(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤ付ホイールの試験装置に用いられ、横になったタイヤ付ホイールを支持する支持装置であって、タイヤ付ホイールを径方向内側から保持する内側保持機構と、タイヤ付ホイールを下側から保持する下側保持機構とを含み、
前記内側保持機構は、
それぞれに外径が異なってタイヤ付ホイールのハブ穴に下側から嵌る3つ以上の円筒部が上側へ向けて次第に小径になるように上下方向に並んで設けられたコレットであって、これらの前記円筒部の中心を通って上側へ向けて小径になるテーパー状の貫通穴と、前記円筒部の周方向に並ぶ複数の割溝とが形成されたコレットと、
上側へ向けて小径になるテーパー状の外周面を有し、前記貫通穴に対して下側から挿通された挿通軸と、
前記コレットを前記挿通軸に対して上下方向に相対移動させるアクチュエータとを含み、
前記下側保持機構は、
いずれかの前記円筒部がハブ穴に嵌った状態におけるタイヤ付ホイールを下側から支える支持部と、
前記支持部を伴って昇降可能なピストンであって、下面にエアが供給されるピストンと、
前記ピストンを下向きに付勢する付勢部材と、
前記ピストンの昇降範囲における途中位置と同じ高さ位置に設けられた進退部であって、平面視において前記ピストンと重なる進出位置と、平面視において前記ピストンから外れる退避位置との間で進退可能な進退部とを含む、タイヤ付ホイールの支持装置。
請求項1に記載の支持装置と、上下方向に延びる回転軸線まわりに回転可能であって上端部に前記支持装置が設けられたスピンドルとを含む、タイヤ付ホイールの試験装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、この発明の実施形態について詳細に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る試験装置1の全体図である。
図1の上下方向は、試験装置1の上下方向である。
図1の左右方向を試験装置1の横方向といい、横方向は、水平方向に含まれる。試験装置1は、タイヤ2が装着されたホイール3(タイヤ付ホイール4という)のユニフォーミテイ試験や動釣合い試験を行うための装置である。試験装置1は、ユニフォーミテイ試験の際にタイヤ付ホイール4に横から接地荷重を与える負荷装置(図示せず)と、タイヤ付ホイール4のユニフォーミテイや動不釣合いを測定する計測装置6とを含む。
【0012】
計測装置6は、横になって水平に寝た状態のタイヤ付ホイール4を支持する支持装置29と、上下に延びるスピンドル30とを含む。支持装置29は、スピンドル30の上端部30Aに固定されている。スピンドル30において上端部30Aよりも下側の部分には、プーリ34が固定されている。
【0013】
計測装置6は、マシンベース10に固定された基台35と、基台35の上端部に固定され、スピンドル30を振動可能に保持する保持フレーム36と、マシンベース10に固定された駆動装置37とをさらに含む。駆動装置37は、モータ38を含み、モータ38において駆動装置37から上側へ突出した出力軸39にはプーリ40が固定されていて、プーリ40とスピンドル30のプーリ34とは、ベルト41によって連結されている。モータ38が駆動されて出力軸39が回転すると、出力軸39の回転がベルト41を介してスピンドル30に伝達されるので、スピンドル30が、上下方向に延びる回転軸線Jまわりに駆動回転される。これにより、支持装置29によってスピンドル30に固定されたタイヤ付ホイール4は、支持装置29およびスピンドル30と一体となって、所定の回転速度で回転する。
【0014】
動釣合い試験を行う場合には、タイヤ付ホイール4が、モータ38によって所定速度で駆動回転される。この状態におけるタイヤ付ホイール4の振動が計測装置6に検出されることによって、動釣合い試験が実施される。
【0015】
次に、支持装置29について詳しく説明する。
