溝31〜34において蒸発部11に向かって液状の作動液2が輸送されている間では、作動液2が連絡溝51〜54に流れることを抑制でき、作動液2の輸送機能を向上させることができる。一方、主流溝31〜34のいずれかにドライアウトが発生した場合には、隣の主流溝31〜34から対応する連絡溝51〜54を介して作動液2を移動させることができ、ドライアウトを迅速に解消して、作動液2の輸送機能を確保することができる。すなわち、第1〜第4連絡溝51〜54は、隣り合う主流溝31〜34同士を連通することができれば、主流溝31〜34の幅w1よりも小さくても、その機能を発揮することができる。このような第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3は、例えば20μm〜180μmとしてもよい。
【0077】
第1〜第4連絡溝51〜54の深さh3は、その幅w3に応じて、第1〜第4主流溝31〜34の深さh1よりも浅くしてもよい。例えば、第1〜第4連絡溝51〜54の深さh3(図示せず)は、第1〜第4主流溝31〜34の深さh1を50μmとした場合には、40μmとしてもよい。
【0078】
ここで、完成形のベーパーチャンバ1から主流溝31〜34の幅、深さおよび連絡溝51〜54の幅、深さを確認する方法については、後述する。
【0079】
第1〜第4主流溝31〜34の横断面(第2方向Yにおける断面)形状は、特に限られることはなく、例えば矩形状、湾曲状、半円状、V字状にすることができる。第1〜第4連絡溝51〜54の横断面(第1方向Xにおける断面)形状も同様である。図7においては、第1〜第4主流溝31〜34の横断面が、矩形状に形成されている例が示されている。
【0080】
ところで、上述した液流路部30は、下側金属シート10の下側流路壁部13の上面13aに形成されている。一方、本実施の形態では、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aは、平坦状に形成されている。このことにより、液流路部30の各主流溝31〜34は、平坦状の下面22aで覆われている。この場合、図7に示すように、主流溝31〜34の第1方向Xに延びる一対の側壁35、36と上側流路壁部22の下面22aとにより、直角状あるいは鋭角状の2つの角部37を形成することができ、これら2つの角部37における毛細管作用を高めることができる。すなわち、主流溝31〜34の底面(下側金属シート10の下面10bの側の面)と、主流溝31〜34の一対の側壁35、36とによっても、2つの角部38は形成され得るが、主流溝31〜34を後述するようにエッチングによって形成する場合には、底面側の角部38は、丸みを帯びるように形成される傾向にある。このため、上側流路壁部22の下面22aを、主流溝31〜34および連絡溝51〜54を覆うように平坦状に形成することにより、上側流路壁部22の下面22aの側の角部37において毛細管作用を高めることができる。なお、図7においては、図面を明瞭にするために、第1主流溝31についてのみ、側壁35、36と角部37、38とを示し、第2〜第4主流溝32〜34については、側壁35、36と角部37、38とを省略している。
【0081】
なお、下側金属シート10および上側金属シート20に用いる材料は、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはないが、例えば、下側金属シート10および上側金属シート20は、銅(無酸素銅)または銅合金により形成されていることが好適である。このことにより、下側金属シート10および上側金属シート20の熱伝導率を高めることができる。このため、ベーパーチャンバ1の放熱効率を高めることができる。あるいは、所望の放熱効率を得ることができれば、これらの金属シート10および20には、アルミニウム等の他の金属材料や、ステンレスなどの他の金属合金材料を用いることもできる。
【0082】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、まず、ベーパーチャンバ1の製造方法について、図8乃至図13を用いて説明するが、上側金属シート20のハーフエッチング工程の説明は簡略化する。なお、図8乃至図13では、図3の断面図と同様の断面を示している。
【0083】
まず、図8に示すように、準備工程として、平板状の金属材料シートMを準備する。
【0084】
続いて、図9に示すように、金属材料シートMがハーフエッチングされて、密封空間3の一部を構成する下側蒸気流路凹部12が形成される。この場合、まず、金属材料シートMの上面Maに図示しない第1レジスト膜が、フォトリソグラフィー技術によって、複数の下側流路壁部13および下側周縁壁14に対応するパターン状に形成される。続いて、第1ハーフエッチング工程として、金属材料シートMの上面Maがハーフエッチングされる。このことにより、金属材料シートMの上面Maのうち第1レジスト膜のレジスト開口(図示せず)に対応する部分がハーフエッチングされて、図9に示すような下側蒸気流路凹部12、下側流路壁部13および下側周縁壁14が形成される。この際、図2および図4に示す下側注入流路凹部17も同時に形成され、また、図4に示すような外形輪郭形状を有するように金属材料シートMが上面Maおよび下面からエッチングされて、所定の外形輪郭形状が得られる。第1ハーフエッチング工程の後、第1レジスト膜が除去される。なお、ハーフエッチングとは、材料を貫通しないような凹部を形成するためのエッチングを意味している。このため、ハーフエッチングにより形成される凹部の深さは、下側金属シート10の厚さの半分であることには限られない。エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、または塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いることができる。
【0085】
下側蒸気流路凹部12が形成された後、図10に示すように、下側流路壁部13の上面13aに液流路部30が形成される。
【0086】
この場合、まず、下側流路壁部13の上面13aに、図示しない第2レジスト膜が、フォトリソグラフィー技術によって、液流路部30の第1〜第4凸部41a〜44aに対応するパターン状に形成される。続いて、第2ハーフエッチング工程として、下側流路壁部13の上面13aがハーフエッチングされる。このことにより、当該上面13aのうち第2レジスト膜のレジスト開口(図示せず)に対応する部分がハーフエッチングされて、下側流路壁部13の上面13aに液流路部30が形成される。すなわち、当該上面13aに、各凸部41a〜44aが形成される。これらの凸部41a〜44aによって、第1〜第4主流溝31〜34および第1〜第4連絡溝51〜54が画定される。第2ハーフエッチング工程の後、第2レジスト膜が除去される。
【0087】
このようにして、液流路部30が形成された下側金属シート10が得られる。なお、第1ハーフエッチング工程とは別の工程である第2ハーフエッチング工程として、液流路部30を形成することにより、下側蒸気流路凹部12の深さh0とは異なる深さで主流溝31〜34および連絡溝51〜54を容易に形成することが可能になる。しかしながら、下側蒸気流路凹部12と、主流溝31〜34および連絡溝51〜54は、同一のハーフエッチング工程で形成するようにしてもよい。この場合には、ハーフエッチング工程の回数を削減することができ、ベーパーチャンバ1の製造コストを低減可能になる。
【0088】
一方、下側金属シート10と同様にして、上側金属シート20が下面20aからハーフエッチングされて、上側蒸気流路凹部21、上側流路壁部22および上側周縁壁23が形成される。このようにして、上述した上側金属シート20が得られる。
【0089】
次に、図11に示すように、仮止め工程として、下側蒸気流路凹部12を有する下側金属シート10と、上側蒸気流路凹部21を有する上側金属シート20とが仮止めされる。この場合、まず、下側金属シート10の下側アライメント孔15(図2および図4参照)と上側金属シート20の上側アライメント孔24(図2および図5参照)とを利用して、下側金属シート10と上側金属シート20とが位置決めされる。続いて、下側金属シート10と上側金属シート20とが固定される。固定の方法としては、特に限られることはないが、例えば、下側金属シート10と上側金属シート20とに対して抵抗溶接を行うことによって下側金属シート10と上側金属シート20とを固定してもよい。この場合、図11に示すように、電極棒40を用いてスポット的に抵抗溶接を行うことが好適である。抵抗溶接の代わりにレーザ溶接を行ってもよい。あるいは、超音波を照射して下側金属シート10と上側金属シート20とを超音波接合して固定してもよい。さらには、接着剤を用いてもよいが、有機成分を有しないか、若しくは有機成分が少ない接着剤を用いることが好適である。このようにして、下側金属シート10と上側金属シート20とが、位置決めされた状態で固定される。
【0090】
