(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6955982
(24)【登録日】2021年10月6日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】従動ギアの位置決め方法及び位置決め機構並びにパンチプレス
(51)【国際特許分類】
F16H 1/06 20060101AFI20211018BHJP
B21D 28/36 20060101ALI20211018BHJP
F16H 1/20 20060101ALI20211018BHJP
F16H 57/12 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
F16H1/06
B21D28/36 Z
F16H1/20
F16H57/12 Z
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-232271(P2017-232271)
(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公開番号】特開2019-100458(P2019-100458A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 篤志
(72)【発明者】
【氏名】浅見 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松田 守且
【審査官】
鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録実用新案第20−0325626(KR,Y1)
【文献】
特開平11−226673(JP,A)
【文献】
中国実用新案第205823570(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/06
B21D 28/36
F16H 1/20
F16H 57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ギアとの噛合によって回転される従動ギアの位置決め方法であって、従動ギアの回転位置決め後に、前記駆動ギアに噛合したアイドルギアと前記従動ギアとに噛合するプッシュギアを、前記従動ギアと前記アイドルギアとの間に押圧し、前記駆動ギアと従動ギアとの間のバックラッシを一方向に寄せて従動ギアの位置決めを行うことを特徴とする従動ギアの位置決め方法。
【請求項2】
請求項1に記載の従動ギアの位置決め方法において、前記アイドルギアを押圧する押圧手段は、弾性押圧手段であることを特徴とする従動ギアの位置決め方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の従動ギアの位置決め方法において、前記駆動ギアによって従動ギアを回転する際は、前記プッシュギアによる押圧力を低下した状態、又はプッシュギアによる押圧を解除した状態とすることを特徴とする従動ギアの位置決め方法。
【請求項4】
駆動ギアとの噛合によって回転される従動ギアの位置決め機構であって、前記駆動ギアと噛合したアイドルギアを備え、前記アイドルギアと従動ギアとに噛合するプッシュギアを、前記従動ギアの回転位置決め後に前記アイドルギアと従動ギアとの間に押圧し、前記駆動ギアと前記従動ギアとの間のバックラッシを一方向に寄せて前記従動ギアを位置決め可能に備えていることを特徴とする従動ギアの位置決め機構。
【請求項5】
請求項4に記載の従動ギアの位置決め機構において、前記プッシュギアを進退動する押圧手段は、弾性押圧手段であることを特徴とする従動ギアの位置決め機構。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の従動ギアの位置決め機構において、前記駆動ギアとプッシュギアは同径であることを特徴とする従動ギアの位置決め機構。
【請求項7】
上下の金型を回転自在に備えたパンチプレスであって、上下の金型ホルダにそれぞれ回転自在に支持された上下の回転金型ホルダに従動ギアを備え、上側の回転金型にパンチを上下動自在に備えると共に、前記パンチと協働してプレス加工を行うダイを、下側の回転金型ホルダに備え、パンチング加工位置に位置決めされたパンチを打圧自在なストライカを上下動自在に備え、上下の回転金型ホルダの前記従動ギアに噛合した上下の駆動ギアを前記上下の金型ホルダにそれぞれ回転自在に備え、上下の前記回転金型ホルダの位置決めを行うために、上下の駆動ギアに個別に噛合した上下の各アイドルギアと上下の各従動ギアとの間に、上下のプッシュギアを進退可能に備え、前記プッシュギアを押圧力により進退動し、前記押圧力を解除可能な弾性押圧手段を備えていることを特徴とするパンチプレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ギアとの噛合によって回転される従動ギアの位置決め方法及び位置決め機構に関する。