(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る制動装置、及び、それを用いた日射遮蔽装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<第1の観点>
ここで、本発明の第1の観点に係る制動装置は、ケース内に保持されたウェイトを公転させることによって摺動抵抗を発生させる制動装置であって、前記ウェイトを保持するウェイトホルダと、前記ウェイトホルダを載置するベースと、を備え、前記ウェイトと前記ベースの接触面又は前記ウェイトホルダと前記ベースの接触面の少なくとも一部に突起が設けられる、制動装置である。これにより、ウェイトとベース間、又はウェイトを保持するウェイトホルダとベース間の接触抵抗を低減することができる。
【0012】
<第2の観点>
また、本発明の第2の観点に係る遮蔽装置は、コードの移動を制動する制動装置であって、ケースと、前記ケースに内包され且つ前記コードの移動に伴い鉛直方向の物理的又は仮想的回転軸を中心に回転する回転部材と、を備え、前記ケースの内部に、前記回転部材との接触抵抗を低減する抵抗低減部が設けられる、制動装置である。これにより、回転部材とケース間の摩擦抵抗を低減することができる。
【0013】
1.第1実施形態:第1及び第2の観点
1−1<全体構成>
図面を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示される遮蔽装置100Aは、中空のヘッドボックス130から複数本のラダーコード123を介して複数段の日射遮蔽部材101が吊下支持され、同ラダーコード123の下端にはボトムレール122が吊下支持されている。ヘッドボックス130は、上面131、底面132、側面133により構成される。そして、その両端にボックスキャップ134が設けられる。また、ヘッドボックス130の内部には、操作棒108内にコードCDを挿通するためのコード出口135が設けられる。ラダーコード123は、日射遮蔽部材101を支持及び回動可能なものであればその構成は限定されず、例えば、互いに分離された2本の縦糸を備え、一方の縦糸がスラットの一方の縁に取着され、他方の縦糸がスラットの他方の縁に取着されるような構成であってもよい。
【0014】
ヘッドボックス130内には支持部材(図示せず)が複数個配設され、その支持部材にはチルトドラム(図示せず)が回転可能に支持される。ラダーコード123の上端部は、チルトドラムに取着され、そのチルトドラムの中心部にはシャフト124(軸部材)が全てのチルトドラムに嵌挿されている。従って、シャフト124が回転されると、全てのチルトドラムが回転され、そのチルトドラムの回転にともなって、ラダーコード123の縦糸の一方が引き上げられることにより、各日射遮蔽部材101及びボトムレール122が同位相で角度調節される。
【0015】
ヘッドボックス130の一端部には筒体からなる操作棒108が吊下支持されており、操作棒108の下端には操作部120が設けられている。操作部120を把持して操作棒108を回転操作すると、ヘッドボックス130内に配設されるギヤ機構を介して角度調節軸が回転される。従って、操作棒108の回転操作により、各日射遮蔽部材101を角度調節可能となっている。
【0016】
ヘッドボックス130からは複数本(本実施形態では3本)の昇降コード102l,102c,102r(区別が不要な場合は単に「昇降コード102」と称する。)が吊下されており、各昇降コード102の一端はボトムレール122に取着される。各支持部材には転向滑車(図示せず)が図面の表裏方向の軸心で軸支され、ヘッドボックス130に導入された昇降コード102がヘッドボックスの左右方向に転向案内可能となっている。また、各支持部材は他の昇降コードを左右方向に通過可能な空間を有している。従って、右端の昇降コード102rの他端は支持部材で転向案内され、非操作側の昇降コード(左端及び中央の昇降コード102l,102c)は各支持部材を経て、ヘッドボックス130内を操作棒108方向に案内される。そして、ヘッドボックス130内に設けられるロック部104及び制動装置1000を経て、筒状の操作棒108内に挿通され、その先端は操作部120の下方に設けられたコードイコライザ121に接続される。したがって、コードイコライザ121を下方へ引いて、ヘッドボックス130から昇降コード102を引き出すと、ボトムレール122が引き上げられることにより、日射遮蔽部材101が引き上げられる。
【0017】
ロック部104は、コードCD(
図6参照)の動作により、コードCDの移動を許可し又は規制する。
【0018】
制動装置1000はコードCDの移動を制動するものである。なお、制動装置1000の構成及び動作については後述する。制動装置1000は、ヘッドボックス130の底面132上に配置され、その両端が側面133によって位置決めされる。なお、制動装置1000を底面132に配置することに変えて、底面132上に設けた他の部材の上に配置することとしてもよい。
【0019】
制動装置1000は、ヘッドボックス130内において、
図6に示す前方がロック部104側を向き、後方がコード出口135側を向くように配置される。したがって、日射遮蔽部材101が下降しきった状態、すなわち遮蔽装置100Aの閉状態において、一組のコードCDを下方に引っ張ると、コードCDは
図6に示す後方に引かれる。
【0020】
一方、日射遮蔽部材101が下降しきっていない状態において、ロック部104によりコードCDがロックされていない状態でコードCDを離す。すると、日射遮蔽部材101は自重により下降する。このため、昇降コード102はヘッドボックス130内から引き出される。したがって、昇降コード102に接続されるコードCDは、制動装置1000の前方に向かって引かれる。すると、コードCDには制動力が付与される。したがって、日射遮蔽部材101の下降速度が抑えられる。このため、日射遮蔽部材101の下降速度が超過することによる破損等を抑制することができる。なお、かかる動作については、後述の
図20を用いて詳細に説明する。
【0021】
以上説明したように本実施形態の遮蔽装置100Aによれば、日射遮蔽部材101を昇降可能とするコードCDの長手方向の移動に対して、制動装置1000により適切に制動力が付与されるため、例えば、上記のように日射遮蔽部材101が自重により下降する場合であっても、日射遮蔽部材101の下降速度を抑えることができる。
【0022】
1−2<制動装置>
次に、
図2〜
図22を用いて、制動装置1000について説明する。本実施形態に係る制動装置1000は、コードの移動を制動する制動装置である。具体的には、本実施形態に係る制動装置1000では、運動変換部に係る機構と抵抗付与部に係る機構が略垂直に位置するように設けられる。本実施形態では、運動変換部は、コードCDの移動を他の部材の運動に変換するものである。また、抵抗付与部は、コードCDが一方向に相対移動するときに、コードCDの移動に伴って抵抗力を発生させるものである。ここで、本実施形態においては、スライダー220、コイルスプリングSP、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、ローレット240、ピニオンギア50、軸芯31、ワッシャー241、内歯付キャリア260及び遊星歯車280が、運動変換部を構成し、ウェイト340、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びケース10Aが、抵抗付与部を構成する。
【0023】
図2及び
図3は、本実施形態に係る制動装置1000の分解斜視図である。制動装置1000は、整列部材200、ケース10A、スライダー220、コイルスプリングSP、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、ローレット240、ピニオンギア50、ローレット240及びピニオンギア50を挿通する軸芯31、ワッシャー241、内歯付キャリア260、遊星歯車280、プレート300、太陽歯車付ウェイトホルダ320、ウェイト340及びベース70により構成される。
【0024】
本実施形態において、アイドルローラ40及びローレット240は、コードを挟着する挟着体として機能する。また、アイドルローラ40が支柱に、ローレット240がコードの長手方向の移動により回転するローラとして機能する。また、スライダー220は、アイドルローラ40及びローレット240を保持する。また、ケース10A及びベース70は、例えば樹脂により形成される。
【0025】
図2及び
図3に示されるように、本実施形態では、内歯付キャリア260に4つの遊星歯車280が設けられ、太陽歯車付ウェイトホルダ320に8つのウェイト340が保持される。以下、各部材について説明する。
【0026】
1−2−1<整列部材200>
図6(a),(b)に示されるように、整列部材200は、コードCDを挿通し、コードCDの向きを整えるものである。また、複数のコードCDを互いに同じ向きに整列させるものである。整列部材200は、例えば、プラスチック等の樹脂で形成することができる。ここで、
