(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
耐火物の基準状態における温度を撮影した温度データよりなる基準熱画像データから、前記耐火物の現時点における温度を撮影した温度データよりなる現時点熱画像データの、対応する座標の温度データを減算することで、温度差分データの集合体であるΔTデータを算出する、第一減算部と、
前記ΔTデータの最頻値を算出する最頻値算出部と、
前記最頻値に基づいて、予め設定した温度データ判定閾値のオフセット値を算出するオフセット算出部と、
前記温度データ判定閾値から、前記オフセット値を減算することで、オフセット補正済温度データ判定閾値を出力する第二減算部と、
前記現時点熱画像データと前記オフセット補正済温度データ判定閾値とを比較する第一比較部と
を具備する、耐火物異常判定システム。
耐火物の初期状態における温度を撮影した温度データよりなる基準熱画像データから、前記耐火物の現時点における温度を撮影した温度データよりなる現時点熱画像データの、対応する座標の温度データを減算することで、温度差分データの集合体であるΔTデータを算出する、第一減算ステップと、
前記ΔTデータの最頻値を算出する最頻値算出ステップと、
前記最頻値に基づいて、予め設定した温度データ判定閾値のオフセット値を算出するオフセット算出ステップと、
前記温度データ判定閾値から、前記オフセット値を減算することで、オフセット補正済温度データ判定閾値を出力する第二減算ステップと、
前記現時点熱画像データと前記オフセット補正済温度データ判定閾値とを比較する第一比較ステップと
を有する、耐火物異常判定方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[耐火物異常判定システム:全体構成]
図1は、本発明の実施形態の例である、耐火物異常判定システムの概略図である。
耐火物異常判定システム101は、熱画像撮影システムを利用して実現するシステムである。熱画像を撮影し、得られた温度データから温度異常状態の検出を行う。
製鉄業を営む甲製鉄所では、レール102にぶら下げられた取鍋103に、溶融した鉄を充填して運ぶ。
取鍋103の運搬経路上には、やや離れた位置に、取鍋103を撮影するための第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107が設置されている。
第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107は、赤外線カメラ(熱画像撮影装置)である。赤外線カメラにとって、取鍋103は被写体であり、赤外線を放射する耐火物である。
これら第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107は、LAN108によって遠隔地にある制御コンピュータ109に接続されている。
【0012】
周知のように、鉄の融点は1535℃と、極めて高い。このため、取鍋103は断熱効果を有する耐火煉瓦を内側に配し、外側を鋼鉄で構成している。しかし、溶融した鉄の熱によって耐火煉瓦の内鍋は徐々に溶かされ、削れていく。すると、溶融した鉄は鋼鉄の外鍋に接触してしまう。こうなると、溶融した鉄と同じ材質の外鍋は短時間で溶かされて、最悪の場合、取鍋103から溶融した鉄が漏れ出てしまう。
【0013】
耐火煉瓦の内鍋の削れ具合は、取鍋103の表面温度から推測することができる。
内鍋が溶融した鉄によって徐々に溶かされていくと、内鍋の肉厚は薄くなっていく。すると、溶融した鉄の熱が外鍋に伝達し易くなる。したがって、取鍋103の表面温度を監視すれば、取鍋103の異常状態の早期発見に寄与する。
【0014】
ところで、レール102上を移動する取鍋103は、レール102上を往復移動する。溶融した鉄が満たされた取鍋103は、その状態で所定の場所まで運搬され、溶融した鉄が取鍋103から所定の容器に注ぎ込まれる。そして、再度溶融した鉄を取りに戻るべく、空になった取鍋103は逆方向に移動する。このため、取鍋103の表面温度の測定は、溶融した鉄を満たした状態での測定でなければならない。