さらに詳細には、上記位置決め機構によって上下の金型(パンチ、ダイ)の位置決めを行う機能を備えたパンチプレスに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動ギアとの噛合によって回転される従動ギアの位置決めを行う先行例としては、例えば特許文献1,2がある。また、パンチプレスには、上下の金型(パンチ、ダイ)を回転して使用する先行例としては、例えば特許文献3,4,5等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−242831号公報
【特許文献2】特開2003−314674号公報
【特許文献3】特開平11−285746号公報
【特許文献4】特開2007−75889号公報
【特許文献5】特開平11−57888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パンチプレスにおいて、例えば上下のタレットなどのごとき金型ホルダに回転自在に備えた回転金型ホルダに、上下の金型としてのパンチ、ダイを着脱交換して使用することがある。上下の金型ホルダに対して回転金型ホルダを回転する構成としては、回転金型ホルダに備えた従動側のギアとしてのウォームホイールに、駆動側のギアとしてのウォームギアを噛合したウォームギア機構の構成がある。また、回転金型に備えた従動側のギアとしての平歯車に、駆動ギアに掛回したタイミングベルトを掛回したベルト機構の構成がある。さらに、回転金型ホルダに備えた従動ギアに、駆動モータによって回転される駆動ギアを噛合した平歯車機構の構成がある。
【0005】
前記ウォームギア機構の構成においては、回転金型ホルダをより高速で回転するには問題がある。また、ベルト機構においてはベルトの伸びの影響やベルトの耐久性などの問題がある。さらに、平歯車機構においてはバックラッシュ(バックラッシとも言う。)の問題がある。
【0006】
すなわち、従来の構成においては、バックラッシの存在により、上下の金型を回転位置に正確に位置決めすることが難しいものである。換言すれば歯車機構におけるバックラッシの存在により、加工精度をより高精度に向上することが難しいものである。
【0007】
本発明は、上記のごとき問題に鑑みてなされたもので、駆動ギアによって回転される従動ギアの位置決めを行う際に、駆動ギアと従動ギアとの間に存在するバックラッシを一方向に寄せて、バックラッシに起因する位置決め精度の低下を抑制しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、駆動ギアとの噛合によって回転される従動ギアの位置決め方法であって、従動ギアの回転位置決め後に、前記駆動ギアに噛合したアイドルギアと前記従動ギアとに噛合するプッシュギアを、前記従動ギアと前記アイドルギアとの間に押圧し、前記駆動ギアと従動ギアとの間のバックラッシを一方向に寄せて従動ギアの位置決めを行う。
【0009】
また、駆動ギアとの噛合によって回転される従動ギアの位置決め機構であって、前記駆動ギアと噛合したアイドルギアを備え、このアイドルギアと従動ギアとに噛合するプッシュギアを、前記アイドルギアと従動ギアとの間に、進退可能に備えている。
【0010】
また、上下の金型を回転自在に備えたパンチプレスであって、上下の金型ホルダにそれぞれ回転自在に支持された上下の回転金型ホルダに従動ギアを備え、上側の回転金型にパンチを上下動自在に備えると共に、前記パンチと協働してプレス加工を行うダイを、下側の回転金型ホルダに備え、パンチング加工位置に位置決めされたパンチを打圧自在なストライカを上下動自在に備え、上下の回転金型ホルダの前記従動ギアに噛合した上下の駆動ギアを前記上下の金型ホルダにそれぞれ回転自在に備え、上下の前記回転金型ホルダの位置決めを行うために、上下の駆動ギアに個別に噛合した上下の各アイドルギアと上下の各従動ギアとの間に、上下のプッシュギアを進退可能に備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動ギアとの噛合によって回転される従動ギアの位置決めを行う際、従動ギアと駆動ギアとの噛合部は、従動ギアの回転方向と駆動ギアの回転方向とを逆方向に付勢した状態において位置決め固定される。したがって、駆動ギアと従動ギアとの間に存在するバックラッシは一方向に寄せた状態でもって位置決め固定されることになる。よって、駆動ギアと従動ギアとの間にバックラッシが存在する場合であっても、このバックラッシは常に一方向へ寄せられるものであって、常に正確な位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】パンチプレスの全体的構成を概略的に示した構成説明図である。