図6(a)に示されるように、矢印の向きをそれぞれ前後、左右、上下とする。すなわち、第1天壁溝16と第2天壁溝17の距離が狭くなる向きを前方とし、左右方向(幅方向)、上下方向を定める。
【0027】
図12(a)に示されるように、整列部材200は、前方壁部205と、前方壁部205に連結される右側壁部207及び左側壁部208と、右側壁部207及び左側壁部208のそれぞれに連結される後方壁部206と、を有する。前方壁部205、右側壁部207、左側壁部208及び後方壁部206の形状は任意であるが、本実施形態では、それぞれ概ね矩形の形状とされる。また、本実施形態では、前方壁部205及び後方壁部206は、略対称形状である。
【0028】
前方壁部205には第1前方溝201、第1前方コード挿入部201A、第2前方溝202及び第2前方コード挿入部202Aが形成される。また、後方壁部206には、第1後方溝203、第1後方コード挿入部203A、第2後方溝204及び第2後方コード挿入部204Aが形成される。
【0029】
第1前方コード挿入部201A及び第2前方コード挿入部202Aは、制動装置1000の組立後にコードCDを整列部材200に挿通するためのものである。第1前方コード挿入部201Aは、第1前方溝201よりも幅広に形成される。また、第2前方コード挿入部202Aは、第2前方溝202よりも幅広に形成される。したがって、第1前方コード挿入部201A及び第2前方コード挿入部202AにコードCDを挿通し、そのまま第1前方溝201及び第2前方溝202の方へコードCDをスライドさせることで、コードCDをスムーズに挿通することが可能となる。
【0030】
また、第1後方コード挿入部203A及び第2後方コード挿入部204Aは、前方壁部205に挿通されたコードCDが後述するスライダー220の前後の貫通孔225(
図15参照)を通過し、かかるコードCDを後方壁部206から外部に引き出すためのものである。第1後方コード挿入部203Aは、第1後方溝203よりも幅広に形成される。また、第2後方コード挿入部204Aは、第2後方溝204よりも幅広に形成される。したがって、第1後方コード挿入部203A及び第2後方コード挿入部204AにコードCDを挿通し、そのまま第1後方溝203及び第2後方溝204の方へコードCDをスライドさせることで、コードCDをスムーズに挿通することが可能となる。
【0031】
なお、第1前方コード挿入部201A、第2前方コード挿入部202A、第1後方コード挿入部203A及び第2後方コード挿入部204Aの形状は任意であり、
図12に示した形状に限定されない。例えば、略円形でもよく、縦長形状から斜め形状を経て第1前方溝201(その他の溝でも同じ)に接続されてもよい。更に、本実施形態では、第1前方コード挿入部201Aと第1前方溝201の間に段差210が設けられているが、かかる段差210を設けず、前方壁部205(又は後方壁部206)を略矩形としてもよい。
【0032】
図12(b)に示されるように、本実施形態では、前方壁部205及び後方壁部206は正面視において略同一形状とされる。したがって、第1前方コード挿入部201Aから挿通されたコードCDは第1後方コード挿入部203Aを通過し、第2前方コード挿入部202Aから挿通されたコードCDは第2後方コード挿入部204Aを通過する。換言すると、第1前方溝201及び第1前方コード挿入部201Aと第1後方溝203及び第1後方コード挿入部203Aがそれぞれ対応する一対の溝であり、第2前方溝202及び第2前方コード挿入部202Aと第2後方溝204及び第2後方コード挿入部204Aがそれぞれ対応する一対の溝である。
【0033】
ここで、
図12(a)に示されるように、整列部材200の右側壁部207には、制動装置1000の組立時においてケース10Aの上方から被せるようにして配置するときに、後述するケース10Aの係合孔19(
図13参照)と係合し、整列部材200をケース10Aに固定するための爪部209が設けられる。なお、
図12において図示はしないが、左側壁部208にも同様の爪部209が設けられる。これにより、整列部材200に設けられた2つの爪部209とケース10Aの左右に設けられた2つの係合孔19とが強固に係合することが可能となる。
【0034】
1−2−2<ケース10A>
次に、
図13(a),(b)及び
図14を用いてケース10Aについて説明する。なお、以下、
図14において左向きを前方、右向きを後方、上向きを右側、下向きを左側として説明する。ケース10Aは、ベース70とともに筐体を構成し、その内部にスライダー220、コイルスプリングSP、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、ローレット240、ピニオンギア50、軸芯31、ワッシャー241、内歯付キャリア260、遊星歯車280、プレート300、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340を保持する。
【0035】
また、ケース10Aは、例えば
図17に示されるベース70とともに制動装置1000の筐体を構成するものである。また、例えば
図17に示される太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340とともに、抵抗付与部を構成するものである。
【0036】
図13に示されるように、ケース10Aは、外形が概ね正方形の天壁部11と、前側壁部12fと、前側壁部12f及び天壁部11に連結される右側壁部12r及び左側壁部12lと、右側壁部12r及び左側壁部12lのそれぞれに連結される後側壁部12bと、天壁部11に対向し、前側壁部12f、後側壁部12b、前側壁部12f及び左側壁部12lから径方向側に向かって延在する鍔部13と、鍔部13に連結される円筒部13Cと、円筒部13Cに連結されるカバー部112とを主な構成として有する。
【0037】
前側壁部12f及び後側壁部12bには、ガイド溝113が形成されている。これら2つのガイド溝113は、互いに前後方向に対向している。これらのガイド溝113はコードCDが前後方向に挿通されるための溝である。ここで、ガイド溝113に挿通するコードCDの数は特に限定されないが、本実施形態では3本のコードCDが縦方向に挿通された例について示している(
図6参照)。
【0038】
また、右側壁部12r及び左側壁部12lには、係合孔19が設けられる。係合孔19は、すでに述べた通り、整列部材200の爪部209と係合し、整列部材200をケース10Aに固定するものである。
【0039】
更に、左右の係合孔19の上方には支持溝114が設けられる。支持溝114は、
図6に示されるように、ケース10Aがスライダー220を内部に保持するにあたり、スライダー220に設けられる突起230を支持するものである。これにより、スライダー220を浮き状態で支持することができる。なお、詳細は後述する。
【0040】
天壁部11には、第1天壁溝16と第2天壁溝17とが形成されている。
図14(a)に示されるように、第1天壁溝16及び第2天壁溝17は、それぞれコードCDの長手方向すなわち前後方向に対して斜めに形成されており、コードCDの一方の長手方向である前方に向かうにつれて、第1天壁溝16と第2天壁溝17との距離が小さくされている。また、第1天壁溝16は円弧状に形成されており、第1天壁溝16の円弧は、
図9に示される内歯付キャリア260の内周面と平面視において同心円上となるように形成される。一方、第2天壁溝17は緩やかなカーブを描いた形状に形成されている。具体的には、第2天壁溝17は、前方側が略直線状の形状とされ、後方に向かうにつれて、第1天壁溝16から離れる向きに湾曲している。これは、第2天壁溝17を略直線状とした場合、第1天壁溝16は後方から前方に向かってコードCDに近づくような円弧であるので、例えば軸芯31及び軸芯41がそれぞれ第1天壁溝16及び第2天壁溝17に沿って移動するときに、コードCDに対する垂直方向の変位が、軸芯31と軸芯41とで異なってしまうことを防ぐためである。つまり、一方が円弧であるのに対し、他方が略直線状であると、前後方向においてコードCDへの垂直距離が異なるためである。このように、軸芯31及び軸芯41のコードCDの鉛直方向に対する変位を近接させることにより、ローレット240及びローラ部42が適切にコードCDを挟着することが可能となる。なお、第2天壁溝17はこれに限定されず、例えば、第1天壁溝16と略同一形状の溝を、コードCD側に向かって湾曲する配置としてもよい。これにより、CDに対する鉛直方向の変位を、軸芯31と軸芯41とで略同一にすることができ、コードCDの摩耗を低減することが可能となる。ここで、本実施形態では、CDに対する鉛直方向の変位を、軸芯31と軸芯41とでなるべく同じにすることに加え、他の部材の移動等による相互作用等を考慮し、
図14(a)に示される形状を採用した。
【0041】
第1天壁溝16の縁には、
図13(a),(b)、
