(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前面側から順に、(A)透明樹脂フィルムの層、(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層、及び(C)保護層を有し;上記(C)保護層の全光線透過率が5〜30%である、請求項1に記載の化粧シート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「フィルム」の用語は、シートをも含む用語として使用する。「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。「正面パネル」の用語は、平面パネル、背面パネル、側面パネル、及び底面パネルの何れかと相互交換的に又は相互置換可能に使用する。
本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。本明細書において数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。更に数値範囲に係る「〜」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10〜90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。
【0012】
1.化粧シート
本発明の化粧シートは、前面側から順に、(A)透明樹脂フィルムの層、及び(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層を有し;上記(A)透明樹脂フィルムの上記(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜側の面には、複数の直線状のヘアライン溝が設けられている。好ましい一態様において、これらのヘアライン溝は、ランダムな間隔を有して配置された複数の実質的に平行な直線状のヘアライン溝である。
ここで、化粧シートの「前面側」とは、化粧シートで装飾される物品を本来の用途で用いる際に、その物品の使用者により直接観察される外表面(前面)により近い側を意味する。化粧シートの「背面側」とは、化粧シートで装飾される物品を本来の用途で用いる際に、その物品の使用者により直接観察される外表面と反対側の外表面(背面)により近い側を意味する。例えば、化粧シートが(A)透明樹脂フィルムの層及び(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層から形成されている場合、(A)透明樹脂フィルムの層側が前面側であり、(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層側が背面側である。
ここで「実質的に平行」とは、隣接するヘアライン溝が互いに交差することが通常はないということを意味する。また「通常はない」という意味であるから、隣接するヘアライン溝が互いに交差する箇所が、ところどころにあったとしても、これを排除するものではなく、「実質的に平行」の範囲に含まれる。
【0013】
(A)透明樹脂フィルムの層
上記(A)透明樹脂フィルムの層は、透明樹脂フィルムからなる層である。上記透明樹脂フィルムは、金属製物品の表面に形成されたヘアライン意匠とより近い質感のヘアライン意匠を付与する観点から、高度に透明なものである。
【0014】
上記透明樹脂フィルムは、全光線透過率(JIS K7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000」(商品名)を用いて測定。)が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。
【0015】
上記透明樹脂フィルムは、ヘーズ(JIS K7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000」(商品名)を用いて測定。)が好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、最も好ましくは1.5%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。
【0016】
上記透明樹脂フィルムとしては、高度に透明なものであること以外は制限されず、任意の透明樹脂フィルムを用いることができる。例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどの透明樹脂フィルムを挙げることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。またこれらは、透明性が維持されている限り所望の色に着色されたものであってよい。
【0017】
上記透明樹脂フィルムが積層フィルムである場合、積層方法は制限されず、任意の方法で積層することができる。例えば、各々の樹脂フィルムを任意の方法により得た後、ドライラミネート又は熱ラミネートする方法;各々の構成材料を押出機にて溶融させ、フィードブロック法又はマルチマニホールド法若しくはスタックプレート法によるTダイ共押出により積層フィルムを得る方法;少なくとも1種の樹脂フィルムを任意の方法により得た後、該樹脂フィルム上に他の樹脂フィルムを溶融押出する押出ラミネート方法;任意のフィルム基材上に溶融押出、又は構成材料と溶剤とを含む塗料を塗布乾燥し、形成された樹脂フィルムを、上記フィルム基材から剥離し、他の樹脂フィルムの上に転写する方法、及びこれらの2つ以上を組み合わせる方法などを挙げることができる。
【0018】
上記透明樹脂フィルムが積層フィルムである場合、所望により、意匠感を高めるため、任意の層間に、エンボスを施してもよい。
【0019】
上記透明樹脂フィルムが積層フィルムである場合、所望により、意匠感を高めるため、任意の層間に、印刷層を設けてもよい。上記印刷層は、任意の模様を任意のインキと任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。このとき、タッチパネルに表示されたアイコンを目視により確認することができるようにする観点、及び深み感をより高める観点から、印刷は部分的に、例えばタッチパネル部分を避けて設けるか、又は透明なインクを用いて設けることが好ましい。また印刷層は1層に限定されず、2層以上であってもよい。
【0020】
上記透明樹脂フィルムとしては、意匠性及び透明性の観点から、ポリエステル系樹脂フィルム、芳香族ポリカーボネート系樹脂フィルム、及びアクリル系樹脂フィルムが好ましい。
【0021】
上記ポリエステル系樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上)含む樹脂からなるフィルムである。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種又は2種以上の積層フィルムを包含する。
