(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー樹脂が、ナトリウムを含むアイオノマー樹脂と亜鉛を含むアイオノマー樹脂との混合樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアイオノマー樹脂発泡体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0014】
本発明のアイオノマー樹脂発泡体は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー樹脂と発泡剤とを含有する発泡用樹脂組成物により形成されている。
【0015】
<アイオノマー樹脂>
アイオノマー樹脂としては、ナトリウムや亜鉛等の金属イオンを含むエチレンと不飽和カルボン酸を主成分とする共重合体である。本発明のアイオノマー樹脂は、金属との中和度が比較的高い中粘度から高粘度のアイオノマー、具体的には、メルトフローレートが3以下のアイオノマー樹脂を主成分として使用する。なお、エチレンと不飽和カルボン酸との二元共重合体のみならず、その他の共重合成分が任意に共重合された3元以上の多元共重合体を使用してもよい。
【0016】
また、本発明のアイオノマー樹脂は、上述の亜鉛を含むアイオノマー樹脂であってもよく、ナトリウムを含むアイオノマー樹脂と亜鉛を含むアイオノマー樹脂との混合樹脂であってもよい。
【0017】
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノエステル、無水イタコン酸などが挙げられるが、特に、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
【0018】
また、多元共重合体の場合、その他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、一酸化炭素などを例示することができる。
【0019】
アイオノマー樹脂の金属イオンとしては、亜鉛、銅、コバルト、ニッケル、クロム等の典型金属及び遷移金属、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムのようなアルカリ土類金属等のイオンが挙げられる。
【0020】
また、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の全体に対する不飽和カルボン酸の含有割合は、5〜20モル%が好ましく、9〜15モル%がより好ましい。これは、不飽和カルボン酸の含有割合が5モル%未満である場合は、反発性、強度および硬度が低下するという不都合が生じる場合があり、また、不飽和カルボン酸の含有割合が20モル%を超えると、反発性、強度および硬度が向上する一方で脆くなり、耐久性が低下するという不都合が生じる場合があるためである。
【0021】
また、成形加工性の向上や発泡体の気泡を均一に分散させる等の観点から、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体混合物のメルトフローレートは、4.6g/10分〜7.4g/10分の範囲が好ましく、5.5g/10分〜6.3g/10分の範囲がより好ましい。これは、メルトフローレートが5.5g/10分よりも小さい場合は、練り加工時の粘性が大きくなるため、練り加工機の動力を大きくしなければならず、量産性がやや低下する。また、メルトフローレートが4.6g/10分よりも小さい場合は、練り加工時の剪断発熱に起因して、発泡剤等が分解してしまう場合や、材料の粘度が高いことに起因して、均一な気泡の発泡体を得ることが困難になる場合があるためである。その一方で、メルトフローレートが6.3g/10分よりも大きい場合は、材料加工機のローラ等の金属性部品に付着することにより、量産性がやや低下するためである。また、メルトフローレートが7.4g/10分よりも大きい場合は、量産することが困難になるためである。これは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマーは、一般的に、カルボシキル基間にナトリウムや亜鉛イオン等の金属イオンを介して金属架橋しているが、メルトフローレートが大きいエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマーは、その金属架橋度(中和度)が低く、金属架橋していないフリーの酸(カルボシキル基)が加工機の金属に反応、付着しようとして加工が困難となるためである。
【0022】