図2は、支持装置29の全体の縦断面図である。なお、支持装置29を構成する複数の部品のうち、各図において黒く塗り潰して図示されたシール部材以外の部品は、全て金属製である。支持装置29は、その筐体をなすシリンダ50およびハウジング51と、タイヤ付ホイール4を下側から保持する下側保持機構52と、タイヤ付ホイール4を径方向内側から保持する内側保持機構53とを含む。
【0016】
シリンダ50は、ボルトB1によってスピンドル30の上端部30Aに上から固定された円板状の底壁50Aと、ボルトB2によって底壁50Aに上から固定された円筒状の下周壁50Bと、ボルトB3によって下周壁50Bに上から固定された円筒状の上周壁50Cとを含む。シリンダ50は、下周壁50Bの上下方向における途中に一体的に設けられた円板状の下仕切壁50Dと、上周壁50Cの上下方向における途中に一体的に設けられた円板状の上仕切壁50Eとをさらに含む。底壁50A、下周壁50B、上周壁50C、下仕切壁50Dおよび上仕切壁50Eは、スピンドル30の回転軸線Jと同軸状に配置されている。シリンダ50の内部空間は、底壁50Aと下仕切壁50Dとの間の下空間S1と、下仕切壁50Dと上仕切壁50Eとの間の中空間S2と、上仕切壁50Eによって下から塞がれた上空間S3とに仕切られている。下空間S1には、底壁50Aの上面から下周壁50Bの内周面に沿って上側へ突出した円環状の内周壁50Fが設けられている。内周壁50Fの上端は、高さ方向における下空間S1の略中央に配置されている。
【0017】
ハウジング51は、回転軸線Jと同軸状に配置された円筒状の外周壁51Aと、外周壁51Aの上端から回転軸線J側つまり径方向内側へ張り出した円環状の天壁51Bと、天壁51Bの内周縁から下側へ延びる円筒状の内周壁51Cと、内周壁51Cの上下方向における途中から径方向内側へ張り出した円環状のフランジ部51Dとを一体的に有する。ハウジング51は、シリンダ50の上側に配置されている。外周壁51Aの下端部は、径方向外側へ張り出したフランジ状に形成され、ボルトB4によってシリンダ50の上周壁50Cに上から固定されている。これにより、上周壁50C内の上空間S3は、ハウジング51によって上から塞がれている。
【0018】
下側保持機構52は、ピストン61と、付勢部材63と、ガイドロッド64と、スペーサー65と、支持部66と、ストッパユニット55とを含む。ピストン61は、シリンダ50の内周壁50Fの内径とほぼ同じ外径を有する円板状の本体部61Aと、本体部61Aの外周縁から上側へ突出した円筒状の上突出部61Bと、本体部61Aの外周縁から下側へ突出した円環状の下突出部61Cとを一体的に有する。ピストン61は、下空間S1において昇降可能である。ピストン61は、上突出部61Bにおいて径方向外側へ張り出したフランジ状の上端部が内周壁50Fの上から接触するときの下限位置(
図2参照)と、当該上端部がシリンダ50の下仕切壁50Dに下から接触するときの上限位置(図示せず)との間の昇降範囲Xにおいて昇降する。ピストン61には、本体部61Aを上下に貫通した中心穴61Dと、中心穴61Dを縁取りつつピストン61から上下に突出した円環状の突出部61Eとが設けられている。
【0019】
付勢部材63は、上下に伸縮自在なコイルばねであり、複数存在し、下空間S1において周方向に等間隔で並んでいる。各付勢部材63では、下端部が、ピストン61の本体部61Aの上面に形成された凹部61Fに上側から嵌まり込み、上端部が、シリンダ50の下仕切壁50Dの下面に形成された凹部50Gに下側から嵌まり込んでいる。これにより、各付勢部材63は、ピストン61と下仕切壁50Dとの間で圧縮されていて、ピストン61を下限位置へ向けて下向きに付勢している。なお、
図2では、各付勢部材63における上下方向の途中部分の図示が省略されている(後述する弾性部材75においても同様)。
【0020】
