(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、例えば地中に形成された管路敷設坑内に管路を形成していく工法として、押込工法と持込工法とがある。押込工法では、地面に発進立坑を掘り、シールド掘削機等を用いて発進立坑から横方向へ管路敷設坑を形成する。その後、発進立坑内で管を接合し、発進立坑内に設置されたジャッキを用いて、接合した管を管路敷設坑内に押し込むことにより、管路敷設坑内に管路を形成する。
【0003】
しかしながら、このような押込工法では、管路敷設坑が長距離の場合、管を管路敷設坑内に押し込む際に必要な推力が増大し、ジャッキが大型化するといった問題がある。また、管路敷設坑が急曲線を描いて曲がっている場合、対応することができないといった問題もある。このように、長距離であったり急曲線を描いて曲がっている管路敷設坑に対して、押込工法は適していないと言える。
【0004】
これに対して持込工法では、管路敷設坑が長距離の場合や急曲線を描いて曲がっている場合であっても、管路敷設坑内に管路を形成することができる。持込工法では、
図28に示すように、地面200に発進立坑201を掘り、シールド掘削機等を用いて発進立坑201から横方向へ管路敷設坑202を形成する。その後、順次、発進立坑201内で管203〜205を搬送台車207に載せ、バッテリー機関車208等を用いて搬送台車207上の管203〜205を管路敷設坑202内に持ち込み、管路敷設坑202内で管203〜205同士を接合して管路209を形成する。
このような持込工法において、管路敷設坑202内で接合済みの第1の管204に第2の管205を接合する際、以下のような方法で接合する。
【0005】
作業者206は、管路敷設坑202内で、第1の管204の受口210の内周に円環状のシール部材211を装着し、このシール部材211の内周に滑剤を塗布する。その後、作業者206は管路敷設坑202内から発進立坑201内に退避する。
【0006】
また、作業者206は、発進立坑201内で、第2の管205の挿口213の外周に滑剤を塗布する。その後、作業者206は、第2の管205を搬送台車207に載せ、バッテリー機関車208を用いて搬送台車207とともに第2の管205を管路敷設坑202内に搬送し、管路敷設坑202内において、第1の管204の受口210に第2の管205の挿口213を挿入して、第1の管204に第2の管205を接合する。
【0007】
この際、受口210内のシール部材211の内周と挿口213の外周とにそれぞれ滑剤が塗布されているため、挿口213がシール部材211の内周を通過する際の摩擦抵抗が低減し、第2の管205をスムーズに第1の管204に接合することができる。
【0008】
また、このような管の接合方法は、管路敷設坑202の内径および管204,205の口径が小さく、管204,205内での接合作業スペースが大幅に制限され、作業者206が管路敷設坑202の内壁面202aと管204,205の外周面との間のスペースに退避することができないような狭小な作業環境下であっても、第1の管204に第2の管205を接合することができる。
尚、上記のように、受口210内のシール部材211と挿口213の外周とに滑剤を塗布することは、例えば下記特許文献1,2に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記の従来形式では、発進立坑201から管路敷設坑202内で第2の管205を第1の管204に接合する接合場所214までの距離が長い場合、作業者206が管路敷設坑202内で第1の管204の受口210内のシール部材211に滑剤を塗布してから、第2の管205の挿口213を第1の管204の受口210に挿入するまで長時間を要するため、シール部材211の内周に塗布された滑剤が乾燥して滑剤の潤滑性が損なわれるといった問題がある。
【0011】
同様に、作業者206が発進立坑201内で第2の管205の挿口213の外周に滑剤を塗布してから、第2の管205の挿口213を第1の管204の受口210に挿入するまで長時間を要するため、挿口213の外周に塗布された滑剤が乾燥して滑剤の潤滑性が損なわれるといった問題がある。