仮止めの後、図12に示すように、恒久接合工程として、下側金属シート10と上側金属シート20とが、拡散接合によって恒久的に接合される。拡散接合とは、接合する下側金属シート10と上側金属シート20とを密着させ、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、各金属シート10、20を密着させる方向に加圧するとともに加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。拡散接合は、下側金属シート10および上側金属シート20の材料を融点に近い温度まで加熱するが、融点よりは低いため、各金属シート10、20が溶融して変形することを回避できる。より具体的には、下側金属シート10の下側周縁壁14の上面14aと上側金属シート20の上側周縁壁23の下面23aとが、接合面となって拡散接合される。このことにより、下側周縁壁14と上側周縁壁23とによって、下側金属シート10と上側金属シート20との間に密封空間3が形成される。また、下側注入流路凹部17(図2および図4参照)と上側注入流路凹部26(図2および図5参照)とによって、密封空間3に連通する作動液2の注入流路が形成される。さらに、下側金属シート10の下側流路壁部13の上面13aと、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aとが、接合面となって拡散接合され、ベーパーチャンバ1の機械的強度が向上する。下側流路壁部13の上面13aに形成された液流路部30は、液状の作動液2の流路として残存する。
【0091】
恒久的な接合の後、図13に示すように、封入工程として、注入部4(図2参照)から密封空間3に作動液2が注入される。この際、まず、密封空間3が真空引きされて減圧され、その後に、作動液2が密封空間3に注入される。注入時、作動液2は、下側注入流路凹部17と上側注入流路凹部26とにより形成された注入流路を通過する。例えば、作動液2の封入量は、ベーパーチャンバ1内部の液流路部30の構成にもよるが、密封空間3の全体積に対して10%〜30%としてもよい。
【0092】
作動液2の注入の後、上述した注入流路が封止される。例えば、注入部4にレーザを照射し、注入部4を部分的に溶融させて注入流路を封止するようにしてもよい。このことにより、密封空間3と外部との連通が遮断され、作動液2が密封空間3に封入される。このようにして、密封空間3内の作動液2が外部に漏洩することが防止される。なお、封止のためには、注入部4をかしめてもよく、またはろう付けしてもよい。
【0093】
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が得られる。
【0094】
次に、ベーパーチャンバ1の作動方法、すなわち、デバイスDの冷却方法について説明する。
【0095】
上述のようにして得られたベーパーチャンバ1は、モバイル端末等のハウジングH内に設置されるとともに、下側金属シート10の下面10bに、被冷却対象物であるCPU等のデバイスDが取り付けられる。密封空間3内に注入された作動液2の量は少ないため、密封空間3内の液状の作動液2は、その表面張力によって、密封空間3の壁面、すなわち、下側蒸気流路凹部12の壁面、上側蒸気流路凹部21の壁面および液流路部30の壁面に付着する。
【0096】
この状態でデバイスDが発熱すると、下側蒸気流路凹部12のうち蒸発部11に存在する作動液2が、デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2が蒸発(気化)し、作動液2の蒸気が生成される。生成された蒸気の多くは、密封空間3を構成する下側蒸気流路凹部12内および上側蒸気流路凹部21内で拡散する(図4の実線矢印参照)。上側蒸気流路凹部21内および下側蒸気流路凹部12内の蒸気は、蒸発部11から離れ、蒸気の多くは、比較的温度の低いベーパーチャンバ1の周縁部に向かって輸送される。拡散した蒸気は、下側金属シート10および上側金属シート20に放熱して冷却される。下側金属シート10および上側金属シート20が蒸気から受けた熱は、ハウジング部材Ha(図3参照)を介して外部に伝達される。
【0097】
蒸気は、下側金属シート10および上側金属シート20に放熱することにより、蒸発部11において吸収した潜熱を失って凝縮する。凝縮して液状になった作動液2は、下側蒸気流路凹部12の壁面または上側蒸気流路凹部21の壁面に付着する。ここで、蒸発部11では作動液2が蒸発し続けているため、液流路部30のうち蒸発部11以外の部分における作動液2は、蒸発部11に向かって輸送される(図4の破線矢印参照)。このことにより、下側蒸気流路凹部12の壁面および上側蒸気流路凹部21の壁面に付着した液状の作動液2は、液流路部30に向かって移動し、液流路部30内に入り込む。すなわち、第1〜第4連絡溝51〜54を通って第1〜第4主流溝31〜34に入り込み、各主流溝31〜34および各連絡溝51〜54に、液状の作動液2が充填される。このため、充填された作動液2は、各主流溝31〜34の毛細管作用により、蒸発部11に向かう推進力を得て、蒸発部11に向かってスムースに輸送される。
【0098】
液流路部30においては、各主流溝31〜34が、対応する連絡溝51〜54を介して、隣り合う他の主流溝31〜34と連通している。このことにより、互いに隣り合う主流溝31〜34同士で、液状の作動液2が往来し、主流溝31〜34でドライアウトが発生することが抑制されている。このため、各主流溝31〜34内の作動液2に毛細管作用が付与されて、作動液2は、蒸発部11に向かってスムースに輸送される。
【0099】
また、各主流溝31〜34が、上述した第1交差部P1および第2交差部P2を含んでいることにより、各主流溝31〜34内の作動液2に作用する毛細管作用が喪失されることが防止される。ここで、例えば、第1連絡溝51と第2連絡溝52が第2主流溝32を介して一直線上に配置される場合には、第2主流溝32との交差部において、一対の側壁35、36の両方が存在しないことになる。この場合には、当該交差部において、蒸発部11に向かう方向の毛細管作用が喪失され、蒸発部11に向かう作動液2の推進力が低減され得る。
【0100】
これに対して本実施の形態では、上述したように、第2主流溝32に一方の側で連通する第1連絡溝51と、他方の側で連通する第2連絡溝52とが、一直線上に配置されていない。この場合、図6に示すように、第1交差部P1において、第2主流溝32の第1方向Xに沿う一対の側壁35、36のうち第1連絡溝51の側とは反対側の側壁36が配置されている。このことにより、第1交差部P1において、蒸発部11に向かう方向の毛細管作用が喪失されることを防止できる。第2交差部P2においても同様に、第2連絡溝52の側とは反対側の側壁35が配置されているため、蒸発部11に向かう方向の毛細管作用が喪失されることを防止できる。このため各交差部P1、P2において、毛細管作用が低減することを抑制でき、蒸発部11に向かう作動液2に連続的に毛細管作用を付与させることができる。
【0101】
そして、本実施の形態では、第2主流溝32の第1交差部P1と第2交差部P2が交互に配置されている。すなわち、第2主流溝32の第1交差部P1では第2連絡溝52の側の側壁36によって第2主流溝32内の作動液2に毛細管作用を付与するが、第2交差部P2では、側壁36とは反対側である第1連絡溝51の側の側壁35によって第2主流溝32内の作動液2に毛細管作用を付与することができる。このため、第2主流溝32内の作動液2に作用する毛細管作用を、幅方向(第2方向Y)で均等化させることができる。
【0102】
本実施の形態では、第1主流溝31、第3主流溝33および第4主流溝34が、第2主流溝32と同様の第1交差部P1および第2交差部P2をそれぞれ有している。このことにより、第1〜第4主流溝31〜34内の作動液2に付与される毛細管作用が低減することを抑制できる。
【0103】
蒸発部11に達した作動液2は、デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。このようにして、作動液2が、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流してデバイスDの熱を移動させて放出する。この結果、デバイスDが冷却される。
【0104】
ところで、本実施の形態では、上述したように、第2主流溝32において、第1連絡溝51と第2連絡溝52とが同一直線状に配置されていない。このため、ベーパーチャンバ1が設置されたモバイル端末の姿勢によっては、第1方向Xよりも第2方向Yが重力方向に沿う場合があり得る。このような姿勢では、第1連絡溝51と第2連絡溝52とが同一直線状に配置されていると、各主流溝31〜34内の作動液2の一部が、重力の影響を受けて、各連絡溝51〜54内を第2方向Yの一側に向かって流れて、当該一側に作動液2が偏ると考えられる。
【0105】