【0022】
上記ポリエステル系樹脂フィルムは、より好ましくは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムであってよい。上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、広く市販されており、任意のものを用いることができる。
【0023】
上記ポリエステル系樹脂フィルムは、より好ましくは、非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上)含む樹脂からなるフィルムであってよい。
【0024】
本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を320℃で5分間保持した後、20℃/分の降温速度で−50℃まで冷却し、−50℃で5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で320℃まで加熱するという温度プログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程において測定される融解曲線)の融解熱量が、10J/g以下のポリエステルを非結晶性と定義し、10J/gを超えて60J/g以下のポリエステルを低結晶性と定義する。
【0025】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール成分とのポリエステル系共重合体を挙げることができる。
【0026】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、モノマーの総和を100モル%として、テレフタル酸45〜50モル%及びエチレングリコール30〜40モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール10〜20モル%を含むグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG);テレフタル酸45〜50モル%、エチレングリコール16〜21モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール29〜34モル%を含むグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG);テレフタル酸25〜49.5モル%、イソフタル酸0.5〜25モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール45〜50モル%を含む酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTA);テレフタル酸30〜45モル%、イソフタル酸5〜20モル%、エチレングリコール35〜48モル%、ネオペンチルグリコール2〜15モル%、ジエチレングリコール1モル%未満、ビスフェノールA1モル%未満を含む酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート;テレフタル酸45〜50モル%、イソフタル酸5〜0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール25〜45モル%、及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール25〜5モル%を含む酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレートなどを挙げることができる。
【0027】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0028】
上記ポリエステル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、その他の成分を含ませることができる。含む得る任意成分としては、ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び、界面活性剤等の添加剤などを挙げることができる。これらの任意成分の配合量は、ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0.01〜10質量部程度である。
【0029】
上記ポリエステル系樹脂が含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムを挙げることができる。コアシェルゴムを用いることで、上記ポリエステル系樹脂フィルムの耐衝撃性を向上させることができる。
【0030】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムの1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0031】
上記コアシェルゴムの配合量は、上記ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、耐衝撃性を向上させるため、好ましくは0.5質量部以上である。一方、透明性を保持するため、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0032】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂フィルムは、芳香族ポリカーボネート系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)含む樹脂からなるフィルムである。
【0033】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体などの芳香族ポリカーボネート系樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0034】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂が含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムを挙げることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0〜30質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜70質量部)、好ましくは0〜10質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜90質量部)の量で用いることにより、上記芳香族ポリカーボネート系樹脂フィルムの切削加工性や耐衝撃性を高めることができる。