【0012】
このように滑剤の潤滑性が損なわれてしまうと、挿口213がシール部材211の内周を通過する際の摩擦抵抗が低減される効果が低下し、第2の管205をスムーズに第1の管204に接合することができない虞がある。
【0013】
本発明は、管路敷設坑内で管を接合する際、滑剤が乾燥して潤滑性が損なわれてしまうのを防止することができる管の接合方法および管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本第1発明は、管路敷設坑内で第1の管に第2の管を接合する管の接合方法であって、
第1の管の受口内周に円環状のシール部材を装着し、
シール部材と第2の管の挿口の外周との少なくともいずれかに滑剤を塗布し、
滑剤を塗布した塗布部を養生部材で覆
って滑剤の乾燥を防止し、
撤去用索体を貼着部材で養生部材に接続し、
管路敷設坑内において、第1の管の受口に第2の管の挿口を挿入する前に、
第2の管の後方から撤去用索体を引っ張って養生部材を塗布部
の滑剤から剥離して撤去し、
第2の管の挿口を第1の管の受口に挿入してシール部材の内周に挿通させるものである。
【0015】
これによると、塗布した滑剤を養生部材で覆っているため、滑剤を塗布してから、管路敷設坑内において第2の管の挿口を第1の管の受口に挿入するまで長時間を要しても、滑剤の乾燥を防止することができる。さらに、滑剤にゴミ等の異物が付着するのを防止することができる。
【0017】
また、管路敷設坑の内径および管の口径が小さく、管内での接合作業スペースが大幅に制限され、作業者が管路敷設坑の内壁面と管の外周面との間のスペースに退避することができないような狭小な作業環境下であっても、管路敷設坑内において、第2の管の後方から撤去用索体を引っ張る遠隔操作を行うことにより、容易に養生部材を塗布部から剥離し撤去することができる。
【0018】
本第
2発明における管の接合方法は、養生部材はシール部材に塗布された滑剤を覆う第1の養生部材を有し、
撤去用索体は貼着部材で第1の養生部材に接続される第1の撤去用索体を有し、
管路敷設坑内において、第1の管の受口に第2の管の挿口を挿入する前に、第2の管の後方から第1の撤去用索体を引っ張って第1の養生部材を剥離し第1の管の受口内から撤去するものである。
【0019】
これによると、シール部材に塗布された滑剤の乾燥を防止することができる。また、管路敷設坑内において、第2の管の後方から第1の撤去用索体を引っ張ることにより、容易に第1の養生部材を剥離して第1の管の受口内から撤去することができる。
【0020】
本第
3発明における管の接合方法は、第1の撤去用索体を管周方向に巻いて第1の巻付部を形成し、
第1の巻付部を貼着部材で第1の養生部材に接続するものである。
これによると、第1の撤去用索体を引っ張ることにより、無理なく確実に第1の養生部材を剥離することができる。
【0021】
本第
4発明における管の接合方法は、第1の撤去用索体を貼着部材で第1の養生部材の受口奥方向側における端部に接続するものである。
これによると、第1の撤去用索体を挿口離脱方向に引っ張ることにより、第1の養生部材の受口奥方向側における端部に引張力が集中して作用するため、先ず第1の養生部材の受口奥方向側における端部が剥離し始め、やがて第1の養生部材全体がスムーズに剥離する。
【0022】
本第
5発明における管の接合方法は、養生部材は第2の管の挿口の外周に塗布された滑剤を覆う第2の養生部材を有し、
撤去用索体は貼着部材で第2の養生部材に接続される第2の撤去用索体を有し、
管路敷設坑内において、第1の管の受口に第2の管の挿口を挿入する前に、第2の管の後方から第2の撤去用索体を引っ張って第2の養生部材を剥離し第2の管の挿口から撤去するものである。
【0023】
これによると、挿口の外周に塗布された滑剤の乾燥を防止することができる。また、管路敷設坑内において、第2の管の後方から第2の撤去用索体を引っ張ることにより、容易に第2の養生部材を剥離して挿口から撤去することができる。