なお、ここで言う「メルトフローレート」とは、JIS K 7210−1999(190℃、2160g荷重下)に準拠して測定された値を言う。
【0023】
また、アイオノマー樹脂発泡体の全体に対するアイオノマー樹脂の含有量は、80質量%〜95質量%が好ましく、85質量%〜90質量%がより好ましい。これは、80質量%未満の場合は、発泡体の骨格を成すアイオノマー樹脂の含有量が少ないことにより、反発性の低下や、表面仕上がりが低下するという不都合が生じる場合があり、また、95質量%よりも大きい場合は、発泡が不十分になる場合や、練り加工が困難になる場合があるためである。
【0024】
なお、アイオノマー樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。特に、イオン価の異なるタイプのアイオノマー樹脂を混合使用することにより複塩が構成されるため、反発性に優れた強度、剛性の高い製品が得られ、単独で使用した場合と比べて吸湿性を低下させることが可能になる。
【0025】
市販品としては、例えば、ハイミラン H1702(三井デュポン(株)製)、ハイミラン H1706(三井デュポン(株)製)、ハイミラン H1707(三井デュポン(株)製)ハイミラン H1605(三井デュポン(株)製)等が挙げられる。
【0026】
<発泡剤>
発泡剤としては、加熱により、アイオノマー樹脂を発泡させるのに必要なガスを発生させるものであれば特に限定されない。より具体的には、例えば、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾジカルボンアミド、N,N‘ジニトロソペンタメチレンテトラミン、炭酸水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジン(OBSH)等を使用することができる。
【0027】
また、アイオノマー樹脂発泡体の全体に対する発泡剤の含有量は、3質量%〜8質量%が好ましく、5質量%〜7質量%がより好ましい。これは、5質量%未満の場合は、安定して発泡させることができないという不都合が生じる場合があり、また、8質量%よりも大きい場合は、過発泡に起因して表面や内部の発泡セル径がばらつくという不都合が生じる場合があるためである。
【0028】
なお、アゾ系発泡剤の色は橙黄色であり、熱分解が不十分である場合、発泡体にその色が残るため、本発明では使用しない。
【0029】
また、本発明のアイオノマー樹脂発泡体は、上述のアイオノマー樹脂および発泡剤の他に、一般的にアイオノマー樹脂発泡体に使用される成分(発泡助剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、顔料、染料、可塑剤、滑剤、難撚剤、無機充填剤等)を、本発明の効果を損なわない範囲内で配合することができる。以下に、発泡助剤、及び加工助剤について説明する。
【0030】
<発泡助剤>
本発明のアイオノマー樹脂発泡体は、酸化亜鉛や及び二酸化チタンなどの少なくとも一方からなる発泡助剤を含有してもよい。即ち、酸化亜鉛または二酸化チタンからなる発泡助剤を単独で使用してもよく、酸化亜鉛と二酸化チタンを含有する発泡助剤を使用してもよい。
【0031】
酸化亜鉛からなる発泡助剤を使用することにより、通常の発泡温度(158〜210℃)よりも低い温度で発泡反応させることが可能になる。また、二酸化チタンからなる発泡助剤を使用することにより、アイオノマー樹脂発泡体を白色にすることが可能になるため、発泡後のアイオノマー樹脂発泡体の経時的な変色を抑制することができる。
【0032】
また、尿素、尿素誘導体等からなる他の発泡助剤を使用してもよい。これらの発泡助剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
また、アイオノマー樹脂発泡体の全体に対する発泡助剤の含有量は、0.8質量%〜9質量%が好ましい。これは、0.8質量%未満の場合は、十分に発泡できないという不都合が生じる場合があるためである。
【0034】
<加工助剤>
また、アイオノマー樹脂の流動性及び滑性を向上させ、ローラ等の混練機への付着を抑制するとともに、離型効果を向上させるとの観点から、本発明のアイオノマー樹脂発泡体は、加工助剤を含有してもよい。
【0035】
加工助剤としては、例えば、高級脂肪酸エステル、ステアリン酸、金属石けん、ポリエチレンワックス等を挙げることができる。
【0036】
また、アイオノマー樹脂発泡体の全体に対する加工助剤の含有量は、0質量%〜2質量%が好ましい。これは、2質量%よりも大きい場合は、潤滑性が大きくなりすぎることに起因してローラと材料とが滑るため、ローラ加工時に材料が混ざり難くなるという不都合が生じる場合があるためである。