しかしながら、本実施の形態のように、各主流溝31〜34が第1交差部P1と第2交差部P2とを含んでいる場合には、作動液2が、第2方向Yの一側に向かって直線的に流れることを抑制できる。すなわち、作動液2は、第2方向Yの一側に向かう間に、主流溝31〜34を通って蒸発部11に向かって進むことができ、作動液2の蒸発部11への流れが弱まることを抑制できる。このため、ベーパーチャンバ1の姿勢が、作動液2の輸送機能を阻害する方向に重力が作用するような姿勢であっても、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。
【0106】
ところで、密封空間3内は、上述したように減圧されている。このことにより、下側金属シート10および上側金属シート20は、外気から、内側に凹む方向への圧力を受けている。ここで、第1連絡溝51と第2連絡溝52が第2主流溝32を介して一直線上に配置される場合には、第2主流溝32、第1連絡溝51および第2連絡溝52が十字状に交わる交差部が形成される。この場合、第1方向Xに直交する第2方向Yに延びる溝に沿って、下側金属シート10および上側金属シート20が内側に凹み、その凹みが、第2主流溝32を横断するように形成され得る。この場合、第2主流溝32の流路断面積が小さくなり、作動液2の流路抵抗が増大し得る。
【0107】
これに対して本実施の形態では、第2主流溝32の第1交差部P1では、第1連絡溝51が、第2凸部42aに対向している。このことにより、下側金属シート10および上側金属シート20が第1連絡溝51に沿って内側に凹んだ場合であっても、その凹みが、第2主流溝32を横断することを防止できる。このため、第2主流溝32の流路断面積を確保することができ、作動液2の流れが妨げられることを防止できる。例えば、薄さを求められるモバイル端末用のベーパーチャンバでは、その薄さによって凹み変形を抑制することが困難になり得るが、本実施の形態によるベーパーチャンバ1をこのようなモバイル端末用のベーパーチャンバに適用した場合であっても、本実施の形態によれば、凹み変形を効果的に抑制することができる。例えば、下側金属シート10のうち主流溝31〜34および連絡溝51〜54が形成されている部分の厚さ(残厚)が、50μm〜150μm程度になる場合には、凹み変形を抑制するために、第1凸部41a〜第4凸部44aを千鳥状に配置することが効果的な場合も考えられる。また、熱伝導率の良好な材料として無酸素銅を用いる場合も、その材料の機械的強度の低さによって凹み変形を抑制することが困難になり得るが、本実施の形態によるベーパーチャンバ1を無酸素銅で形成した場合であっても、凹み変形を効果的に抑制することができる。
【0108】
このように、本実施の形態によれば、上述したように、第1交差部P1において、第2主流溝32の一対の側壁35、36のうち第1連絡溝51の側とは反対側の側壁36を配置することができるため、下側金属シート10および上側金属シート20が、外気の圧力によって第1連絡溝51に沿って内側に凹んだ場合であっても、その凹みが、第2主流溝32を横断することを防止できる。同様に、第2交差部P2において、第2主流溝32の一対の側壁35、36のうち第2連絡溝52の側とは反対側の側壁35を配置させることができるため、下側金属シート10および上側金属シート20が、外気の圧力によって第1連絡溝51に沿って凹んだ場合であっても、その凹みが、第2主流溝32を横断することを防止できる。このため、第2主流溝32の流路断面積を確保することができ、作動液2の流れが妨げられることを防止できる。この結果、液状の作動液2の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
【0109】
また、本実施の形態によれば、液流路部30の第2主流溝32が、第1連絡溝51が第2凸部42aに対向する第1交差部P1と、第2連絡溝52が第1凸部41aに対向する第2交差部P2と、を含んでいる。このことにより、第1交差部P1において、第2主流溝32の一対の側壁35、36のうち第1連絡溝51の側とは反対側の側壁36を配置させることができるとともに、第2交差部P2において、第2連絡溝52の側とは反対側の側壁35を配置させることができる。このため、蒸発部11に向かう作動液2に連続的に毛細管作用を付与させることができる。また、第1交差部P1と第2交差部P2で、互いに反対側に配置された側壁35、36で、第2主流溝32内の作動液2に毛細管作用を付与することができるため、第2主流溝32内の作動液2に付与される毛細管作用を第2方向Yにおいて均等化させることができる。この結果、蒸発部11に向かう作動液2の推進力が交差部P1、P2で低下することを抑制し、液状の作動液2の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
【0110】
また、本実施の形態によれば、第2主流溝32の第1交差部P1と第2交差部P2は、互いに隣り合っている。このことにより、第2主流溝32内の作動液2に作用する毛細管作用を幅方向で均等化させることができる。
【0111】
また、本実施の形態によれば、第2主流溝32の複数の第1交差部P1と複数の第2交差部P2が交互に配置されている。このことにより、第2主流溝32内の作動液2に付与される毛細管作用をより一層均等化させることができる。
【0112】
また、本実施の形態によれば、液流路部30が第3主流溝33を有し、第3主流溝33が、第2連絡溝52が第3凸部43aに対向する第1交差部P1と、第3連絡溝53が第2凸部42aに対向する第2交差部P2と、を含んでいる。このことにより、上述した第2主流溝32と同様にして、下側金属シート10および上側金属シート20が、外気の圧力によって内側に凹んだ場合であっても、その凹みが、第3主流溝33を横断することを防止できる。また、第3主流溝33内の作動液2に付与される毛細管作用を均等化させることができる。このため、第3主流溝33の流路断面積を確保することができる。とりわけ、本実施の形態では、第1主流溝31および第4主流溝34も同様の第1交差部P1および第2交差部P2を含んでいるため、液流路部30の全体にわたって作動液2に付与される毛細管作用を均等化させるとともに、各主流溝31〜34の流路断面積を確保することができ、作動液2の輸送機能をより一層向上させることができる。
【0113】
また、本実施の形態によれば、第3主流溝33の第1交差部P1と第2交差部P2は、互いに隣り合っているため、毛細管作用が偏って付与されることをより一層抑制できる。とりわけ、第3主流溝33の複数の第1交差部P1と複数の第2交差部P2が交互に配置されているため、第3主流溝33内の作動液2に付与される毛細管作用をより一層均等化させることができる。
【0114】
また、本実施の形態によれば、下側流路壁部13の上面13aに当接する上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aが、平坦状になっており、第2主流溝32を覆っている。このことにより、各主流溝31〜34および各連絡溝51〜54の横断面において、直角状あるいは鋭角状の2つの角部37(図7参照)を形成することができ、各主流溝31〜34内および各連絡溝51〜54内の作動液2に作用する毛細管作用を高めることができる。
【0115】
また、本実施の形態によれば、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1が、第1〜第4凸部41a〜44aの幅w2よりも大きくなっている。このことにより、下側流路壁部13の上面13aに占める第1〜第4主流溝31〜34の割合を大きくすることができる。このため、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。
【0116】
さらに、本実施の形態によれば、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3が、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1よりも小さくなっている。このことにより、各主流溝31〜34において蒸発部11に向かって液状の作動液2が輸送されている間では、作動液2が、連絡溝51〜54に流れることを抑制でき、作動液2の輸送機能を向上させることができる。一方、主流溝31〜34のいずれかにドライアウトが発生した場合には、隣の主流溝31〜34から対応する連絡溝51〜54を介して作動液2を移動させることができ、ドライアウトを迅速に解消して、作動液2の輸送機能を確保することができる。
【0117】
なお、上述した本実施の形態においては、第2主流溝32の第1交差部P1において、第1連絡溝51の全体が第2凸部42aに対向しているとともに、第2交差部P2において、第2連絡溝52の全体が第1凸部41aに対向している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、当該第1交差部P1において、第1連絡溝51の一部(第1連絡溝51の幅方向(第1方向X)における一部の領域)が、第2凸部42aに対向していればよい。また、第2交差部P2において、第2連絡溝52の一部が、第1凸部41aに対向していればよい。すなわち、第2方向Yで見たときに、第1連絡溝51と第2連絡溝52とが全体的に重なり合わなければ(第1連絡溝51と第2連絡溝52が一直線上に配置されなければ)、部分的に重なり合うようになっていてもよい。この場合であっても、第1方向Xにおける第1交差部P1の一部において、第2主流溝32の側壁36を配置させることができるとともに、第1方向Xにおける第2交差部P2の一部において、第2主流溝32の側壁35を配置させることができる。このため、第1交差部P1において蒸発部11に向かう方向の毛細管作用が喪失されることを防止できる。第1主流溝31、第3主流溝33および第4主流溝34の各々における第1交差部P1および第2交差部P2においても同様である。