【0035】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムを挙げることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0036】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
【0037】
上記アクリル系樹脂フィルムは、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂を主として(通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上)含む樹脂からなるフィルムである。
【0038】
上記アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主として(通常50モル%以上、好ましくは65モル%以上、より好ましくは70モル%以上)含む共重合体、及びこれらの変性体などを挙げることができる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味である。また(共)重合体とは、重合体又は共重合体の意味である。
【0039】
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、及び(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などを挙げることができる。
【0040】
上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主として含む共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸・(メタ)アクリル酸メチル共重合、及びN−置換マレイミド・(メタ)アクリル酸メチル共重合などを挙げることができる。
【0041】
上記変性体としては、例えば、分子内環化反応によりラクトン環構造が導入された重合体;分子内環化反応によりグルタル酸無水物が導入された重合体;及び、イミド化剤(例えば、メチルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアンモニアなど)と反応させることによりイミド構造が導入された重合体などを挙げることができる。
【0042】
上記アクリル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0043】
上記アクリル系樹脂が含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムを挙げることができる。上記アクリル系樹脂と上記コアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、上記コアシェルゴムを通常0〜50質量部(上記アクリル系樹脂100〜50質量部)、好ましくは0〜40質量部(上記アクリル系樹脂100〜60質量部)、より好ましくは0〜30質量部(上記アクリル系樹脂100〜70質量部)の量で用いることにより、上記アクリル系樹脂フィルムの切削加工性や耐衝撃性を高めることができる。
【0044】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などを挙げることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0045】
上記アクリル系樹脂が含み得るその他の任意成分としては、上記アクリル系樹脂や上記コアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、核剤、及び界面活性剤等の添加剤などを挙げることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、上記アクリル系樹脂と上記コアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0.01〜10質量部程度である。
【0046】
上記透明樹脂フィルムの厚みは、上記ヘアライン溝の深さよりも厚いこと以外は制限されず、任意の厚みであってよい。ガラス飛散防止機能を付与する観点から、通常25μm以上、好ましくは35μm以上、より好ましくは45μm以上であってよい。また物品の薄肉化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは800μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは200μm以下であってよい。他の実施形態において、上記透明樹脂フィルムの厚みは、25μm以上1500μm以下、25μm以上800μm以下、25μm以上400μm以下、25μm以上200μm以下、35μm以上1500μm以下、35μm以上800μm以下、35μm以上400μm以下、35μm以上200μm以下、45μm以上1500μm以下、45μm以上800μm以下、45μm以上400μm以下または45μm以上200μm以下であってよい。
【0047】
上記透明樹脂フィルムの上記(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層側(すなわち背面側)の面には、複数の直線状のヘアライン溝が設けられている。上記透明樹脂フィルムの上記(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層側(すなわち背面側)の面には、好ましくは、ランダムな間隔を有して配置された複数の実質的に平行な直線状のヘアライン溝が設けられている。上記透明樹脂フィルムに上記ヘアライン溝を設ける方法は、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。上記方法としては、例えば、回転する彫刻ロールと、回転するゴムロールとの間に、上記透明樹脂フィルムを、ヘアライン溝形成面が彫刻ロール側となるように送り込み、押圧しながらヘアライン溝を彫刻する方法を挙げることができる。上記彫刻ロールの替わりに、サンドペーパーベルト、スチールウールベルト、及び砥粒を付着させた不織布ベルトなどの彫刻可能な循環ベルトを使用してもよい。
ヘアライン意匠(複数のヘアライン溝の物理的特徴)は、特に限定されず、公知のいずれのものを用いていてもよいが、好ましい態様は以下のとおりである。
ヘアライン溝の断面形状(すなわち彫刻用突起の断面形状)は、特に限定されないが、典型的には略半円形であってよい。他の断面形状の例には、略半楕円形、略矩形等が含まれる。また、ヘアライン溝の幅(透明樹脂フィルム表面での幅)は、ある1本のヘアライン溝に着目して見た場合には、通常、実質的に一定である。
【0048】