【0037】
次に、本発明のアイオノマー樹脂発泡体の製造方法について説明する。本発明のアイオノマー樹脂発泡体の製造方法は、発泡用樹脂組成物を作製する混練工程と、発泡用樹脂組成物を発泡させるとともに所望の形状に成形する発泡成形工程とを備える。
【0038】
(混練工程)
まず、基材であるアイオノマー樹脂、発泡剤および発泡助剤等の各原料を混練機に投入し、これらの原料を混練することにより、発泡用樹脂組成物を作製する。
【0039】
ここで、混練機としては、例えば、ミキシングロール、カレンダーロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いることができる。
【0040】
例えば、所定温度に設定したロール(例えば、表面温度が100℃)に、アイオノマー樹脂、発泡助剤、加工助剤、及び発泡剤をこの順序で投入して混練した後、シーティングやペレタイジング等の予備成形を行う。
【0041】
また、複数の混練機を使用して段階的に実施してもよい。例えば、アイオノマー樹脂、発泡助剤及び加工助剤をニーダーに投入して混練した後、混練後の組成物をロールに移動させるとともに、ロール内に発泡剤を投入して混練した後、シーティングやペレタイジング等の予備成形を行う。
【0042】
(発泡成形工程)
次に、混練工程により得られた発泡用樹脂組成物を金型に充填して、加熱処理を行うことにより、発泡剤による発泡を進行させた後、離型処理を行うことにより、所望の形状を有するアイオノマー樹脂発泡体を作製する。
【0043】
なお、加熱処理における加熱温度は、発泡剤の種類により異なるが、使用する発泡剤の分解温度以上の温度(例えば、140〜180℃)で加熱処理を行う。また、発泡用樹脂組成物を金型に充填し、加圧した状態で加熱処理を行ってもよく、常圧加熱して、発泡剤の分解を進行させてもよい。
【0044】
ここで、本発明においては、アイオノマー樹脂発泡体のメルトフローレートが4.6g/10分以上7.4g/10分以下である点に特徴がある。
【0045】
メルトフローレートが7.4g/10分よりも大きい場合は、アイオノマー樹脂の金属架橋度が低くなるため、後述のごとく、混練機を使用して発泡用樹脂組成物を調製する際に、アイオノマー樹脂が金属により形成されたニーダー等に付着しやすくなる。
【0046】
また、メルトフローレートが4.6g/10分未満の場合は、成形時の材料の流れが悪く、金型成形品の表面にペレット痕が残ることにより、表面状態が綺麗に仕上がらない。また、材料の溶融粘度が高く、成形品内部にきめ細かなセルが形成されず、中空の構造になってしまう。更に、材料自体も脆く壊れやすく、耐久性に劣るものとなる。
【0047】
即ち、アイオノマー樹脂発泡体のメルトフローレートを4.6g/10分以上7.4g/10分以下に設定することにより、表面、及び内部の両方が綺麗な耐久性に優れた成形品をつくりあげることができ、かつ混練機を用いて発泡用樹脂組成物を作製する際に、アイオノマー樹脂が金属により形成されたニーダー等に付着することを回避することができる。従って、均一な混練が可能になるため、量産性を向上することができる。
【0048】
また、本発明のアイオノマー樹脂発泡体は架橋剤を含有しない点に特徴がある。従って、混練時におけるアイオノマーのせん断発熱に起因する意図しない前架橋反応(即ち、スコーチ)や架橋剤の分解反応の発生を防止することができ、結果として、量産性を向上することができる。
【0049】
更に、架橋剤を含有していないため、過架橋反応の発生を防止することができ、アイオノマー樹脂発泡体の機械的強度を向上することができる。
【0050】
例えば、シャトルコックを構成するベース本体に使用されている天然コルクの弾性率と同等以上(即ち、2Mpa以上)の弾性率を有するとともに、変形量の少ないアイオノマー樹脂発泡体を得ることができる。
【0051】
一般的に、ポリエチレンやEVA樹脂等の熱可塑性樹脂や、ゴム材料、溶融粘度の低く金属架橋度の低いアイオノマー樹脂等を用いて発泡体を成形する場合、きめ細かいセルを形成するために十分な溶融粘度が必要となり、また、成形した発泡体自体の硬度や強度を高めるために、架橋剤添加による架橋が必須と考えられている。
【0052】
しかし、本発明で使用されている金属架橋度の高いアイオノマーは、金属イオンの架橋が多く存在し、架橋剤を添加しなくても十分な物性があるため、架橋剤が不要になる。また、金属架橋は熱により外れ、冷却固化により再度形成されるため、材料加工時、高温となった場合であっても、金属架橋は加工を阻害する要因とならない。なお、本発明のアイオノマー樹脂発泡体に化学架橋剤を添加すると過架橋状態となり、却って、機械的強度等の物性が低下することとなる。