【
図2】上下の金型を支持する回転金型ホルダを回転する構成の説明図である。
【
図3】駆動軸と従動軸との間のバックラッシを一方向に寄せる構成の説明図である。
【
図4】駆動軸と従動軸との間のバックラッシを一方向に寄せる構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明するに、従動ギアの位置決め機構を、パンチプレスにおける回転金型に適用した場合について説明する。なお、パンチプレスの構成は既によく知られた構成である。しかし、理解を容易にするために、先ず、パンチプレスの構成について概略的に説明する。
【0014】
パンチプレスの1例としてのタレットパンチプレス1は、フレーム本体3を備えている。このフレーム本体3における上部フレーム3Uには上部金型ホルダとしての上部タレット5Uが回転自在に備えられている。そして、フレーム本体3における下部フレーム3Lには、上部タレット5Uと上下に対向した下部タレット5Lが回転自在に備えられている。そして、上部タレット5Uには上型としてのパンチPが備えられていると共に、下部タレット5Lには、パンチPと協働して板状のワークWにプレス加工を行うダイDが備えられている。
【0015】
さらに、前記パンチプレス1には、ワークWをX,Y方向へ移動位置決めするためのワーク移動位置決め装置7が備えられている。前記パンチPとダイDとの間に位置決めされたワークWのパンチング加工を行うために、前記上部フレーム3Uには、加工位置に割出し位置決めされたパンチPを打圧するストライカ9が上下動自在に備えられている。
【0016】
上記構成において、ワーク移動位置決め装置7によってワークWの加工すべき位置をパンチPとダイDとの間に位置決めする。そして、ストライカ9によってパンチPを打圧することにより、パンチPとダイDとの協働によって、例えば打抜き加工などのプレス加工がワークWに行われることになる。
【0017】
ところで、既によく知られているように、前記上下のタレット5U,5Lには、上下の金型P,Dを回転するための回転金型ホルダ11U,11L(
図2参照、
図2には下側の回転金型ホルダ11Lを例示し、上側の回転金型ホルダ11Uは図示省略してある)が回転自在に備えられている。上下の回転金型ホルダ11U,11Lには平歯車からなる従動ギア13U,13Lが備えられている。そして、従動ギア13U,13Lには、上下のタレット5U,5Lに回転自在に備えた駆動ギア15U,15Lが噛合してある。この駆動ギア15U,15Lは、サーボモータ(図示省略)によって回転駆動されるものである。
【0018】
既に理解されるように、制御装置(図示省略)の制御の下にサーボモータを適宜に制御することにより、上下の回転金型ホルダ11U,11Lを同方向に回転して、パンチP、ダイDの方向性を一致した状態に回転し位置決めすることができる。
【0019】
ところで、上下の回転金型ホルダ11U,11Lを同方向に回転する。そして、パンチP、ダイDの方向性を同方向に位置決めしてワークWに打抜き加工を行う。この際、前記駆動ギア15U,15Lと従動ギア13U,13Lとの間にバックラッシが存在することにより、パンチPの方向性とダイDの方向性が極く僅かに異なることがある。したがって、例えば追い抜き金型によってワークWに追い抜き加工を繰り返す場合、極く僅かなずれを生じることがあり、より高精度の加工を行うことは難しいものである。
【0020】
そこで、本実施形態においては、従動ギア13U,13Lの位置決めを行う際に、駆動ギア15U,15Lと従動ギア13U,13Lとの間に存在するバックラッシを常に一方向に寄せて位置決めを行うように構成してある。
【0021】
すなわち、
図3に示すように、上下のタレット5U,5Lには、ベースプレート17U,17Lが備えられている(なお、
図3には上側の回転金型ホルダ11Uを例示し、下側の回転金型ホルダ11Lについては符号のみで図示省略してある)。そして、このベースプレート17U,17Lには、上下の回転金型ホルダ11U,11Lが回転自在に備えられている。また、前記ベースプレート17U,17Lにはブラケット19U,19Lが備えられている。このブラケット19U,19Lには、サーボモータ(図示省略)によって回転される駆動ギア15U,15Lが回転自在に備えられている。そして、この駆動ギア15U,15Lは前記従動ギア13U,13Lと噛合してある。
【0022】