ガイドロッド64は、上下に延びる円柱状に形成され、複数存在し、周方向で等間隔に並んでいる。各ガイドロッド64の下端部は、下空間S1に配置され、ボルトB5によってピストン61の本体部61Aに固定されている。各ガイドロッド64は、上側へ向けて、シリンダ50の下仕切壁50Dおよび上仕切壁50Eを貫通し、ハウジング51の外周壁51Aと内周壁51Cとの間を通って天壁51Bを貫通している。各ガイドロッド64の上端部は、天壁51Bよりも上側にはみ出している。
【0021】
スペーサー65および支持部66は、回転軸線Jまわりの周方向に延びる円環状に形成されている。スペーサー65は、天壁51Bよりも上側に配置され、ボルトB6によって各ガイドロッド64の上端部に上側から固定されている。支持部66は、スペーサー65上に載せられて、ボルトB7によってスペーサー65に固定されている。ガイドロッド64を介してピストン61に連結されたスペーサー65および支持部66は、ピストン61に伴われて昇降する。
【0022】
ストッパユニット55は、単数または複数存在し、この実施形態では、3つのストッパユニット55が、周方向に並んだ状態で、シリンダ50の下周壁50Bに取り付けられている。下周壁50Bにおいてストッパユニット55が設けられた部分には、下周壁50Bを径方向に貫通した円筒状の貫通穴50Hが形成されている。貫通穴50Hにおいて下周壁50Bの内周面から下空間S1に露出された内領域50Iは、貫通穴50Hにおいて下周壁50Bの外周面から露出された外領域50Jよりも小径であり、貫通穴50Hは、内領域50Iと外領域50Jとの境界において一段縮径されている。ストッパユニット55は、進退部56と、ホルダ57と、カバー58と、付勢部材59とを含む。
【0023】
進退部56は、貫通穴50Hに挿入されたピンである。進退部56において、貫通穴50Hの内領域50Iに配置された円柱状の先端部56Aの外径は、外領域50Jに配置された円筒状の根元部56Bの外径よりも小さい。先端部56Aは、ピストン61の昇降範囲Xにおける途中位置と同じ高さ位置に設けられている。
図2に示す進退部56は進出位置にあり、先端部56Aは、下空間S1内に突出しており、ピストン61の上突出部61Bの上端部と平面視において重なっている。
【0024】
ホルダ57は、円筒状に形成され、根元部56Bを取り囲んだ状態で外領域50Jに配置されている。ホルダ57において回転軸線Jから離れた径方向外側の端部は、フランジ状に形成され、ボルトB8によってシリンダ50の下周壁50Bに固定されている。カバー58は、キャップ状に形成され、進退部56およびホルダ57を径方向外側から覆った状態で、ボルトB9によってホルダ57に固定されている。付勢部材59は、径方向に伸縮自在なコイルばねである。付勢部材59では、径方向内側の部分が、進退部56の根元部56B内に嵌まり込み、径方向外側の部分が、カバー58において径方向外側から進退部56に対向した対向面における凹部58A(後述する
図5参照)に嵌まり込んでいる。これにより、付勢部材59は、進退部56とカバー58との間で圧縮されていて、進退部56を径方向内側の進出位置へ向けて付勢している。ホルダ57は、進退部56を径方向へスライド可能に支持している。
【0025】
内側保持機構53は、アクチュエータ70と、挿通軸71と、コレット72とを含む。アクチュエータ70は、メインピストン73と、サブピストン74と、弾性部材75と、ディスタンスパイプ76とを含む。メインピストン73は、シリンダ50の上周壁50Cの内径とほぼ同じ外径を有する円板状に形成されており、シリンダ50内の上空間S3において昇降可能である。メインピストン73には、メインピストン73を上下に貫通した中心穴73Aが設けられている。
【0026】
サブピストン74は、上周壁50Cの内径とほぼ同じ外径を有する円板状の本体部74Aと、本体部74Aの上面の中心から上側へ突出した円柱状の上突出部74Bと、本体部74Aの下面の中心から下側へ突出した円管状の下突出部74Cとを一体的に有する。本体部74Aは、シリンダ50内の中空間S2に配置されている。上突出部74Bは、上周壁50Cの上仕切壁50Eを貫通して、メインピストン73の中心穴73Aに下から挿通され、ナットNによってメインピストン73に固定されている。これにより、メインピストン73およびサブピストン74は、一体となって昇降可能である。下突出部74Cは、シリンダ50の下仕切壁50Dを貫通して、ピストン61の中心穴61Dに上から挿通されている。なお、前述したガイドロッド64は、メインピストン73およびサブピストン74を貫通しており、これらのピストンに対して上下に相対移動可能である。