【0024】
本第
6発明における管の接合方法は、第2の撤去用索体を管周方向に巻いて第2の巻付部を形成し、
第2の巻付部を貼着部材で第2の養生部材に接続するものである。
これによると、第2の撤去用索体を引っ張ることにより、無理なく確実に第2の養生部材を剥離することができる。
【0025】
本第
7発明における管の接合方法は、第2の撤去用索体を、貼着部材で第2の養生部材の挿口離脱方向側における端部に接続し、挿口の開口端部から反転させて第2の管内に引き込むものである。
【0026】
これによると、第2の撤去用索体を挿口離脱方向に引っ張ることにより、第2の養生部材の挿口離脱方向側における端部に引張力が集中して作用するため、先ず第2の養生部材の挿口離脱方向側における端部が剥離し始め、やがて第2の養生部材全体がスムーズに剥離する。
【0027】
本第
8発明における管の接合方法は、養生部材はフィルムであるものである。
これによると、滑剤の塗布部を養生部材で容易に覆うことができ、その後、養生部材を塗布部から容易に剥離することができる。
【0028】
本第
9発明は、
上記請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の接合方法により管路敷設坑内で接合される管であって、
受口と挿口とを有し、
受口内周に円環状のシール部材が装着され、
シール部材と挿口の外周との少なくともいずれかに滑剤が塗布され、
滑剤を塗布した塗布部が
乾燥を防止するための養生部材で覆われ、
養生部材は、管路敷設坑内において、遠隔操作により塗布部から剥離可能であるものである。
これによると、管路敷設坑内で管同士を接合する際、滑剤が乾燥して潤滑性が損なわれてしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によると、管路敷設坑内で管を接合する際、滑剤が乾燥して潤滑性が損なわれてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における管の接合方法を用いて、管路敷設坑内に管路を敷設している図である。
【
図2】同、管路を構成する管同士を接合した管継手の構造を示す断面図である。
【
図3】同、管継手に備えられるロックリングの正面図である。
【
図4】同、管継手に備えられるロックリングの正面図であり、拡径装置を用いて拡径した状態を示す。
【
図5】同、管の接合方法を示す図であり、受口内に取り付けたシール部材に滑剤を塗布している様子を示す。
【
図6】同、管の接合方法を示す受口の断面図であり、受口内にシール部材とロックリングを取り付けた様子を示す。
【
図7】同、管の接合方法を示す受口の断面図であり、受口内に取り付けたシール部材に滑剤を塗布した状態を示す。
【
図8】同、管の接合方法を示す受口の断面図であり、受口内のシール部材に塗布した滑剤をフィルムで覆った状態を示す。
【
図9】同、管の接合方法を示す受口の断面図であり、シール部材に塗布された滑剤をフィルムで覆う際の手順を示す。
【
図10】同、管の接合方法を示す受口の断面図であり、シール部材に塗布された滑剤をフィルムで覆う際の手順を示す。
【
図11】同、管の接合方法を示す受口の断面図であり、シール部材に塗布された滑剤を覆ったフィルムにロープを貼り着けた状態を示す。
【
図12】同、管の接合方法を示す受口の斜視図であり、シール部材に塗布された滑剤を覆ったフィルムにロープを貼り着けた状態を示す。
【
図13】同、管の接合方法を示す受口の断面図であり、フィルムにロープを貼り着ける際の手順を示す。
【
図14】同、管の接合方法を示す図であり、挿口に滑剤を塗布している様子を示す。
【
図15】同、管の接合方法を示す挿口の断面図であり、挿口の外周に滑剤を塗布した状態を示す。
【
図16】同、管の接合方法を示す挿口の断面図であり、挿口に塗布された滑剤をフィルムで覆った状態を示す。
【
図17】同、管の接合方法を示す挿口の断面図であり、挿口に塗布された滑剤をフィルムで覆う際の手順を示す。