図14(a)に示されるように、ケース10Aの平面視において、第1天壁溝16におけるケース10Aの外側の縁に沿った位置の少なくとも一部に、第1天壁溝16から上方に突出する第1ガイド壁16Aが設けられる。本実施形態では、第1ガイド壁16Aは、第1天壁溝16に対して略90度となるように設けられる。第1ガイド壁16Aは、第1天壁溝16に沿って移動する軸芯31の面圧を下げることを目的としている。つまり、第1ガイド壁16Aを設けることにより、軸芯31と接触する面積が増大することにより、軸芯31の面圧を低減するものである。これは、コードCDに張力が与えられ、制動装置1000が作用している間は軸芯31の面圧が第1天壁溝16の内面に加わっており、かかる面圧により第1天壁溝16の内面が削れると、ローレット240とローラ部42の間隔が変化して、ローレット240への回転伝達が不十分になる恐れがあるためである。第1ガイド壁16Aを設けることにより、軸芯31からの圧力によりケース10Aが削れることを防止することが可能となる。なお、第1ガイド壁16Aの肉厚は任意であるが、ケース10Aの素材、軸芯31の移動速度等を考慮して適宜設計すればよい。
【0042】
また、ケース10Aの平面視において、第2天壁溝17におけるケース10Aの外側の縁に沿った位置には、ケース10Aの中心から遠方に位置する縁に沿った位置の少なくとも一部に、第2天壁溝17から上方に突出する第2ガイド壁17Aが設けられる。本実施形態では、第2ガイド壁17Aは、第2天壁溝17に対して略90度となるように設けられる。第2ガイド壁17Aは、第2天壁溝17に沿って移動する軸芯41の面圧を下げることを目的としている。つまり、第2ガイド壁17Aを設けることにより、軸芯41と接触する面積が増大することにより、軸芯41の面圧を低減するものである。これは、コードCDに張力が与えられ、制動装置1000が作用している間は軸芯41の面圧が第2天壁溝17の内面に加わっており、かかる面圧により第2天壁溝17の内面が削れると、ローレット240とローラ部42の間隔が変化して、ローレット240への回転伝達が不十分になる恐れがあるためである。第2ガイド壁17Aを設けることにより、軸芯41からの圧力によりケース10Aが削れることを防止することが可能となる。なお、第2ガイド壁17Aの肉厚は任意であるが、ケース10Aの素材、軸芯41の移動速度等を考慮して適宜設計すればよい。
【0043】
なお、ケース10Aを金属等の強固な材料で成形した場合には、第1ガイド壁16A及び第2ガイド壁17Aを設けなくてもよい。これは、ケース10Aが堅牢であるので、軸芯31及び軸芯41からの圧力によりケース10Aがほとんど削れることがないためである。
【0044】
鍔部13は、天壁部11に対向し、前側壁部12f、後側壁部12b、右側壁部12r及び左側壁部12lから径方向側に向かって延在する部位であり、本実施形態では略円形とされる。
【0045】
円筒部13Cは、鍔部13に連結され、内周ギア115の外側に位置する。本実施形態では、円筒部13Cは、略円筒状の形状とされる。
【0046】
カバー部112は、円筒部13Cに連結され、ベース70と嵌合する箇所である。本実施形態では、カバー部112の外縁は略正方形とされる。そして、カバー部112は、左右の側面の両端にそれぞれ2つの第1係合溝111Aが設けられる。そして、前端部の両端に2つの第2係合溝111Bが設けられ、後端部の略中央に1つの第2係合溝111Bが設けられる。第1係合溝111Aは、
図8に示されるベース70の第1係合板部701Aと係合するものである。また、第2係合溝111Bは、ベース70の第2係合板部701Bと係合するものである。これにより、ケース10Aとベース70が係合され、筐体を形成する。
【0047】
<第2の観点>
次に、
図14(b)及び
図16(a)を用いて、ケース10Aの内部構造について説明する。ケース10Aの内部には、
図18に示されるように、遊星歯車280と歯合するリング状の内周ギア115が形成される。そして、
図14(b)及び
図16(a)に示されるように、内周ギア115の上部には、平面視において略リング状の波形部116が形成される。波形部116は、内周ギア115の中心を通る円の中心からの水平距離が小さい部分及び大きい部分が交互に並んでおり、平面視においてジグザグ形状となる形状である。具体的には、多数の直線を結んでできる多角形状をなしている。ここで、本実施形態では、内周ギア115の中心を通る円の中心からの水平距離が大きい部分が内歯付キャリア260の一部と当接し、内周ギア115の中心を通る円の中心からの水平距離が小さい部分が内歯付キャリア260と当接しないように波形部116が構成される。更に、ケース10Aの内部における鍔部13の内面側の面には、ケース10Aの鉛直方向における高さの異なる段差117が設けられる。波形部116及び段差117を設けることにより、例えばコードCDの移動に伴い鉛直方向の物理的又は仮想的回転軸を中心に回転する回転部材の一例である内歯付キャリア260等の他の部材の位置決めを容易にし且つ摩擦抵抗を低減することができる。なお、本実施形態における内歯付キャリア260は、回転部材であるとともに、遊星歯車280を備えているため、コードCDの一方向への移動に伴うローレット240の回転速度を増速して抵抗付与部RAへ伝達する増速部材であるとも言える。ここで、物理的又は仮想的回転軸とは、回転部材の回転軸が物理的な軸である場合、又は、物理的な軸はないものの仮想的な軸(例えば、ウェイトホルダ320(
図2〜
図5参照)の平面視における中心点を通る鉛直軸)である場合を意味する。
【0048】
また、
図16に示されるように、ケース10Aの左右の内側面には、4つの溝118が形成される。溝118は、制動装置1000を組み立てる又は分解する際に、後述するスライダー220の突起230を通すためのものである。本実施形態では、スライダー220の突起230が4つであるため、ケース10Aにも4つの溝118を設けている。
【0049】
1−2−3<スライダー220>
次に、
図15を用いてスライダー220について説明する。スライダー220は、アイドルローラ40及びローレット240を内部に保持し且つアイドルローラ40及びローレット240と共に移動する移動部材に相当する。スライダー220は、天壁部221と、天壁部221に連結される後側壁部222及び前側壁部224と、後側壁部222及び前側壁部224のそれぞれに連結される底壁部223とを有する。
【0050】
天壁部221は概ね矩形の形状に一対の溝が形成された形状とされる。これら一対の溝はそれぞれ第1天壁溝226及び第2天壁溝227とされる。第1天壁溝226及び第2天壁溝227は、それぞれ左右方向に沿って延在する直線状の溝とされ、互いに直線上に並んでいる。
【0051】
底壁部223は天壁部221と対向する。本実施形態では、底壁部223は、概ね天壁部221と同じ形状とされる。しかし、天壁部221と底壁部223を異なる形状としてもよい。底壁部223にも左右方向に直線上に並んで形成される一対の溝が形成されており、これら一対の溝はそれぞれ第1底壁溝228及び第2底壁溝229とされる。第1底壁溝228が第1天壁溝226と上下方向に対向しており、第2底壁溝229が第2天壁溝227と上下方向に対向している。したがって、スライダー220を平面視すると、
図15(c)に示されるように、上下の溝が重なって見える。
【0052】
ここで、第1天壁溝226及び第1底壁溝228の幅の大きさは、軸芯31の直径が収まる程度の大きさである。また、第2天壁溝227及び第2底壁溝229の幅の大きさは、軸芯41が収まる程度の大きさである。
【0053】
また、天壁部221には、その四隅に天壁部221の左右へ突出するように突起230が設けられる。
図6に示されるように、突起230は、ケース10Aの支持溝114に収められ、ケース10Aの内部にスライダー220を浮き状態で支持するためのものである。すなわち、スライダー220が、下方に位置する内歯付キャリア260と非接触状態で保持される。
【0054】
前側壁部224及び後側壁部222には、貫通孔225が形成されている。貫通孔225は、前側壁部224及び後側壁部222の幅方向の略中央において前側壁部224及び後側壁部222を前後方向に貫通する。孔の形状は任意であるが、少なくともコードCD1本が挿通可能な程度である。好ましくは、複数本のコードCDが縦方向に整列した状態で挿通可能な形状である。なお、本実施形態では、上下方向に長い略長円形の形状とされる。
【0055】
また、
図15(b)に示されるように、後側壁部222には、貫通孔225の両脇に、後側壁部222の外側面から形成される凹部231が形成されている。凹部231の形状は任意であり、
図15(b)に示されるような貫通孔225から側面側にかけて切り欠かれた形状でもよく、略円形、略矩形の凹み等であってもよい。また、本実施形態では、左側の凹部231内にコイルスプリングSPが配置されており、コイルスプリングSPの一端は凹部231から突出している。そして、制動装置1000の組立時において、ケース10Aの内壁と当接し、スライダー220を前方に付勢する。なお、
図15ではコイルスプリングSPの凹部231から突出している部分を省略している。また、右側の凹部231内にコイルスプリングSPを配置してもよい。更に、左右両方の凹部231内にコイルスプリングSPを配置してもよい。
【0056】