上下の前記駆動ギア15U,15Lには、前記ブラケット19U,19Lに回転自在に備えた上下のアイドルギア21U,21Lが噛合してある。そして、上下の前記従動ギア13U,13Lと上下のアイドルギア21U,21Lとの間には、従動ギア13U,13L及びアイドルギア21U,21Lと噛合する上下のプッシュギア23U,23Lが進退自在に備えられている。このプッシュギア23U,23Lの径または歯数は、前記駆動ギア15U,15Lの径または歯数と等しく構成してある。径または歯数を等しく構成しているのでプッシュギア23U,23Lと駆動ギア15U,15Lは同様に回転をし、他のギアとの噛合に不都合を生じずスムーズに回転をすることができる。
【0023】
そして、前記プッシュギア23U,23Lを、従動ギア13U,13Lとアイドルギア21U,21Lとに押圧噛合するために、上下の前記ベースプレート17U,17Lと一体的な上下のベースプレート25U,25Lには、エアシリンダなどのごとき押圧手段27U,27Lが備えられている。そして、上下の押圧手段27U,27Lに進退自在に備えたピストンロッド29U,29Lには、前記プッシュギア23U,23Lが回転自在に備えられている。前記ピストンロッド29U,29Lは、前記従動ギア13U,13Lとアイドルギア21U,21Lとの間にプッシュギア23U,23Lを進退する作用をなすものである。
【0024】
前記構成において、前記プッシュギア23U,23Lの押圧力を低下し、又は解除した状態に保持する。そして、駆動ギア15U,15Lにより、従動ギア13U,13Lを回転して、回転金型ホルダ11U,11Lに支持されたパンチP、ダイDの方向性の位置決めを行う。その後、押圧手段27U,27Lのピストンロッド29U,29Lを矢印A方向へ突出作動して、従動ギア13U,13Lとアイドルギア21U,21Lとの間へプッシュギア23U,23Lを進入し、従動ギア13U,13Lとアイドルギア21U,21Lに噛合し押圧する。
【0025】
この際、プッシュギア23U,23Lとアイドルギア21U,21Lと従動ギア13U,13Lとの噛合関係により、従動ギア13U,13Lは、矢印B方向に回転する傾向にある。そして、アイドルギア21U,21Lは矢印C方向に回転する傾向にあって、駆動ギア15U,15Lはアイドルギア21U,21Lによって矢印D方向に押圧されるが駆動ギアは回転不能に固定状態にある。駆動ギア15U,15Lとプッシュギア間に噛合してアイドルギア21U,21Lが設けられているので、受動ギア13U,13Lから離れる方向に移動する傾向にあるプッシュギア23U,23Lの動きを抑制するように作用する。したがって、プッシュギア23U,23Lと従動ギア13U,13Lが確実に噛合することができる。よってプッシュギア23U,23Lを前進させると回転不能に固定状態にある駆動ギア15U,15Lに対して従動ギア13U,13Lが矢印B方向に回転され駆動ギア15U,15Lの噛部に従動ギア13U,13Lの噛部を押しつける形態となる。したがって、駆動ギア15U,15Lと従動ギア13U,13Lとの間に存在するバックラッシは、一方向に寄せられた状態となる。
【0026】
なお前記ピストンロッド29U,29Lは、前記従動ギア13U,13Lとアイドルギア21U,21Lとの間にプッシュギア23U,23Lを進退させる構造となっているので、例えば常時バネ等でプッシュギア23U,23Lを押圧している場合に考えられるギアへの負荷や歯打ち音などの発生を防止することができる。
【0027】
またプッシュギア23U,23Lの押圧力を低下又は解除する前に、不具合により仮に駆動ギア15U,15Lが回転をしてしまったとしても、ピストンロッド29U,29Lに対してプッシュギア23U,23Lはフリーに回転自在なので、他のギアと噛合した状態で回転することで、噛部の破損などを防止することができる。
【0028】
ところで、前記押圧手段27U,27Lはエアシリンダから構成してある。したがって、プッシュギア23U,23Lでもって従動ギア13U,13L及びアイドルギア21U,21Lを押圧するとき、エアシリンダ内のエアが圧縮されることとなる。よって、プッシュギア23U,23Lを押圧する際の衝撃は緩和されることとなるので、エアシリンダは弾性押圧手段ともいえる。なお、衝撃を緩和すう構成としては、スプリング等の弾性部材を介してプッシュギア23U,23Lを押圧する構成とすることも可能である。
【0029】
ところで、前記プッシュギア23U,23Lが進退する方向は、
図4に示すように、従動ギア13U,13Lの接線方向とすることも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 タレットパンチプレス
11U,11L 回転金型ホルダ
13U,13L 従動ギア
15U,15L 駆動ギア
21U,21L アイドルギア
23U,23L プッシュギア
27U,27L 弾性押圧手段(エアシリンダ)
29U,29L ピストンロッド