【
図18】同、管の接合方法を示す挿口の断面図であり、挿口に塗布された滑剤をフィルムで覆う際の手順を示す。
【
図19】同、管の接合方法を示す挿口の断面図であり、挿口に塗布された滑剤を覆ったフィルムにロープを貼り着けた状態を示す。
【
図20】同、管の接合方法を示す挿口の斜視図であり、挿口に塗布された滑剤を覆ったフィルムにロープを貼り着けた状態を示す。
【
図21】同、管の接合方法を示す挿口の断面図であり、フィルムにロープを貼り着ける際の手順を示す。
【
図22】同、管の接合方法を示す図であり、第2の管を、既に接合済みの第1の管の受口の手前の接合場所まで搬送した様子を示す。
【
図23】同、管の接合方法を示す受口の斜視図であり、ロープを引っ張ってフィルムを剥離させている様子を示す。
【
図24】同、管の接合方法を示す挿口の斜視図であり、ロープを引っ張ってフィルムを剥離させている様子を示す。
【
図25】同、管の接合方法を示す図であり、ロープを引っ張って、フィルムを受口の内部および挿口の外周から撤去した様子を示す。
【
図26】同、管の接合方法を示す図であり、第2の管の挿口を第1の管の受口に挿入した様子を示す。
【
図27】本発明の第2の実施の形態における管継手の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0032】
第1の実施の形態では、
図1に示すように、1は地中に形成された管路敷設坑であり、管路敷設坑1内には管路2が敷設されている。管路敷設坑1は複数のセグメント3を接続した円筒状の壁体4を有している。
【0033】
管路2は複数本の管6〜8を接合することにより構成されている。これらの管6〜8は、例えばダクタイル製のPN形管であり、一端部に受口11を有するとともに、他端部に挿口12を有している。
図2は、第1の管7の受口11に第2の管8の挿口12が挿入された管継手13の断面図である。この管継手13の構造を以下に説明する。
【0034】
受口11の内周面にはロックリング収容溝15とシール部材装着用凹部16とが全周にわたり形成されている。ロックリング収容溝15は、管軸心方向Aにおいて、シール部材装着用凹部16と受口11の開口端部17との間に位置している。
【0035】
ロックリング収容溝15には離脱防止用のロックリング19が収容されている。ロックリング19は、金属製であり、
図3に示すように一個所に切断部20を有する一つ割構造のリングである。
【0036】
図2に示すように、挿口12の外周面には係合溝22が全周にわたり形成されている。係合溝22は、管軸心方向Aにおいて対向する一対の規制面23,24と、これら両規制面23,24間に形成された溝底面25とを有している。尚、係合溝22は挿口12の外周の一部を構成している。
【0037】
ロックリング19は係合溝22の溝底面25に外側から抱き付いており、一方の規制面23が挿口離脱方向Bからロックリング19に係合することにより、挿口12が受口11から離脱するのを防止している。
また、他方の規制面24が挿口挿入方向Cからロックリング19に係合することにより、挿口12の受口11への最大挿入量が規制される。
【0038】
尚、
図4,
図11に示すように、拡径装置27を用いてロックリング19を拡径することができる。拡径装置27は、側面視においてコの字形をした拡径部材28と、拡径部材28に接続された回収用ロープ29とを有している。拡径部材28はロックリング19の切断部20に差し込まれて切断部20の幅Eを拡大する板部28aを有している。
【0039】
図4および
図11の実線に示すように、拡径部材28の板部28aを切断部20に差し込むことにより、切断部20の幅Eが拡大されて、ロックリング19が弾性変形して拡径される。また、
図11の仮想線で示すように、板部28aを切断部20から離脱させることにより、
図3に示すように、切断部20の幅Eが元の大きさに戻り、ロックリング19の直径が元の大きさに戻る。
【0040】