【0027】
下突出部74Cに関連して、支持装置29は、シリンダ50の下空間S1に配置された流路部材77を含む。流路部材77は、シリンダ50の底壁50A上に同軸状で配置されてボルトB10によって底壁50Aに固定された円板状のベース部77Aと、ベース部77Aの中心から上側へ突出して下突出部74C内に下から挿通された円管状の挿通部77Bとを一体的に含む。支持装置29には、底壁50Aを上下に貫通してからベース部77A内を斜め上側へ延びて下空間S1に下側からつながった第1流路R1と、底壁50Aを上下に貫通してからベース部77A内を斜め上側へ延びて挿通部77B内および下突出部74C内を順に通ってから折れ曲がって中空間S2の下領域につながった第2流路R2とが設けられている。第2流路R2は、中空間S2よりも高い位置で折れ曲がって上空間S3の下領域にもつながっている。支持装置29には、シリンダ50の下周壁50B内で上下に延びて貫通穴50Hの外領域50Jに下側からつながった第3流路R3が設けられている。なお、第1流路R1、第2流路R2および第3流路R3の配置は任意に変更でき、例えば、第1流路R1や第2流路R2が第3流路R3と同様にシリンダ50の周壁に設けられてもよい。
【0028】
第1流路R1、第2流路R2および第3流路R3に関連して、試験装置1のスピンドル30の下端部には、エアホース(図示せず)に接続されたロータリージョイント78が設けられている(
図1参照)。ロータリージョイント78は、試験装置1に設けられた制御部(図示せず)の制御に応じてエア(圧縮空気)を供給したり、エアの供給を停止したりするエア供給部である。スピンドル30には、ロータリージョイント78から上側に延びて第1流路R1、第2流路R2および第3流路R3にそれぞれ接続された第1流路30B、第2流路30Cおよび第3流路30Dが設けられている。なお、第1流路30B、第2流路30Cおよび第3流路30Dの配置は任意に変更でき、例えば、第3流路30Dが第1流路30Bや第2流路30Cと同様にスピンドル30内に設けられてもよい。
【0029】
ロータリージョイント78からのエアが第1流路30BおよびR1を通って下空間S1に下側から送り込まれると、下空間S1においてピストン61よりも下側の領域の圧力が上昇し、ピストン61は、付勢部材63の付勢力に抗して上昇する。第1流路30BおよびR1へのエアの供給が停止すると、ピストン61は、付勢部材63の付勢力によって元の下限位置まで下降する。
【0030】
弾性部材75は、上下に伸縮自在なコイルばねであり、複数存在し、ハウジング51における外周壁51Aと内周壁51Cとの間において周方向に等間隔で並んでいる。弾性部材75は、周方向でガイドロッド64と同じ位置に1つずつ配置されて、対応するガイドロッド64を取り囲んでいる。各弾性部材75では、下端部が、メインピストン73の上面の凹部73Bに上側から嵌まり込み、上端部が、ハウジング51の天壁51Bに下側から接触している。これにより、各弾性部材75は、メインピストン73と天壁51Bとの間で圧縮されていて、メインピストン73を下向きに付勢している。
【0031】
ロータリージョイント78からのエアが第2流路30CおよびR2を通って中空間S2および上空間S3に下側から送り込まれると、中空間S2においてサブピストン74よりも下側の領域の圧力が上昇し、上空間S3においてメインピストン73よりも下側の領域の圧力が上昇する。これにより、メインピストン73およびサブピストン74は、弾性部材75の付勢力に抗して上昇する。第2流路30CおよびR2へのエアの供給が停止すると、メインピストン73およびサブピストン74は、弾性部材75の付勢力によって元の位置(それぞれの下限位置)まで下降する。シリンダ50には、サブピストン74の上昇の際に中空間S2内においてサブピストン74よりも上側の領域のエアを機外に逃がしたり、サブピストン74の下降の際に機外のエアを当該領域に取り込んだりするための通気穴50Kが形成されている。