図1では、左側から右側への進行方向(実線矢印で示す)が、溶融した鉄を満たした状態での移動方向に該当する。
【0015】
制御コンピュータ109は、LAN108上の第一カメラ104が取鍋103を捉えた後、第二カメラ105が取鍋103を捉えたことを検出すると、第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107から、温度データの集合体である熱画像データのダウンロードを行う。この制御コンピュータ109は工業用途に調製されたコンピュータであり、実質的にはパソコンと殆ど変わらない。
【0016】
[制御コンピュータ109:ハードウェア構成]
図2は、制御コンピュータ109のハードウェア構成を示すブロック図である。
制御コンピュータ109は、CPU201、ROM202、RAM203、不揮発性ストレージ204、表示部205、そして操作部206がバス207に接続されている。
制御コンピュータ109はバス207に接続されたNIC(Network Interface Card)208を通じて、LAN108上の第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107から、熱画像データのダウンロードを行う。
【0017】
不揮発性ストレージ204には、パソコンを制御コンピュータ109として稼働させるためのOSと、アプリケーションプログラムと、後述する種々のデータファイルが格納されている。
【0018】
[第一の実施形態:制御コンピュータ109:ソフトウェア機能]
これより、本発明の第一の実施形態に係る制御コンピュータ109のソフトウェア機能を説明する。なお、本発明は制御コンピュータ109のソフトウェア機能が主体であり、これより説明する複数の実施形態において、ハードウェア構成は共通である。本明細書ではソフトウェア機能のバリエーションとして第一、第二、第三、そして第四の実施形態を説明する。
図3は、本発明の第一の実施形態に係る制御コンピュータ109のソフトウェア機能を示すブロック図である。なお、
図3では説明の都合上、第一カメラ104、第二カメラ105、第三カメラ106及び第四カメラ107を赤外線カメラ301と総称する。
赤外線カメラ301から出力される、被写体である取鍋103等の耐火物を撮影した熱画像データは、座標微調整処理部302によって周知のトリミング処理が施されたのち、一旦、第一フレームバッファ303に記憶される。このトリミング処理では、熱画像データから耐火物以外の背景部分が削除される。
【0019】
一方、不揮発性ストレージ204には、耐火物をメンテナンスした直後や、あるいは耐火物をメンテナンスしてから慣らし運転等を経た時点で耐火物を撮影した、基準熱画像データ304がデータファイルとして記憶されている。第一
減算部305は、基準熱画像データ304から、第一フレームバッファ303から読み出した現在の熱画像データを減算する。そして、第一
減算部305は、基準熱画像データ304から現在の熱画像データを差し引いた、各々の温度データの差分データ(以下、「ΔTデータ」という)を出力する。
ΔTデータは、一旦、第二フレームバッファ306に記憶される。
【0020】
第二フレームバッファ306に記憶されたΔTデータは、最頻値算出部307に読み込まれる。
最頻値算出部307は、ΔTデータを構成する温度差分データを所定の温度幅で分類する。そして、各々の温度幅に属する温度差分データの数を数えて、スカラ値でありΔTデータの最頻値であるΔTmを算出する。
ここで、最頻値算出部307の動作について、補足説明を加える。
図4は、最頻値算出部307の内部処理を説明する、ΔTデータを構成する温度差分データを所定の温度幅で分類した状態を示す棒グラフである。縦軸は温度差分データの要素数(ドット数)であり、横軸は温度である。
【0021】
ΔTデータを構成する温度差分データは、ΔTデータの位置、すなわち耐火物の位置によってばらつきがある。また、耐火物は繰り返し使用に伴って劣化が進行し、耐火物をメンテナンスした直後から徐々に全体の温度が上昇する傾向にある。そこで、ΔTデータを構成する温度差分データの最大値から最小値を減算し、予め定められた分割数で除算することで、温度幅を決定する。以下のような式になる。