【0118】
また、上述した本実施の形態においては、第1〜第4主流溝31〜34が、第1交差部P1および第2交差部P2をそれぞれ含んでいる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、液流路部30のうち少なくとも1つの主流溝31〜34に、第1交差部P1および第2交差部P2を含んでいればよい。
【0119】
例えば、液流路部30は、図14に示すような構成を有するようにしてもよい。図14に示す形態では、第2主流溝32および第4主流溝34は、図6に示す形態と同様に第1交差部P1および第2交差部P2を含んでいる。しかしながら、第1主流溝31および第3主流溝33は、図6に示す形態のような第1交差部P1および第2交差部P2を含んでいない。すなわち、第1主流溝31においては、第2方向Yに延びる第4連絡溝54および第1連絡溝51が、一直線上に配置されて、第1主流溝31、第4連絡溝54および第1連絡溝51が十字状に交わる第3交差部P3が形成されている。同様に、第3主流溝33においても、第2方向Yに延びる第2連絡溝52および第3連絡溝53が、一直線上に配置されて、第3主流溝33、第2連絡溝52および第3連絡溝53が十字状に交わる第3交差部P3が形成されている。このような形態であっても、第2主流溝32および第4主流溝34が、第1交差部P1および第2交差部P2を含んでいることにより、液流路部30における液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。
【0120】
また、上述した本実施の形態においては、第1交差部P1および第2交差部P2は、各主流溝31〜34に複数設けて交互に配置させる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、各主流溝31〜34に、1つの第1交差部P1と1つの第2交差部P2とを含んでいれば、作動液2の輸送機能向上を図ることができる。さらに、各主流溝31〜34において、第1交差部P1と第2交差部P2とが互いに隣り合っている例について説明したが、これに限られることはない。例えば、各主流溝31〜34において、第1交差部P1と第2交差部P2との間に、両側の連絡溝51〜54が一直線上に配置されて主流溝31〜34と連絡溝51〜54とが十字状に交わる交差部(例えば、図14に示すP3)が形成されていてもよい。この場合であっても、第1交差部P1と第2交差部P2とによって、液流路部30における液状の作動液2の輸送機能向上を図ることができる。
【0121】
また、上述した本実施の形態においては、第1〜第4主流溝31〜34と第1〜第4連絡溝51〜54が直交している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1〜第4主流溝31〜34と第1〜第4連絡溝51〜54は、互いに交わることができれば、直交していなくてもよい。
【0122】
例えば、図15に示すように、連絡溝51〜54が整列する方向が、第1方向Xおよび第2方向Yに対してそれぞれ傾斜していてもよい。この場合の連絡溝51〜54の第1方向Xに対する傾斜角度θは任意である。図15に示す例では、各凸部41a〜44aの平面形状は、平行四辺形になっている。このような形状を矩形状のベーパーチャンバ1に採用した場合には、ベーパーチャンバ1の平面外輪郭をなす4つの外縁1a、1b(図2参照)と、連絡溝51〜54とが直交しなくなる。この場合には、第2方向Yに延びる折り線で折れ曲がるように変形することを防止することができ、液流路部30の各溝31〜34、51〜54がつぶれることを防止できる。
【0123】
また、第1〜第4主流溝31〜34は、直線状に形成されていなくてもよい。例えば、図16においては、主流溝31〜34は、直線状ではなく蛇行するように延びており、大局的には第1方向Xに延びている。より詳細には、主流溝31の一対の側壁35、36が、湾曲凹部と湾曲凸部とが交互に配置されるとともに連続状に滑らかに接続されるように形成されている。図16に示すように主流溝31〜34が形成されている場合には、作動液2と凸部41a〜44aとの接触面積が増え、作動液2の冷却効率を向上できる。
【0124】
また、上述した本実施の形態においては、各液流路部30の全体にわたって、凸部41a〜44aが、矩形状で千鳥状に配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、凸部41a〜44aの少なくとも一部が、上述した図15または図16に示すような形状で配置されていてもよい。さらには、凸部41a〜44aは、図6に示す千鳥状の配置、図15の配置、図16の配置のうちの少なくとも2つが組み合わされていてもよい。
【0125】
また、上述した本実施の形態においては、第1凸部41a、第2凸部42a、第3凸部43aおよび第4凸部44aが同一形状を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1〜第4凸部41a〜44aは、互いに異なる形状を有していてもよい。
【0126】
例えば、第2凸部42aおよび第4凸部44aの第1方向Xの長さが、図17に示すように、第1凸部41aおよび第3凸部43aよりも長くなっていてもよい。図17に示す形態では、第2主流溝32および第4主流溝34において、2つの第2交差部P2の間に、2つの第1交差部P1が介在されている。すなわち、図6に示すように第1交差部P1と第2交差部P2とが互いに交互に配置されるようにはなっていない。また、第1主流溝31および第3主流溝33において、2つの第1交差部P1の間に、2つの第2交差部P2が介在されており、第1交差部P1と第2交差部P2とが交互に配置されていない。この場合においても、第1交差部P1と第2交差部P2とによって、液流路部30における液状の作動液2の輸送機能向上を図ることができる。
【0127】
また、上述した本実施の形態においては、上側金属シート20の上側流路壁部22が、ベーパーチャンバ1の第1方向Xに沿って細長状に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、上側流路壁部22の形状は任意である。例えば、上側流路壁部22は、円柱状のボスとして形成されていてもよい。この場合においても、上側流路壁部22は、下側流路壁部13に平面視で重なるように配置して、上側流路壁部22の下面22aを、下側流路壁部13の上面13aに当接させることが好適である。
【0128】
また、上述した本実施の形態においては、上側金属シート20が、上側蒸気流路凹部21を有している例について説明したが、このことに限られることはなく、上側金属シート20は、全体的に平板状に形成されて、上側蒸気流路凹部21を有していなくてもよい。この場合には、上側金属シート20の下面20aが、第2当接面として下側流路壁部13の上面13aに当接するようになり、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させることができる。
【0129】
また、上述した本実施の形態においては、下側金属シート10が、下側蒸気流路凹部12と、液流路部30と、を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、上側金属シート20が上側蒸気流路凹部21を有していれば、下側金属シート10は、下側蒸気流路凹部12を有することなく、液流路部30が、下側金属シート10の上面10aに設けられていてもよい。この場合、図18に示すように、上面10aのうち液流路部30が形成される領域は、上側流路壁部22に対向する領域に加えて、上側蒸気流路凹部21に対向する領域のうち上側流路壁部22を除く領域にも形成されていてもよい。この場合、液流路部30を構成する主流溝31〜34の個数を増やすことができ、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。しかしながら、液流路部30を形成する領域は、図18に示す形態に限られることはなく、液状の作動液2の輸送機能を確保することができれば任意である。また、図18に示す形態では、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22a(当接面)は、蒸気流路を確保するために、上側金属シート20の下面20aのうちの一部の領域に形成されており、下側金属シート10の上面10aのうち液流路部30が形成された領域の一部に、上側流路壁部22の下面22aが当接するようになる。
【0130】