図2に示すように、シール部材装着用凹部16内には、受口11の内周と挿口12の外周との間をシールして水密に保つためのシール部材31が装着されている。シール部材装着用凹部16は、管軸心方向Aにおいて対向する一対の端面32,33と、これら両端面32,33間に形成された底面34と、底面34から管径方向Dにおける内側へ突出した突起35とを有している。尚、シール部材装着用凹部16は受口11の内周の一部を構成している。
【0041】
シール部材31はゴム等の弾性材でできた円環状の部材であり、シール部材31の外周には、凹部38が全周にわたって形成されている。突起35が凹部38に嵌め込まれることにより、シール部材31がシール部材装着用凹部16内に固定される。
上記は第1の管7と第2の管8の管継手13の構造であるが、管6と第1の管7の管継手および管6同士の管継手も同様の構造を有している。
以下に、上記構成における作用を説明する。
【0042】
図1に示すように、管路2を管路敷設坑1内に敷設する際には、先ず、地面に発進立坑5を掘り、シールド掘削機等を用いて発進立坑5から横方向へ管路敷設坑1を形成する。そして、順次、発進立坑5内で管6〜8を搬送台車51に載せ、バッテリー機関車等の自走車両52を用いて搬送台車51上の管6〜8を管路敷設坑1内に持ち込み、管路敷設坑1内で管6〜8同士を接合して管路2を形成する。
以下に、管路敷設坑1内で、接合済みの第1の管7に第2の管8を接合する際の接合方法を説明する。
【0043】
先ず、
図5,
図6に示すように、作業者54は、管路敷設坑1内において、第1の管7の受口11内のシール部材装着用凹部16内にシール部材31を装着し、ロックリング収容溝15にロックリング19を収容する。
【0044】
次に、
図5,
図7に示すように、作業者54は、管路敷設坑1内において、刷毛55等を用いて、滑剤53を第1の管7の受口11内のシール部材31の内周に全周にわたり塗布する。尚、滑剤53は例えばポリカルボン酸塩或いはポリアクリル酸ナトリウム等を主成分とする粘度の高い液状のものである。
【0045】
その後、
図8に示すように、作業者54は、滑剤53を塗布したシール部材31の内周の第1の塗布部56(
図7参照)を第1のフィルム57(第1の養生部材の一例)で全周にわたり覆う。この際、
図9,
図10に示すように、第1のフィルム57をその始端部57aから終端部57bにわたり管周方向(例えば反時計回りの方向F1)にほぼ一周させて第1の塗布部56を覆う。
【0046】
次に、
図11,
図12に示すように、作業者54は、テープ59(貼着部材の一例)を用いて、第1の撤去用ロープ60(第1の撤去用索体の一例)を第1のフィルム57に貼り着ける。この際、
図13に示すように、第1の撤去用ロープ60を一端部から管周方向(例えば反時計回りの方向F1)に一巻きしてリング状の第1の巻付部60aを形成しながら、テープ59を用いて、第1の巻付部60aを第1のフィルム57の受口奥方向側における端部57c(
図11,
図12参照)に貼り着ける。尚、受口奥方向とは挿口挿入方向Cと同じ方向である。また、上記のように第1の巻付部60aを第1のフィルム57に貼り付ける際には、第1の撤去用ロープ60の第1の巻付部60aの始端部60bの位置を第1のフィルム57の管周方向(例えば反時計回りの方向F1)における終端部57bの位置に合わせている。
【0047】
さらに、作業者54は、
図4,
図11の実線に示すように、拡径装置27の拡径部材28を受口11の開口端部17に嵌めるとともに、板部28aをロックリング19の切断部20に差し込んで、ロックリング19を拡径する。
その後、作業者54は第1の撤去用ロープ60と拡径装置27の回収用ロープ29とを第1の管7の受口11から手前側へ引き出しておく。
【0048】
次に、
図14,
図15に示すように、作業者54は、管路敷設坑1内から発進立坑5内に戻り、発進立坑5内において、刷毛55等を用いて、搬送台車51に載置された第2の管8の挿口12の外周に滑剤53を全周にわたり塗布する。この際、係合溝22にも滑剤53を塗布する。
【0049】
その後、