最頻度温度幅Tw=(温度差分データ最大値TX−温度差分データ最小値TN)/分割数n
そして、この最頻度温度幅Twで温度差分データを分類する。
図4は、最頻度温度幅Twで温度差分データを分類した一例である。この棒グラフの中で、最も要素数が多いグループの温度V401を、ΔTデータの最頻値ΔTmとする。
【0022】
図3に戻って、ブロック図の説明を続ける。
最頻値算出部307が出力した最頻値ΔTmは、オフセット算出部308に入力される。
オフセット算出部308は、オフセット算出係数309を読み込み、スカラ値であるオフセット値Toを算出する。
最頻値ΔTmは、ΔTデータを構成する温度差分データのうち、最も多い要素を示している。したがって、例えば耐火物が取鍋103の場合、連続して使用することで取鍋103の全体の温度が基準状態より上昇すると、最頻値ΔTmは0から徐々に負の値へシフトする。すなわち、温度のオフセットが生じる。
【0023】
最頻値ΔTmをそのままオフセット値として採用して、第二フレームバッファ306に記憶されているΔTデータから減算しても、相応に補正されたΔTデータを得ることができるであろう。しかし、最頻値ΔTmそのままでは、様々な誤差が含まれ、ΔTデータの正確なオフセット値補正演算が実現できない。そこで、最頻値ΔTmを基に、オフセット値の演算を実行する。オフセット算出部308は、最頻値ΔTmからオフセット値Toを算出するための近似式を演算処理する。その際、不揮発性ストレージ204に記憶されているオフセット算出係数309から、各項の係数を参照する。例えば以下のような近似式である。
オフセット値To≒aΔTm
3+bΔTm
2+cΔTm+d
【0024】
上記の式において、係数a、b、c及びdは、例えば以下の要因に基づいて決定する。
<1>環境温度(昼夜、天候、季節)
環境温度は、耐火物から赤外線カメラに到達する赤外エネルギーの伝搬量に変化をもたらす。
<2>耐火物の使用回数(溶融金属のチャージ回数)
耐火物の使用回数は、耐火物内部の内鍋に貯蔵された溶融金属から発せられる高温の熱エネルギーが、耐火物外殻の鉄皮に伝搬する伝熱速度に影響する。
【0025】
本発明の第一の実施形態に係る制御コンピュータ109では、熱画像データを構成する温度データとオフセット補正済温度データ判定閾値とを比較することで異常判定を行う。
第二
減算部311は、不揮発ストレージ204に記憶されている温度データ判定閾値310から、オフセット値Toを減算し、オフセット補正済温度データ判定閾値Ttoを出力する。
第一比較部312は、第一フレームバッファ303に格納されている熱画像データT502を構成する温度データとオフセット補正済温度データ判定閾値Ttoを比較する。オフセット補正済温度データ判定閾値Ttoを超える温度データが異常な温度データであり、異常な温度データが存在する座標が異常個所を表す。
【0026】
耐火物である取鍋103や混銑車は、使用の初期段階では冷えた状態である。冷えた状態の耐火物に溶融金属を投入すると、耐火物の温度は上昇する。耐火物は溶融金属を充填する第一の地点から溶融金属を供給する第二の地点へ運ぶので、その間、耐火物の温度は上昇し続ける。第二の地点で溶融金属を吐出した耐火物は第一の地点に戻る際の運搬の過程で冷却されるが、溶融金属を供給される前の状態までは温度が冷却しきれないまま、第一の地点で再び溶融金属が充填される。すなわち、耐火物は繰り返し使用に伴い、温度が上昇する。
【0027】
発明者が本発明を想到する以前の耐火物異常判定システムは、第一フレームバッファ303に記憶された熱画像データT502を構成する温度データを、静的な温度データ判定閾値310と比較することで異常判定を行っていた。
しかし、前述のように耐火物は使用状況によって全体の温度が変動する。これは、温度のオフセット値として現れ、熱画像データに重畳される。オフセット算出部308は、このオフセット値を算出する。
温度データ判定閾値310にオフセット補正を施すことで、動的に調整されたオフセット補正済温度データ判定閾値Ttoを得ることができ、耐火物の全体温度変動を相殺した異常判定を行うことが可能となる。
【0028】