このような形状のスライダー220の左右方向の大きさは、ケース10Aの幅方向の内壁間の距離と概ね同じであり、スライダー220の前後方向の大きさは、ケース10Aの前後方向の内壁間の距離よりも小さくされる。したがって、スライダー220がケース10Aの空間内に配置されると、スライダー220の天壁部221及び底壁部223の側面がケース10Aの幅方向において内壁面に当接して、スライダー220はケース10Aに対して幅方向に動きが規制される。この状態において、ケース10Aのガイド溝113とスライダー220の貫通孔225とが互いに前後方向に並ぶ。つまり、貫通孔225は、コードCDをスライダー220内に挿通するための孔である。一方、スライダー220がケース10Aの空間内に配置された状態で、スライダー220とケース10Aの内壁面との間には、前後方向に隙間が生じ、スライダー220はケース10Aに対して前後方向に動くことができる。また、スライダー220がケース10Aの空間内に配置された状態で、スライダー220の後側壁部222の凹部231から突出するコイルスプリングSPがケース10Aの後方の内壁を押圧する。したがって、スライダー220がケース10Aの空間内に配置された状態で、スライダー220は、前方側に位置し、ケース10A内において前方に押圧された状態となる。
【0057】
ここで、
図16を用いて、スライダー220の突起230について詳細に説明する。
図16に示されるように、制動装置1000を組み立てる際には、ケース10A内部の下方にスライダー220が位置するように配置し、両者が接近するように上下方向に相対移動させる。そして、ケース10Aの内部に設けられた溝118にスライダー220に設けられた突起230を通す。なお、
図16(a)において、可視性を高めるために溝118を強調して表している。そして、
図6に示すように、突起230が支持溝114まで到達するまでケース10Aとスライダー220を近づける。すると、スライダー220に設けられたコイルスプリングSPがケース10Aの後方の内壁と当接し、スライダー220を前方に付勢することにより、突起230が溝118よりも前方に位置することとなる。このため、ひとたびケース10Aにスライダー220を取り付けると、突起230が支持溝114から外れることを防止できる。なお、溝118は制動装置1000の組み立て時のみならず、分解時においても突起230を通す役割をする。この場合、コイルスプリングSPの付勢力に抗してスライダー220をケース10Aに対して相対的に後方に移動させ、突起230が溝118の位置まで到達したときに、スライダー220をケース10Aに対して相対的に下側に移動させればよい。
【0058】
このような構成とすることで、スライダー220をケース10A内部において浮き状態で支持することが可能となる。そのため、スライダー220と他の部品、例えば内歯付キャリア260等との接触を防止することができ、不要な抵抗力を低減又はゼロにすることができる。したがって、各部材の消耗を低減することが可能となる。
【0059】
1−2−4<アイドルローラ40、ローレット240及びピニオンギア50>
次に、
図3及び
図17を用いて、アイドルローラ40、ローレット240及びピニオンギア50について説明する。
【0060】
アイドルローラ40は、ローラ部42及び軸芯41で構成される。また、アイドルローラ40は、ローレット240の軸芯31と平行な軸芯41と、軸芯41の外周面を覆うローラ部42とを有する。したがって、ローレット240の回転軸とアイドルローラ40の回転軸とは互いに平行とされる。アイドルローラ40のローラ部42の外径は、ローレット240の外径よりも大きくされている。アイドルローラ40のローラ部42の外周面は、金属の平坦な面よりも摩擦係数が高い状態とされる。また、軸芯41の両端部は、ローラ部42から露出している。
【0061】
ローレット240の中心には軸芯31の一端が挿入されている。そして、軸芯31の他端には、ピニオンギア50が挿入されている。ローレット240は任意の材料で形成することができ、例えばステンレスを用いることが可能である。
【0062】
アイドルローラ40及びローレット240はスライダー220の内部に保持される。また、ピニオンギア50は、スライダー220の外部に保持される。ここで、
図11を用いてローレット240、スライダー220及びピニオンギア50の位置関係について説明する。
図11は、本実施形態に係る制動装置1000の左側面から見て軸芯31の略中心を通る断面図の一部である。
図11に示されるように、制動装置1000の組み立て時において、ローレット240とピニオンギア50でスライダー220の底壁部223を挟み込むような構成となっている。また、本実施形態では、ピニオンギア50とスライダー220の接触面積を低減すべく、ピニオンギア50に段差51が設けられる。これにより、軸芯31を介してローレット240及びピニオンギア50が一体回転するときに、ピニオンギア50とスライダー220との間の摺動抵抗を低減することができる。これにより、回転動作を滑らかにすることが可能となる。なお、抵抗を低減するために、本実施形態では、ローレット240の上下において、ワッシャー241(
図2及び
図3参照)を軸芯31にかましている。
【0063】
1−2−5<内歯付キャリア260及び遊星歯車280>
次に、
図2及び
図17を用いて内歯付キャリア260及び遊星歯車280について説明する。内歯付キャリア260は、ケース10Aに内包され且つ制動対象の移動に伴って回転する回転部材の一例である。本実施形態では、内歯付キャリア260は、平面視において略ドーナツ形状である。内歯付キャリア260は、円柱部264から平面視において外側に突出するフランジ262を備える。
【0064】
円柱部264の内側の内周面には、ピニオンギア50と歯合する内歯車261が形成される。そして、フランジ262には、鉛直方向において下向きに突出する支持軸263が形成される。支持軸263の個数は特に限定されないが、特に等間隔であることが好ましい。なお、本実施形態では、一例として支持軸263が4つ設けられた構成としている。
【0065】
そして、支持軸263にはそれぞれ、遊星歯車280が回転可能に支持されている。遊星歯車280は、後述する太陽歯車323と、ケース10Aの内部に設けられた内周ギア115と互いに歯合する。そして、内歯車261の中心部を中心として公転することが可能である。したがって、ピニオンギア50の回転が内歯車261に伝達されることにより内歯付キャリア260が回転し、それにともない内歯付キャリア260のフランジ262に設けられた支持軸263に回転可能に支持された遊星歯車280が回転することで、ピニオンギア50に起因する回転を増速させることが可能となる。また、遊星歯車280には段差281が設けられている。かかる段差により、他の部材との接触を回避することが可能となる。
【0066】
<第1の観点>
1−2−6<太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340>
次に、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340について、
図2及び
図17を用いて説明する。ウェイト340は、ケース10A内のベース70に載置され且つ制動対象からの回転入力により径方向外側に遠心力が加えられる遠心拡張部の一例である。太陽歯車付ウェイトホルダ320は、ケース10Aに内包され且つ制動対象の移動に伴って回転する回転部材の一例である。太陽歯車付ウェイトホルダ320は、リング状のリング部324の外方に向かって、凸部321及び凹部322が交互に並んで形成される。ここで、凸部321は、太陽歯車付ウェイトホルダ320の自転の際にウェイト340の側面と当接する部材である。
図2に示されるように、リング部324の外側の外周面には、遊星歯車280と歯合する太陽歯車323が、回転軸が凸部321の延在方向と略垂直方向を向くように設けられる。そして、それぞれの凹部322には、ウェイト340が配置される。つまり、太陽歯車付ウェイトホルダ320は、制動装置1000の組み立て時において、凸部321を境としてそれぞれの凹部322内にウェイト340を保持する部材であるとも言える。なお、ウェイト340の数は任意であるが、回転時におけるバランスの観点から等間隔であることが好ましい。なお、本実施形態では、一例として8つのウェイト340を用いている。したがって、凸部321及び凹部322もそれぞれ8つずつ設けられている。すなわち、凹部322は、それぞれが等間隔且つ太陽歯車付ウェイトホルダ320の自転中心から等距離に配置されることとなる。
【0067】
本実施形態では、各ウェイト340には、ベース70側に突起341が設けられる。これにより、ウェイト340とベース70の接触面の少なくとも一部に段差が設けられる。したがって、ベース70と当接する際における抵抗を低減することが可能となる。突起341の数は任意であるが、本実施形態では、一例として4つの突起341を設けている。
【0068】
また、各ウェイト340に突起341を設ける代わりに、ベース70の上側、すなわちウェイト340側に突起709A,B及び溝709を設けることにより、ウェイト340とベース70との抵抗を低減することも可能である。例えば、
図4に示されるように、ベース70の底部に、周囲より高さの低い溝709(