図16に示すように、作業者54は、滑剤53を塗布した挿口12の外周および係合溝22の第2の塗布部66(
図15参照)を第2のフィルム67(第2の養生部材の一例)で全周にわたり覆う。この際、
図17,
図18に示すように、第2のフィルム67をその始端部67aから終端部67bにわたり管周方向(例えば時計回りの方向F2)にほぼ一周させて第2の塗布部66を覆う。
尚、第1および第2のフィルム57,67には、例えばポリエチレン樹脂等を原料とした透明なストレッチフィルム等が用いられる。
【0050】
次に、
図19,
図20に示すように、作業者54は、テープ59を用いて、第2の撤去用ロープ69(第2の撤去用索体の一例)を第2のフィルム67に貼り着ける。この際、
図21に示すように、第2の撤去用ロープ69を一端部から管周方向(例えば時計回りの方向F2)に一巻きしてリング状の第2の巻付部69aを形成しながら、テープ59を用いて、第2の巻付部69aを第2のフィルム67の挿口離脱方向Bの側における端部67c(
図19,
図20参照)に貼り着ける。尚、上記のように第2の巻付部69aを第2のフィルム67に貼り着ける際には、
図20,
図21に示すように、第2の撤去用ロープ69の第2の巻付部69aの始端部69bの位置を第2のフィルム67の管周方向(例えば時計回りの方向F2)における終端部67bの位置に合わせている。
その後、第2の撤去用ロープ69を挿口12の開口端部39から反転させて第2の管8内に引き込む。
【0051】
次に、作業者54は、自走車両52を用いて搬送台車51を走行させ、
図22に示すように、第2の管8を発進立坑5内から管路敷設坑1内に持ち込んで第1の管7の受口11の手前側の接合場所73まで搬送する。この際、自走車両52と搬送台車51とは管路敷設坑1内に設置された走行レール74に支持案内されて走行する。
【0052】
次に、作業者54は、第2の管8の後方から第1の撤去用ロープ60を挿口離脱方向Bへ引っ張って、
図23に示すように、第1のフィルム57を、第1の管7の第1の塗布部56(すなわちシール部材31の内周)から剥離し、第1の管7の受口11内から第2の管8の後方へ撤去する。この際、第1の撤去用ロープ60は搬送台車51の側方に配置されているため、剥離した第1のフィルム57は搬送台車51の側方を通って第2の管8の後方へ撤去される(
図25参照)。
【0053】
上記のように第1のフィルム57を撤去して回収した後、作業者54は、第2の管8の後方から第2の撤去用ロープ69を挿口離脱方向Bへ引っ張って、
図24に示すように、第2のフィルム67を、第2の管8の第2の塗布部66(すなわち係合溝22を含んだ挿口12の外周)から剥離し、第2の管8の挿口12から第2の管8の後方へ撤去する。この際、第2の撤去用ロープ69は第2の管8内に引き込まれているため、剥離した第2のフィルム67は第2の管8内を通って第2の管8の後方へ撤去される(
図25参照)。
【0054】
その後、
図25に示すように、作業者54は、搬送台車51に備えられた油圧ジャッキ75を作動させて第2の管8を搬送台車51から持ち上げ、心出しを行って第2の管8の管軸心を第1の管7の管軸心に合わせる。
【0055】
そして、
図26に示すように、作業者54は、搬送台車51をゆっくりと前進させ、第2の管8の挿口12を、第1の管7の受口11に挿入し、シール部材31の内周に挿通させる。
【0056】
次に、作業者54は、第2の管8の後方から拡径装置27の回収用ロープ29を挿口離脱方向Bへ引っ張って、拡径部材28を第1の管7の受口11から取り外す(
図11の仮想線参照)。これにより、拡径部材28の板部28aがロックリング19の切断部20から離脱するため、ロックリング19の直径が元の大きさに戻り、
図2に示すようにロックリング19が第2の管8の係合溝22に嵌り込んで溝底面25に外側から抱き付く。尚、離脱した拡径部材28は、搬送台車51の側方を通って第2の管8の後方へ撤去され、作業者54によって回収される。
【0057】