上記ヘアライン溝の深さ(透明樹脂フィルム表面からの最深部の深さ)は、金属製物品の表面に形成されたヘアライン意匠とより近い質感のヘアライン意匠を付与する観点、及び本発明の化粧シート越しにタッチパネルに表示されたアイコンを目視により確認し、操作することができるようにする観点から、好ましくは0.05〜15μm、より好ましくは0.07〜10μmであってよい。他の実施形態において、上記ヘアライン溝の深さは、0.05〜10μm、または0.07〜15μmであってよい。
【0049】
隣接する上記ヘアライン溝間の距離(1つの溝の外縁から隣接する他の溝の外縁までの、溝と溝との間の距離)は、金属製物品の表面に形成されたヘアライン意匠とより近い質感のヘアライン意匠を付与する観点、及び本発明の化粧シート越しにタッチパネルに表示されたアイコンを目視により確認し、操作することができるようにする観点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは10〜400μmであってよい。他の実施形態において、上記ヘアライン溝間の距離は、1〜400μm、または10〜500μmであってよい。
【0050】
また上記ヘアライン溝と鉛直方向に長さ1mm、平行方向に長さ1mmの大きさの任意の正方形において、隣接する上記ヘアライン溝間の距離が50μm以上である箇所が1以上あることが好ましく、隣接する上記ヘアライン溝間の距離が100μm以上である箇所が1以上あることがより好ましく、隣接する上記ヘアライン溝間の距離が150μm以上である箇所が1以上あることが更に好ましい。
ヘアライン溝の幅及び間隔は、特に限定されない。1つの透明樹脂フィルム表面上において、複数種のヘアライン意匠が施されていてもよく、その場合、ヘアライン溝の幅及び/又は間隔は、複数に及んでよく、ランダムであってもよい。ヘアライン溝の形成方法に起因して、ヘアライン溝の幅及び間隔は、典型的にはランダムである。
【0051】
(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層
上記(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層は、ビヒクルに高輝度顔料、及びその他の任意成分を適宜混合して得られたインキを用いて形成された層である。
【0052】
上記高輝度顔料としては、例えば、アルミニウム、真鍮、鉄、銅、銀、及び金などのフレーク(金属粉);銀、酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫などの金属酸化物で被覆処理されたガラス粒子;蒸着箔の粉砕物;雲母;及び真珠粉などを挙げることができる。これらの中で、金属製物品の表面に形成されたヘアライン意匠とより近い質感のヘアライン意匠を付与する観点、及び本発明の化粧シート越しにタッチパネルに表示されたアイコンを目視により確認し、操作することができるようにする観点から、アルミニウムフレークが好ましい。上記高輝度顔料としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0053】
上記アルミニウムフレークの粒子形状は、金属製物品の表面に形成されたヘアライン意匠とより近い質感のヘアライン意匠を付与する観点、及び本発明の化粧シート越しにタッチパネルに表示されたアイコンを目視により確認し、操作することができるようにする観点から、鱗片状のものが好ましい。上記アルミニウムフレークの粒子形状の分布を、レーザー回折・散乱法により測定したとき、平均粒子径(粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径)は、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜30μm程度であってよい。上記アルミニウムフレークが鱗片状のものである場合には、その粒子形状を顕微鏡観察したとき、厚み(数平均厚み)が通常1〜1000nm、好ましくは10〜800nm程度であってよい
【0054】
上記インキ中の上記高輝度顔料の含量は、上記ビヒクルを100質量部として、意匠性の観点、上記層(A)と上記層(B)との密着性の観点、及び本発明の化粧シート越しにタッチパネルに表示されたアイコンを目視により確認し、操作することができるようにする観点から、ビヒクルと顔料との相性にもよるが、通常100質量部以下、好ましくは80質量部以下であってよい。一方、金属製物品の表面に形成されたヘアライン意匠とより近い質感のヘアライン意匠を付与する観点から、通常5質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは60質量部以上であってよい。他の実施形態において、上記インキ中の上記高輝度顔料の含量は、上記ビヒクルを100質量部として、5質量部以上100質量部以下、5質量部以上80質量部以下、20質量部以上100質量部以下、20質量部以上80質量部以下、40質量部以上100質量部以下、40質量部以上80質量部以下、60質量部以上100質量部以下、または60質量部以上80質量部以下であってよい。
【0055】
上記ビヒクルとしては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタン変性アクリル系樹脂、及び塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などを挙げることができる。上記ビヒクルとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0056】
上記透明樹脂フィルムとして、上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを用いる場合には、密着強度の観点から、上記ビヒクルとしては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、及びウレタン変性アクリル系樹脂が好ましい。
【0057】
上記透明樹脂フィルムとして、上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂フィルムを用いる場合には、密着強度の観点から、上記ビヒクルとしては、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体との混合物が好ましい。
【0058】
上記ポリ(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂は、好ましくはポリメタクリル酸アルキル系樹脂、より好ましくはポリメタクリル酸メチル系樹脂(構成単位の総和を100質量%として、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を95質量%以上、好ましくは97質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む樹脂)である。
【0059】