【0053】
また、アイオノマー樹脂発泡体のメルトフローレートが5.5g/10分以上6.3g/10分以下であることが好ましい。
【0054】
このような構成により、外観がよく、かつ、内部の発泡状態が良好となり、また、金属製の混練機に対するアイオノマー樹脂の付着をより一層回避することができるため、アイオノマー樹脂発泡体の量産性をより一層向上することができる。
【0055】
また、アイオノマー樹脂発泡体のメルトフローレートを上述の範囲に設定することにより、溶融粘度が低く、流動性を有するアイオノマーグレードを少量添加することで、成形時における材料の溶融を容易に開始することが可能になる。従って、発泡加熱時に、ペレタイジングを行った発泡用樹脂組成物を容易に溶融させることが可能になるため、アイオノマー樹脂発泡体の表面に、ペレット痕が残存してしまうことを抑制することができ、結果として、所望の表面形状を有するアイオノマー樹脂発泡体を得ることができる。
【0056】
また、本発明のアイオノマー樹脂発泡体においては、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー樹脂が、メルトフローレートが10g/10分以上16g/10分以下であるエチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂を含有し、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー樹脂の全体に対する上記エチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂の含有量が5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0057】
このように、メルトフローレートが大きく(即ち、金属架橋度が低く)、流動性に優れたエチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂を、少量、添加することにより、金属製の混練機に対するアイオノマー樹脂の付着を生じることなく、アイオノマー樹脂発泡体の表面および内部の状態を改善することが可能になる。
【0058】
なお、「表面状体が改善する」とは、金型の表面形状に沿ったペレット痕が少ない表面状態を維持することができることを言い、「内部の状態が改善する」とは、発泡セルの大きさにばらつきが少なく、かつ、小さな径の独立泡である状態を維持することができることを言う。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
【0060】
(実施例1〜7及び比較例1〜7)
<アイオノマー樹脂発泡体の製造>
表1、表2に示す組成(数字は、各成分の質量部を示す)を有する実施例1〜7及び比較例1〜7のアイオノマー樹脂発泡体を、下記の製造方法により製造した。
【0061】
(混練工程)
まず、表1、表2に示す各原料を、8インチオープンロール(ロール温調:70℃、ロール表面温度:100℃以下)に投入し、各原料を混練した後、シーティングを行い、その後、ペレタイジングを行うことにより、ペレット形状を有する発泡用樹脂組成物を作製した。
【0062】
(発泡成形工程)
次に、作製した発泡用樹脂組成物2.2gを、金型(タナカ技工製、210mm×210mm×38mm)に形成された64個の略半球形状を有する開口部(開口径:26.5mm、半径:13.25mm)に充填し、155℃で20分、加熱処理を行うことにより、発泡用樹脂組成物を発泡させた。
【0063】
次に、加熱処理を終了し、金型の温度が20℃以下になるまで、10分間、冷却した後、発泡成形体を金型から離型することにより、実施例1〜7及び比較例1〜7のアイオノマー樹脂発泡体を製造した。
【0064】
<メルトフローレートの測定>
作製したアイオノマー樹脂発泡体のメルトフローレートを測定した。より具体的には、まず、加熱冷却プレス機の熱盤を170℃に加熱し、この熱盤上に、離型用のPETフィルム(厚み:100μm)により挟持されたアイオノマー樹脂発泡体を載置した。次に、アイオノマー樹脂発泡体を挟持した上下のPETフィルムを熱盤に接触させて試料を溶融し、プレス機を操作して、接触圧により、3分間、プレス成形した。次に、脱気を行い、更に5Mpaのプレス圧で、5分間、プレス成形した。次に、熱盤の温度が約20℃になるまで冷却した後、PETフィルムにより挟持されたアイオノマー樹脂発泡体を取り出し、アイオノマー樹脂からPETフィルムを剥離した。次に、得られたフィルム状のアイオノマー樹脂混合物を適宜カットし、筒状に丸めることでメルトフローレート測定用の試料とした。