また、上述した本実施の形態においては、第1〜第4主流溝31〜34が、第1交差部P1と第2交差部P2とを含んでいる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各主流溝31〜34が交差部P1、P2を含んでいなくても、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1が、第1〜第4凸部41a〜44aの幅w2よりも大きくなっていれば、下側流路壁部13の上面13aに占める第1〜第4主流溝31〜34の割合を大きくすることができる。この場合においても、作動液2の輸送機能を向上させて、熱輸送効率を向上させることができる。
【0131】
(第2の実施の形態)
次に、図19乃至図23を用いて、本発明の第2の実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。
【0132】
図19乃至図23に示す第2の実施の形態においては、第1〜第4連絡溝の幅が、第1〜第4主流溝の幅よりも大きい点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図18に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図19乃至図23において、図1乃至図18に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0133】
図19に示すように、本実施の形態においては、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3’が、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1(より詳細には、後述する第1〜第4主流溝本体部31a〜34aの幅)よりも大きくなっている。連絡溝51〜54の幅w3’は、例えば40μm〜300μmとしてもよい。本実施の形態では、図20および図21に示すように、各主流溝31〜34の横断面形状および各連絡溝51〜54の横断面形状が湾曲状に形成されている例について説明する。この場合、溝31〜34、51〜54の幅は、下側流路壁部13の上面13aにおける溝の幅とする。後述する凸部41a〜44aの幅も同様に、上面13aにおける凸部の幅とする。
【0134】
ところで、本実施の形態においても、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aは、平坦状に形成されている。このことにより、液流路部30の第1〜第4主流溝31〜34は、平坦状の下面22aで覆われている。この場合、図20に示すように、第1〜第4主流溝31〜34の第1方向Xに延びる一対の側壁35、36と上側流路壁部22の下面22aとにより、直角状あるいは鋭角状の2つの角部37を形成することができ、これら2つの角部37における毛細管作用を高めることができる。すなわち、第1〜第4主流溝31〜34の横断面が湾曲状に形成されている場合であっても、角部37において毛細管作用を高めることができる。
【0135】
同様に、液流路部30の第1〜第4連絡溝51〜54は、平坦状の下面22aで覆われている。この場合、図21に示すように、第1〜第4連絡溝51〜54の第2方向Yに延びる一対の側壁55、56と上側流路壁部22の下面22aとにより、直角状あるいは鋭角状の2つの角部57を形成することができ、これら2つの角部57における毛細管作用を高めることができる。すなわち、第1〜第4連絡溝51〜54の横断面が湾曲状に形成されている場合であっても、角部57において毛細管作用を高めることができる。
【0136】
ここで、蒸気から凝縮した液状の作動液2は、後述するように、第1〜第4連絡溝51〜54を通って第1〜第4主流溝31〜34に入り込む。このため、第1〜第4連絡溝51〜54の毛細管作用が高められることにより、凝縮した液状の作動液2をスムースに第1〜第4主流溝31〜34に入り込ませることができる。凝縮した液状の作動液2は、第1〜第4連絡溝51〜54の毛細管作用によって、蒸気流路凹部12、21に近い側の主流溝31だけでなく、蒸気流路凹部12、21から遠い側の第1〜第4主流溝31〜34にスムースに入り込むことができ、凝縮した液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。また、第1〜第4連絡溝51の幅w3’を第1〜第4主流溝31〜34の幅w1よりも大きくしていることにより、第1〜第4連絡溝51〜54内における作動液2の流路抵抗を低減することができ、この点においても、凝縮した液状の作動液2を、第1〜第4各主流溝31〜34にスムースに入り込ませることができる。そして、第1〜第4主流溝31〜34に入り込んだ作動液2は、第1〜第4主流溝31〜34の毛細管作用によって蒸発部11に向かってスムースに輸送することができる。このため、液流路部30全体として、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。
【0137】
また、第1〜第4凸部41a〜44aの第1方向Xにおける両端部は、平面視で丸みを帯びた形状になっている。すなわち、各凸部41a〜44aは、大局的に見れば矩形状に形成されているが、その角部には、丸みを帯びた湾曲部45が設けられている。これにより、各凸部41a〜44aの角部が滑らかに湾曲状に形成され、液状の作動液2の流路抵抗の低減が図られている。なお、凸部41a〜44aの図19における右側の端部および左側の端部ではそれぞれ、2つの湾曲部45が設けられており、これら2つの湾曲部45の間に直線状部分46が設けられている例が示されている。このため、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3’は、第1方向Xに互いに隣り合う凸部41a〜44aの直線状部分46の間の距離とする。図6に示すように、各凸部41a〜44aに湾曲部45が形成されていない場合も同様である。しかしながら、凸部41a〜44aの端部形状は、これに限られることはない。例えば、右側の端部および左側の端部のそれぞれに、直線状部分46が設けられることなく、端部の全体が湾曲するように(例えば半円状のように)形成されていてもよい。この場合の各連絡溝51〜54の幅w3’は、第1方向Xにおいて互いに隣り合う凸部41a〜44aの間の最小距離とする。なお、図面を明瞭にするために、図19においては、最も下に図示した第4凸部44aに湾曲部45および直線状部分46を代表的に示している。
【0138】
図20および図21に示すように、本実施の形態においては、第1〜第4連絡溝51〜54の深さh3’は、第1〜第4主流溝31〜34の深さh1(より詳細には、後述する第1〜第4主流溝本体部31a〜34aの深さ)よりも大きくなっている。ここで、上述したように、各主流溝31〜34の横断面形状および各連絡溝51〜54の横断面形状が湾曲状に形成されている場合、溝31〜34、51〜54の深さは、その溝において最も深い位置における深さとする。第1〜第4連絡溝51〜54の深さh3’は、例えば10μm〜250μmとしてもよい。
【0139】
本実施の形態においては、図22に示すように、第1〜第4主流溝31〜34の第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’が、主流溝31〜34のうち第1交差部P1以外かつ第2交差部P2以外の部分の深さh1よりも深くなっている。すなわち、第1〜第4主流溝31〜34は、第1交差部P1と第2交差部P2との間に設けられた第1〜第4主流溝本体部31a〜34aを更に含んでいる。第1〜第4主流溝本体部31a〜34aは、互いに隣り合う凸部41a〜44aの間に位置する部分であって、互いに隣り合う第1交差部P1と第2交差部P2との間に位置する部分である。この第1〜第4主流溝本体部31a〜34aの深さh1よりも第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’が深くなっている。第1交差部P1の深さh1’は、第1交差部P1において最も深い位置における深さとし、第2交差部P2の深さh1’は、第2交差部P2において最も深い位置における深さとする。
【0140】
より具体的には、図19および図22に示すように、第1主流溝31の第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’が、第1主流溝31のうち第4凸部44aと第1凸部41aとの間の部分(第1主流溝本体部31a)の深さh1よりも深くなっている。同様に、第2主流溝32の第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’が、第2主流溝32のうち第1凸部41aと第2凸部42aとの間の部分(第2主流溝本体部32a)の深さh1よりも深くなっている。第3主流溝33の第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’が、第3主流溝33のうち第2凸部42aと第3凸部43aとの間の部分(第3主流溝本体部33a)の深さh1よりも深くなっている。第4主流溝34の第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’が、第4主流溝34のうち第3凸部43aと第4凸部44aとの間の部分(第4主流溝本体部34a)の深さh1よりも深くなっている。