オフセット算出部308におけるオフセット値の算出根拠には、最頻値算出部307における最頻値を用いている。この値は、異常箇所の温度差分データを排除する意義がある。このため、最頻値の算出に代えて平均値を用いることは、異常箇所の温度差分データが含まれてしまうので好ましくない。
【0029】
図5は、第一
減算部305の演算処理を説明する模式図である。なお、模式図中に描かれる楕円形のイメージは混銑車を示す。
予め不揮発性ストレージ204に記憶されている基準熱画像データT501から、第一フレームバッファ303に記憶されている現在の熱画像データT502を減算すると、ΔTデータD503が得られる。この演算は、熱画像データを構成する個々の温度データについて、対応する座標の温度データ同士を減算することで、温度差分データの集合体であるΔTデータD503を算出する。
【0030】
図3にて説明した制御コンピュータ109の機能は、データの処理手順をも表している。すなわち、制御コンピュータ109は、
耐火物の初期状態における温度を撮影した温度データよりなる基準熱画像データから、前記耐火物の現時点における温度を撮影した温度データよりなる現時点熱画像データの、対応する座標の温度データを減算することで、温度差分データの集合体であるΔTデータを算出する、第一
減算ステップ(第一
減算部305)と、
前記ΔTデータの最頻値を算出する最頻値算出ステップ(最頻値算出部307)と、
前記最頻値に基づいてオフセット値を算出するオフセット算出ステップ(オフセット算出部308)と、
を有し、さらに、
予め設定した温度データ判定閾値から、前記オフセット値を減算することで、オフセット補正済温度データ判定閾値を出力する第二
減算ステップ(第二
減算部311)と
前記現時点熱画像データと前記オフセット補正済温度データ判定閾値とを比較する第一比較ステップ(第一比較部312)と
を有する、耐火物異常判定方法を実現する。
【0031】
[第二の実施形態:制御コンピュータ109:ソフトウェア機能]
第一の実施形態とは異なる実施形態として、オフセット補正済熱画像データを構成するオフセット補正済温度データと温度データ判定閾値とを比較する形態をとることもできる。
図6は、本発明の第二の実施形態における制御コンピュータ109のソフトウェア機能を示すブロック図である。なお、
図6を含め、これ以降の実施形態の説明において、同一の機能ブロックには同一の符号を付している。
赤外線カメラ301から出力される熱画像データから、オフセット値Toを算出するまでは
図3に示す第一の実施形態と同一である。
【0032】
第三加算部601は、第一フレームバッファ303に格納されている熱画像データT502を構成する温度データに、オフセット値Toを加算して、オフセット補正済温度データを出力する。オフセット補正済温度データはオフセット補正済熱画像データT701(
図7参照)を構成する。
第二比較部602は、オフセット補正済熱画像データT701を構成するオフセット補正済温度データと、不揮発ストレージ204に記憶されている温度データ判定閾値310を比較する。温度データ判定閾値310を超える温度データが異常な温度データであり、異常な温度データが存在する座標が異常個所を表す。
温度データにオフセット補正を施すことで、動的に調整されたオフセット補正済温度データを得ることができ、耐火物の全体温度変動を相殺した異常判定を行うことが可能となる。
【0033】
図7は、第三加算部601の演算処理を説明する模式図である。
第一フレームバッファ303に記憶されている熱画像データT502を構成する各々の温度データに、単一のスカラ値であるオフセット値Toを加算すると、オフセット補正済温度データから構成されるオフセット補正済熱画像データT701が得られる。
【0034】
図6にて説明した制御コンピュータ109の機能は、データの処理手順をも表している。すなわち、制御コンピュータ109は、
耐火物の基準状態における温度を撮影した温度データよりなる基準熱画像データから、耐火物の現時点における温度を撮影した温度データよりなる現時点熱画像データの、対応する座標の温度データを減算することで、温度差分データの集合体であるΔTデータを算出する、第一
減算ステップ(第一