その後、作業者54は、予め管6又は第1の管7内に設置しておいた小型の移動自在な水圧試験装置(図示省略)を用いて管継手13の水圧試験を行い、シール部材31からの水漏れの有無等を確認する。水漏れ等の異常が無ければ、管用の油圧ジャッキ装置(図示省略)を用いて第2の管8の受口11側の端部を持ち上げ、第2の管8の下方から搬送台車51と走行レール74の一部とを撤去する。
【0058】
そして、
図1に示すように、第2の管8の下方に管台77を設置し、管用の油圧ジャッキ装置を用いて第2の管8の受口11側の端部を管台77上に下ろす。その後、第2の管8の上方に浮力防止部材78を設置することにより、第2の管8が第1の管7に接合されて管路敷設坑1内に設置される。
上記のような管の接合方法によると、以下のような作用および効果が得られる。
【0059】
図8に示すように、第1の管7のシール部材31の内周に塗布した滑剤53を第1のフィルム57で覆うとともに、
図16に示すように、第2の管8の挿口12の外周に塗布した滑剤53を第2のフィルム67で覆っているため、滑剤53を塗布してから、
図26に示すように管路敷設坑1内において第2の管8の挿口12を第1の管7の受口11に挿入するまで長時間を要しても、滑剤53の乾燥を防止することができる。これにより、滑剤53が乾燥して潤滑性が損なわれてしまうのを防止することができる。さらに、滑剤53にゴミ等の異物が付着するのを防止することができる。
【0060】
また、管路敷設坑1の内径および管6〜8の口径が小さく、管6〜8内での接合作業スペースが大幅に制限され、作業者54が管路敷設坑1の内壁面1aと管6〜8の外周面との間のスペースに退避することができないような狭小な作業環境下であっても、管路敷設坑1内において、
図22に示すように、第2の管8の後方から第1の撤去用ロープ60を引っ張ることにより、容易に第1のフィルム57を剥離して第1の管7の受口11内から撤去することができる。また、第2の管8の後方から第2の撤去用ロープ69を引っ張ることにより、容易に第2のフィルム67を剥離して第2の管8の挿口12から撤去することができる。
【0061】
また、第1の撤去用ロープ60を第1のフィルム57に貼り着ける際、
図11,
図12に示すように、テープ59を用いて、第1の撤去用ロープ60の第1の巻付部60aを第1のフィルム57の受口奥方向(挿口挿入方向C)側における端部57cに貼り着けるとともに、
図12,
図13に示すように、第1の撤去用ロープ60の第1の巻付部60aの始端部60bの位置を第1のフィルム57の管周方向(例えば反時計回りの方向F1)における終端部57bの位置に合わせて貼り着けているため、第1の撤去用ロープ60を挿口離脱方向Bへ引っ張ることにより、第1のフィルム57の受口奥方向側における端部57cで且つ管周方向における終端部57bに引張力が集中して作用する。これにより、
図23に示すように、先ず、第1のフィルム57の受口奥方向側における端部57cで且つ管周方向における終端部57bが剥離し始め、その後、第1のフィルム57は、受口奥方向側における端部57cから反対の挿口離脱方向B側における端部57dへ向かって剥離していくとともに、管周方向における終端部57bから始端部57aへ向かって時計回りの方向F2に剥離していく。このため、第1のフィルム57をスムーズ且つ確実に剥離することができる。
【0062】
また、第2の撤去用ロープ69を第2のフィルム67に貼り着ける際、
図19,
図20に示すように、テープ59を用いて、第2の撤去用ロープ69の第2の巻付部69aを第2のフィルム67の挿口離脱方向Bの側における端部67cに貼り着けるとともに、
図20,
図21に示すように、第2の撤去用ロープ69の第2の巻付部69aの始端部69bの位置を第2のフィルム67の管周方向(例えば時計回りの方向F2)における終端部67bの位置に合わせて貼り着けているため、第2の撤去用ロープ69を挿口離脱方向Bへ引っ張ることにより、第2のフィルム67の挿口離脱方向Bの側における端部67cで且つ管周方向における終端部67bに引張力が集中して作用する。これにより、