【0141】
また、第1〜第4主流溝31〜34の第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’は、第1〜第4連絡溝51〜54の深さh3’よりも深くなっていてもよい。このような第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’は、例えば20μm〜300μmとしてもよい。
【0142】
また、図19に示すように、第1〜第4凸部41a〜44aは、上述したように、大局的に見れば矩形状に形成されているが、図6に示すような第1〜第4凸部41a〜44aの平面形状とは異なっている。すなわち、第1〜第4凸部41a〜44aは、第1方向Xにおける両側に設けられた一対の第1〜第4凸部端部41b〜44bと、一対の第1〜第4凸部端部41b〜44bの間に設けられた第1〜第4凸部中間部41c〜44cと、を含んでいる。このうち第1〜第4凸部中間部41c〜44cの幅w4は、第1〜第4凸部端部41b〜44bの幅w2(上述した第1〜第4凸部41a〜44aの幅w2に相当)よりも小さくなっている。
【0143】
より具体的には、第1凸部中間部41cの幅w4は、第1凸部端部41bの幅w2よりも小さくなっており、第1凸部41aの壁(すなわち、第1主流溝31の側壁36および第2主流溝32の側壁35)は、第1凸部41aの内部に向かって凹むように滑らかに湾曲している。このため、第1凸部中間部41cの幅w4は、2つの壁の間の最小距離とする。同様に、第2凸部中間部42cの幅w4は、第2凸部端部42bの幅w2よりも小さくなっており、第2凸部42aの壁(すなわち、第2主流溝32の側壁36および第3主流溝33の側壁35)は、第2凸部42aの内部に向かって凹むように滑らかに湾曲している。第3凸部中間部43cの幅w4は、第3凸部端部43bの幅w2よりも小さくなっており、第3凸部43aの壁(すなわち、第3主流溝33の側壁36および第4主流溝34の側壁35)は、第3凸部43aの内部に向かって凹むように滑らかに湾曲している。第4凸部中間部44cの幅w4は、第4凸部端部44bの幅w2よりも小さくなっており、第4凸部44aの壁(すなわち、第4主流溝34の側壁36および第1主流溝31の側壁35)は、第4凸部44aの内部に向かって凹むように滑らかに湾曲している。このような第1〜第4凸部中間部41c〜44cの幅w4は、例えば15μm〜175μmとしてもよい。
【0144】
上述したように、第1〜第4連絡溝51〜54の深さh3’が、第1〜第4主流溝31〜34の第1〜第4主流溝本体部31a〜34aの深さh1よりも深くなっているとともに、第1〜第4主流溝31〜34の第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’が、第1〜第4主流溝本体部31a〜34aの深さh1よりも深くなっている。このことにより、第2交差部P2から第1〜第4連絡溝51〜54を介して第1交差部P1にわたる領域に、第1〜第4主流溝本体部31a〜34aの深さh1よりも深いバッファ領域Qが形成されている。このバッファ領域Qは、液状の作動液2を貯留可能になっている。
【0145】
より具体的には、例えば、第1主流溝31の第2交差部P2から第1連絡溝51を介して第2主流溝32の第1交差部P1にわたる領域に、第1主流溝本体部31aおよび第2主流溝本体部32aの深さh1より深いバッファ領域Qが形成されている。通常、液流路部30の各主流溝31〜34および各連絡溝51〜54には、液状の作動液2が充填されている。このため、バッファ領域Qの深さ(h1’およびh3’)が第1〜第4主流溝本体部31a〜34aの深さh1よりも深くなっていることにより、バッファ領域Qに多くの作動液2を貯留することが可能になっている。上述のように、各主流溝31〜34および各連絡溝51〜54には作動液2が充填されることから、ベーパーチャンバ1の姿勢に関わることなく、バッファ領域Qには作動液2を貯留することができる。
【0146】
同様にして、第2主流溝32の第2交差部P2から第2連絡溝52を介して第3主流溝33の第1交差部P1にわたる領域に、第2主流溝本体部32aおよび第3主流溝本体部33aの深さh1より深いバッファ領域Qが形成されている。第3主流溝33の第2交差部P2から第3連絡溝53を介して第4主流溝34の第1交差部P1にわたる領域に、第3主流溝本体部33aおよび第4主流溝本体部34aの深さh1より深いバッファ領域Qが形成されている。第4主流溝34の第2交差部P2から第4連絡溝54を介して第1主流溝31の第1交差部P1にわたる領域に、第4主流溝本体部34aおよび第1主流溝本体部31aの深さh1より深いバッファ領域Qが形成されている。
【0147】
なお、ベーパーチャンバ1の各液流路部30には多数の第1交差部P1および第2交差部P2が形成されているが、そのうちの少なくとも1つの交差部P1、P2の深さh1’が主流溝本体部31a〜34aの深さh1(または連絡溝51〜54の深さh3’)よりも深くなっていれば、当該交差部P1、P2における作動液2の貯留性能を向上させることができる。この貯留性能は、主流溝本体部31a〜34aの深さh1よりも深いh1’を有する交差部P1、P2の箇所数が増えるにつれて向上するため、全ての交差部P1、P2の深さh1’が同様の深さを有していることが好ましい。しかしながら、製造誤差などによって、一部の交差部P1、P2の深さh1’が、主流溝本体部31a〜34aの深さh1よりも深くなくても、作動液2の貯留性能を向上させることができることは明らかである。連絡溝51〜54の深さh3’についても同様である。
【0148】
ここで、完成形のベーパーチャンバ1から主流溝31〜34の幅、深さおよび連絡溝51〜54の幅、深さを確認する方法について説明する。一般に、ベーパーチャンバ1の外部からは、主流溝31〜34および連絡溝51〜54は見えないようになっている。このため、完成形のベーパーチャンバ1を所望の位置で切断して得られた断面形状から、主流溝31〜34および連絡溝51〜54の幅、深さを確認する方法が挙げられる。
【0149】
具体的には、まず、ベーパーチャンバ1を10mm角片にワイヤーソーで切断して試料とした。続いて、蒸気流路凹部12、21および液流路部30(主流溝31〜34および連絡溝51〜54)に樹脂が入り込むように、試料を真空脱泡しながら樹脂包埋する。次に、所望の断面が得られるようにダイヤモンドナイフでトリミング加工する。この際、例えば、ミクロトーム(例えばライカマイクロシステムズ社製のウルトラミクロトーム)のダイヤモンナイフを使用して、測定目的位置から40μm離れた部分までトリミング加工する。例えば、連絡溝51〜54のピッチが200μmであるとすると、測定目的としている連絡溝51〜54の隣の連絡溝51〜54から160μm削ることにより、測定目的としている連絡溝51〜54から40μm離れた部分を特定することができる。次に、トリミング加工を行った切断面を削ることにより、観察用の切断面を作製する。この際、断面試料作製装置(例えばJOEL社製のクロスセクションポリッシャー)を使用して、飛び出し幅を40μm、電圧を5kV、時間を6時間に設定し、イオンビーム加工にて切断面を削る。その後、得られた試料の切断面を観察する。この際、走査型電子顕微鏡(例えば、カールツァイス社製の走査型電子顕微鏡)を使用して、電圧を5kV、作動距離を3mm、観察倍率を200倍または500倍に設定し、切断面を観察する。このようにして、主流溝31〜34および連絡溝51〜54の幅、深さを測定することができる。なお、撮影時の観察倍率基準は、Polaroid545とする。また、上述した方法は一例であり、サンプルの形状、構造等に応じて、使用する装置や、測定条件等は任意に決定することができる。
【0150】
ところで、上述したように、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3’が、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1よりも大きくなっている。このことにより、バッファ領域Qは、第1〜第4主流溝本体部31a〜34aよりも大きく開口した領域になっている。このため、図10に示す第2ハーフエッチング工程において、エッチング液は、第1〜第4主流溝本体部31a〜34aよりも、バッファ領域Qに多く入り込むようになる。この結果、バッファ領域Qでのエッチング液による浸食が進み、バッファ領域Qの深さが深くなる。そして、バッファ領域Qのうち第1交差部P1および第2交差部P2に相当する部分は、第1〜第4主流溝本体部31a〜34aに連通しているため、第1〜第4連絡溝51〜54よりもエッチング液が入り込みやすくなっている。このことにより、第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’が、第1〜第4連絡溝51〜54の深さh3’よりも深くなり得る。このようにして、図22に示すようなバッファ領域Qが形成される。