減算部305)と、
ΔTデータの最頻値を算出する最頻値算出ステップ(最頻値算出部307)と、
最頻値に基づいてオフセット値を算出するオフセット算出ステップ(オフセット算出部308)と、
を有し、さらに、
前記現時点熱画像データを構成する前記温度データに、前記オフセット値を加算することで、オフセット補正済現時点熱画像データを出力する第三加算ステップ(第三加算部601)と
前記オフセット補正済現時点熱画像データと予め設定した温度データ判定閾値とを比較する第二比較ステップ(第二比較部602)と
を有する、耐火物異常判定方法を実現する。
【0035】
本発明の第二の実施形態に係る制御コンピュータ109では、オフセット補正済熱画像データを構成する補正済温度データと温度データ判定閾値とを比較することで異常判定を行う。
第三加算部601は、第一フレームバッファ303に記憶されている熱画像データT502に、オフセット値Toを加算し、オフセット補正済熱画像データT701を出力する。
第二比較部602は、オフセット補正済熱画像データT701を構成するオフセット補正済温度データと温度データ判定閾値310を比較する。温度データ判定閾値310を超える温度データが異常な温度データであり、異常な温度データが存在する座標が異常個所を表す。
【0036】
[第三の実施形態:制御コンピュータ109:ソフトウェア機能]
また、第一及び第二の実施形態とは異なる実施形態として、ΔTデータを構成する温度差分データとオフセット補正済温度差分データ判定閾値とを比較する形態をとることもできる。
図8は、本発明の第三の実施形態における制御コンピュータ109のソフトウェア機能を示すブロック図である。
赤外線カメラ301から出力される熱画像データから、オフセット値Toを算出するまでは
図3に示す第一の実施形態と同一である。
【0037】
第四加算部801は、不揮発ストレージ204に記憶されている温度差分データ判定閾値802に、オフセット値Toを加算して、オフセット補正済温度差分データ判定閾値Tdoを出力する。
第三比較部803は、第二フレームバッファに格納されているΔTデータD503を構成する温度差分データと、オフセット補正済温度差分データ判定閾値Tdoを比較する。オフセット補正済温度差分データ判定閾値Tdoを超える温度差分データが異常な温度差分データであり、異常な温度差分データが存在する座標が異常個所を表す。
温度差分データ判定閾値802にオフセット補正を施すことで、動的に調整されたオフセット補正済温度差分データ判定閾値Tdoを得ることができ、耐火物の全体温度変動を相殺した異常判定を行うことが可能となる。
【0038】
図8にて説明した制御コンピュータ109の機能は、データの処理手順をも表している。すなわち、制御コンピュータ109は、
耐火物の基準状態における温度を撮影した温度データよりなる基準熱画像データから、耐火物の現時点における温度を撮影した温度データよりなる現時点熱画像データの、対応する座標の温度データを減算することで、温度差分データの集合体であるΔTデータを算出する、第一
減算ステップ(第一
減算部305)と、
ΔTデータの最頻値を算出する最頻値算出ステップ(最頻値算出部307)と、
最頻値に基づいてオフセット値を算出するオフセット算出ステップ(オフセット算出部308)と、
を有し、さらに、
予め設定した温度差分データ判定閾値に、前記オフセット値を加算することで、オフセット補正済温度差分データ判定閾値を出力する第四加算ステップ(第四加算部801)と 前記ΔTデータと前記オフセット補正済温度差分データ判定閾値とを比較する第三比較ステップ(第三比較部803)と
を有する、耐火物異常判定方法を実現する。
【0039】
本発明の第三の実施形態に係る制御コンピュータ109では、ΔTデータを構成する温度差分データとオフセット補正済温度差分データ判定閾値とを比較することで異常判定を行う。
第四加算部801は、温度差分データ判定閾値802から、オフセット値Toを減算し、オフセット補正済温度差分データ判定閾値Tdoを出力する。
第三比較部803は、ΔTデータを構成する温度差分データとオフセット補正済温度差分データ判定閾値Tdoを比較する。オフセット補正済温度差分データ判定閾値Tdoを超える温度差分データが異常な温度差分データであり、異常な温度差分データが存在する座標が異常個所を表す。