【0065】
そして、JIS K 7210−1999(190℃、2.16kg荷重下)に準拠して、アイオノマー樹脂発泡体のメルトフローレートを測定した。なお、メルトフローレートの測定は、(株)東洋精機製作所製のMelt Indexer G―02を用いて行った。以上の結果を表1、表2に示す。
【0066】
なお、比較例1〜4のアイオノマー樹脂発泡体においては、化学架橋剤を用いて架橋しているため、熱可塑性を失い、流動しない、もしくはほとんど流動しない混合物となり、メルトフローレートを測定することができなかった。
【0067】
<量産性評価>
混練工程におけるロールへの付着、及びスコーチの発生の観点から、以下の評価基準に従って、量産性を評価した。以上の結果を、表1、表2に示す。
◎:ロールへの付着がなかった
○:ロールへの付着はあるが、ロールの温度調節により付着を抑制できた
△:ロールへの付着があり、付着した樹脂組成物をロールから剥がす作業を行う必要があった
×スコーチの発生、またはロールへの付着があり、混練が困難であった
【0068】
<機械的強度評価>
作製したアイオノマー樹脂発泡体の弾性率と荷重時の変形量を測定することにより、機械的強度を評価した。
【0069】
より具体的には、シャトルヘッド形状の成形品について、万能引張圧縮試験機(インストロン社製、商品名:インストロン3365)を用いて、製品の縦方向において圧縮試験を行い、測定した。なお、圧縮速度を1mm/minに設定し、圧縮冶具として、製品(φ26〜φ26.5mm、長さ:26mm〜27mm)を面で押えることができるφ150mmの円盤状の鉄板を用いて測定した。また、シャトルヘッド形状の成形品を半球部分が上になるように試験機圧縮盤の中央に設置して、圧縮を行った。
【0070】
なお、弾性率[MPa]とは、圧縮変形率(圧縮変形量を製品長さで除した値)に対する圧縮応力の傾き(圧縮応力を圧縮変形率で除した値の最大値)のことを言う。
【0071】
また、圧縮応力[MPa]とは、圧縮荷重を円柱部分の断面投影円面積で除した値のことを言う。
【0072】
また、変形量[mm]は、300Nの荷重で圧縮した時の成形品の変形量のことを言う。
【0073】
以上の結果を、表1、表2に示す。
【0074】
<外観及び内部評価>
作製したアイオノマー樹脂発泡体の外観及び内部を以下の評価基準に従って、評価した。以上の結果を、表1、表2に示す。
◎:表面は平滑で内部のセルは均一で細かい
○:表面には大きな凹みや傷がなく内部のセルは均一
×:表面に変色が見られる場合や、大きな凹みや傷があり、内部のセルが不均一
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
*1:ハイミランH1702(エチレン・メタクリル酸共重合体の亜鉛中和品、メルトフローレート:16g/10分、中和度:22%、酸量:15%、三井・デュポンポリケミカル社製)
*2:ハイミランH1706(エチレン・メタクリル酸共重合体の亜鉛中和品、メルトフローレート:0.9g/10分、中和度:58%、酸量:15%、三井・デュポンポリケミカル社製)
*3:ハイミランH1707(エチレン・メタクリル酸共重合体のナトリウム中和品、メルトフローレート:0.9g/10分、中和度:59%、酸量:15%、三井・デュポンポリケミカル社製)
*4:ネオセルボンN♯5000(4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)系化学発泡剤、永和化成工業社製)
*5:活性亜鉛華(ZnO系発泡助剤、正同化学工業(株)製)
*6:酸化チタン(TiO
2系発泡助剤、堺化学工業(株)製)
*7:ストラクトール WB222(高級脂肪酸エステル系加工助剤、エスアンドエスジャパン社製)
*8:サンノック(合成ワックス系老化防止剤、大内新興化学工業社製)
*9:パークミルD(過酸化物架橋剤、日油(株)製)
【0078】
表1、表2に示すように、メルトフローレートが4.6g/10分以上7.4g/10分以下であり、架橋剤を含有しない実施例1〜7は、架橋剤を含有する比較例1〜4及びメルトフローレートが7.4g/10分よりも大きい比較例5〜7に比し、機械的強度と量産性に優れ、外観や内部状態も良好であることが分かる。
【0079】
特に、メルトフローレートが5.5g/10分以上6.3g/10分である実施例1〜3は、弾性率が高く、変形量が少なく、かつ外観や内部状態も良好であるアイオノマー樹脂発泡体を得ることができることが分かる。