【0151】
また、バッファ領域Qにエッチング液が多く入り込むことにより、第1〜第4凸部41a〜44aの壁(第1〜第4主流溝31〜34の側壁35、36)のうち第1交差部P1および第2交差部P2に面する部分では、エッチング液による浸食が進む。このことにより、各凸部41a〜44aの壁が、エッチング液によってえぐられるように浸食され、各凸部41a〜44aの内部に向かって凹むように滑らかな湾曲形状をなす。
【0152】
なお、図10に示す第2ハーフエッチング工程においては、上述したように、下側流路壁部13の上面13aにパターン状に第2レジスト膜が形成され、この第2レジスト膜のレジスト開口にエッチング液が入り込んで第1〜第4主流溝31〜34および第1〜第4連絡溝51〜54が形成される。このレジスト開口が第1方向Xおよび第2方向Yに平行に形成されている場合であっても、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3’が第1〜第4主流溝31〜34の幅w1よりも大きくなっているため、バッファ領域Qにはエッチング液が入り込みやすくなっている。このため、上述したようなバッファ領域Qを形成することができる。
【0153】
本実施の形態によるベーパーチャンバ1において、ベーパーチャンバ1の周縁部に拡散された作動液2の蒸気は冷却されて凝縮する。凝縮して液状になった作動液2は、第1〜第4連絡溝51〜54を通って主流溝31に入り込む。ここで、上述したように、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3’が、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1よりも大きくなっているため、各連絡溝51〜54内における作動液2の流路抵抗は小さくなっている。このため、各蒸気流路凹部12、21の壁面に付着した液状の作動液2は、各連絡溝51〜54を通って各主流溝31〜34にスムースに入り込む。そして、各主流溝31〜34および各連絡溝51〜54に、液状の作動液2が充填される。
【0154】
各主流溝31〜34に充填された作動液2が、蒸発部11に向かって輸送される際、作動液2の一部は、第1交差部P1および第2交差部P2を通過しながら蒸発部11に向かう。第1交差部P1および第2交差部P2においては、作動液2は、主として、第1〜第4主流溝31〜34の側壁35、36と上側流路壁部22の下面22aとにより形成された角部37による毛細管作用により、蒸発部11に向かう推進力を得る。
【0155】
一方、蒸発部11に向かう作動液2の一部は、第1交差部P1または第2交差部P2によって構成されるバッファ領域Qに引き込まれて貯留される。
【0156】
ここで、第1〜第4主流溝本体部31a〜34aでドライアウトが発生すると、バッファ領域Qに貯留されている作動液2が、このドライアウトの発生部に向かって移動する。より具体的には、例えば、第1主流溝本体部31aでドライアウトが発生した場合、そのドライアウトの発生部に最も近いバッファ領域Qから作動液2が、第1主流溝本体部31aの毛細管作用によってドライアウトの発生部に移動する。このことにより、ドライアウトの発生部に、作動液2が充填されてドライアウトが解消される。
【0157】
また、第1〜第4主流溝本体部31a〜34aにおいて、液状の作動液2中にその蒸気による気泡が発生した場合、その気泡は、下流側(蒸発部11の側)のバッファ領域Qに引き込まれて保持される。バッファ領域Qの深さが第1〜第4主流溝本体部31a〜34aの深さh1よりも深くなっているため、バッファ領域Qに引き込まれた気泡は、バッファ領域Qから主流溝本体部31a〜34aに移動することが抑制される。このため、バッファ領域Qによって、主流溝本体部31a〜34aに発生した気泡を捕捉することができ、作動液2の蒸発部11への流れが気泡によって妨げられることを抑制できる。
【0158】
このように、本実施の形態によれば、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3’が、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1よりも大きくなっている。このことにより、各連絡溝51〜54内における作動液2の流路抵抗を低減することができる。このため、蒸気から凝縮した液状の作動液2をスムースに各主流溝31〜34に入り込ませることができる。すなわち、蒸気流路凹部12、21に近い側の主流溝31〜34だけでなく、蒸気流路凹部12、21から遠い側の主流溝31〜34にもスムースに入り込ませることができ、凝縮した液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。この結果、液状の作動液2の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
【0159】
また、本実施の形態によれば、第1〜第4連絡溝51〜54の深さh3’は、第1〜第4主流溝31〜34の深さh1よりも深くなっている。このことにより、各連絡溝51〜54に、作動液2を貯留するバッファ領域Qを形成することができる。このため、主流溝31〜34においてドライアウトが発生した場合には、バッファ領域Qに貯留された作動液2をドライアウトの発生部に移動させることができる。このため、ドライアウトを解消することができ、各主流溝31〜34における作動液2の輸送機能を回復させることができる。また、主流溝31〜34内に、気泡が発生した場合には、その気泡をバッファ領域Qに引き込ませて捕捉することができる。この点においても、各主流溝31〜34における作動液2の輸送機能を回復させることができる。
【0160】
また、本実施の形態によれば、第1〜第4主流溝31〜34の第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’が、第1〜第4主流溝本体部31a〜34aの深さh1よりも深くなっている。このことにより、バッファ領域Qを、第1交差部P1および第2交差部P2に延ばすことができる。このため、バッファ領域Qにおける作動液2の貯留量を増大させることができ、ドライアウトをより一層解消させやすくすることができる。
【0161】
また、本実施の形態によれば、第1〜第4主流溝31〜34の第1交差部P1および第2交差部P2の深さh1’は、第1〜第4連絡溝51〜54の深さh3’よりも深くなっている。このことにより、バッファ領域Qのうちドライアウトの発生部に近い側でバッファ領域Qの深さを深くすることができる。このため、貯留された作動液2を、ドライアウトの発生部にスムースに移動させることができ、ドライアウトをより一層解消させやすくすることができる。
【0162】
また、本実施の形態によれば、第1〜第4凸部41a〜44aの第1〜第4凸部中間部41c〜44cの幅w4が、第1〜第4凸部端部41b〜44bの幅w2よりも小さくなっている。このことにより、第1交差部P1および第2交差部P2の平面面積を増大させることができる。このため、バッファ領域Qにおける作動液2の貯留量を増大させることができ、ドライアウトをより一層解消させやすくすることができる。
【0163】
また、本実施の形態によれば、各凸部41a〜44aの角部には、丸みを帯びた湾曲部45が設けられている。このことにより、各凸部41a〜44aの角部を滑らかに湾曲状に形成することができ、液状の作動液2の流路抵抗を低減することができる。
【0164】
(第3の実施の形態)
次に、図23乃至図25を用いて、本発明の第3の実施の形態におけるベーパーチャンバ、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。
【0165】
図23乃至図25に示す第3の実施の形態においては、第1〜第4主流溝内に、主流溝凸部が突出しているとともに、第1〜第4連絡溝内に、連絡溝凸部が突出している点が主に異なり、他の構成は、図19乃至図22に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、図23乃至図25において、図19乃至図22に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0166】
図23に示すように、本実施の形態においては、上側金属シート20は、下面20aに設けられた複数の主流溝凸部27を有している。各主流溝凸部27は、下面20aから下側金属シート10の第1〜第4主流溝31〜34のうち対応する主流溝31〜34に突出している。主流溝凸部27の下端は、主流溝31〜34の底部から離間しており、作動液2の流路は確保されている。また、各主流溝凸部27は、対応する主流溝31〜34に沿って第1方向Xに延びるように形成されている。
【0167】