上記塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の好ましいものとしては、構成単位の総和を100質量%として、酢酸ビニルに由来する構造単位を5〜25質量%、好ましくは10〜20質量%となる量で含むものを挙げることができる。
【0060】
上記ポリ(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂と上記塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体との配合比は、上記ポリ(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂と上記塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体との総和を100質量%として、上記ポリ(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂が通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%;及び上記塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体が通常95〜60質量%、好ましくは90〜70質量%である。
【0061】
上記透明樹脂フィルムとして、上記芳香族ポリカーボネート系樹脂フィルムを用いる場合には、密着強度の観点から、上記ビヒクルとしては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂が好ましい。
【0062】
上記透明樹脂フィルムとして、上記アクリル系樹脂フィルムを用いる場合には、密着強度の観点から、上記ビヒクルとしては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂が好ましい。
【0063】
上記ビヒクルに加えることができるその他の任意成分としては、例えば、高輝度顔料以外の顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、及び硬化剤などを挙げることができる。上記その他の任意成分としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0064】
上記高輝度顔料以外の顔料としては、例えば、酸化チタン(白)、カーボンブラック、弁柄、及びウルトラマリン(群青)等の無機顔料;アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、及びフタロシアニンブルー等の有機顔料;及び炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化珪素、及び酸化アルミニウム等の体質顔料などを挙げることができる。上記高輝度顔料以外の顔料としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0065】
上記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸n−ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、及びアセトンなどを挙げることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0066】
上記高輝度顔料を含むインキは、これらの成分を混合・攪拌することにより得ることができる。
【0067】
上記(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層は、通常、上記(A)透明樹脂フィルムの層のヘアライン溝が形成された面の側(背面側)の表面上に上記高輝度顔料を含むインキを塗布し、次いで乾燥させることによって形成することができる。塗布及び乾燥は、特に限定されず、公知の手段を用いることができる。
上記公知の手段としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどを挙げることができる。
【0068】
上記(B)塗膜の層の厚みは、上記ヘアライン溝に対する接触部以外の箇所において、本発明の化粧シート越しにタッチパネルに表示されたアイコンを目視により確認し、操作することができるようにする観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下であってよい。上記(B)塗膜の層の厚みは、上記ヘアライン溝に対する接触部以外の箇所において、意匠性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であってよい。他の実施態様において、上記(B)塗膜の層の厚みは、上記ヘアライン溝に対する接触部以外の箇所において、0.1μm以上20μm以下、0.1μm以上10μm以下、0.1μm以上5μm以下、1μm以上20μm以下、1μm以上10μm以下、または1μm以上5μm以下であってよい。
【0069】
(C)保護層
本発明の化粧シートは、好ましくは、前面側から順に、(A)透明樹脂フィルムの層、(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層、及び(C)保護層を有するものであってよい。(C)保護層を有することによって、化粧シートを用いる際に上記層(B)に傷が入り、意匠性が損なわれるのを防止することができる。
【0070】
上記(C)保護層は、上記層(B)を保護することのできるものであれば特に制限されない。上記(C)保護層は、好ましくは、上記層(B)を保護することのできるものであり、かつ半透明なものであれば特に制限されない。
【0071】
ここで「上記(C)保護層が半透明である」とは、上記(C)保護層を有する形態の本発明の化粧シートを、照度600ルクスの環境下において、国立印刷局のきょう雑物測定図表の上に本発明の化粧シートを置き、上記図表の下から照度1万7000ルクスで照らしたとき、上記図表の5mm
2の大きさの図形が、目視で判別できるものにすることに寄与する透明性を有し;かつ、照度500ルクスの環境下において、JIS L0805:2005に規定される汚染用グレースケールの上に本発明の化粧シートを置いたとき、色票4−5号の色差が目視で判別できないものにすることに寄与する隠蔽性を有することを意味する。すなわち、上記(C)保護層を有する場合であっても本発明の化粧シートに所望される透明性及び隠蔽性が保持されるのであれば、その保護層は半透明であると判定される。
【0072】