図4のリング状のハッチング部分)を設ける。また、溝709の周囲に突起709A,Bが設けられる。本実施形態では、突起709A,Bはリング形状である。なお、リング形状に代えて、複数の突起709A,Bを環状に並べて配置する構成としてもよい。そして、突起709A,Bの上にウェイト340を配置する。このとき、ウェイト340に突起341を設けなくとも、ベース70に突起709A,B及び溝709が設けられたことにより、ウェイト340とベース70との接触面積が低減することにより、ウェイト340とベース70との抵抗を低減することが可能となる。
【0069】
また、
図4の構成に代えて、
図21及び
図22の構成を採用してもよい。
図21に示されるように、ベース70の底部に、突起709A(
図21のリング状のハッチング部分)を設ける。本実施形態では、突起709Aはリング形状である。なお、リング形状に代えて、複数の突起709Aを環状に並べて配置する構成としてもよい。そして、突起709Aの上にウェイト340を配置する。ここで、
図21及び
図22の例では、ウェイト340に突起341が設けられる。
【0070】
図22は、
図21(a)のW方向から見たウェイト340とベース70の位置関係を示す概念図である。本実施形態では、ウェイト340に設けられた突起341の高さが、ベース70に設けられた突起709Aの高さよりも高くなるように構成される。
図22(a)に示されるように、ウェイト340に設けられた突起341を鉛直下側に向けた状態で制動装置1000を組み立てた場合、ウェイト340に設けられた4つの突起341(
図17参照)が、ベース70に設けられたリング形状の突起709Aを跨いだ状態となる。そして、突起341がベース70と当接する。逆に、本実施形態では、突起709Aはウェイト340と当接しない。つまり、
図22(a)の状態では、突起341により、回転部材とこれに接触する接触部材との間の接触抵抗を低減する抵抗低減部が構成される。なお、突起709Aがウェイト340と当接するようにしてもよい。この場合、突起341及び突起709Aにより、回転部材とこれに接触する接触部材との間の接触抵抗を低減する抵抗低減部が構成される。
【0071】
一方、
図22(b)に示されるように、ウェイト340に設けられた突起341を鉛直上側に向けた状態で制動装置1000を組み立てた場合、突起709Aがウェイト340と当接する。逆に、突起341はベース70と当接しない。つまり、
図22(b)の状態では、突起709Aにより、回転部材とこれに接触する接触部材との間の接触抵抗を低減する抵抗低減部が構成される。
【0072】
ここで、
図22(a),(b)を比較すると、
図22(b)の方がウェイト340とベース70間の接触抵抗が小さい。これは、
図22(a)では、4点でウェイト340とベース70間が接しているのに対し、
図22(b)では、1点でウェイト340とベース70間が接しているためである。すなわち、
図22(b)の方がウェイト340とベース70の接触面積が小さいためである。これにより、ウェイト340の上下を入れ替えるだけで、回転部材とこれに接触する接触部材との間の接触抵抗の大きさを微調整することができる。例えば、遮蔽装置100Aを2台並べて使用する際において、各遮蔽装置100Aの日射遮蔽部材101の下降速度を略等しくすることが可能となる。
【0073】
なお、
図21及び
図22の例において、ウェイト340の突起341を省略してもよい。この場合、ウェイト340とベース70の当接態様は、常に
図22(b)に示されるものとなる。
【0074】
また、
図2、
図4及び
図21の構成に代えて、ウェイトホルダ320に突起326を設けてもよい。
図5に示されるように、かかる構成では、ウェイトホルダ320の凸部321の間又は凸部321の下側に、ウェイト340を載置する遠心拡張部載置面325が設けられる。そして、ウェイトホルダ320を構成する遠心拡張部載置面325の裏側、すなわちベース70側に、突起326が設けられる。ここで、突起326は、ウェイトホルダ320がバランスよく回転するために、少なくとも3つ設けられることが好ましい。さらに、複数の突起326は、ウェイトホルダ320の周方向に等間隔に設けられることが好ましい。これにより、ウェイトホルダ320とベース70の接触面の少なくとも一部に段差が設けられる。
【0075】
さらに、
図4又は
図21の構成と
図5の構成を組み合わせてもよい。つまり、ウェイト340に突起341を設けず、遠心拡張部載置面325を備えるウェイトホルダ320に突起326を設けるとともに、ベース70のウェイト340側に突起709A,B及び溝709(
図4の例)又は突起709Aのみ(
図21の例)を設けることとしてもよい。
【0076】
ウェイト340は、ピニオンギア50に起因する回転時において、遠心力により内歯車261の中心から遠ざかる方向に移動し、ケース10Aの内周壁と当接することにより、回転に対して遠心ブレーキとして抵抗力を付与するものである。したがって、ケース10Aの内周壁、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340により、抵抗付与部としての作用を奏することが可能となる。
【0077】
なお、制動装置1000の組み立て時においては、内歯付キャリア260と太陽歯車付ウェイトホルダ320が、プレート300を介して組み立てられる。具体的には、内歯付キャリア260の円柱部264を太陽歯車付ウェイトホルダ320のリング部324に挿入するように組み立てる。したがって、円柱部264の直径は、リング部324の直径よりもわずかに小さく設計される。
【0078】
ここで、プレート300は、遊星歯車280の傾きを防止するとともに、遊星歯車280とウェイト340の干渉を防ぐ機能を有する。なお、ウェイト340は、制動装置1000全体の厚さを薄くするために、なるべく薄く形成されることが好ましい。さらに、プレート300は、薄く形成するため金属製とするのが好ましいが、技術的に可能である場合には、プレート300を樹脂形成してもよい。この場合、太陽歯車323と一体形成としてもよい。ここで、プレート300は、本実施形態のようなリング型に限られず、同様の効果を奏する限りにおいて、例えば多角形、楕円、矩形、星型等、任意の形状の薄板とすることができる。
【0079】
1−2−7<ベース70>
次に、
図2、
図3、
図7(b)及び
図17を用いて、ベース70について説明する。
図2及び
図3に示されるように、ベース70の略中央には、周囲より嵩高くなっており、下側が凹んでいる円柱部708が設けられる。そして、
図2及び
図7(b)に示されるように、円柱部708の上面に第1ベース溝706、第1ガイド壁706A、第2ベース溝707、第2ガイド壁707Aが設けられる。
【0080】
第1ベース溝706及び第1ガイド壁706Aはそれぞれ、ケース10Aに設けられた第1天壁溝16及び第1ガイド壁16Aに相当するものである。そして、軸芯31の下端が第1ベース溝706を挿通し、その縁に形成された第1ガイド壁706Aと当接する。同様に、第2ベース溝707及び第2ガイド壁707Aはそれぞれ、ケース10Aに設けられた第2天壁溝17及び第2ガイド壁17Aに相当するものである。そして、軸芯41の下端が第2ベース溝707を挿通し、その縁に形成された第2ガイド壁707Aと当接する。
【0081】
なお、円柱部708は必須ではないが、円柱部708を設ける等して下側をへこませる
ことにより、軸芯31及び軸芯41の下端が、制動装置1000を載置する載置面と接触することを防ぎ、軸芯31及び軸芯41の下端を適切に挿通することが可能となる。
【0082】
また、ベース70は、左右の側面の両端にそれぞれ2つの第1係合板部701Aが設けられる。そして、前方の側面の両端に2つの第2係合板部701Bが設けられ、後方の側面の略中央に1つの第2係合板部701Bが設けられる。第1係合板部701Aは、ケース10Aに設けられた第1係合溝111Aと係合するものである。また、第2係合板部701Bは、ケース10Aに設けられた第2係合溝111Bと係合するものである。これにより、ケース10Aとベース70が係合され、筐体を形成する。
【0083】
更に、
図3、
図7(b)及び
図17等に示されるように、ベース70の底面の外側には、遮蔽装置のヘッドボックス内に制動装置1000を配置するときに利用する取付筒702が設けられる。例えば、ヘッドボックス内に設けられた軸等の部材に取付筒702をはめ込むことにより、制動装置1000をヘッドボックス内にて安定して配置させることが可能となる。
【0084】
1−3<組立構成>
次に、これら各部材を組み立てた状態について、
図6〜
図10を用いて説明する。
図6は、これらの部材を組み合わせて構成された制動装置1000の組立図である。
図6に示されるように、制動装置1000の外観は、ケース10A及びベース70が接続された筐体と、ケース10Aの上方から被せるようにして配置された整列部材200からなる。かかる組立は、
図2及び
図3に示されるように、各部材同士の中心軸を上下方向に重ねあわせた状態でなされる。具体的には、内歯付キャリア260と、ウェイト340を保持した太陽歯車付ウェイトホルダ320が、プレート300を介して組み立てられる。このとき、内歯付キャリア260に設けられた遊星歯車280と、太陽歯車付ウェイトホルダ320に設けられた太陽歯車323とが互いに歯合するようにする。