【0032】
ロータリージョイント78からのエアが第3流路30DおよびR3を通ってシリンダ50の貫通穴50Hの外領域50Jに送り込まれると、外領域50Jにおいて進退部56の根元部56Bよりも径方向内側の領域の圧力が上昇する。これにより、今まで進出位置にあった進退部56は、付勢部材59の付勢力に抗して径方向外側の退避位置(図示せず)まで退避する。退避位置にある進退部56では、先端部56Aが、下空間S1の外に位置しており、平面視においてピストン61から外れている。第3流路30DおよびR3へのエアの供給が停止すると、進退部56は、付勢部材59の付勢力によって進出位置まで進出する。
【0033】
ディスタンスパイプ76は、メインピストン73から上側へ延びる管状であり、複数存在し、ハウジング51の内周壁51Cよりも内側において周方向に等間隔で並んでいる。
【0034】
挿通軸71は、上下に延びる円錐台形状に形成されていて、その外周面71Aは、上側へ向けて小径になるテーパー状に形成されている。挿通軸71の下部は、ハウジング51の内周壁51Cの内側において回転軸線Jと同軸状に配置されている。挿通軸71の上部は、スペーサー65の中心穴65Aおよび支持部66の中心穴66Aを通って支持部66よりも上側に突出している。挿通軸71の下端部は、径方向外側へ張り出したフランジ状に形成され、ボルトB11によってハウジング51のフランジ部51Dに上から固定されている。
【0035】
コレット72は、円筒状の全体形状を有する。具体的に、コレット72は、略下半分をなす円筒状の基部72Aと、コレット72の略上半分として基部72Aと同軸状に配置されて、それぞれに外径が異なる3つ以上の円筒部72Bとを一体的に含む。基部72Aの下端部72Cは、径方向外側へ張り出したフランジ状に形成されている。円筒部72Bの数は、この実施形態では3つであるが、4つ以上であってもよい。この実施形態における3つの円筒部72Bは、基部72Aに上側から連なった第1円筒部72Dと、第1円筒部72Dに上側から連なった第2円筒部72Eと、第2円筒部72Eに上側から連なった第3円筒部72Fとを含む。第1円筒部72Dの外周面は、基部72A、第2円筒部72Eおよび第3円筒部72Fのそれぞれの外周面よりも大径である。これら3つの円筒部72Bは、上側へ向けて次第に小径になるように、つまり、小径のものが上側に位置するように、上下方向に並んでいる。各円筒部72Bの外径は、タイヤ付ホイール4の中心に形成されたハブ穴4Aの代表的な内径に合うように設定される。また、円筒部72Bが円滑にハブ穴4Aに嵌まることができるように、各円筒部72Bの外周面の上端部には、面取りMが形成されている(
図4参照)。
【0036】
コレット72には、コレット72を上下方向に貫通する貫通穴72Gと、上下方向に延びる複数の割溝72Hとが形成されている。貫通穴72Gは、基部72Aおよび各円筒部72Bのそれぞれの中心を通っていて、上側へ向けて小径になるテーパー状に形成されている。割溝72Hは、スリットであり、この実施形態では12本存在する(
図3参照)。12本のうち、6本の割溝72Hは、コレット72の周方向つまり各円筒部72Bの周方向に等間隔で並んでいて、コレット72の上端から下端の手前まで延びてコレット72を径方向に切断した上割溝72HAである(
図4参照)。残りの6本の割溝72Hは、コレット72の周方向に等間隔で並んでいて、コレット72の下端から上端の手前まで延びてコレット72を径方向に切断した下割溝72HBである(
図4参照)。上割溝72HAと下割溝72HBとは、周方向において交互に並んでいる(
図3参照)。各割溝72Hが狭まることによって、コレット72全体が縮径し、各割溝72Hが広がることによって、コレット72全体が拡径する。