上記(C)保護層の全光線透過率(JIS K7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000」(商品名)を用いて測定。)は、上述の半透明性を有するものであれば特に制限されないが、通常1〜50%(1%超50%以下、1%超50%未満、1%以上50%以下または1%以上50%未満)、典型的には5〜30%、好ましくは8〜25%、より好ましくは10〜20%であってよい。他の実施形態において、上記(C)保護層の全光線透過率は、1〜30%(1%を含むか又は含まない)、1〜25%(1%を含むか又は含まない)、1〜20%(1%を含むか又は含まない)、5〜50%(50%を含むか又は含まない)、5〜25%、5〜20%、8〜50%(50%を含むか又は含まない)、8〜30%、8〜20%、10〜50%(50%を含むか又は含まない)、10〜30%または10〜25%であってよい。
【0073】
上記(C)保護層は、例えば、任意の半透明樹脂フィルムを、直接又は接着剤若しくはアンカーコートと接着剤を介して、上記層(B)の上記層(A)とは反対側の面の上に積層することにより形成することができる。
【0074】
上記任意の半透明樹脂フィルムとしては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどの樹脂の半透明樹脂フィルム、及びこれらの樹脂に所望に応じて酸化チタンなどの着色剤等を配合した樹脂組成物の半透明樹脂フィルムを挙げることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。またこれらは、半透明である限りは所望の色に着色されたものであってよい。上記半透明樹脂フィルムが積層フィルムである場合の積層方法等については、上記層(A)の説明において上述したものと同様の方法を用いることができる。
【0075】
上記接着剤としては、例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン・酢酸ビニル共重合体系、エポキシ系、ポリクロロプレン系、ポリアクリル系、ポリメタクリル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、セルロース系、スチレン・ブタジエン共重合体系、及びこれらの混合物などの公知の接着剤を用いることができる。
【0076】
上記(C)保護層としては、任意の熱可塑性樹脂コート形成用塗料からなる塗膜を直接又はアンカーコートを介して、上記層(B)の上記層(A)とは反対側の面の上に形成してもよい。
【0077】
上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料としては、例えば、熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解させて調製される塗料を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料は、これを塗布乾燥することにより熱可塑性樹脂コートを形成することが可能なものである。
【0078】
上記熱可塑性樹脂コートに用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコン系樹脂、及び弗素系樹脂などを挙げることができる。これらの中で、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びアクリル系樹脂が好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0079】
上記有機溶剤としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどを挙げることができる。上記有機溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0080】
上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
【0081】
上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより、得ることができる。
【0082】
上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料を用いて上記層(B)の上記層(A)とは反対側の面の上に、直接又は透明アンカーコートを介して、上記熱可塑性樹脂コートを形成する方法は、特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法を挙げることができる。
【0083】
上記アンカーコートを形成するためのアンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、及びポリエステルウレタン等の公知のものを使用することができる。上記アンカーコート剤を用いて上記アンカーコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法を挙げることができる。上記アンカーコートの厚みは、通常0.1〜5μm程度、好ましくは0.5〜2μmである。
【0084】
上記(C)保護層の厚みは、特に制限されない。上記(C)保護層が上記熱可塑性樹脂コートである場合、耐外傷性や耐溶剤性の観点から、(C)保護層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは5μm以上であってよい。一方、上記(C)保護層が上記熱可塑性樹脂コートである場合、ウェブのハンドリング性の観点から、(C)保護層の厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であってよい。他の実施態様において、上記(C)保護層が上記熱可塑性樹脂コートである場合、(C)保護層の厚みは、0.5μm以上100μm以下、0.5μm以上50μm以下、5μm以上100μm以下、または5μm以上50μm以下であってよい。
上記(C)保護層が上記任意の半透明樹脂フィルムである場合は、ハンドリング性の観点から、(C)保護層の厚みは、通常20μm以上、好ましくは35μm以上、より好ましくは50μm以上であってよい。上記(C)保護層が上記任意の半透明樹脂フィルムである場合は、物品の薄肉化の要求に応える観点から、(C)保護層の厚みは、通常300μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下であってよい。他の実施態様において、上記(C)保護層が上記任意の半透明樹脂フィルムである場合、(C)保護層の厚みは、20μm以上300μm以下、20μm以上150μm以下、20μm以上100μm以下、35μm以上300μm以下、35μm以上150μm以下、35μm以上100μm以下、50μm以上300μm以下、50μm以上150μm以下、または50μm以上100μm以下であってよい。
【0085】
化粧シートの物性
本発明の化粧シートの背面側の表面抵抗率は1×10
5Ω以上である。上記表面抵抗率が1×10
5Ω以上、好ましくは1×10
8Ω以上であることにより、本発明の化粧シートはヘアライン意匠を有し、かつタッチパネルの操作性を損なうことがない。なお上記層(B)の上記層(A)とは反対側(背面側)の面の上に、任意の層(例えば、上記層(C)など)が形成されている場合には、上記表面抵抗率は、上記任意の層側の表面について測定すればよい。