【0085】
そして、スライダー220の第1天壁溝226及び第1底壁溝228に軸芯31を水平方向に移動させながらスライドさせる。このとき、ローレット240はスライダー220の内部に、ピニオンギア50はスライダー220の外部に位置するようにされる。また、第2天壁溝227及び第2底壁溝229に軸芯41水平方向に移動させながらスライドさせる。このとき、ローラ部42がスライダー220の内部に位置するようにされる。そして、内歯付キャリア260に設けられた内歯車261とピニオンギア50が互いに歯合するように、スライダー220と内歯付キャリア260が互いに近づくように相対移動させる。
【0086】
その後、これらの部材の下側にベース70を配置し、
図16に示されるように、スライダー220の突起230がケース10Aの溝118を通るようにしてケース10Aを上方から被せる。このとき、スライダー220に設けられたコイルスプリングSPがケース10Aの内周壁と当接し、スライダー220が前方に付勢され、突起230が支持溝114から抜け落ちないことを確認する。そして、ケース10Aに設けられた第1側壁孔119A及び第2側壁孔119Bと、ベース70に設けられた第1係合板部701A及び第2係合板部701Bを互いに係合させ、ケース10Aとベース70を固定する。
【0087】
最後に、ケース10A及びベース70で構成される筐体の上方から、整列部材200を被せる。そして、整列部材200に設けられた爪部209を、ケース10Aに設けられた係合孔19と係合させ、整列部材200とケース10Aを固定する。
【0088】
このようにして組み立てられた制動装置1000が、
図6に示されるものである。そして、制動装置1000の組立が完了すると、1本目のコードCDが整列部材200の前方壁部205の外側であり第1前方溝201の上方に位置するように配置される。そして、2本目のコードCDが整列部材200の第1前方コード挿入部201Aを介して第1前方溝201に挿通される。そして、3本目のコードCDが第2前方コード挿入部202Aを介して第2前方溝202に挿通される。
【0089】
そして、これらのコードCDがケース10Aの前後に設けられたガイド溝113及びスライダー220の前後に設けられた貫通孔225に通される。
【0090】
そして、かかるコードCDのうち、1本目のコードCDが、整列部材200の後方壁部206の外側であり第1後方溝203の上方に位置するように通される。そして、2本目のコードCDが、整列部材200の後方壁部206に設けられた第1後方コード挿入部203Aを介して第1後方溝203から外部に通される。そして、3本目のコードCDが、第2後方コード挿入部204Aを介して第2後方溝204から外部に通される。これにより、
図6(a),(b)に示される状態となる。
【0091】
図6(c)は、制動装置1000の左側面図、つまり、
図6(a)の矢印X方向から見た側面図である。
図6(c)に示されるように、制動装置1000は、側面視において、上側からケース10A、整列部材200、ベース70が視認されることとなる。また、支持溝114により突起230が支持されていることが伺える。
【0092】
図7(a)に示されるように、制動装置1000は、その平面視において、中心から順にケース10A、整列部材200、ベース70の一部の順に視認できる。ここで、
図6(a),(b)及び
図7(a)に示されるように、軸芯31の上端が、スライダー220に設けられた第1天壁溝226からケース10Aに設けられた第1天壁溝16を挿通し、ケース10Aの外部に露出している。同様に、軸芯41の上端が、スライダー220に設けられた第2天壁溝227からケース10Aに設けられた第2天壁溝17を挿通し、ケース10Aの外部に露出している。
【0093】
そして、第1天壁溝16の縁に設けられた第1ガイド壁16Aが軸芯31と当接し、第2天壁溝17の縁に設けられた第2ガイド壁17Aが軸芯41と当接している。
【0094】
また、
図7(b)に示されるように、ベース70は、その底面視において、第1ベース溝706に挿通された軸芯31の下端と、第2ベース溝707に挿通された軸芯41の下端を視認することができる。なお、取付筒702が設けられる面において、円柱部708の上を面で覆うことにより、軸芯31及び軸芯41の下端が外部から覆われる構成としてもよい。
【0095】
1−3−2<組立状態における内部構造>
次に、
図8〜
図10を用いて、組立状態における内部構造について説明する。
図8は、
図6の状態から整列部材200及びケース10Aを取り外した状態における斜視図である。
図8に示されるように、スライダー220の上方に軸芯31及び軸芯41が突出している。また、軸芯31は、第1天壁溝226内においてスライダー220の幅方向に動きが規制される。同様に、軸芯41は、第2天壁溝227内においてスライダー220の幅方向に動きが規制される。なお、図示を省略しているコードCDは、スライダー220の貫通孔225に縦に整列された状態でスライダー220の前後方向に挿通される。
【0096】
図9は、
図8の状態から更にスライダー220を取り外した状態における斜視図である。図示を省略したコードCDは、ローレット240及びローラ部42に挟着された状態で、制動装置1000の前後に挿通される。また、ピニオンギア50と内歯車261は互いに歯合している。したがって、コードCDに張力がかかったときに、コードCDとローレット240の間で摩擦力が発生し、それによりローレット240と一体となってピニオンギア50が回転すると、ピニオンギア50の回転が内歯車261に伝達される。その結果、内歯車261が自転することにより、内歯付キャリア260とともにそのフランジ262に設けられる支持軸263も公転する。それに伴い、支持軸263に回転可能に支持される遊星歯車280が自転しながら公転を開始する。
【0097】
図10は、
図9の状態から更に内歯付キャリア260を取り外した状態における斜視図である。
図10に示されるように、遊星歯車280と太陽歯車323は互いに歯合している。したがって、遊星歯車280の回転が太陽歯車323に伝達され、太陽歯車付ウェイトホルダ320が自転を開始する。その結果、
図17に示されるように、太陽歯車付ウェイトホルダ320の凹部322に保持されたウェイト340が自転を開始する。そして、回転速度がある一定値を上回ると、遠心力によりウェイト340がケース10Aの内壁と当接する。これにより、ローレット240の回転に対して抵抗力が与えられる。
【0098】
次に、
図18及び
図19を用いて、組立状態における各部材間の相対位置について更に詳細に説明する。
図18は、
図6(c)のA−A線切断部断面図である。
図18に示されるように、軸芯31を中心とするピニオンギア50と、内歯付キャリア260に設けられる内歯車261とが互いに歯合している。また、内歯車261の回転は、内歯付キャリア260の支持軸263を介して遊星歯車280に伝達されるように構成される。そして、遊星歯車280は、太陽歯車付ウェイトホルダ320に設けられた太陽歯車323及びケース10Aの内部に設けられた内周ギア115と互いに歯合する。したがって、ピニオンギア50に起因する回転が加えられることにより、遊星歯車280は太陽歯車323と内周ギア115の間に形成される空間内を、内歯車261の中心部を中心として公転することが可能となる。
【0099】
図19は、
図7(a)のB−B線切断部断面図である。
図19に示されるように、本実施形態では、B−B線切断部断面図は取付筒702を中心として略左右対称となっている。そして、軸芯31及び軸芯41がケース10Aの上端及びベース70の下端から突出している。なお、本実施形態では、第1ガイド壁16A及び第2ガイド壁17Aの上端が、それぞれ軸芯31及び軸芯41の上端と略同じ高さとなっている。
【0100】
そして、ローレット240及びローラ部42がスライダー220の内部に位置している。更に、ローレット240とともにスライダー220を挟んだ状態で、ピニオンギア50がスライダー220の外部に位置している。また、ピニオンギア50と内歯車261が互いに歯合している。
【0101】
そして、ケース10Aの上側から鍔部13にかけて、整列部材200で覆われている。また、ケース10Aはその下端においてベース70と係合している。そして、ベース70の上部には、ウェイト340が保持されている。ここで、本実施形態では、ウェイト340を着脱式としているので、必要な制動力をウェイト340の数又は種類により調整することが可能となる。つまり、大きな制動力が求められる場合にはウェイト340の数を増やしたり、他のより密度の高いウェイトを太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持すればよい。一方、小さな制動力で十分な場合には、ウェイト340の数を減らせばよい。なお、ウェイト340は、回転時における安定性の観点から、太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持される面上において対称配置することが好ましい。なお、本実施形態では、ウェイト340に設けられた突起341とベース70の底面が当接することにより、回転時におけるウェイト340とベース70との間の抵抗力を低減している。