【0040】
[第四の実施形態:制御コンピュータ109:ソフトウェア機能]
さらに、第一、第二及び第三の実施形態とは異なる実施形態として、オフセット補正済ΔTデータを構成するオフセット補正済温度差分データと温度差分データ判定閾値とを比較する形態をとることもできる。
図9は、本発明の第四の実施形態における制御コンピュータ109のソフトウェア機能を示すブロック図である。
赤外線カメラ301から出力される熱画像データから、オフセット値Toを算出するまでは
図3と同一である。
【0041】
第五
減算部901は、第二フレームバッファ306に格納されているΔTデータD503を構成する温度差分データから、オフセット値Toを減算して、オフセット補正済温度差分データを出力する。オフセット補正済温度差分データはオフセット補正済ΔTデータD1001を構成する。
第四比較部902は、オフセット補正済ΔTデータD1001(
図10参照)を構成するオフセット補正済温度差分データと、不揮発ストレージ204に記憶されている温度差分データ判定閾値Tdを比較する。温度差分データ判定閾値802を超える温度差分データが異常な温度差分データであり、異常な温度差分データが存在する座標が異常個所を表す。
【0042】
図10は、第五
減算部901の演算処理を説明する模式図である。
第二フレームバッファ306に記憶されているΔデータD503を構成する各々の温度データから、単一のスカラ値であるオフセット値Toを減算すると、オフセット補正済温度差分データから構成されるオフセット補正済ΔTデータD1001が得られる。
【0043】
図9にて説明した制御コンピュータ109の機能は、データの処理手順をも表している。すなわち、制御コンピュータ109は、
耐火物の初期状態における温度を撮影した温度データよりなる基準熱画像データから、前記耐火物の現時点における温度を撮影した温度データよりなる現時点熱画像データの、対応する座標の温度データを減算することで、温度差分データの集合体であるΔTデータを算出する、第一
減算ステップ(第一
減算部305)と、
前記ΔTデータの最頻値を算出する最頻値算出ステップ(最頻値算出部307)と、
前記最頻値に基づいてオフセット値を算出するオフセット算出ステップ(オフセット算出部308)と、
を有し、さらに、
前記ΔTデータを構成する前記温度差分データに対し、前記オフセット値を減算することで、オフセット補正済ΔTデータを出力する第五
減算ステップ(第五
減算部901)と
、
前記オフセット補正済ΔTデータと予め設定した温度差分データ判定閾値とを比較する第四比較ステップ(第四比較部902)と
を有する、耐火物異常判定方法を実現する。
【0044】
本発明の第四の実施形態に係る制御コンピュータ109では、オフセット補正済ΔTデータを構成するオフセット補正済温度差分データと温度差分データ判定閾値とを比較することで異常判定を行う。
第五
減算部901は、ΔTデータからオフセット値Toを減算し、オフセット補正済ΔTデータを出力する。
第四比較部902は、オフセット補正済ΔTデータを構成するオフセット補正済温度差分データと温度差分データ判定閾値802を比較する。温度差分データ判定閾値802を超えるオフセット補正済温度差分データが異常なオフセット補正済温度差分データであり、異常なオフセット補正済温度差分データが存在する座標が異常個所を表す。
【0045】
本発明の実施形態においては、耐火物異常判定システム101を開示した。
基準熱画像データから、現在の熱画像データを減算すると、ΔTデータが得られる。ΔTデータを構成する温度差分データの最頻値ΔTmを算出して、最頻値ΔTmを基にオフセット値Toを算出する。
オフセット値Toを用いた補正を行うことで、耐火物の使用状況によって発生する、耐火物全体の温度の変動を考慮した異常温度判定が可能になる。すなわち、外部からの動的な条件設定が不要で、耐火物の使用状況に左右されない、耐火物の劣化判定が可能になる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。