【0086】
本明細書において表面抵抗率は、JIS K6911−1995の5.13抵抗率(5.13.2積層板)に準拠し、株式会社ダイアインスツルメンツの抵抗率計「ハイレスタ−UP MCP−HT450」(商品名)、及び、表面の環状電極の内径70mm、表面電極の内円の外径50mmである電極「MCP−JB03」(商品名)を使用し、印加電圧10V、及び印加から60秒後の数値を読み取る条件で測定した。
【0087】
本発明の化粧シートは、照度600ルクス、好ましくは照度1200ルクスの環境下において、国立印刷局のきょう雑物測定図表の上に化粧シートを、上記(A)透明樹脂フィルムの層側の面が観察面となるように置き、上記図表の下から照度1万7000ルクスで照らしたとき、左右の何れの矯正視力も1.0の者が、上記図表の5mm
2の大きさ、好ましくは4mm
2の大きさ、より好ましくは3mm
2の大きさの図形を、化粧シートの表面から垂直方向に30cm離れた位置において、目視(両眼)で判別することのできる光透過性を有する。本発明の化粧シートは上述の光透過性を有することにより、本発明の化粧シート越しにタッチパネルに表示されたアイコンを目視により確認し、操作することができる。本明細書において「視力1.0」とは、5m先にある、直径7.5mmのランドルト環の、幅1.5mmの切れ目の方向がわかる能力を指す。
【0088】
本発明の化粧シートは、照度500ルクスの環境下において、黒色(明度29、グロス2.5%)の試験台上にJIS L0805:2005に規定される汚染用グレースケールを置き、更にその上に化粧シートを、前面(上記(A)透明樹脂フィルムの層側の面)が観察面となるように置いたとき、左右の何れの矯正視力も1.0の者が、色票4−5号の色差を、好ましくは色票4号の色差を、化粧シートの表面から垂直方向に30cm離れた位置において、目視(両眼)で判別することができない隠蔽性を有する。本発明の化粧シートは上述の隠蔽性を有することにより、タッチパネルを操作していないときには(例えばタッチパネルの画面表示の照明がオフ又は低モードになっているときには)、物品のタッチパネルが組み込まれている箇所についても、金属製物品の表面に形成されたヘアライン意匠とより近い質感のヘアライン意匠を付与することができる。
【0089】
本明細書において、照度は株式会社テスト―の照度計「testo 540」(商品名)を使用して測定した。
【0090】
2.冷蔵庫の扉体
本発明の化粧シートを用いてヘアライン意匠を付与された物品を、冷蔵庫本体の正面部を開閉する扉体を例として、
図1、2を用いて説明する。これらの図中に示された扉体は、単なる典型例であり、この構造に限定されるものではない。
図1は、本発明の化粧シートを用いた扉体の一例を示す断面の部分的概念図である。
図2は、本発明の化粧シートを用いた扉体の一例を示す正面の概念図である。
図1中、1:(A)透明樹脂フィルムの層、2:(B)高輝度顔料を含むインキ塗膜の層、3:(C)保護層、4:正面パネル、5:タッチパネル、6:タッチパネルのディスプレイ面板を指す。本発明の化粧シートは、前面((A)透明樹脂フィルム1の層側の面)が貼合面となるように、上記扉体の正面パネル4(通常、高透明性のガラス板又は樹脂板である。)の背面側の面の上に、粘着剤や接着剤を用いて貼合されている。
上記扉体にはタッチパネル5が組み込まれており、当該部分においては、タッチパネルのディスプレイ面板6と本発明の化粧シートの(C)保護層3側の面とが粘着剤や接着剤を用いて貼合されている。上記扉体は、典型的には、正面パネル4、枠体(図示していない)、及び背面パネル(図示していない)とで形成されており、その内部には、通常、断熱材が充填されている。断熱材として、典型的には公知の発泡材を用いることができる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
各種物性の測定・評価方法
(i)表面抵抗率
JIS K6911−1995の5.13抵抗率(5.13.2積層板)に準拠し、株式会社ダイアインスツルメンツの抵抗率計「ハイレスタ−UP MCP−HT450」(商品名)、及び、表面の環状電極の内径70mm、表面電極の内円の外径50mmである電極「MCP−JB03」(商品名)を使用し、印加電圧10V、及び印加から60秒後の数値を読み取る条件で表面抵抗率を測定した。
【0093】
(ii)光透過性
照度600ルクスの環境下において、国立印刷局のきょう雑物測定図表の上に化粧シートを、前面(上記(A)透明樹脂フィルムの層側の面)が観察面となるように置き、上記図表の下から照度1万7000ルクスで照らし、左右の何れの矯正視力も1.0の者が、化粧シートの表面から垂直方向に30cm離れた位置において、上記図表の5mm
2、4mm
2、及び3mm
2の大きさの図形について、それぞれ目視(両眼)で判別することができるか否かにより光透過性を評価した。同様に照度1200ルクスの環境下においても評価した。なお結果の表には判別できた場合を○、判別できなかった場合を×と記載した。表には、照度600ルクスの結果−照度1200ルクスの結果の順に表記した。
【0094】
(iii)隠蔽性
照度500ルクスの環境下において、黒色(明度29、グロス2.5%)の試験台上にJIS L0805:2005に規定される汚染用グレースケールを置き、更にその上に化粧シートを、前面(上記(A)透明樹脂フィルムの層側の面)が観察面となるように置き、左右の何れの矯正視力も1.0の者が、化粧シートの表面から垂直方向に30cm離れた位置において、色票4−5号、及び色票4号について、それぞれ目視(両眼)で判別することができるか否かを評価した。なお結果の表には判別できなかった場合を○、判別できた場合を×と記載した。
【0095】
(iv)鏡面光沢(初期)
JIS Z8741−1997に準拠し、化粧シートの前面(上記(A)透明樹脂フィルムの層側の面)について、20度鏡面光沢、及び60度鏡面光沢を測定した。
【0096】
(v)湿熱試験後の鏡面光沢
温度60℃、相対湿度98%の環境下で化粧シートを240時間処理した後、JIS Z8741−1997に準拠し、化粧シートの前面(上記(A)透明樹脂フィルムの層側の面)について、20度鏡面光沢、及び60度鏡面光沢を測定した。得られた湿熱試験後の測定値の、処理前の測定値に対する割合として鏡面光沢度残率(%)を算出した。
【0097】
(vi)アルカリ性水溶液浸漬試験1
化粧シートから、マシン方向に5cm、横方向に5cmの大きさで試験片を採取し、上記試験片を0.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬後、上記試験片の端部を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:上記層(B)に変化は認められない。