【0037】
コレット72の貫通穴72Gには、ハウジング51に固定された挿通軸71が下側から挿通されていて、この状態におけるコレット72は、回転軸線Jと同軸状に配置されている。コレット72では、基部72Aが、スペーサー65の中心穴65Aおよび支持部66の中心穴66Aの内側に配置されており、円筒部72Bが支持部66よりも上側にはみ出している。支持部66には、コレット72を回転軸線Jまわりに回転しないように位置決めする爪状の回り止め79が、ボルトB12によって取り付けられている。
【0038】
コレット72の基部72Aの下端部72Cには、円環状のリング部材80が上側から係合している。コレット72をリング部材80に対して回転軸線Jまわりに相対回転させることによって、下端部72Cをリング部材80から外して、サイズ違いの別のコレット72に交換することができる。前述した各ディスタンスパイプ76とメインピストン73とリング部材80とは、メインピストン73およびリング部材80のそれぞれに組み付けられて各ディスタンスパイプ76の内側を通るボルトB13によって、一体化されている。そのため、リング部材80と各ディスタンスパイプ76とは、メインピストン73に伴われて昇降する。
【0039】
内側保持機構53が待機状態にある場合には、第2流路R2からシリンダ50の中空間S2および上空間S3にエア(
図2の太い破線矢印参照)が供給されているので、メインピストン73およびサブピストン74がそれぞれの上限位置にあって、コレット72全体が縮径した状態にある。一方、
図2に示す状態では、第1流路R1からシリンダ50の下空間S1にエアが供給されていないので、下空間S1において、ピストン61が下限位置にある。この状態における支持部66は、コレット72における第1円筒部72Dよりも下側にずれた下限位置にあって、支持部66の上面は、第1円筒部72Dの下面とほぼ同じ高さ位置にある。ピストン61では、上突出部61Bの上端部がシリンダ50の内周壁50Fに上から接触し、かつ、下突出部61Cがシリンダ50の底壁50Aに上から接触しているので、ピストン61が下限位置からさらに下降しないよう位置決めされている。
【0040】
ユニフォーミテイ試験や動釣合い試験が実施される場合には、その準備として、横になったタイヤ付ホイール4が内側保持機構53に対して上側からセットされる。
図2のタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aの内径が、縮径状態のコレット72における第1円筒部72Dの外径とほぼ同じであり、詳しくは、第1円筒部72Dの外径よりも僅かに大きい。第1円筒部72Dは、セットされたタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに下側から嵌り、タイヤ付ホイール4においてハブ穴4Aを取り囲んだ内周部4Bは、下限位置にある支持部66の上面に載ることによって支持部66によって下側から支えられる。
図2のタイヤ付ホイール4は、内側保持機構53による保持がまだのアンチャック状態にある。
【0041】
次に、中空間S2および上空間S3へのエアの供給が停止されると、メインピストン73およびサブピストン74は、弾性部材75の付勢力によって下降する。すると、コレット72の基部72Aの下端部72Cに上側から係合したリング部材80が、これらのピストンとともに下降しながら、コレット72を引き下げる。これにより、コレット72が、挿通軸71のテーパー状の外周面71Aに対して下側へ相対移動するので、コレット72の各割溝72Hが広がることによってコレット72が拡径する。そのため、コレット72の第1円筒部72Dは、タイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに下側から嵌った状態を維持しつつ若干下降しながら拡径し、最終的にハブ穴4Aに対して強く圧入された状態になる。そのため、タイヤ付ホイール4は、内側保持機構53によって保持されたチャック状態になる。