【0102】
1−4<動作>
次に、
図20を用いて本実施形態に係る制動装置1000の動作について説明する。
図20(a)はコードCDに何ら張力が与えられない状態(定常状態)、
図20(b)はコードCDに張力が与えられ、ローレット240及びローラ部42でコードCDが挟着された状態(挟着状態)、
図20(c)は
図20(a)から
図20(b)へ状態変化する際における各部材の回転方向をまとめた図である。なお、
図20(a),(b)はともに、
図18と同様に、
図6(c)のA−A線切断部断面図である。ここで、説明の都合上、かかる断面図には現れないローラ部42の外周を軸芯41の周囲に、ローレット240の外周を軸芯31の周囲に重ねて表示した。なお、ローレット240の外周は厳密には円形ではないが、説明の簡略化のため、円形に近似して図示している。
【0103】
図20(a)に示されるように、定常状態において、上記のように、コイルスプリングSPは、ケース10Aの後方の内壁と当接し、スライダー220を前方に押圧する。したがって、スライダー220はケース10Aの前方に位置する。このため、スライダー220の第1天壁溝226及び第1底壁溝228により位置が規制されている軸芯31と、第2天壁溝227及び第2底壁溝229により位置が規制されている軸芯41と、がスライダー220とともに前方に移動する。更に、スライダー220の上部に保持されるケース10Aに設けられた第1天壁溝16と第2天壁溝17は、前方に向かうにつれて互いに距離が小さくなっている。同様に、ベース70に設けられた第1ベース溝706及び第2ベース溝707は、前方に向かうにつれて距離が小さくなっている。したがって、軸芯41に回転可能に支持されるローラ部42と、軸芯31に回転可能に支持されるローレット240との距離も小さくなる。つまり、第1天壁溝16及び第1ベース溝706は、ローレット240の軸芯31が移動可能に嵌合し、ローレット240が溝に沿わない動きをすることを規制する規制溝として機能する。同様に、第2天壁溝17及び第2ベース溝707は、ローラ部42の軸芯41が移動可能に嵌合し、ローラ部42が溝に沿わない動きをすることを規制する規制溝として機能する。また、第1天壁溝16及び第1ベース溝706は、内歯付キャリア260の内周面の中心点と平面視において同心円上に形成されるため、軸芯31がそれぞれの溝内を移動しても、ピニオンギア50は内歯付キャリア260に設けられた内歯車261に歯合し続けることができる。
【0104】
このように、ローレット240とローラ部42との距離が小さくなると、ローレット240はローラ部42に押圧され、ローレット240とローラ部42でコードCDが狭持される。つまり、本実施形態では、コイルスプリングSPは、ローレット240がローラ部42に押圧されるように、ローレット240を常時付勢する付勢部材としても機能する。
【0105】
そして、定常状態の制動装置1000において、コードCDに矢印D1の向き(前方)に張力を与えたとする。すると、コードCDとの間に生じる摩擦力により、ローレット240が反時計回りに、ローラ部42が時計回りに回転する。そして、ローレット240の回転により、同じ軸芯31を共有して固定されているピニオンギア50もローレット240と同じ向き(反時計周り)に回転(自転)する。この際、
図20(b)に示されるように、軸芯31及び軸芯41は、平面視において前方に移動し、左右方向において互いに近接して、ローレット240とローラ部42によるコードCDの挟着力が強くなり、コードCDの移動に応じてローレット240が確実に回転するようになる。すると、ピニオンギア50は内歯車261と歯合しているので、ピニオンギア50の歯から与えられる力により、内歯車261が反時計周りに回転(自転)する。これにより、内歯車261とともに内歯付キャリア260も反時計周りに回転(自転)するので、内歯付キャリア260に設けられた遊星歯車280も同様に反時計周りに回転(公転)する。ここで、遊星歯車280は太陽歯車323及びケース10Aにより固定された内周ギア115と互いに歯合しているので、公転方向とは逆向き(時計回り)に自転しつつ、反時計周りに公転することとなる。したがって、遊星歯車280の内側で遊星歯車280と歯合する太陽歯車323は、遊星歯車280の自転と逆向き(反時計周り)に回転(自転)する。このとき、遊星歯車280により、太陽歯車323の回転は増速される。これにより、太陽歯車323とともに回転する太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持されるウェイト340も回転を開始する。なお、すでに述べた通り、遊星歯車280の外側で遊星歯車280と歯合する内周ギア115は、ケース10Aとベース70が固定されているため、遊星歯車280の回転時においても回転しない。
【0106】
そして、
図20(b)に示されるように、ローレット240とローラ部42が限界まで近づく(挟着状態)と、ローレット240の自転は続くもののローレット240の内歯車261に沿った移動が停止する。このとき、ローレット240の自転に起因した他の部材の回転は継続される。すると、遠心力によりウェイト340がケース10Aの内周壁に当接することにより、回転に対して抵抗力が生じる。つまり、コードCDの移動速度が上昇することで回転速度が上昇し、これにより遠心力が上昇する。そして、遠心力が上昇することによりウェイト340がケース10Aの内周壁により強く当接することになり、抵抗力が上昇する。これにより、コードCDの移動速度(日射遮蔽部材の落下速度)を抑えることができる。ここで、コードCDに加えられる張力が略一定の場合(例えば、制動装置1000の前方側のコードCDに昇降可能に吊持される日射遮蔽部材が自由落下する場合)には、コードCDに加えられる張力とウェイト340とケース10Aの内周壁による抵抗力が釣り合うところで、コードCDの移動速度が略一定となる。したがって、制動装置1000は、コードCDの移動に対する回転ダンパとして機能し、日射遮蔽部材をゆっくりと降下させることが可能となる。
【0107】
以上説明した、定常状態から挟着状態までの挟着状態の変化について、各部材の回転方向(ピニオンギア50については、更に平面視における前後方向及び締め付け方向も含む)をまとめたものが
図20(c)である。
【0108】
一方、コードCDに矢印D1と逆向き(後方)に張力を与えた場合には、ローレット240及びローラ部42が上記と逆向きに回転する。その結果、軸芯31及び軸芯41が第1天壁溝16及び第2天壁溝17に沿って互いに離間するように移動する。すると、コードCDに対するローレット240の挟着力が弱まり、弱い力でコードCDを引っ張ることが可能となる。したがって、ヘッドボックス内に制動装置1000を設ける場合には、
図20において前方にコードCDに張力が加わる向きを日射遮蔽部材の下降する向きとし、後方にコードCDに張力が加わる向きを日射遮蔽部材の上昇する向きとすると好適である。
【0109】
なお、第本実施形態では、ウェイト340が太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持されることとしたが、ウェイト340の保持の方法はこれに限定されない。例えば、ウェイト340が内歯付キャリア260に保持されることとしてもよい。この場合、遊星歯車280、プレート300及び太陽歯車付ウェイトホルダ320は省略することができる。なお、遊星歯車280を省略することにより、太陽歯車323、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340の回転に対する増速効果は得られなくなる。かかる構成とした場合には、内歯付キャリア260がウェイトホルダ320の役割を併せ持つために、内歯付キャリア260はコードCDが一方向に相対移動するときに、コードCDの移動に伴って抵抗力を発生させる抵抗付与部RAとしても機能する。したがって、この場合、内歯付キャリア260(回転部材)は、ケース10Aに内包され且つコードCDの移動に伴い鉛直方向の物理的又は仮想的回転軸を中心に回転する回転部材と言うことができる。
【0110】
以上説明したように、第1の観点によれば、本実施形態に係る制動装置1000は、ケースと、前記ケースに内包され且つ前記制動対象の移動に伴って回転する回転部材と、を備え、前記回転部材とこれに接触する接触部材との間の接触抵抗を低減する抵抗低減部が前記回転部材又は前記接触部材の少なくとも一部に設けられ、前記回転部材は、前記ケース内のベースに載置され且つ制動対象からの回転入力により径方向外側に遠心力が加えられる遠心拡張部であり、
以下の(1)〜(2)の少なくとも一方の構成を備える、請求項1に記載の制動装置。
(1)前記遠心拡張部と前記ベースの接触面の少なくとも一部に段差が設けられる。
(2)前記載置面に載置され且つ前記遠心拡張部を保持するホルダを備え、前記ホルダと前記ベースの接触面の少なくとも一部に段差が設けられる、制動装置である。これにより、ウェイトとベース間、又はウェイトを保持するウェイトホルダとベース間の接触抵抗を低減することができる。
【0111】