図24に示すように、先ず、第2のフィルム67の挿口離脱方向Bの側における端部67cで且つ管周方向における終端部67bが剥離し始め、第2のフィルム67は、挿口離脱方向Bの側における端部67cから反対の挿口挿入方向Cの側における端部67dへ向かって剥離していくとともに、管周方向における終端部67bから始端部67aへ向かって反時計回りの方向F1に剥離していく。このため、第2のフィルム67をスムーズ且つ確実に剥離することができる。
【0063】
また、第1および第2のフィルム57,67に透明なストレッチフィルム等を用いているため、フィルム57,67を通して滑剤53の状態を目視で確認することができる。
【0064】
上記実施の形態では、
図5に示すように、作業者54は、先ず、管路敷設坑1内において第1の管7の受口11内のシール部材31の内周に滑剤53を塗布し、その後、
図14に示すように、発進立坑5内において第2の管8の挿口12の外周に滑剤53を塗布しているが、逆の手順すなわち、先ず、
図14に示すように、発進立坑5内において第2の管8の挿口12の外周に滑剤53を塗布し、その後、
図5に示すように、管路敷設坑1内において第1の管7の受口11内のシール部材31の内周に滑剤53を塗布してもよい。或いは、複数の作業者のうちのいずれかの作業者が管路敷設坑1内において第1の管7の受口11内のシール部材31の内周に滑剤53を塗布し、これと並行して、残りの作業者が発進立坑5内において第2の管8の挿口12の外周に滑剤53を塗布してもよい。
【0065】
上記実施の形態では、
図7,
図15に示すように、第1の管7内のシール部材31と第2の管8の挿口12との両者に滑剤53を塗布しているが、いずれか片方のみに滑剤53を塗布してもよい。
【0066】
上記実施の形態では、
図7に示すように、第1の管7の受口11内のシール部材31の内周に滑剤53を塗布しているが、シール部材31の内周に加えて、シール部材31の近傍における受口11の内周にも滑剤53を塗布してもよい。
【0067】
上記実施の形態では、
図15に示すように、第2の管8の挿口12の外周と係合溝22とに滑剤53を塗布しているが、滑剤53を、係合溝22に塗布せず、挿口12の外周のみに塗布してもよい。
【0068】
上記実施の形態では、先ず、
図23に示すように、第1の撤去用ロープ60を引っ張って、第1のフィルム57を第1の管7の受口11から撤去し、次に、
図24に示すように、第2の撤去用ロープ69を引っ張って、第2のフィルム67を第2の管8の挿口12から撤去しているが、第2のフィルム67を先に撤去し、その後、第1のフィルム57を撤去してもよい。又は、第1のフィルム57と第2のフィルム67を同時に撤去してもよい。
(第2の実施の形態)
【0069】
上記第1の実施の形態では、
図2に示すように、受口11のロックリング収容溝15にはロックリング19のみが収容され、シール部材装着用凹部16にはシール部材31のみが装着されているが、第2の実施の形態では、
図27に示すように、ロックリング収容溝15には、ロックリング19と、ロックリング19を管径方向Dにおける内向きに付勢する円弧状の板ばね101とが収容されている。また、シール部材装着用凹部16には、シール部材31と、複数のボルト102によってシール部材31を押圧する押輪103とが装着されている。
【0070】
これによると、上記第1の実施の形態と同様な接合方法で、第1の管7に第2の管8を接合することができ、上記第1の実施の形態と同様な作用および効果が得られる。
【解決手段】管路敷設坑内で接合済みの第1の管7に第2の管を接合する管の接合方法であって、第1の管7の受口11の内周に円環状のシール部材31を装着し、シール部材31と第2の管の挿口の外周との少なくともいずれかに滑剤53を塗布し、滑剤53を塗布した塗布部56を養生部材57で覆い、管路敷設坑内において、第1の管7の受口11に第2の管の挿口を挿入する前に、養生部材57を塗布部56から剥離して撤去し、第2の管の挿口を第1の管7の受口11に挿入してシール部材31の内周に挿通させる。