△:上記試験片の端部に上記層(B)の色調の変化が認められる。しかし、上記試験片の端部から0.5mm以上内部には、上記層(B)の変化は認められない。
×:上記試験片の端部から0.5mm以上内部にまで、上記層(B)の色調の変化が認められる。
【0098】
(vii)アルカリ性水溶液浸漬試験2
上記試験片を0.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬後、JIS Z8741−1997に準拠し、20度鏡面光沢、及び60度鏡面光沢を測定した。得られた浸漬後の測定値の、処理前の測定値に対する割合として鏡面光沢残率(%)を算出した。
【0099】
(viii)酸性水溶液浸漬試験1
化粧シートから、マシン方向に5cm、横方向に5cmの大きさで試験片を採取し、上記試験片を5質量%の硫酸水溶液に24時間浸漬後、上記試験片の端部を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:上記層(B)に変化は認められない。
△:上記試験片の端部に上記層(B)の色調の変化が認められる。しかし、上記試験片の端部から0.5mm以上内部には、上記層(B)の変化は認められない。
×:上記試験片の端部から0.5mm以上内部にまで、上記層(B)の色調の変化が認められる。
【0100】
(ix)酸性水溶液浸漬試験2
上記試験片を5質量%の硫酸水溶液に24時間浸漬後、JIS Z8741−1997に準拠し、20度鏡面光沢、及び60度鏡面光沢を測定した。得られた浸漬後の測定値の、処理前の測定値に対する割合として鏡面光沢残率(%)を算出した。
【0101】
(x)意匠性
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、化粧シートの前面(上記(A)層側の面)に、該面と50cmの距離を隔てた位置から垂直に入射し、上記面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から上記化粧シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
○:意匠性が高い。金属製物品の表面に形成された意匠に近い質感がある。
△:意匠性は高くない。
×:意匠性が低い。金属製物品の表面に形成された意匠のような質感が全くない。
【0102】
使用した原材料
(A)透明樹脂フィルム
(A−1)片面易接着処理された厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム(全光線透過率91%、ヘーズ1.0%)
【0103】
(B)高輝度顔料を含むインキ
(B−1)ビヒクル(ウレタン系樹脂)100質量部、アルミニウムフレーク(鱗片状。平均粒子径9μm、数平均厚み600nm)75質量部、3官能イソシアネート2質量部、メチルエチルケトン24質量部、及びイソプロパノール3質量部を含むインキ。
ここでアルミニウムフレークの数平均厚みは、易剥離処理された厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの上に、上記(B−1)を用い、アプリケータを使用して乾燥後の厚みが2μmとなるようにして作成した塗膜について、アプリケータの操作方向の断面を顕微鏡観察し、20個の厚みの数平均を取ったものである。
【0104】
(C)保護層
(C−1)半透明ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(厚み80μm、全光線透過率15%)
(C−2)半透明ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(厚み80μm、全光線透過率9%)
(C−3)半透明ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(厚み80μm、全光線透過率5%)
(C−4)半透明ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(厚み80μm、全光線透過率1%)
(C−5)半透明ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(厚み80μm、全光線透過率25%)
(C−6)半透明ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(厚み80μm、全光線透過率50%)
【0105】
(D)透明接着剤
(D−1)大日精化工業株式会社のポリエステル系接着剤「E−295」(商品名)、 この接着剤について、株式会社島津製作所の分光光度計「SolidSpec−3700」(商品名)及び光路長10mmの石英セルを使用して測定した全光線透過率は92%であった。
【0106】
例1
上記(A−1)を、易接着面が加工面となるように、金属ロールに#240のサンドペーパーを隙間なく貼り付けた研磨ロールに接触させながら引っ掻き加工し、ヘアライン溝を彫刻した。上記(A−1)に彫刻されたヘアライン溝は、顕微鏡を使用してランダムに100か所を観察したところ、その深さが0.07〜5μm、その溝間距離が20〜350μm、及び上記ヘアライン溝と垂直方向に長さ1mm、平行方向に長さ1mmの大きさの任意の正方形において、隣接する上記ヘアライン溝間の距離が50μm以上の箇所は5〜9箇所、数平均7箇所、100μm以上の箇所は2〜6箇所、数平均4箇所、150μm以上の箇所は1〜3箇所、数平均2箇所、最大の距離は350μmであった。
次に上記(A−1)のヘアライン溝彫刻面(易接着面)に、上記(B−1)を用い、グラビアロール方式の塗工装置を使用して、乾燥後の厚み(ヘアラインに対する接触部以外の箇所)が2μmとなるように上記(B−1)からなる塗膜を形成した。続いて上記(B−1)からなる塗膜の上に、上記(D−1)を用い、グラビアロール方式の塗工装置を使用して、乾燥後の厚み4μmとなるように接着剤層を形成し、更のその上に上記(C−1)を貼合し、化粧シートを得た。上記試験(i)〜(x)を行った。結果を表1に示す。
【0107】
例2〜6
(C)保護層として、上記(C−1)の替わりに、表1に示すものを用いたこと以外は、全て例1と同様に化粧シート製造及び物性の測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
例7
上記(B−1)からなる塗膜の乾燥後の厚み(ヘアラインに対する接触部以外の箇所)を5μmに変更したこと以外は、全て例1と同様に化粧シート製造及び物性の測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
例8
上記(B−1)からなる塗膜の乾燥後の厚み(ヘアラインに対する接触部以外の箇所)を15μmに変更したこと以外は、全て例1と同様に化粧シート製造及び物性の測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
【表1】