【0042】
チャック状態において中空間S2および上空間S3に空気が供給されると、メインピストン73およびサブピストン74が、弾性部材75の付勢力に抗して、リング部材80を伴って上位置まで上昇する。これにより、リング部材80がコレット72を引き下げなくなるので、コレット72が元の形状まで自然に縮径しながら浮き上がることによって挿通軸71に対して上側へ相対移動する。これにより、ハブ穴4Aに対する第1円筒部72Dの圧入状態が解除されるので、タイヤ付ホイール4はアンチャック状態になる。
【0043】
先ほどの大サイズのタイヤ付ホイール4よりもハブ穴4Aの内径が小さい中サイズのタイヤ付ホイール4についてユニフォーミテイ試験や動釣合い試験が実施される場合には、待機状態の内側保持機構53を維持しつつ、進退部56が進出位置にある状態で、エア(
図5の太い破線矢印参照)が第1流路R1からシリンダ50の下空間S1に供給される。これにより、下空間S1において下面61Gにエアが供給されたピストン61が支持部66を伴って上昇する。ピストン61は、
図5に示す途中位置まで上昇すると、進出位置にある進退部56の先端部56Aに下から接触することによって、途中位置で停止する。この状態における支持部66は、コレット72における第2円筒部72Eよりも下側にずれた途中位置にあって、支持部66の上面は、第2円筒部72Eよりも下側の第1円筒部72Dの上面とほぼ同じ高さ位置にある。
【0044】
次に、前述した中サイズのタイヤ付ホイール4が内側保持機構53に対して上側からセットされる。セットされたタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aの内径は、縮径状態にあるコレット72における第2円筒部72Eの外径とほぼ同じであり、詳しくは、第2円筒部72Eの外径よりも僅かに大きい。第2円筒部72Eは、セットされたタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに下側から嵌り、このタイヤ付ホイール4の内周部4Bは、途中位置にある支持部66の上面に載ることによって支持部66によって下側から支えられる。
図5のタイヤ付ホイール4は、アンチャック状態にある。前述したように中空間S2および上空間S3へのエアの供給が停止されると、タイヤ付ホイール4は、チャック状態になる。
【0045】
先ほどの中サイズのタイヤ付ホイール4よりもハブ穴4Aの内径が小さい小サイズのタイヤ付ホイール4についてユニフォーミテイ試験や動釣合い試験が実施される場合には、待機状態の内側保持機構53を維持しつつ、第1流路R1にエアが供給された状態で、第3流路R3にもエア(
図5の太い1点鎖線の矢印参照)が供給される。これにより、進退部56が退避位置まで退避してピストン61に接触しなくなるので、今まで途中位置にあったピストン61は、
図6に示すように上限位置まで上昇して停止する。この状態における支持部66は、コレット72における第3円筒部72Fよりも下側にずれた上限位置にあって、支持部66の上面は、第3円筒部72Fよりも下側の第2円筒部72Eの上面とほぼ同じ高さ位置にある。ピストン61が上限位置まで上昇したことに応じて、第3流路R3へのエアの供給が停止されて進退部56が進出位置まで戻ってもよい。その場合、進出位置にある進退部56の先端部56Aの上側部分は、ピストン61の上突出部61Bの上端部に設けられた溝61Hに対して遊びを持って嵌り込む。そのため、進出位置にある進退部56が、上限位置にあるピストン61に接触していない。
【0046】
次に、前述した小サイズのタイヤ付ホイール4が内側保持機構53に対して上側からセットされる。セットされたタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aの内径は、縮径状態にあるコレット72における第3円筒部72Fの外径とほぼ同じであり、詳しくは、第3円筒部72Fの外径よりも僅かに大きい。第3円筒部72Fは、セットされたタイヤ付ホイール4のハブ穴4Aに下側から嵌り、このタイヤ付ホイール4の内周部4Bは、上限位置にある支持部66の上面に載ることによって支持部66によって下側から支えられる。