さらに、第2の観点によれば、本実施形態に係る制動装置1000は、ケースと、前記ケースに内包され且つ前記制動対象の移動に伴って回転する回転部材と、を備え、前記回転部材とこれに接触する接触部材との間の接触抵抗を低減する抵抗低減部が前記回転部材又は前記接触部材の少なくとも一部に設けられ、前記抵抗低減部は、平面視において、前記ケースの中心からの水平距離が小さい部分及び大きい部分が交互に並んだ波形のリング状に構成された波形部である、制動装置と言うことができる。これにより、ケースと他の回転部材との摩擦抵抗を低減することができる。
【0112】
<作用・効果>
本実施形態に係る制動装置1000により、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)ウェイトとベース間、又はウェイトを保持するウェイトホルダとベース間の接触抵抗を低減することができる。
(2)ケースと他の回転部材との摩擦抵抗を低減することができる。
(3)コードCDの自由移動時において屈曲しない(非屈曲)ために、屈曲抵抗が小さくなり、よりスムーズにコードCDが移動することが可能になる。
(4)引き操作時において操作力を低減し、自動動作(自動降下)時に確実にコードCDを挟着し、意図しない落下を防止することができる。
(5)コードCDに前方へ張力が与えられる場合には、ローレット240及びローラ部42が互いに近接するように移動することにより、コードCDを強く挟着することができ、ローレット240を確実に回転させ、回転をピニオンギア50に伝えることができる。
(6)コードCDに後方へ張力が与え得られる場合には、ローレット240及びローラ部42が互いに離間するように移動することにより、コードCDへの挟着力を弱め、コードCDの自由移動を許可することができる。
(7)筐体(ケース10A及びベース70)に設けられた規制溝により、ローレット240及びローラ部42が意図しない向きに移動することを防止することができる。
(8)スライダー220を浮き状態で保持することにより、抵抗力を低減し、部材の消耗を抑えることができる。
(9)ケース10Aの内部に波形部116や段差117を設けたことにより、摩擦抵抗を低減することができる。
(10)ウェイト340に設けた突起341により、抵抗力を低減することができる。
(11)プレート300により遊星歯車280の傾きを防止するとともに、遊星歯車280とウェイト340の干渉を防ぐことができる。
(12)上記干渉を防止しつつもプレート300を薄型のものとすることで制動装置1000を小型化することができる。
(13)第1ガイド壁16A及び第2ガイド壁17Aにより、軸芯31及び軸芯41からの圧力でケース10Aが削れることを防止することが可能となる。
(14)ピニオンギア50に段差51を設けたことで、ピニオンギア50とスライダー220との間の摺動抵抗を低減することができる。
(15)運動変換部に係る機構と抵抗付与部に係る機構が略垂直に位置するように配置されることにより、制動装置1000全体の平面視における面積を低減することが可能となる。
【0113】
2.第2実施形態
次に、
図23〜
図25を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0114】
図23は、第2実施形態に係る制動装置の一部分解斜視図である。
図24は
図23の状態における制動装置1000のうち、ベース70、プレート301及びウェイト340の位置関係を表す図であり、(a)は上面斜視図、(b)はベース70を省略した底面図である。
図25は、第1実施形態における
図19に対応するB−B線切断部断面図である。
【0115】
図23〜
図25に示されるように、第2実施形態では、内歯付キャリア260及び太陽歯車付ウェイトホルダ320とベース70の間にプレート301を介在させる。
図24に示されるように、本実施形態では、プレート301の孔が、ベース70の円柱部708に嵌装されるようにプレート301の位置が調整される。つまり、第2実施形態では、プレート301は、回転部材(内歯付キャリア260及び太陽歯車付ウェイトホルダ320)とケース内のベース70との間に介在する介在部材であるといえる。なお、第2実施形態では、ウェイト340は、ケース10A内のベース70に載置され且つ制動対象からの回転入力により径方向外側に遠心力が加えられる遠心拡張部として機能する。また、太陽歯車付ウェイトホルダ320は、遠心拡張部を保持し且つ太陽歯車323を備える遠心拡張部ホルダの一例である。さらに、内歯付キャリア260は、太陽歯車323と歯合する遊星歯車280を備えた遊星歯車キャリアの一例である。
【0116】
プレート301は、内歯付キャリア260及び太陽歯車付ウェイトホルダ320と、ベース70の上面710(
図23及び
図24(a)参照)と、を隔てるように設けられる。
【0117】
ここで、第2実施形態では、制動装置1000の静止時において、プレート301と太陽歯車付ウェイトホルダ320との間に、約0.1mmの間隙が設けられている。そして、制動装置1000の稼働時における外力により、太陽歯車付ウェイトホルダ320が上下に移動した場合でも、太陽歯車付ウェイトホルダ320とベース70の上面710との接触を回避することができる。
【0118】
また、プレート301は、制動対象の移動中でも、回転しないように構成される。換言すると、プレート301は、円柱部708に嵌装された状態で固定されるように設けられる。
図24に示されるように、プレート301の内周線は、円柱部708の外周線に接するように位置決めされる。また、
図24(b)に示されるように、プレート301の外周線は、底面視においてウェイト340で形成される円の内側に位置するように位置決めされる。
【0119】
図25に示されるように、プレート301は、内歯付キャリア260及び太陽歯車付ウェイトホルダ320と、ベース70の上面710の間に介在する。また、プレート301は、ウェイト340の下面には位置しない。
【0120】
プレート301は、金属製が好ましく、本実施形態では、ステンレス製である。ここで、本実施形態では、ベース70は樹脂製であるので、プレート301と内歯付キャリア260及び太陽歯車付ウェイトホルダ320の接触抵抗が、ベース70と内歯付キャリア260及び太陽歯車付ウェイトホルダ320の接触抵抗よりも小さくなる。
【0121】
これにより、プレート301を設けない場合(内歯付キャリア260又は太陽歯車付ウェイトホルダ320の少なくとも一方とベース70の上面710が接触する場合)と比べて、プレート301を設ける場合(内歯付キャリア260又は太陽歯車付ウェイトホルダ320の少なくとも一方とプレート301が接触する場合)の方が、部材間の接触抵抗が小さくなる。
【0122】
ここで、2つのものの間にプレート301が介在するとは、2つのものの間にプレート301が存在することを意味する。換言すると、プレート301が、回転部材(内歯付キャリア260又は太陽歯車付ウェイトホルダ320)とケース内のベース70を隔てるように設けられる。
【0123】
ここで、プレート301とプレート300を同一部材とすることもできる。この場合、1種類のプレートを準備するだけでよいので、部品の管理が容易になる。
【0124】
このように、必要に応じて、プレート301を設けることにより、回転部材と他の部材との間の接触抵抗を調整することができる。
【0125】
なお、第2実施形態で説明した構成と、
図21〜
図22の構成を組み合わせても良い。
【0126】
<作用・効果>
本実施形態に係る制動装置1000により、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)プレート301を設けない場合では、内歯付キャリア260又は太陽歯車付ウェイトホルダ320の少なくとも一方と、がベース70の上面710とが接触しており、回転により部材同士の接触抵抗が発生する。一方、プレート301を設けることにより、かかる接触抵抗を低減することが可能となる。
(2)特に、太陽歯車付ウェイトホルダ320は遊星機構により増速されており、ベース70の上面710との接触抵抗が大きいが、かかる接触抵抗を低減させることができる。
(3)制動装置1000の構成部材同士はそれぞれ接近しており、クリアランスがほとんど存在しない。したがって、ピニオンギア50及びローレット240等のわずかな傾きに起因する負荷が、内歯付キャリア260及び太陽歯車付ウェイトホルダ320まで伝達される。すると、かかる負荷により、内歯付キャリア260及び太陽歯車付ウェイトホルダ320とベース70の上面710との接触抵抗が大きくなり、制動装置1000が動作不良となる恐れがある。一方プレート301を設けることにより、かかる動作不良を低減することが可能となる。
【0127】
以上、種々の実施形態について説明したが、本発明の遮蔽装置100Aは、上記実施形態の遮蔽装置100Aと異なる構成であってもよい。例えば、本発明の日射遮蔽装置は、カーテン布が巻き取られるロールカーテンとされたり、複数のスラットが昇降するブラインドとされてもよい。また、
図26に示されるように、ねじ111等を用いて窓枠110に制動装置1000を固定するようにしてもよい。また、グリップ109の内部に制動装置1000を設けてもよい。更に、昇降コード102の通過経路の任意の場所に制動装置1000を設けることとしてもよい。