主流溝凸部27の横断面は、湾曲状に形成されている。また、主流溝凸部27の側縁は、第1〜第4主流溝31〜34の側壁35、36に接する、または近接している。これにより、第1〜第4主流溝31〜34の側壁35、36と上側流路壁部22の下面22aとにより形成される角部37が、楔状(または鋭角状)に形成されている。このようにして、主流溝31〜34と主流溝凸部27とによって画定される流路断面(第2方向Yにおける流路断面)が、図23に示すように三日月状に形成されている。
【0168】
また、図24および図25に示すように、本実施の形態においては、上側金属シート20は、下面20aに設けられた複数の連絡溝凸部28を有している。各連絡溝凸部28は、下面20aから下側金属シート10の第1〜第4連絡溝51〜54のうち対応する連絡溝51〜54に突出している。連絡溝凸部28の下端は、連絡溝51〜54の底部から離間しており、作動液2の流路は確保されている。また、各連絡溝凸部28は、対応する連絡溝51〜54に沿って第2方向Yに延びるように形成されている。第1〜第4主流溝31〜34の第1交差部P1および第2交差部P2において、上述した主流溝凸部27と連絡溝凸部28とがT字状に交わっている。
【0169】
連絡溝凸部28の横断面は、主流溝凸部27と同様に湾曲状に形成されている。また、連絡溝凸部28の側縁は、第1〜第4連絡溝51〜54の第2方向Yに延びる一対の側壁55、56(図19参照)に接する、または当該側壁55、56に近接している。これにより、第1〜第4連絡溝51〜54の側壁55、56と上側流路壁部22の下面22aとにより形成される角部57が、楔状(または鋭角状)に形成されている。このようにして、連絡溝51〜54と連絡溝凸部28とによって画定される流路断面(第1方向Xにおける流路断面)が、図24に示すように三日月状に形成されている。また、第2方向Yにおける流路断面は、図23に示す主流溝31〜34の流路断面の間に、第1〜第4連絡溝51〜54の第2方向Yにおける流路断面が介在されるように形成されるため、図25に示すように、間延びした三日月状に形成されている。なお、図19においては、図面を明瞭にするために、第3連絡溝53についてのみ側壁に符号55、56を付している。側壁55、56は、凸部41a〜44aの上述した直線状部分46に対応している。
【0170】
主流溝凸部27および連絡溝凸部28は、例えば、上側金属シート20をハーフエッチングして上側流路壁部22等を形成した後に、上側金属シート20を単体でプレス加工することによって形成することができる。あるいは、図12に示す恒久接合工程において、下側金属シート10と上側金属シート20とに与える加圧力を高めることによって主流溝凸部27および連絡溝凸部28を形成することができる。すなわち、加圧力を高めることにより、上側金属シート20の上側流路壁部22の一部を、第1〜第4主流溝31〜34内および第1〜第4連絡溝51〜54内に入り込ませることができ、これにより、湾曲状の横断面を有する主流溝凸部27および連絡溝凸部28を形成することができる。
【0171】
このように、本実施の形態によれば、上側金属シート20の下面20aから下側金属シート10の第1〜第4主流溝31〜34のうち対応する主流溝31〜34に、主流溝凸部27が突出している。このことにより、第1〜第4主流溝31〜34の側壁35、36と上側流路壁部22の下面22aとにより形成される角部37を、第1〜第4主流溝31〜34の側壁35、36と主流溝凸部27とによって画定される微小な空間にすることができる。このため、角部37における毛細管作用を高めることができる。この結果、各主流溝31〜34における液状の作動液2の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。とりわけ、各主流溝31〜34の第1交差部P1および第2交差部P2を図19に示すようなバッファ領域Qとして構成する場合であっても、第1交差部P1および第2交差部P2における作動液2に、主流溝凸部27による毛細管作用により、蒸発部11に向かう高い推進力を与えることができ、作動液2の輸送機能を効果的に向上させることができる。
【0172】
また、本実施の形態によれば、主流溝凸部27の横断面が湾曲状に形成されている。このことにより、角部37を三日月形状の端部のような形状することができる。このため、角部37における毛細管作用をより一層高めることができる。
【0173】
また、本実施の形態によれば、上側金属シート20の下面20aから下側金属シート10の第1〜第4連絡溝51〜54のうち対応する連絡溝51〜54に、連絡溝凸部28が突出している。このことにより、第1〜第4連絡溝51〜54の側壁55、56と上側流路壁部22の下面22aとにより形成される角部57を、第1〜第4連絡溝51〜54の側壁55、56と連絡溝凸部28とによって画定される微小な空間にすることができる。このため、角部57における毛細管作用を高めることができる。
【0174】
ここで、蒸気から凝縮した液状の作動液2は、上述したように、第1〜第4連絡溝51〜54を通って第1〜第4主流溝31〜34に入り込む。このため、第1〜第4連絡溝51〜54の毛細管作用が高められることにより、凝縮した液状の作動液2をスムースに第1〜第4主流溝31〜34に入り込ませることができる。凝縮した液状の作動液2は、第1〜第4連絡溝51〜54の毛細管作用によって蒸気流路凹部12、21に近い側の主流溝31〜34だけでなく、蒸気流路凹部12、21から遠い側の主流溝31〜34にもスムースに入り込むことができ、凝縮した液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。また、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3’を第1〜第4主流溝31〜34の幅w1よりも大きくしていることにより、第1〜第4連絡溝51〜54内における作動液2の流路抵抗を低減することができ、この点においても、凝縮した液状の作動液2を、第1〜第4主流溝31〜34にスムースに入り込ませることができる。そして、第1〜第4主流溝31〜34に入り込んだ作動液2を、第1〜第4主流溝31〜34の毛細管作用によって蒸発部11に向けてスムースに輸送することができる。このため、液流路部30全体として、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。また、上述したように、第1〜第4連絡溝51〜54の毛細管作用を高めることにより、ドライアウトが発生した場合には、第1〜第4連絡溝51〜54の毛細管作用によって、第1〜第4主流溝31〜34間で作動液2を往来させることができ、ドライアウトを解消することができる。
【0175】
また、本実施の形態によれば、連絡溝凸部28の横断面が湾曲状に形成されている。このことにより、角部57を三日月形状の端部のような形状にすることができる。このため、角部57における毛細管作用をより一層高めることができる。
【0176】
なお、上述した本実施の形態においては、第1〜第4主流溝31〜34の横断面および第1〜第4連絡溝51〜54の横断面が湾曲状に形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1〜第4主流溝31〜34の横断面および第1〜第4連絡溝51〜54の横断面は、図7に示すように、矩形状に形成されていてもよい。この場合においても、角部37、57における毛細管作用を高めることができ、第1〜第4主流溝31〜34および第1〜第4連絡溝51〜54における液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。横断面を矩形状にするためには、主流溝31〜34および連絡溝51〜54は、プレス加工や切削加工で形成されることが好ましい。
【0177】
また、上述した本実施の形態においては、第1〜第4連絡溝51〜54の幅w3’が、第1〜第4主流溝31〜34の幅w1よりも大きくなっている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各連絡溝51〜54の幅w3’は、図6に示すように、各主流溝31〜34の幅w1よりも大きくなくてもよい。すなわち、主流溝凸部27によって第1〜第4主流溝31〜34の毛細管作用を高めて主流溝31〜34における液状の作動液2の輸送機能を高めるという効果は、連絡溝51〜54の幅w3’と主流溝31〜34の幅w1との大小関係とは無関係に発揮することができる。同様に、連絡溝凸部28によって第1〜第4連絡溝51〜54の毛細管作用を高めて、凝縮した液状の作動液2の輸送機能を高めるという効果も、連絡溝51〜54の幅w3’と主流溝31〜34の幅w1との大小関係とは無関係に発揮することができる。
【0178】
本発明は上記実施の形態および変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。また、上記各実施の形態および変形例では、下側金属シート10の構成と、上側金属シート20の構成とを入れ替えてもよい。
図1
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