図6のタイヤ付ホイール4は、アンチャック状態にある。前述したように中空間S2および上空間S3へのエアの供給が停止されると、タイヤ付ホイール4は、チャック状態になる。なお、試験後にタイヤ付ホイール4を取り外した状態で、進退部56を退避位置にまで退避させてから第1流路R1へのエアの供給を停止すると、付勢部材63の付勢力により、ピストン61および支持部66は、それぞれの下限位置まで下降する。
【0047】
以上のように、支持装置29の内側保持機構53では、3つの円筒部72Bを有するコレット72を用いたコレットチャック方式によって、ハブ穴4Aの内径が異なる3種類のタイヤ付ホイール4のそれぞれを径方向内側から強力に保持できる。そのため、試験の際において回転時または停止時のタイヤ付ホイール4が内側保持機構53に対して回転方向に滑ることを防止できる。特に、付勢力の強い弾性部材75によってメインピストン73およびサブピストン74を下げてコレット72の円筒部72Bをハブ穴4Aに対して強く圧入できるので、試験の際、タイヤ付ホイール4の回転数が一定値まで短時間で到達することができる。このような弾性部材75を用いてもタイヤ付ホイール4をアンチャック状態にすることができるように、アクチュエータ70では、メインピストン73に加えてサブピストン74も用いられている。
【0048】
この場合には、当該3種類のタイヤ付ホイール4では、ハブ穴4Aに嵌る円筒部72Bの高さ位置に応じて、支持装置29における高さ方向の搭載位置が異なるが、前述したようにピストン61が下限位置と途中位置と上限位置とに高さ位置を変更できる。これにより、ピストン61とともに昇降する支持部66は、タイヤ付ホイール4の種類毎の搭載位置に応じて高さ位置を3段階に変更することによって、3種類のタイヤ付ホイール4のそれぞれを下側から支えることができる。
【0049】
コレット72が4つ以上の円筒部72Bを有し、これに応じて進退部56(ストッパユニット55)が高さ方向に並んで複数設けられることによって、ピストン61の前記途中位置には、高さ位置の異なる複数の途中位置が存在してもよい。この場合、内側保持機構53は、ハブ穴4Aの内径が異なる4種類以上のタイヤ付ホイール4のそれぞれを径方向内側から強力に保持できる。そして、ピストン61が下限位置と1箇所以上の途中位置と上限位置とに高さ位置を変更できるので、ピストン61とともに昇降する支持部66は、タイヤ付ホイール4の種類毎の搭載位置に応じて高さ位置を4段階以上に変更することによって、4種類以上のタイヤ付ホイール4のそれぞれを下側から支えることができる。
【0050】
以上の結果、支持装置29では、3種類または4種類以上のタイヤ付ホイール4に対応でき、これらのタイヤ付ホイール4であればコレット72を交換しなくても済むので、タイヤ付ホイール4の段取り換えに要する作業時間の短縮を図れる。
【0051】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、前述した実施形態では、試験装置1は、ユニフォーミテイ試験および動釣合い試験の両方を行う複合試験装置であるが、ユニフォーミテイ試験および動釣合い試験の少なくとも一方を行えればよい。
【0053】
また、前述した実施形態では、内側保持機構53において、挿通軸71が固定されてコレット72自体が上下方向に移動可能であったが、コレット72が上下方向において固定されていて挿通軸71がメインピストン73とともに上下方向に移動可能であってもよい。この場合においても、コレット72は、挿通軸71に対して上下方向に相対移動しながら拡径したり縮径したりする。なお、コレット72を挿通軸71に対して相対移動させるアクチュエータ70は、前述したようにエアを用いた構成に限らず、例えばモータの駆動力を用いた構成であってもよい。